説明

手動搾乳器

【課題】洗浄のための分解、組立が容易であり、レバー状の操作部により生じる搾乳時の負圧を容易に変更することができる手動搾乳器を提供すること。
【解決手段】 母乳を貯めるための収容容器11と、搾乳器本体と、搾乳器本体に取付けられ、該搾乳器本体に装着された負圧発生部材を変形させるための操作部61とを有し、操作部61は、レバー状であって、搾乳器本体21側の係合部38係合する被係合部として係合開口15を備え、該係合開口15は、前記負圧発生部材の一部である支柱状に起立した延長部の途中に設けた複数位置の係合部と選択的に係合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば手動で操作されるレバー状の操作部により負圧を発生させて搾乳できる手動搾乳器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
母親の乳房に当接されるラッパ状に拡径した搾乳部すなわち搾乳拡径部を備えた搾乳器が広く使用されている。
特に搾乳に際して負圧によりミスト状となった母乳が、外部に漏れ出たりすることがないように、搾乳器本体の上端等に凹所を設け、この凹所内にダイヤフラムなどの変形される部材を収容した構成が知られている。
【0003】
すなわち、上記ダイヤフラムにハンドル等の操作部を連結し、ハンドルの往復動によりダイヤフラムを繰り返し引き上げることで負圧を形成する手動搾乳器が知られおり、このような手動搾乳器としては、本出願人が提案した特許第4413231号に係る搾乳器がある(特許文献1)。
【0004】
特許文献1の搾乳器は、洗浄のための分解、組立が容易でありながら、操作の際には、操作部が容易に外れることがないようにしたものである。
このため、この搾乳器では、母乳を貯めるための収容容器11と、搾乳器本体と、搾乳器本体に取付けられ、該搾乳器本体に装着された負圧発生部材を変形させるための操作部としてのハンドル61とを有している。ハンドル61の一端に位置する被係合部62は、特許文献1の図2に示されているように、支軸部49を中心に回動することで矢印Bに示すように上下に往復動するようになっている。
ここで、図1に示すように、使用者がA2の方向に、つまり、レバー部63をボトル11に近接するよう操作することで、被係合部62は、矢印B2方向に移動した時、負圧発生部材30の変形部である第2の壁部32が図1の下側に向かう状態から上側に向かうよう変形させられる。このため、底面部33と傾斜面42との間に形成されている内部空間Sの容積が増大すると、この内部空間Sに空気が引かれた分、搾乳部通気路23の空気が引かれ、搾乳部22の拡径した先端に使用者の乳房が当接されていると、密閉空間となっているため、該搾乳通気路23が負圧となる。この負圧により搾乳を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4413231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の搾乳器では、搾乳に利用される負圧の大きさが、レバー部63の往復動のストロークに依存する。
【0007】
ここで、特許文献1の発明にあっては、その図8に示されているように、結合部35−1のボス部37から延びる延長部75の長さ方向の複数箇所に係合部を形成している。
この場合、ボス部37に近接した位置から離間する方向に沿って、第1の係合部38−1、第2係合部38−2、第3の係合部38−3の三つの係合部が形成されている。
そして、各係合部には、図4に示すハンドル61の先端の被係合部62が、択一的に係合される。これにより、係合される各係合部の高さ位置に応じて、第1の位置L1、L2、L3、の各高さ位置にハンドル61の被係合部62が係合されることになる。これによって、図2の矢印Bに沿った往復動のストロークが変化することになるから、生成される負圧の大きさに関して、使用者が適切な強さを選択することができる。
【0008】
しかしながら、実際には、出願人において、第3の係合部38−3の構造を試作してみると、必ずしも満足できる結果を得ていない。
なぜならば、凹状の陥没した形態で、狭い空間しかない変形部32の内側で、ハンドル61の先端の被係合部62をこれら三つの係合部である第1の係合部38−1、第2係合部38−2、第3の係合部38−3のいずれかに選択係合させる作業はハンドルを本体の軸受部から一度取り外してして、別の位置で係合し直す必要があり、実用的なものとするには、さらに別の工夫を要するものであった。
【0009】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、洗浄のための分解、組立が容易であり、レバー状の操作部により生じる搾乳時の負圧を容易に変更することができる手動搾乳器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、母乳を貯めるための収容容器と、該収容容器に対して搾乳器本体を着脱するための着脱部と、該搾乳器本体に取付けられ、該搾乳器本体に装着された負圧発生部材を変形させるための手動の操作部とを有する搾乳器であって、前記搾乳器本体が、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部を有しており、前記負圧発生部材が、支柱状に起立して延びる軸状の延長部を有し、この延長部の途中に形成した係合部により、前記操作部と結合される結合部と、この結合部からの力を受けて変形することで前記負圧を生成する変形部とを備え、前記手動の操作部は、長尺のハンドルであり、前記搾乳器本体に設けた支軸部に軸支される軸受部と、一端側に配置され、前記結合部と結合される被係合部と、他端側に配置されたレバー部とを有しており、さらに、前記結合部の前記延長部は、該延長部の延びる方向に沿って少なくとも複数の位置で係合される前記係合部を備えると共に、前記延長部の先端側には把持可能なヘッド部を有し、かつ、前記結合部は、前記延長部の仮想の中心軸の軸周りに回動可能であり、前記係合部に対して、前記レバー部の前記被係合部を係合させた状態で、前記延長部を軸周りに旋回させることにより、前記レバー部の前記被係合部との係合位置を前記延長部の延長方向に移動させる構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、本発明の搾乳器では、前記搾乳拡径部に使用者の乳房を当てた状態で該搾乳拡径部を塞ぎ、その状態で手動の操作部の前記レバー部を操作することにより前記搾乳拡径部内に搾乳のための負圧を作り出す。
ここで、負圧発生部材から延びる軸状の延長部が係合部を備えていて、この係合部に係合される被係合部を備えた前記レバーの動きにより、負圧が形成される。
ところで、搾乳を開始するに当たり、無理なく母乳を引き出すためには、乳輪部付近を含む乳房全体に、まず弱い負圧をかけて、乳房への吸引刺激を徐々に馴らしていくと、無理なく排乳を促すことができることが、明らかになりつつある。また、効果的に搾乳出来る負圧には個人差がある。
このような点に鑑みて、本発明では、前記結合部の前記延長部は、該延長部の延びる方向に沿って少なくとも複数の位置で係合される前記係合部を備えると共に、前記延長部の先端側には把持可能なヘッド部を有し、かつ、前記結合部は、前記延長部の仮想の中心軸の軸周りに回動可能であり、前記係合部に対して、前記レバー部の前記被係合部を係合させた状態で、前記延長部を軸周りに旋回させることにより、前記レバー部の前記被係合部との係合位置を前記延長部の延長方向に移動させるものとしている。このため、このような移動によりレバーの作動ストロークが変更され、搾乳の際の負圧を搾乳開始時に弱く設定でき、それから徐々に強く調整できるようにすることができる。あわせて、搾乳時の負圧は、使用者の任意の大きさに容易に調整することができる。
特に、前記延長部の先端側には把持可能なヘッド部を有しているので、このヘッド部を把持して押さえることで、前記結合部の延長部を容易に回動操作することができる。
【0011】
好ましくは、前記結合部の前記延長部の外周に螺旋状とされた前記係合部が形成されており、前記ハンドルの一端側の被係合部として、前記ハンドル部の先端に形成された差込み用空間部と、この差込み用空間部の底部に形成され、奥行き方向に設けられたスリット部と係合する構成を有していることを特徴とする。
上記構成によれば、前記延長部を軸周りに回動することにより、その外周の螺旋状係合部が、前記スリットに食い込んで、螺旋状に相対移動することによって、前記レバー部の被係合位置が上下の方向に移動されるので、レバーの作動ストロークが変更され、搾乳の際の負圧を使用者の任意の大きさに容易に調整することができる。
【0012】
好ましくは、前記結合部の前記係合部として、前記延長部の周方向の一部分に、水平に突出する横軸部が形成され、前記延長部の前記横軸部より上の位置には、さらに下向き段部が設けられており、前記ハンドルの一端側の被係合部として、前記ハンドル部の先端に形成された差込み用空間部と、この差込み用空間部の底部に形成され、奥行き方向に設けられたスリット部とを有していることを特徴とする。
上記構成によれば、前記延長部を軸周りに回動することにより、前記した水平に突出する横軸部が前記スリットの上面に抜けたり、あるいはスリットに嵌って、下へ抜けたりする。水平な横軸部がスリットの上面に抜けた状態では、スリットに嵌って、下へ抜けた場合には、該スリットの周縁は前記下向き段部に当接する。前記スリットの上面が、前記水平に突出する横軸部の下部に当接する。これにより、前記レバー部の被係合位置が上下の方向に移動されるので、レバーの作動ストロークが変更され、搾乳の際の負圧を使用者の任意の大きさに容易に調整することができる。
好ましくは、前記横軸部の先端部は、先に向かうほど徐々に縮径するテーパ状の傾斜案内部を有していることを特徴とする。
上記構成によれば、ハンドルの被係合部を前記延長部の外側に嵌めこんで回動させると、前記テーパ状傾斜案内部に導かれて、前記横軸部の上または下に容易に移動できる。すなわち、横軸部の傾斜案内部は、テーパ状であるから、ハンドルの被係合部が上から下へ、あるいは下から上への両方に案内されるうえで、いずれの場合にも好適な形状とされている。
【0013】
また、本発明は、母乳を貯めるための収容容器と、該収容容器に対して搾乳器本体を着脱するための着脱部と、該搾乳器本体に取付けられ、該搾乳器本体に装着された負圧発生部材を変形させるための手動の操作部とを有する搾乳器であって、前記搾乳器本体が、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部を有しており、前記負圧発生部材が支柱状に起立した軸状の延長部を有し、この延長部の途中に形成した係合部により、前記操作部と結合される結合部と、この結合部からの力を受けて変形することで前記負圧を生成する変形部とを備え、前記手動の操作部は、長尺のハンドルであり、前記搾乳器本体に設けた支軸部に軸支される軸受部と、一端側に配置され、前記結合部と結合される被係合部と、他端側に配置されたレバー部とを有しており、さらに、前記結合部の下端において、前記変形部が弾性変形することにより、前記延長部は容易に倒伏可能で、前記変形部の弾性により倒伏状態から垂直な起立状態に復帰できる構成とされており、この延長部には、該延長部の延びる方向に沿って、少なくとも複数の前記係合部を備えると共に、前記延長部の先端側には把持可能なヘッド部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、前記負圧発生部材が支柱状に起立した軸状の延長部が、狭い空間に配置されている場合においても、前記結合部の位置に、前記操作部の前記被結合部を位置させ、当該被係合部の上下位置を変えながら、前記延長部を前記変形部の弾性を利用して倒し、あるいは倒伏状態から起立状態に復帰させることで、複数の前記係合部のいずれかひとつを選択して容易に前記被係合部に係合させることができる。
特に、前記延長部の先端側には把持可能なヘッド部を有しているので、このヘッド部を把持して押さえることで、前記結合部の延長部を容易に折り曲げ操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る搾乳器の概略断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る搾乳器の概略断面図。
【図3】図1の実施形態における係合部の構造を示す拡大斜視図。
【図4】図3の係合部の使用例を示す部分概略斜視図。
【図5】図3の係合部と操作部側の被係合部とが噛み合って係合している状態を示す部分拡大断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る係合部の構造を示す拡大斜視図。
【図7】図6の係合部の使用例を示す部分概略斜視図。
【図8】図6の係合部の使用例を示す部分概略斜視図。
【図9】図6の係合部と操作部側の被係合部とが噛み合って係合している状態を示す部分拡大断面図。
【図10】図6の係合部と操作部側の被係合部とが噛み合って係合している状態を示す部分拡大断面図。
【図11】本発明の実施形態に使用される手動の操作部の概略斜視図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る係合部の構造を示す拡大斜視図。
【図13】図12の係合部の使用例を示す部分概略斜視図。
【図14】図12の係合部の使用例を示す部分概略斜視図。
【図15】図12の係合部と操作部側の被係合部とが噛み合って係合している状態を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0016】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る手動搾乳器(以下、「搾乳器」と略称する。)の全体斜視図であり、本発明の各実施形態に関し、全体の構成は共通している。
これらの図において、搾乳器20は、搾乳器本体21(以下、「本体」という)と、操作部であるハンドル61と、搾乳した母乳を貯留するための収容容器としてのボトル11を備えている。ハンドル61は搾乳器本体21と着脱できるようになっている。
【0017】
また、図1に示されているように、本体21の負圧発生部材30を装着した上部には、略ドーム状のフード16が着脱されるようにしてもよい。
フード16はハンドル61の箇所が切りかかれており、該ハンドル61を避けて装着されることで、負圧発生部材30などをカバーして保護することができるようになっている。なお、このフード16が無い構成としてもよい。
【0018】
本体21は、全体が、比較的軽く、丈夫な合成樹脂材料により成形されており、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルフォン等により形成されている。
本体21は、上記ボトル11と着脱する着脱部25を備えている。着脱部25は、例えば、図2に示されているように、偏平な筒状部分であって、内側に雌ネジ部25aを備えており、ボトル11の瓶口の周囲に形成された雄ネジ部と螺合されるようになっている。
尚、ボトル11は、搾乳器20の専用品でもよいし、着脱部25に適合した哺乳瓶等を利用してもよく、また、成形された容器ではなく、袋状とされていてもよい。
【0019】
本体21の着脱部25の上部には、斜めに傾斜した状態で、先端が拡径して開く円錐状もしくはラッパ状の搾乳拡径部22が設けられている。搾乳拡径部22の開口側には、シリコーンゴムやエラストマー、天然ゴム等の弾性体でなる緩衝部28が着脱可能に取り付けられている。緩衝部28は搾乳時に搾乳拡径部22が乳房へ当接することによる刺激を低減し、痛みを与えないようにするものである。緩衝部28の内周面には、使用者の乳輪近傍に刺激を付与する凸部28aが複数箇所、例えば、上下2ヶ所に形成されている。
【0020】
搾乳拡径部22の搾乳部通気路23は、通気及び搾乳した母乳の通路とされ、下方に曲折してボトル11側に向かうようにされている。また、搾乳拡径部22の搾乳部通気路23の開口は、本体21とボトル11との着脱部25の内側であり、小室26が装着されている。また、搾乳部通気路23の下方に向かう部分23aと隣接して、隔壁24を介してもうひとつの通気路27が設けられている。通気路27の下端開口は、図示されているように小室26内で搾乳部通気路の下方に向かう部分23aと連通している。
通気路27の上端は、図1に示すように、開口43となり、該開口43を囲むようにほぼ円形に拡がる装着部41となっている。装着部41は負圧発生部材30を装着する部分である。負圧発生部材30については、後で詳しく説明する。
この装着部41の上面は上記開口43に向かって僅かに下降するように傾斜する傾斜面42とされている。
【0021】
上記小室26は、図1及び図2に示されているように、全体がシリコーンゴムやエラストマー、天然ゴム等の弾性体で形成された中空状のキャップ状の形態であり、下端側の両側壁26b、26cは薄肉とされて下端に向けて互いに幅が徐々に接近するように形成された弾性体の傾斜壁でなる弁体となっている。両側壁26b、26cの接近した下端には、スリット26dが設けられており、搾乳した母乳が小室26の中空内に所定量まで貯留されると、その重量や、後述するように負圧が解除された際の圧力の変化に伴い、スリット26dが開いて、母乳はボトル11内に落とされるようになっている。また、傾斜壁の下端にスリット26dを形成したことにより、負圧時にボトル11内の空気が小室26に入ることを防ぐようになっている。
さらに、搾乳器本体21の着脱部25に隣接した箇所には、ボトル11内に母乳が溜まった際における圧力を逃がすよう、外気とボトル11内を連通する小さな通気孔29が形成されている。
【0022】
負圧発生部材30は、全体として比較的扁平な有底の円筒体に近い形態である。
具体的には、図5に示すように、負圧発生部材30は、外側で起立して、その外径を保持する程度の剛性を備える第1の壁部31と、その上端部が一体に内側に折り返され、該折り返しより先の部分を肉薄に形成して設けた内側壁部としての第2の壁部32とを有している。この第2の壁部32は変形部であり、その下端は円筒形状の下部を塞ぐように一体に延長して設けた比較的広い内側底部である底面部33とされている。
すなわち、第1の壁部31も第2の壁部32も同じ材料で形成されているが、その材料の厚みを異ならせることにより異なる剛性が付与されている。つまり、第1の壁部31は、第2の壁部32よりも厚みを大きくしてある。このため、外力が作用した時に、第1の壁部31は変形しないレベルの外力でも、第2の壁部32は変形できるようにされている。かくして、外周を覆う第1の壁部31に一体に接続されて、その内側に有底の筒状になるように第2の壁部32が配置されて、後述するように操作部の作用を受けて一定量の負圧を確保するようになっている。
なお、以上の構成に替え、あるいはこれに加えて、第1の壁部31と第2の壁部32の材料を変えて、第2の壁部32の方が第1の壁部よりも剛性が低い材料を用いて全体を二色成形してもよい。
【0023】
図1、図5を参照して説明する。
負圧発生部材30は、後述するようにハンドル61が操作されることにより、変形部である第2の壁部32が変形し、底面部33と装着部41との間に形成されている内部空間Sの容積を変更することで、該内部空間Sと空気通路27、小室26を介して連通された搾乳部通気路23内の空気を吸引し(図2の状態)、負圧を形成することができるようにされている。
この際、壁部すなわち、第1の壁部31は殆ど変形せず、装着部41に対する装着状態を保持できるようになっている。
変形部である第2の壁部32と第1の壁部31の対向面には、これらの間に介在するよう縦方向に延びる突出部51が設けられている。ここでは第1の壁部31の内面側に突出部51が形成されている。これにより、変形部である第2の壁部32が繰り返し変形され、元の形状に復帰する際の該復帰の時に、第2の壁部32と第1の壁部31の対向面が互いに当たり合って操作音を発生し、それが不快な音となることが有効に防止されるようになっている。
【0024】
変形部である第2の壁部32を変形させるため、結合部(材)70が設けられている。結合部(材)70は、変形部である第2の壁部32とは異なる硬い材料で形成されている。
結合部(材)70は、これを搾乳器20の一部として把握する際に「結合部70」と呼び、結合部70を構成する部材ないし部品として把握する際に「結合部材70」と呼ぶ。
結合部(材)70は、例えば、全体がポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等の比較的硬質の合成樹脂で形成されており、基端部が広く拡径された低く平たい円盤状のベース部77を有しており、さらに、結合部(材)70は、該ベース部77と一体にその上に形成され、やや低く突出するボス状部を経て軸状に延びる延長部75を有している。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係る結合部材70の拡大斜視図である。
図示されているように、結合部材70は、図5に示すように延長部75の仮想の中心軸Cの軸周りに矢印で示すように回動可能に取り付けられている。そして、操作部としての後述するハンドル61(図11参照)のレバー部の先端に形成された差込み用空間部の底部に形成され、奥行き方向に設けられたスリット部に係合させるようになっている。この係合状態で、延長部75を軸周りに旋回させることにより、ハンドルの一端側の被係合部との係合位置を前記延長部の延長方向、すなわち、図1や図2の上下の方向に移動させることができる。この点については、後で詳しく説明する。
【0026】
底面部33の中央部には貫通孔もしくは通し孔34が形成されている。
すなわち、負圧発生部材30と結合部材70を別体に形成しているので、符号34は通し孔となり、結合部材70の延長部75やボス部37が挿通されるように、これらの外径よりも、通し孔34が僅かに小さい内径とされて底面部33の裏面からボス部37を挿通することにより、確実に密閉を保ちつつ、きわめて容易に装着されることになる。この場合には、洗浄などに際して、着脱がしやすい。
また、結合部70は底面部33と別体とすることで、結合部が、底面部33に対して軸周りに回動する構造を容易に実現できる。
これに対して、後述する第3の実施形態の結合部は、底面部33と一体成形することができる。
【0027】
また、負圧発生部材30は、図5に示すように、その略円形状とされた着脱部53によって、搾乳器本体21の略円形状とされた着脱部53よりも僅かに大きな径とされた装着部41の周縁部47に対して、着脱される。
負圧発生部材30の着脱部53は、第1の壁部31が下方に延長され、かつ内側に曲折されることにより、その下端には内方に突出する負圧発生側フランジ部である内向きフランジ53aと、その上側であって内側に形成された負圧発生側溝部である内溝53bを有しており、全体として所定のゴム状の弾性を備えている。
これに対して、装着部41の周縁部47には、外向きの二重となったフランジが形成されている。すなわち、装着部41の上端であって、外方に突出した本体側フランジ部である第1のフランジ44と、第1のフランジ44の下方であって、着脱部53の下端及び該第1のフランジ44よりも大きな外径を備えた位置決め手段である第2のフランジ45を備えるとともに、第1のフランジ44と第2のフランジ45との間が縮径されることで内側に入り込んだ本体側溝部である外に開口した外溝46が形成されている。
【0028】
かくして、使用者が負圧発生部材30の第1の壁部31と第2の壁部32からなる壁面を把持し、把持した位置と逆側に位置する着脱部53の下端である内向きフランジ53aの外面を、位置決め手段である第2のフランジ45の上向き段部に当接させる。そして、その内向きフランジ53aを外溝46内に係止させた状態で、把持していない側の指で係止させた位置を軽く抑えながら把持した側の手で負圧発生部材30を引っ張る。これにより、係止した位置以外の内向きフランジ53aが変形しながら第1のフランジ44を乗り越えて本体側溝部46に入り込む。そうすると、全体的に着脱部53が周縁部47に装着されて、第1のフランジ44が内溝53bに入り込むと共に、内向きフランジ53aが外溝46に入り込んで、密閉を保った状態で装着される。
これにより、負圧発生部材30は、きわめて簡単に装着される。つまり、第2のフランジ45は、内向きフランジ53aの厚さよりも僅かに第1のフランジ44から離間した位置に形成されており、装着時に内向きフランジ53aが外溝46を乗り越えないように突出したリブとされている。
また、これとは逆に負圧発生部材30を取り外す際には、第1の壁部31を手で保持して外方に拡げるだけで、その内向きフランジ53aが、外溝46から外れて第1のフランジ44を乗り越えるので、きわめて簡単に取り外すことができる。
なお、本実施の形態において、第2のフランジ45を第1のフランジ44の相似形状としているが、部分的に第1のフランジ44よりも突出した部分が形成されていれば良く、例えば側縁側に切り欠きを形成して、他方の指で押さえやすくするよう構成してもよい。
【0029】
ここで、負圧発生部材30の第1の壁部31、第2の壁部32、底面部33は、好ましくは、全体が比較的弾性に富んだ柔軟な材料、すなわち、JIS−K6253(ISO7619)におけるA型デュロメータによる硬度がHS30〜70程度の合成樹脂、例えばシリコーンゴムやイソプレンゴム、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)等のエラストマー等により一体に形成されている。
また、好ましくは、第1の壁部31の部分を構成する材料の厚みが1.5mm〜3.0mmとされ、第2の壁部32を構成する材料の厚みが1.0mm〜2.5mmとされる。
【0030】
負圧発生部材30の硬度が30より小さいと第1の壁部31に変形がおよび、生成される負圧が小さくなる。硬度が60を超えると後述するハンドル61の操作に要する力が大きくなり、負圧形成の際の操作が大変になる。
第2の壁部32の厚みが1.0mmより小さいと変形の際のゴム弾性による延び変形が大きくなり、生成される負圧は小さくなってしまう。厚みが2.5mmを超えると、後述するハンドル61の操作に要する力が大きくなり、負圧形成の際の操作が大変になる。
第1の壁部31の厚みが1.5mmより小さいと、負圧形成に際して、該壁部が座屈してしまう。つまり不要な変形を生じ、十分な負圧生成ができない。第1の壁部31の厚みが3.0mmを超えると、搾乳器本体21への装着に際に該壁部があまり変形してくれないので、装着しにくくなる。
【0031】
図1、図2、図5に示すように、本体21の上部において、搾乳部22が延びる位置と反対の位置には、ハンドル61を取り付けるためのアーム48とその先端に形成した支軸部49が延びている。該アーム48はその先端が負圧発生部材30に隣接した位置で、該負圧発生部材30の上端を超える箇所に位置している。この実施形態には、アーム48の先端には、支軸部49が設けられている。
支軸部49には、図11で説明する軸受部64が着脱可能な状態で、回動可能に支持されている。
【0032】
図11は、ハンドル61の内側を下に向けて、仮想の水平面に配置した場合に、これを透過して見上げる様に表現した概略斜視図である。
ハンドル61は、例えば、図11に示すような長尺の形状であり、全体として、比較的丈夫で軽量な合成樹脂により一体に成形されており、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルフォン等で成形された成形品である。ハンドル61の一端である上端には後述する被係合部が設けられている。図11に示されているように、ハンドル61の先端近傍には、被係合部12が設けられている。被係合部12は、ハンドル部61の一端である先端側に形成された係合開口15を含んでいる。この係合開口15は、少なくとも、ハンドル61が図1のように搾乳器20に取付けられている状態で、軸受部64側に形成され、係合部38の外形より大きな開口である挿入開口部13と、この挿入開口部13に接して、これよりも先端側に設けられ、係合部38の外形よりも小さな開口とされた保持開口部14を有している。保持開口部14の間がスリット62bである。
ハンドル61の他端である下端63はレバー状であり、取手の役割を果たし、使用者が手のひらの親指と人差し指の間の箇所で挟むように把持して、握ることにより、図1のA2方向に押すと、後述する変形部30を引き上げることで、搾乳のための負圧を作り出し、握る力を弱めると矢印A1方向に戻り、弾性変形した変形部30が元の形状に復帰する。
この実施形態は、A2方向への動きからA1の方向に復帰する移動の大きさ、すなわちレバー部63の操作ストロークを容易に変更できる点に特徴がある。
【0033】
すなわち、図5と図11に示されているように、ハンドル61の一端側には被係合部62として、先端に形成された差込み用空間部62aと、この差込み用空間部の底部に形成され、奥行き方向に設けられたスリット部62bとを備えている。
差込み用空間部62aは上方が開放された凹状の空間である。スリット部62bは前記一端部から奥行き方向に向かうように切りこんだスリットで該スリット両側の縁部は係合部と引掛かけることができるような幅の狭い上向き段部が奥行き方向に延びて形成されている。
後述するように、結合部(材)70の係合部に対する被係合部62により、簡単に着脱できるようになっている。図1で説明したように、ハンドル61の他端63は下方に位置してやや外側に張り出しており、全体としてレバー状の外観を示している。
【0034】
ハンドル61は、本体21に対して着脱されるようになっており、図1の固定状態では、ハンドル61の一端寄りの位置に設けた一対の軸受け部64にて、アーム48先端の支軸部49に対して着脱可能で、かつ回動可能に装着されている。
ハンドル61の他端の外側表面には、二色成形などにより、弾性材料等を用いて、滑り止め部が設けられており、この箇所に操作者が手を当てて操作することで図2の矢印Aに示すように、ボトル11に対して近接/離間するよう往復動されるようになっている。なお、滑り止め部は、別材料で形成しなくても、ハンドル61の対応箇所の表面にシボ加工やリブを設ける等の凹凸を設けることによって、滑りにくくなるように摩擦力を高める処理を施してもよい。
【0035】
これに応じて、ハンドル61の先端となる被係合部62は、支軸部49を中心に回動することで矢印Bに示すように上下に往復動するようになっている。使用者がハンドル61をボトル11に近接するよう操作することで、矢印B2方向に移動した時、負圧発生部材30の変形部である第2の壁部32が図2の下側に向かう状態から上側に向かうよう変形させられる。このため、底面部33と装着部41との間に形成されている内部空間Sの容積が増大すると、この内部空間Sに空気が引かれた分、搾乳部通気路23の空気が引かれ、搾乳部22の拡径した先端に使用者の乳房が当接されていると、密閉空間となっているため、該搾乳通気路23が負圧となる。
この負圧によって、搾乳された母乳は、搾乳部通気路の下方に向かう部分23aから小室26に入り込んで、該小室26にある程度母乳が溜まる。この時、両側壁26b、26cは薄肉状とされているため、負圧に伴って近接する方向に若干変形して、スリット26dが確実に密閉された状態とされているため、母乳が漏れ出ることはない。
【0036】
使用者がハンドル61を操作し、ボトル11に最も近接した状態とされると、上端62が図2の上限位置Cに移動することとなり、ハンドル61の内側の端部が対向する位置決め部45の外縁に当接し、それ以上移動しない状態となって、中間までめくり上げられた状態でとどまることとなる。
その状態から使用者がハンドル61にかけていた力を緩めると、第2の壁部32が復元しようとする力により、上端62が矢印B1方向に移動し、ハンドル61がボトル11から離間する方向に移動して、負圧発生部材30の変形部である第2の壁部32が図1に示されている状態に復元される。このため、底面部33と装着部41との間に形成されている内部空間Sの容積が減少し、負圧が解除された際の圧力の変化に伴い、さらに、溜まった母乳の重量に起因して、両側壁26b,26cの先端側が開き、スリット26dが開き、母乳はボトル11内に落とされる。
以上の動作を繰り返すことで、ハンドル61の操作に伴い、負圧発生部材30の動作に基づき、負圧が脈動するように与えられ、搾乳が行われる。
【0037】
このような働きの中心となる負圧発生部材30に備えられた結合部材70について、図3を参照して詳しく説明する。
図3は第1の実施形態に係る結合部材70の形態を示しており、この結合部材70は全体が、図5に示すように、変形部32側に対して、延長部の仮想の中心軸Cの軸周りに矢印に示すように回動可能に取り付けられている。
結合部材70の垂直に起立する軸状の延長部75は細い支柱状であり、スクリュー状の支柱とされている。すなわち延長部75の外周には軸方向に旋回して螺旋状に延びていて、しかも「突条」と呼ぶ、畝のように連続して盛り上がった部分とされた係合部71,72が形成されている。
延長部75の先端部には、手指にて把持可能な程度に拡径されたヘッド部73が形成されており、ヘッド73には、端部が水平方向に折り曲げられたフック状部分である取手76が形成されている。なお、フック状の取手76の替わりに、把持し易い大きなヘッド部、蝶の羽根状に拡がったヘッド部等つかみやすい種々の形態が採用できる。
ヘッド部73の下端部は下向き段部74が形成されている。
なお、螺旋状の突条でなる係合部は、符号71、72で示すように2つ形成されているが、これに限らず3つ以上形成しても勿論よい。
【0038】
第1の実施形態は以上のように構成されており、次に特徴的な作用を説明する。
図4は、ハンドル61を結合部材70に係合した状態を示しているが、図4(A)は、ハンドル部61の上端が変形部30の狭い有底筒体の中に深く入り込んでおり、その被係合部のスリットは図3の突条である係合部71と係合している。
この状態では、ハンドル61の他端である下端63は矢印Uに示すようにやや上方の位置にあるから、図1の矢印A2の方向に動かす上で、比較的大きなストロークが可能で、搾乳時に形成される負圧はその分大きくなる。
【0039】
これに対して、図4(A)において、取手76を手指で掴んで、矢印A方向にひねる(時計周りに回す)と、ハンドル部61の被係合部におけるスリット62bは図3の延長部75の延びる方向に沿って上昇し、螺旋状の突条に案内されて、突条72、あるいは下向き段部74に係合する。このため、図4(B)に示すように、ハンドル61の他端である下端63は矢印Dに示すようにやや下方の位置にあるから、図1の矢印A2の方向に動かす上で、比較的小さなストロークが可能で、搾乳時に形成される負圧はその分小さくなる。
これとは逆に、図4(B)において、取手76を手指で掴んで、矢印B方向にひねる(逆時計周りに回す)と、ハンドル部61の被係合部におけるスリット62bは図3の延長部75の延びる方向に沿って下降し、螺旋状の突条に案内されて、突条71に係合する。このため、図4(A)の状態に戻り、ハンドル61の他端である下端63は矢印Uに示すようにやや上方の位置にあるから、図1の矢印A2の方向に動かす上で、比較的大きなストロークが可能で、搾乳時に形成される負圧はその分大きくなる。
【0040】
図4(A)の状態を拡大断面図で示したのが図5の(A)であり、図4(B)の状態を拡大断面図で示したのが、図5(B)である。
このように、使用者が、ハンドル61の被係合部の結合位置を着脱により変更しないでも、狭い変形部30の内側に簡単に係合位置を上下移動させることができる。これによって、ハンドル61の操作ストロークを容易に変更できるので、結合部材70を回動調整するだけで、使用者の好みに合わせた負圧を簡単容易に設定できる。
すなわち、 搾乳を開始するに当たり、無理なく母乳を引き出すためには、乳輪部付近を含む乳房全体に、まず弱い負圧をかけて、乳房への吸引刺激を徐々に馴らしていくと、無理なく排乳を促すことができることが、明らかになりつつある。
この実施形態では、上述のように、レバーの作動ストロークが任意に変更できるから、搾乳の際の負圧を搾乳開始時に弱く設定でき、それから徐々に強く調整できるようにすることができる。あわせて、搾乳時の負圧は、使用者の任意の大きさに容易に調整することができる。
特に、延長部75の先端部の先端には、フック状部分である取手76が形成されているので、この部分を容易に手指にて掴むことができ、力をこめて捻ることで、延長部の仮想の中心軸の周囲に回動できるので、きわめて操作しやすい。
【0041】
図6は、第2の実施形態に係る結合部材の構造を示す概略斜視図である。
この結合部材80も全体が、図9に示すように、変形部32側に対して、軸状の延長部の仮想の中心軸Cの軸周りに矢印に示すように回動可能に取り付けられている。
この結合部材80は、延長部85の周方向の一部分に、水平に突出する横軸部81が形成され、延長部85の横軸部81より上の位置、この実施形態では上端部には、拡径したヘッド部83を設けるとともに、ヘッド部83の下面が下向き段部84とされている。
本実施形態では、横軸部81は、延長部85と直交して水平に延びており、十字形をした横桟の構造である。
延長部85の先端部に設けたヘッド部83は、手指にて把持可能な程度に大きく、縦に長く延びた円形であり、把持のし易さを特に考慮して、厚みを薄くした薄板状とされている。
また、上述した横軸部81の水平な両方の先端部は、先に行くほど縮径されたテーパ状もしくは円錐状とされた傾斜案内部となっている。この傾斜案内部は、先端に向かう程徐々に下降する上側傾斜案内部81b、81bと、先端に向かう程徐々に上昇する下側傾斜案内部81a,81aとを含んでいる。
【0042】
図7、図8を参照する。
図7は、ハンドル61を結合部材80に係合した状態を示しているが、図7(A)は、ハンドル部61の上端が変形部30の狭い有底筒体の中に深く入り込んでおり、その被係合部のスリットは図6の横軸部である係合部81と係合している。図9には、その拡大部分断面図が示されている。
図7(A)では、ハンドル部61の被係合部であるスリット62bに、結合部80の係合部である横軸81が上に載る状態で係合している。図9(A)はこの状態の部分拡大断面図である。
ヘッド部83をつまんで、図7の矢印Aの方向(時計周りの方向」に延長部85をひねると図7(B)の状態となって、横軸81は、ハンドル61のスリット延びる方向にその長さ方向を沿わせる状態となり、係合を外すことができる。図9(B)はこの状態の拡大断面図である。
【0043】
そして、ハンドル61の被係合部を延長部85に当てたまま、図8のようにやや上方に滑らせるように移動させると、横軸81は、ひねられた状態から、結合部材80が、この結合部材80が固定されている変形部の弾性により復帰し、被係合部のスリット62bをヘッド部83の下向き段部84に当接させることで係合することができる。これにより、ハンドル61の被係合部の係合位置を変更することができる。
具体的には、図9(A)に示すように、ヘッド部83を把持して捻ることで、延長部の横軸部81の下側傾斜案内部81a,81aがハンドル61のスリット62bを乗り越えて該スリット62bの上段部に乗り上げることで、ハンドル61は、大きなストロークを得る箇所で係合される。
さらに、図9(B)に示すように、ヘッド部83を把持して逆に捻ることで、延長部の横軸部81の上側傾斜案内部81b,81bがハンドル61のスリット62bの下側に入り込み、スリット62bはヘッド部83の下端の段部84に当接するので、ハンドル61は、小さなストロークを得る箇所で係合される。
【0044】
以上の操作により、図8に示すように、ハンドル61の他端である下端63は矢印Dに示すようにやや下方の位置にあるから、図1の矢印A2の方向に動かす上で、比較的小さなストロークが可能で、搾乳時に形成される負圧はその分小さくなる。
これとは逆に、図7(A)において、ハンドル61の他端である下端63は矢印Uに示すようにやや上方の位置にあるから、図1の矢印A2の方向に動かす上で、比較的大きなストロークが可能で、搾乳時に形成される負圧はその分大きくなる。
このように、本実施形態においても第1の実施形態と同等の作用効果を発揮することができる。
【0045】
図12は、第3の実施形態に係る結合部材の構造を示す概略斜視図である。
この結合部材90は、他の実施形態のように、変形部32側に対して、延長部の仮想の中心軸Cの軸周りに矢印に示すように回動可能に取り付けられるものではない。この実施形態の延長部には、該延長部の延びる方向に沿って、少なくとも複数の前記係合部を備える形態の一例として示されている。
【0046】
図12において、この結合部材90の軸状の延長部95下部は、図15で示されたように、貫通孔34を挿通させて、変形部の底面部33の裏に嵌めこまれている。
これにより、後述するように、結合部材90を倒すと、変形部30の弾性力により結合部90は傾斜するようになっている。
【0047】
さらに、結合部材90は、図12において垂直に起立する軸状の延長部に沿って、リング状もしくはフランジ状に拡径した部分で、複数の係合部91,92を形成している。係合部92は、ヘッド部98の下端と一体である。係合部91には下向き段部93があり、その上の係合部92には下向き段部94がある。
また、延長部95の先端部に設けたヘッド部98は、手指にて把持可能な程度に大きく、縦に長く延びた円形であり、把持のし易さを特に考慮して、厚みを薄くした薄板状とされている。
【0048】
図13、図14を参照する。
図13は、ハンドル61を結合部90部に係合した状態を示しているが、図13(A)は、ハンドル部61の上端が変形部30のきわめて狭い有底筒体の中に深く入り込んでおり、その被係合部のスリットは図12の結合部材90の係合部91と係合している。図15には、その拡大部分断面図が示されている。
図13(B)では、ハンドル部61の被係合部であるスリット62bに、結合部90の係合部92に係合している。図15(B)はこの状態の部分拡大断面図である。
【0049】
ここで、図14に示すように、結合部材90のヘッド部98をつまんで、ハンドル61から離れる方向に倒すと、該結合部材90の下端付近の変形部30の底面部33が変形することにより、結合部材90は倒れる、これにより、折れ曲がり、図示するように傾斜する。これにより、係合対象となっていた係合部である係合部91から、ハンドル61が容易に係合解除される。
次いで、ハンドル61の被係合部をやや上方に移動させる。次いで、使用者が結合部材90のヘッド部98をつまんだ状態から離すと、結合部材90は弾性により復帰し、ハンドル部61の被係合部であるスリット62bを、結合部90の係合部92に係合させることができる。
これにより、ハンドル61の被係合部の係合位置を変更することができる。
【0050】
以上の操作により、図13(B)に示すように、ハンドル61の他端である下端63は矢印Dに示すようにやや下方の位置にあるから、図1の矢印A2の方向に動かす上で、比較的小さなストロークが可能で、搾乳時に形成される負圧はその分小さくなる。
これとは逆に、図13(A)において、ハンドル61の他端である下端63は矢印Uに示すようにやや上方の位置にあるから、図1の矢印A2の方向に動かす上で、比較的大きなストロークが可能で、搾乳時に形成される負圧はその分大きくなる。
このように、本実施形態においても第1の実施形態と同等の作用効果を発揮することができる。
【0051】
本発明は上述の各実施形態に限定されない。
例えば、軸周りに旋回可能な結合部材は、第1、第2の実施形態の形状、構造に限らず、軸周囲に回動することで係合部の高さ位置を変えることができる形態ならいかなる結合部材を使用してもよい。
第2、第3の実施形態の各結合部材のヘッド部にも、第1の実施形態の結合部のヘッドに設けたようなフック状の部分を形成してもよい。
また、各実施形態の個々の構成は全てが必ず必要とされるものではなく、その一部を省略することができるし、この場合、図示しない他の構成と組み合わせて異なる構成の組み合わせのもとで実施されてもよく、各実施形態の各構成を相互に組み合せて使用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
11・・・収容容器、20・・・搾乳器、21・・・(搾乳器)本体、22・・・搾乳部、30・・・負圧発生部材、31・・・(第1の)壁部、32・・・変形部(第2の壁部)、33・・・底面部、35・・・結合部(材)、61・・・操作部(ハンドル)、70,80,90・・・結合部(材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母乳を貯めるための収容容器と、該収容容器に対して搾乳器本体を着脱するための着脱部と、該搾乳器本体に取付けられ、該搾乳器本体に装着された負圧発生部材を変形させるための手動の操作部とを有する搾乳器であって、
前記搾乳器本体が、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部を有しており、
前記負圧発生部材が
支柱状に起立して延びる軸状の延長部を有し、この延長部の途中に形成した係合部により、前記操作部と結合される結合部と、
この結合部からの力を受けて変形することで前記負圧を生成する変形部と
を備え、
前記手動の操作部は、長尺のハンドルであり、
前記搾乳器本体に設けた支軸部に軸支される軸受部と、
一端側に配置され、前記結合部と結合される被係合部と、
他端側に配置されたレバー部と
を有しており、
さらに、前記結合部の前記延長部は、該延長部の延びる方向に沿って少なくとも複数の位置で係合される前記係合部を備えると共に、前記延長部の先端側には把持可能なヘッド部を有し、
かつ、前記結合部は、前記延長部の仮想の中心軸の軸周りに回動可能であり、前記係合部に対して、前記レバー部の前記被係合部を係合させた状態で、前記延長部を軸周りに旋回させることにより、前記レバー部の前記被係合部との係合位置を前記延長部の延長方向に移動させる構成とした
ことを特徴とする手動搾乳器。
【請求項2】
前記結合部の前記延長部の外周に螺旋状とされた前記係合部が形成されており、前記ハンドルの一端側の被係合部として、前記ハンドル部の先端に形成された差込み用空間部と、この差込み用空間部の底部に形成され、奥行き方向に設けられたスリット部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の手動搾乳器。
【請求項3】
前記結合部の前記係合部として、前記延長部の周方向の一部分に、水平に突出する横軸部が形成され、前記延長部の前記横軸部より上の位置には、さらに下向き段部が設けられており、前記ハンドルの一端側の被係合部として、前記ハンドル部の先端に形成された差込み用空間部と、この差込み用空間部の底部に形成され、奥行き方向に設けられたスリット部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の手動搾乳器。
【請求項4】
前記横軸部の先端部は、先に向かうほど徐々に縮径するテーパ状の傾斜案内部を有していることを特徴とする請求項3に記載の手動搾乳器。
【請求項5】
母乳を貯めるための収容容器と、該収容容器に対して搾乳器本体を着脱するための着脱部と、該搾乳器本体に取付けられ、該搾乳器本体に装着された負圧発生部材を変形させるための手動の操作部とを有する搾乳器であって、
前記搾乳器本体が、使用者の乳房に当接されるための拡径された搾乳拡径部を有しており、
前記負圧発生部材が
支柱状に起立した軸状の延長部を有し、この延長部の途中に形成した係合部により、前記操作部と結合される結合部と、
この結合部からの力を受けて変形することで前記負圧を生成する変形部と
を備え、
前記手動の操作部は、長尺のハンドルであり、
前記搾乳器本体に設けた支軸部に軸支される軸受部と、
一端側に配置され、前記結合部と結合される被係合部と、
他端側に配置されたレバー部と
を有しており、
さらに、前記結合部の下端において、前記変形部が弾性変形することにより、前記延長部は容易に倒伏可能で、前記変形部の弾性により倒伏状態から垂直な起立状態に復帰できる構成とされており、この延長部には、該延長部の延びる方向に沿って、少なくとも複数の前記係合部を備えると共に、
前記延長部の先端側には把持可能なヘッド部を有する
ことを特徴とする手動搾乳器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−223495(P2012−223495A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96080(P2011−96080)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】