説明

扉用金属製取手

【課題】異なる扉端部の板厚に対応でき、取手部材の質量をより少なくして低コストに製造でき、取手部材の質感や外観の見栄えを損なうことのない扉用金属製取手を提供しようとするものである。
【解決手段】前垂れ片(341)と水平片(342)と後片(343)からなる断面フック状の指掛部(34)と、後片(343)が下がるに従って前方に傾斜させ奥行き幅を持たせた扉端面当接部(33)と、該扉端面当接部(33)の後方から垂下させ扉裏面(4)に当接させる後壁(35)とを有する扉用金属製取手であって、
前記扉端面当接部(33)は、下面の奥行き幅が前記水平片(342)の奥行き幅よりも短く、下面先端から後壁(35)にかけて面一で、下面の奥行き方向ほぼ中央部に内部が中空の溝(331)を長手方向に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開き戸や引出しの扉の端部幅方向に長尺に取り付けて使用される、所謂ライン取手と呼ばれる扉用金属製取手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に、地球温暖化防止のために省資源の機運が高まり、また、希少金属等の高騰対応としてより少ない原材料で製品を製造することが要求され、製品の質感や見栄えは維持しつつ、省資源でより合理的な製品製造が求められている。
家具の扉に使用されるアルミニウム製ライン取手は、従来、アルミニウムの押出し成型により長尺の取手部材を製造し、該長尺の取手部材を扉の巾に合わせて切断した後、該切断面のバリ等を無くすため研摩して取手が製造されていた。
また、特許文献1には、扉端部に確実かつ容易に位置決めしつつ精度良く取付できて扉の意匠的価値を向上させると共に、部材数を削減して取付作業性を向上させ得る扉の取手構造が紹介されている。
また更に、サイドキャップ付き取手として、施工性およびメンテナンス性に優れた、新しい扉一体型把手が特許文献2に紹介されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−216075号公報
【特許文献2】特開2002−213111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、長尺状に形成された取手本体に嵌合部と固定部が一体成形され、また嵌合部と固定部の少なくとも一方に、嵌合部に嵌め込まれる扉端部の板厚に対応し得る肉薄部や軟質部等からなる板厚対応手段が設けられた扉の取手構造であるため、軟質材料の取手部材の場合は異なる板厚の扉に対応できるも、肉薄部が曲がり難いアルミニウム製金属取手部材には適用し難く、また取手部材そのものの省資源化に更なる課題が残されていた。
【0005】
また、特許文献2の扉一体型把手には、本発明の技術的課題とは若干異なるも、サイドキャップ付き取手が開示されており、把手部材に固定穴を設けサイドキャップの固定突起を嵌合固定することでサイドキャップを取付け、また取手スライドのための係合溝を該サイドキャップで移動止めする構造となっているため、高価なアルミニウム製取手部材の端部に安価なサイドキャップで対応することはできるも、取手把持部に固定穴が必要なため取手部材の厚みが厚くなり、更なる省資源化が困難であると言う課題があった。
【0006】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、異なる扉端部の板厚に対応でき、取手部材の質量をより少なくして低コストに製造でき、取手部材の質感や外観の見栄えを損なうことのない扉用金属製取手を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の扉用金属製取手は、前垂れ片と水平片と後片からなる断面フック状の指掛部と、後片が下がるに従って前方に傾斜させ奥行き幅を持たせた扉端面当接部と、該扉端面当接部の後部から垂下させ扉裏面に当接させる後壁とを有する扉用金属製取手であって、
前記扉端面当接部は、下面の奥行き幅が前記水平片の奥行き幅よりも短く、下面先端から後壁にかけて面一で、下面の奥行き方向ほぼ中央部に内部が中空の溝を長手方向に設けたものである。
【0008】
この発明にあっては、肉厚となる扉端面当接部内に中空部を設けるとともに、奥行きを短くしているため、金属製取手の質量を少なくでき低コストとすることができるとともに、扉端面当接部の下面先端から後壁にかけて面一としているので、下面奥行き幅よりも大きい肉厚の扉であっても扉端面に密着固着できるため異なる肉厚の扉にも使用することができるため、個別扉に対応するように複数の取手を用意する必要がなく取手製造の金型数を少なくし製造コストを低減することができる。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の扉用金属製取手は、請求項1の発明に加えて、前記指掛部及び扉端面当接部の長手方向両端面にはサイドキャップが設けられ、該サイドキャップは、前記指掛部及び扉端面当接部の長手方向端面に当接するキャップ基部と該キャップ基部に立設する内接突片および固定突起よりなり、内接突片は指掛部の内面形状に沿う形状の薄板状で、内接突片の奥側高さは前垂れ片内に収まるように前垂れ片高さよりも短く形成されており、固定突起は扉端面当接部内の前記中空部に挿入して嵌合可能な固定突起凸条を設けている。
【0010】
この発明にあっては、請求項1の効果に加え、長尺の押出成形で製造した金属製取手部材を扉幅に合わせて切断し加工して製造する場合に、切断個所にサイドキャップを設けるため、キャップを使用しない場合のように切断面の面取りが不用となり研摩工程が省略出来るとともに、内接突片は指掛部の内面に沿って薄く嵌合させ、且つ前面から見えないように前垂れ片内に収まるよう短く形成されているため見栄えがよく、且つキャップ嵌合のための嵌合穴を指掛部側面に設ける必要がないため、肉厚を薄くして材料の質量を低減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明は異なる扉端部の板厚に対応でき、取手部材の質量をより少なくして低コストに製造でき、取手部材の質感や外観の見栄えを損なうことがないと言う効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る家具用金属製取手を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて以下説明する。
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。先ず第1図は本発明の扉用金属製取手の部材斜視図であり、図2は、本発明のサイドキャップ5の第三角法による正投影図であり、図3は、本発明の扉用金属製取手60を扉1に取り付けた時の斜視図で、図4は、本発明の扉用金属製取手の使用例を示すキッチン台の斜視図ある。以下、図1及び図3の紙面右下側を前面側(手前側)とし、紙面左上側を後面側(奥側)として説明する。
【0013】
図3は、本発明の扉用金属製取手60を扉1に取り付けた状態を示している。符号1は扉を示し、指掛部34と扉端面当接部33とサイドキャップ5と後壁35よりなる本発明の扉用金属製取手60を扉端面2に取り付けた斜視図である。本発明の扉用金属製取手60は、例えば、図4に示すキッチン台60の引出し前板扉66や開き戸扉67等に用いられる所謂ライン取手であって、その他の使用例としては、図示しない戸棚や洗面台の収納部を塞ぐ前板の手掛け部として用いられる。
【0014】
本発明の扉用金属製取手60の部材構成は、図1に示すように取手部材3と該取手の長手方向両端に嵌合固定されるサイドキャップ5とからなる。取手部材3は、例えばアルミニウムの押出し成形にて、断面形状が同一に成形され、所定長さに切断されたものである。取手部材3は、前垂れ片341と水平片342と後片からなる断面フック状の指掛部34と、後片が下がるに従って前方に傾斜させ奥行き幅を持たせた扉端面当接部33と、該扉端面当接部33の後方から垂下させ扉裏面4に当接させる後壁35よりなり、奥行巾を持たせることで質量感を出すとともに、扉開閉の手掛け部を取手の長手方向全体に渡って設け、取り扱いやすくしている。
【0015】
しかしながら、質量感を持たせることは取手部材3の質量を重くさせ、省資源に反するため、本発明は軽量化を図るために、奥行巾を持たせた扉端面当接部33下面の奥行き方向ほぼ中央部に内部が中空の溝331を長手方向に設けており、更に、下面の奥行き幅が前記水平片342の奥行き幅よりも短くなるような断面形状としている。
また、更に、扉端面当接部33の下面は、下面先端から後壁35にかけて面一とし、従来技術のような扉端面2を挟み込んで嵌合固定する必要のない形状として、扉端面当接部33を扉端面2に当接させ、かつ扉裏面4に後壁35内面を当接させて、図示しないビス等の固定具で後壁35を扉裏面4に固着させるようにしている。そのため、扉厚みが扉端面当接部33の奥行寸法d以上の扉1であっても取付可能である。
【0016】
次に、図1、図2のサイドキャップ5について説明する。サイドキャップ5は図に示す如く、指掛部34及び扉端面当接部33の長手方向端面に当接するキャップ基部53と、該キャップ基部53に立設する内接突片51と、少なくとも1個以上の固定突起52より構成し、材質は柔軟性のある硬質樹脂の成形品である。
内接突片51は指掛部34の内面形状に沿う形状の薄板状で、前垂れ片内に収まるように高さは前垂れ片高さHよりも短い長さhに形成されており、前面の正面側からは前垂れ片341に隠れて見え難い長さであり、外観を見栄えのよいものとしている。固定突起52は扉端面当接部33の中空部332に挿入勘合させてサイドキャップ5が取手部材3にズレなく取付られるようにするもので、本実施例では2個の固定突起52で構成されている。
【0017】
また、内接突片51には内接突片凸条511を設け、固定突起52には固定突起凸条521がそれぞれ設けられており、サイドキャップ成形寸法誤差を吸収して取手部材3に確実に固定させる構造とするとともに、先端部にそれぞれ内接突片テーパー512および固定突起テーパー522を設けて取手部材3端面に挿入嵌合しやすくしている。
さらに、内接突片51の後片343当接部側には内接突片係合突起513があり、取手部材3の後片343に設けられた係合穴344に、該内接突片係合突起513が嵌り込みサイドキャップ5を抜け止めするよう構成している。
【0018】
そのように、取手部材3の両端面にサイドキャップ5を嵌合取付した扉用金属製取手60であるため、サイドキャップ5を設けないアルミニウム製取付部材では、両端端面を安全のため面取り研摩して仕上る必要があるが、サイドキャップ5で切断面を覆うため、取手製作時の研摩工程を省略できると共に、取手材質よりも安価な樹脂製のサイドキャップ5で取手端面を構成しているため、取手を低コストで製造できる。また、前述の係合穴344と内接突片係合突起513のサイドキャップ5抜け止め構造が設けられているため、取手部材3へのサイドキャップ5取り付けでは接着剤を用いなくてもサイドキャップ5の取り付けができるため、更に取手製作工程が合理化できる。
【0019】
なお、当然のことながらサイドキャップ5の接着剤不使用の取り付けにあっては、後片343の裏面側から係合穴344に勘合挿入された内接突片係合突起513にドライバー等の工具を押し当てて係合解除することで、簡単にサイドキャップ5を取外せるため、本発明の扉用金属製取手60を扉1に取り付けた後であっても、サイドキャップ5を取替え交換することができる。
【0020】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0021】
例えば、本実施例は、取手部材3にサイドキャップ5を取り付けた例で示したが、請求項1に記載の発明は、サイドキャップ5がない場合も含まれ、金属製取手部材3を長手方向に中空溝331を設け、扉端面当接部33の奥行長さdを水平片342奥行長さDよりも短くして、金属製取手部材3の質量を少なくしたものであれば足りる。
また、材質としては、アルミニウムを例に用いたが、他の金属であってもよく、また金属に各種の塗装色を付けたものや、スパッタリング、コーティング等による表面処理を加えて装飾性を持たせた取手部材3であっても良く、高価な希少金属や高付加価値処理で製造される取手ほど、省資源効果は大きい。
【0022】
また更に、請求項2に示すサイドキャップ5の材質は柔軟性のある硬質樹脂で例示したが、特に樹脂に限定されるものではなく、取手部材3の端面に嵌合できる弾性体であればよく、また、サイドキャップ5に取手部材3と同色の表面処理を施したものであれば、更に見栄えが取手部材3とサイドキャップ5で一体化されて好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の扉用金属製取手の部材斜視図である。
【図2】本発明のサイドキャップの第三角法による正投影図である。
【図3】本発明の扉用金属製取手を扉に取り付けた時の斜視図である。
【図4】本発明の扉用金属製取手の使用例を示すキッチン台の斜視図ある。
【符号の説明】
【0024】
1 扉
2 扉端面
3 取手部材
33 扉端面当接部
331 溝
332 中空部
34 指掛部
341 前垂れ片
342 水平片
343 後片
344 係合穴
35 後壁
4 扉裏面
5 サイドキャップ
51 内接突片
511 内接突片凸条
512 内接突片テーパー
513 内接突片係合突起
52 固定突起
521 固定突起凸条
522 固定突起テーパー
53 キャップ基部
60 扉用金属製取手
61 キッチン台
62 カウンター
63 加熱器
64 水栓
65 シンク
66 引出し前板扉
67 開き戸扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前垂れ片(341)と水平片(342)と後片(343)からなる断面フック状の指掛部(34)と、後片(343)が下がるに従って前方に傾斜させ奥行き幅を持たせた扉端面当接部(33)と、該扉端面当接部(33)の後方から垂下させ扉裏面(4)に当接させる後壁(35)とを有する扉用金属製取手であって、
前記扉端面当接部(33)は、下面の奥行き幅が前記水平片(342)の奥行き幅よりも短く、下面先端から後壁(35)にかけて面一で、下面の奥行き方向ほぼ中央部に内部が中空の溝(331)を長手方向に設けたことを特徴とする扉用金属製取手。
【請求項2】
前記指掛部(34)及び扉端面当接部(33)の長手方向両端面にはサイドキャップ(5)が設けられ、該サイドキャップ(5)は、前記指掛部(34)及び扉端面当接部(33)の長手方向端面に当接するキャップ基部(53)と該キャップ基部(53)に立設する内接突片(51)および固定突起(52)よりなり、内接突片(51)は指掛部(34)の内面形状に沿う形状の薄板状で、内接突片(51)の奥側高さは前垂れ片内に収まるように前垂れ片高さよりも短く形成されており、固定突起(52)は扉端面当接部(33)内の前記中空部(332)に挿入して嵌合可能な固定突起凸条(521)を設けていることを特徴とする請求項1に記載の扉用金属製取手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−75590(P2010−75590A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249845(P2008−249845)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)