説明

戸閉保安回路を含む車両用戸閉制御装置

【課題】リレーのハードシーケンス回路のみで、走行中にドア開スイッチを押した場合その痕跡を残し、それにより走行中にドアが開いてしまった原因が戸閉制御回路にあるのか戸閉保安回路にあるのか特定を可能にすること。
【解決手段】車両が走行中(速度が5km/h以上)で動作する速度保安リレーを用いて車両が走行中(速度が5km/h以上)はドア開スイッチを押しても、ドアを開けるためのリレーが励磁されない回路と、車両が走行中(速度5km/h以上)にドア開スイッチを押した場合、車両が停車(速度が5km/h以下)しても走行表示灯の点灯が保持する回路とをリレーのハードシーケンス回路のみで構成する。これにより走行中にドア開スイッチを押すという誤操作の証拠を残し、走行中にドアが開いてしまった原因が戸閉制御回路にあるのか戸閉保安回路にあるのか特定するのが容易になり、迅速に原因究明ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電車のドアは戸閉保安装置により走行中は間違ってドア開スイッチを押してもドアが開かないような回路になっている。しかし、万が一走行中ドアが開いてしまった場合、原因が戸閉制御装置と戸閉保安装置のどちらにあるのか判断が難しかった。
本発明は、走行中にドア開スイッチを押した場合、停車しても走行表示灯が点灯していることにすることにより、走行中にドアが開いてしまった原因が戸閉制御回路にあるのか戸閉保安回路にあるのか特定するのを容易にした車両用戸閉制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の戸閉制御装置は、走行中にドア開スイッチを押した場合その痕跡が残らず、走行中にドアが開いてしまった原因を究明するのが困難だった。単に扉が開いたことの検知手段を設けることは知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−157363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リレーのハードシーケンス回路のみで、走行中にドア開スイッチを押した場合その痕跡を残し、それにより走行中にドアが開いてしまった原因が戸閉制御回路にあるのか戸閉保安回路にあるのか特定を可能にすること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、戸閉制御回路と戸閉保安回路を有する戸閉制御装置において、車両が走行中(速度が5km/h以上)で動作する速度保安リレーを有するハードシーケンス回路により、車両が走行中(速度が5km/h以上)はドア開スイッチを押しても、ドアを開けるためのリレーが励磁されず、車両が走行中(速度5km/h以上)にドア開スイッチを押した場合、車両が停車(速度が5km/h以下)しても走行表示灯の点灯が保持されることを特徴とする。
【0006】
すなわち、戸閉制御回路と戸閉保安回路を一体にし、車両が走行中(速度が5km/h以上)で動作する速度保安リレーを用いて以下のことを実現する回路をリレーのハードシーケンス回路のみで構成する。
(1)車両が走行中(速度が5km/h以上)はドア開スイッチを押しても、ドアを開けるた
めのリレーが励磁されない回路。
(2)車両が走行中(速度5km/h以上)にドア開スイッチを押した場合、車両が停車(速
度が5km/h以下)しても走行表示灯の点灯が保持する回路。
【発明の効果】
【0007】
本発明を使用することによりリレーのハードシーケンス回路のみで走行中にドア開スイッチを押すという誤操作の証拠を残し、それにより走行中にドアが開いてしまった原因が戸閉制御回路にあるのか戸閉保安回路にあるのか特定するのが容易になり、迅速に原因究明ができる。


【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の戸閉制御装置を構成する回路図を示す。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
1)走行中は1、2の速度保安リレーのb接点は閉じているので走行表示灯3が点灯す
る。
2)ドア開スイッチ4を押すと5のリレーが励磁され、6の接点が閉じる。
3)それにより7のリレーが励磁され、8の接点が閉じることにより5のリレーの励磁
が自己保持される。
4)6の接点も閉じたままになるので、7のリレーの励磁も自己保持される。
5)走行中は2のb接点は閉じているので4)により9のリレーが励磁され、10のa
接点が閉じることにより9のリレーの励磁が自己保持される。よって、速度が5km
/h以下になって2と19のb接点が開いても、6の接点から10の接点のラインに
より9のリレーの励磁は自己保持される。
6)上記より走行中にドア開スイッチ4を押すと、11のリレーのb接点が開いている
ことによりドア開指令を実行する12のリレーは励磁されないので、ドア開スイッ
チ4を押してもドアは開かない。
7)速度が5km/h以下になって1のb接点が開いても、9のリレーは自己保持している
ため、13のa接点が閉じているので走行表示灯3は点灯し続ける。
8)上記より5のリレーの励磁が解消されないかぎり、つまりドア閉スイッチ14を押
すと釈放する16のb接点が開かないかぎり7,9のリレーは自己保持し続けるの
で、走行表示灯3を消灯するには停止中は19の接点は開いているので、ドア閉ス
イッチ14を押して15のリレーを励磁すれば、16のb接点が開くので5のリレ
ーは消磁され、6のa接点は開く。よって7、9のリレーが消磁されるので、13
のa接点が開き走行表示灯3は消灯する。
【0011】
上記1)〜8)により走行中にドア開スイッチを押した場合、ドアが開かず、停車しても走行表示灯が点灯し続ける回路を実現できる。

上記の回路を構成することにより、以下のことが実現できる。
(1)走行中にドア開スイッチを押した場合、停車しても走行表示灯が点灯を保持する
ことによりその痕跡を残すことができる。
(2)走行中にドアが開いてしまって、かつ停車しても走行表示灯の点灯していた場合
、走行中にドア開スイッチを押したのだから戸閉保安機能が働くはずが機能しな
かったことになるので、原因は戸閉保安回路にあることが明らかにできる。
(3)走行中にドアが開いてしまって、かつ停車した時、走行表示灯の点灯していなか
った場合、走行中にドア開スイッチを押していないのにドアが開いてしまってい
るので、まず戸閉制御回路に原因がある。たとえ、ドア開スイッチを押していな
くても走行中はドアを開かないようにするのが戸閉保安回路だから、戸閉保安回
路にも原因がある。よって、この場合、戸閉制御回路と戸閉保安回路の両方に原
因があることがわかる。

【符号の説明】
【0012】
1,2,19 速度保安リレーのb接点(速度5km/h以下で開状態)
3 走行表示灯(速度5km/h以上で点灯)
4 ドア開スイッチ
5 ドア開指令保持リレー1
6 ドア開指令保持リレー1のa接点
7 ドア開指令保持リレー2
8 ドア開指令保持リレー2のa接点
9 戸閉保安リレー
10,13 戸閉保安リレーのa接点
11 戸閉保安リレーのb接点
12 ドア開指令実行リレー
14 ドア閉スイッチ
15 ドア閉実行リレー
16 ドア閉実行リレーのb接点
17,18 ドア開指令実行リレーのa接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸閉制御回路と戸閉保安回路を有する戸閉制御装置において、車両が走行中(速度が5km/h以上)で動作する速度保安リレーを有するハードシーケンス回路により、車両が走行中(速度が5km/h以上)はドア開スイッチを押しても、ドアを開けるためのリレーが励磁されず、車両が走行中(速度5km/h以上)にドア開スイッチを押した場合、車両が停車(速度が5km/h以下)しても走行表示灯の点灯が保持されることを特徴とする戸閉制御回路。


【図1】
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【公開番号】特開2012−25268(P2012−25268A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165518(P2010−165518)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)