説明

懸濁剤含有スラリーとその製造法、及び、それを用いた懸濁重合法

【目的】 懸濁重合に際し粒度分布の狭いビニル系重合体を得ることができるという優れた懸濁剤性能を持つと共に、その性能を長期間維持でき、また高濃度にした場合でも同等の性能を有する懸濁剤含有スラリーの提供、及び、該懸濁剤含有スラリーを効率よく得る製造方法の提供。
【構成】 無機系懸濁剤粒子及び分散安定剤を含む懸濁剤含有スラリーであって、無機系懸濁剤の粒子径が最小粒径からの95%重量累積粒径値が1μm以下である懸濁剤含有スラリー、無機系懸濁剤粒子を水性媒体中、分散安定剤の存在下で、最小粒径からの95%重量累積粒径値が1μm以下になるまで解砕する、懸濁剤含有スラリーの製造方法、及び、ビニル系単量体を重合開始剤、懸濁剤およびアニオン系界面活性剤を含む水性媒体中で懸濁重合させる方法において、該単量体100重量部に対して、該懸濁剤含有スラリーを無機系懸濁剤粒子の固形分で0.01〜10重量部用いる懸濁重合法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、懸濁重合に際し粒度分布の狭いビニル系重合体を得ることができるという優れた懸濁剤性能を持つと共に、その性能を長期間維持でき、また高濃度にした場合でも同等の性能を有する懸濁剤含有スラリー、及び、該懸濁剤含有スラリーを効率よく得る製造方法、更には、該懸濁剤含有スラリーを用いることにより、粒度分布の狭いビニル系重合体を効率よく製造できる懸濁重合法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、懸濁重合用の懸濁剤としては、水及び無機系懸濁剤粒子からなるスラリー型懸濁剤が一般的であるが、その無機系懸濁剤粒子は、最小粒径からの95%重量累積粒径値が20〜30μm、重量平均粒子径が2〜3μm程度のものが主流である。
【0003】このスラリー型懸濁剤中の無機系懸濁剤粒子は経時的に凝集して粗大化しやすく、粗大化した無機系懸濁剤粒子を含有するスラリー型懸濁剤を用いて懸濁重合を行うと、得られる重合体粒子径が粗大化あるいは集塊するという問題が生じ、懸濁剤としての性能を長期に亘って維持することが困難であった。また、無機系懸濁剤粒子が粗大化していないスラリー型懸濁剤を用いて重合を行っても、懸濁重合により得られた重合体粒子の粒度分布は広くなりやすく、一定の粒径範囲を持つ重合体粒子を得ようとすると収率が低下するという問題があった。
【0004】一方、粒度分布を狭くしようとして、重合に用いられる水分散媒相に各種塩類を添加したり、重合初期の水分散媒相の水素イオン濃度を制御することが試みられているが、これら方法によると、懸濁剤粒子、特に懸濁剤粒子が小粒径の場合に凝集しやすくなり、見掛け上の懸濁剤粒子径が、一次粒子径よりもはるかに大きくなり、最終的に得られる重合体粒子の粒子径が大きくなるという問題が生じた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】最終的に得られる重合体粒子の粒子径は一般に、少ない懸濁剤の量で1mm前後のものを収率良く得られるのが好まれるため、懸濁剤粒子の粒子径を小さくしようとする試みがなされている。
【0006】その方法としては、例えば、特定の無機系懸濁剤を合成する方法や、無機系懸濁剤をグライディングする方法が挙げられる(特開平4−309504号公報参照)が、前者の方法では、特別な原料を用意しなくてはならないという問題が、また後者の方法では、粒子径の小さい無機系懸濁剤粒子が得られるものの、いまだ粒子径は充分小さいものとはいえず、グライディングの際の摩擦による発熱に伴うスラリーの粘度上昇や、懸濁剤粒子同士の熱凝集が生じやすい。この為、この方法では目的の粒子径の懸濁剤が得られにくく、また、スラリーの粘度の上昇により取り扱い性も悪い。
【0007】そのため少しでも前記問題点を解決するために約10重量%以下と極端に懸濁剤濃度の低い条件でグライディングしなくてはならず、そのようにすると懸濁剤スラリーの発熱や、熱凝集による粘度上昇の問題は少なくなるものの、粉砕効率が低いために、大きなスケールで処理を行うには、長時間を要するので、工業的に不利になるという問題があるのが現状である。
【0008】本発明は、かかる従来の問題点に鑑みて為されたものであり、懸濁重合に際し粒度分布の狭いビニル系重合体を得ることができるという優れた懸濁剤性能を持つと共に、その性能を長期間維持でき、また高濃度にした場合でも同等の性能を有する懸濁剤含有スラリーの提供、及び、該懸濁剤含有スラリーを効率よく得る製造方法の提供、更には、該懸濁剤含有スラリーを用いることにより、粒度分布の狭いビニル系重合体を効率よく製造できる懸濁重合法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記問題点を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、粒径の小さい無機系懸濁剤粒子に分散安定剤を存在させた懸濁剤含有スラリーを用いると、優れた懸濁剤性能を持つと共に、その性能を長期間維持できることを見出し、本発明を想到するに至った。
【0010】即ち、本発明は、無機系懸濁剤粒子及び分散安定剤を含む懸濁剤含有スラリーであって、該無機系懸濁剤の粒子径が最小粒径からの95%重量累積粒径値が1μm以下であることを特徴とするものである。またその製造方法として、本発明は無機系懸濁剤粒子を水性媒体中、分散安定剤の存在下で、95%重量累積粒径値が1μm以下まで解砕することを特徴とするものである。
【0011】更にまた、ビニル系単量体を重合開始剤、懸濁剤およびアニオン系界面活性剤を含む水性媒体中で懸濁重合させる方法において、懸濁重合系の単量体100重量部に対して、請求項1に記載の懸濁剤含有スラリーを無機系懸濁剤粒子の固形分で0.01〜10重量部用いることを特徴とするものである。本発明の懸濁剤含有スラリーは無機系懸濁剤粒子及び分散安定剤を含有する。
【0012】本発明で用いられる無機系懸濁剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、水酸化チタン、或いはカルシウム、マグネシウム、バリウムのリン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、更には、タルク、カオリン、ベントナイト等の水に難溶な無機鉱物等が挙げられる。特に、第3リン酸カルシウム(水酸アパタイト)や、ピロリン酸カルシウム等のリン酸塩と、後述するアニオン系界面活性剤とを組み合わせた系は、均一な粒度分布を持つ重合体を得ることができるので好ましい。
【0013】そして、これら無機系懸濁剤粒子は最小粒径からの重量累積値が全体の重量の95%に達する時の粒子の粒径値(以下d95と略称する場合がある)が1μm以下である必要があり、好ましくは0.5μm以下である。d95が1μmを超えると、懸濁重合によって得られる重合体粒子の粒度分布が広くなるという問題が生じる。
【0014】更に、重合体粒子の粒子径を表す指標である重量平均粒子径(μm)が好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下であると、懸濁重合によって得られる重合体粒子の粒度分布を狭くできるだけではなく、目標とする粒径の重合体粒子を得るために必要な無機系懸濁剤粒子の添加量が少なくて済むので好ましい。
【0015】また、該スラリー中に存在させる分散安定剤としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸などの鎖状縮合リン酸、あるいはトリメタリン酸、テトラメタリン酸、ペンタメタリン酸、ヘキサメタリン酸、オクタメタリン酸などの環状縮合リン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩に代表される無機系分散安定剤または、アクリル酸及びメタクリル酸の重合物またはこれらのアルキルエステルとの共重合物のナトリウム塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、オリゴスチレンスルホン酸ナトリウムに代表される、水酸基、アミド基およびカルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基またはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩を含有する高分子型分散安定剤または、アルキルホスホン酸ナトリウム、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、脂肪酸ジエタノールアミド等の界面活性剤等が挙げられる。
【0016】本発明の懸濁剤含有スラリーにおいて、前記分散安定剤は、該無機系懸濁剤100重量部に対し、0.01重量部〜10重量部の割合で存在するのが好ましく、更に好ましくは0.1重量%〜5重量%である。少なすぎると懸濁剤含有スラリーの性能を長期にわたって維持することが困難であり、また、逆に多すぎると懸濁重合中の液滴の形成が不安定になり重合体粒子径の粗大化や集塊が起こるという問題が生じやすい。
【0017】本発明の懸濁剤含有スラリーの固形分濃度(=無機系懸濁剤粒子濃度)は、所望に調整し得るが、例えば0.05重量%〜50重量%の間、より好ましくは20〜40重量%もの、高濃度に調整し得る。濃度が低すぎると、後述する粉砕機を使用しての製造過程での単位時間当たりの解砕効率が低下し、目的の粒子径の懸濁剤を得るために長時間を要すとともに、輸送や貯蔵にコストや手間が掛かり、工業的に不利である。また濃度が高すぎると、得られる懸濁剤粒子スラリー粘度が増加するために取り扱いが難しくなるという問題が生じる。
【0018】上記本発明の懸濁剤含有スラリーを調製する方法の1つとして、無機系懸濁剤粒子を水性媒体中、分散安定剤の存在下でd95が1μm以下になるまで解砕する方法が挙げられる。
【0019】無機系懸濁剤粒子及び分散安定剤としては前述したものが用いられ、該スラリー中の分散安定剤の存在量は、無機系懸濁剤粒子100重量部に対し0.01〜10重量部好ましくは0.1〜5重量部の範囲であることが望ましい。上記分散安定剤の添加量が少なすぎると解砕効率が低く、目的の粒子径の懸濁剤を得にくい上、調製後の懸濁剤スラリーの粘度が高くなり、取り扱いが困難になる傾向がある。その結果、得られるスラリー中の無機系懸濁剤粒子濃度を必然的に低くせざるを得ず、懸濁剤含有スラリーの高濃度であることの利点を活かせない。また多すぎては、後述の懸濁重合の際、水分散媒体中でのビニル系単量体の分散形態が正常に保てず、重合体粒子の粒径が粗大化したり、場合によっては重合反応中に集塊を引き起こす場合があり好ましくない。
【0020】無機系懸濁剤粒子の解砕方法は、高旋断攪拌機、超音波粉砕機、ハンマークラッシャー、媒体撹拌ミルなどの各種粉砕・攪拌機が使用でき、1種あるいは複数を組み合わせて使用することも可能である。本発明における解砕前後の無機微粒子の粒径・粒度分布は、動的光散乱法による粒度分布測定装置を用いて測定したものとする。
【0021】本発明の懸濁重合方法は、水性媒体中にビニル系単量体、重合開始剤及び本発明の懸濁剤含有スラリーを含有させ、加熱・攪拌、重合させることからなる。本発明の懸濁重合法において使用されるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、クロロスチレンなどのビニル芳香族系化合物が挙げられる。また、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸系ビニル化合物、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸系ビニル化合物、アクリロニトリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン等の架橋性二官能ビニル化合物、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の各種のビニル系化合物を併用してもよい。
【0022】本発明の懸濁重合法において使用される重合開始剤としては、たとえばアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ2メチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の単量体に可溶な開始剤が挙げられる。重合開始剤の使用量は、通常、仕込み単量体の全重量100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましい。
【0023】また、本発明の懸濁重合における本発明の懸濁剤含有スラリーの使用量は、懸濁重合系の単量体100重量部に対して、通常、無機系懸濁剤粒子の固形分で0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜1重量部であるのが好ましい。また、本発明では、粒子径制御、粒度分布の調整あるいは反応器内のポリマー付着や乳化重合物の生成を抑制する目的で、各種電解質を重合時に添加することが可能である。
【0024】電解質としては、水溶液中でイオン解離する物質であり、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等の無機塩類、あるいは酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、ベヘミン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、琥珀酸二ナトリウム、琥珀酸マグネシウム、琥珀酸二カリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸二カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸二カリウム等の水に可溶なカルボン酸のアルカリ金属塩が利用できる。これら電解質は粉体、粒体、若しくは水溶液として重合開始時もしくは重合途中に添加される。
【0025】本発明の懸濁重合法においては、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤や、各種反応性界面活性剤等をビニル系単量体と水性媒体との界面張力を調節する目的で併用することができる。特に、炭素数8〜20のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩等のアニオン系界面活性剤が懸濁重合時の単量体油滴が安定して分散できるという理由から好ましい。その量は、水性媒体100重量部に対して、0.0001〜0.5重量部が好ましい。
【0026】本発明の懸濁重合法においては、必要に応じて、その重合反応系に分子量調整剤としてドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を添加することができる。その連鎖移動剤の使用量は、重合させる全単量体100重量部に対して、通常0.01〜3重量部が好ましい。
【0027】また、本発明の懸濁重合法においては、必要に応じて、重合反応系に例えばジオクチルフタレート等のフタル酸エステル、その他脂肪酸エステル等の可塑剤、及び、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の有機化合物等を添加することができる。
【0028】また、本発明の懸濁重合方法は、その懸濁重合の途中又は懸濁重合終了後に発泡剤を添加して重合体粒子に発泡剤を含有せしめた発泡性重合体粒子の製造方法に適用することができる。その発泡剤としては、例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオブタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタンなどの脂環族炭化水素;塩化メチル、ジクロルフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素等の物理発泡剤;さらには炭酸ガス、窒素、アンモニアなどを発生する化学発泡剤があげられる。これらの発泡剤は1種類を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。発泡剤は、通常、生成重合体粒子中の発泡剤含有量が1〜20重量%になる程度の量が供給される。また、そのビニル系単量体には、気泡形成剤としてのエチレンビスステアリルアミド、メチレンビスステアリルアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等を添加しておくことができる。
【0029】さらに、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、導電化剤、気泡核形成剤、粒度分布調整剤等の一般的に発泡性樹脂粒子の製造に使用されている各種添加剤を適宜添加したり、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等のゴム成分を混合することもできる。
【0030】単量体の水性媒体への添加方法は、予め一括に仕込んでもよいし、徐々に添加しながら行っても良く、ビニル系単量体の仕込量は、水性媒体100重量部に対して、通常、5〜150重量部の範囲であるが、その量は目的とする重合体の粒径等に応じて適宜に調整される。
【0031】本発明の懸濁重合の代表的な実施態様は、たとえば予め製造しておいた懸濁剤スラリーを添加した水性媒体中に、アニオン系界面活性剤、重合開始剤、ビニル系単量体、及び必要に応じて添加する他の成分を仕込み、反応系内の酸素を除去した後、所定の温度で所定時間撹拌しながら懸濁重合を行なわせる。
【0032】
【実施例】以下に、実施例及び比較例をあげてさらに詳述する。
実施例1(懸濁剤含有スラリーの調製)1500gのイオン交換水に10gのトリポリリン酸ナトリウムを溶解させ、粉状の第3リン酸カルシウム(太平化学社製)を500g加え、媒体撹拌ミル(コトブキ技研社製)にて循環させながら15分間解砕した。このときのd95及び重量平均粒子径を動的光散乱方式粒度分布測定装置(大塚電子製)で測定したところ、それぞれ0.46μm及び0.19μmであった。(スラリーの固形分濃度25重量%)
【0033】(懸濁重合)撹拌器付き50リットルのオートクレーブに、イオン交換水20リットル、上記で調製した懸濁剤含有スラリー80g(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8gを投入した。次に撹拌下で、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート45g、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン27g、可塑化剤としてシクロヘキサン270gをスチレンモノマー18kgに溶解させたものを投入した。
【0034】撹拌下で30分間室温で放置した後、1時間かけて90℃まで昇温した。次に90℃から100℃まで5時間半をかけて温度を昇温させ、その途中の4時間目に、ブタン1.7kgをオートクレーブ内に圧入した。更に、100℃から110℃まで1時間半かけて昇温し、2時間保持した。つぎに、室温まで冷却した後、撹拌下で重合体粒子スラリーを採取し、塩酸を添加して懸濁剤粒子を溶解させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(独SYMPATEC社製)にて重合体粒子の粒度分布を測定した。このときの重量平均粒子径は1.06mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、その粒度の下記式で表わされる分散度は0.53と狭いものであった。
【0035】
分散度=(d85−d15)/d50 …(I)
式中のd85、d15およびd50は最小粒径からの重量累積粒径値が全体の重量のそれぞれ85%、15%及び50%に達する時の粒子の粒径値(μm)である。本明細書に記載の分散度とは、上記の式(I)で表わされる分散度を意味する。
【0036】次に重合体粒子スラリーを水洗浄してから遠心分離器にて発泡性樹脂粒子を取り出した。流動乾燥装置で表面付着水分を除去した後、予備発泡機(ダイセン社製)で発泡させたところ、嵩密度15g/lとなった。更に成形機(ダイセン社製)にて成形を行ったところ、発泡粒の大きさが一様で、外観の良い成型品が得られた。
【0037】一方、上記で懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ0.49μm及び0.21μmであった。この懸濁剤含有スラリーを用いて上記と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.10mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.57と粒度分布が狭く、懸濁剤性能の経時変化が極めて小さかった。
【0038】実施例2分散安定剤をヘキサメタリン酸ナトリウムに変えた以外は実施例1と同様に第3リン酸カルシウムを解砕した。このときの懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ0.44μm及び0.18μmであった。つぎに、ここで調製した懸濁剤含有スラリー(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)を用いて、実施例1と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.06mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.55と、粒度分布が狭いものであった。
【0039】次に、上記の懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ0.47μm及び0.19μmであった。この懸濁剤含有スラリーを用いて上記と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.08mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.57と粒度分布が狭く、懸濁剤性能の経時変化が極めて小さかった。
【0040】実施例3分散安定剤として有効成分40%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(サンノプコ社製 商品名ノプコスパース44C)を5g使用した以外は実施例1と同様に第3リン酸カルシウムを解砕した。このときの懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径はそれぞれ0.45μm及び0.19μmであった。
【0041】つぎに、ここで調製した懸濁剤含有スラリー(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.08mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.56と、粒度分布が狭いものであった。
【0042】次に、上記の懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ0.46μm及び0.20μmであった。この懸濁剤含有スラリーを用いて上記と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.10mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.57と粒度分布が狭く、懸濁剤性能の経時変化が極めて小さかった。
【0043】実施例4分散安定剤として有効成分50%の有機ホスホン酸塩水溶液(ヘンケル KGaA社製 商品名ハイドロパラート884)を10g使用した以外は実施例1と同様に第3リン酸カルシウムを解砕した。このときの懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径はそれぞれ0.44μm及び0.18μmであった。
【0044】つぎに、ここで調製した懸濁剤含有スラリー(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.06mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.55と、粒度分布が狭いものであった。
【0045】次に、上記の懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ0.45μm及び0.19μmであった。この懸濁剤含有スラリーを用いて上記と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.08mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.56と粒度分布が狭く、懸濁剤性能の経時変化が極めて小さかった。
【0046】実施例5分散安定剤として、粉状のβ−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製 商品名デモールN)を10g使用した以外は実施例1と同様に第3リン酸カルシウムを解砕した。このときの懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径はそれぞれ0.46μm及び0.19μmであった。
【0047】つぎに、ここで調製した懸濁剤含有スラリー(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.08mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.57と、粒度分布が狭いものとなった。
【0048】次に、上記の懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ0.47μm及び0.19μmであった。この懸濁剤含有スラリーを用いて上記と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.09mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.57と粒度分布が狭く、懸濁剤性能の経時変化が極めて小さかった。
【0049】実施例6攪拌機を取り付けた50リットルのオートクレーブにイオン交換水19・6kgとリン酸3ナトリウム・12水塩550gを仕込み90℃まで加熱した。次に35重量%濃度の塩化カルシウム水溶液760gを撹拌しながら30分間で滴下した後、さらに90℃で1時間撹拌を続けた。室温まで冷却した後、生成したスラリーの一部を濾別して濃度を測定したところ、3.9%であった。また、生成した第3リン酸カルシウムのd95及び重量平均粒子径は、それぞれ13.48μm及び4.33μmであった。
【0050】次に、得られたスラリー12.8kgを限外濾過にて2kg(無機系懸濁剤の固形分25重量%)に濃縮した後、分散安定剤として有効成分50%の有機ホスホン酸塩水溶液(ヘンケル KGaA社製 商品名ハイドロパラート884)を40g溶解させて、媒体撹拌ミル(コトブキ技研社製)にて循環させながら15分間解砕した。このときのd95及び重量平均粒子径はそれぞれ0.50μm及び0.20μmであった。
【0051】ここで調製した懸濁剤含有スラリー80g(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.15mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.57と、粒度分布が狭いものとなった。
【0052】次に、上記で懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ0.51μm及び0.21μmであった。この懸濁剤含有スラリーを用いて上記と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.18mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.58と粒度分布が狭く、懸濁剤性能の経時変化が極めて小さかった。
【0053】実施例7攪拌機を取り付けた50リットルのオートクレーブにイオン交換水27kgとピロリン酸ナトリウム500gを仕込み、次に50重量%濃度の硫酸マグネシウム水溶液2kgを撹拌しながら30分で滴下した後、さらに常温で1時間撹拌を続けた。生成したスラリーの一部を濾別して濃度を測定したところ、1.5%であった。また、生成したピロリン酸マグネシウムのd95及び重量平均粒子径は、それぞれ22.75μm及び7.21μmであった。
【0054】次に、得られたスラリー26.7kgを限外濾過にて2kg(無機系懸濁剤の固形分20重量%)に濃縮した後、分散安定剤として有効成分40%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(サンノプコ社製 商品名ノプコスパース44C)40gを溶解させて、媒体撹拌ミル(コトブキ技研社製)にて循環させながら15分間解砕した。このときのd95及び重量平均粒子径はそれぞれ0.38μm及び0.17μmであった。
【0055】ここで調製した懸濁剤含有スラリー50g(重合時の懸濁剤固形分0.05重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得た重合体粒子の重量平均粒子径は0.99mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.57と、粒度分布が狭いもであった。
【0056】次に、上記で懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ0.46μm及び0.20μmであった。この懸濁剤含有スラリーを用いて上記と同様に重合を行った。このときの懸濁重合で得られた重合体粒子の重量平均粒子径は1.05mmで、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.59と粒度分布が狭く、懸濁剤性能の経時変化が極めて小さかった。
【0057】実施例8実施例7と同様にして調製して得られたピロリン酸マグネシウムを含有するスラリー667gに分散安定剤として有効成分40%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(サンノプコ社製 商品名ノプコスパース44C)2.5gを溶解させて、媒体撹拌ミル(コトブキ技研社製)にて循環させながら5分間解砕した。このときの懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径はそれぞれ0.90μm及び0.51μmであった。
【0058】次に、ここで調製した懸濁剤含有スラリー667g(重合時の懸濁剤固形分0.05重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの重合体粒子の重量平均粒子径は1.40mmと非常に大きいものとなったが、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.57と粒度分布が狭いものであった。
【0059】一方、上記で懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ0.91μm及び0.53μmであった。この懸濁剤含有スラリー667g(重合時の懸濁剤固形分0.05重量%)を用いて上記と同様に重合を行ったところ、重合体粒子の重量平均粒子径は1.44mmと、解砕直後の懸濁剤を使用したときに比べて大きくなったが、粒度分布は単一ピークを有するものであった。また、分散度は0.58と粒度分布が狭く、懸濁剤性能の経時変化が極めて小さかった。
【0060】
【表1】


【0061】比較例1第3リン酸カルシウムを解砕せずに、d95及び重量平均粒子径を測定したところ、それぞれ52.7μm及び7.86μmであった。この解砕していない第3リン酸カルシウム40gを用いた以外は実施例1と同様に重合を行った。このときの重合体粒子の重量平均粒子径は1.02mmで、粒度分布は単一ピークを有していたが、分散度は0.79と分布が非常に広いものであった。
【0062】比較例2市販のスラリー状第3リン酸カルシウム(太平化学社製 商品名S−10)を解砕せずに、d95及び重量平均粒子径を測定したところ、それぞれ25.4μm及び2.86μmであった。この解砕していないスラリー状第3リン酸カルシウム(無機系懸濁剤の固形分10%)を400g(重合時の懸濁剤固形分0.2重量%)を用いた以外は実施例1と同様に重合を行った。このときの重合体粒子の重量平均粒子径は0.98mmで、粒度分布は単一ピークを有していたが、分散度は0.82と分布が非常に広いものであった。
【0063】一方、上記のスラリー状第3リン酸カルシウムを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ27.3μm及び2.97μmと凝集により大きくなっていた。このスラリー状第3リン酸カルシウム400g(重合時の懸濁剤固形分0.2重量%)を用いた以外は実施例1と同様に重合を行ったところ、重合体粒子の重量平均粒子径は1.03mmと、放置前のスラリー状第3リン酸カルシウムを使用したときに比べて大きくなり、粒度分布は単一ピークを有していたが、分散度は0.83と更に広くなり、懸濁剤性能の劣化がみられた。
【0064】比較例3第3リン酸カルシウムを解砕するときに分散安定剤を添加しない以外は実施例1と同様に解砕を行った。懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径はそれぞれ3.15μm及び1.13μmであった。次に、ここで調製した懸濁剤含有スラリー80g(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの重合体粒子の重量平均粒子径は1.27mmで、粒度分布は単一ピークを有していたが、分散度は0.64と分布が広いものであった。
【0065】一方、上記で懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ4.76μm及び1.64μmと凝集により大きくなっていた。この懸濁剤含有スラリー80g(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)を用いて上記と同様に重合を行ったところ、重合体粒子の重量平均粒子径は1.39mmと、解砕直後の懸濁剤を使用したときに比べて大きくなり、粒度分布は単一ピークを有していたが、分散度は0.73と更に広くなり、懸濁剤性能の大幅な劣化がみられた。
【0066】比較例4第3リン酸カルシウムを解砕するときに、分散安定剤を添加せず、また解砕時間を15分であったのを2分と短くして処理した。このときの、懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ7.83μm及び2.47μmであった。次に、ここで調製した懸濁剤含有スラリー80g(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの重合体粒子の重量平均粒子径は、1.70mmと非常に大きいものとなり、粒度分布は単一ピークを有していたが、分散度は0.76と分布の広いものであった。
【0067】次に、上記で懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ18.24μm及び5.32μmと凝集により大きくなっていた。この懸濁剤含有スラリー80g(重合時の懸濁剤固形分0.1重量%)を用いて上記と同様に重合を行ったところ、凝固してしまった。
【0068】比較例5ピロリン酸マグネシウムを解砕するときに、分散安定剤を添加せず、また解砕時間を15分であったものを2分と短くして処理した。このときの、懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ7.55μm及び2.73μmであった。
【0069】次に、ここで調製した懸濁剤含有スラリー667g(重合時の懸濁剤固形分0.05重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの重合体粒子の重量平均粒子径は1.52mmと非常に大きいものとなり、粒度分布は単一ピークを有していたが、分散度は0.78と分布の広いものであった。
【0070】次に、上記で懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ12.57μm及び4.82μmと凝集により大きくなっていた。この懸濁剤含有スラリー667g(重合時の懸濁剤固形分0.05重量%)を用いて上記と同様に重合を行ったところ、凝固してしまった。
【0071】比較例6実施例7と同様にして得られたスラリー667gに、分散安定剤として有効成分40%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液(サンノプコ社製 商品名ノプコスパース44C)2.5gを溶解させた後内容物を等分した。次に、この一方について10分間解砕処理し、もう一方について5分間解砕処理した後、両方を十分に混合して懸濁剤含有スラリーを得た。このときの、懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ2.05μm及び0.31μmであった。 次に、ここで調製した懸濁剤含有スラリー667g(重合時の懸濁剤固形分0.05重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの重合体粒子の重量平均粒子径は1.21mmとやや大きいものとなり、粒度分布は単一ピークを有していたが、分散度は0.81と粒度分布が非常に広いものとなった。
【0072】次に、上記で懸濁剤を解砕して得た懸濁剤含有スラリーを、40℃の温度で2週間放置した。放置後の懸濁剤粒子のd95及び重量平均粒子径は、それぞれ2.13μm及び0.32μmであった。この懸濁剤含有スラリー667g(重合時の懸濁剤固形分0.05重量%)を用いて上記と同様に重合を行った。この時の懸濁重合で得た重合体粒子の重量平均粒子径は1.32mmと大きいものとなり、粒度分布は単一ピークを有するものであったが、分散度は0.83と、粒度分布が非常に広いものであった。但し、懸濁剤性能の経時変化は小さかった。
【0073】
【表2】


【0074】
【発明の効果】本発明の懸濁剤含有スラリーは、懸濁重合に際し粒度分布の狭いビニル系重合体を得ることができるとう優れた懸濁剤性能を持つと共に、その性能を長期間維持でき、高濃度にした場合でも同等の性能を有し、また本発明によると懸濁剤含有スラリーを効率よく得ることができ、更には、該懸濁剤含有スラリーを用いることにより、粒度分布の狭いビニル系重合体を効率よく製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 無機系懸濁剤粒子及び分散安定剤を含む懸濁剤含有スラリーであって、該無機系懸濁剤の粒子径が最小粒径からの95%重量累積粒径値が1μm以下であることを特徴とする懸濁剤含有スラリー。
【請求項2】 該分散安定剤が、無機系分散安定剤または高分子型分散安定剤または界面活性剤から選ばれた、少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の懸濁剤含有スラリー。
【請求項3】 該スラリーにおいて、該無機系懸濁剤100重量部に対し、該分散安定剤が0.01重量部〜10重量部の割合で存在することを特徴とする、請求項1に記載の懸濁剤含有スラリー。
【請求項4】 該無機系懸濁剤粒子が第3リン酸カルシウム又はピロリン酸マグネシウムからなることを特徴とする、請求項1に記載の懸濁剤含有スラリー。
【請求項5】 該スラリーの固形分濃度が0.05重量%〜50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の懸濁剤含有スラリー。
【請求項6】 無機系懸濁剤粒子を水性媒体中、分散安定剤の存在下で、最小粒径からの95%重量累積粒径値が1μm以下になるまで解砕することを特徴とする、懸濁剤含有スラリーの製造方法。
【請求項7】 該分散安定剤が、無機系分散安定剤または高分子型分散安定剤または界面活性剤から選ばれた、少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項6に記載の懸濁剤含有スラリーの製造方法。
【請求項8】 該分散安定剤を無機系懸濁剤粒子100重量部に対し0.01重量部〜10重量部の割合で存在させることを特徴とする、請求項6に記載の懸濁剤含有スラリーの製造方法。
【請求項9】 該無機系懸濁剤粒子が第3リン酸カルシウム又はピロリン酸マグネシウムからなることを特徴とする、請求項6に記載の懸濁剤含有スラリーの製造方法。
【請求項10】 ビニル系単量体を重合開始剤、懸濁剤およびアニオン系界面活性剤を含む水性媒体中で懸濁重合させる方法において、該単量体100重量部に対して、請求項1記載の懸濁剤含有スラリーを無機系懸濁剤粒子の固形分で0.01〜10重量部用いることを特徴とする懸濁重合法。

【公開番号】特開平8−253510
【公開日】平成8年(1996)10月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−54555
【出願日】平成7年(1995)3月14日
【出願人】(591039148)三菱化学ビーエーエスエフ株式会社 (7)