説明

成形品取出機の制御装置

【課題】 チャック部の各ステージにおける位置の微調整が容易で、かつ正確に行うことのでき、更にはチャック部の稼動状態に関するデータの設定変更やモニタリングなどが容易な成形品取出機の制御装置を提供する。
【解決手段】 成形機に搭載された成形品取出機の取出し動作などを制御する成形品取出機の制御装置に、成形品取出機のチャック部の各ステージにおける位置を設定する信号、およびチャック部の運転条件の設定信号や運転状況の確認信号などの信号のうち、使用頻度が比較的高く、かつ操作者が制御装置本体から離れて制御しても危険性がない前記信号を制御装置本体との間で無線で交信可能なハンディータイプの操作ペンダントを付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機に搭載された成形品取出機の制御装置に関し、更には、成形機の金型交換時などにおいて成形品取出機のチャック部位置の設定が容易な成形品取出機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成形機に搭載された成形品取出機は、制御装置によって成形品の取出し動作を成形機に連動して自動的に実行するように制御される。この制御装置の操作パネルの表示部には、チャック部の移動制御状態、成形品の取出し状態、チャック部を移動制御する際に必要なチャック部の位置データ、チャック部の移動速度や加減速度などの稼動状態に関するデータが表示される。また、成形品取出機に内蔵されたタイマーの設定値、成形品取出機の各パートにおける電力のON/OFF状態、取出し不良や故障に関する各種の障害情報、取出された成形品の個数に関する情報なども制御装置の操作パネルの表示部に選択的に表示される。
【0003】
成形機の金型を交換するとき、成形品取出機のチャック部のステージ、つまり待機ステージ、金型接近ステージ、チャッキングステージ、引き抜きステージなどを新たに仕掛ける金型に応じた位置に変更する必要があるが、その金型の番号を制御装置の操作パネルに入力すると、RAM内に格納されたデータに基づいてチャック部は各ステージにおいてその金型に応じた位置に自動的に移動するようになっている。そして、その現在位置が操作パネルの表示部に表示される。
【特許文献1】特開2002−326234公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、金型の番号を制御装置の操作パネルに入力すると、チャック部はその金型用にあらかじめ定められた位置に自動的に移動するが、金型のダイベースに対する取付位置のばらつきやチャック板のチャック部に対する取付位置のばらつきなどのために、自動的に移動した位置は必ずしも金型に対して真正な位置とは限らないので微調整する必要が生じる。この微調整は、金型とチャック部に取り付けられたチャック板の位置関係を目視で確認しながら、チャック部を移動させる距離、つまり、チャック部が自動的に移動した位置と金型に対する真正な位置の間の距離を操作パネルに入力して行う。したがって、操作者は操作パネルの前に立って微調整する必要があるが、金型から少し離れた位置にある操作パネルの前からでは、金型とチャック板の位置関係を目視で正確に確認しにくい不具合がある。ましてや、操作者は金型の操作パネルの反対側に立ってチャック板の位置を確認することは不可能である。また、金型交換時に限らず、操業途中においてもチャック部の各ステージの位置を微調整する必要が生じることがある。
【0005】
更には、チャック部の各ステージにおける位置調整のみならず、チャック部の移動速度や加減速度、タイマーの設定値も調整する必要が生じることがあるが、これらの調整も操作者は操作パネルの前に立って行う必要がある。また、成形品取出機の各部位における電力のON/OFF状態のモニタも操作パネルの前に立って行う必要がある。
【0006】
そこで本発明は、チャック部の各ステージにおける位置の調整が容易で、かつ正確に行うことのでき、更にはチャック部の稼動状態に関するデータの設定変更やモニタリングなどが容易な成形品取出機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明は、成形機に搭載された成形品取出機の取出し動作などを制御する成形品取出機の制御装置に、成形品取出機のチャック部の各ステージにおける位置を設定する信号、およびチャック部の運転条件の設定信号や運転状況の確認信号などの信号のうち、使用頻度が比較的高く、かつ操作者が制御装置から離れて制御しても危険性がない前記信号、例えば、チャック部の移動速度と加減速度、成形品取出機に内蔵したタイマーの設定、成形品取出機の各パートにおける電力のON/OFF状態の表示およびチャック部の各ステージ間を個別運転する手動操作を行う信号を制御装置との間で無線で交信可能なハンディータイプの操作ペンダントを付加する。
【発明の効果】
【0008】
操作ペンダントはハンディータイプあり、成形品取出機のチャック部の各ステージにおける位置を調整する信号を制御装置の操作パネルとの間で無線で交信可能であるので、操作者は操作ペンダントを手に持って金型に接近できるので、金型とチャック板の位置関係を目視で正確に確認でき、そして、その場で調整量の信号を制御装置に発信することができる。また、チャック部の各ステージにおける位置のみならず、操作パネルから離れて操作ペンダントで操作しても危険性のなくて使用頻度の比較的高いチャック部の稼動状態の設定変更やモニタリングを操作ペンダントを手に持って金型に接近して行うことができるので、これらの操作を容易に、かつ正確に行うことのできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1において、成形機5の固定ダイプレート51と可動ダイプレート52に金型53が取り付けられている。そして、成形機5に成形品取出機4が搭載されている。成形品取出機4の走行軸部材41は固定ダイプレート51の上に取り付けられており、金型53の開閉方向に直行する方向に伸びている。走行軸部材41上に水平軸部材42が走行軸部材41に沿って移動可能に配置されており、また、垂直方向のメインアーム43が水平軸部材42に上下動可能かつ金型53の開閉方向に移動可能に配置されている。メインアーム43の下端部がチャック部44であり、チャック部44に金型53の対応したチャック板(図示せず)が取り付けられる。チャック板には成形品を取出すのに必要な吸盤チャックやランナーチャックなどが取り付けられている。走行軸部材41と水平軸部材42およびメインアーム43は図示しないステッピングモータやサーボモータなどによって駆動される。
【0010】
成形品取出機4は、図1に示したもの以外に、チャック部44を成形機5の縦方向(金型開閉と同一方向)および上下方向に移動して成形品を成形機5の縦方向端部である可動ダイプレート52側または固定ダイプレート51側へ取り出すタイプのものであってもよい。
【0011】
図2はチャック部44の1サイクルの動きの基本例であるが、射出成形が完了して金型53が開くと、待機ステージのチャック部44は所定の速度と加減速度で下降(動作順序1)して金型53の間に入り込み、少し金型方向に水平移動(同2)してチャッキングステージに到達し、成形品をチャック(同3)する。そして、水平戻り(同4)して引き抜きステージに移動し、上昇(同5)して待機ステージに戻ると横走行(同6)し、回転ステージにおいて水平回転(同7)し、下降(同8)して製品解放ステージに移動する。製品解放ステージで製品を解放(同9)すると上昇(同10)し、回転ステージにおいて水平回転戻り(同11)し、走行戻り(同12)して待機ステージに復帰する。このチャック部44の動きは御装置本体1および制御装置本体1に信号ケーブル線で接続されたタッチパネルタイプの操作パネル2からなる制御装置およびこの制御装置に付加された操作ペンダント3により制御される。そして、これらのサイクルは制御装置本体1内にあるCPU12から生産終了指令が出力されるまで自動的に繰り返し実行される。
【0012】
制御装置本体1内には、図3に示すように、成形品取出機4の全ての動作を制御するCPU12が電源回路基板内に組み込まれている。CPU12内には成形品取出機4の動作などを記述したプログラムが書き込まれたROMとデータを記録するRAMが含まれている。更に、CPU12には、チャック部44の移動を制御するモータドライブユニット11が接続されており、CPU12内のROMからの指令をモータドライブユニット11が受け取り、サーボモータなどのチャック駆動部材(図示せず)を作動させる。チャック駆動部材にはエンコーダなどの位置検出器を内蔵しており、自らの回転位置と回転速度を検出しながらモータドライブユニット11に信号を返し、更にモータドライブユニット1とCPU12との双方で情報のやり取りを行いながら定められた位置にチャック部44を移動制御して成形品の取出しを実行する。
【0013】
操作パネル2は、タッチパネル式画像表示装置であり、操作パネル2の図3に示す液晶パネル21に画像表示されるシートスイッチを有する入出力装置22を備えており、信号ケーブル線で制御装置本体1と接続されて信号のやり取りを行う。液晶パネル21は、チャック部44の移動位置データや稼動状況などが表示されてモニターできる。また、液晶パネル21上の入出力装置22を指先などでタッチすると、入出力装置22から制御装置本体1のCPU12内に信号が送られ、CPU12内でRAMに格納されているデータに基づいて演算され、液晶パネル21の所定の場所にデータを表示する指令により移動データの変更をモニターする。つまり、入出力装置22を操作することにより、成形品取出機4の全ての動作制御を変更することができる。
【0014】
操作ペンダント3は、主として金型53交換時において成形品取出機4のチャック部44の各ステージにおける位置を新たに設定したり、操業途中においてその位置を微調整したりするために設けられたものであるが、この位置設定以外に、チャック部44の運転条件の設定変更や運転状況の確認などのうち、使用頻度が比較的高く、かつ操作者が制御装置本体から離れて制御しても危険性がない運転条件の設定変更や運転状況の確認、例えば、チャック部の移動速度や加減速度の設定変更、成形品取出機に内蔵したタイマーの設変更、成形品取出機の各パートにおける電力のON/OFF状態の確認およびチャック部の各ステージ間を個別運転する手動操作を行うためのものである。そして、例えば長手方向の寸法が200mm前後、重量が300〜400gであって、小型なハンディタイプである。操作ペンダント3内には、制御装置本体1と同様に、プログラムが書き込まれたROMとデータを記録するRAMが含まれたCPU31が電源回路内に組み込まれているが、CPU31は、成形品取出機4の全ての動作を制御するプログラムは書き込まれていないので、つまり、チャック部の位置調整と使用頻度が比較的高く、かつ操作者が制御装置本体から離れて制御しても危険性がない運転条件の設定変更や運転状況の確認を行うための信号が書き込まれているのみであるので制御装置本体1のCPU12に比べて簡易タイプである。CPU31には、無線送信IC32、液晶からなる表示部35、および電源バッテリー36に接続されている。無線送信IC32は、CPU31からの信号を無線信号に変換し、操作ペンダント3のアンテナ33を通じて信号を操作パネル2のアンテナ23に送信する。操作パネル2も操作ペンダント3同様に、内部にCPU24と無線送信IC32が接続されており、アンテナ23から受信した無線信号を無線送信IC32によりシリアルインターフェイスなどの信号に再度変換してCPU24に伝えることにより操作ペンダント3と操作パネル2との間で無線通信できるようになつている。なお、無線送信IC32とアンテナ23を制御装置本体1に取り付けて、制御装置本体1と直接無線交信するようにしてもよい。
【0015】
例えば成形機5の金型53を交換する時は、操作者は操作ペンダント3を手に持って、新たに仕掛けた金型53と成形品取出機4のチャック部44に取り付けられたチャック板の位置関係を確認しながらチャック部44の正確な位置を設定するが、操作者は操作ペンダント3を手に持っているので、金型53に極めて接近することが可能である。また、必要であれば、図1で操作パネル2が設置してある方向と反対側、いわゆる成形機5の反操作側から金型53に接近して操作することが可能である。したがって、金型53とチャック板の位置関係を正確に、かつ容易に確認することができる。また、チャック部44の位置設定のみならず、操作パネルから離れて操作ペンダントで操作しても危険性がなくて使用頻度の比較的高いチャック部の稼動状態の設定変更やモニタリングを操作ペンダントを手に持って金型に接近して行うことができるので、これらの操作を容易に、かつ正確に行うことのできる。
【0016】
図4は、操作ペンダントにてチャック部の位置調整およびチャック部の運転条件の設定変更や運転状況の確認などのうち、使用頻度が比較的高く、かつ操作者が制御装置から離れて制御しても危険性がない運転条件の設定変更や運転状況の確認操作として、チャック部の移動速度や加減速度の設定変更、成形品取出機に内蔵したタイマーの設定変更、成形品取出機の各パートにおける電力のON/OFF状態のモニタおよびチャック部の各ステージ間を個別運転する手動操作を行う際のフローチャートを示すが、先ず制御装置との無線通信を開始し、操作の項目を選択する。
【0017】
チャック部の各ステージにおける位置を設定するときは「位置設定」を選択し、次に位置を設定する待機ステージやチャッキングステージなどのステージを選択する。金型を交換した際の位置設定においては、いきなり自動運転、つまりチャック部を1サイクル自動的に移動させることは行わないので、通常はJOG操作でチャック部を移動させる。JOG操作とは、操作ペンダントのスイッチを指先でONしている間のみチャック部を移動させる操作であり、短い周期でスイッチのON/OFFを繰り返すと短い距離をゆっくりと移動させることができる。そして、正確に位置が調整できるとその位置の「データ設定」を行い、これによりそのデータがCPU31に書き込まれる。また、JOG操作を行う前にチャック部を各ステージ間で個別運転する手動操作により正確な位置の近傍までチャック部を移動させてから極く短い距離だけJOG操作を行うこともあるが、この手動装置により正確な位置に調整できればJOG操作を行うことなく、その位置を「テンキー設定」すればよい。チャック部の位置設定は金型交換時に限られるものでなく、自動運転で操業中であっても、例えばチャックと金型との位置関係がやや不正確で製品のチャッキング状態が適正でない場合は、テンキーを操作して正確な状態に補正することができる。
【0018】
次に、チャック部の位置設定以外に、チャック部の移動速度や加減速度の設定変更、また成形品取出機に内蔵したタイマーの設定変更を行うときは、「速度設定」、「加減速度設定」、「タイマー設定」のいずれかを選択し、テンキーで変更したい値に設定すればよい。また、成形品取出機の各パートにおける電力のON/OFF状態を確認したいときは「モニタ表示」を選択すればよく、操作ペンダントにて電力のON/OFF状態をモニタできる。更には、チャック部を各ステージ間において個別運転して運転状況を確認したいときは、「手動動作」を選択し、次に個別運転するステージを選択すると、手動動作を行うことできる。
【0019】
操作ペンダントによりチャック部の位置や運転状況の「データ設定」などを行うと、操作ペンダント3内のCPU31から信号が送られ、無線送信IC32、アンテナ33、操作パネル2のアンテナ23、無線送信IC32、CPU24、信号ケーブル線を通して制御装置本体1のCPU12に信号が伝えられる。CPU12はその信号を演算処理し、ROMからの次の指令にて、信号ケーブル線、アンテナ32、33を通してCPU24およびCPU31に伝え、設定されたとおりの運転を行う。そして、CPU12のRAM内にそのデータが記録され、設定変更を行うまでは設定された運転を繰り返す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】成形機、製品取出機、制御装置の説明図である。
【図2】各ステージにおけるチャック部の動作説明図である。
【図3】制御装置本体、操作パネル、操作ペンダントの内部ブロック模式図である。
【図4】操作ペンダントの操作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0021】
1 制御装置本体
11 モータドライブユニット
12 CPU
2 操作パネル
21 液晶パネル
22 入出力装置
23 アンテナ
24 CPU
3 操作ペンダント
31 CPU
32 無線送信IC
33 アンテナ
34 入出力装置
35 表示部
36 電源バッテリー
4 成形品取出機
44 チャック部
5 成形機
53 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機に搭載された成形品取出機の取出し動作などを制御する成形品取出機の制御装置であって、
成形品取出機のチャック部の各ステージにおける位置を設定する信号、およびチャック部の運転条件の設定信号や運転状況の確認信号などの信号のうち、使用頻度が比較的高く、かつ操作者が制御装置から離れて制御しても危険性がない前記信号を制御装置との間で無線で交信可能なハンディータイプの操作ペンダントが付加されたことを特徴とする成形品取出機の制御装置。
【請求項2】
前記チャック部の運転条件の設定信号や運転状況の確認信号などの信号が、チャック部の移動速度と加減速度、成形品取出機に内蔵したタイマーの設定、成形品取出機の各パートにおける電力のON/OFF状態の表示およびチャック部の各ステージ間を個別運転する手動操作を行う信号であることを特徴とする請求項1記載の成形品取出機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−126068(P2009−126068A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303869(P2007−303869)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)
【Fターム(参考)】