説明

手摺りブラケット

【課題】ブラケットの種類を増やすことなく、真壁の出隅部及び入隅部に手摺り棒を良好に設置できる手摺りブラケットを提供する。
【解決手段】真壁Zの出隅部分Xの柱Pに取付可能な一端部を有する固定部材5と、前面部1aを背面側に反転し得るように前記固定部材5の他端部に設けられ、且つ手摺り棒20が取付けられるブラケット本体1と、を備え、前記固定部材5は、スペーサー30を介して前記真壁Zの入隅部分Yの柱Qに取付可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廊下や階段等の壁面に手摺り棒を設置するために用いられる手摺りブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の手摺りブラケットとしては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは、壁面の隅部分に固定される断面Lの字状の支持部材と、該支持部材の前面に突設される支持棒と、該支持棒の先端に取付けられる平面Lの字状のブラケット本体とを備えたものである。
【0003】
かかる手摺りブラケットは、その支持部材を壁面の隅部に固定して取付けられるものであり、壁面の隅部の種類に応じて取付けられるように、支持部材及びブラケット本体の形状が相違する出隅用ブラケットと入隅用ブラケットの2種類が用意されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、壁面の施工形態としては、一般的な大壁の他に所謂真壁と称されるものが存在する。これは、柱等の軸組が露出するように施工される壁面であり、室内の湿度調整機能及びメンテナンス性に優れている等の点から、近年その良さが見直されている。
【特許文献1】特開2000−170339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような真壁に、上記従来の手摺りブラケットを使用して手摺り棒を設置する場合、出隅部分に配された柱に対しては、出隅用ブラケットを適用することができ、特に問題は生じない。
【0006】
しかしながら、入隅部分に配された柱に対しては、その支持部材を柱に取付けることができない。一方、出隅用ブラケットは柱に取付けることはできるものの、ブラケット本体の向きが逆になるために、結局適用することができない。これに対して、入隅用ブラケットを新たに製作して対処することも可能ではあるが、ブラケットの種類が増えることは好ましくなく、適合しないブラケットを誤って使用してしまったり、在庫管理が厄介になるという不都合が生じる。
【0007】
それ故に、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ブラケットの種類を増やすことなく、真壁の出隅部及び入隅部に手摺り棒を良好に設置できる手摺りブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る手摺りブラケットは、真壁の出隅部分の柱に取付可能な一端部を有する固定部材と、前面部を背面側に反転し得るように前記固定部材の他端部に設けられ、且つ手摺り棒が取付けられるブラケット本体とを備え、前記固定部材は、スペーサーを介して前記真壁の入隅部分の柱に取付可能に構成されたものである。
【0009】
これによると、例えば出隅部分及び入隅部分を有する真壁に手摺り棒を設置する場合は、出隅部分の柱に固定部材の一端部を固定すると共に、該固定部材の他端部に設けたブラケット本体に手摺り棒の一端部を取付ける。一方、入隅部分の柱には、スペーサーを介して固定部材の一端部を固定する。更に、前記手摺り棒の他端部が取付けられるようにブラケット本体の前面部を背面側に反転した後、該ブラケット本体に前記手摺り棒の他端部を取付ける。
【0010】
即ち、出隅用手摺りブラケットを、そのブラケット本体の前面部を背面側に反転しただけの状態で、これを入隅部分に使用した場合、各ブラケット本体の中心軸が一致せず、出隅側のブラケット本体が中心軸の方が前方側にずれてしまう。しかるに、所定の厚みを備えたスペーサーを介して固定部材の一端部を入隅部分の柱に固定することにより、両者の中心軸のずれが解消される。これにより、手摺り棒を両ブラケット本体間に良好に取付けることが可能となり、真壁に沿って手摺り棒を設置することができる。このように、出隅及び入隅部分に於いて、手摺りブラケットを共用することが可能になるのである。尚、ここにいう「ブラケット本体の前面部」とは、真壁の柱に対面する背面部に対して反対側に位置するブラケット本体の部位を意味している。
【0011】
また、前記ブラケット本体は、一対の手摺り棒を交差させて取付けるべく略Lの字状に形成してもよい。
【0012】
これによると、ブラケット本体に取付けた一対の手摺り棒は、ブラケット本体を介して交差状態に取付けられることになる。これにより、真壁の出隅部分を形成する両側の壁面に手摺り棒を設置することができる。
【0013】
更に、前記ブラケット本体の前面部を背面側に反転させるべく、該ブラケット本体を前記固定部材の他端部に着脱自在又は回動自在に設けることも可能である。
【0014】
これによると、ブラケット本体を固定部材から取外し、或いはブラケット本体を固定部材に対して回動させれば、ブラケット本体の前面部を背面側に簡単に反転させることができる。
【0015】
また、前記固定部材の一端部には、柱の角部に嵌合する取付面を形成しても構わない。
【0016】
これによると、取付面を柱の角部に嵌合させた状態で、該柱に固定部材の一端部を取付ける。柱の角部に取付面を嵌合させることにより、固定部材を柱の所望位置に確実且つ強固に取付けることが可能になる。
【0017】
更に、前記固定部材は、柱に取付可能な台座部と、該台座部の前面に設けられ、且つブラケット本体が取付けられるアーム部とを有するように構成してもよい。
【0018】
これによると、台座部を設けてこれを柱に取付けることにより、固定部材の取付けが強固なものになる。また、アーム部にブラケット本体を取付けることにより、該ブラケット本体に取付けられる手摺り棒を真壁に対して所望の間隔を有して設置することができる。
【0019】
また、前記固定部材にスペーサーが固定されていても構わない。
【0020】
この場合は、スペーサーを介して固定部材を真壁の入隅部分の柱に取付ける。これによると、スペーサーの厚み分だけブラケット本体を前方側に配することができる。手摺り棒の取付けに際して、該手摺り棒の各端部が取付けられるブラケット本体の位置ずれを解消することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、手摺りブラケットを真壁の出隅部分及び入隅部分に共用することが可能になると共に、真壁に手摺り棒を良好に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る手摺りブラケットの一実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1及び図2に示すように、金属からなるブラケット本体1は、その両端部に手摺り棒20が挿着される円筒状部2を夫々有している。かかる円筒状部2に一対の手摺り棒20を挿着すると、該手摺り棒20が略直角に交差するように、ブラケット本体1は平面略Lの字状に形成されている。尚、本実施形態では、ブラケット本体1の外周面部側を前面部1aとし、これに相対する内周面部側を背面部1bとしている。
【0024】
ブラケット本体1の各円筒状部2の下面中央には、手摺り棒20を固定するためのタッピングネジ21が挿通される固定孔3が設けられている。また、ブラケット本体1の中央部には上下方向に貫通孔4が形成されている。この貫通孔4は、上部側に位置するネジ挿通孔4aと、下部側に位置し、且つ該ネジ挿通孔4aよりも大径のアーム部挿通孔4bとからなっている(図3参照)。尚、アーム部挿通孔4bの上部側は六角形状の角孔4cで構成されている。
【0025】
固定部材5は、真壁の柱に固定するために一端部に設けられる台座部5aと、該台座部5aの前面に上向きに設けられる側面略Lの字状のアーム部5bとを備えている。このアーム部5bは前記ブラケット本体1のアーム部挿通孔4bに挿着されており、断面六角形状に形成されたアーム部5bの先端部5cが、アーム部挿通孔4bの角孔4cに嵌合する。また、アーム部5bの先端面には前記ブラケット本体1のネジ挿通孔4aに挿通したネジ6が螺合されている。かかるネジ6を緩めて固定部材5からブラケット本体1を取外し、ブラケット本体1の前面部1aが背面側にくるように180°反転させることが可能である。
【0026】
固定部材5の台座部5aは縦長形状からなり、その背面部には柱の角部に嵌合する平面略Lの字状の取付面7が形成されている。また、台座部5aの前面上部側には、斜め下方向に傾斜する傾斜孔8が形成されている(図3参照)。更に、前面下部側には前後方向に取付孔9が貫通して形成されている。これら傾斜孔8及び取付孔9にはタッピングネジ22、23が挿通されて、該タッピングネジ22、23により台座部5aが柱に固定されることになる。この場合に於いて、上部側の孔は傾斜孔8で構成されているので、ドライバー等の工具によりタッピングネジ22を締め込む際に、工具と固定部材5のアーム部5bとの干渉を回避することができて、作業上とても有効である。尚、タッピングネジ22、23の頭部を隠蔽するために、台座部5aの前面上部及び下部には夫々合成樹脂製のカバー体10が着脱自在に外嵌されている。
【0027】
真壁の出隅部分の柱に使用される手摺りブラケットAは、以上のように構成されている。また、真壁の入隅部分の柱に使用される手摺りブラケットBは、図2乃至図4に示すように、出隅用手摺りブラケットAの台座部5aの取付面7にスペーサー30を取付けたものである。
【0028】
即ち、スペーサー30の前面は、前記台座部5aの取付面7に嵌合するように形成されている。この状態で、スペーサー30の下部側に設けた通孔31にネジ32を挿通し、これを台座部5aのネジ部33に螺合して固定される。また、スペーサー30には、台座部5aの傾斜孔8及び取付孔9に夫々連通する傾斜孔34と、取付孔35が設けられている。更に、背面部には柱の角部に嵌合する平面略Lの字状の取付面36が形成されている。
【0029】
次に、これらの各手摺りブラケットA、Bを使用して、図5に示すように、出隅部分X及び入隅部分Yとを有する真壁Zに手摺り棒20を設置する場合について説明する。この場合、ブラケット本体1は固定部材5から取外しておく。真壁Zの出隅部分Xには、出隅用手摺りブラケットAを使用する。先ず、手摺り棒20を設置すべき位置を考慮しつつ、柱Pの所望の位置に手摺りブラケットAを取付ける。即ち、前記固定部材5の台座部5aに設けた取付面7を柱Pの角部に嵌合させた状態で、台座部5aの傾斜孔8及び取付孔9にタッピングネジ22、23を夫々挿通し、これを柱Pの角部に締着する。この場合、柱Pに予め下孔を形成しておくのが望ましい。その後、台座部5aの前面にカバー体10を外嵌する。
【0030】
更に、ブラケット本体1の各円筒状部2に丸棒状の手摺り棒20の一端部を挿入した状態で、タッピングネジ21をブラケット本体1の固定孔3を介して手摺り棒20にねじ込んで固定する。その後、ブラケット本体1の前面部1aが前方(柱Pの反対側)に位置するように、そのアーム部挿通孔4bに固定部材5のアーム部5bの先端部を挿着して、ネジ6により固定する。
【0031】
次に、真壁Zの入隅部分Yの柱Qに手摺りブラケットを固定する場合について説明する。この場合、前記出隅用手摺りブラケットAをその儘流用し、ブラケット本体1の前方部1aを背面側に反転させた状態で、固定部材5の台座部5aを柱Qの角部に固定することも可能である。しかしながら、この場合、図6に示すように出隅部分及び入隅部分に夫々取付けた各手摺りブラケットAの円筒状部2の中心軸間にLのずれが前後方向に生じてしまうために、これを直接使用することはできない。
【0032】
従って、この場合は前記入隅用手摺りブラケットBを使用する。図5に示すように、手摺りブラケットBのスペーサー30を入隅部分Yの柱Qの角部に、タッピングネジ22、23により固定する。固定部材5のアーム部5bからブラケット本体1を取外し、その背面部1bが前面側に配置されるように、再度アーム部5bに挿着してネジ6により固定する。これによると、スペーサー30の厚み分だけブラケット本体1が前方側に配されるので、各ブラケット本体1の円筒状部2の中心軸が略一致するようになる。その結果、出隅用手摺りブラケットAと入隅用手摺りブラケットB間に手摺り棒20を良好に取付けることができる。
【0033】
このように、簡易な構成からなるスペーサー30を加えるだけで、出隅用手摺りブラケットAを入隅用手摺りブラケットBとして共用することが可能になる。これにより、手摺りブラケット自体の種類は一種類で済むことになるために、誤使用という事態が発生することはなくなり、在庫管理の簡略化が図れることになる。
【0034】
また、本実施形態に係る手摺りブラケットA、Bは全体の構成が非常に簡易であるために、その製作も安価で且つ容易に行えるという実用的な利点もある。
【0035】
尚、上記実施形態に於いては、一対の手摺り棒20が交差させて取付けられるように、ブラケット本体1を略Lの字状に形成している。しかるに、一本の手摺り棒20の取付けだけでよい場合は、ブラケット本体1は例えば略Iの字状に形成すればよい。即ち、該ブラケット本体1は使用態様に応じて任意な変更が可能であり、具体的な形状は問うものではない。
【0036】
また、上記実施形態にあっては、ブラケット本体1の前面部1aを背面側に反転させるために、該ブラケット本体1を固定部材5の他端部(アーム部5bの先端部)に着脱自在に設けたが、必ずしもこのように構成する必要はない。例えば、ブラケット本体1を固定部材5の他端部に回動自在に設けてもよい。この場合は、必要に応じてブラケット本体1を固定部材5に対して回動させて、その前面部1aを背面側に反転させる。
【0037】
また、上記実施形態では、固定部材5を柱Pに取付可能な台座部5aと、ブラケット本体1が取付けられるアーム部5bとで構成しているが、固定部材5の具体的な構成はこれに限定されるものではない。
【0038】
更に、入隅用手摺りブラケットBは、出隅用ブラケットAに予めスペーサー30を固定して製作しておいてもよい。これによると、現場での作業が簡略化されて、効率良く一連の作業が行えることになる。但し、スペーサー30の固定は現場で行っても構わない。
【0039】
その他、スペーサー30の形状等の具体的な構成も、本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明は、廊下や階段等の壁面、特に真壁に手摺り棒を取付ける手摺りブラケットについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】出隅用手摺りブラケットの一実施形態に係る平面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】入隅用手摺りブラケットの一実施形態に係る断面図である。
【図4】同平面図である。
【図5】手摺りブラケットの施工状態を示す平面図である。
【図6】同平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ブラケット本体
1a 前面部
5 固定部材
5a 台座部
5b アーム部
7 取付面
20 手摺り棒
30 スペーサー
A 出隅用手摺りブラケット
B 入隅用手摺りブラケット
X 出隅部分
Y 入隅部分
Z 真壁
P、Q 柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真壁の出隅部分の柱に取付可能な一端部を有する固定部材と、
前面部を背面側に反転し得るように前記固定部材の他端部に設けられ、且つ手摺り棒が取付けられるブラケット本体と、を備え、
前記固定部材は、スペーサーを介して前記真壁の入隅部分の柱に取付可能に構成されてなることを特徴とする手摺りブラケット。
【請求項2】
前記ブラケット本体は、一対の手摺り棒を交差させて取付けるべく略Lの字状に形成されてなる請求項1記載の手摺りブラケット。
【請求項3】
前記ブラケット本体の前面部を背面側に反転させるべく、該ブラケット本体が前記固定部材の他端部に着脱自在又は回動自在に設けられてなる請求項1又は2記載の手摺りブラケット。
【請求項4】
前記固定部材の一端部には、柱の角部に嵌合する取付面が形成されてなる請求項1乃至3の何れか一つに記載の手摺りブラケット。
【請求項5】
前記固定部材が、柱に取付可能な台座部と、該台座部の前面に設けられ、且つブラケット本体が取付けられるアーム部とを有する請求項1乃至4の何れか一つに記載の手摺りブラケット。
【請求項6】
前記固定部材にスペーサーが固定されてなる請求項1乃至5の何れか一つに記載の手摺りブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−70993(P2010−70993A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240658(P2008−240658)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】