説明

扉装置および冷蔵庫

【課題】扉開放装置において開扉機能を実現する為の駆動手段の小型化を図り、かつ安全で安定した扉開放動作を実現できる小型の扉開放装置を提供する。
【解決手段】扉開放装置50は、冷蔵室ドア29aの全閉時から開扉に必要な第一の負荷に対応する駆動手段55による第一の動作と、開扉後に冷蔵室ドア29aをさらに開放するのに必要な第二の負荷に対応するバネ52による第二の動作とを有することにより、開扉を異なる負荷に対応した異なる手段で行い、一つの開扉手段のみで開扉する場合に比べて、扉開放装置50の負荷を低減し、小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の前面開口部を開閉自在に閉塞する扉を開放する扉開放装置を備えた扉装置および冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大型化する冷蔵庫の冷蔵室ドアの開放操作力を低減するために扉開放装置を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら、上記従来の扉開放装置について説明する。
【0004】
図19は、従来の扉開放装置を搭載した冷蔵庫の正面図である。図20は、従来の扉開放装置を搭載した冷蔵庫の要部縦断面図である。図21は従来の扉開放装置の推進力特性と扉の負荷との関係を示す図である。図19,20に示すように従来の冷蔵庫1の断熱箱体2は前面開口部2aを有し、上から冷蔵室3、野菜室4、製氷室5、切替室6、冷凍室7と複数の貯蔵室に区画されている。但し、製氷室5と切替室6とは左右に並んだ状態である。また、各貯蔵室の前面開口部2aには全閉時に各貯蔵室を閉塞し、断熱箱体2と開閉自在に連結された冷蔵室ドア3a、野菜室ドア4a、製氷室ドア5a、切替室ドア6a、冷凍室ドア7aを備える。また、冷蔵室ドア3aは冷蔵庫の右端部にてヒンジ8(図示せず)により断熱箱体2と回動自在に連結された回転ドアであり、野菜室ドア4a、製氷室ドア5a、切替室ドア6a、冷凍室ドア7aは断熱箱体2と前後方向に開閉自在に連結された引出しドアである。
【0005】
また、各扉の内面側の周縁部にはガスケット9が設けられ、ガスケット9内に備えられたマグネット10の磁力によりガスケット9が前面開口部2aに吸着することで閉鎖状態に保持される。
【0006】
また、ヒンジ8と反対側の左端部には、冷蔵室ドア3aの前面左側に配置されたハンドル11の操作を感知する開扉スイッチ12(図示せず)のON信号出力により動作し、動作時に冷蔵室ドア3aを押して冷蔵室ドア3aを開放する扉開放装置として電磁ソレノイド13を備える。
【0007】
電磁ソレノイド13は円筒状に形成されたコイル13a(図示せず)と、コイル13aを樹脂モールドしたコイルユニット13bと、コイルユニット13bに設けられたヨーク13cと、コイルユニット13b内においてコイルユニット13bを貫通した状態で軸方向に移動可能に設けられた磁性体製のプランジャ13dと、プランジャ13dに対し同軸上の前側に固定され非磁性体金属にて形成したプッシュロッド13eとを主要構成部品として構成され、ヨーク13cを断熱箱体2に固着し、動作時にはプランジャ13dとプッシュロッド13eとが一体となって前方向に移動する。
【0008】
更に、電磁ソレノイド13の下部は断熱箱体2の天井部に設けた凹部2bに備えられ、同じく上部はプッシュロッド13eの突出し部を除きカバー14にて覆われている。
【0009】
また、冷蔵室ドア3aのプッシュロッド13eと対向する位置には当接部3bを設け、冷蔵室ドア3aの全閉時には当接部3bとプッシュロッド13eが常に当接するよう設定されている。
【0010】
また、図21に示すように冷蔵室ドア3aを閉扉時よりマグネット10の吸着力を解除して開扉するための第一の負荷は最大2Kg・f程度であるが、開扉後に冷蔵室ドア3aを開放する第二の負荷は0.5〜1Kg・fと急激に1/2以下に小さくなる。
【0011】
従来の扉開放装置である電磁ソレノイド13の最大推進力は冷蔵室ドア3aのマグネット10の吸着力を解除するポイントに対応するよう設定されており、その最大推進力は約7Kg・fに設定されている。
【0012】
以上のように構成された扉開放装置について、以下その動作を説明する。
【0013】
まず、使用者がハンドル9を操作して開扉スイッチ12がON信号を出力すると電磁ソレノイド13が動作し、プッシュロッド13eが当接部3bを押しながら前に所定距離移動することにより冷蔵室ドア3aを押して冷蔵室ドア3aを開扉、開放する。
【0014】
この時、冷蔵室ドア3aを開扉する為に必要な第一の負荷に対応する電磁ソレノイド13の動作と、冷蔵室ドア3aを開扉後に開放する為に必要な第二の負荷に対応する電磁ソレノイド13の動作とは、プランジャ13dとプッシュロッド13eとが一体となって瞬間的に移動するという同一の手段にて実現される。
【特許文献1】特開2004−170070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の構成では、全閉時から扉を開ける為に必要な力に加えて、開扉後にさらに扉の開放量を大きくする為の力も必要となり駆動手段に大きな能力が求められる為、扉開放装置において大部分の空間を占める駆動手段が大きくなってしまい、結果として扉開放装置が大きくなってしまうという課題を有していた。
【0016】
また、開扉後にさらに扉の開放量を大きくする為の負荷である第二の負荷に対して全閉時から扉を開ける為に必要な負荷である第一の負荷が大きくなればなるほど第一の負荷に対応した能力の大きい駆動手段にて第二の負荷に対応することになり、扉開放の際の速度が速くなってしまうので扉開放時の使用者の安全性を損なう恐れがあるという課題も有していた。
【0017】
特に、冷蔵庫のように貯蔵室内を冷却すると貯蔵室内が冷蔵庫外と比べて負圧となり、扉を内部に引き込む力が発生し第一の負荷が増加してしまう為に、貯蔵室の設定温度や外気温の変化によって第一の負荷が変動するタイプの箱体の扉に従来の扉開放装置を用いた場合には、例えば、庫内が冷却されず常温で保管されている店頭展示時と、庫内が冷却される実使用時とでは扉開放動作の操作感が異なってしまい、使用者に扉開放装置の品位が悪いと思われる可能性があった。
【0018】
さらに、一般的な冷蔵庫においては、冷蔵庫本体と扉との間には磁力によって吸着力を発生させることで閉扉時の貯蔵室内の密閉性を高めている為、このタイプの冷蔵庫においては第一の負荷はさらに大きいものであり、開扉装置がより大型化する傾向があった。
【0019】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、開扉機能用の小型駆動手段を有し、扉の状態に関係無く安定でかつ安全な扉開放動作を実現できる小型の扉開放装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記従来の課題を解決するために、本発明の扉開放装置は、前面開口部を有する箱体と、前記箱体の前面開口部に回動可能に配設されるとともに前記箱体を略密閉する扉と、前記扉を開放する扉開放装置とを備え、前記扉を全閉時から開扉するのに必要な第一の負荷が、開扉後にさらに前記扉を開放するのに必要な第二の負荷より大きいものであって、前記扉開放装置は前記第一の負荷に対応する大きな開扉力を有する第一の動作と、前記第二の負荷に対応する前記第一の動作より小さな開扉力を有する第二の動作とを切り替える特性を有するものである。
【0021】
これによって開扉装置の全閉時から扉を開放する機能と、開扉後にさらに扉を開放する機能とを異なる手段で対応することができ、それぞれの機能を同一の手段で対応する場合に比べて、開扉装置の負荷を低減することができ、開扉装置を小型化することができる。
【0022】
また、それぞれの負荷に応じた開扉力を設定することができるので、開扉装置によって必要以上に速い速度で開扉を行うことを防ぐことができ、さらに開扉装置の負荷の低減に伴って、開扉装置を駆動する為の駆動手段の能力が低減でき、開扉装置の信頼性を向上させることができる。
【0023】
また、開扉後の扉開放動作時には第二の負荷に対応した第二の動作にて実現することにより、第一の負荷の大きさや変動に影響されること無く、第二の動作における開扉動作は任意の速度にて扉開放動作を行なうように設定することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の扉開放装置は、開扉機能用の駆動手段の小型化を図り、扉開放動作の安全性および信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
請求項1に記載の発明は、前面開口部を有する箱体と、前記箱体の前面開口部に回動可能に配設されるとともに前記箱体を略密閉する扉と、前記扉を開放する扉開放装置とを備え、前記扉を全閉時から開扉するのに必要な第一の負荷が、開扉後にさらに前記扉を開放するのに必要な第二の負荷より大きいものであって、前記扉開放装置は前記第一の負荷に対応する大きな開扉力を有する第一の動作と、前記第二の負荷に対応する前記第一の動作より小さな開扉力を有する第二の動作とを切り替える特性を有するものであることとなり、開扉装置の全閉時から扉を開放する機能と、開扉後にさらに扉を開放する機能とを異なる手段で対応することができ、それぞれの機能を同一の手段で対応する場合に比べて、開扉装置の負荷を低減することができ、開扉装置を小型化することができる。また、それぞれの負荷に応じた開扉力を設定することができるので、開扉装置によって必要以上に速い速度で開扉を行うことを防ぐことができるので、使用者の安全性を向上させることができる。また、開扉装置の負荷の低減に伴って、開扉装置を駆動する為の駆動手段の能力が低減でき、開扉装置の信頼性を向上させることができる。
【0026】
また、開扉後の扉開放動作時には第二の負荷に対応した第二の動作にて実現することにより、第一の負荷の大きさや変動に影響されること無く、任意の速度にて扉開放動作を行なうように設定することができるようになるので、第二動作を使い勝手の良い任意の速度に設定することができ、開扉装置の品位を向上させることができる。
【0027】
請求項2に記載の発明は、扉開放装置は、第一の負荷に対応する大きな開扉力を有する第一の動作の後に連続して、第二の負荷に対応する前記第一の動作より小さな開扉力を有する第二の動作を行うように段階的に切り替えるものであって、常に二段階の負荷に応じた開扉力を有する為、複数の区画に備えられた異なる扉間においても開扉動作の統一感が得られ、開扉動作の品位が向上することで扉装置の使い勝手を大きく向上させることができる。
【0028】
請求項3に記載の発明は、扉開放装置は、扉の幅方向の中心軸に対して回動軸と反対側に相当する箱体に配設されているものであって、開扉時に必要な荷重を小さくでき、開扉装置の信頼性の向上と低コスト化が可能となる。
【0029】
請求項4に記載の発明は、扉開放装置は、動作時に扉に当接して前記扉を押す出力軸と、前記出力軸と連結して前記出力軸を移動させる駆動手段と、弾性力によって前記出力軸を移動させる弾性部材とを有し、第一の動作では前記駆動手段により前記出力軸を移動させることで前記扉を押して開扉し、第二の動作では前記弾性部材の弾性力により前記出力軸を移動させることで前記扉を押して開放するものであることにより、扉開放機能を有する第二の動作に弾性部材を使用することで駆動手段の負荷を低減でき、駆動手段の小型化を図ることができる。
【0030】
請求項5に記載の発明は、第二の動作前に弾性部材に蓄えられる最大弾性力は扉の第一の負荷の最大値よりも小さいとすることにより、第一の動作中に第二の動作が作用することを防止でき、第一の動作と第二の動作を個別に実現することができるようになる。
【0031】
請求項6に記載の発明は、第一の動作は弾性部材に弾性力を蓄える蓄力動作と、出力軸と駆動手段とを連結して前記出力軸を移動させる連結動作とを有するとすることにより、蓄力動作を第一の動作中に行なうことで扉開放装置による扉開放時間を短縮することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明は、第二の動作後も弾性部材は初期弾性力を有し、前記初期弾性力は扉の第二の負荷よりも大きいとすることにより、第二の動作時の弾性力による出力軸の移動ストロークにおいて、移動ストロークの最後まで第二の負荷に抗って扉を押しつづけることができるので扉の開放量を大きくすることができる。
【0033】
請求項8に記載の発明は、箱体は断熱壁からなる断熱箱体であり、前記断熱箱体の前面開口部には断熱壁を有する扉を備え、前記前面開口部と前記扉とは磁力によって吸着されることで略密閉された断熱区画を形成し、前記断熱区画内は冷蔵温度帯または冷凍温度帯で保持されている前記断熱箱体に前記請求項1から7のいずれか一項に記載の扉装置を冷蔵庫に搭載することにより、貯蔵室と扉との間が磁力によって吸着されている為に、全閉時から扉をあける第一の負荷が大きく、加えて貯蔵室内を冷蔵温度帯または冷凍温度帯にまで冷却すると貯蔵室内が外気と比べて負圧となり第一の負荷が増加してしまう為、さらに全閉時から扉をあける第一の負荷が大きくなる場合でも、第一の負荷に合わせた第一の動作と、第一の負荷の増大に影響されること無くほぼ一定の速度にて開扉を行う第二の動作を切り替えながら扉開放動作を行なうことができるので扉開放動作を安定かつ安全に実現することができる。
【0034】
また、庫内温度や外気温度の変化により第一の負荷が変動する場合でも第一の負荷の変動に影響されること無く、第二の動作ではほぼ一定の速度にて扉開放動作を行なうことができるので扉開放動作を安定かつ安全に実現することができる。
【0035】
また、扉開放装置を冷蔵庫の天井部に配置した場合でも、扉開放装置を小型化することができるので、天井部を凹形状に形成しなくても扉開放装置を配設することができ、冷蔵庫の全高寸法増大を防ぐことができ、また天井部を凹形状に形成した場合に生じる天井部からの熱侵入の増加、もしくは冷蔵庫の食品収納空間の増加による使い勝手の悪化を防止することができる。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図、図2は同実施の形態の冷蔵庫の縦断面図、図3は同実施の形態の冷蔵庫の天井部平面図、図4は同実施の形態の冷蔵室ドア開放時の冷蔵庫上部の正面図、図5は同実施の形態の扉開放装置の冷蔵庫取付け時の縦断面図である。図6は同実施の形態の扉開放装置の初期時の上カバー外し時の平面図である。図7は同実施の形態の扉開放装置の第一の動作完了時の上カバー外し時の平面図である。図8は同実施の形態の扉開放装置の第二の動作完了時の上カバー外し時の平面図である。図9は同実施の形態のドアを開放するために必要な力とドア開放量の関係を示す図である。
【0038】
図1から図8において、冷蔵庫20の箱体である断熱箱体21は樹脂にて形成された内箱22と金属磁性体にて形成された外箱23との間に発泡断熱材24を充填したものであり、前面開口部21aを有し、仕切壁25,26,27,28により、上部より冷蔵室29、製氷室30、切替室31、野菜室32、冷凍室33と複数の貯蔵室を形成している。但し、製氷室30と切替室31とはそれぞれ左右並列に配置されている。
【0039】
また、各貯蔵室には全閉時に前面開口部21aを閉塞し断熱箱体21と連結された冷蔵室ドア29a、製氷室ドア30a、切替室ドア31a、野菜室ドア32a、冷凍室ドア33aを備える。更に冷蔵室ドア29aは右側上下端をそれぞれ回転軸を有する上部ヒンジ34と下部ヒンジ35とで断熱箱体21と回動自在に連結されており、その他の貯蔵室ドアは引出し式であり、前後方向に開閉自在に断熱箱体21と連結されている。
【0040】
更に各貯蔵室ドアの断熱箱体21側の面は全閉時に前面開口部21aとの間に5mm程度の空間36を有し、空間36は各貯蔵室ドアの断熱箱体21側の面の上下左右4辺に設けられたマグネットを有するガスケット37の磁力にて前面開口部21aにガスケット37を吸着させることで密着させることができ、各貯蔵室は略密閉にシールされる。
【0041】
また断熱箱体21には冷蔵庫20を運転時に冷却する冷凍サイクル38(図示せず)を有する。
【0042】
断熱箱体21の天井部の冷蔵室ドア29aの幅方向の中心に対して回転軸の反対側の左手前側には冷蔵室ドア29aを押して開放させる扉開放装置50を備え、扉開放装置50が断熱箱体21の天井部に固着時には、扉開放装置50の上面高さは冷蔵室ドア29a上面又は冷蔵室ドア29aの上部ヒンジ34取付け面よりも低くなるよう構成される。
【0043】
扉開放装置50は動作時に冷蔵室ドア29aを押して冷蔵室ドア29aを開放する出力軸51と、出力軸51内部に収容されたバネ52と、動作時に移動してバネ52を圧縮する移動部材53と、移動部材53に係合するギヤ54と、通電により動力を発生しギヤ54にその動力を伝達する電動モータなどを利用した駆動手段55と、出力軸51の後方部とバネ52と移動部材53とギヤ54と駆動手段55とを収容する上面開口部を有する下ケース56と、下ケース56の上面開口部を閉塞する上カバー57と、駆動手段55の動作を指示する制御手段58を主要構成部品として構成され、下ケース56をゴムなどの弾性材料にて形成されたブッシュ59を介して断熱箱体21の天井部から少し離した状態で断熱箱体21の天井部に固着される。
【0044】
出力軸51の前部は下ケース56に設けられた下ケース貫通口56aを通じて下ケース56より突出しており、動作時には冷蔵室ドア29aの開扉方向に略平行に移動する。
【0045】
また、出力軸51は動作前後及び動作中も必ず出力軸51後方は下ケース56内部に収容されており、外部からのゴミ等の侵入を防止している。
【0046】
さらに出力軸51の後背面には最後部に備えられた円筒形の第一の凹部51aと、第一の凹部51aより前面側に備えられ第一の凹部51aと同軸かつ第一の凹部51aより直径の小さい円筒形の第二の凹部51bと、第二の凹部51bの第一の凹部51a側端部に備えられたフランジ51cと、フランジ51cに設けられ第二の凹部51bと同軸でかつ第二の凹部51bより直径の小さい孔51dとを有し、第二の凹部51bに円筒形のバネ52を収容する。
【0047】
移動部材53はバネ52を出力軸51の第二の凹部51bに収納した後に第二の凹部51bに挿入される軸部53aと、軸部53a後方に備えられ動作時に第一の凹部51aに当接して出力軸51と移動部材53とを連結する当接部53bと、当接部53bより後方に備えられギヤ54に係合する係合部53cとを有する。
【0048】
また、軸部53aの出力軸51側先端部には出力軸51の孔51dより直径の大きいフランジ部53dを有しており組立て時に出力軸51から外れないように構成されている。
【0049】
これによって動作時には出力軸51、バネ52、移動部材53とはほぼ同一直線状に移動することになる。
【0050】
また、出力軸51とバネ52と移動部材53とを組立てた際には、第一の凹部51aの底部と当接部53b前面との距離L1に対し、第二の凹部51bの深さL2はL1にバネ52の最大圧縮時の外形寸法L3(図示せず)とフランジ部53dの厚さL4とを加えた合計より大きくなるように設定され、扉開放装置50の動作時に移動部材53がL1移動すると第一の凹部51aの底部と当接部53b前面が当接可能となる。
【0051】
また、バネ52は組み立てた際に少し圧縮して第二の凹部51bに挿入され、初期弾性力1Kg・fを有し、更に移動部材53がL1移動して第一の凹部51aの底部と当接部53b前面とが当接した場合には最大弾性力として2Kg・fを有するように設定されている。
【0052】
ギヤ54は移動部材53の横方向に配置され、駆動手段55はギヤ54の移動部材53と反対側に配置されている。
【0053】
また、制御手段58の指示により動作開始時にはまず駆動手段55を正方向に動作させ、ギヤ54が正方向に回転して移動部材53が前方向に移動し、その後に駆動手段55を逆方向に動作させ、ギヤが逆方向に回転することで移動部材が後方に移動して再び初期状態に戻る。
【0054】
この時、駆動手段55の力はギヤ54によって拡大され、移動部材53には5Kg・fの力が加わるように設定されている。
【0055】
また扉開放装置50を断熱箱体21の天井部に固着した際には、出力軸51の先端の下端は冷蔵室ドア29aのガスケット37上辺の上端より更に上部分を押すように構成されている。
【0056】
更に冷蔵室ドア29aの出力軸51と対向する位置には当接部29bを設け、冷蔵室ドア29aの全閉時には当接部29bと出力軸51先端は5mmほど空間を有するように設定されている。
【0057】
また、冷蔵室ドア29aの前面左側には、冷蔵室ドア29aを手動開閉する為のハンドル29cと、ハンドル29c近傍に備えられ冷蔵庫20の運転時に使用者の押圧を感知して扉開放装置50の動作ON信号を出力する開扉スイッチ29dとを備え、開扉スイッチ29dの動作ON信号が扉開放装置50の制御手段58に伝達されることによって扉開放装置50が動作を開始する。
【0058】
また、断熱箱体21上部には扉開放装置50を覆うカバー60を有し、カバー60は前面には出力軸51が貫通するカバー貫通孔60aを有する。
【0059】
また、図9において冷蔵室ドア29a全閉時をA点、冷蔵室ドア29a開時に磁力によるガスケット37の吸着力を解除する瞬間をB点、ガスケット37の吸着力を完全に解除した位置をC点、冷蔵室ドア29aを完全に開放した位置をD点とする。
【0060】
冷蔵室ドア29a全閉時のA点からドアを開けようとするとガスケット37の吸着力によりB点の位置の大きな力が必要となるが、一旦ガスケット37の吸着力を解除すると急激に必要な力はC点まで低減し、その後は冷蔵室ドア29aと上部ヒンジ34,下部ヒンジ35との回動時の摩擦力に対応した力で冷蔵室ドア29aを完全に開放した位置のD点まで開放できる。
【0061】
この時、冷蔵室ドア29aを開扉するのに必要な第一の負荷の最大値はB点、冷蔵室ドア29aを開扉後に開放するのに必要な第二の負荷はC,D点にて表される。
【0062】
冷蔵庫20の長期間使用時にガスケット37の吸着力を確保したり、他のドアを強く閉めても冷蔵室ドア29aが容易に開放しないようにするために第一の負荷の最大値は3Kg・fの力に設定されており、第二の負荷は0.5Kg・fと第一の負荷が大きくなっており、第一の負荷が第二の負荷の6倍の負荷を有する。
【0063】
しかも、冷凍サイクル38の運転により冷蔵室29が冷却されると冷蔵庫外の周辺の外気温との温度差によって冷蔵室29内が外気に対してやや負圧になり、さらに第一の負荷は1Kg・f程度増加することになるので更に第二の負荷に対する第一の負荷の倍率は大きくなる。また、冷凍温度帯に設定されている冷凍室33においては、さらに温度差が大きくなり、冷凍室33内部の外気に対する負圧が大きくなるので、第一の負荷はさらに増大している。
【0064】
以上のように構成された冷蔵庫に備えられた扉開放装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0065】
図9に本実施の形態の扉開放装置50の推進力,従来の扉開放装置13の推進力と、冷蔵室ドア29aの開放量との関係を示す。
【0066】
冷蔵庫20の運転時に使用者が冷蔵室ドア29aの開扉スイッチ29dを押すと扉開放装置50が動作し、出力軸51が冷蔵室ドア29aの当接部29dを押すことにより冷蔵室ドア29aが開放される。
【0067】
この時、扉開放装置50ではまず開扉スイッチ29dのON信号を制御手段58が受信し、駆動手段55を正方向に動作させ、ギヤ54が正方向に回転して移動部材53が前方向に移動することで冷蔵室ドア29aを開扉するための第一の動作を開始する。
【0068】
第一の動作ではまず、出力軸51とバネ52と移動部材53とが一体となって5mm移動し、図9のA点に達して出力軸51の先端が冷蔵室ドアの当接部29bに当接する。
【0069】
この間、バネ52はほとんど圧縮されないまま移動している。
【0070】
出力軸51の先端が冷蔵室ドアの当接部29bに当接すると、更に駆動手段55の正方向への動作により移動部材53はL1の距離を移動し、第一の凹部51aの底部と当接部53b前面とが当接して出力軸51と移動部材53とが連結して駆動手段55の力が出力軸51に伝達されることになる。
【0071】
移動部材53がL1の距離移動する間、冷蔵室ドア29aを開扉するのに必要な第一の負荷の最大値が3Kg・fであるのに対し、バネ52に蓄えられる最大弾性力は2Kg・fであるので、出力軸51は冷蔵室ドア29aのガスケット37をわずかに伸ばす程度しか冷蔵室ドア29aを押すことができず、見かけ上停止しているため移動部材53の蓄力動作によりバネ52は最大弾性力を有するまで圧縮される。
【0072】
出力軸51と移動部材53とが連結後、図9のE点に達して駆動手段55から出力軸51に5Kg・fの力が伝達されることで移動部材53と連結したまま出力軸51が前方向に最大F1点までのL5(図示せず)の距離間移動して冷蔵室ドア29aを開扉し、第一の動作を完了する。
【0073】
実際には、本実施の形態ではF1まで到達する前に冷蔵室ドア29aが開扉するB点を乗り越えたF2点を通過して、冷凍室ドア29aがB点からC点にかけて負荷が低下していき2Kg・fとなるG2点に達した瞬間に第一の動作を完了することになる。
【0074】
この時、冷凍サイクル38の作用により冷蔵室29が冷却されて第一の負荷が4Kg・f程度となった場合でも出力軸51には冷蔵室ドア29aを開扉可能な力が伝達されているので、冷蔵庫20を使用中でも扉開放装置50の機能を満足することができる。
【0075】
第一の動作が完了した瞬間に、冷蔵室ドア29aを開放するための第二の動作が作用を開始する。
【0076】
第二の動作時には冷蔵室ドア29aを開放可能な第二の負荷が0.5Kg・fであるのに対してバネ52に蓄えられている最大弾性力は2Kg・fであるので、図9においてG2点に達した瞬間に出力軸51はバネ52の弾性力により更に冷蔵室ドア29aの当接部29bを押しながらL1の距離間移動してH2点に達し第二の動作を完了して止まるが、冷蔵室ドア29aは弾性力を受けて大きく開放されることになる。
【0077】
この時、バネ52の初期弾性力は1Kg・fと第二の負荷よりも大きく設定されているので出力軸51がL1の距離を移動する間常に第二の負荷に抗って冷蔵室ドア29aを押し続けることができる。
【0078】
また、駆動手段55による出力軸51の動作よりもバネ52の弾性力による出力軸51の動作の方が速いため、第二の動作時には出力軸51と移動部材53との連結は解除されている。
【0079】
駆動手段55は第一の動作から第二の動作にかけては、少なくとも第一の動作において出力軸51が移動部材53と連結したまま前方向にL5の距離を移動するまで正方向に動作すればよい。
【0080】
第二の動作まで完了すると制御手段58の指示により駆動手段55は逆方向に動作し、ギヤ54を逆回転させることで移動部材53を後方に移動させる。
【0081】
この時、移動部材53のフランジ部53dと出力軸51のフランジ51cとが当接したまま移動し初期状態へと戻ることになる。
【0082】
また、図9に示すように本実施の形態の扉開放装置50の最大推進力は従来の扉開放装置13の最大推進力よりも2Kg・f程小さくすることができている。
【0083】
以上のように本実施の形態においては、全閉時から開扉するのに必要な第一の負荷が開扉後に開放するのに必要な第二の負荷より大きくかつ2倍以上(本実施の形態では6倍程度)の負荷を有する冷蔵室ドア29aを開放する扉開放装置50において、扉開放装置50は第一の負荷に対応する第一の動作と第二の負荷に対応する第二の動作とを有することによって扉開放装置50の開扉機能と扉開放機能とを異なる手段で対応することとなり、それぞれの機能を同一の手段で対応する場合に比べて最も大きな能力が求められ扉開放装置の大部分の空間を占める開扉機能用の駆動手段55の能力が低減可能となるので扉開放装置50の小型化を図ることができる。
【0084】
なお、本実施の形態では第一の負荷は第二の負荷の6倍の負荷を有するとしたが、冷蔵庫20の組立てバラツキや冷凍サイクル38の運転状況により1.5倍程度まで低下することもある。
【0085】
また、従来の扉開放装置では第二の負荷に対する第一の負荷の倍率が大きくなると扉開放動作が速くなってしまい使用者の安全を損ねる恐れがあったが、本実施の形態の扉開放装置50は扉開放動作を実現する第二の動作は扉開放装置50のバネ52の最大弾性力と初期弾性力との設定により決定するので、第一の負荷の大きさに影響されること無くほぼ一定の速度にて扉開放動作を行なうことになり、第二の負荷に対する第一の負荷の倍率が大きくても安全に扉開放動作を実現することができる。よって、扉の開放速度が大きすぎる為に、使用者にぶつかるといった危険を回避することができ、扉開放動作の安全性を向上させることができる。
【0086】
また、従来の扉開放装置では第一の負荷が大きいドアに対応した扉開放装置を第一の負荷が小さいドアに兼用した場合にも扉開放動作が速くなってしまうが、第一の負荷が異なるそれぞれのドアに兼用する場合でも、本実施の形態の扉開放装置50は扉開放動作を実現する第二の動作は扉開放装置50のバネ52の最大弾性力と初期弾性力との設定により決定するので、第二の負荷が同一であれば第一の負荷の大きさに影響されること無くほぼ一定の速度にて扉開放動作を行なうことになり、ほぼ同一の扉開放動作を実現することができる。
【0087】
更に、冷蔵庫20の場合には店頭展示時には冷蔵庫20は運転せず、更に冷蔵室ドア29aに重たい被収納物は収納しないことが多いが、実使用時には冷蔵室29内を冷却すると冷蔵室29内が負圧になったり、冷蔵室ドア29aに飲料ボトルなどの重たい被収納物を収納することにより第一の負荷が増加したり変動したりしてしまう。
【0088】
このように同一のドアにおいて第一の負荷が変動する場合でも扉開放動作を実現する第二の動作は扉開放装置50のバネ52の最大弾性力と初期弾性力との設定により決定するので、第一の負荷の変動に影響されること無くほぼ一定の速度にて扉開放動作を行なうことになり、第一の負荷が変動してもほぼ同一の扉開放動作を実現することができる。
【0089】
一方、開扉動作に対しても駆動手段55により第一の動作を行なうことで確実に開扉することができ、かつ全閉時から開扉までに要する時間もほぼ安定させることができる。
【0090】
また、扉開放装置50の第二の動作ではバネ52の弾性力により出力軸51を移動させることで冷蔵室ドア29aを押して開放することにより、扉開放機能を有する第二の動作にバネ52を使用することで駆動手段55の負荷を低減でき、駆動手段55の小型化を図ることができる。
【0091】
また、第二の動作前にバネ52に蓄えられる最大弾性力は冷蔵室ドア29aの第一の負荷の最大値よりも小さいとしたことにより、バネ52の最大弾性力を小さく設定することで第一の動作中に第二の動作が作用することを防止でき、第一の動作と第二の動作を個別に実現することができるようになる。
【0092】
また、第一の動作はバネ52に弾性力を蓄える蓄力動作と、出力軸51と駆動手段55とを連結して出力軸51を移動させる連結動作とを有するとしたことにより、蓄力動作を第一の動作中に行なうことで扉開放装置50による冷蔵室ドア29aの開放時間を短縮することができる。
【0093】
また、第二の動作後もバネ52は初期弾性力を有し、初期弾性力は冷蔵室ドア29aの第二の負荷よりも大きいとしたことにより、第二の動作時の弾性力による出力軸51の移動距離L1において、移動距離の最後まで第二の負荷に抗って冷蔵室ドア29aを押し続けることができるので冷蔵室ドア29aの開放量を大きくすることができる。
【0094】
また、本実施の形態では第一の動作後に連続して、第二の動作を行って為、開扉動作がスムーズであるとともに、二段階の負荷に応じた開扉力を有することができる。
【0095】
なお、本実施の形態では冷蔵室ドア29aのみに扉開放装置50を備えたが、例えば複数の区画に扉開放装置50を備えた場合では、扉の形状や大きさまたは運転環境に応じて、バネ52の弾性力を任意に設定することで、異なる扉間においても第二の動作の速度をほぼ一定にすることができ、開扉動作の統一感が得られ、開扉動作の品位が向上することで扉装置の使い勝手を大きく向上させることができる。
【0096】
また、扉開放装置50を扉である冷蔵室ドア29aの幅方向の中心軸に対して回動軸と反対側に相当する断熱箱体21に配設している為、回動軸に近い部分に配設する場合と比べて、開扉時に必要な荷重を大幅に小さくでき、開扉装置の信頼性の向上と低コスト化が可能となる。
【0097】
また、扉開放装置50を冷蔵庫20に搭載することにより、小型の扉開放装置50を冷蔵庫20の天井部に配置することで、天井部を凹めることによる天井部からの熱侵入の増加、冷蔵庫20の全高寸法増大もしくは冷蔵庫20の食品収納空間の増加による使い勝手の悪化を防止できる。
【0098】
なお、本実施の形態では冷蔵庫に関して述べたが、本実施の形態の扉装置は、箱体の開口部を開閉する扉装置を備えた多種多様な収納装置に対しても適用することができ、冷蔵庫と同様にマグネットを備えて略密閉するものや、ラッチ等によって扉を閉止するもの対しては特に有効に作用させることができる。
【0099】
(実施の形態2)
図10は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の正面図である。図11は同実施の形態の冷蔵庫の要部正面図である。図12は同実施の形態の冷蔵庫の要部平面断面図である。図13は同実施の形態のドアを開放するために必要な力とドア開放量の関係を示す図である。なお、実施の形態1と同様の構成および動作については説明を省略する。
【0100】
図10から12において、全閉時に冷蔵室100の前面開口部21aを閉塞する冷蔵室ドア100aは右側上下端をそれぞれ回転軸を有する上部ヒンジ34と下部ヒンジ101とで断熱箱体21と回動自在に連結されている。
【0101】
更に冷蔵室ドア100aの断熱箱体21側の面は全閉時に前面開口部21aとの間に5mm程度の空間36を有し、空間36は各貯蔵室ドアの断熱箱体21側の面の上下左右4辺に設けられたマグネットを有するガスケット37の磁力にて前面開口部21aにガスケット37を密着させることでシールされる。
【0102】
下部ヒンジ101は板状のものを略直角に折り曲げ形成された上下方向に平行な固定部101aと、固定部101aの上面より伸びて略水平なヒンジベース部101bと、ヒンジベース部101bに上向きに設けられた下部回転軸101cと、ヒンジベース部101bに設けられ下部回転軸101cよりも左側に断熱箱体21の中央方向に略三角形上に突出したヒンジツメ部101dとからなり、固定部101aは冷蔵室ドア100aと切替室ドア31aとの間の仕切壁25前面に固着され、ヒンジベース部101b、下部回転軸101c、ヒンジツメ部101dは前面開口部21aより冷蔵室ドア100a側に突出している。
【0103】
また、冷蔵室ドア100a下部には下部ヒンジ101に対向する位置にラッチ102を備える。
【0104】
ラッチ102は板状のラッチベース部102aと、ラッチベース部102aの右端部に設けられたラッチ穴部102bと、ラッチベース部102aの左端部に設けられたラッチツメ部102cとからなり、ラッチベース部102aを冷蔵室ドア100a下部に固着後予め仕切壁25に固着された下部ヒンジ101の下部回転軸101cにラッチ穴部102bを挿入することにより冷蔵室ドア100aが下部ヒンジ101に連結される。
【0105】
また、冷蔵室ドア100aが全閉時から冷蔵室ドア100a左端部で20mmほど開状態にある場合にはヒンジツメ部101dにラッチツメ部102cが引っ掛かることにより冷蔵室ドア100aを閉方向に付勢し、冷蔵室ドア100aは自閉機能を有する。
【0106】
ラッチツメ部102cによる自閉力は断熱箱体21の左右方向において扉開放装置50の出力軸51の位置では0.3Kg・fに設定されている。
【0107】
断熱箱体21の天井部の冷蔵室ドア100aの回転軸の反対側の左手前側には冷蔵室ドア100aを押して開放させる扉開放装置50を備え、扉開放装置50が断熱箱体21の天井部に固着時には、扉開放装置50の上面高さは冷蔵室ドア100a上面又は冷蔵室ドア100aの上部ヒンジ34取付け面よりも低くなるよう構成される。
【0108】
また、扉開放装置50は下ケース56(図示せず)をブッシュ59(図示せず)を介して断熱箱体21の天井部から少し離した状態で断熱箱体21の天井部に固着され、固着時には出力軸51の先端の下端は冷蔵室ドア100aのガスケット37上辺の上端より更に上部分を押すように構成されている。
【0109】
更に冷蔵室ドア100aの出力軸51と対向する位置には当接部100b(図示せず)を設け、冷蔵室ドア100aの全閉時には当接部100bと出力軸51先端は5mmほど空間を有するように設定されている。
【0110】
また、冷蔵室ドア100aの前面左側には、冷蔵室ドア100aを手動開閉する為のハンドル100cと、ハンドル100c近傍に備えられ冷蔵庫20の運転時に使用者の押圧を感知して扉開放装置50の動作ON信号を出力する開扉スイッチ100dとを備え、開扉スイッチ100dの動作ON信号が扉開放装置50の制御手段58に伝達されることによって扉開放装置50が動作を開始する。
【0111】
また、扉開放装置50のバネ52の設定は、実施の形態1と同様に初期弾性力は1Kg・f,最大弾性力は2Kg・fに設定されている。
【0112】
また、断熱箱体21上部には扉開放装置50を覆うカバー60(図示せず)を有し、カバー60は前面には出力軸51が貫通するカバー貫通孔60a(図示せず)を有する。
【0113】
以上のように構成された冷蔵庫に備えられた扉開放装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0114】
図13に本実施の形態の扉開放装置50の推進力,従来の扉開放装置13の推進力と、第一の冷蔵室ドア100aの開放量との関係を示す。
【0115】
冷蔵室ドア100aは冷蔵室ドア100a左端部で20mmほど開状態にある場合にはラッチ102による自閉機能により常に全閉方向に付勢される。
【0116】
また、冷蔵庫20の運転時に使用者が第一の冷蔵室ドア100aの開扉スイッチ100dを押すと扉開放装置50が動作し、出力軸51が冷蔵室ドア100aの当接部100bを押すことにより冷蔵室ドア100aが開放される。
【0117】
この時、図13に示すように冷蔵室ドア100aが自閉機能を有することにより、冷蔵室ドア100aの第一の負荷の最大値を表すB1点と、ガスケット37の吸着力を完全に解除した位置を表すC1点とは実施の形態1の冷蔵室ドア29aのB点,C点よりも自閉力分の0.3Kg・f大きくなる。
【0118】
更に実施の形態1においてはB点,C点,D点と進んでいくのに対し、本実施の形態では冷蔵室ドア100aの自閉力を解除したJ点がC1点とD点との間に加わる。
【0119】
一方、扉開放装置50の動作は実施の形態1と同様にガスケット37の吸着力を解除する瞬間を表すB1点を乗り越えたF3点を通過して、B1点からC1点にかけて負荷が低下していき2Kg・fとなるG3点に達した瞬間に第一の動作を完了して第二の動作を開始し、H3点に達し第二の動作を完了して止まる。
【0120】
以上のように本実施の形態において冷蔵室ドア100aが自閉機能を有するとした場合でも扉開放装置50は冷蔵室ドア100aを開扉,開放可能である。
【0121】
なお、本実施の形態では扉開放装置50のバネ52の初期弾性力を実施の形態1と同一としているが、第二の動作時に冷蔵室ドア100aの回動時の摩擦力に加え冷蔵室ドア100aの自閉力に抗って冷蔵室ドア100aをバネ52の弾性力にて押す必要がある為、初期弾性力を実施の形態1よりも大きく設定すると冷蔵室ドア100aの開放量を大きくすることができる。
【0122】
(実施の形態3)
図14は本発明の実施の形態3における冷蔵庫の正面図である。図15は本発明の同実施の形態の冷蔵庫のドア開放時の要部正面図である。図16は同実施の形態の冷蔵庫の要部平面断面図である。図17は同実施の形態のドアを開放するために必要な力とドア開放量の関係を示す図である。なお、実施の形態1と同様の構成および動作については説明を省略する。
【0123】
図14から16において、冷蔵室200の前面開口部21aは断熱箱体21の左側に備えられた第一の冷蔵室ドア201と、断熱箱体21の右側に備えられた第二の冷蔵室ドア202とによって、それぞれのドアが全閉することにより閉塞される。
【0124】
また、第一の冷蔵室ドア201は左側,第二の冷蔵室ドア202は右側の上下端をそれぞれ回転軸を有する上部ヒンジ34と下部ヒンジ35とで断熱箱体21と回動自在に連結されている。
【0125】
更に第一の冷蔵室ドア201と第二の冷蔵室ドア202との断熱箱体21側の面はそれぞれ全閉時に前面開口部21aとの間に5mm程度の空間36を有し、空間36は各冷蔵室ドアの断熱箱体21側の面の上下左右4辺に設けられたマグネットを有するガスケット203の磁力にて前面開口部21aにガスケット203を密着させることでシールされる。
【0126】
第一の冷蔵室ドア201の断熱箱体21側の面でかつ第一の冷蔵室ドア201の右端部には支持アーム204が備えられ、更に支持アーム204に回動可能に支持される仕切り本体205を有する。
【0127】
仕切り本体205上端部にはガイド溝205aを有し、冷蔵室200内手前上面にはガイド溝205aに対応し、第一の冷蔵室ドア201の全閉時にガイド溝205aに侵入し第一の冷蔵室ドア201の開放動作に伴いガイド溝205aを相対的に摺動して仕切り本体205を回動させると共にガイド溝205aから退出するガイドピン206を備える。
【0128】
第一の冷蔵室ドア201の全閉時には金属磁性体にて形成された仕切り本体前面205bが断熱箱体21の前面開口部21aとほぼ同一平面上に位置するよう構成されており、第一の冷蔵室ドア201と第二の冷蔵室ドア202とのそれぞれのガスケット203の断熱箱体21の中央側の縦辺は全閉時には仕切り本体前面205bに密着してシールする。
【0129】
また、ガイドピン206がガイド溝205aを通過するには第一の冷蔵室ドア201の右端部において10mm第一の冷蔵室ドア201を開放する必要があり、更にガイドピン206がガイド溝205aを通過する際の摩擦力は断熱箱体21の左右方向において扉開放装置50の出力軸51の位置では2.5Kg・fに設定されている。
【0130】
扉開放装置50は断熱箱体21の天井部において第一の冷蔵室ドア201の右端部を押すように備えられ、第二の冷蔵室ドア202は第二の冷蔵室ドア202の前面左側に設けられたハンドル202aを利用して手動にて開閉される。
【0131】
また、扉開放装置50は下ケース56(図示せず)をブッシュ59(図示せず)を介して断熱箱体21の天井部から少し離した状態で断熱箱体21の天井部に固着されている。
【0132】
また扉開放装置50を断熱箱体21の天井部に固着した際には、扉開放装置50の上面高さは第一の冷蔵室ドア201上面又は第一の冷蔵室ドア201の上部ヒンジ34取付け面よりも低く、かつ出力軸51の先端の下端は第一の冷蔵室ドア201のガスケット203上辺の上端より更に上部分を押すように構成されている。
【0133】
更に第一の冷蔵室ドア201の出力軸51と対向する位置には当接部201aを設け、第一の冷蔵室ドア201の全閉時には当接部201aと出力軸51先端は5mmほど空間を有するように設定されている。
【0134】
また、第一の冷蔵室ドア201の前面右側には、第一の冷蔵室ドア201を手動開閉する為のハンドル201bと、ハンドル201b近傍に備えられ冷蔵庫20の運転時に使用者の押圧を感知して扉開放装置50の動作ON信号を出力する開扉スイッチ201cとを備え、開扉スイッチ201cの動作ON信号が扉開放装置50の制御手段58に伝達されることによって扉開放装置50が動作を開始する。
【0135】
また、断熱箱体21上部には扉開放装置50を覆うカバー60を有し、カバー60は前面には出力軸51が貫通するカバー貫通孔60aを有する。
【0136】
また、扉開放装置50のバネ52の設定は、実施の形態1と同様に初期弾性力は1Kg・f,最大弾性力は2Kg・fに設定されている。
【0137】
第一の冷蔵室ドア201と第二の冷蔵室ドア202とのガスケット203の吸着力を解除する瞬間の力は、ドアの大きさが実施の形態1に比べて小さくなることによりガスケット203の全長も短くなる為、1.5Kg・fと設定されており、ドア開放時の上部ヒンジ34,下部ヒンジ35との回動時の摩擦力は実施の形態1と同様0.5Kg・fと設定されている。
【0138】
更に冷凍サイクル38(図示せず)の運転により冷蔵室200が冷却されることにより増加する負荷はそれぞれの冷蔵室ドアにおいて0.5Kg・f程度である。
【0139】
この時、第一の冷蔵室ドア201を開扉するのに必要な第一の負荷の最大値は、ガイドピン206がガイド溝205aを通過する際の摩擦力にガスケット203の吸着力を解除する瞬間の力を加えた4Kg・fであり、第一の冷蔵室ドア201を開扉後に開放するのに必要な第二の負荷はドアを開放時の上部ヒンジ34,下部ヒンジ35との回動時の摩擦力である0.5Kg・fとなるので第一の負荷は第二の負荷の8倍の負荷を有する。
【0140】
以上のように構成された冷蔵庫に備えられた扉開放装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0141】
図17に本実施の形態の扉開放装置50の推進力,従来の扉開放装置13の推進力と、第一の冷蔵室ドア201の開放量との関係を示す。
【0142】
冷蔵庫20の運転時に使用者が第一の冷蔵室ドア201の開扉スイッチ201cを押すと扉開放装置50が動作し、出力軸51が第一の冷蔵室ドア201の当接部201cを押すことにより第一の冷蔵室ドア201が開放される。
【0143】
この時、図17に示すように第一の冷蔵室ドア201を全閉時から開放する際には、まず全閉時のA点から、第一の負荷の最大値を表すK点まで負荷が上昇する。
【0144】
K点を越えて、ガスケット203の吸着力を解除すると第一の冷蔵室ドア201の負荷は低減し、ガイドピン206がガイド溝205aを通過する際の摩擦力を表すL点,M点へと移動する。
【0145】
M点を越えてガイドピン206がガイド溝205aから退出すると再び第一の冷蔵室ドア201の負荷は低減してN点に達し、その後は第一の冷蔵室ドア201開放時の上部ヒンジ34,下部ヒンジ35との回動時の摩擦力に対応した力で第一の冷蔵室ドア201を完全に開放した位置のP点まで開放できる。
【0146】
一方、扉開放装置50の動作は第一の冷蔵室ドア201が第一の負荷の最大値を表すK点まで達してもガイドピン206がガイド溝205aを通過する際の摩擦力を表すL点,M点の負荷がバネ52の最大弾性力も大きい為、第一の冷蔵室ドア201がM点を越えたF4点を通過して、第一の冷蔵室ドア201がM点からN点にかけて負荷が低下していき2Kg・fとなるG4点に達した瞬間に第一の動作を完了して第二の動作を開始し、H4点に達し第二の動作を完了して止まる。
【0147】
以上のように本実施の形態において冷蔵室200を閉塞する第一の冷蔵室ドア201が仕切り本体204によりガスケット203の吸着力以上の負荷を長いストローク有する場合でも扉開放装置50は第一の冷蔵室ドア201を開扉,開放可能である。
【0148】
このような場合、従来の扉開放装置のように第一の動作と第二の動作とを同一の手段で対応すると、ドア開扉後のドア開放量を大きくする為に更に駆動手段を大きくしたり、ドアを押すストロークを長くする必要があるが、本実施の形態の扉開放装置50はドア負荷がバネ52の最大弾性力に達するまで確実に駆動手段55にてドアを押しつづける為、扉開放装置を変更することなく対応することができ、かつ扉開放動作を安定して実現することができる。
【0149】
もし駆動手段55の能力が大きくなって第一の動作時の最大推進力が増加した場合でも開扉後の扉開放動作はバネ52の最大弾性力と初期弾性力との設定により決定するので、扉開放動作が速くなってしまい使用者の安全性を損なうことはない。
【0150】
なお、本実施の形態ではガイドピン206がガイド溝205aを通過する際の摩擦力が扉開放装置50のバネ52の最大弾性力よりも大きいとしているが、もし最大弾性力よりも小さい場合には、第一の動作はK点を越えた時点で完了し、K点からM点にかけて負荷が低下していき2Kg・fとなった瞬間に第二の動作を行なうことになる。
【0151】
その場合には第二の動作時に第一の冷蔵室ドア201の回動時の摩擦力に加えガイドピン206がガイド溝205aを通過する際の摩擦力に抗って第一の冷蔵室ドア201をバネ52の弾性力にて押す必要があるため、初期弾性力を実施の形態1よりも大きく設定すると第一の冷蔵室ドア201の開放量を大きくすることができる。
【0152】
その際に、最大弾性力も実施の形態1より大きく設定する必要がある場合には最大弾性力は第一の負荷の最大値以下であれば扉開放装置50は機能を満足することができる。
【0153】
(実施の形態4)
図18は本発明の実施の形態4における冷蔵庫に用いた扉開放装置を示す図であり、図18(A),(B),(C)は各々、その内部の平面構造を示す説明図、伝達機構の展開図、および1番車と2番車とが直接、連結した状態を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分については説明を省略する。
【0154】
図18(A)、(B)に示すように、本形態の冷蔵庫で用いた扉開放装置50Aは、動作時に冷蔵室ドア29aを押して冷蔵室ドア29aを開放する出力軸51と、冷蔵庫ドア29aを付勢するためのコイルバネからなるバネ52(弾性部材)と、動作時に所定のタイミングでバネ52を圧縮するとともに、出力軸51を移動させる伝達機構40と、この伝達機構40を介して出力軸51およびバネ52を駆動する電動モータからなる駆動手段55と、駆動手段55を制御する制御手段58と、出力軸51、バネ52、伝達機構40、駆動手段55および制御手段58が収納された下ケース56と、下ケース56に被せられた上カバー57とを主要構成部品として構成されている。出力軸51の先端部は下ケース56に設けられた下ケース貫通口56aを通じて下ケース56より突出しており、動作時には冷蔵室ドア29aの開扉方向(矢印Lで示す方向)に移動可能に配置されている。また、出力軸51は、レール状のガイド511により軸線方向にガイドされるようになっている。なお、ケース内には、出力軸51の位置を直接、あるいは間接的に監視するセンサ装置などが構成されているが、かかるセンサ装置などについは図示および説明を省略する。
【0155】
伝達機構40は、駆動手段55を構成する電動モータの出力軸51に連結されたウォームギア41と、このウォームギア41と噛み合う外歯を備えた1番車42と、この1番車42と同軸状に重ねて配置された2番車43と、この2番車43のピニオンと噛み合う外歯を備えた3番車44と、出力軸に形成されたラック510とから構成され、3番車44のピニオンと出力軸51のラック510とが噛み合っている。本形態では、1番車42と2番車43とは共通の支軸47周りに回転可能に支持されている。また、1番車42の上面にはバネ52の一方端を保持する第1の突起420が形成され、2番車43の下面にはバネ52の他方端を保持する第2の突起430が形成されている。ここで、第1の突起420と第2の突起430は、支軸47からみて同一半径上に位置している。このため、図18(A)に示す状態では、第1の突起420と第2の突起430とは干渉しておらず、1番車42と2番車43とはバネ52を介して機構的に接続されている。この際、バネ52は組み立てる際に少し巻き締めて初期弾性力を有した状態で1番車42と2番車43とを接続している。これに対して、2番車43に対して大きな負荷がかかっている状態で1番車42が回転すると、1番車42はバネ52を巻き締めながら回転し、図18(C)に示すように、第1の突起420と第2の突起430とが干渉した以降、1番車42は第1の突起420と第2の突起430を介して2番車43に直接、回転力を伝達する。
【0156】
このように構成した扉開閉装置50Aにおいて、冷蔵庫ドア29aが閉まっている状態では、図18(A)に示すように、主力軸51は冷蔵庫ドア29aから離れた後退位置にある。この状態において、第1の突起420と第2の突起430と離れた位置にあって干渉していない。
【0157】
この状態から、冷蔵庫ドア29aを開ける際には、駆動手段55を構成する電動モータを作動させる。それにより、出力軸51に連結されたウォームギア41が回転し、その回転は1番車42に伝達される。この状態において、出力軸51は冷蔵庫ドア29aに当接していないため、出力軸51には大きな負荷がかかっていない。従って、3番車44および2番車43にも大きな負荷がかかっていないので、1番車42の時計周りCCWの回転は、バネ52を介して2番車43に伝達される。そして、2番車43の回転は、3番車44および出力軸51に伝達される結果、出力軸51は、矢印Lに示すように、冷蔵庫ドア29aに向けて前進する。
【0158】
次に、出力軸51の先端部が冷蔵庫ドア29aに当接すると、出力軸51には大きな負荷がかかる。すなわち、全閉状態にある冷蔵庫ドア29aには、ガスケットやマグネットなどの吸着力がかかっているので、全閉状態にある冷蔵庫ドア29aを開けるには大きな力が必要である。従って、冷蔵庫ドア29aが開く際、出力軸51には大きな負荷がかかることになる。従って、3番車44および2番車42にも大きな負荷(第一の負荷)がかかるので、この状態で、1番車42が回転するとバネ52が巻き締められることになる。
【0159】
そして、1番車42の回転によって第1の突起420と第2の突起430とが干渉すると、1番車42は2番車43を直接、回転させ、その回転は2番車43から3番車44を介して出力軸51に伝達される。その結果、出力軸51は、駆動手段55を構成する電動モータの大きな力によって冷蔵庫ドア29aを開けることができる。
【0160】
以上が本発明における第一の動作であり、続いて第二の動作が開始される。すなわち、冷蔵庫ドア29aが開扉後は、駆動手段55を構成する電動モータの回転が停止する。このため、1番車42が停止し、第1の突起420が停止する。その結果、バネ52は、それまで蓄えたバネ力を2番車43を回転させる力として発揮する。この時点では、冷蔵庫ドア29aがわずかに開いており、冷蔵庫ドア29aをさらに開けるには大きな力を必要としないので、3番車44および2番車43には小さな負荷(第二の負荷)がかかっているだけである。このため、バネ52のバネ力だけで2番車43および3番車44を回転させることができ、出力軸51は、バネ52のバネ力だけで冷蔵庫ドア29aをさらに開けることになる。なお、第二の動作前にバネ52に蓄えられる最大弾性力は、第一の負荷の最大値よりも小さいので、第一の動作中に第二の動作が開始することがない。
【0161】
そして、冷蔵庫ドア29aが大きく開いている間に、駆動手段55では、電動モータが逆回転し、図18(A)に示す状態に戻る。
【0162】
このように、冷蔵庫では、冷蔵庫ドア29aを全閉時から開扉するのに必要な第一の負荷が、開扉後にさらに冷蔵庫ドア29aを開放するのに必要な第二の負荷より大きいが、本形態の扉開放装置50Aは、第一の負荷に対応する大きな開扉力を有する第一の動作と、第二の負荷に対応する第一の動作より小さな開扉力を有する第二の動作とを連続して行う。また、扉開放装置50Aは、第一の動作では駆動手段により出力軸を移動させることで冷蔵庫ドア29aを押して開扉し、第二の動作ではバネ52の弾性力により出力軸51を移動させることで冷蔵庫ドア29aを押して開放するため、冷蔵庫ドア29aを開くのに適した力を発揮する。さらに、扉開放装置50Aは、第二の動作前にバネ52に蓄えられる最大弾性力が第一の負荷の最大値よりも小さいので、第一の動作中に第二の動作が作用することを防止でき、第一の動作と第二の動作を個別に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
以上のように、本発明にかかる扉開放装置は、開扉動作に必要な第一の負荷と扉開放動作に必要な第二の負荷と有する扉を安全かつ安定して開放できるので、冷蔵庫に限らず扉を備えた多種多様な収納庫や、同様にガスケットを備える保温庫や、マグネットキャッチなどを有する家具などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図
【図2】同実施の形態の冷蔵庫の縦断面図
【図3】同実施の形態の冷蔵庫の天井部平面図
【図4】同実施の形態の冷蔵室ドア開放時の冷蔵庫上部の正面図
【図5】同実施の形態の扉開放装置の冷蔵庫取付け時の縦断面図
【図6】同実施の形態の扉開放装置の初期時の上カバー外し時の平面図
【図7】同実施の形態の扉開放装置の第一の動作完了時の上カバー外し時の平面図
【図8】同実施の形態の扉開放装置の第二の動作完了時の上カバー外し時の平面図
【図9】同実施の形態のドアを開放するために必要な力とドア開放量の関係を示す図
【図10】本発明の実施の形態2における冷蔵庫の正面図
【図11】同実施の形態の冷蔵庫の要部正面図
【図12】同実施の形態の冷蔵庫の要部平面断面図
【図13】同実施の形態のドアを開放するために必要な力とドア開放量の関係を示す図
【図14】本発明の実施の形態3における冷蔵庫の正面図
【図15】同実施の形態の冷蔵庫のドア開放時の要部正面図
【図16】同実施の形態の冷蔵庫の要部平面断面図
【図17】同実施の形態のドアを開放するために必要な力とドア開放量の関係を示す図
【図18】(A)本発明の実施の形態4における冷蔵庫に用いた扉開放装置を示す図(B)同実施の形態の冷蔵庫に用いた扉開放装置を示す図(C)同実施の形態の冷蔵庫に用いた扉開放装置を示す図
【図19】従来の扉開放装置を搭載した冷蔵庫の正面図
【図20】従来の扉開放装置を搭載した冷蔵庫の要部縦断面図
【図21】従来の扉開放装置の推進力特性と扉の負荷との関係を示す図
【符号の説明】
【0165】
20 冷蔵庫
21 断熱箱体(箱体)
21a 前面開口部
29,100,200 冷蔵室
29a,100a 冷蔵室ドア
33 冷凍室
35,101 下部ヒンジ
37,203 ガスケット
50,50A 扉開放装置
51 出力軸
52 バネ
53 移動部材
54 ギヤ
55 駆動手段
102 ラッチ
201 第一の冷蔵室ドア
205 仕切り本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口部を有する箱体と、前記箱体の前面開口部に回動可能に配設されるとともに前記箱体を略密閉する扉と、前記扉を開放する扉開放装置とを備え、前記扉を全閉時から開扉するのに必要な第一の負荷が、開扉後にさらに前記扉を開放するのに必要な第二の負荷より大きいものであって、前記扉開放装置は前記第一の負荷に対応する大きな開扉力を有する第一の動作と、前記第二の負荷に対応する前記第一の動作より小さな開扉力を有する第二の動作とを切り替える特性を有するものである扉装置。
【請求項2】
扉開放装置は、第一の負荷に対応する大きな開扉力を有する第一の動作の後に連続して、第二の負荷に対応する前記第一の動作より小さな開扉力を有する第二の動作を行うように段階的に切り替えるものである請求項1に記載の扉装置。
【請求項3】
扉開放装置は、扉の幅方向の中心軸に対して回動軸と反対側に相当する箱体に配設されている請求項1または2に記載の扉装置。
【請求項4】
扉開放装置は、動作時に扉に当接して前記扉を押す出力軸と、前記出力軸と連結して前記出力軸を移動させる駆動手段と、弾性力によって前記出力軸を移動させる弾性部材とを有し、第一の動作では前記駆動手段により前記出力軸を移動させることで前記扉を押して開扉し、第二の動作では前記弾性部材の弾性力により前記出力軸を移動させることで前記扉を押して開放するものである請求項1から3のいずれか一項に記載の扉装置。
【請求項5】
第二の動作前に弾性部材に蓄えられる最大弾性力は第一の負荷の最大値よりも小さい請求項4に記載の扉装置。
【請求項6】
第一の動作は弾性部材に弾性力を蓄える蓄力動作と、出力軸と駆動手段とを連結して前記出力軸を移動させる連結動作とを有する請求項4または5に記載の扉装置。
【請求項7】
第二の動作後も弾性部材は初期弾性力を有し、前記初期弾性力は扉の第二の負荷よりも大きい請求項4から6のいずれか一項に記載の扉装置。
【請求項8】
箱体は断熱壁からなる断熱箱体であり、前記断熱箱体の前面開口部には断熱壁を有する扉を備え、前記前面開口部と前記扉とは磁力によって吸着されることで略密閉された断熱区画を形成し、前記断熱区画内は冷蔵温度帯または冷凍温度帯で保持されている前記断熱箱体に前記請求項1から7のいずれか一項に記載の扉装置を搭載した冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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