説明

抗アレルギー剤

【課題】IgE抗体産生抑制による抗アレルギー作用を有する、安全な天然由来の乳酸菌を利用した抗アレルギー剤を提供すること。
【解決手段】高いIgE抗体産生抑制作用を有し、抗アレルギー作用をもつロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)に属する乳酸菌、好ましくは受託番号FERM P−21110として寄託されている乳酸菌ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株を有効成分として含有する抗アレルギー剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgE抗体産生を抑制することによる抗アレルギー作用を有する、乳酸菌ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)を含有する抗アレルギー剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、人間の体内に侵入する細菌やウイルスなど、或いは体内で発生する腫瘍などから生体を守るシステムである。一方、食品などの生体に必要な栄養成分は免疫寛容を起こし積極的に生体内に取り込むことができる。しかし、免疫系が必要以上に過敏な応答を行なった結果、アレルギー反応を起こすようになる。アレルギー疾患は作用機序によりI型〜IV型と大きく4タイプに分類されている。季節性鼻炎である花粉症、通年性鼻炎や、気管支喘息などは免疫グロブリンE(IgE)が介在するI型アレルギーといわれている。アトピー性皮膚炎もI型とIV型の複合型と呼ばれている。また、食物アレルギーの発症にはI型、II型、IV型が関与するとされており、わが国でもI型に関連するアレルギー疾患が増加しているのが現状である。
【0003】
I型のアレルギー症状は、花粉などの抗原の侵入に対応して抗原提示細胞がT細胞の分化に偏りを起こさしめ、B細胞によるIgE抗体産生が誘導されることがきっかけになり発症する。その後、抗体が結合したマスト細胞など特定の細胞が再び抗原の侵入を受けると、これらの細胞から顆粒が放出されヒスタミンなどの炎症物質が遊離することによりアレルギー症状が起こると考えられている。従って、アレルギーの予防、治療を目的とした場合、ターゲットとする作用点は初期の抗原提示の段階から最終的な脱顆粒の段階まで幅広く存在し、それぞれの作用点に着眼した抗アレルギー剤が提案されている。抗原提示の抑制をターゲットとしたものにはサンザシの熱水抽出物(特許文献1参照)がある。また、ヘルパーT細胞の分化バランス改善(Th1/Th2バランス改善)を作用点としたものには初乳(特許文献2参照)、乳酸菌KW3110株(特許文献3参照)などを代表とした多数の飲食物が提案されている。さらにIgEクラススイッチを抑制する素材として茶葉成分のストリクチニン(特許文献4参照)が提案されている。これらは、いずれも結果的にIgE抗体産生を抑制することによりアレルギー反応を抑制することを目的としたものである。しかしながら、いずれも直接生体でのIgE抗体産生能の評価にまで至っていないか、評価しているとしても統計的な評価を行っていないので、最終的な目的を達成したのか確認ができていない。乳酸菌KW3110株については、生体でのIgE産生抑制を統計的に評価しており有意な効果を示しているが、通常マウスでは100日以上というかなり長期間の経口投与を前提としており、さらに効果的な素材が切望されている。
【0004】
【特許文献1】特開平09−143090号公報
【特許文献2】特開2006−96752号公報
【特許文献3】特開2005−137357号公報
【特許文献4】特開2005−198664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、IgE抗体産生抑制による抗アレルギー作用を有する、安全な天然由来の乳酸菌(植物性乳酸菌)を有効成分として含有する抗アレルギー剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討した結果、鉄砲漬けから分離したロイコノストック・メセンテロイデスに属する乳酸菌を含有する抗アレルギー剤が、高いIgE抗体産生抑制作用を有し、上記目的を達成するものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、高いIgE抗体産生抑制作用を有し、抗アレルギー作用をもつロイコノストック・メセンテロイデスに属する乳酸菌を有効成分として含有する抗アレルギー剤を提供するものである。
また、本発明は、前記乳酸菌がロイコノストック・メセンテロイデスRIE株(受託番号FERM P−21110)である抗アレルギー剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抗アレルギー剤が含有するロイコノストック・メセンテロイデスに属する乳酸菌は、高いIgE抗体産生抑制作用を有し、この作用によって抗アレルギー作用をもたらす。それゆえ、該乳酸菌を含有する製剤を摂取することにより、アレルギー疾患の予防、治療が達成できる。該乳酸菌は、食経験のある天然食品素材から分離したものであるので安全性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
前記乳酸菌ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株は、独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに寄託されており、その受託番号はFERM P−21110である。
【0009】
乳酸菌ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株の菌学的性質を以下に示す。
MRS液体培地(DIFCO社)を用いて、30℃、18時間培養したときの菌の形態(1)菌の形態 球菌
(2)グラム染色 陽性
(3)運動性 なし
(4)胞子 なし
(5)カタラーゼ なし
(6)通性嫌気性
(7)ブドウ糖の代謝 50%以上乳酸に転換する
(8)生育温度範囲 15〜45℃で生育を認める
(9)乳酸発酵 ヘテロ型
(10)乳酸の旋光性 D
(11)炭水化物の発酵性 グリセロールは陰性、D−アラビノースは陰性、L−アラビノースは陽性、リボースは陽性、D−キシロースは陽性、ガラクトースは陽性、グルコースは陽性、フルクトースは陽性、マンノースは陽性、ラムノースは陰性、マンニトールは陽性、ソルビトールは陰性、αメチルDグルコシドは陽性、アミグダリンは陽性、エスクリンは陽性、サリシンは陽性、セロビオースは陽性、マルトースは陽性、ラクトースは陽性、メリビオースは陽性、シュクロースは陽性、トレハロースは陽性、イヌリンは陰性、メレジトースは陰性、ラフィノースは陽性、スターチは陰性、グルコン酸は陽性。
【0010】
乳酸菌ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株は、食経験が豊富な素材(鉄砲漬け)から分離したものであるため、安全に抗アレルギー剤に利用することができる。
【0011】
乳酸菌ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株は、そのままあるいは必要に応じて薬学的に許容される種々の担体、賦形剤、その他の添加剤、その他の成分を配合して製剤化することによって、抗アレルギー剤とすることができる。また、該アレルギー剤は、乳酸菌ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株を用いて発酵させた種々の動植物性物質をベースとしてもよい。
【0012】
本発明の抗アレルギー剤は、高いIgE抗体産生抑制作用を有するロイコノストック・メセンテロイデスに属する乳酸菌、特に好ましくは上記のロイコノストック・メセンテロイデスRIE株を有効成分として含有するものである。
【0013】
IgE抗体産生抑制は、例えば抗原提示細胞のアレルゲンの認識能を低下させたり、Th2産生側に偏っている免疫担当細胞であるヘルパーT細胞の分化のバランス(Th1/Th2バランス)を改善することや、B細胞上のレセプターに働きかけT細胞からB細胞への情報伝達を阻害することなどにより達成できるが、本発明の抗アレルギー剤で用いられる上記の高いIgE抗体産生抑制作用を有するロイコノストック・メセンテロイデスに属する乳酸菌においては、その作用メカニズムは特に限定されず、結果的にIgE抗体産生を抑制し、該IgE抗体産生抑制による抗アレルギー作用を有するものであればよい。 ここで、「高いIgE抗体産生抑制作用を有する」とは、好ましくは、抗アレルギー剤を摂取しない群と比較して、統計的に有意水準5%でIgE抗体産生が抑制される状態をいう。
【0014】
乳酸菌のIgE抗体産生抑制作用の評価は、以下の方法により評価することが好ましい。
乳酸菌をMRS培地等で培養し、この培養した乳酸菌を0.1〜20質量%含む飼料をOVA(卵白アルブミン)で感作させて作成したアレルギーモデル動物に一定期間摂取させ、乳酸菌を含まない飼料を摂取させたアレルギーモデル動物(乳酸菌無添加群)と比較してIgE抗体産生の抑制効果を評価する。アレルギー発症時には、血中IgE含有量が通常より上昇することが知られている。
【0015】
本発明の抗アレルギー剤中の乳酸菌含有量は、IgE抗体産生量の上昇を抑制しうる量であればいかなる量であってもよく、使用形態、抗アレルギー剤の剤形や投与又は摂取する者の症状や年齢性別などによって適宜変化させることができる。本発明の抗アレルギー剤を経口投与又は摂取させる場合には、1人1日当たりの投与量又は摂取量が1mg〜20gとなるように含有させることが好ましい。
【実施例】
【0016】
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0017】
実施例1及び比較例1〜4
(使用した乳酸菌)
鉄砲漬け、ゴーヤ漬け、キムチなどの漬物やイーストなど、日本人の食経験が豊富な植物性素材から単離された植物性乳酸菌の中から、桿菌又は球菌であること、同様の性状をもたらすものが複数菌株見つかること、通常の培地で増殖性が高いことなどを基準に、表1に示す代表的な5菌株を選抜した。表1に示すRIEは、本発明のロイコノストック・メセンテロイデスRIE株である。
【0018】
【表1】

【0019】
(乳酸菌試料の調製)
10μg/mlシクロヘキシミドを含むMRS培地を用いて37℃で48時間培養した表1に示した各乳酸菌株を、遠心分離によって集菌し、滅菌水で3回洗浄した後、滅菌水に懸濁させ、121℃で30分間オートクレーブ処理した。これらを凍結乾燥して乳酸菌試料をそれぞれ得た。
【0020】
試験例1
(乳酸菌群のアレルギーモデルマウスでのIgE抗体産生抑制作用の評価)
1.飼料の調製
実施例1及び比較例1〜4で調製した乳酸菌試料を下記に示す基礎飼料〔AIN−93(米国国立栄養研究所によるマウス・ラットを用いた栄養研究のための標準精製飼料)をベースとした飼料〕に5質量%になるように混合し、乳酸菌入り飼料をそれぞれ調製した。対照群として乳酸菌無添加の基礎飼料も調製した。基礎飼料の原料は、全てオリエンタル酵母工業株式会社製のものを使用した。飼料は、乳酸菌試料の混合後、加水し筒状に成形することで得た。
2.動物実験スケジュール
5週齢のBALB/cマウスの体重を測定し、体重を指標として層別連続無作為化法を用いて、各群6匹ずつの群分けを行なった。群分け後、上記1で調製した基礎飼料及び乳酸菌入り飼料の摂取を開始した。なお、体重測定に先立ち順化処理(1週間)を行なったが、この間はいずれのマウスにも基礎飼料を自由摂取させた。
全てのマウスに対して、飼料摂取開始後14日目及び28日目に、OVA−alum(OVA50μg、水酸化アルミニウム1mg/匹)を腹腔内投与し、アレルギー状態を誘発させた。飼料摂取開始後14日目を感作0日目とした。
感作後0日後、22日後、28日後及び35日後に眼窩静脈叢より100μlの採血を行なった。採血後、12,000rpm、5〜10分間遠心分離を行い、血清を分取した。
3.抗体定量
ELISA法により、回収した血清中のOVA特異的IgE抗体量及び総IgE抗体量を定量した。
4.実験結果
感作後22日目のOVA特異的IgE抗体産生量を図1に示す。図1の縦軸のIgE抗体産生量とは、自作した標準抗体に対する相対的な抗体産生量を示したものである。図2に感作後22日目の総IgE抗体産生量を示す。図2の縦軸のunitとは、1.0ng/ml=1unitとして抗体量を換算した単位である。ダネット法により統計解析を行った結果、OVA特異的IgE抗体は、実施例1で調製した乳酸菌RIE入り飼料及び比較例1で調製した乳酸菌AYB入り飼料を摂食した群で有意に産生抑制されている(有意水準5%)ことが明らかになった。また、総IgE抗体は、実施例1で調製した乳酸菌RIE入り飼料を摂食した群で有意に産生抑制されている(有意水準5%)ことが明らかになった。このことから、ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株を含有する抗アレルギー剤が、高いIgE抗体産生抑制作用を有することが証明された。
【0021】
(基本飼料の配合)
カゼイン 20.0質量%
コーンスターチ 50.5質量%
シュークロース 10.0質量%
ラード 10.0質量%
セルロースパウダー 5.0質量%
AIN−93ミネラル混合 3.5質量%
AIN−93ビタミン混合 1.0質量%
【0022】
試験例2
(乳酸菌群摂食によるアレルギー性鼻炎モデルモルモットの鼻汁量抑制作用の評価)
1.動物実験スケジュール
4週齢の雄モルモット20匹の体重を測定し、無作為抽出法により各群10匹の平均体重及び分散がほぼ等しくなるように群分けを行なった。群分け後、製造後5ヵ月以内の固形飼料LRC4(オリエンタル酵母工業株式会社製)を給餌器に入れ、自由に摂取させた。乳酸菌投与群には、実施例1で調製した乳酸菌試料を群分け翌日から1日2回計28日連続(1000mg/kg/日)で経口投与した。
また、全モルモットの両側鼻前庭に、10%TDI溶液に浸した細軸綿棒を10秒間接触させて塗布し、この操作を1日1回、群分け翌日から5日間繰り返し実施して感作を行なった。それ以降は感作を行なわず飼育を続け、最終感作の4週間後に鼻汁の誘発を行った。鼻汁の誘発は、5%TDI溶液に浸した細軸綿棒を両鼻前庭に10秒間接触させ塗布することにより行なった。
2.鼻汁量測定
鼻汁誘発開始から15分間の鼻汁を脱脂綿に吸収させ、密栓マイクロチューブにいれてその重量を測定した。
3.実験結果
図3に示すように、ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株投与群は、対照群と比較してアレルギー性鼻炎発症に伴う鼻汁の量が有意(有意水準1%)に低下していることが確認され、ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株を含有する抗アレルギー剤は、経口投与によりアレルギー症状を緩和する効果があること、すなわち、抗アレルギー作用を示すことが確認された。
【0023】
試験例3
(乳酸菌摂取によるヒトでの花粉症症状の改善効果の評価)
1.被験剤の調製
実施例1で調製した乳酸菌試料を用い、表2に示す組成及び形状の被験剤1(低用量)、被験剤2(高用量)及びプラセボをそれぞれ調製した。
【0024】
【表2】

【0025】
2.試験方法
スギIgEクラスが2(血中IgE濃度0.70〜3.49UA/ml)又は3(血中IgE濃度3.50〜17.49UA/ml)の患者44名を被験者とした。これら被験者について、医師により処方された薬剤の他に、無作為に上記の被験剤1(低用量)、被験剤2(高用量)又はプラセボを摂取させた。被験剤1(低用量)、被験剤2(高用量)又はプラセボを摂取した被験者の人数及びスギIgEクラスは下記の通りであった。但し、被験者にはどの被験剤を摂取しているかは不明な状態で摂取させた。
被験剤1(低用量)を摂取した患者:計12名(クラス2:6名、クラス3:6名)
被験剤2(高用量)を摂取した患者:計14名(クラス2:7名、クラス3:7名)
プラセボを摂取した患者 :計18名(クラス2:8名、クラス3:10名) 被験剤の摂取期間は、スギ花粉飛散開始日より12週間(84日間)とした。
3.評価方法
症状重症度スコア(symptom score:以下SSという)及び使用薬剤スコア(medication score:以下MSという)により評価した。
SSは、各被験者に、くしゃみ発作・鼻汁・鼻閉・日常生活の支障度について、表3に示す基準により評価させた。各群について、1週間毎に評価点の平均値を算出してSSとした。
また、MSは、各被験者が被験剤の摂取期間中に服用した薬剤(被験剤を除く)について、「2005年鼻アレルギー診察ガイドライン」に従い、表4に示す通り各薬剤に点数を与えた。各群について、1週間毎に服用された薬剤の点数の平均値を算出してMSとした。
上記のSS及びMSを合算した値をSMS(symptom medication
score)とし、1週目のSMSの値を基準として、被験剤摂取期間中のSMS変動量を算出し、被験剤摂取による花粉症症状の改善効果を評価した。
【0026】
【表3】

【0027】
【表4】

【0028】
4.試験結果
各被験剤摂取期間中のSMS変動量の推移を図4に示す。図4中のグラフAは、被験地におけるスギ花粉飛散量の推移を示すグラフであり、右側の縦軸の目盛は、花粉飛散量を示す。図4から明らかなように、被験剤2(高用量)摂取群は、被験剤の摂取期間の全期間内において、プラセボ摂取群と比較してSMSの値が有意に低かった。また、被験剤1(低用量)摂取群は、スギ花粉飛散ピーク(スギ花粉飛散開始日より5週目)前後の2週間を除き、プラセボ摂取群と比較してSMSの値が有意に低いか、少なくとも低下傾向を示した。このことから、ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株を含有する抗アレルギー剤は、花粉症症状の改善効果があることが確認された。さらには、本発明の抗アレルギー剤には、花粉症のみならずアトピー性皮膚炎、通年性アレルギー性鼻炎、気管支喘息等の免疫疾患における症状改善効果が期待される。
【0029】
試験例4
(乳酸菌試料の安定性試験)
試験例3で使用した被験剤1(低用量)、被験剤2(高用量)及びプラセボについて、80℃で8週間保存した場合及び45℃,湿度75%で8週間保存した場合の保存安定性を、以下の試験方法により、保存後の試料のTh1細胞のマーカーとなるIFN−γの産生量及びTh2細胞のマーカーであるIL−4の産生量を測定して評価した。測定結果を図5及び図6に示す。
【0030】
試験方法
オボアルブミン(OVA)特異的T細胞レセプター発現マウス(DO11.10マウス)から脾臓を採取し、磨砕してセルストレイナーを通し脾臓細胞浮遊液を得た後、塩化アンモニウム溶液で赤血球を溶解させた。この脾臓細胞を、ウシ胎児血清:FCS(Fetal Calf Serum)を5%添加した日本水産製RPMI培地10mlで2回洗浄し、最終的に5%FCS入りRPMI培地1mlに懸濁した。懸濁液中の細胞数を計測し、2.5×106 cells/mlになるように、5%FCS入りRPMI培地で希釈し、各ウエル100μlずつ96穴プレートにまいた。
5%FCS入りRPMI培地で試料を40μg/mlになるように調製し、その内50μlを上記96穴プレートに加え、さらにOVAを2mg/ml含有するRPMI培地を50μlずつ加え、CO2 インキュベーターで7日間培養した。
対照区として5%FCS入りRPMI培地50μlとOVAを2mg/ml含有するRPMI培地を50μlずつ対照ウエルに加え、同様に処理した。
培養上清を回収し、ELISA法によりIFN−γ抗体量を定量し、IFN−γの産生量を調べ、対照区の値と比較した。また、IL−4抗体量を定量し、IL−4の産生量を調べ、対照区の値と比較した。
【0031】
図5及び図6から明らかなように、保存後も、被験剤1(低用量)及び被験剤2(高用量)は、何れも、IFN−γの産生量が高く、一方IL−4の産生量は低かった。このことから、保存後も、被験剤1(低用量)及び被験剤2(高用量)は、何れも、優れたTh1/Th2バランス改善活性を有すること、すなわち保存安定性を有することが確認された。
【0032】
次に、本発明の抗アレルギー剤の実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0033】
実施例2(錠剤)
実施例1で調製した乳酸菌試料 5 g
トウモロコシデンプン 10 g
乳糖 40 g
カルボキシメチルセルロースカルシウム 8 g
微結晶セルロース 27 g
ポリビニルピロリドン 7 g
ステアリン酸マグネシウム 3 g
合計 100 g
乳酸菌試料に微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、乳糖、カルボキシメチルセルロースカルシウムを混合し、次いでポリビニルピロリドンの水溶液を結合剤として加えて常法により顆粒化する。これに滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを加えて混合した後、1錠100mgの錠剤に打錠する。
【0034】
実施例3(硬カプセル剤)
実施例1で調製した乳酸菌試料 10 g
微結晶セルロース 55 g
トウモロコシデンプン 25 g
乳糖 30 g
ポリビニルピロリドン 4 g
ステアリン酸マグネシウム 1 g
合計 125 g
上記成分を常法により顆粒化した後、ゼラチン硬カプセルに充填する。
【0035】
実施例4(散剤)
実施例1で調製した乳酸菌試料 50 g
微結晶セルロース 600 g
トウモロコシデンプン 300 g
ポリビニルピロリドン 50 g
合計 1000 g
上記成分を混合し、常法により散剤とする。
【0036】
実施例5(顆粒剤)
実施例1で調製した乳酸菌試料 10 g
乳糖 130 g
トウモロコシデンプン 87 g
ポリビニルピロリドン 8 g
L−メントール 15 g
軽質無水ケイ酸 5 g
合計 255 g
上記の処方で、乳酸菌試料、乳糖、トウモロコシデンプン及びポリビニルピロリドン水溶液を混合し、造粒機にて攪拌下加熱造粒する。冷却後、粒度500μm以下に篩分けし、L−メントールを加えた後、無水ケイ酸を加え、混合し分包(1. 0g)して顆粒剤とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】試験例1における感作後22日目の血清中のOVA特異的IgE抗体産生量を示す図である。
【図2】試験例1における感作後22日目の血清中の総IgE抗体産生量を示す図である。
【図3】試験例2における28日間RIE株を経口投与したアレルギー性鼻炎を誘発したモルモットの鼻汁量を示す図である。
【図4】試験例3における各被験剤摂取期間中のSMS変動量の推移を示す図である。
【図5】試験例4における保存後の各被験剤のIFN−γ(Th1細胞マーカーサイトカイン)産生量を示した図である。
【図6】試験例4における保存後の各被験剤のIL−4(Th2細胞マーカーサイトカイン)産生量を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高いIgE抗体産生抑制作用を有し、抗アレルギー作用をもつロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)に属する乳酸菌を有効成分として含有する抗アレルギー剤。
【請求項2】
上記乳酸菌が、ロイコノストック・メセンテロイデスRIE株(受託番号FERM P−21110)である請求項1に記載の抗アレルギー剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−231094(P2008−231094A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13409(P2008−13409)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000103840)オリエンタル酵母工業株式会社 (60)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】