説明

成型用樹脂材料の製造方法

【課題】可燃性ガス及び有機溶媒を使用する押出機による成形用樹脂材料の製造方法において、可燃性揮発成分を適切に除去する方法を提供する。
【解決手段】可燃性ガスおよび有機溶媒を使用し、それを排気するベント口4を有する押出機1を用いる成型用樹脂材料の製造方法において、ベント口4またはベント口と排気設備5との間の配管に不活性ガスを供給する成型用樹脂材料の製造方法。これにより、配管汚れや製品への異物混入も防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機による成形用樹脂材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出機による揮発分を含む樹脂の押し出し成形では、押出機にベント口を設けて、常圧あるいは減圧下、または常圧と減圧の併用で排気を行い、揮発ガス分を除去する。しかしながら、揮発ガス分には、可燃性の有機物を含む場合があり、適切な条件管理が必要である。
【0003】
酸素を含む可燃性ガスの濃度条件の管理は、可燃性ガス濃度については、爆発下限界以下に管理することが一般的であり、可燃性ガス検知器等でで管理している。一方、可燃性ガス濃度が爆発下限界以上となる高濃度の場合は、可燃性ガスの種類により異なるが、酸素濃度を燃焼限界酸素濃度以下にする必要がある。
【0004】
また、ブロアまたは真空ポンプ、あるいは真空ポンプとブロアの組合せにて、押出機ベント口から揮発性ガスの除去を行う場合、押出機、ベントポート、バルブ類などの装置あるいは配管継ぎ手などの微小な隙間から空気を吸い込み、ライン中に混入する可能性がある。特に押出機内の樹脂中の残存揮発分を低減するために、真空ポンプを使って、高真空度に減圧する場合は、わずかな隙間からであっても、空気混入量が無視できない程度に増えてくる。
【0005】
一方、押出機に窒素等の不活性ガスを導入する製造方法としては、樹脂の酸化による劣化や着色を防ぐ目的で、樹脂の供給口やベント口に窒素を供給して、樹脂に接する部分で酸素濃度を下げる方法などが、出願されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−132437号公報
【特許文献2】特開2000−43036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、樹脂の供給口やベント口に窒素を供給して、樹脂に接する部分で酸素濃度を下げても、上記のように設備および配管などの微小な隙間から空気が吸い込まれるため、酸素濃度が上昇してしまう問題がある。また、この酸素濃度の上昇は、設備の整備状況等で左右される。
【0008】
従来の技術では、樹脂粉体を供給するホッパ内の酸素濃度を0.1%未満とするもの(特許文献1)、押出機内に水を滴下することにより、空気を遮断するもの(特許文献2)などがあるが、十分ではない。また、これらは押出機内の酸素を低減して、酸化等による樹脂の劣化を防止することのみが目的であり、排ガス中の酸素濃度自体を下げることを目的としておらず、配管および機器等からの空気の混入があった場合は想定されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は以下に関する。
(i)可燃性ガスおよび有機溶媒を使用し、それを排気するベント口を有する押出機を用いる成型用樹脂材料の製造方法において、ベント口または、ベント口と排気設備との間の配管に不活性ガスを供給することを特徴とする成型用樹脂材料の製造方法
(ii)不活性ガス供給口以降を80℃以上に保温することを特徴とする(i)記載の成形用樹脂材料の製造方法。
(iii)ベント口以降の配管あるいは機器にオンライン酸素濃度計を設けることを特徴とする(i)または(ii)記載の成型用樹脂材料の製造方法
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ベントガスの酸素濃度の管理が可能であり、ガスの凝縮などによる配管汚れや、製品への異物混入も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の反応押出機に係る構成図の一例である。
【図2】本発明の別の反応押出機に係る構成図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、例えば図1に示すような押出機にて実施される。同方向噛合形二軸押出機などの押出機(1)に、固体上の原料樹脂ペレット(2)を供給し溶融させ、そして、押出機中の十分に溶融された箇所に、樹脂を変性するための反応試剤(3)を圧入し、さらに、未反応の反応試剤あるいは副生成物を除くために、押出機後方部に設けたベント口(4)から脱揮する。脱揮された樹脂は、押出機後端に設けたダイスから押し出され、固形状の樹脂ペレットなどの形態で製品となる。
【0013】
ここで脱揮される反応試剤および副生成物に可燃性ガスが含まれる場合、押出機のベント口(4)、あるいは、ベント口と真空ポンプなどの排気設備(5)との間の配管に、窒素等の不活性ガス供給設備(6)をバルブ(7)を介して、接続する。不活性ガス供給設備を接続する場所は、特に制限されないが、配管中の酸素濃度が高くなる部分が少なくなるように、ベント口あるいは、ベント口直近であることが望ましい。
【0014】
本発明において、押出機を用いた溶融押出においては、溶融温度が高温であるため、ベント口以降の配管に可燃性ガス中の一部や水が凝縮する場合がある。配管に可燃性ガスや水が凝縮すると、製品中の異物が増加する場合があるため、配管を高温に保つことが好ましい。具体的には、配管をスチームトレス等で加温して、80℃以上、好ましくは100℃以上に保温してやることがより好ましい。
【0015】
押出機の型式は、単軸押出機、同方向非噛合形二軸押出機、異方向噛合形二軸押出機、異方向非噛合形二軸押出機、それ以外の多軸押出機でもかまわないが、混練、分散、表面更新能力および生産性の高い同方向噛合形二軸押出機が適している。ベント口を多数有する押出機の場合、全てのベント口に不活性ガスを導入してもよいし、排ガスの組成などに応じて適宜導入してやれば良い。
【0016】
本発明で用いる不活性ガスとしては、特に限定されないが、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス、水蒸気などが挙げられる。なかでも窒素が効果が高く、また安価に入手できるので好ましい。
【0017】
本発明では、排気ガス中の酸素濃度を測定するために、オンライン酸素濃度計を設置することが好ましい。本発明のオンライン酸素濃度計(8)は、真空になっている箇所では、圧力が変動して測定値が安定せず、測定することが困難であるため、真空ポンプを含む排気装置(5)の出口などの排気口(9)の付近に設置することが望ましい。オンライン酸素濃度計(8)の型式としては、可燃性雰囲気下で測定可能なものが望ましく、たとえば磁気式酸素濃度計、赤外吸収式などの方式のものが挙げられるが、安全上問題ない方式であれば他の方式のものでも採用できる。
【0018】
オンライン酸素濃度計の分析値は、オンラインで常時監視され、不活性ガスの供給量を調整し、安全な酸素濃度を維持する。また、不活性ガス供給設備のバルブを自動調節弁とすることにより、酸素濃度の測定値が設定した任意の濃度になるように、自動制御してもかまわない。ベント口を多数有する押出機において、不活性ガスが多数の箇所から導入された場合、それぞれの配管を酸素濃度計の手前でつないでやれば良い。
【0019】
排気口(9)から排気された排気ガスは、ガスの種類により吸着塔、燃焼装置などの適切な処理設備に供給してやれば良く、その処理設備については特に制限されない。
【0020】
図2は、溶液重合等により、溶液状で得られた重合物から、揮発成分を除去して、固形状の樹脂ペレットを得るための押出機を示したものである。溶液重合設備あるいは溶液状重合物貯槽(10)から、押出機に溶液状の重合物を供給し、揮発成分を除くために、押出機後方部に設けたベント口(4)から脱揮する。脱揮された樹脂は、押出機後端に設けたダイスから押し出され、固形状の樹脂ペレットなどの形態で製品となる。ベント口以降の構成は、図1のものと同じである。
【0021】
本発明による酸素濃度は、可燃性ガスの成分、組成により、限界酸素濃度を考慮して適宜設定してやれば良い。
【実施例】
【0022】
以下、本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
装置としては、図1に示すものと同等なものを使用した。直径75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の同方向噛合型二軸押出機(1)を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、押出機原料供給口に原料樹脂ペレット(2)を供給した。原料樹脂としては、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(Mw95,000 スチレン量11モル%)を用いた。反応試剤としてモノメチルアミンをメタクリル酸メチルのイミド化を行うために用い、押出機内圧より高圧に昇圧できるダイアフラム式の昇圧ポンプを用いて押出機に供給した。この際、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は60rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して16部とし、変性アクリル樹脂を製造した。未反応および副成する揮発成分を除去するため、ベント口を2箇所もうけ、前段を大気圧条件、後段を−0.095MPaの減圧条件で、排ガスを吸引除去した。排ガス中には、未反応のモノメチルアミンおよび、副成するジメチルアミン、トリメチルアミン、メチルアルコールと、水が含まれており、総量は標準ガス状態で、変動はあるものの、おおむね30立米/時間が排出された。後段のベント口の後方に設置した真空ポンプを含む排気装置(5)の出口付近にオンライン酸素濃度計(8)を設置し、その指示値(排ガス中の酸素濃度の目標)を5体積%以下として設定し、ベント口直近に設けた不活性ガス供給装置(6)から窒素を供給し、その供給量を調整したところ、標準状態で15立米/時間を供給したところで、酸素濃度を安定して5体積%以下とすることができた。
【0024】
(実施例2)
装置および原料等と供給条件を実施例1と同じ条件として、変性アクリル樹脂の製造を行った。可燃性ガスを含む排ガスの排出量は、実施例1と同じく、標準ガス状態で、変動はあるものの、おおむね30立米/時間が排出された。オンライン酸素濃度計の指示値(排ガス中の酸素濃度の目標)を2体積%以下として設定し、窒素の供給量を調整したところ、標準状態で30立米/時間を供給したところで、酸素濃度を安定して2体積%以下とすることができた。
【0025】
(比較例1)
装置および原料等と供給条件を実施例1と同じ条件として、変性アクリル樹脂の製造を行った。可燃性ガスを含む排ガスの排出量は、実施例1、2と同じく、標準ガス状態で、変動はあるものの、おおむね30立米/時間が排出された。窒素の供給を行わず、そのまま排出したところ、排ガス中の酸素濃度が8体積%を越える値となった。
【符号の説明】
【0026】
1……押出機
2……原料樹脂ペレット
3……可燃性の反応試剤
4……ベント口
5……真空ポンプを含む排気装置
6……不活性ガス供給装置
7……バルブ
8……オンライン酸素濃度計
9……排気
10……溶液重合設備あるいは溶液状重合物貯槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスおよび有機溶媒を使用し、それを排気するベント口を有する押出機を用いる成型用樹脂材料の製造方法において、ベント口または、ベント口と排気設備との間の配管に不活性ガスを供給することを特徴とする成型用樹脂材料の製造方法
【請求項2】
不活性ガス供給口以降を80℃以上に保温することを特徴とする請求項1記載の成形用樹脂材料の製造方法。
【請求項3】
ベント口以降の配管あるいは機器にオンライン酸素濃度計を設けることを特徴とする請求項1または2記載の成型用樹脂材料の製造方法

【図1】
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【図2】
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