説明

慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤

下記一般式(1)で表されるアミノアルコキシビベンジル類若しくはその薬学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含むことを特徴とする脳循環代謝改善薬、慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤、並びに、脳循環代謝改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
慢性脳循環不全症は、脳の循環障害に起因し、頭重感、めまいなどの自覚症状が動揺性に出没するが、血管性の器質的病変を示唆する所見が臨床症状上でも、画像診断上でも認められず、かつ一過性脳虚血発作の範疇に属さない病態に付される診断名である。頭重感、めまいなどの自覚症状に対しては、脳循環改善剤(以下、「脳循環代謝改善剤」ということもある。)が有効であると考えられている(非特許文献1)。
【0003】
また、慢性脳循環不全症の長期予後については、今のところ明らかではないが、いったん脳血管障害の発作を起こしてしまえば後遺症を残すことが多いため、慢性脳循環不全症を予防することは重要であると考えられている (非特許文献1)。
【0004】
脳循環代謝改善剤は、脳エネルギー代謝の回復を促す薬剤である。なかには赤血球変形能改善、血小板凝集抑制、血液粘稠度低下等の血液の性状を改善することにより脳循環を増加させる作用を示すものもある。現在、脳循環代謝改善剤としては、シチコリン、GABA等の脳の生理的活性物質や、ニセルゴリン、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン等の脳循環改善剤などが用いられている。
【0005】
また、脳循環代謝改善剤は、通常、臨床症状の観察等により評価されるが、近年、脳波測定による客観的評価も試みられている。脳波と脳循環代謝改善剤との相関関係についてはこれまで様々な検討が加えられており、例えば、脳血流や脳代謝が低下すると、α波が減少し、徐波(δ波+θ波)が増加することが明らかになっている(非特許文献2、3及び4参照)。
【0006】
ところで、セロトニン(5−HT)受容体に対する特異的な拮抗剤として、下記一般式
【0007】
【化1】







【0008】
〔式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、又はC〜Cのジアルキルアミノ基を表わし、Rは水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cのアルコキシ基を表わし、Rは水素原子、ヒドロキシル基、−O−(CH−COOH(式中、nは1〜5の整数を表わす。)又はO−CO−(CH−COOH(式中、lは1〜3の整数を表わす。)を表わし、Rは−N(R)(R)(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cのアルキル基を表わす。)又は
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Aはカルボキシル基で置換されていてもよいC〜Cのアルキレン基を表わす。)を表わし、mは0〜5の整数を表わす。〕
で表されるアミノプロポキシビベンジル類が知られており、このアミノプロポキシビベンジル類は脳循環障害、虚血性心疾患、末梢循環障害等の疾患における、血栓生成及び血管収縮に基づく種々の微小循環障害の改善に有効である (特許文献1参照)。
【0011】
また、非特許文献5には、上記アミノプロポキシビベンジル類の好ましい化合物の一つである(±)−1−〔O−〔2−(m−メトキシフェニル)エチル〕フェノキシ〕−3−(ジメチルアミノ)−2−プロピル水素スクシナートの塩酸塩、すなわち塩酸サルポグレラートの作用が、血小板及び血管平滑筋における5−HTレセプターに対する特異的な拮抗作用であることが記載されている。
【0012】
しかしながら、このアミノプロポキシビベンジル類が慢性脳循環不全症に有効であることや脳波を改善させること、さらには、脳血流を増加させることは、これまでに知られていない。
【特許文献1】特開平2−304022号公報
【非特許文献1】矢崎義雄監修、脳血管障害の成因 脳血管障害シリーズ1、第197頁、現代医療社、1998年
【非特許文献2】臨床脳波、第33巻第7号第449頁(1991年)
【非特許文献3】臨床脳波、第39巻第10号第653頁(1997年)
【非特許文献4】臨床脳波、第36巻第10号第634頁(1994年)
【非特許文献5】治療剤マニュアル2003、第937頁、医学書院
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療作用を有し、脳循環代謝改善作用を有する医薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、5−HT受容体の拮抗薬として知られるアミノプロポキシビベンジル類が上記作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(1)で表されるアミノアルコキシビベンジル類若しくはその薬学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含むことを特徴とする慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤、並びに、脳循環代謝改善剤に存する。
【0016】
【化3】

【0017】
〔式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、又はC〜Cのジアルキルアミノ基を表わし、Rは水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cのアルコキシ基を表わし、Rは水素原子、ヒドロキシル基、C〜Cのアシロキシ基、−O−(CH−COOH(式中、nは1〜5の整数を表わす。)又はO−CO−(CH−COOH(式中、lは1〜3の整数を表わす。)を表わし、Rは−N(R)(R)(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cのアルキル基を表わす。)又は
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、Aはカルボキシル基で置換されていてもよいC〜Cのアルキレン基を表わす。)を表わし、mは0〜5の整数を表わす。〕
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤、並びに、脳循環代謝改善剤は、平均血圧を変化させずに後頭部において徐波を減少させ、α波を増加させることにより、慢性脳循環不全症を予防又は治療する効果を有し、さらに脳循環代謝を改善する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書において、一般式(1)で表される化合物におけるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子及び弗素原子等が挙げられる。
【0022】
〜Cのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基及びペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
〜Cのジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及びメチルエチルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
〜Cのアシロキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基バレリル基及びイソバレリルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
〜Cのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等が挙げられる。
【0026】
としては、水素原子、弗素原子、塩素原子、メトキシ基又はジメチルアミノ基、メトキシ基が好ましく、3位又は4位、特に3位に置換しているのが好ましい。
【0027】
としては、水素原子、塩素原子又はメトキシ基、特に水素原子が好ましく、3位に置換しているのが好ましい。
【0028】
としてはヒドロキシル基、−O−(CH−COOH又はO−CO−(CH−COOHが好ましく、nとしては2が、lとしては2が好ましい。
【0029】
としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及びメチルエチルアミノ基、並びにトリメチレンアミノ基、ペンタメチレンアミノ基、3−カルボキシペンタメチレンアミノ基等が挙げられ、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ペンタメチレンアミノ基又は3−カルボキシペンタメチレンアミノ基が好ましい。
【0030】
mとしては、0〜4の整数、特に1が好ましい。
【0031】
なお、アミノアルコキシ基は、2〜4位のいずれかの位置、特に4位に置換しているのが好ましい。
【0032】
一般式(1)で表される化合物のうち、好ましいもののいくつかを表−1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】


【0035】
これらの化合物のうち、下記式(2)で表されるNo.14の化合物、
【0036】
【化5】


【0037】
又は下記式(3)で表されるNo.15の化合物が好ましい。
【0038】
【化6】


【0039】
薬学的に許容される塩としては、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸及び硝酸等の無機酸;酢酸、プロピオン酸、蓚酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸及び安息香酸等のカルボン酸;トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸等のスルホン酸などの塩が挙げられる。
【0040】
本発明に係る慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤、並びに、脳循環代謝改善剤に用いる化合物として特に好ましいのは、下記式(4)で表わされる(±)−1−〔O−〔2−(m−メトキシフェニル)エチル〕フェノキシ〕−3−(ジメチルアミノ)−2−プロピル水素スクシナート塩酸塩、すなわち塩酸サルポグレラートである。
【0041】
【化7】

【0042】
一般式(1)で表されるアミノアルコキシビベンジル類は、特公昭63−13427号公報に記載の方法又はそれに準じた方法により製造することができる。また、その薬理学的に許容される塩、アミノアルコキシビベンジル類又はこの塩の水和物又は溶媒和物は、この分野において慣用されている方法により製造すればよい。なお、塩酸サルポグレラートを有効成分とする医薬は、三菱ウェルファーマ株式会社よりアンプラーグ(登録商標)として市販されており、本発明ではアンプラーグを使用することもできる。
【0043】
本発明に係る慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤、並びに、脳循環代謝改善剤は、任意の方法により投与することができる。投与方法としては、例えば、皮下注射、静脈内注射及び筋肉注射等の注射剤による非経口投与;錠剤、カプセル剤、粉剤、液剤及びエリキシル剤等による経口投与が挙げられる。
【0044】
本発明に係る慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤、並びに、脳循環代謝改善剤の投与量は、患者の年齢、健康状態、体重等の条件に応じて、適宜、定めればよい。通常は、1日あたり0.5〜50mg/kg体重、好ましくは1〜30mg/kg体重を、1回で又は複数回に分けて投与する。
【0045】
非経口投与用又は経口投与用の製剤は、アミノアルコキシビベンジル類若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物と、慣用の製剤担体とを適当な比率で混合した後、常法により調製することができる。
【実施例】
【0046】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されることはない。
【0047】
実施例1
(方法)
60歳以上の末梢循環不全患者74名(男性40名、女性34名)(表−2)を2群に分け、チクロピジン群(43名)には塩酸チクロピジン300mg/日を、サルポグレラート群(31名)には塩酸サルポグレラート300mg/日を、2年間投与した。なお、チクロピジン群とサルポグレラート群について、平均年齢、男女比、平均血圧に有意差はなかった。
【0048】
【表3】

【0049】
平均血圧を測定した後、国際10−20電極システムに従って配置した12電極(Fp1,Fp2,F3,F4,F7,F8,C3,C4,T5,T6,O1,O2)から、脳波計(EEG7314型ATAMAPII付、日本光電社製)を用いて、16秒間、安静閉眼時の脳波を測定した。2−8Hz(徐波)、8−13Hz(α波)、13−30Hz(速波)の3種類の周波数帯域で脳波を測定し、徐波(%徐波)、α波(%α)及び速波(%速波)の平均%パワーを、全周波数帯域に対する各周波数帯域の比率で表した。
【0050】
平均血圧、%徐波、%α及び%速波を平均±標準偏差で表し、2年間の試験の前後で比較した。また、脳の全領域(Fp1,Fp2,F3,F4,F7,F8,C3,C4,T5,T6,O1,O2)、前頭部(Fp1,Fp2,F3,F4,F7,F8,C3,C4)及び後頭部(T5,T6,O1,O2)において、平均血圧の差(△平均血圧)、%徐波の差(△徐波)及び%速波の差(△速波)を比較した。t-検定(スチューデントのt-検定、又はウェルシュのt-検定)及びpaired t-検定を用い、p<0.05を有意とした。
(結果)
1)平均血圧
平均血圧は、チクロピジン群では97.7±8.8mmHgから98.2±10.5mmHgへ、サルポグレラート群では96.1±10.4mmHgから94.9±12.6mmHgへと変化した。また、△平均血圧は、チクロピジン群では0.4±9.6mmHg、サルポグレラート群では−1.3±9.2mmHgであった。チクロピジン群及びサルポグレラート群とも、平均血圧、△平均血圧に有意差はなかった。
2)脳波
a)全領域
チクロピジン群の%徐波、%α及び%速波は、それぞれ46.1±16.4%から47.7±16.5%へ、37.0±14.3%から36.5±15.9%へ、16.9±8.5%から15.8±7.3%へと変化したが、有意差はなかった。
【0051】
サルポグレラート群の%徐波は、47.7±13.5%から43.1±13.1%へと低下する傾向を示した。(p=0.095)。また、%α及び%速波は、38.2±12.5%から42.2±12.3%へ、14.1±5.2%から14.7±5.7%へと変化したが、有意差はなかった。
【0052】
チクロピジン群と比較すると、サルポグレラート群では△徐波が有意に低下した(1.5±12.8%対−4.5±14.6%、p=0.062)。一方、△α及び△速波には有意差がなかった(−0.4±12.4%対4.0±14.2%、−1.1±6.1%対0.5±6.0%)。
b)前頭部
チクロピジン群及びサルポグレラート群について、%徐波、%α及び%速波、並びに△徐波、△α及び△速波に有意差はなかった。
c)後頭部
チクロピジン群では、%徐波、%α及び%速波、並びに△徐波、△α及び△速波に有意差はなかった。
【0053】
サルポグレラート群では、%徐波が14.0±5.0%から12.0±4.6%へと有意に減少した(p=0.024)。また、%αは14.6±4.7%から16.4±4.4%へと有意に増加した(p=0.049)。
【0054】
チクロピジン群と比較すると、サルポグレラート群では△徐波が有意に減少し(0.7±4.5%対−2.0±4.8%、p=0.013)、△αが有意に増加した(−0.5±4.2%対1.8±4.9%、p=0.034)。
3)△徐波及び△αと△平均血圧との関係
a)脳の全領域
チクロピジン群では、△平均血圧が−2mmHg〜19mmHgの範囲で(条件付き△平均血圧−2〜19mmHg)、△平均血圧と△徐波との間に有意に負の相関が観察された(相関係数;r=0.37034、p値;p=0.0369)。また、△平均血圧−6〜19mmHgの範囲では、△平均血圧と△αとの間に有意に正の相関が観察された(r=0.39395、p=0.0211)。
【0055】
サルポグレラート群では、−25〜18mmHgの範囲では、△平均血圧と△αとの間に正の相関が観察された(r=0.37572、p=0.0407)。
【0056】
上記△平均血圧の範囲において、△徐波がプラスになる△平均血圧は、チクロピジン群では7.1mmHgであった。また、この△平均血圧の範囲において、△αがマイナスになる△平均血圧は、チクロピジン群では5.1mmHg、サルポグレラート群では−8.2mmHgであった。
b)前頭部
チクロピジン群では、△平均血圧が−2〜19mmHgの範囲で、△平均血圧と△α間との間に負の相関が観察された(r=0.38991、p=0.0274)。また、△平均血圧−12〜19mmHgでは、△平均血圧と△αとの間に正の相関が観察された(r=0.33214、p=0.0446)。
【0057】
サルポグレラート群では、△平均血圧が−25〜13mmHgの範囲で、△平均血圧と△αとの間に正の相関が観察された(r=0.39250、p=0.0352)。
【0058】
上記△平均血圧の範囲において、△徐波がプラスになる△平均血圧は、チクロピジン群では5.9mmHgであった。また、この△平均血圧の範囲において、△αがマイナスになる△平均血圧は、チクロピジン群では12.9mmHg、サルポグレラート群では−10.2mmHgであった。
c)後頭部
チクロピジン群では、条件付き△平均血圧が10〜19mmHgの範囲で、△平均血圧と△徐波との間に負の相関(r=0.89053、p=0.0173)、△平均血圧と△αとの間に正の相関(r=0.85160、p=0.0314)が観察された。
【0059】
サルポグレラート群では、△平均血圧が−25〜−3mmHgの範囲で、△平均血圧と△徐波との間に負の相関(r=0.65924、p=0.0381)が観察された。また、△平均血圧が−25〜19mmHgの範囲では、△平均血圧と△αとの間に正の相関(y=0.200x+2.0436、r=0.37873、p=0.0356)が観察された。
【0060】
上記△平均血圧の範囲内において、△徐波がプラスになる△平均血圧は、チクロピジン群では14.3mmHg、サルポグレラート群では−14.7mmHgであった。また、この△平均血圧の範囲において、△αがマイナスになる△平均血圧は、チクロピジン群では12.9mmHg、サルポグレラート群では−10.2mmHgであった。
【0061】
ところで、塩酸チクロピジン及び塩酸サルポグレラートは、ともに血小板凝集抑制作用及び赤血球変形能改善作用を有するが、塩酸チクロピジンは平均血圧及び脳波を変化させず、一方、塩酸サルポグレラートは平均血圧を変化させずに後頭部において徐波を減少させ、α波を増加させることが明らかとなった。このことは、脳循環代謝改善作用は、抗血小板作用を有する薬物の全てが有するのではなく、アミノアルコキシビベンジル類に特有の作用であることを示している。
【0062】
以上の試験により、アミノアルコキシビベンジル類は、脳循環代謝を賦活化する効果を有することが明らかになった。したがって、アミノアルコキシビベンジル類は脳循環代謝改善剤や、脳循環代謝障害に起因する疾患の予防及び/又は治療剤として用いることができる。ここで、脳循環代謝障害に起因する疾患としては、冠動脈疾患;慢性動脈閉塞症、閉塞性動脈硬化症等の末梢循環障害;慢性脳循環不全症、一過性脳虚血発作、椎骨脳底動脈循環障害症、脳血栓症等の虚血性脳血管障害などが挙げられ、これらのうち慢性脳循環不全症が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
アミノアルコキシビベンジル類は、脳循環代謝を賦活化する効果を有するので、脳循環代謝改善剤や慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤として有用である。

なお、本出願は、日本で出願された特願2004−25285号を優先権主張して出願されたものであり、その内容は本明細書にすべて包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアミノアルコキシビベンジル類若しくはその薬学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含むことを特徴とする慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤。
【化1】


〔式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、又はC〜Cのジアルキルアミノ基を表わし、Rは水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cのアルコキシ基を表わし、Rは水素原子、ヒドロキシル基、C〜Cのアシロキシ基、−O−(CH−COOH(式中、nは1〜5の整数を表わす。)又はO−CO−(CH−COOH(式中、lは1〜3の整数を表わす。)を表わし、Rは−N(R)(R)(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cのアルキル基を表わす。)又は
【化2】


(式中、Aはカルボキシル基で置換されていてもよいC〜Cのアルキレン基を表わす。)を表わし、mは0〜5の整数を表わす。〕
【請求項2】
アミノアルコキシビベンジル類が、下記式(2)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1記載の慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤。
【化3】

【請求項3】
アミノアルコキシビベンジル類が、下記式(3)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1記載の慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤。
【化4】

【請求項4】
薬学的に許容される塩が、塩酸塩であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の慢性脳循環不全症の予防及び/又は治療剤。
【請求項5】
下記一般式(1)で表されるアミノアルコキシビベンジル類若しくはその薬学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含むことを特徴とする脳循環代謝改善剤。
【化5】


〔式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、又はC〜Cのジアルキルアミノ基を表わし、Rは水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cのアルコキシ基を表わし、Rは水素原子、ヒドロキシル基、C〜Cのアシロキシ基、−O−(CH−COOH(式中、nは1〜5の整数を表わす。)又はO−CO−(CH−COOH(式中、lは1〜3の整数を表わす。)を表わし、Rは−N(R)(R)(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cのアルキル基を表わす。)又は
【化6】


(式中、Aはカルボキシル基で置換されていてもよいC〜Cのアルキレン基を表わす。)を表わし、mは0〜5の整数を表わす。〕
【請求項6】
アミノアルコキシビベンジル類が、下記式(2)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項5記載の脳循環代謝改善剤。
【化7】

【請求項7】
アミノアルコキシビベンジル類が、下記式(3)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項5記載の脳循環代謝改善剤。
【化8】

【請求項8】
薬学的に許容される塩が、塩酸塩であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の脳循環代謝改善剤。

【国際公開番号】WO2005/072724
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517565(P2005−517565)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001455
【国際出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】