説明

手摺り

【課題】 回転半径が小さくて、取り出し,収納操作が行い易く、収納スペースも小さくてすむ手摺りを提供する。
【解決手段】 便器1後方に備えられたキャビネット2内に収納される収納位置から、便器1側方に前方側へ向かって略水平状に突出される使用位置に亘り回動可能な手摺り3であって、この手摺り3は、キャビネット内に固設された支持部材に回転機構を介し回動可能に連結されているとともに、ストッパー機構を介し使用位置で略水平状態に保持される手摺り基部4と、この手摺り基部4に延出可能に連結された肘掛け部(手摺り先端部)5で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害者,病人,高齢者などの立ち座り動作を補助する手摺りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
補助手摺りを床面や壁面に固定するとトイレ室内が狭くなり、掃除がしにくく、また、手摺りの不要な健常者にとっては邪魔になることがある。そこで、特許文献1に開示されているように、便器の後方に設けられたキャビネット内に収納可能に可動手摺りを取り付けた構造のものが存在する。
【特許文献1】実公平7−34639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されているような構造では、便器の後方に配置されるため、手摺りが長くなり、取り出しや収納時に回転半径が大きくなり、操作し難いという問題点があり、また、収納には手摺り長さに応じた高さのスペースが必要となり、また、回転中心が高くなると手摺りの位置も高くなり、適切な位置に手摺りを設置できなくなるという問題点があった。
更に、手摺り先端が床面に近接した状態で収納されるため、床面に物が置かれていたりすると、手摺りと干渉して操作できないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、回転半径が小さく、取り出し,収納操作が行い易く、床面にも干渉することのない手摺りを提供することを目的とし、その請求項1は、収納位置から使用位置に上下方向に回動可能な手摺りであって、該手摺りは壁面または床面に固設された支持部材に回転機構を介して回動可能に連結されてなり、該手摺りは、前記支持部材に連結されているとともにストッパー機構を介して前記使用位置で略水平状態に保持される手摺り基部と、該手摺り基部に連結された手摺り先端部とで構成され、該手摺り先端部は、前記使用位置で略水平状態に保持された状態で前記手摺り基部に対して延出状態となるように構成されていることである。
【0005】
また請求項2は、前記手摺りは、便器周りに設置され使用されるものである。
【0006】
また請求項3は、前記手摺りは、便器後方に備えられたキャビネット内に収納されていることである。
【0007】
また請求項4は、前記手摺り先端部は、前記収納位置では手摺り基部側に折り畳まれ、前記使用位置で手摺り基部から延出状態となることである。
【0008】
また請求項5は、前記手摺り先端部は、前記手摺り基部に対してスライド可能に構成されていることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の手摺りは、壁面または床面に固設された支持部材に回転機構を介して回動可能に連結され、ストッパー機構を介して使用位置で略水平状態に保持される手摺り基部と、手摺り基部に連結された手摺り先端部とで構成され、手摺り先端部は、使用位置で手摺り基部に対して延出状態となることにより、支持部材に対し回転機構を介し回動させてコンパクトな状態に収納することができるとともに、前方側へ引き出してストッパー機構を介して保持させ、良好に使用することができるものとなる。
【0010】
また、手摺りは、便器周りに設置され使用されるものであるため、便器周りの狭い空間で有効に利用できるものとなる。
【0011】
また、手摺りは、便器後方に備えられたキャビネット内に収納されていることにより、収納時にはキャビネット内に隠蔽され、見栄えが良いものとなる。
【0012】
また、手摺り先端部は、収納位置では手摺り基部側に折り畳まれ、使用位置で手摺り基部から延出状態となることにより、収納時には折り畳んで短くして、キャビネット内にコンパクトに収納させておくことができ、使用時には、先端側を持って前方側へワンアクションで引き出して、手摺り先端部を前方側へ延出状態として良好に使用することができるものとなる。また、収納時には短くできるため、回転半径も小さくして、取り出し,収納操作が行い易いものとなり、床面に多少の突出物があっても、干渉することがないものとなる。
【0013】
また、手摺り先端部は、手摺り基部に対してスライド可能に構成されていることにより、手摺り先端部をスライドさせて手摺り長さを調整でき、収納時にはコンパクトな状態にして収納しておくことができ、短くできるため、取り出し,収納操作が行い易く、また床面に多少の突起物があっても干渉することがない。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1において、便器1の後方にはキャビネット2が立設され、このキャビネット2内には収納空間Sが形成されており、収納空間Sの前面には開閉可能に扉2aが設けられている。
この扉2aを開けて、収納空間Sから前方側へ引き出し、前方側へ向かって突出状にして使用することのできる手摺り3が、便器1の側方に設けられており、この手摺り3は、手摺り基部4と、その前端の肘掛け部(手摺り先端部)5で構成され、肘掛け部5の下面には、手で握ることのできる取手6が設けられており、また、手摺り基部4の肘掛け部5側の底面には、下方へ突出状にレバー7が設けられている。
【0015】
図2は、キャビネット2の収納空間S内に折り畳んで手摺り3を収納した状態の一部破断斜視構成図であり、図3は、前方側へ引き出した使用状態の斜視構成図である。
キャビネット2の収納空間S内には、支持部材を構成する手摺り取付部10を設けておき、この手摺り取付部10は、下面のベース部10aから立ち上がり壁面に固定された平行な2枚の板材で箱状に構成されており、2枚の板材には上部位置に円弧状のストッパー孔10b,10bが形成されている。
【0016】
また、この手摺り取付部10には、手摺り基部4の後端に設けた回転軸9が回転可能に取り付けられており、回転軸9を中心として手摺り基部4を上下方向に回動させることができる。
また、手摺り基部4の前端には回転蝶番8が設けられており、この回転蝶番8を介して肘掛け部5が回動でき、肘掛け部5は回転蝶番8を介し、図2のように手摺り基部4側へ折り畳んで収納できるように構成されている。
なお、肘掛け部5の上面には、クッション材5aが設けられている。
【0017】
図2の収納状態では、肘掛け部5は折り畳まれた状態で、収納空間S内に垂下状に収納されるものであり、床面と手摺り3の下端間の距離を十分に取ることができるため、床面に突出物があっても干渉することがない。
【0018】
図2の状態から、使用する際には、取手6を持って前方側へ引き出すことにより、手摺り基部4に対し肘掛け部5が、前方側へ略水平状に延出状態となって一直線状をなし、この水平状態で手摺り取付部10に形成されている円弧状のストッパー孔10b,10bの上端の水平部内に、手摺り基部4に設けられている係止ピン4aが嵌り込み、手摺り3は良好に水平状態に保持される。このように取手6を持ってワンアクションで手摺り3の取り出しが可能となり、操作が容易なものとなる。
【0019】
なお、このストッパー孔10bと係止ピン4aとで構成されるストッパー機構は、例えば図4の概略図で示すように、係止ピン4aは連結バー12等でレバー7に連結されており、通常はバネの付勢力でレバー7及び係止ピン4aは、後方側へ付勢されており、図2の状態から図3の状態に手摺り3が上方へ回転された時には、良好に係止ピン4aがストッパー孔10bの上端の水平部内に係入されるように構成され、図3の状態から図2の状態へ回転させる際には、レバー7を使用者が前方側へ引くことにより、係止ピン4aがストッパー孔10bの上端の水平部から抜脱されてロック状態が解除され、その状態で手摺り3を下方側へ回動させてゆくことができる。
【0020】
本例の手摺り3では、肘掛け部5を手摺り基部4側へ折り畳んだ状態で収納させることができるため、回転半径も小さくなり、取り出し,収納操作を極めて行い易いものとなり、また、収納空間S内での収納スペースが小さくてすみ、床面との干渉がなく、使用時には肘掛け部5を前方側に延出させて、最適な位置で使用できるものとなる。
【0021】
次に、図5は第2実施例を示すものであり、図5では、手摺り3を構成する手摺り基部4に対し、肘掛け部(手摺り先端部)5をスライド機構でスライド移動できるように構成したものであり、図6に示すように、手摺り基部4の前端側から前方側へ肘掛け部5をスライドさせて引き出し、延出状態にして良好に使用することができ、また図7に示すように、肘掛け部5を後方側へスライドさせて、キャビネット2内に収納できるように構成したものである。このように長さが調整可能であるため、使用者に合わせて任意の長さで使用できるものとなる。
【0022】
図7のような状態では、回転軸9を介して上方側へ回転させて収納させることもでき、また下方側へ回転させて収納させることもでき、上方側へ収納させた時には、キャビネット内の収納空間Sの下方部位に収納物を入れて、収納空間Sを有効に使用することができるものとなる。
なお、スライド機構はレール,ローラー等でスムーズに前後方向に肘掛け部5が移動できるようなものであれば良い。
なお、壁面11側へ回転軸9を固定するための支持部材は、図2,図3に示したような手摺り取付部10で構成しても良く、別形状の支持部材であっても良い。
【0023】
次に、図8は第2実施例の変更例を示すものであり、図8では、手摺り基部4を折り曲げて手摺り位置を適正に設置したものであり、回転軸9がキャビネット2内の高い位置に配置されていれば、手摺り基部4の前端に肘掛け部5が延出された長いままの状態でも、良好にキャビネット2内に収納させることができるものとなる。なお、肘掛け部5を延ばさずに収納させた時には、キャビネット内の収納空間Sの下方部位にスペースが確保されて、収納空間Sを有効活用できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】キャビネット内に収納可能な手摺りの使用状態の斜視構成図である。
【図2】キャビネット内に設置された手摺り取付部内に手摺りを収納した状態の一部破断斜視構成図である。
【図3】手摺り取付部から略水平状に手摺りを延ばし使用している状態の斜視構成図である。
【図4】手摺りを水平状態で保持するストッパー機構の概略底面構成図である。
【図5】第2実施例のスライド式の手摺りの収納状態及び使用状態の概略を示す側面構成図である。
【図6】手摺り基部から肘掛け部をスライドさせて延出させた状態の側面構成図である。
【図7】肘掛け部をスライドさせて長さを短くさせた状態の側面構成図である。
【図8】第2実施例の変更例を示す側面構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1 便器
2 キャビネット
2a 扉
3 手摺り
4 手摺り基部
4a 係止ピン
5 肘掛け部(手摺り先端部)
5a クッション材
6 取手
7 レバー
8 回転蝶番
9 回転軸
10 手摺り取付部(支持部材)
10b ストッパー孔
11 壁面
S 収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納位置から使用位置に上下方向に回動可能な手摺りであって、該手摺りは壁面または床面に固設された支持部材に回転機構を介して回動可能に連結されてなり、
該手摺りは、前記支持部材に連結されているとともにストッパー機構を介して前記使用位置で略水平状態に保持される手摺り基部と、該手摺り基部に連結された手摺り先端部とで構成され、該手摺り先端部は、前記使用位置で略水平状態に保持された状態で前記手摺り基部に対して延出状態となるように構成されていることを特徴とする手摺り。
【請求項2】
前記手摺りは、便器周りに設置され使用されるものである請求項1に記載の手摺り。
【請求項3】
前記手摺りは、便器後方に備えられたキャビネット内に収納されていることを特徴とする請求項2に記載の手摺り。
【請求項4】
前記手摺り先端部は、前記収納位置では手摺り基部側に折り畳まれ、前記使用位置で手摺り基部から延出状態となることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の手摺り。
【請求項5】
前記手摺り先端部は、前記手摺り基部に対してスライド可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の手摺り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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