説明

成形アクティブ・マトリックス・ディスプレイ

【課題】従来のディスプレイとは異なる形状のディスプレイを可能にするディスプレイ・システムを提供する。
【解決手段】非矩形の周辺部を有する形状に配置された基板上のディスプレイ素子のアレイと、非矩形の周辺部に少なくとも部分的に適合する、信号をディスプレイ素子に送るために配置されたアドレスラインとを含む、ディスプレイ・システムであり、前記形状が湾曲した周辺部を有し、前記形状は4つより多い辺を有する多角形であり、前記基板は、1つ又はそれ以上の不連続部を有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ディスプレイは、一般的に、平面で矩形形状を有する。その理由の一つはアクティブ・マトリックス・アドレス指定の性質による。アドレスラインは、一般に、x−yグリッド型のレイアウトに役立つ、行−列フォーマットを利用する。平面矩形型ディスプレイのもう一つの理由は、従来の製造において使用されるガラス基板に起因する。ガラスは高価であり、ガラスを損傷又は無駄にせずに簡単に非矩形形状に切断することができない。ディスプレイがコンピュータのモニター又はテレビとして機能する場合、一般に、表示のために受け取った画像コンテンツも、矩形ディスプレイ用にフォーマットされた形で届くことになる。
【0002】
矩形ディスプレイから離れることは、幾つかの利点を有し得る。多くの最近の標識(sign)は、顧客を引き付けるような形状に設計されている。こうした標識にディスプレイの特徴を付加することは、より多くの顧客を引き付けるのに役立つが、ディスプレイは、その会社に関する既存の標識に類似した外見を維持するだけでなく、標識の全体的な形状に適合させる必要もある。これらの標識の一部は、製品又は店舗の名前を示す文字で構成されている。文字の形状に合わせてディスプレイを作製することにより、ブランドスタイルが維持され、標識に対するさらなる関心が付加される。
【0003】
別の領域は、制御又は他の機能を与えるために、製品に埋め込まれたディスプレイを含む。消費者製品及びビジネス向け製品の設計では、消費者に対する魅力を増すために、ますます曲面形状を盛り込んでいる。車のダッシュボード等において、ディスプレイは、これらの形状に適合させるべきである。玩具及びゲームは、ディスプレイに適合させるように品目を要求するのではなく、品目の全体形状に適合するディスプレイを有することが理想的である。
【0004】
さらに、制御システムに使用される幾つかのディスプレイには、制御用ノブ又はスッチがすぐ近くにあることが必要である。これらの制御部が、された部ではなく、ディスプレイ内にある場合、設計空間が増大する。例として、ディスプレイの付いたダッシュボード内のカーラジオ又はヒータが挙げられ、そこでは制御用ノブがディスプレイ内に設けられる。
【0005】
可撓性の基板の使用が、非矩形の形状、及び曲面への適合を可能にする。レーザ加工又は他の技術により、可撓性の基板を、複雑な形状、或いは穴又は間隙をもつ不連続な形状に切断することが可能になる。ディスプレイの個々の画像素子(ピクセル)についてのアドレスラインの設計には、依然として問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスプレイ技術の発展は、より費用のかからないディスプレイをもたらすであろう。これらのディスプレイはさらに普及し、製品、標識、及び広告内に埋め込まれるであろう。標識、ブランド名称、及び湾曲した形状をもつ製品への統合を目的とする適用例は、異なる形状のディスプレイを必要とするであろう。可撓性の基板上にディスプレイを製造する能力は、従来のものではない形状のディスプレイに対する可能性を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非矩形の周辺部を有する形状に配置された基板上のディスプレイ素子のアレイと、非矩形の周辺部に少なくとも部分的に適合する、信号をディスプレイ素子に送るために配置されたアドレスラインとを含む、ディスプレイ・システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】湾曲した非矩形のディスプレイ形状の例を示す。
【図2】矩形型のアドレス指定を有する楕円形ディスプレイを示す。
【図3】曲面に矩形型アドレス指定をマッピングする実施形態を示す。
【図4】多角形形状についてのアドレスラインの実施形態を示す。
【図5】制御部を有するディスプレイの実施形態を示す。
【図6】ディスプレイの一部として制御部を有するディスプレイの実施形態を示す。
【図7】不連続部に適合するように経路指定されたアドレスラインの実施形態を示す。
【図8】アドレスラインが穴に適合するように経路指定された、穴及び間隙を有するディスプレイの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、台座又はスタンド12上の球形のディスプレイ10と、ビジネス又は他の事業体に関する標識の一部として見られるような、文字の形状、この場合は文字「H」に埋め込まれたディスプレイとを含む、これらのタイプのディスプレイの例を示す。文字形状のディスプレイ14は、形状の内部に存在可能なアドレスライン及び列ラインを示し、間隙16、18においてラインの不連続が生じている。
【0010】
曲面ディプレイ又は非矩形ディスプレイの開発における1つの制約は、ディスプレイ素子が矩形のx−yグリッド内にある、画素化されたディスプレイをアドレス指定する際に用いられるアドレス指定用マトリックスの性質に起因する。図1の例に見られるように、矩形グリッド型のアドレスラインは、曲面、又はアドレスラインが非矩形形状用のものである面のいずれにおいても、問題を引き起こす。
【0011】
図2に見られるように、非矩形形状において、矩形のアドレス指定を使用することが可能である。ディスプレイ20は楕円形状であり、22及び24等のアドレスラインは、典型的なグリッド方式で並べられている。しかしながら、この設計には、幾つかの弱点がある。例えば、各方向のアドレスラインは、楕円すなわち長円の半分を覆い、読み出し回路(readout electronics)及び行及び列駆動回路に接続するのは困難である。ディスプレイの境界は、ピクセル・マトリックス上の任意の点に存在し、表示画像をディスプレイに適合するようにするのを困難にする。
【0012】
図3は、矩形グリッド型のアドレスラインを非矩形形状にする代替的な手法を示す。この手法は、マッピング・プロセス32を適用することにより、ディスプレイ形状38に基づいて、矩形のアドレス指定用マトリックス30を、非矩形の、この場合は曲面のマトリックスにマッピングする。マッピング・プロセスは、表示画像を、矩形の形態から別の適当な外観に容易に変換することを可能にする。代替的に、画像の形態が変わらない場合、曲線のアドレス指定により、楕円形状の上にある画像が、あたかも3次元のドーム形状上にあるかのように見え、奥行きの錯覚がもたらされる。
【0013】
1点への収束は必須ではないが、円形又は曲線のアドレスラインの使用により、アドレスラインが収束する34又は36のような少なくとも1つの点が与えられる。アドレスラインの曲線形状は、読み出し回路及び駆動回路の位置決めを容易にする。収束点の位置は、アドレス指定用マトリックスの曲率を増減少させ得る。所与の例においては、曲面マトリックスの中心は、ディスプレイ38の中心において矩形アレイに近づく。周辺部に近いアドレスラインは、ディスプレイ38の形状の曲率に従う。一般的には、アドレスラインは、少なくともその長さの長い部分に関しては、湾曲した周囲部に従う。
【0014】
湾曲した周囲部へのマッピングに加えて、マッピングは、対称形ではない曲線形状、すなわち、五角形又は六角形等のような多角形を可能にする。図4は、六角形のディスプレイに対するマッピングの例を示す。
【0015】
図4において、ディスプレイ40は六角形であり、行及び列についてアドレスラインが、六角形の隣接する辺上に配置される。これにより、駆動回路44及び読み出し回路46の簡便な配置が可能になる。さらに、これまでの矩形型マトリックスにおけるように、行及び列ラインが、点42のようなこれらが交差する場所でほぼ直交する。
【0016】
アドレスラインを可撓性の基板上の非矩形形状にマッピングする能力はまた、基板において、間隙及び穴のような不連続部が存在することを可能にする。このことは、幾つかの利点をもつ。図5を見ると、異なる制御装置52、54、56及び58と関連付けられることも又は関連付けられないこともあるテキストを有するディスプレイを見ることができる。多くのタイプの電子機器は、他の制御部の作動又は操作に応じて、様々な機能を実行する制御装置を有する。
【0017】
例えば、制御装置52は、オン・オフ式スイッチとすることができ、制御部54、56及び58は、1組の機能を実行することができる。制御部が52が作動されてオンにされると、制御部54、56及び58と関連した機能が変化することがあり、これは、各制御部についてのラベルが、印刷されるか、又は他の方法で取り付けられたラベルではなく、変更可能なディスプレイ上に設計されるためである。制御部をディスプレイ・パネル内に取り付けることができる場合は、より好ましく、より高い柔軟性を与えることができる。
【0018】
図6は、制御装置62、64、66及び68がディスプレイ内に埋め込まれた、ディスプレイ60の実施形態を示す。ここには示されていないが、これは、装置上のより小さいディスプレイを可能にするか、又は制御部の柔軟な性質に起因する多くの他の機能をもたらすことができる。
【0019】
図6に示すような制御装置に対して穴を提供するために、そうでない場合には穴の領域内に存在するラインを、異なる場所に経路指定しなければならない。そのような再経路指定の例を図7に示す。望まれるのは、ディスプレイ素子が存在する基板80を貫通して、又は少なくとも部分的に通って、穴を配置することである。領域70は、穴を形成するのが望ましい領域として識別された。
【0020】
次に、その領域を回避するために、72、74及び76のようなアドレスラインが経路指定される。図から分かるように、領域の外周により近いライン76は、領域内で僅かに屈曲しているが、領域の中心により近いライン72、74は、より大きく屈曲している。さらに、中心のライン72及び74は、穴の周りで反対方向に経路指定することができる。
【0021】
ラインが再経路指定されると、領域78において基板内に穴をドリルで開けるか、又は他の方法で形成することができる。穴は基板を完全に貫通して、制御装置が、ディスプレイ・パネルの背後の制御回路に接続するのを可能にするか、或いは、制御のために、ディスプレイ基板上の回路を用いて、基板を部分的に通ることができる。
【0022】
上記のアーキテクチャの1つ又はそれ以上を組み合わせることも可能である。例えば、図3及び/又は図4のアドレス指定設計を、図6のアドレス指定設計と組み合わせて、図8に示すようなディスプレイ基板をもたらすことができる。本出願と同じ譲受人に譲渡された同時係属中の米国特許出願番号第12/253,390号は、基板内の間隙又は切削部により、間隙又は切削部を閉鎖するように、基板を屈曲することが可能になる、曲面を作製するための「切断−屈曲」手法を記載している。これにより、基板は、平面ではなく曲線状になる。アドレスラインは、間隙又は切削部が閉鎖されたときに連続的になるように経路指定される。同じく同一出願人による別の同時係属中の出願である米国特許出願第12/017,974号は、基板の全体的な幾何学的形状を論じている。
【0023】
図8は、同時係属中の特許出願においてこれまで論じられたものと同様に、上記の設計の組み合わせからもたらされたディスプレイ90を示す。このディスプレイは、間隙又は切削部92、94及び96、並びに穴98及び100を含めて、その表面に幾つかの不連続部をもつ。アドレスラインは、穴98及び100については図7に示したものと類似した方法で経路指定される。
【0024】
さらに、切削部又は間隙のどちらの側のアドレスラインも、間隙又は切削部が閉鎖されたときに連続的になるように配置される。アドレスラインの部分102は、間隙92を閉鎖するように基板が屈曲されたとき、該基板が部分104と連続的になり、アドレスラインを形成するように形成される。図3に示したものと類似した方法で平面の基板上の曲線形状内にアドレスラインを配置することも可能であり、曲線形状は、間隙が閉鎖されたときに形成される結果として得られる曲線に基づいている。
【0025】
このように、幾つかの不連続部があるディスプレイを曲面形状で形成することができる。これらのディスプレイが、湾曲した周囲部をもっていようと又は不連続部をもっていようと、或いはその両方をもっていようと、これは、非矩形形状のディスプレイをアドレス指定するための、ここで記載された技術を用いる1つの可能性にすぎない。
【0026】
10、14、20、38、40、50、60、90:ディスプレイ
12:スタンド
16、18、92、94、96:間隙(又は切削部)
22、24、34、36、72、74、76:アドレスライン
30:アドレス指定用マトリックス
32:マッピング・プロセス
44:駆動回路
46:読み出し回路
52、54、56、58、62、64、66、68:制御装置
80:基板
98、100:穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非矩形の周辺部を有する形状に配置された基板上のディスプレイ素子のアレイと、
非矩形の周辺部に少なくとも部分的に適合する、信号をディスプレイ素子に送るために配置されたアドレスラインと、
を含むことを特徴とするディスプレイ・システム。
【請求項2】
前記形状が湾曲した周辺部を有することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ・システム。
【請求項3】
前記形状は、4つより多い辺を有する多角形であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ・システム。
【請求項4】
前記基板は、1つ又はそれ以上の不連続部を有することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−65157(P2011−65157A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205210(P2010−205210)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(504407000)パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】