説明

手術用資材および覆布

【課題】
リントや毛羽立ちが少なく、且つテカリがなく、軽量で防水性、吸液性を兼ね備えた手術用資材、特に手術用覆布や手術着に用いられる手術用資材および覆布を提供すること。
【解決手段】
スパンボンド不織布とポリオレフィン系フィルムを貼合してなる手術用資材において、一つの面積が0.15mm〜0.50mmである熱融着部の面積の総和がスパンボンド不織布全体の5%〜15%であるスパンボンド不織布を用いる手術用資材および覆布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用資材に関するものであり、さらに詳しくは、手術着や手術用覆布などに適した布帛状の資材(以下、手術用資材という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手術の際に患者を覆う手術用覆布や医者や看護士が着用する手術着として、織布、編物、不織布、あるいはプラスチックフィルム等が用いられてきた。これらの手術着や手術用覆布には、発塵や毛羽立ちが少なく、軽量で防水性、吸液性などの特性が要求されている。特許文献1には、メルトブロー不織布の両面に脂肪族ポリエステル樹脂からなり、特定範囲の初期引張抵抗度と引張強さを有する連続長繊維で構成されるスパンボンド不織布を積層してなる三層構造の積層体シートが柔軟性と透湿性に優れ、医療分野におけるガウン、ドレープ等の手術用資材に好適であることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、ポリオレフィン繊維と吸水性繊維からなる吸水性不織布層と、少なくとも1層のメルトブロー法あるいはスパンボンド法で得られたポリオレフィン不織布層から形成されてなる不織布積層体は、吸湿性に優れ、かつ強度、バクテリアバリア性、耐熱性等に優れ、メディカル用材料として好適であることが記載されている。
【0004】
しかしながら、これらの不織布は通気性や風合いが良く使用感は良好であるが、防水性が低いために手術の際に生じる多量の体液や水分等が手術着や手術用覆布に付着した場合にはそれらが内部まで浸透するという不都合が生じる。すなわち、手術着として用いた場合は、医者等が患者から出た血液等の体液に暴露され、体液中に存在した細菌やウィルスに感染する恐れがあった。また、手術用覆布として使用した場合には、患者が患者自身の体液や手術に用いる薬品に汚染される恐れがあった。
【0005】
また、これらの不織布は、糸くずの発生が問題になる場合がある。すなわち、手術用覆布は手術中に手術作業を行うための窓を現場で作ることがあるが、このような場合には特に糸くずの問題は大きく、手術用覆布から発生する繊維片がほぐれて発塵し、発塵物(リント)が患者の手術切開部位を汚染する恐れがある。このような観点からも、特に短繊維を用いた不織布ではこのような現象が発生し、糸くずなどの異物による手術室の環境汚染や手術切開部位の汚染が問題となっている。
【0006】
上記のような血液等の体液や薬品による汚染を防ぐために、液体類を吸収する布状物と、液体類を透さないフィルム状物とを一体化したシートが用いられてきた。例えば、特許文献3には、エチレン−酢酸ビニル共重合ポリマーからなるフィルムとポリエチレンフィルムを含む多層フィルムと、特定の目付け量のスパンボンド不織布とを上記エチレン−酢酸ビニル共重合ポリマーフィルムが不織布側になるように熱ラミネート法で一体化された液体遮蔽性、吸液性、風合いを兼ね備えた手術用資材が開示されている。さらに、特許文献4には、少なくとも1層以上のポリオレフィン繊維と吸水性繊維からなる吸水性不織布層、ポリオレフィン系フィルム層およびメルトブロー法あるいはスパンボンド法で得られたポリオレフィン不織布層から形成される不織布積層体は、手術用資材として好適な強度、吸湿性、バクテリアバリア性、耐久性、耐熱性等に優れていることが記載されている。これらの手術用資材に用いられているスパンボンド不織布は長繊維よりなるためリントの発生は少ないが、その表面が擦られることによりスパンボンド不織布が毛羽立ち、患者の手術切開部位を汚染するという恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−96156号公報
【特許文献2】特開2003−27360号公報
【特許文献3】特開平9−117500号公報
【特許文献1】特開2003−39612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような問題に鑑みなされたもので、発塵や毛羽立ちテカリが少なく、テカリもなく、軽量で防水性、吸液性を兼ね備えた手術用資材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題に鑑み、スパンボンド不織布は長繊維よりなるため発塵や毛羽立ちが少ないとの予測に基づいて詳細に検討を行った結果、特定の特性を有するスパンボンド不織布は発塵や毛羽立ちが著しく小さいことを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)スパンボンド不織布とポリオレフィン系フィルムを貼合してなる手術用資材において、一つの面積が0.15mm〜0.50mmである熱融着部の面積の総和が不織布全体の5%〜15%であるスパンボンド不織布を用いることを特徴とする手術用資材であり、
(2)前記スパンボンド不織布が、1〜4デニールのポリプロピレン繊維よりなることを特徴とする(1)記載の手術用資材であり、
(3)前記手術用資材の目付け量が、40〜80g/mであることを特徴とする(1)または(2)記載の手術用資材であり、
(4)前記ポリオレフィン系フィルムが、低密度ポリエチレンおよび/または直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の手術用資材であり、
(5)前記(1)〜(4)のいずれかの手術用資材よりなることを特徴とする手術用覆布、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の手術用資材は、特定のスパンボンド不織布とポリオレフィン系フィルムとを貼合しているため擦ってもリントや毛羽立ちが非常に少なく、防水性にも優れる。また、本発明の手術用資材は軽量化、薄膜化が容易であるため、医療機関での医療廃棄物の廃棄コスト低減や保管場所の減容化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ポリオレフィン系フィルムの両面に特定のスパンボンド不織布を貼合した本発明の手術用資材の層構成を示した概念的側面図である。
【図2】ポリオレフィン系フィルムの片面に特定のスパンボンド不織布を貼合した本発明の手術用資材の層構成を示した概念的側面図である。
【図3】本発明に用いられるスパンボンド不織布の熱融着部の一態様を示す概念的平面図である。
【図4】本発明に用いられるスパンボンド不織布の熱融着部の他の態様を示す概念的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の手術用資材は、ポリオレフィン系フィルムの片面もしくは両面に、一つの面積が0.15mm〜0.50mmである熱融着部の面積の総和が不織布全体の5%〜15%であるスパンボンド不織布を貼合することにより得られる。以下本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のポリオレフィン系フィルムに用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレンブロックコポリマー、変性ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数4〜18の少なくとも一種のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸等との共重合体などのポリエチレン系樹脂が挙げられるが、これらの中でも特に低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。更には、密度が0.910g/cm乃至0.930g/cmの低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンは、低温で溶融押出しできるので好ましい。また、ドレープ性(垂れ下がり性)を付与したい場合は、密度が0.880g/cm乃至0.910g/cmの超低密度ポリエチレンやポリオレフィン系エラストマーを配合するのが好ましい。
【0015】
本発明に用いられるスパンボンド不織布を形成する熱可塑性樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のオレフィン系重合体、及びこれらの共重合体を主成分とするポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維は単一成分でも混合成分でも良いが、特にポリオレフィン系フィルムとの熱融着性やコストなどの観点からポリプロピレン繊維が好ましい。
【0016】
スパンボンド不織布は、前記熱可塑性樹脂を押出機で溶融し、紡糸口金の細孔から連続的に糸状に押出し、移動するベルト上で重ねてウェブを作り、高温状態のウェブの繊維同士を、所定形状の凹凸が形成された彫刻ロールで熱圧着し融着させて製造される。高温状態のウェブの繊維同士を熱圧着する際には、彫刻ロールの表面温度は前記熱可塑性樹脂の融点に近い温度に設定されているのが好ましい。このようにして製造されたスパンボンド不織布は、例えば図3または図4に示すような模様の熱融着部が形成され、繊維が連続した長繊維なので強度が大きく、寸法安定性に富み、裁断しても端部が解れ難いといった特徴がある。
【0017】
本発明は、上記スパンボンド不織布の中でも、一つの面積が0.15mm〜0.50mmである熱融着部(以下、所定面積の熱融着部と略記する)の面積の総和が不織布全体の5%〜15%であるスパンボンド不織布が用いられる。さらには、所定面積の熱融着部の面積の総和が6%〜13%であるスパンボンド不織布がより好ましい。所定面積の熱融着部の面積の総和が5%未満の場合は、摩擦により毛羽立ちやリントが発生し、発生したリントが術部を汚染するなどの問題が発生するので好ましくない。一方、所定面積の熱融着部の面積の総和が15%を超えるスパンボンド不織布を用いた場合は、摩擦による毛羽立ちやリントが少ないもののテカリが大きく、手術用覆布として用いた場合、照明の光を手術用資材が反射し、医者や看護士が眩さを感じ目が疲れるため好ましくない。
【0018】
さらには、全熱融着部の面積の総和がスパンボンド不織布全体の5%〜15%であるスパンボンド不織布は摩擦による毛羽立ちやリントの発生が著しく少なく、テカリがないので特に好ましい。本発明に用いられるスパンボンド不織布は、本発明の課題が解決される範囲内において、一つの面積が0.15mm未満の熱融着部や0.50mmを超える熱融着部が存在しても良い。なお、熱融着部の形状は、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、円、楕円などのいずれの形状でも良い。また、熱融着部一つの面積および不織布全体に占める所定面積の熱融着部の面積の総和は、スパンボンド不織布の表面をマイクロスコープで観察することにより求めることができる。
【0019】
本発明に用いられるスパンボンド不織布の繊維の太さは、1〜4デニールが好ましい。スパンボンド不織布の繊維の太さが1デニール未満の場合は、摩擦により繊維が切断されやすく、リントの原因となる恐れがある。一方、4デニールを超えると、繊維の太さが太いため、手術用資材の風合いが悪くなる。
【0020】
本発明に用いられる特定のスパンボンド不織布の目付け量(単位面積当りの重量)は10〜30g/mが好ましい。スパンボンド不織布の目付け量が30g/mを超えると、得られた手術用資材の重量が重くなり、逆にスパンボンド不織布の目付け量が10g/m未満であると、吸液性が充分でない。また、ポリオレフィン系フィルムの目付け量は15g/m〜30g/mが好ましい。ポリオレフィン系フィルムは防水性(耐水圧)を付与するために必要であり、その目付け量が15g/m未満の場合は、防水性が低下する恐れがある。上記のスパンボンド不織布とポリオレフィン系フィルムよりなる本発明の手術用資材の目付け量は、40g/m〜80g/m、さらには50g/m〜70g/mが好ましい。本発明の手術用資材の目付け量が40g/m未満の場合は、吸液性が充分でなく、目付け量が80g/mを超えると手術用資材が重くなり、廃棄コストが高くなる、広い保管場所が必要になるなどの問題が生じる。
【0021】
本発明の手術用資材は血液等の色を目立ち難くするために着色するのが望ましく、ポリオレフィン系樹脂へ任意の着色剤を配合することができる。具体的には、血液等が付着しても目立ちにくい、すなわちグリーン系、ブルー系に着色するのが好ましい。さらに、ポリオレフィン系樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、安定剤、抗菌剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤などを添加することができる。
【0022】
以下に、本発明の手術用資材の製造方法について述べる。
本発明の手術用資材は、ポリオレフィン系樹脂を押出機に供給し、ポリオレフィン系フィルムを成形した後、ホットメルト系接着剤を用いてその片面またはその両面に特定のスパンボンド不織布を貼合する方法、フラットダイを装着した押出機にポリオレフィン系樹脂を供給してフィルム状に溶融成形し、溶融状態にあるフィルム状物の片面またはその両面に特定のスパンボンド不織布を積層し、溶融状態にあるフィルム状物と共にチルロールとゴムロールとで圧着貼合する押出しラミネート法で貼合する方法、ポリオレフィン系樹脂を押出機に供給して成形したポリオレフィン系フィルムと特定のスパンボンド不織布とを熱ラミネート法で貼合する方法などが挙げられる。
【0023】
本発明の手術用資材の製造方法には上記のような方法があるが、中でもフラットダイを装着した押出機にポリオレフィン系樹脂を供給してフィルム状に溶融成形し、溶融状態にあるフィルム状物の片面またはその両面に特定のスパンボンド不織布を積層し、溶融状態にあるフィルム状物と共にチルロールとゴムロールとで圧着貼合する押出しラミネート法が好ましい。この方法により得られる手術用資材は、ポリオレフィン系フィルムと特定のスパンボンド不織布との密着性が良好で、摩擦による毛羽立ちやリントの発生が非常に少ない。
【0024】
ホットメルト接着剤を用いてポリオレフィン系フィルムと特定のスパンボンド不織布とを貼合する場合、ポリオレフィン系フィルムの全面にホットメルト系接着剤を塗工し貼合すると、得られた手術用資材の目付け量が大きくなり、またドレープ性が低下するのでホットメルト系接着剤をスプレーカーテン法、ストライプ法で塗布することが行われている。しかしながら、これらの方法で得られた手術用資材は、ポリオレフィン系フィルムとスパンボンド不織布との間にホットメルト系接着剤が介在しない部分があり、手術用資材を切断すると、ホットメルト系接着剤が介在しない部分はポリオレフィン系フィルムとスパンボンド不織布との間で剥離が生じる恐れがある。
【0025】
一方、ポリオレフィン系フィルムとスパンボンド不織布とを熱ラミネート法で貼合する方法で得られた手術用資材は、ポリエチレン系フィルムとスパンボンド不織布との密着力が小さくなる恐れがある。
【0026】
なお、溶融状態にあるシート状物の片面にのみ特定のスパンボンド不織布を貼合して得られた手術用資材は、手術着として用いる場合はスパンボンド不織布を貼合した面が外側に、手術用覆布として用いる場合はスパンボンド不織布を貼合した面が外側になるようにして用いると、患者から出た血液等の体液や薬品などの液体類を不織布層が吸収するので好ましい。
【0027】
このようにして得られた手術用資材は、所定サイズに切断後、カテーテル留め付け治具、血液・廃液・体液・洗浄水等の受け袋、術野開窓部、その裏面の両面テープ(患者身体と貼合のため)などを設けることにより、手術用覆布とすることができる。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、物性の評価は次の方法で行った。
【0029】
(1)耐水圧(防水性)
耐水圧は、JIS L 1092(2009年版) A法により、試験片の裏面の3ケ所から水が出た時の水位を測定することにより求めた。
【0030】
(2)吸水試験(吸水能)
吸水能は、手術用資材の不織布面に1gの水を滴下し、1gの水が手術用資材に吸収されるまでの時間を測定して評価した。
【0031】
(3)光沢度
光沢度は、JIS K 7105(1981年版)に準じて測定した。すなわち、光沢度測定装置を用い、標準光源からの光を試料表面へ入射角60度で当て、試料表面で反射した光を受光器で測定して求めた。
【0032】
(4)テープ剥離試験
試料表面に粘着テープを貼り、上から手で5回擦った後、テープをゆっくり剥がし、粘着面に残った繊維の状態を観察し、不織布の繊維がほとんど残っていないものを◎、僅かに残っているものを○、少し残っているものを△、全面に残っているものを×とした。
【0033】
(5)磨耗試験(毛羽立ち、磨耗量)
磨耗強さは、JIS L 1096(1999年版)のC法に準じて測定した。すなわち、直径130mmの円形に切り抜いた試料を磨耗試験機にセットし、磨耗輪CS−10(加重2.45N×2個)を回転速度70rpmで50回転させた前後の試料の重量減少量を磨耗量とした。毛羽立ちは不織布の繊維がほとんど毛羽立っていないものを◎、僅かに毛羽立っているものを○、明らかに毛羽立っているものを△、繊維が切断しているものを×とした。
【0034】
[実施例1]
直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm、MFR:6g/10分)90重量%と低密度ポリエチレン(密度:0.919g/cm、MFR:7g/10分)10重量%とからなるポリオレフィン系樹脂100重量部を、フラットダイを備えた押出し機へ供給し、目付け量25g/mでフィルム状に溶融押出しした。次いで、溶融状態にあるフィルム状物の両面に表1に示すスパンボンド不織布A(一つの面積が0.17mmの熱融着部のみよりなり、所定面積の熱融着部(一つの面積が0.15mm〜0.50mmである熱融着部)の面積の総和は不織布全体の8.3%)を積層し、チルロールとゴムロールとで挟んで圧着貼合することにより、目付け量65g/mの本発明の手術用資材を得た。得られた手術用資材の特性を表1に示す。
【0035】
[比較例1]
パルプとポリエチレンテレフタレート(PET)繊維よりなる二層のスパンレース不織布を手術用資材とした。得られた手術用資材の特性を表1に併せて示す。
【0036】
[比較例2]
直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm、MFR:6g/10分)90重量%と低密度ポリエチレン(密度:0.919g/cm、MFR:7g/10分)10重量%とからなるポリオレフィン系樹脂100重量部よりなる目付け量25g/mのポリエチレンフィルムの両面へスプレーカーテン法にてホットメルト接着剤を塗布し、その両面へ表1に示すスパンボンド不織布B(一つの面積が0.50mmの熱融着部のみよりなり、所定面積の熱融着部の面積の総和は不織布全体の22%)を貼合することにより、目付け量70g/mの手術用資材を得た。得られた手術用資材の特性を表1に併せて示す。
【0037】
[比較例3、4]
不織布として表1に示すスパンボンド不織布C(一つの面積が0.53mmの熱融着部のみよりなるため所定面積の熱融着部はなく、全熱融着部の面積の総和は不織布全体の18%)またはD(一つの面積が0.14mmの熱融着部のみよりなるため所定面積の熱融着部はなく、全熱融着部の面積の総和は不織布全体の6.2%)を用いた以外は実施例1と同様にして、目付け量70g/mの手術用資材を得た。得られた手術用資材の特性を表1に併せて示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1より明らかなように、比較例1は短繊維のパルプとPETとのスパンレース不織布のみを用いているため耐水圧が低く、磨耗試験における重量減少が10mg以上あり、発塵しやすいという欠点がある。比較例2で用いたスパンボンド不織布は、所定面積の熱融着部(一つの面積が0.15mm〜0.50mmである熱融着部)の面積の総和が不織布全体の22%もあるため、得られた手術用資材は光沢度が大きくテカリがあり、手術を行う医師や看護士の目が疲れるという欠点がある。比較例3で用いたスパンボンド不織布は、面積が大きい熱融着部のみよりなるため、得られた手術用資材は光沢度が大きくテカリがある。さらに、比較例4は、所定面積の熱融着部(一つの面積が0.15mm〜0.50mmである熱融着部)はなく、一つの熱融着部の面積が小さいため、テープ剥離試験で粘着テープへ付着した繊維が多く、表面を擦ると毛羽立ちが多い。それに対し、実施例1は、所定面積の熱融着部の面積の総和が不織布全体の8.3%であるスパンボンド不織布とポリオレフィン系フィルムとを貼合しているため、得られた手術用資材は耐水圧が500mm以上あり、光沢度が小さくてテカリがなく、磨耗試験における重量減少が5mg以下と発塵が少なく、毛羽立ち、テープ剥離試験におけるテープへ付着した繊維量が共に少なく、手術用資材として好適であった。

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の手術用資材および覆布は、手術用資材に要求される発塵や毛羽立ちが少なく、テカリがなく、軽量で防水性、吸液性、良好な風合いを兼ね備えているため、医療現場における手術を行う際に患者を覆う手術用覆布や医者や看護士が着用する手術用の布帛資材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
10、20:手術用資材
11、21:スパンボンド不織布
12、22:ポリオレフィン系フィルム
31、41:スパンボンド不織布の熱融着部
32、42:スパンボンド不織布の非融着部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド不織布とポリオレフィン系フィルムを貼合してなる手術用資材において、一つの面積が0.15mm〜0.50mmである熱融着部の面積の総和が不織布全体の5%〜15%であるスパンボンド不織布を用いることを特徴とする手術用資材。
【請求項2】
前記スパンボンド不織布が、1〜4デニールのポリプロピレン繊維よりなることを特徴とする請求項1記載の手術用資材。
【請求項3】
前記手術用資材の目付け量が、40〜80g/mであることを特徴とする請求項1または2記載の手術用資材。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系フィルムが、低密度ポリエチレンおよび/または直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の手術用資材。
【請求項5】
請求項1乃至4記載のいずれかの手術用資材よりなることを特徴とする手術用覆布。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223379(P2012−223379A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93798(P2011−93798)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】