感熱孔版印刷用マスタ
【課題】ロール状に巻成されたマスタに巻きズレが発生しないようにマスタの巻き端部に挟み込んだ巻紙を取り外す際に、容易に且つマスタにしわを発生させることなく取り外すことができるロール状の感熱孔版印刷用マスタの提供。
【解決手段】シート部材を用いてマスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、かつ、その小さい方の破断強度を510N/m以下とした感熱孔版印刷用マスタ。
【解決手段】シート部材を用いてマスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、かつ、その小さい方の破断強度を510N/m以下とした感熱孔版印刷用マスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱孔版印刷用マスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡便な印刷方法としてデジタル式感熱孔版印刷が知られている。これは、微細な発熱素子が一列に配置されたサーマルヘッドを、多孔性支持体と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせた感熱孔版印刷用マスタ(以下「マスタ」という)の熱可塑性樹脂フィルム面に接触させ、パルス的に発熱素子に通電させながらマスタを搬送することにより、画像情報に応じてマスタの熱可塑性樹脂フィルムを加熱溶融穿孔し、次いで、このマスタを多孔性円筒状の版胴の外周面に巻成した後、穿孔部からインキを滲出させて印刷用紙に転移させ、印刷用紙上に印刷画像を形成するものである。
【0003】
図1(a)〜(d)に、感熱孔版印刷装置の概略側面図を示す。
感熱孔版印刷装置(100)は、製版ユニット(101)、給紙搬送ユニット(102)、印刷ユニット(103)、排紙ユニット(104)、排版ユニット(105)、原稿読み取りユニット(106)から主に構成されている。感熱孔版印刷装置(100)から、レール等により図中右側に製版ユニット(101)を引き出したり(b)、原稿読み取りユニット(106)を図中左側にスライドさせたり(c)、又は原稿読み取りユニット(106)を上方へ引き上げたり(d)することにより、オペレーターが製版ユニット(101)にアクセスすることが出来るようになっている。
【0004】
図2はマスタの構成を示す概要図であり、マスタ(1)は中空の紙管(2)にロール状に巻成されており、輸送や保管、印刷機でのマスタ交換では、ロール状態での取扱がなされる。マスタ(1)は、紙管(2)の内径と略同径の端面(108)を有するフランジ部材(107)を紙管(2)の両端面に装着し、更に、フランジ部材(107)の他端面(109)を製版ユニット(101)内に装着することによって、空中に保持され、製版時にはロール状態から繰り出されて搬送される。フランジ部材(107)は製版ユニット内に組み込まれている場合もあり、この場合は図1(b)の製版ユニット(101)の側面を図中手前側に開閉することによって、マスタ(1)の装着が行われる。
【0005】
マスタ(1)は、輸送時や取り扱い時にしわが発生しないように、ロールの巻き端部を粘着性テープ等で直接止めるか、又は帯状のシート部材(以下、巻紙ということもある)を巻き付ける等の手段により止める。
図3に示すように、粘着テープ(7)等によってロールの巻き端部を直接止めた場合、マスタ(1)への粘着力が高すぎると取り外し時にマスタ破損の原因となる。また、粘着力が低すぎると、自然に剥がれてしまうという不具合がある。
これに対し、ロールの巻き端部を止めるのに巻紙(4)を用いる場合には、図4(a)及び(b)に示すように、巻紙(4)を紙管(2)の外周に一周を超えて巻き付け、巻紙(4)が重なった部位を接着剤や粘着テープ(7)等で固定する。その結果、確実にロールの巻き端部を止めることができ、かつ粘着部がマスタ(1)と直接接触しない為、巻紙(4)を取り外す際に、粘着テープによるマスタ(1)の破損が無い。
【0006】
マスタ交換時は、オペレーターが使用済みのマスタを印刷機から取り外し、新しいマスタを印刷機に装着する。その際、新しいマスタを印刷機に装着する前にロールの巻き端部止め部材を取り外すと、その後の操作の際に、マスタにズレを発生させてしまう場合があるので、新しいマスタを印刷機に装着した後に、ロールの巻き端部止め部材を取り外すことが好ましい。新しいマスタを印刷機に装着してしまえば、フランジ部材によりマスタの位置が固定され、マスタが並行に取り扱われるため、ズレによるしわが発生しにくい。
このように、マスタを機械に装着した後にロールの巻き端部止め部材を外す場合、図4(b)に示すように、巻紙(4)の端部をロールの巻き端部下面に挟み込まない方式であれば、図5(a)〜(c)に示すように、接着部を外した際に、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)に対し、マスタ(1)に接触している側の端部(4a)は、どの面からも抑えられていないフリー状態となるので、そのまま引き抜けば、巻紙(4)を容易に取り外すことができる。なお、図5(b)は図5(a)を横方向から見た図、図5(c)は引き抜いた巻紙(4)の図である。
【0007】
ところが、近年、マスタの高画質化のために、平滑性が高く、コシの弱いマスタが使用されるようになってきている。このようなマスタの場合には、マスタ表面が滑りやすく、ロール状のマスタに巻きズレやしわが発生し易い。そこで、特許文献1には、図6(a)に示すように、巻紙端部(4c)を、ロールの巻き端部下面に挟み込むことが提案されている。この方法によると、マスタ(1)のズレを抑えることができると共に、巻紙(4)自身のズレも抑えることができるため、巻紙ズレによるしわも抑えることができる。
しかし、前記特許文献1の場合、接着部を外し巻紙(4)を取り外す際に巻紙(4)を引き出す操作は、マスタ(1)を介して巻紙端部(4c)を締め付ける操作になるため、図6(b)及び(c)に示すように、巻紙端部(4c)が固定され、引き抜きが容易ではない。そのため、オペレーターの作業性が悪く、巻紙(4)でマスタ(1)を強く締め付けることによってマスタ(1)にしわが発生する場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ロール状に巻成されたマスタに巻きズレが発生しないようにマスタの巻き端部に挟み込んだ巻紙を取り外す際に、容易に且つマスタにしわを発生させることなく取り外すことができるロール状の感熱孔版印刷用マスタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、次の1)〜3)の発明によって解決される。
1) ロール状に巻成されたマスタの先端部と該マスタの外周面との間にシート部材の一端部が挟み込まれ、シート部材はマスタ外周面を一回りして巻装され、その他端部が該シート部材の外周面と接合されることによって、マスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、かつ、その小さい方の破断強度を510N/m以下としたことを特徴とする感熱孔版印刷用マスタ。
2) ロール状に巻成されたマスタの先端部と該マスタの外周面との間にシート部材の一端部が挟み込まれ、シート部材はマスタ外周面を一回りして巻装され、その他端部が該シート部材の外周面と接合されることによって、マスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、前記シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の面に、巻き付け方向に対し横方向にミシン目を設けることにより、シート部材の破断強度を510N/m以下としたことを特徴とする感熱孔版印刷用マスタ。
3) 前記粘着テープの粘着面側の一端部に非粘着部が設けられていることを特徴とする1)又は2)記載の感熱孔版印刷用マスタ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロール状に巻成されたマスタに巻きズレが発生しないようにマスタの巻き端部に挟み込んだ巻紙を取り外す際に、容易に且つマスタにしわを発生させることなく取り外すことができるロール状の感熱孔版印刷用マスタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】孔版印刷機の概略側面図。(a)〜(d)は装置を操作した状態を示す。
【図2】マスタの構成を示す概要図。
【図3】粘着テープ(7)等によってロールの巻き端部を直接止めた場合を示す図。
【図4】(a)はロールの巻き端部止めに巻紙(4)を用いる場合を示す図。(b)はロールの巻き端部止めに巻紙(4)を用い、巻紙(4)が重なった部位を粘着テープ(7)等で固定した状態を示す図。
【図5】(a)はマスタを機械に装着した後にロールの巻き端部止め部材を外す場合の説明図。(b)は(a)の状態を横方向から見た図。(c)は引き抜いた巻紙(4)を示す図。
【図6】(a)は特許文献1の巻紙端部(4c)をロールの巻き端部下面に挟み込む場合を示す図。(b)は巻紙端部(4c)が固定され、引き抜きが容易ではない状態を示す図。(c)は(b)の状態を横方向から見た図。
【図7】粘着テープ(7)の一例の側面図。
【図8】本発明における紙の縦方向と横方向を示す図。
【図9】巻紙をマスタに巻き付ける場合の「縦目巻き」と「横目巻き」の説明図。
【図10】(a)は横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を、横目巻きで使用する場合の説明図。(b)は横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を横目巻きで使用する場合の説明図。(c)は粘着テープ部の巻紙に破れ(8)が生じた状態を示す図。(d)は巻紙自身が横方向に二分され、新たな巻紙の他端(6a)が発生した状態を示す図。(e)は破断により生じた巻紙端部(6b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれる状態を横方向から見た図。(f)は引き抜いた後の巻紙を示す図。
【図11】(a)は巻紙の横方向の破断強度が510N/mを超える場合の巻紙の状態を示す図。(b)は巻紙の横方向の破断強度が510N/mを超える場合の巻紙を引き抜く状態を横方向から見た図。
【図12】(a)は横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を縦目巻きとした場合に粘着テープを引いた際の状態を示す図。(b)は巻紙を取り出した図〔(a)の正面から見たもの〕。(c)は巻紙を取り出した図〔(a)の裏面から見たもの〕。(d)は引き抜き困難な状態の時の実際の状態を示す図。
【図13】(a)は巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)に対し、マスタ(1)に接触している側の面にミシン目(6)を設けた例を示す図。(b)は巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)に対し、マスタ(1)に接触している側の面にミシン目(6)を設けた例を示す図。(c)は巻紙が横方向に二分されることによって、新たな巻紙の二つの端部(6a、6b)が発生する状態を示す図。(d)は新たな巻紙の他端(6a)、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれる状態を横方向から見た図。(e)は引き抜いた後の巻紙を示す図。
【図14】(a)は巻紙後端部側の接着部の中央上面に山型のミシン目(6)を設けた例を示す図。(b)は巻紙後端部側の接着部の中央上面に山型のミシン目(6)を設けた例を示す図。(c)は粘着テープ(7)を引いた際に、巻紙(4)の新たな二つの端部(6a、6b)が発生する状態を示す図。(d)は新たな巻紙の他端(6a)、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれる状態を横方向から見た図。(e)は引き抜いた後の巻紙(4)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明は、前述のように、シート部材(巻紙)同士を接合する手段として粘着テープを用いるものである。粘着テープは一般的なものでよいが、巻紙から引き剥がす際に、粘着テープ自身が破断しないくらいの十分な強度のものを用いる。また、巻紙に対して十分な粘着力があるものを用いる。
図7は粘着テープ(7)の一例の側面図である。粘着面(7a)に対し、一端部に折り返しを入れて、非粘着面(7b)が作製してある。また、折り返しの代わりにフィルム等の非粘着物を貼り付けて非粘着部を作製してもよい。このことによりオペレーターが巻紙を取り外す際に、非粘着面(7b)又は非粘着部を持って粘着テープを剥がすことが可能となり、作業性が向上すると共に、非粘着面がない場合に、オペレーターが爪などで粘着テープを剥ぎ取ることによってマスタを傷つけてしまうことを防止できる。
【0013】
一般に紙には繊維配向性があるため、縦方向と横方向では強度に違いが見られる。
本発明では、図8に示すように、繊維配向方向で破断強度が大きい側を「縦」、繊維配向に垂直方向で破断強度が小さい側を「横」と表現する。
また、図9に示すように、原材料の紙から巻紙を切り出す際、「縦」に長く(巻紙を長手方向に引張った時に強度が大きい方向で巻紙を切り出して)マスタに巻き付ける場合を「縦目巻き」と表現し、逆に「横」に長く(巻紙を長手方向に引張った時に強度が小さい方向で巻紙を切り出して)マスタに巻き付ける場合を「横目巻き」と表現する。
【0014】
通常コピー用紙等に使用される上質紙の坪量は60g/m2前後であるのに対し、本発明では、坪量が5〜30g/m2の低坪量の巻紙(化繊紙を含む)を使用する。
また、本発明では、横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を、図10(a)及び(b)に示すように、横目巻きで使用する。こうすると、粘着テープ(7)を引いた際に、巻紙の破断強度が510N/m以下と弱い為、図10(c)に示すように、粘着テープ部の巻紙に破れ(8)が生じる。更に粘着テープ(7)を引くと、巻紙の横の破断強度が低く、更に巻紙が横目巻に巻かれているため、破断面は繊維の配向に沿って巻紙の巻き付け方向に対し横方向に広がり、最終的には図10(d)に示すように、巻紙自身が横方向に二分される。その結果、新たな巻紙の他端(6a)が発生し、この面は抑えられていないので、図10(e)に示すように、破断により生じた巻紙端部(6b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれ、巻紙を容易に引き抜くことができる。図中の(4b)は巻紙(4)の巻き外側の端部である。引き抜いた後の巻紙を図10(f)に示す。なお、破断強度が極端に弱すぎると、巻紙を巻きつける際に破れてしまうことがあり、作業性が悪いため、破断強度の下限は50N/m程度である。
【0015】
巻紙の横方向の破断強度が510N/mを超える場合には、図11(a)及び(b)に示すように、粘着テープ(7)を引いた際に、粘着テープ(7)が巻紙の表層のみを破る(層間剥離)ことによって取り外されてしまうため、巻紙が破断することなく、挟み込んだ巻紙端部(4c)がマスタ(1)及び巻紙自身により抑えられることにより抜き取りが困難となり、マスタ(1)にしわが発生する場合がある。
【0016】
横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を縦目巻きとした場合には、粘着テープを引いた際に、図12(a)に示すように、粘着テープ部の巻紙に破れは生じるものの、粘着テープを引いた後の破断面は繊維の配向に沿って巻き付け方向に広がり、巻き付け方向と垂直な方向に破断せずに巻紙の引き抜きが困難となり、しわが発生する場合がある。
図12(b)及び(c)に巻紙を取り出した図を示す。図12(b)は図12(a)の正面から見たものであり、図12(c)は図12(b)を裏側から見たものである。
なお、実際には引き抜き困難な状態の時は、図12(d)に示すように、図12(c)におけるA部同士がつながったままとなっているが、便宜上、繊維の配向に沿って最後のA部まで破断した図を示している。
巻紙の幅や粘着テープの幅は、粘着テープを引いた際に、巻紙自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるように適宜調整される。通常は巻紙の幅は20〜160mm程度、粘着テープの幅は10〜50mm程度である。
【0017】
本発明の第二の形態は、巻紙の横方向の強度を強制的に弱くするものである。
図13(a)及び(b)に示したのは、巻紙(4)と粘着テープ(7)の接着部のうち、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)に対し、マスタ(1)に接触している側の面にミシン目(6)を設けた例である。ミシン目(6)の位置は、粘着テープ(7)の接着面近郊に設定される。
オペレーターが粘着テープ(7)の非粘着面(7b)に指をかけて粘着テープ(7)を引いた際に、巻紙(4)がミシン目(6)に沿って横方向に二分されるように、ミシン目が作成されている。巻紙が横方向に二分されることによって、図13(c)に示すように、新たな巻紙の二つの端部(6a、6b)が発生する。図13(d)に示すように、この他端部(6a)はどの面からも抑えられていないフリー状態であるから、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれ、巻紙を容易に引き抜くことができ、しわの発生が防止される。引き抜いた後の巻紙を図13(e)に示す。
このように、ミシン目を設けることによって、巻紙自身の破断強度が510N/mを超えていても、破断強度を510N/m以下として巻紙を横方向に破断させることができる。
【0018】
更に、図14(a)及び(b)に示したのは、巻紙後端部側の接着部の中央上面に山型のミシン目(6)を設けた例である。
オペレーターが粘着テープ(7)の非粘着面(7b)に指をかけて粘着テープ(7)を引いた際に、先ず始めに、巻紙(4)と粘着テープ(7)との接着部を起点として、山型のミシン目(6)の山の部分が破れる。更に、そのまま粘着テープ(7)を引くことにより、山型のミシン目(6)に沿って順次巻紙(4)が横方向に二分され、図14(c)に示すように、巻紙(4)の新たな二つの端部(6a、6b)が発生する。このうち他端部(6a)はどの面からも抑えられていないフリー状態であるから、図14(d)に示すように、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれ、巻紙(4)を容易に引き抜くことができる。引き抜いた後の巻紙(4)を図14(e)に示す。ミシン目を山型にすることにより、よりスムーズにミシン目が破れる。
巻紙の強度や幅によって、粘着テープを引いた際に巻紙が横方向に二分されるように、ミシン目の大きさやピッチ、粘着テープの幅は適宜調整される。通常、ミシン目の大きさは、切断部が0.5〜4mm程度、つなぎ部が0.5〜2mm程度である。
【実施例】
【0019】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0020】
<破断強度の測定>
3種類の巻紙を用意し、これらの材料から、23℃50%RHの環境下で、幅15mm、長さ120mmのサンプルをそれぞれ5枚採取した。これらのサンプルを、SHIMADZU AUTOGRAPH AGS−Jにより試験長50mmで把持し、試験速度20mm/minで破断するまで引張り、最大荷重をサンプル幅で除して巻紙1〜3の破断強度を求めた。測定は1枚ずつ行い、5枚の平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0021】
実施例1〜3、比較例1〜2
ニチバン社製のセロテープ(登録商標)CT−24(幅24mm)を長さ80mmに切り出し、実施例1は折り返し無しで、その他の実施例及び比較例は、その一端面を10mm折り返して非粘着部を作成した。
巻紙は表1の実施例及び比較例の各欄に示す巻紙1〜3の材料を幅80mm長さ400mmに切り出して使用した。
ロール状に巻成されたマスタ(ロール状マスタ)への巻紙の挟み込みは100mmとし、ロール状マスタの外周面を一周して巻装し、実施例1以外の実施例及び比較例は、巻紙の最外周端部(ロール状マスタに挟み込んでいる側と反対側)の面に、粘着テープの非粘着部とは反対の端部側を貼り付け、巻紙の円周上に沿って非粘着部側をロール状マスタに接触している側の巻紙に接着した。実施例1は非粘着部を設けていないため、端部の区別無く、同様に接着した。
【0022】
巻紙を巻装したロール状マスタを、リコー社製の印刷機A410にセットした状態で、巻紙の取り外しを合計5回行い、「破断」「しわ」「マスタ傷」について次の基準で評価した。
結果を表1に示す。
〔破断の評価基準〕
○:巻紙が5回とも巻きつけ方向に対し横方向に破断した場合
×:1回以上、巻きつけ方向に対し横方向に破断しなかった場合
〔しわの評価基準〕
○:5回ともマスタにしわが発生しなかった場合
×:1回以上、マスタにしわが発生した場合
〔マスタ傷の評価基準〕
△:粘着テープを取り外した際に、マスタに傷がついた場合(実使用上問題無し)
○:粘着テープを取り外した際に、マスタに傷がつかなかった場合
【0023】
【表1】
【0024】
実施例1〜3では、粘着テープを引いた際に巻紙に破れが生じ、更に粘着テープを引くと、破断面は巻紙の繊維の配向に沿って巻紙の巻き付け方向に対し横方向に広がり、最終的には巻紙自身が横方向に二分されて、巻紙を容易に引き抜くことができた。
また、実施例1では粘着テープに非粘着部を設けておらず、粘着テープを引く際に巻紙から爪で剥ぎ取ったため、粘着テープの端面部分のマスタに傷が付いてしまう場合があった(但し、実使用上は問題無いレベルであった)。これに対し、実施例2、3ではマスタの同部分に傷は見られなかった。
一方、比較例1では、粘着テープを引いた際に、巻紙に破れは生じず、巻紙の表層のみが破れて(層間剥離)、粘着テープが取り外されてしまう為〔図11(a)参照〕、巻紙が破断することなく、巻紙の挟み込み部がロール状マスタ及び巻紙自身により抑えられて抜き取りが困難となり、マスタにしわが発生した場合があった。
また、比較例2は、実施例1の横目巻きを縦目巻きに変えたものである。この例では、粘着テープを引いた際に、粘着テープ部の巻紙に破れが生じたものの、縦目巻きとしたため、粘着テープを引いた後の破断面は巻紙の繊維の配向に沿って巻き付け方向に広がり、巻き付け方向と垂直な方向に破断することはなく、巻紙の引き抜きが困難となり、しわが発生した場合があった。
【0025】
実施例4
住友スリーエム社製粘着テープNo.313(幅48mm)を長さ80mmに切り出し、その一端面を10mm折り返して非粘着部を作成した。
巻紙は表1の巻紙3を横目巻きになる様に、幅55mm長さ400mmで切り出した。
ロール状に巻成されたマスタ(ロール状マスタ)への巻紙の挟み込みは100mmとし、ロール状マスタの外周面を一周して巻装し、巻紙の最外周端部(ロール状マスタに挟み込んでいる側と反対側)の面に、粘着テープの非粘着部とは反対の端部側を貼り付け、巻紙の円周上に沿って非粘着部側をロール状マスタに接触している側の巻紙に接着した。巻紙には、粘着テープ貼り付けの近郊のマスタに接触している面に、予め巻き付け方向に対し横方向にミシン目を設けた。ミシン目の切断長さは3mmで、つなぎ長さは1mmとした。
実施例1と同様な試験を実施したところ、粘着テープを引いた際にミシン目に沿って巻紙に破れが生じ、最終的には巻紙自身が横方向に二分されて、巻紙を容易に引き抜くことができた。
【符号の説明】
【0026】
1 マスタ
2 紙管
4 巻紙
4a 巻紙のマスタに接触している側の端部
4b 巻紙の巻き外側の端部
4c 巻紙端部
6 ミシン目
6a 巻紙の新たな端部
6b 巻紙の新たな端部
7 粘着テープ
7a 粘着面
7b 非粘着面
8 巻紙の破れ
100 感熱孔版印刷装置
101 製版ユニット
102 給紙搬送ユニット
103 印刷ユニット
104 排紙ユニット
105 排版ユニット
106 原稿読み取りユニット
107 フランジ部材
108 フランジ部材の端面
109 フランジ部材の他端面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2002−120470公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱孔版印刷用マスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡便な印刷方法としてデジタル式感熱孔版印刷が知られている。これは、微細な発熱素子が一列に配置されたサーマルヘッドを、多孔性支持体と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせた感熱孔版印刷用マスタ(以下「マスタ」という)の熱可塑性樹脂フィルム面に接触させ、パルス的に発熱素子に通電させながらマスタを搬送することにより、画像情報に応じてマスタの熱可塑性樹脂フィルムを加熱溶融穿孔し、次いで、このマスタを多孔性円筒状の版胴の外周面に巻成した後、穿孔部からインキを滲出させて印刷用紙に転移させ、印刷用紙上に印刷画像を形成するものである。
【0003】
図1(a)〜(d)に、感熱孔版印刷装置の概略側面図を示す。
感熱孔版印刷装置(100)は、製版ユニット(101)、給紙搬送ユニット(102)、印刷ユニット(103)、排紙ユニット(104)、排版ユニット(105)、原稿読み取りユニット(106)から主に構成されている。感熱孔版印刷装置(100)から、レール等により図中右側に製版ユニット(101)を引き出したり(b)、原稿読み取りユニット(106)を図中左側にスライドさせたり(c)、又は原稿読み取りユニット(106)を上方へ引き上げたり(d)することにより、オペレーターが製版ユニット(101)にアクセスすることが出来るようになっている。
【0004】
図2はマスタの構成を示す概要図であり、マスタ(1)は中空の紙管(2)にロール状に巻成されており、輸送や保管、印刷機でのマスタ交換では、ロール状態での取扱がなされる。マスタ(1)は、紙管(2)の内径と略同径の端面(108)を有するフランジ部材(107)を紙管(2)の両端面に装着し、更に、フランジ部材(107)の他端面(109)を製版ユニット(101)内に装着することによって、空中に保持され、製版時にはロール状態から繰り出されて搬送される。フランジ部材(107)は製版ユニット内に組み込まれている場合もあり、この場合は図1(b)の製版ユニット(101)の側面を図中手前側に開閉することによって、マスタ(1)の装着が行われる。
【0005】
マスタ(1)は、輸送時や取り扱い時にしわが発生しないように、ロールの巻き端部を粘着性テープ等で直接止めるか、又は帯状のシート部材(以下、巻紙ということもある)を巻き付ける等の手段により止める。
図3に示すように、粘着テープ(7)等によってロールの巻き端部を直接止めた場合、マスタ(1)への粘着力が高すぎると取り外し時にマスタ破損の原因となる。また、粘着力が低すぎると、自然に剥がれてしまうという不具合がある。
これに対し、ロールの巻き端部を止めるのに巻紙(4)を用いる場合には、図4(a)及び(b)に示すように、巻紙(4)を紙管(2)の外周に一周を超えて巻き付け、巻紙(4)が重なった部位を接着剤や粘着テープ(7)等で固定する。その結果、確実にロールの巻き端部を止めることができ、かつ粘着部がマスタ(1)と直接接触しない為、巻紙(4)を取り外す際に、粘着テープによるマスタ(1)の破損が無い。
【0006】
マスタ交換時は、オペレーターが使用済みのマスタを印刷機から取り外し、新しいマスタを印刷機に装着する。その際、新しいマスタを印刷機に装着する前にロールの巻き端部止め部材を取り外すと、その後の操作の際に、マスタにズレを発生させてしまう場合があるので、新しいマスタを印刷機に装着した後に、ロールの巻き端部止め部材を取り外すことが好ましい。新しいマスタを印刷機に装着してしまえば、フランジ部材によりマスタの位置が固定され、マスタが並行に取り扱われるため、ズレによるしわが発生しにくい。
このように、マスタを機械に装着した後にロールの巻き端部止め部材を外す場合、図4(b)に示すように、巻紙(4)の端部をロールの巻き端部下面に挟み込まない方式であれば、図5(a)〜(c)に示すように、接着部を外した際に、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)に対し、マスタ(1)に接触している側の端部(4a)は、どの面からも抑えられていないフリー状態となるので、そのまま引き抜けば、巻紙(4)を容易に取り外すことができる。なお、図5(b)は図5(a)を横方向から見た図、図5(c)は引き抜いた巻紙(4)の図である。
【0007】
ところが、近年、マスタの高画質化のために、平滑性が高く、コシの弱いマスタが使用されるようになってきている。このようなマスタの場合には、マスタ表面が滑りやすく、ロール状のマスタに巻きズレやしわが発生し易い。そこで、特許文献1には、図6(a)に示すように、巻紙端部(4c)を、ロールの巻き端部下面に挟み込むことが提案されている。この方法によると、マスタ(1)のズレを抑えることができると共に、巻紙(4)自身のズレも抑えることができるため、巻紙ズレによるしわも抑えることができる。
しかし、前記特許文献1の場合、接着部を外し巻紙(4)を取り外す際に巻紙(4)を引き出す操作は、マスタ(1)を介して巻紙端部(4c)を締め付ける操作になるため、図6(b)及び(c)に示すように、巻紙端部(4c)が固定され、引き抜きが容易ではない。そのため、オペレーターの作業性が悪く、巻紙(4)でマスタ(1)を強く締め付けることによってマスタ(1)にしわが発生する場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ロール状に巻成されたマスタに巻きズレが発生しないようにマスタの巻き端部に挟み込んだ巻紙を取り外す際に、容易に且つマスタにしわを発生させることなく取り外すことができるロール状の感熱孔版印刷用マスタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、次の1)〜3)の発明によって解決される。
1) ロール状に巻成されたマスタの先端部と該マスタの外周面との間にシート部材の一端部が挟み込まれ、シート部材はマスタ外周面を一回りして巻装され、その他端部が該シート部材の外周面と接合されることによって、マスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、かつ、その小さい方の破断強度を510N/m以下としたことを特徴とする感熱孔版印刷用マスタ。
2) ロール状に巻成されたマスタの先端部と該マスタの外周面との間にシート部材の一端部が挟み込まれ、シート部材はマスタ外周面を一回りして巻装され、その他端部が該シート部材の外周面と接合されることによって、マスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、前記シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の面に、巻き付け方向に対し横方向にミシン目を設けることにより、シート部材の破断強度を510N/m以下としたことを特徴とする感熱孔版印刷用マスタ。
3) 前記粘着テープの粘着面側の一端部に非粘着部が設けられていることを特徴とする1)又は2)記載の感熱孔版印刷用マスタ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロール状に巻成されたマスタに巻きズレが発生しないようにマスタの巻き端部に挟み込んだ巻紙を取り外す際に、容易に且つマスタにしわを発生させることなく取り外すことができるロール状の感熱孔版印刷用マスタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】孔版印刷機の概略側面図。(a)〜(d)は装置を操作した状態を示す。
【図2】マスタの構成を示す概要図。
【図3】粘着テープ(7)等によってロールの巻き端部を直接止めた場合を示す図。
【図4】(a)はロールの巻き端部止めに巻紙(4)を用いる場合を示す図。(b)はロールの巻き端部止めに巻紙(4)を用い、巻紙(4)が重なった部位を粘着テープ(7)等で固定した状態を示す図。
【図5】(a)はマスタを機械に装着した後にロールの巻き端部止め部材を外す場合の説明図。(b)は(a)の状態を横方向から見た図。(c)は引き抜いた巻紙(4)を示す図。
【図6】(a)は特許文献1の巻紙端部(4c)をロールの巻き端部下面に挟み込む場合を示す図。(b)は巻紙端部(4c)が固定され、引き抜きが容易ではない状態を示す図。(c)は(b)の状態を横方向から見た図。
【図7】粘着テープ(7)の一例の側面図。
【図8】本発明における紙の縦方向と横方向を示す図。
【図9】巻紙をマスタに巻き付ける場合の「縦目巻き」と「横目巻き」の説明図。
【図10】(a)は横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を、横目巻きで使用する場合の説明図。(b)は横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を横目巻きで使用する場合の説明図。(c)は粘着テープ部の巻紙に破れ(8)が生じた状態を示す図。(d)は巻紙自身が横方向に二分され、新たな巻紙の他端(6a)が発生した状態を示す図。(e)は破断により生じた巻紙端部(6b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれる状態を横方向から見た図。(f)は引き抜いた後の巻紙を示す図。
【図11】(a)は巻紙の横方向の破断強度が510N/mを超える場合の巻紙の状態を示す図。(b)は巻紙の横方向の破断強度が510N/mを超える場合の巻紙を引き抜く状態を横方向から見た図。
【図12】(a)は横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を縦目巻きとした場合に粘着テープを引いた際の状態を示す図。(b)は巻紙を取り出した図〔(a)の正面から見たもの〕。(c)は巻紙を取り出した図〔(a)の裏面から見たもの〕。(d)は引き抜き困難な状態の時の実際の状態を示す図。
【図13】(a)は巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)に対し、マスタ(1)に接触している側の面にミシン目(6)を設けた例を示す図。(b)は巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)に対し、マスタ(1)に接触している側の面にミシン目(6)を設けた例を示す図。(c)は巻紙が横方向に二分されることによって、新たな巻紙の二つの端部(6a、6b)が発生する状態を示す図。(d)は新たな巻紙の他端(6a)、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれる状態を横方向から見た図。(e)は引き抜いた後の巻紙を示す図。
【図14】(a)は巻紙後端部側の接着部の中央上面に山型のミシン目(6)を設けた例を示す図。(b)は巻紙後端部側の接着部の中央上面に山型のミシン目(6)を設けた例を示す図。(c)は粘着テープ(7)を引いた際に、巻紙(4)の新たな二つの端部(6a、6b)が発生する状態を示す図。(d)は新たな巻紙の他端(6a)、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれる状態を横方向から見た図。(e)は引き抜いた後の巻紙(4)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明は、前述のように、シート部材(巻紙)同士を接合する手段として粘着テープを用いるものである。粘着テープは一般的なものでよいが、巻紙から引き剥がす際に、粘着テープ自身が破断しないくらいの十分な強度のものを用いる。また、巻紙に対して十分な粘着力があるものを用いる。
図7は粘着テープ(7)の一例の側面図である。粘着面(7a)に対し、一端部に折り返しを入れて、非粘着面(7b)が作製してある。また、折り返しの代わりにフィルム等の非粘着物を貼り付けて非粘着部を作製してもよい。このことによりオペレーターが巻紙を取り外す際に、非粘着面(7b)又は非粘着部を持って粘着テープを剥がすことが可能となり、作業性が向上すると共に、非粘着面がない場合に、オペレーターが爪などで粘着テープを剥ぎ取ることによってマスタを傷つけてしまうことを防止できる。
【0013】
一般に紙には繊維配向性があるため、縦方向と横方向では強度に違いが見られる。
本発明では、図8に示すように、繊維配向方向で破断強度が大きい側を「縦」、繊維配向に垂直方向で破断強度が小さい側を「横」と表現する。
また、図9に示すように、原材料の紙から巻紙を切り出す際、「縦」に長く(巻紙を長手方向に引張った時に強度が大きい方向で巻紙を切り出して)マスタに巻き付ける場合を「縦目巻き」と表現し、逆に「横」に長く(巻紙を長手方向に引張った時に強度が小さい方向で巻紙を切り出して)マスタに巻き付ける場合を「横目巻き」と表現する。
【0014】
通常コピー用紙等に使用される上質紙の坪量は60g/m2前後であるのに対し、本発明では、坪量が5〜30g/m2の低坪量の巻紙(化繊紙を含む)を使用する。
また、本発明では、横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を、図10(a)及び(b)に示すように、横目巻きで使用する。こうすると、粘着テープ(7)を引いた際に、巻紙の破断強度が510N/m以下と弱い為、図10(c)に示すように、粘着テープ部の巻紙に破れ(8)が生じる。更に粘着テープ(7)を引くと、巻紙の横の破断強度が低く、更に巻紙が横目巻に巻かれているため、破断面は繊維の配向に沿って巻紙の巻き付け方向に対し横方向に広がり、最終的には図10(d)に示すように、巻紙自身が横方向に二分される。その結果、新たな巻紙の他端(6a)が発生し、この面は抑えられていないので、図10(e)に示すように、破断により生じた巻紙端部(6b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれ、巻紙を容易に引き抜くことができる。図中の(4b)は巻紙(4)の巻き外側の端部である。引き抜いた後の巻紙を図10(f)に示す。なお、破断強度が極端に弱すぎると、巻紙を巻きつける際に破れてしまうことがあり、作業性が悪いため、破断強度の下限は50N/m程度である。
【0015】
巻紙の横方向の破断強度が510N/mを超える場合には、図11(a)及び(b)に示すように、粘着テープ(7)を引いた際に、粘着テープ(7)が巻紙の表層のみを破る(層間剥離)ことによって取り外されてしまうため、巻紙が破断することなく、挟み込んだ巻紙端部(4c)がマスタ(1)及び巻紙自身により抑えられることにより抜き取りが困難となり、マスタ(1)にしわが発生する場合がある。
【0016】
横方向の破断強度が510N/m以下の巻紙を縦目巻きとした場合には、粘着テープを引いた際に、図12(a)に示すように、粘着テープ部の巻紙に破れは生じるものの、粘着テープを引いた後の破断面は繊維の配向に沿って巻き付け方向に広がり、巻き付け方向と垂直な方向に破断せずに巻紙の引き抜きが困難となり、しわが発生する場合がある。
図12(b)及び(c)に巻紙を取り出した図を示す。図12(b)は図12(a)の正面から見たものであり、図12(c)は図12(b)を裏側から見たものである。
なお、実際には引き抜き困難な状態の時は、図12(d)に示すように、図12(c)におけるA部同士がつながったままとなっているが、便宜上、繊維の配向に沿って最後のA部まで破断した図を示している。
巻紙の幅や粘着テープの幅は、粘着テープを引いた際に、巻紙自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるように適宜調整される。通常は巻紙の幅は20〜160mm程度、粘着テープの幅は10〜50mm程度である。
【0017】
本発明の第二の形態は、巻紙の横方向の強度を強制的に弱くするものである。
図13(a)及び(b)に示したのは、巻紙(4)と粘着テープ(7)の接着部のうち、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)に対し、マスタ(1)に接触している側の面にミシン目(6)を設けた例である。ミシン目(6)の位置は、粘着テープ(7)の接着面近郊に設定される。
オペレーターが粘着テープ(7)の非粘着面(7b)に指をかけて粘着テープ(7)を引いた際に、巻紙(4)がミシン目(6)に沿って横方向に二分されるように、ミシン目が作成されている。巻紙が横方向に二分されることによって、図13(c)に示すように、新たな巻紙の二つの端部(6a、6b)が発生する。図13(d)に示すように、この他端部(6a)はどの面からも抑えられていないフリー状態であるから、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれ、巻紙を容易に引き抜くことができ、しわの発生が防止される。引き抜いた後の巻紙を図13(e)に示す。
このように、ミシン目を設けることによって、巻紙自身の破断強度が510N/mを超えていても、破断強度を510N/m以下として巻紙を横方向に破断させることができる。
【0018】
更に、図14(a)及び(b)に示したのは、巻紙後端部側の接着部の中央上面に山型のミシン目(6)を設けた例である。
オペレーターが粘着テープ(7)の非粘着面(7b)に指をかけて粘着テープ(7)を引いた際に、先ず始めに、巻紙(4)と粘着テープ(7)との接着部を起点として、山型のミシン目(6)の山の部分が破れる。更に、そのまま粘着テープ(7)を引くことにより、山型のミシン目(6)に沿って順次巻紙(4)が横方向に二分され、図14(c)に示すように、巻紙(4)の新たな二つの端部(6a、6b)が発生する。このうち他端部(6a)はどの面からも抑えられていないフリー状態であるから、図14(d)に示すように、巻紙(4)の巻き外側の端部(4b)と共に、挟み込んだ巻紙端部(4c)が同時に引き抜かれ、巻紙(4)を容易に引き抜くことができる。引き抜いた後の巻紙(4)を図14(e)に示す。ミシン目を山型にすることにより、よりスムーズにミシン目が破れる。
巻紙の強度や幅によって、粘着テープを引いた際に巻紙が横方向に二分されるように、ミシン目の大きさやピッチ、粘着テープの幅は適宜調整される。通常、ミシン目の大きさは、切断部が0.5〜4mm程度、つなぎ部が0.5〜2mm程度である。
【実施例】
【0019】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0020】
<破断強度の測定>
3種類の巻紙を用意し、これらの材料から、23℃50%RHの環境下で、幅15mm、長さ120mmのサンプルをそれぞれ5枚採取した。これらのサンプルを、SHIMADZU AUTOGRAPH AGS−Jにより試験長50mmで把持し、試験速度20mm/minで破断するまで引張り、最大荷重をサンプル幅で除して巻紙1〜3の破断強度を求めた。測定は1枚ずつ行い、5枚の平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0021】
実施例1〜3、比較例1〜2
ニチバン社製のセロテープ(登録商標)CT−24(幅24mm)を長さ80mmに切り出し、実施例1は折り返し無しで、その他の実施例及び比較例は、その一端面を10mm折り返して非粘着部を作成した。
巻紙は表1の実施例及び比較例の各欄に示す巻紙1〜3の材料を幅80mm長さ400mmに切り出して使用した。
ロール状に巻成されたマスタ(ロール状マスタ)への巻紙の挟み込みは100mmとし、ロール状マスタの外周面を一周して巻装し、実施例1以外の実施例及び比較例は、巻紙の最外周端部(ロール状マスタに挟み込んでいる側と反対側)の面に、粘着テープの非粘着部とは反対の端部側を貼り付け、巻紙の円周上に沿って非粘着部側をロール状マスタに接触している側の巻紙に接着した。実施例1は非粘着部を設けていないため、端部の区別無く、同様に接着した。
【0022】
巻紙を巻装したロール状マスタを、リコー社製の印刷機A410にセットした状態で、巻紙の取り外しを合計5回行い、「破断」「しわ」「マスタ傷」について次の基準で評価した。
結果を表1に示す。
〔破断の評価基準〕
○:巻紙が5回とも巻きつけ方向に対し横方向に破断した場合
×:1回以上、巻きつけ方向に対し横方向に破断しなかった場合
〔しわの評価基準〕
○:5回ともマスタにしわが発生しなかった場合
×:1回以上、マスタにしわが発生した場合
〔マスタ傷の評価基準〕
△:粘着テープを取り外した際に、マスタに傷がついた場合(実使用上問題無し)
○:粘着テープを取り外した際に、マスタに傷がつかなかった場合
【0023】
【表1】
【0024】
実施例1〜3では、粘着テープを引いた際に巻紙に破れが生じ、更に粘着テープを引くと、破断面は巻紙の繊維の配向に沿って巻紙の巻き付け方向に対し横方向に広がり、最終的には巻紙自身が横方向に二分されて、巻紙を容易に引き抜くことができた。
また、実施例1では粘着テープに非粘着部を設けておらず、粘着テープを引く際に巻紙から爪で剥ぎ取ったため、粘着テープの端面部分のマスタに傷が付いてしまう場合があった(但し、実使用上は問題無いレベルであった)。これに対し、実施例2、3ではマスタの同部分に傷は見られなかった。
一方、比較例1では、粘着テープを引いた際に、巻紙に破れは生じず、巻紙の表層のみが破れて(層間剥離)、粘着テープが取り外されてしまう為〔図11(a)参照〕、巻紙が破断することなく、巻紙の挟み込み部がロール状マスタ及び巻紙自身により抑えられて抜き取りが困難となり、マスタにしわが発生した場合があった。
また、比較例2は、実施例1の横目巻きを縦目巻きに変えたものである。この例では、粘着テープを引いた際に、粘着テープ部の巻紙に破れが生じたものの、縦目巻きとしたため、粘着テープを引いた後の破断面は巻紙の繊維の配向に沿って巻き付け方向に広がり、巻き付け方向と垂直な方向に破断することはなく、巻紙の引き抜きが困難となり、しわが発生した場合があった。
【0025】
実施例4
住友スリーエム社製粘着テープNo.313(幅48mm)を長さ80mmに切り出し、その一端面を10mm折り返して非粘着部を作成した。
巻紙は表1の巻紙3を横目巻きになる様に、幅55mm長さ400mmで切り出した。
ロール状に巻成されたマスタ(ロール状マスタ)への巻紙の挟み込みは100mmとし、ロール状マスタの外周面を一周して巻装し、巻紙の最外周端部(ロール状マスタに挟み込んでいる側と反対側)の面に、粘着テープの非粘着部とは反対の端部側を貼り付け、巻紙の円周上に沿って非粘着部側をロール状マスタに接触している側の巻紙に接着した。巻紙には、粘着テープ貼り付けの近郊のマスタに接触している面に、予め巻き付け方向に対し横方向にミシン目を設けた。ミシン目の切断長さは3mmで、つなぎ長さは1mmとした。
実施例1と同様な試験を実施したところ、粘着テープを引いた際にミシン目に沿って巻紙に破れが生じ、最終的には巻紙自身が横方向に二分されて、巻紙を容易に引き抜くことができた。
【符号の説明】
【0026】
1 マスタ
2 紙管
4 巻紙
4a 巻紙のマスタに接触している側の端部
4b 巻紙の巻き外側の端部
4c 巻紙端部
6 ミシン目
6a 巻紙の新たな端部
6b 巻紙の新たな端部
7 粘着テープ
7a 粘着面
7b 非粘着面
8 巻紙の破れ
100 感熱孔版印刷装置
101 製版ユニット
102 給紙搬送ユニット
103 印刷ユニット
104 排紙ユニット
105 排版ユニット
106 原稿読み取りユニット
107 フランジ部材
108 フランジ部材の端面
109 フランジ部材の他端面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2002−120470公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻成されたマスタの先端部と該マスタの外周面との間にシート部材の一端部が挟み込まれ、シート部材はマスタ外周面を一回りして巻装され、その他端部が該シート部材の外周面と接合されることによって、マスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、かつ、その小さい方の破断強度を510N/m以下としたことを特徴とする感熱孔版印刷用マスタ。
【請求項2】
ロール状に巻成されたマスタの先端部と該マスタの外周面との間にシート部材の一端部が挟み込まれ、シート部材はマスタ外周面を一回りして巻装され、その他端部が該シート部材の外周面と接合されることによって、マスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、前記シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の面に、巻き付け方向に対し横方向にミシン目を設けることにより、シート部材の破断強度を510N/m以下としたことを特徴とする感熱孔版印刷用マスタ。
【請求項3】
前記粘着テープの粘着面側の一端部に非粘着部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の感熱孔版印刷用マスタ。
【請求項1】
ロール状に巻成されたマスタの先端部と該マスタの外周面との間にシート部材の一端部が挟み込まれ、シート部材はマスタ外周面を一回りして巻装され、その他端部が該シート部材の外周面と接合されることによって、マスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、かつ、その小さい方の破断強度を510N/m以下としたことを特徴とする感熱孔版印刷用マスタ。
【請求項2】
ロール状に巻成されたマスタの先端部と該マスタの外周面との間にシート部材の一端部が挟み込まれ、シート部材はマスタ外周面を一回りして巻装され、その他端部が該シート部材の外周面と接合されることによって、マスタの端部止めが行われている感熱孔版印刷用マスタにおいて、前記接合が粘着テープで行われており、シート部材をマスタから取り外すために粘着テープを引いたとき、シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の接合部を起点として、シート部材自身が巻き付け方向に対し横方向に二分されるようにするため、シート部材の縦方向と横方向のうち破断強度の小さい方を巻き付け方向とし、前記シート部材と粘着テープの接合部のうち、シート部材のマスタに接触している側の面に、巻き付け方向に対し横方向にミシン目を設けることにより、シート部材の破断強度を510N/m以下としたことを特徴とする感熱孔版印刷用マスタ。
【請求項3】
前記粘着テープの粘着面側の一端部に非粘着部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の感熱孔版印刷用マスタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−35162(P2013−35162A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171362(P2011−171362)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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