説明

抑草機能と環境機能性を冨化する有機資材

【課題】 生活者が食の安全、安心を求める要請に対応する生産者責任の最大のネックとなる除草剤不使用化をコストと実効性を両立して達成する。
【解決手段】 生大豆が含有するトリプレンインヒビターは酵素活性妨害機能があるので粉体化によって当該剤の活性化を進め、併用する米糠の有機酸の発根阻害機能との相乗効果で生育差を活用して抑草効率を達成し、併せてフルボ酸機能資材も加えて積極的環境保全事象も発現する。
生大豆の粉体化は荒く破砕し急速冷凍したものを遠赤外線放射機能のある弱負圧解凍乾燥室で窒素ガス置換し氷点以下の温度帯で構造水分まで解凍気化し乾燥する方法か。或いは解放解凍乾燥室で氷点以下の寒冷な空気による熱ロス現象を誘起する流動機能によって乾燥した後、新機構の粉砕機で粉体にして供用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品の健康機能性を高める目標に向けて、恣意的に選択した複数の成熟した植物体の特性を活かして、抑草機能も備え、爾後圃場の微生物環境を有為に機能させる有機資材の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成熟した大豆は濃縮された蛋白態酵素を基とする窒素源等の豊富な栄養価の外、トリプレンインヒビター、ハマクルチニン、甲状線肥大物質(ゴイトロゲン)など各種の生理活性物質を含み、多才な機能を備えている。
【非特許文献1】 大豆の科学−編集 山内文男、大久保一良(1992)
【0003】
成熟した玄米の表皮である米糠は、動植物の栄養源として珍重される外にバルミチン酸、オレイン酸、リノール酸より成る有機酸にはγオリザノールやスチオロールなどが多く含まれ、更にフェルラ酸、フィヂシ酸・フィチン、並びにイノレトール等も含み、それぞれの特性機能が注目されている。
【非特許文献2】 食品加工總覧−素材編−總論、谷口久次
【0004】
成熟生大豆のトリプレンインヒビターの酵素活性妨害機能を活かして植物の生育差による抑草作用と、米糠の有機酸による抑草作用を相乗的に補完発現させながら、尚爾後の土壌環境の進相機能に早期に切換え得る有機肥料を開発した。
【特許文献1】 抑草機能のある植物性有機肥料−特願2003−354357
【特許文献2】 抑草機能もある複合機能有機資材の製造法−特願2005−104069
【0005】
有為のイオン化傾向資材を組合せ、イオン化促進手段を加えてイオン化を進行させ、すみやかに水和反応に移行させて、非センント系構造物を製造する。
【特許文献3】 環境機能性を冨化する構造物の製造法−特願2005−267614
【0006】
甲殻類のキチン質は地球上で微生物が造り出した物質でセルロースに次ぐ生成量であるという。それが低分子キトサンとなって動植物の生理活性に貢献するメカニズムは、有機栽培によって有為の健康食品を創成する微生物農法の真髄を教唆する自然界の啓示である。
カニ殻を低分子キトサンにする工業処理で解離エネルギーの大きさを知るにつけ、健康土壌中ではそれを無臭で低分子キトサン化すると共に土壌環境機能性を大巾に前進せしめる土壌の浄化機能の偉大さを改めて感銘した。
【非特許文献3】 微生物によるキトサンの生産−島根大学農学部研究報−松田英幸
【0007】
長崎県に産出する特殊腐植物は数百万年前に生成された純腐植態の泥状で存在する。
特性も分子量も大きく異なる異種物質が自然界で一体化して同居する稀有としか表現し得ないもので、古代地球が現代に遺してくれた貴重な資源である。
2年有余月を要する掘出しから利用までの経緯を示す。
【特許文献4】 特殊腐植物質の特性を活かした環境保全型燃焼法−特願2002−353098
【0008】
梅酢液は梅果実と塩等の生化学反応によってつくり出されたエキスであって、人の食べものの消化に至大の関与の関係が知られる外に、クエン酸主体の有機酸機能が各種の活用技術を生み出すことが知られて来た。
【非特許文献4】 健康食・梅−中川紀子(農文協1986)
【特許文献4】 梅酢液並びにカキ殻を高機能性資源に再生する方法−特願2005−43087
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
人は植物由来の栄養源によってしか生存し得ないことから、生活者の食べ物の安全性に関心が高まり、なかんづくその栽培現場における除草対応が注目されて来た。
発明者等は生活者の一員として、食を健康の原点としてとらえ、その目標に近づく特別有機栽培に努力を積み重ねて来たが、ようやく除草剤を用いない微生物農業の城にたどりついた。即ち除草剤を使用しない良好な微生物環境で積極的健康機能性を高める生産技術を組み立てる基礎となる本願に至ったのである。
本願の目的手段を効果的にする生大豆の粉体使用を経済コスト面からも可能とする効率的粉体化手段の開発が急務である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者等は先特願2003−354357並びに特願2005−104069で生大豆と米糠による雑草の発芽極初期の酵素活性妨害の相乗作用による抑制機能のある植物性有機肥料を提案した。
本発明は上記2案それぞれの実施過程の事象に導かれて補完し、相乗的に抑草機能を補完強化すると共に、加えて大豆の蛋白態窒素をベースとする微生物的栄養環境を冨化しながら、更に生大豆、米糠に加えたマリネックスサクド由来のフラボ酸機能を中核とする植物活性化と併せて、金属キレート機能による重金属の溶解に至る積極的環境浄化を目指す複合機能資質の有機資材に到達する。
特許文献−2の技術思想の改良と共に生大豆のもつ特性を効果的ならしめる、生大豆粉体化手段を開発し追加して出願する。
【0011】
生大豆の特性を効果的に発現するには粉体とするのが最善である。しかし含油率の高い植物体なのでそのままでは粉体化に困難が伴う。他の例では凍結乾燥して超微粉体に加工されてオカラの出ない豆腐や豆乳の原料とされているが高価である。亦脱脂大豆粉は低価格であるが、トリプシンインヒビターが破壊されている虞があり目的になじまないので新機軸の粉体化手段を開発した。
【0012】
粉体化手段は、▲1▼まず生大豆を荒く破砕して急速冷凍する。▲2▼次いで遠赤外線放射機能の炉壁を備えた常圧乾溜乾燥室で窒素ガス置換し40℃以下の温度帯で構造水を乾溜気化して乾燥したものを、▲3▼新機構の粉砕機で粉体化し、抑草機能の効率化と経済コスト面とを両立せしめた。
【0013】
生大豆が含有するトリプレンインヒビターは酸素活性妨害機能(煮沸域の加熱では活性を失う)をもつことが知られ、その特性を栽培上の成育差対応利用するのが本願の基本となる。該成分は本来水に溶け易いが、粉体化して活性化を促し圃場表面に速やかに拡散せしめると同時に、米糠等の有機酸との相乗機能を発象させる。
水田の抑草機能の求められるのは比較的短期間なので、爾後速やかにトロ土化等の土壌微生物環境の進相に関与すると共に、肥料的栄養源として独特の蛋白態窒素を供給する外に、アゾドバクターの誘導生成機能等への期待が高く、その冨化に大きく関与する。
トロ土化水田は下層土が明確な還元状(変色)となり、稲の根は太く白くなると共に、表層に光合成微生物の緑藻であるサヤミドリ、車軸藻の繁茂が顕著となる。その事象になると水田から発生する悪性ガス(硫化水素、炭酸ガス)は激減、空気中窒素の置換、光合成活動による環境浄化保全機能の典型に進象する。
【0014】
米糠は多様な有機酸が急速に水に溶けて拡散し、雑草の発芽極初期の発根成長を阻害する。その働きが強烈なので多量或いは連用は時として根の発達阻害や水中小動物の減少となることも観察されるので大豆の補完的役割に徹し、量も注意することが必要となる。
実施例で示すが、梅酢液との出会いでは急速にイオン化が進行する。
【0015】
腐植物質のマリネックスサクドは長崎県に産出する。眞正のマリネックスの表層土でフルボ酸含有比量が多い。このことは比較分析値はないが実施事象でフルボ酸の電位吸着作用の顕著なことが認められたことからの判断があるのでマリネックス熟成の如く、ハウスで2年間日光曝露の処理をしているから、基盤である眞正マリネックスの特性に基いて検証する。
(0007項)のマリネックスは長崎県に産出する純腐植段階で水分60%の泥として存在する。掘出し後2ヵ年に及ぶ天日培養して水分29%(構造水)の熟成土とし、そのままか、6ヶ月に及ぶ処理操作による抽出液(pH2.5程度)として用いるが、フルボ酸を含み1000倍液で硬い鉱石粉も溶かす程物質の溶解力は抜群で、複数物質の融合に果たす特異な性質への期待が高い。
フルボ酸は、自然循環系の有機と無機の接点と言われる森林の腐養土層から溶出され海に注ぐが、自然界の鉄分をフルボ酸鉄として海洋生物の吸収を可能とすることによって、海洋生態系の冨化に貢献することが知られて“森は海の恋人”との願望を挙げられる(畠山氏)程、生産と環境に深く関与するとの認識が深まってきた。
腐植物質はカルボレキル基やフェノール性水酸基を多量にもっているので、金属イオンとキレート結合し、これ等の沈殿を可溶化する働きがある。鉄イオンの環境科学的働きについては、特にフルボ酸の鉄キレート生成の可能性と考えられるが、他の複数の金属元素との融合反応に有為の働き等で積極的な健康的環境を冨化することが期待される。
【0016】
梅酢液は古来食品機能性に優れた梅漬けのエキスで、クエン酸を中核とした有機酸が強く、食べ物の消化に深くかかわるクエン酸サイクルによって健康に貢献する。本願では米糠に有意量の梅酢液を反応させてイオン化を促すことによって圃場の有機質の凝集(団粒化)等に強く影響し、土壌環境で有為の進相に関与する。
【発明の効果】
【0017】
健康に責任を負う食用作物栽培者にとって圃場の雑草対策は基本的要諦である。古くて最も新しい永遠の課題で、安全と生産を両立せしめる技術は地球規模での関心事である。遺伝子組換え農産物に対する拒否反応は、除草剤多用を容易にする安易な除草対策的目的の多いことが、消費者から生命の価値維持の為に行われているべき食料の供給システムとしての欠陥を露呈したと認識されたことに外ならず、本発明の効果と価値と環境ははかり知れない。
【発明を実施する為の最良の形態】
【0018】
本発明製品は比較的特定時期に使用されることが多い。使用する者の立場から見れば実証こそがすべてであるが、生まれたてなので検証がないに等しい。可能なものから協力的検証を急ぎ、生産現場に活用してほしい。
【実施例】
【0019】
生大豆の特性を効率よく発現させる為に新機構の粉体化処理を行う。
▲1▼生大豆を荒く破砕して急速冷凍する。
▲2▼遠赤外線放射機能のある、炉壁を備えた常圧乾溜乾燥室で、窒素ガス置換し、40℃以下の温度で構造水分を気化させ乾燥する。
▲3▼新機構の粉砕機(相対する円板内面に複数の合成正弦曲線仕様の凹条溝を設け吸引負圧で冷却し移送)で細破砕する。
求める生大豆粉体は熱に弱いトリプシンインヒビターの活性を高める40℃以下温度帯で乾溜気化による乾燥を経て新機構の粉砕機々粉砕を可能として、抑草機能の向上と経済的なコスト低減を両立させ得た。
【実施例】
【0020】
以下、資材づくりの実施例を述べる。
A 原料
1−生大豆 2−米糠 3−梅酢液 4−低温破砕モミガラ微粉 5−マリネックスサクド
B 前処理
(1)前項によって生大豆を粉体化する。
(2)米糠に梅酢液(pH2.8以下)を20〜15%加えて、しみこませ、モミガラ微粉を混合する。
C 混和処理
A−(1)生大豆60%、A−(2)米糠25%、A−(4)細粉モミガラ5%、A−(5)マリネックスサクド10%十分混合する。
D ペレット化 機械撒布の必要のみならず、有意の発熱は活性化に有為である。
總括−有機植物素材はそれぞれ固有の成分をもつ外、独自の蛋白態酵素を保持する。例えばモミガラは発芽抑制酸素アブレジン酸を含有休眠しているが低温破砕されると活性化し、法則的もどり分解を先導する事象を呈するが如く、その有機質のもつ特性を把握しつつ複合的相乗作用を目指す。具体的組合せの資材選択についてはコストと実効性を検証する更なる努力が欠かせない。
E 先願では末達であった生大豆を粉体にする手段が、可能となったことは、混合粉体で陸上の畑地にも活用できることとなり、時期的にも通年使用範囲の拡大となる。畑地の抑草効果は耕作ローテーションへの組入れが可能となるから相乗的な利用範囲の拡大となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
生活者に積極的健康指向食品を供給する責任を負う栽培生産者にとって効率的抑草機能を備え、且爾後の土壌微生物相の有為の進相する外に更に積極的環境保全事象に大きく近づく本発明資材は、生産者と生活者の共生を文字通り実現出来る事が可能となり今日的食の安全安心への道が拓かれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟した生大豆を細粉化することにより含有するトリプレンインヒビターを活性化し、生米糠をイオン化処理して加え、更に特殊腐植物質近似物を加えて、それぞれの持つ雑草の発芽極初期の、発芽若しくは発根阻害機能の相乗作用で、植物体の生育差を活用することにより抑草機能を発象させると共に、爾後速かに土壌環境を有為に進相せしめる機能を有する機構を組合せた構造であることを特徴とする抑草機能と環境機能性を冨化する有機資材。
【請求項2】
請求項1記載の生大豆を細粉体化するため生大豆を荒く破砕し急速冷凍したものを、遠赤外線放射機能のある炉壁を備えた常圧乾溜乾燥室で、窒素ガス置換し、40℃以下の温度帯で構造水分を気化して乾燥し、新機構の粉砕機で粉体にする。
粉砕機は、相対する円板内面に複数の合成正弦曲線を基調とする凹条溝を、固定円板には負方向を回転円板には正方向に配して回転し、吸引負圧空気によって温度上昇を防ぎながら素材の流動を推進する機構構造であることを特徴とする請求項1記載の、抑草機能と環境機能性を冨化する有機資材。

【公開番号】特開2007−91700(P2007−91700A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315364(P2005−315364)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500222630)
【Fターム(参考)】