説明

成形金型用クリーニング材及びクリーニング方法

少なくとも2層のシート状基材でクリーニング部材を内包したシート状の成形金型用クリーニング材であって、上記シート状基材は、上側又は最外層に気孔容積率70%以上のシート状繊維基材を用い、下側に気孔容積率40%以下のシート状繊維基材及び/又は耐熱性フィルムを用いた構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品封止に用いられる射出成形用金型やトランスファ−成形用金型の表面等を清掃する成形金型用クリーニング材及びクリーニング方法に関し、特にはプリント基板等の基板上にチップをビルドアップした片面を樹脂封止する金型の表面等を清掃するのに好適な成形金型用クリーニング材およびクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂による集積回路等(以下IC・LSIと略記する)の封止成形物の成形を長時間続けると、金型内部表面が汚れ、そのまま連続して成形を続けると、成形品の表面が汚れたり、成形品が金型に付着したりして成形作業が続けられなくなる場合が多々あった。そのため、金型を定期的に清掃する必要があり、成形材料を数百ショット成形する毎に数ショットの割合で金型清掃用樹脂を型締した状態の金型内へ充填し、こびりついている樹脂カス等を除去することが行われている。
【0003】
また、チップをビルドアップしたプリント基板を下金型にセット(吸引セット)し、上面を上金型で樹脂封止する金型の表面等を清掃する片面成形金型用のクリーニングに関しては、クリーニング作業において製品と同様のプリント基板を用いると、プリント基板が高価なためクリーニング作業にコストが掛かるという問題が生じている。そこで、基板を吸引セットするための吸引口にクリーニング材等が入らないようにするために基板と同等の厚みを有するダミーフレーム又は特殊な治具を下金型に吸引セットし、上金型をクリーニング材でクリーニングすることが行われている。
【発明の開示】
【0004】
しかし、上記の特殊な治具を用いるクリーニング方法は、治具を下金型にセットする作業及び硬化した樹脂を特殊な治具ごと取り外す作業等の煩雑な作業が必要であり、かつ樹脂のチッピングの発生が多くなり、作業時間が長くなると言う問題があった。
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するために、少なくとも2層のシ−ト状基材にクリーニング部材又は、クリーニング部材及び成形部材を内包したシ−ト状クリーニング材を使用することを提案している。しかも、クリーニング材の上側又は最外層に気孔容積率70%以上のシート状繊維基材を用い、下側に気孔容積率40%以下のシート状繊維基材及び/又は耐熱性フィルムを用いた構造にしたクリーニング材を用いることで、下金型の吸引口にクリーニング樹脂が詰まることなく簡単にセット出来ると共に、上側の気孔容積率70%以上のシート状繊維基材がクリーニング部材及び成形部材を金型の隅々まで行き渡らせる効果を奏し、クリーニング方法においても、クリーニング部材を内包するために使用するフィルムやテープ等の内包部材が、樹脂漏れを防止するストッパーの役目をはたすことにより、金型キャビティの位置に応じて配置する必要が無くなり作業性の問題を解消出来ること、さらにシート状基材を用いることにより、クリーニング材を引き剥がす際の強度が増し、チッピング等の発生を防止することが出来ることを見出し、上記課題を解決した。
即ち、本発明は、少なくとも2層のシート状基材でクリーニング部材を内包したシート状の成形金型用クリーニング材であって、上記シート状基材が、上側又は最外層に気孔容積率70%以上のシート状繊維基材を用い、下側に気孔容積率40%以下のシート状繊維基材及び/又は耐熱性フィルムを用いた構造であることを特徴とする成形金型用クリーニング材を提供するものである。
また、本発明は、上記の本発明の成形金型用クリーニング材を、加熱した金型内に挟み込み、一定時間加熱加圧して硬化させた後、クリーニング材を除去することを特徴とする成形金型のクリーニング方法を提供するものである。
【0006】
本発明によれば、基板を吸引セットするための吸引口にクリーニング材等が入らないようにするために基板と同等の厚みを有する特殊な治具を下金型に吸引セットする必要が無く、クリーニング部材又は、クリーニング部材及び成形部材を内包したシート状クリーニング材の上側又は最外層に気孔容積率70%以上のシート状繊維基材を用い、下側に気孔容積率40%以下のシート状繊維基材及び/又は耐熱性フィルムを用いた構造にしたクリーニング材を用いることで、下金型の吸引口にクリーニング樹脂が詰まることなく簡単にセット出来ると共に、上側の気孔容積率70%以上のシート状繊維基材が金型の隅々までクリーニング部材及び成形部材を行き渡らせる効果を奏し、さらには、シート状繊維基材がフィラーの役割をはたすことから剥離強度が強くなり、チッピングの発生が殆ど無い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施例1のシート状金型洗浄用クリーニング材Aの断面図及び平面図である。
【図2】図2は、実施例2のシート状金型洗浄用クリーニング材Bの断面図及び平面図である。
【図3】図3は、実施例3のシート状金型洗浄用クリーニング材Cの断面図及び平面図である。
【図4】図4は、実施例4のシート状金型洗浄用クリーニング材Dの断面図及び平面図である。
【図5】図5は、実施例5のシート状金型洗浄用クリーニング材Eの断面図及び平面図である。
【図6】図6は、実施例6のシート状金型洗浄用クリーニング材Fの断面図及び平面図である。
【図7】図7は、比較例1のシート状金型洗浄用クリーニング材Gの断面図及び平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明に用いるシ−ト状繊維基材としては、100℃以上の耐熱性を有する紙、布、不織布等が挙げられる。
これら基材は、燃焼処理等の廃棄処理の容易性を考慮すると、紙、織布である木綿などの布で構成されたものが好ましく、糸状の部材を編んで形成されたメッシュ等も好適に使用される。
【0009】
これら基材の例としては、例えばベンリーゼ(登録商標)PO500、BA832、832R、BA112、112R、RB119、142、149、839(以上旭化成工業株式会社製)、例えばエクーレ(登録商標)6301A、6401A、6501A、6601A、6701A、6A01A、ボランス(登録商標)4050P、4061P、4080P、4081P、4091P、7093P、7121P(以上東洋紡績株式会社製)、例えばミラクルクロス(登録商標)DF−1−73、DF−5−100、アピタス(登録商標)RPN5−60SA、LS−70(以上大和紡績株式会社製)、例えばマリックス(登録商標)10606WTD、70500WSO、90403WSO、20451FLV、20707WTA、70600WTO、ナイエース(登録商標)P0703WTO、ウィウィ(登録商標)R0405WTO、R0705WTO(以上ユニチカ株式会社製)、例えばキノクロス(登録商標)KS40、K60、K70、パルクロス(登録商標)P40、P60(以上王子キノクロス株式会社製)、例えばパネロン(登録商標)2610、270、6810、K550、5130、S30オフ、3700、RF860、7330GP、5140、5150、5160、FT500、FT800、TO510、IH250(以上ダイニック株式会社製)、例えばオイコス(登録商標)AP2050、AP2060、AP2080、AP2120、AM2060、AK2045、TDP2050、TDP2060(以上日清紡績株式会社製)、例えば4000CR、PS−750CR、8890CR、WE−60CR、H−8010E、JH−3003N、HP21、HP55(以上日本バイリーン株式会社製)が挙げられる。
【0010】
本発明で上側又は最外層に用いる気孔容積率70%以上の基材としては、ベンリーゼ(登録商標)PO500、BA832、832R、BA112、112R、RB119、142、149、839(以上旭化成工業株式会社製)、エクーレ(登録商標)6301A、6401A、6501A、6601A、6701A、6A01A、ボランス(登録商標)4050P、4061P、4080P、4081P、4091P、7093P、7121P(以上東洋紡績株式会社製)、パネロン(登録商標)2610、270、6810、K550、5130、S30オフ、3700、RF860、TO510、IH250(以上ダイニック株式会社製)、オイコス(登録商標)AP2050、AP2060、AP2080、AM2060、AK2045、TDP2050、TDP2060(以上日清紡績株式会社製)、HP21、HP55(以上日本バイリーン株式会社製)等が挙げられる。
これらのシート状繊維基材は多数の貫通孔を開けることなく、金型の隅々までクリーニング部材及び成形部材を行き渡らせることが可能である。又、孔を開けないことから、クリーニング終了後の取り出しの際にも強度が有るので裂けたり、ちぎれたりすることが無い。
【0011】
本発明で下側に用いる気孔容積率40%以下の基材としては、気孔容積率40%以上の既存の不織布(例えば、上記の気孔容積率70%以上の基材)をプレス機等で圧縮することにより容易に得ることができる。
又、本発明で下側に用いる耐熱性フィルムとしては、150℃以上の耐熱性を有するフィルム、好ましくは200℃以上の耐熱性を有するフィルムが好適に用いられる。
【0012】
これら下側に用いる基材は、シート状繊維基材と耐熱性フィルムを積層して用いることもできる。特に気孔容積率40%以下の基材は、圧縮して厚みが無くなるので、複数枚重ねて使用することもできる。
【0013】
これら基材の大きさは特に定めるものではないが、金型面積より大きめのサイズを用いる方が良い。これはエアベント部等のクリーニングに際し樹脂漏れしても余白部分で吸収でき、溢れ出た樹脂の清掃に多大な時間を要することを回避するためである。
これら余白部分の長さは、基材と樹脂の組み合わせにより基材への樹脂の含浸性が異なるため特に定めるものではないが、クリーニング終了後の作業性等を考慮すると金型の端縁部より約5cm以上あったほうが良い。
【0014】
これら基材は、タブレット状、顆粒状、粉状、シート状又は板状の少なくとも1種のクリーニング部材を内包するが、2枚の基材を張り合わせて内包することもできるし、金型面積の2倍以上の基材を袋状にして内包することもできる。2枚の基材を貼り合わせて使用する場合は、気孔容積率70%以上の基材を用いて上側とし、下側に漏れない基材を配置したほうがよい。
【0015】
又、これら基材は、その一部または全部を熱可塑性樹脂フィルムや熱可塑性樹脂テープで被覆したものや、両面テープ、接着剤及び粘着剤等(以下、内包部材と略称することがある。)から選ばれる少なくとも1種の内包部材を貼り付けたものを用いることができる。
これら内包部材の被覆方法は特に定めるものではないが、一般的には基材と熱可塑性樹脂フィルムをラミネートする方法、一定幅の熱可塑性樹脂テープを貼り付ける方法、熱可塑性樹脂フィルムの中心を適度の大きさにカットしたフィルムを基材とラミネートして被覆する方法等が挙げられる。また、内包部材を使わずにシ−ト状基材を圧着又は変形させることで接着することにより被覆することもできる。
【0016】
内包する方法は、特に定めるものではないが、一例を挙げると、まず、1枚の熱可塑性樹脂フィルム被覆シート状基材の上に一定重量のタブレット状、顆粒状、粉状、シート状又は板状の少なくとも1種のクリーニング部材を置き、その上方より下方のシート状基材と同形状のシート状基材を被せることで作製される。
更に重ね合わされたシート状基材を、クリーニング部材がずれないようにヒートシールすることにより完了する。
なお、クリーニング部材が移動しないように適度の面積に区分したほうが、移送時、搬送時にクリーニング部材が偏ることがないので好ましい。
また、両面テープ、接着剤及び粘着剤等を適度の面積に貼り付けたシ−ト状基材で内包することもできる。
【0017】
これらの内包部材をシ−ト状基材に貼り付けたり、ヒートシールしたりする場合は、最外側部分を二重にヒートシールすることが好ましい。このことにより、内側の内包部材が金型の熱により溶融してクリーニング部材が流れ出しても二重にしてあるため、外側の内包部材で止まり、樹脂漏れを防止することが出来る。
【0018】
本発明のクリーニング部材の主原料はメラミン系樹脂である。
メラミン系樹脂は、メラミン等のトリアジン類をホルムアルデヒド等でメチロール化した樹脂であり、一般的にはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂が用いられる。
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は一般的には水溶液の状態で製造され、水溶液を、例えば、スプレードライ等で乾燥させると粉状クリーニング部材が得られ、水溶液にパルプをブレンドした後、乾燥させると顆粒状物が得られ、粉状や顆粒状の形状樹脂を打錠してタブレット状クリーニング部材が得られる。
【0019】
又、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂水溶液を、シート状基材に含浸させ、乾燥させるとシート状クリーニング部材となる。板状は、粉状又は顆粒状を打錠機にて打錠することにより得ることが出来る。
基材に含浸させる場合は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂水溶液の中に基材を通過させた後、乾燥させるだけでシート状のクリーニング部材を製造することが出来る。
基材への樹脂の含浸率は、例えば、基材の種類を変えたり、樹脂液濃度を調整したり、含浸させた樹脂液の絞り具合を調節したりすることにより目的とする含浸率にすることが出来る。また、樹脂の硬化性や流動性を調整することにより基材への含浸率を調整することも出来る。
【0020】
粉状、顆粒状のクリーニング部材は、他の添加剤(例えば、滑剤、鉱物質粉体、硬化触媒等)を添加した後、例えばニーダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ボールミル等で均一に混合して得ることができ、タブレット状はこれらを打錠することで得られる。
【0021】
製造されたシート状又は板状のクリーニング部材は、四角形、長方形、短冊形及びその他の形状に切って使用することができ、含浸率の高い部材は1乃至2枚程度、含浸率の低い部材は複数枚重ねて使用することも出来る。
又、部材を金型の形状にあわせて作製することや、キャビティ及びポット部に効率良く樹脂が充填されるように配置することが可能である。
これらシート状又は板状のクリーニング部材を用いることにより、金型に対して均一に樹脂を配置することが可能となり、キャビティ内への樹脂の未充填を防ぐことが出来る。
【0022】
本成形金型用クリーニング材の基材は、成形後には成形物の中に取り込まれるため、成形物の強度を向上させるフィラーと同様の効果がある。市販のクリーニング部材には、成形後の成形物強度を向上させるためにパルプを使用しているが、これをシ−ト状基材に置き換えることによりフィラー間の結合力が強くなり、その結果、成形物強度は向上する。樹脂の浸透性は気孔容積率が70%以上の基材を上側又は最外層に用いることにより解消させ、フィラーと基材を併用することにより、成形物強度はさらに向上する。
また、成形物の強度が向上することにより、従来金型汚れ成分と金型との結合力が成形物強度より強いために発生していたチッピングを防止することが可能となり、その結果、クリーニング性と併せて作業性も向上する。
【0023】
本発明のクリーニング材は、タブレット状、顆粒状、粉状、シート状又は板状のクリーニング部材の他に未加硫の合成ゴム及び/又は天然ゴムを成形部材として内包することが出来る。
本発明に用いる合成ゴムとしては、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン重合体、スチレン−イソプレン重合体、アクリロニトリル−ブタジエン重合体、エチレン−α−オレフィン系重合体、エチレン−α−オレフィン−ポリエン重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック重合体、水素化−スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック重合体、エチレン系アイオノマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
これら未加硫の合成ゴム又は天然ゴムは、加熱溶融時に適度な粘弾性を示すので、金型を型締めした時にシート状基材を中心から上下の金型方向に移動させる重要な働きをする部材であり、この働きによりシ−ト状基材を金型面に近い位置に配置させることが可能となり、キャビティのコーナーやエアベント等で発生するチッピングを軽減することが出来る。また、この働きはキャビティ内への樹脂の充填性についても向上させることが可能となるので、クリーニング部材の流動性不良やクリーニング時の圧力不足等から発生するキャビティ内への樹脂の未充填等の不具合についても解消することが出来る。
【実施例】
【0025】
以下に実施例などを挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例などによりなんら限定されるものではない。
【0026】
参考例1
メラミン480重量部とホルマリン(37%水溶液)522重量部を加熱反応し、公知の方法でメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を作り、得られた樹脂液にパルプ248重量部を加えて混練した後、減圧乾燥させてパルプ混入メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を製造した。得られた樹脂を剪断式の粉砕機で粗粉砕することによりメラミン−ホルムアルデヒド樹脂の顆粒を得た。
【0027】
製造例1
参考例1で得られたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂の顆粒60重量部、市販のメラミン樹脂(日本カーバイド工業株式会社製 ニカレジンS−176)40重量部、安息香酸0.5重量部及びステアリン酸亜鉛0.5重量部をボールミルにて混合粉砕することにより金型洗浄用樹脂組成物を得た。
得られた金型洗浄用樹脂組成物を打錠機にて打錠することにより、幅150mm、長さ200mm、厚さ4mmの板状クリーニング部材Xを得た。
【0028】
製造例2
製造例1で得られた板状クリーニング部材Xを粗砕機により粉砕した後、篩により微粉を除去して顆粒状クリーニング部材Yを得た。
【0029】
製造例3
ムーニー粘度15のエチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部及び石油系炭化水素を主成分とするオイル10重量部を加圧ニーダーで10分間混練し、得られた塊状物を2軸押出機にて押出してシート状とした後、更に加圧ロールを用いて幅150mm、厚さ3mmのシート状成形部材Qを得た。
【0030】
〔実施例1〕
製造例1で得られた板状クリーニング部材Xを長さ300mm、幅200mm、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの中央に配置し、その上に長さ300mm、幅200mmのHP21(日本バイリーン株式会社製)のシート状繊維基材(気孔容積率94%)を配置して板状クリーニング部材Xを挟み込むと共に、80℃で加圧してクリーニング部材Xを固定する。次に端面を加熱溶融させることにより接着し、図1に示すシート状金型洗浄用クリーニング材Aを得た。
得られたシート状金型洗浄用クリーニング材Aを用いたクリーニング試験結果を表1に記す。試験結果から判るように、シート状金型洗浄用クリーニング材Aは良好な清掃効果を示した。
【0031】
〔実施例2〕
予め加圧して気孔容積率40%以下に調整したベンリーゼBA112(旭化成株式会社製)を長さ300mm、幅200mmに裁断し、これを2枚重ねた上に、同サイズで気孔容積率未調整のベンリーゼBA112(旭化成株式会社製、気孔容積率85%)を配置し、3方の端面より内側に25mmの部分を熱可塑性フィルムを加熱溶融して接着させ、その中に製造例2で得られた顆粒状クリーニング部材Yを充填した後、残る一方を同様に端面から内側に25mmの部分で接着させることにより、顆粒状クリーニング部材Yを内包させる。次にそれぞれの端面を同様に熱可塑性フィルムを加熱溶融させることにより接着し、図2に示すシート状金型洗浄用クリーニング材Bを得た。
得られたシート状金型洗浄用クリーニング材を用いたクリーニング試験結果を表1に記す。試験結果から判るように、シート状金型洗浄用クリーニング材Bは良好な清掃効果を示した。
【0032】
〔実施例3〕
予め加圧して気孔容積率40%以下に調整したボランス4091P(東洋紡績株式会社製)を長さ300mm、幅200mmに裁断し、その上に、同サイズに裁断した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを乗せて重ね合わせる。上側のポリエチレンテレフタレートフィルムの中央部に製造例1で得られた板状クリーニング部材Xを配置した後、下側のシート状基材と同サイズで気孔容積率未調整のボランス4091P(東洋紡績株式会社製、気孔容積率94%)を配置し、80℃の温度で加圧して板状クリーニング部材Xを上側の基材に固定する。次に端部を加熱溶融させることにより接着して、図3に示すシート状金型洗浄用クリーニング材Cを得た。
得られたシート状金型洗浄用クリーニング材Cを用いたクリーニング試験結果を表1に記す。試験結果から判るように、シート状金型洗浄用クリーニング材Cは良好な清掃効果を示した。
【0033】
〔実施例4〕
予め加圧して気孔容積率40%以下に調整したベンリーゼBA112(旭化成株式会社製)を長さ300mm、幅200mmに裁断し、その中央部に製造例3で得られたシート状成形部材Qを配置する。次に、製造例1で得られた板状クリーニング部材Xをシート状成形部材Qの上に配置し、その上から下側のシート状基材と同サイズで気孔容積率未調整のベンリーゼBA112(旭化成株式会社製、気孔容積率85%)を重ねて配置し、80℃の温度で加圧することにより各部材を固定させる。最後にそれぞれの端面を加熱溶融させることにより接着して、図4に示すシート状金型洗浄用クリーニング材Dを得た。
得られたシート状金型洗浄用クリーニング材Dを用いたクリーニング試験結果を表1に記す。試験結果から判るように、シート状金型洗浄用クリーニング材Dは良好な清掃効果を示した。
【0034】
〔実施例5〕
長さ300mm、幅200mm、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、同サイズのベンリーゼBA112(旭化成株式会社製、気孔容積率85%)を配置し、3方の端面より内側に25mmの部分を熱可塑性フィルムを加熱溶融して接着させ、その中に製造例2で得られた顆粒状クリーニング部材Yを充填した後、残る一方を同様に端面から内側に25mmの部分で接着させることにより、顆粒状クリーニング部材Yを内包させる。次にそれぞれの端面を同様に熱可塑性フィルムを加熱溶融させることにより接着し、図5に示すシート状金型洗浄用クリーニング材Eを得た。
得られたシート状金型洗浄用クリーニング材Eを用いたクリーニング試験結果を表1に記す。試験結果から判るように、シート状金型洗浄用クリーニング材Eは良好な清掃効果を示した。
【0035】
〔実施例6〕
長さ300mm、幅200mm、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの中央部に、製造例3で得られたシート状成形部材Qを配置する。次に、製造例1で得られた板状クリーニング部材Xをシート状成形部材Qの上に配置し、その上から下側の基材と同サイズのベンリーゼBA112(旭化成株式会社製、気孔容積率85%)を重ねて配置し、80℃の温度で加圧することにより各部材を固定させる。最後にそれぞれの端面を加熱溶融させることにより接着して、図6に示すシート状金型洗浄用クリーニング材Fを得た。
得られたシート状金型洗浄用クリーニング材Fを用いたクリーニング試験結果を表1に記す。試験結果から判るように、シート状金型洗浄用クリーニング材Fは良好な清掃効果を示した。
【0036】
〔比較例1〕
実施例1において、下側の耐熱性フィルムの替わりにHP21(日本バイリーン株式会社製、気孔容積率94%)を用いることにより、図7に示すシート状金型洗浄用クリーニング材Gを得た。
得られたシート状金型洗浄用クリーニング材Gを用いたクリーニング試験結果を表1に記す。
【0037】
尚、図1〜7中、1は板状クリーニング部材X、2は気孔容積率70%以上のシート状基材、3は耐熱性フィルム、4は加熱溶融部分、5は顆粒状クリーニング部材Y、6は気孔容積率40%以下のシート状基材、7は熱可塑性フィルム、8はシート状成形部材Qである。
【0038】
A〜Gのシート状金型洗浄用クリーニング材を用いて下記の試験方法により金型清掃試験を実施した結果を表1に記す。
【0039】
試験方法
市販のビフェニル系エポキシ樹脂成形材料(日立化成株式会社製 CEL−9200XU)を用い、QFNの金型で500ショットの成形により金型の汚れを実現した。この汚れた金型を用いて、金型表面がきれいに清掃されるまでシート状金型洗浄用クリーニング材を繰り返し成形することにより評価を行った。評価基準は、金型クリーニング材成形後の成形物除去時間の平均値を用いた。
また、樹脂充填性については、キャビティ数の合計の内、キャビティ内に完全に樹脂が充填された箇所の割合で評価を行った。
さらに、チッピングについてはキャビティ内に発生したチッピングの個数で評価を行った。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の成形金型用クリーニング材は、下型側に吸引口を有する片面封止用成形金型のクリーニングにおいて、高価なプリント基板や代用の治具等を使用する必要が無いことから、簡単にしかも効率良く金型をクリーニングすることが可能である。また吸引口への樹脂進入などの問題が無いことから、樹脂漏れによるキャビティ内への樹脂未充填等が発生せず、成形後の成形物を容易に金型から除去することが出来る。さらに気孔容積率70%以上のシート状繊維基材を金型クリーニングシートの上型側に用いることにより、シート状基材の強度を落とすことなく金型クリーニング部材を金型の隅々まで行き渡らせることができる。これらの理由により、本発明の成形金型用クリーニング材は、優れた金型クリーニング性と作業性を発揮することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層のシート状基材でクリーニング部材を内包したシート状の成形金型用クリーニング材であって、上記シート状基材が、上側又は最外層に気孔容積率70%以上のシート状繊維基材を用い、下側に気孔容積率40%以下のシート状繊維基材及び/又は耐熱性フィルムを用いた構造であることを特徴とする成形金型用クリーニング材。
【請求項2】
上記クリーニング部材と共に、成形部材を内包している請求の範囲第1項記載の成形金型用クリーニング材。
【請求項3】
上記成形部材が、未加硫の合成ゴム及び/又は天然ゴムである請求の範囲第2項記載の成形金型用クリーニング材。
【請求項4】
上記成形金型用クリーニング材が、基板等の片面に樹脂封止する金型をクリーニングするクリーニング材である請求の範囲第1〜3項の何れかに記載の成形金型用クリーニング材。
【請求項5】
上記クリーニング部材が、タブレット状、顆粒状、粉状、板状及びシート状である請求の範囲第1〜4項の何れかに記載の成形金型用クリーニング材。
【請求項6】
上記成形金型用クリーニング材の一部又は全部を、熱可塑性樹脂フィルム又はテープの少なくとも1種を用いて被覆して積層又は熱融着することにより、クリーニング部材又は、クリーニング部材及び成形部材を内包している請求の範囲第1〜5項の何れかに記載の成形金型用クリーニング材。
【請求項7】
上記成形金型用クリーニング材を、両面テープ、接着剤及び粘着剤の少なくとも1種を用いて接着することにより、クリーニング部材又は、クリーニング部材及び成形部材を内包している請求の範囲第1〜5項の何れかに記載の成形金型用クリーニング材。
【請求項8】
上記シート状基材を圧着又は変形させることで接着することにより、クリーニング部材又は、クリーニング部材及び成形部材を内包している請求の範囲第1〜5項の何れかに記載の成形金型用クリーニング材。
【請求項9】
請求の範囲第1〜8項の何れかに記載の成形金型用クリーニング材を、加熱した金型内に挟み込み、一定時間加熱加圧して硬化させた後、クリーニング材を除去することを特徴とする成形金型のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/030464
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514175(P2005−514175)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013637
【国際出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】