抗酸化強度の測定方法及びその装置
【課題】一般人が取り扱っても安全性に優れた抗酸化強度の測定を実現する。
【解決手段】
所定量のオゾン水をセル20に注水し、試料を添加する前の酸化還元電位E1を計測する(S3)。次に野菜や果実などの任意の試料から抽出した抽出液の添加方式を選択した後、抽出液を添加し、添加後の酸化還元電位E2を計測する。そして、S9において、試料添加前後の酸化還元電位の差(△ORP)と試料添加量などから抗酸化強度(AO)を算出してモニタに表示する。
【解決手段】
所定量のオゾン水をセル20に注水し、試料を添加する前の酸化還元電位E1を計測する(S3)。次に野菜や果実などの任意の試料から抽出した抽出液の添加方式を選択した後、抽出液を添加し、添加後の酸化還元電位E2を計測する。そして、S9において、試料添加前後の酸化還元電位の差(△ORP)と試料添加量などから抗酸化強度(AO)を算出してモニタに表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗酸化強度の測定方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素に関する最近の研究により次のことが明らかになってきている。すなわち、酸化ストレスは人体に悪影響を及ぼし、老化や疾病の要因になると言われている。このことから、生活習慣病の予防、老化抑制として、活性酸素を捕捉する抗酸化性物質を含む食品が注目されている。抗酸化性物質としてアリシン、オレイン酸、カテキン(Catechin)、β-カロテン、アスコルビン酸(AsA)、ビタミンEなどが知られている。食品を主体に見ると、例えばタマネギはアリシンを含み、サツマイモ、黒豆、茄子はアントシアニンを含み、大豆はオレイン酸を含み、リンゴや緑茶はカテキンを含み、大根はスルフォラファンを含み、大根の葉はビタミンEを含み、サツマイモやクレソンなどはβ-カロテンを含んでいる。
【0003】
食品中の抗酸化性物質の測定は、アスコルビン酸(AsA)などを個別に測定する方法、電子スピン共鳴を使った測定方法、DPPHラジカル消去活性法、フォーリンシオカルト法、β-カロテン退色法などが知られているが、いずれの方法も専門家及び高額な分析機器を必要とし且つ測定に時間と費用が必要である。
【0004】
食品の抗酸化活性を測定することを目的として、例えば特許文献1は、活性酸素(O2−)を電気化学的に生成し、生成した活性酸素を不均一化反応によってH2O2を生成させるときに抗酸化性物質が存在すると、この抗酸化性物質によって活性酸素の一部が捕捉され、この結果、H2O2の生成量が減少する、という現象を使って、H2O2の量をH2O2測定用電極で測定することで抗酸化性物質の有無と抗酸化活性を測定することを提案している。
【0005】
また、特許文献2は、例えば一定量のニンニク抽出液にルミノール及び過酸化水素を添加した試料中に設置した一対の電極間に電位差を与えて電極化学発光(ECL)を発生させ、この発光の強度を測定することでニンニクの抗酸化力を評価することを提案している。
【0006】
【特許文献1】特開2007−170912号公報
【特許文献2】特開2007−279008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の抗酸化活性つまり抗酸化強度の測定方法は、分析センターのように、各種の薬品を所持してこれを管理できる施設内で専門家が実施することを前提としており、手軽に抗酸化強度がどの程度なのかを知りたいという要請に対応することはできない。
【0008】
例えば、収穫した野菜がどの程度の抗酸化強度を備えているのか出荷する前に知ることで、仮に他の産地の同じ野菜よりも高い抗酸化強度を備えていることが分かれば、これを付加価値として販売増加に結び付けることができる。また、自分が育てた農産物の抗酸化強度を手軽に知ることができれば土壌改良や育成方法の工夫に役立てることができる。
【0009】
本発明の目的は、一般人が取り扱っても安全性に優れ且つ手軽に抗酸化強度を知ることのできる測定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、酸化性物質に還元性物質である抗酸化性物質を加えると酸化還元反応によって酸化還元電位が低下する現象に着目して本願発明を案出するに至ったものである。酸化還元電位は、次のネルンストの式から求めることができるが、酸化還元反応前と、反応後の酸化還元電位とを測定して、その電位差の大小を知ることで、酸化還元反応に伴う酸化物質の減少量つまり抗酸化強度を把握することができる。
【0011】
ネルンストの式:E=E0+(RT/nF)×([Ao]/[Ar])
【0012】
ここに、
E:酸化還元電位(実測値)(ボルト(V));
E0:標準酸化還元電位([Ao]=[Ar]の場合の基準電極との電位差)(ボルト(V));
R:気体定数(8.31J・mol−1・K−1);
T:水溶液の絶対温度(25℃の場合には298K);
F:ファラデー定数(9.65×104C・mol−1);
n:酸化還元反応にて授受される電子の数;
[Ao]:酸化性物質の活量;
[Ar]:還元性物質の活量。
【0013】
ところで、JP特開2006−346203号公報に見られるように、電気分解によって所定の濃度のオゾン水を生成するポータブルな装置が開発されている。オゾンは活性酸素の一種で、標準酸化還元電位が高く、フッ素に次ぐ強力な酸化作用を発揮して還元物質との反応によって酸化還元電位が大きく低下するという特性を有している。勿論、オゾン水は時間の経過によってオゾンが消失してしまうため安全性に関する管理は比較的容易である。このことから、本願発明者らはオゾン水の強い酸化作用に着目した。
【0014】
食品中に抗酸化物質が含まれている場合、これを試料としてオゾン水に添加したときには酸化還元電位が低下することになる。しかし、この酸化還元電位の低下量つまり試料を入れないときのオゾン水の酸化還元電位と、試料を入れた後の酸化還元電位との間の電位差を検出したとしても、この電位差がどの程度の抗酸化強度に相当するのかを直感的に認識することができない。
【0015】
ところで、アスコルビン酸(AsA)やカテキン(Catechin)などは抗酸化物質として一般人に良く知られている。この所定の抗酸化物質を指標つまり物差しにした抗酸化強度を提供すれば一般人にとって馴染み易く且つ分かり易い相対評価になると考えられる。
【0016】
上記の技術的課題は、本発明の第1の観点によれば、
酸化還元電極を備えたセルを用意し、
該セル内に所定の濃度及び水量のオゾン水を入れるオゾン水供給工程と、
前記セル内のオゾン水に試料を添加する試料添加工程と、
前記オゾン水に試料を入れないときの酸化還元電位と該オゾン水に試料を添加した後の酸化還元電位との間の電位差を求める電位差検出工程と、
前記電位差検出工程により求めた電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算工程と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定方法を提供することにより達成される。
【0017】
上記の技術的課題は、本発明の第2の観点によれば、
酸化還元電極を備えたセルを用意し、
該セル内に所定の濃度及び水量のオゾン水を入れるオゾン水供給工程と、
該セル内のオゾン水の第1酸化還元電位を求めるオゾン水電位計測工程と、
前記セル内のオゾン水に試料を添加する試料添加工程と、
前記セル内に試料を添加した後の第2酸化還元電位を求める試料電位計測工程と、
前記第1酸化還元電位と前記第2酸化還元電位との間の電位差を求める電位差検出工程と、
前記電位差検出工程により求めた電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算工程と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定方法を提供することにより達成される。
【0018】
上記の技術的課題は、本発明の第3の観点によれば、
酸化還元電極と、
該酸化還元電極が挿入可能なセルと、
所定の濃度のオゾン水を生成するオゾン水生成機と、
前記オゾン水生成機で生成したオゾン水を入れたセルに試料を添加した後の酸化還元電位を計測して、前記オゾン水生成機で生成したオゾン水に試料を入れないときの酸化還元電位との間の電位差を検出する電位差検出手段と、
該電位差検出手段により求めた前記電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算手段と、
該演算手段により求めた抗酸化強度換算値を出力する出力手段と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定装置を提供することにより達成される。
【0019】
本発明によれば、例えば指標としてアスコルビン酸(AsA)を設定したときには、試料の抗酸化強度がアスコルビン酸(AsA)に換算した抗酸化強度換算値で出力される。このことから、例えば収穫した白菜がどの程度の抗酸化強度を備えているのかをイメージし易くなり、農家などの生産者や仲介業者又は消費者にとって都合がよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】オゾン水にアスコルビン酸を添加したときのアスコルビン酸添加量と酸化還元電位(ORP)との関係を示す図である。
【図2】オゾン水にアスコルビン酸を添加したときの酸化還元電位(ORP)の経時的な変化を示す図である。
【図3】非抗酸化性物質であるクエン酸をオゾン水に添加したときの酸化還元電位(ORP)の経時的な変化を示す図である。
【図4】非抗酸化性物質である澱粉をオゾン水に添加したときの酸化還元電位(ORP)の経時的な変化を示す図である。
【図5】抗酸化性物質を多量に含む食品の典型例である緑茶をオゾン水に添加したときの酸化還元電位(ORP)の経時的な変化を示す図である。
【図6】オゾン水にアスコルビン酸を添加した場合の添加量とORPとの関係を示す図である。
【図7】6.3ppmのオゾンを含むオゾン水20mLにアスコルビン酸を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図8】6.3ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにアスコルビン酸を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図9】6.3ppmのオゾンを含むオゾン水40mLにアスコルビン酸を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図10】6.3ppmのオゾンを含むオゾン水50mLにアスコルビン酸を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図11】4.9ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにTrolox(ビタミンEの代謝物)を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図12】5.1ppmのオゾンを含むオゾン水20mLにCatechinを添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図13】5.1ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにCatechinを添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図14】5.1ppmのオゾンを含むオゾン水40mLにCatechinを添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図15】5.1ppmのオゾンを含むオゾン水50mLにCatechinを添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図16】オゾン水生成機でオゾン水を生成する場合、水温と生成濃度との関係を示す図である。
【図17】実施例の抗酸化性物質総量測定装置の概略図である。
【図18】図17の抗酸化性物質総量測定装置に含まれる電位差計のブロック図である。
【図19】実施例の抗酸化性物質総量測定方法の手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【図20】46品目の野菜、果実などを対象に、本法とDPPH法で測定した値を比較した図である。
【図21】品種、産地などの異なるリンゴを対象に、本法とOPPH法で測定した値を比較した図である。
【図22】青ネギ、チンゲンサイの測定部位を示した図である。
【図23】青ネギ、チンゲンサイの測定部位別のAO値の分布を示した図である。
【図24】リンゴの品種、産地別AO値の分布を示した図である。
【図25】リンゴの皮と実の部位別AO値の分布を示した図である。
【図26】29名の各血清に含まれる抗酸化性物質を本発明に従って計測した総量と、高速液体クロマトグラフィーで計測したα-カロテンの実測値との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0021】
本願発明者らは、前述したようにオゾン水に着目し、オゾン水にアスコルビン酸(AsA)を添加して添加量と酸化還元電位(ORP)の関係を調べた。その結果を表1及び図1に示す。ここに、オゾン水のオゾン濃度は6.86ppmであり、このオゾン水の酸化還元電位は1055mVであった。また、1000ppmのアスコルビン酸の添加量は100μL、200μL、250μL、500μL、1000μLであった。
【0022】
【表1】
【0023】
アスコルビン酸(AsA)は食品中に含まれる代表的な抗酸化性物質である。このことから上記の実験結果つまりアスコルビン酸を添加すると酸化還元電位が大幅に低下するのは想定通りであった。また、アスコルビン酸(AsA)を添加したときの経時的な酸化還元電位の変化を実験により求めたところ、表2及び図2の結果を得た。なお、実験に使用したアスコルビン酸(AsA)の添加量は80mgであった。
【0024】
【表2】
【0025】
上記表2によれば、抗酸化性物質であるアスコルビン酸(AsA)をオゾン水に添加すると速やかに酸化還元反応が進んで酸化還元電位(ORP)が急激に低下し、その後、安定した電位を示すことが分かる。他の例について以下に説明するが、各実験に使用したオゾン水のオゾン濃度は約7ppmであった。
【0026】
果実などに多く含まれる有機酸の一種であるクエン酸に関し、クエン酸をオゾン水に添加したときの経時的な酸化還元電位の変化を実験により求めてみたところ、表3及び図3の結果を得た。なお、実験に使用したクエン酸の添加量は80mgであった。
【0027】
【表3】
【0028】
クエン酸が抗酸化性物質で無いことは既知の事実であることから、オゾン水にクエン酸を添加したとしても酸化還元電位が殆ど変化しなかった上記の実験結果は想定通りということができる。なお、経時的に酸化還元電位(ORP)が僅かに低下する傾向が見られるが、これは、クエン酸の分解にオゾンの一部が消費されたためである、と推察される。
【0029】
更なる他の例として、穀類などに多く含まれる澱粉を添加したときの経時的な酸化還元電位の変化を実験により求めてみたところ、表4及び図4の結果を得た。なお、実験に使用した澱粉の添加量は20mgであった。
【0030】
【表4】
【0031】
澱粉は還元物質(抗酸化性物質)では無いことから、オゾン水に澱粉を添加したとしても、上記クエン酸の場合と同様に、酸化還元電位の急激な変化は見られなかった。なお、6分を経過した後に、酸化還元電位が低下する傾向にあるが、この現象は、上記クエン酸と同様に、澱粉の分解にオゾンの一部が消費されたためと推察される。
【0032】
次に、カテキン(Catechin)やアスコルビン酸などの還元物質を多く含む緑茶250mgをオゾン水に添加したときには、表5及び図5に示すようにORPは1055mVから281mVに急激に低下した後にほぼ安定した電位となった。すなわち、強い酸化作用を有するオゾン水の中に、カテキン(Catechin)やアスコルビン酸(AsA)のような抗酸化性物質を多く含む緑茶を添加すると、速やかに酸化還元反応が進み酸化還元電位(ORP)が急激に低下することが分かる。
【0033】
【表5】
【0034】
上記の実験から、オゾン水は強い酸化作用を有することは前述した通りであるが、このオゾン水の中に還元物質である抗酸化性物質を添加すると、瞬時に急激な酸化還元電位の低下を招くという特徴を確認することができた。また、この特性から、どの程度電位が低下するかによって、添加した抗酸化性物質の強度が確認できた。
【0035】
次にアスコルビン酸(AsA)の添加量と酸化還元電位との関係について検討を加えた。先ず、一定量のオゾン水にアスコルビン酸(AsA)を添加した場合の添加量と酸化還元電位(ORP)との関係は、図6に示すように、第1、第2の2カ所の変曲点1、2を境に、区間1、区間3、区間2に区分される。ここに、区間1を「初期区間」、区間2を「終期区間」、区間3を「反応区間」と呼ぶことにする。
【0036】
初期区間1は、アスコルビン酸(AsA)添加前から第1変曲点1までの酸化還元電位(ORP)の変化で、オゾンがアスコルビン酸(AsA)により酸素に還元される反応が起こり、この間のORPはオゾンを酸化物質、酸素を還元物質とする下記の式(1)で表される。
【0037】
式(1):E=E0+(RT/nF)×ln([O3]/[O2])
【0038】
終期区間2は、第2変曲点2からの酸化還元電位(ORP)の変化で、アスコルビン酸(AsA)がデヒドロアスコルビン酸(DAsA)に酸化される反応が起こり、この間の酸化還元電位(ORP)はデヒドロアスコルビン酸(DAsA)を酸化物質、アスコルビン酸(AsA)を還元物質とする下記の式(2)で表される。
【0039】
式(2):E=E0+(RT/nF)×ln([DAsA]/[AsA])
【0040】
第1、第2の変曲点1、2の間の反応区間3の酸化還元電位(ORP)は、オゾンを酸化物質とし、アスコルビン酸(AsA)を還元物質とする酸化還元反応に基づく値を示し、本法の測定原理はこの反応区間3を利用した方法である。
【0041】
アスコルビン酸(AsA)を添加する前のORPをE1とすると、その値は下記の式(3)となる。
式(3):E1=E0
【0042】
アスコルビン酸(AsA)を添加した後のORPをE2とすると、その値は下記の式(4)となる。
【0043】
式(4):E2=Eo+(RT/nF)×ln([O3]/[AsA])
【0044】
アスコルビン酸(AsA)添加前後のORPの差(ΔORP)は式(3)から(4)を引くと、下記の式(5)となる。
【0045】
式(5):ΔORP=E1−E2=−(RT/nF)×ln([O3]/[AsA])
ここに、RT/nF=kとすると、式(5)は下記の式(6)となる。
【0046】
式(6):ΔORP=k×ln[AsA]−k×ln[O3]
【0047】
式(6)の左右を入れ替えると下記の式(7)となる。
式(7):ln[AsA]=1/k×ΔORP+ln[O3]
【0048】
上記式(7)からオゾン活量が既知(ln[O3]=bとする)のオゾン水を反応セルに注水し、反応区間3における還元物質の添加活量(ln[R])とΔORPとの関係を実測し、最小二乗法により定数(1/k=aとする)を求めると、下記の一般式(8)から添加した還元物質の量を算出することができる。但し、定数aは酸化還元反応で授受される電子数の影響を受けるため、指標物質により異なる値をとる。
【0049】
一般式(8):AO=e(a×ΔORP+b)/w
【0050】
ここに、
AO:試料1g中に含まれる抗酸化性物質総量で、指標物質の当量換算(マイクロモル当量:μmol-E)で表す;
(1)指標物質がアスコルビン酸(AsA)の場合は「マイクロモル-AsA当量(μmol-AE/g)」とする。
(2)指標物質がトロロックス(Trolox)の場合は「マイクロモル-Trolox当量(μmol-TE/g)」とする。
(3)指標物質がカテキン(Catechin)の場合は「マイクロモル-Catechin当量(μmol-CE/g)」とする。
e:自然対数の底(e=2.718);
a:指標物質により定まる値;
ΔORP:試料添加前後のORPの差(mV);
w:試料の添加量(g);
b:オゾン水のオゾン活量(μmol)の自然対数;
このbの値に関して、オゾンと指標物質の酸化還元反応から次の補正を行う。
(1)アスコルビン酸(AsA)の場合は、等モル反応のため、b=ln(オゾン活量)である。
(2)Troloxの場合は1モルのオゾンと2モルのTroloxとの反応のため、b=ln(オゾン活量/2)である。
(3)Catechinの場合は1モルのオゾンと6モルのCatechinとの反応のため、b=ln(オゾン活量/6)である。
【0051】
上記式(8)は一般式であるが、アスコルビン酸(AsA)を指標物質とした場合の上記のa値及びb値の具体的な値を求めて、アスコルビン酸換算式を求めてみる。
6.3ppmのオゾンを含むオゾン水20mLにアスコルビン酸(AsA)の一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表6に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図7に示す。AsA換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(9)となる。
【0052】
式(9):AO=e(0.00024ΔORP+0.87)/w
ここに、式(9)の寄与率は93.2%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0053】
【表6】
【0054】
6.3ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにAsAの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表7に示し、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図8に示す。AsA換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(10)となる。
【0055】
式(10):AO=e(0.00023ΔORP+1.35)/w
ここに、式(10)の寄与率は93.4%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0056】
【表7】
【0057】
6.3ppmのオゾンを含むオゾン水40mLにAsAの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表8に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図9に示す。AsA換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは次の式(11)となる。
【0058】
式(11):AO=e(0.00023ΔORP+1.61)/w
ここに、式(11)の寄与率は93.2%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0059】
【表8】
【0060】
6.3ppmのオゾンを含むオゾン水50mLにAsAの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表9に示し、またΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図10に示す。AsA換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(12)となる。
【0061】
式(12):AO=e(0.00023ΔORP+1.88)×176/w
ここに、式(12)の寄与率は94.8%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0062】
【表9】
【0063】
同様に、Troloxを指標物質とした場合の換算式を求めてみる。4.9ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにTroloxの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表10に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図11に示す。Trolox換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(13)となる。
【0064】
式(13):AO=e(0.00047ΔORP+0.46)/w
ここに、式(13)の寄与率は99.9%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0065】
【表10】
【0066】
同様に、Catechinを指標物質とした場合の換算式を求めてみる。5.1ppmのオゾンを含むオゾン水20mLにCatechinの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表11に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図12に示す。Catechin換算のAO値を求めるのは式(14)となる。
【0067】
式(14):AO=e(0.00028ΔORP-1.08)/w
ここに、式(9)の寄与率は99.4%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0068】
【表11】
【0069】
5.1ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにCatechinの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表12に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図13に示す。Catechin換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(15)となる。
【0070】
式(15):AO=e(0.00026ΔORP-0.63)/w
ここに、式(9)の寄与率は99.1%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0071】
【表12】
【0072】
5.1ppmのオゾンを含むオゾン水40mLにCatechinの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表13に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図14に示す。Catechin換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは下記の式(16)となる。
【0073】
式(16):AO=e(0.00025ΔORP-0.35)/w
ここに、式(9)の寄与率は99.1%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0074】
【表13】
【0075】
5.1ppmのオゾンを含むオゾン水50mLにCatechinの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表14に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図15に示す。Catechin換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは下記の式(17)となる。
【0076】
式(17):AO=e(0.00027ΔORP-0.03)/w
ここに、式(9)の寄与率は99.3%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0077】
【表14】
【0078】
上記式(9)〜(17)の妥当性について説明するため、換算式の定数a、bをまとめて表15に示す。AO換算式の定数aの値は、反応セルの容量に影響されず、指標物質により定まることが確認でき、その値はAsAの場合はa=0.00023、Troloxはa=0.00047、Catechinはa=0.00026であった。
【0079】
次にbの値は、式(8)で示した方法で算出した値にほぼ一致し、これらのことから換算式の求め方についての妥当性が裏付けられた。
【0080】
【表15】
【0081】
オゾン活量から算出するb値について説明すると、AsAの場合はln(オゾン活量)であり、Troloxの場合はln(オゾン活量/2)であり、Catechinの場合はln(オゾン活量/6)である。
【0082】
以上の結果から、本法による抗酸化性物質総量は、AsAを指標物質とする場合は下記の式(18)、Troloxを指標物質とする場合は下記の式(19)、Catechinを指標物質とする場合は下記の式(20)でそれぞれ算出することができる。
【0083】
式(18):AO(μmol-AE/g)=e(0.00023ΔORP+b)/w
b=ln(C×V/48)
ここに、Cはオゾン水濃度(ppm)、Vは反応セル容量である。
【0084】
式(19):AO(μmol-TE/g)=e(0.00047ΔORP+b)/w
b=ln(C×V/48/2)
【0085】
式(20):AO(μmol-CE/g)=e(0.00026ΔORP+b)/w
b=ln(C×V/48/6)
【0086】
上記換算式の校正方法について説明する。換算式の定数aはE1、E2測定時の水温に影響されるが、式では電位差(E1−E2)として利用するため、その影響は殆ど無視できる。定数bはオゾン活量(濃度と量との積から求める値)で定まる値であり、その生成濃度は水温により変動することがわかっている。その一例として水温と生成オゾン濃度との関係を図16に示す。そのため、オゾン水生成機内に温度センサを設け生成オゾン濃度を校正し、b値の補正を行う必要がある。
【0087】
図17は、オゾン水を使った実施例の抗酸化性物質総量測定装置の概要を示す図である。図17を参照して、抗酸化性物質総量測定装置100は、大別すると3つの要素からなり、第1の要素は反応系10、第2の要素はオゾン水生成系12、第3の要素は計測系14であり、これら要素は商用電源から供給される電源によって動作することができる。
【0088】
反応系10は、既知のスターラーが採用され、この磁気スターラー10の電磁誘導によって、スターラー10に載置したセル20内の回転子22が回転し、この回転によってセル20内の液体が撹拌され反応が促進される。
【0089】
セル20には、試料の他に、オゾン水生成系12からオゾン水が供給される。オゾン水生成系12は、温度センサを設置する以外は、前述したJP特開2006-346203号公報に記載の電気分解ユニットを有し、この電気分解ユニットは、導電性ダイヤモンド触媒を担持した金属棒からなる陽極の周囲に、イオン交換膜で構成された隔膜ウエブを巻き付け、この隔膜の周囲の金属線からなる陰極を巻き付けることにより構成されている。なお、温度センサは生成オゾン水濃度を校正するために設置したものである。
【0090】
そして、この電気分解ユニットに水を導くことによりオゾンが溶解したオゾン水が生成され、生成した所定量のオゾン水は直ちに加圧方式でセル20に供給される。この電気分解ユニット及びオゾン水生成に関する詳しい説明は上記JP特開2006-346203号公報に開示があるから、当該特開2006-346203号公報に記載の技術的事項の全てを、ここに援用する。
【0091】
計測系14は、図18に示すようにCPU30、タイマ32、メモリ34、テンキー36などを有し、CPU30は、オゾン水生成系12に設置した温度センサからの信号を受けて上記算出式(18)、(19)、(20)の定数を補正し、セル20に挿入された酸化還元電極24からの信号及びテンキー36から入力した試料添加量などに基づいて抗酸化性物質総量を演算し、その値をモニタ26に数値表示する。
【0092】
抗酸化性物質総量測定装置100による測定及びモニタ26の表示に関する手順の一例を図19のフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1において、オゾン水生成系12を起動してオゾン水(オゾン濃度約6ppm)を生成し、10mL刻みで20〜50mLのオゾン水をセル20に注水し、その量をテンキー36からメモリ34に入力する。次いで、ステップS2において、反応系10を起動してセル20内の回転子を回転させながら、オゾン水生成系12から取り出したオゾン水の酸化還元電位E1を計測し(ステップS3)、メモリ34に記憶される。次に、ステップS4で試料の添加が1点方式か連続方式かを選択し、その方式をテンキー36でメモリ34に入力する。それ以降は方式に沿って進めることとなる。
【0093】
1点添加方式の進め方について説明する。
ステップS5において、野菜や果実などの任意の試料からハンディ圧搾器などで抽出液を取り出し、0.05mL(0.05g)容量の分注器などを用いて抽出液の一定量(0.05〜0.5g)をセル20内に添加し、その添加量をテンキー36でメモリ34に入力する。ステップS6で酸化還元電位ORPを測定し、ステップS8においてタイマ32で設定した時間経過後(通常は90秒)の酸化還元電位E2がメモリ34に記憶される。次に、ステップS9において、初期酸化還元電位E1と試料添加後の酸化還元電位E2との差分値(ΔORP)が算出され、オゾン生成機に設けた温度センサで温度補正した換算式により抗酸化性物質総量AO値を算出する。
【0094】
連続添加方式の進め方について説明する。
ステップS5において、野菜や果実などの任意の試料からハンディ圧搾器などで抽出液を取り出し、0.05mL(0.05g)容量の分注器などを用いて抽出液をセル20内に連続添加する。ステップS6で酸化還元電位ORPを測定し、ステップS8において試料添加前後のΔORPが一定以上(通常は30mV以上)に達した時点の酸化還元電位E2がメモリ34に記憶される。また、その時の分注器での試料添加回数(N)をテンキー36でメモリ34に入力する。次に、ステップS9において、初期酸化還元電位E1と試料添加後の酸化還元電位E2との差分値(ΔORP)が算出され、オゾン生成機に設けた温度センサで温度補正した換算式により抗酸化性物質総量AO値を算出する。
【0095】
抗酸化性物質総量AO値は、ステップS10でメモリ34に記憶され、ステップS11でモニタ26に表示される。また、必要であれば計測系14に接続されたプリンタ38によって紙に印刷するようにしても良い。
【0096】
実際に検証した結果は次のとおりである。
煎茶、抹茶、いちご、キウイ、アボガド、洋なし(皮と実)、富有柿(皮と実)、春菊、きぬさや、九条ネギ、青ネギ、大根(葉と根)、ほうれん草、パセリ、ミニトマト、トマト、大麦、栗、椎茸、三度豆、キャベツ、みかん、ブロッコリー、チンゲンサイ、白菜及び5種類7検体のリンゴ(皮と実)など計46検体を対象に本法による抗酸化性物質総量を測定し、併行して抗酸化性物質総量の測定法として多用されているDPPH法(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl法)での測定も行い、両者の測定値を比較することにより、本測定法の妥当性について検証した。
【0097】
試料からの抗酸化性物質総量の抽出は、次の方法により行った。
煎茶、抹茶は、茶葉1gを精製水40mLに入れ室温で5分間浸出させた後、遠心分離機(3,000rpm、10分)で分離して上澄み液を抽出液とする。その他の試料は、適量をホモジナイズした後、遠心分離機(3,000rpm、10分)で分離して上澄液を抽出液とする。
【0098】
測定の結果を表16に示し、本法で求めた抗酸化性物質総量(Trolox換算の値)とDPPH法(Trolox換算)との関係を図20に示す。但し、図20については測定値が広範囲に分布するため、対数変換した値を採用した。本法で測定した値は、オゾンの酸化力がDPPHより強いことから、DPPH法の値に比べて高い傾向を示すが、両者の相関係数は0.890と高く、0.1%の有意水準で相関が認められ、本法の妥当性が確認できる。また、マトリックスが同じ7種類のリンゴ(皮と実)に限定して、本法とDPPH法との関係を図21に示す。その結果、試料中のマトリックスが同じ場合、両者には更に高い相関関係(相関係数:0.980)の成立することが分かった。
【0099】
【表16】
【0100】
以上、野菜や果物に適用した例を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。例えば、血清中の抗酸化性物質の総量を計測するのに適用することができる。具体的な例を説明すると、先ず、測定は採血後分離させた29名の血清を試料とし、上述した食品と同様の方法で行った。また、測定値の評価を行うため、同一試料を対象に抗酸化性物質であるルテイン、リコペン、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンを高速液体クロマトグラフィーで測定した。その結果、血清中の抗酸化性物質総量は210〜232μmol-AE/mLであり、個別に測定した抗酸化性物質との関係については、図26に示すように、α-カロテンとの間に5%以下の危険率で相関が認められた。したがって、本発明を適用して血清中に含まれる抗酸化性物質の総量を測定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
消費者に野菜や果物がどの程度の抗酸化能力を有しているか、各野菜や果物毎に、また、野菜や果物の部分毎に、消費者が理解し易い指標に基づく具体的な数値で表示するのに利用することができる。血清中の抗酸化性物質の総量の計測についても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0102】
100 抗酸化強度測定装置
10 スターラー
12 オゾン水生成機
14 計測系ユニット
20 セル
22 回転子
24 酸化還元電極
26 モニタ
32 タイマ
34 メモリ
36 テンキー
38 プリンタ
【技術分野】
【0001】
本発明は抗酸化強度の測定方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素に関する最近の研究により次のことが明らかになってきている。すなわち、酸化ストレスは人体に悪影響を及ぼし、老化や疾病の要因になると言われている。このことから、生活習慣病の予防、老化抑制として、活性酸素を捕捉する抗酸化性物質を含む食品が注目されている。抗酸化性物質としてアリシン、オレイン酸、カテキン(Catechin)、β-カロテン、アスコルビン酸(AsA)、ビタミンEなどが知られている。食品を主体に見ると、例えばタマネギはアリシンを含み、サツマイモ、黒豆、茄子はアントシアニンを含み、大豆はオレイン酸を含み、リンゴや緑茶はカテキンを含み、大根はスルフォラファンを含み、大根の葉はビタミンEを含み、サツマイモやクレソンなどはβ-カロテンを含んでいる。
【0003】
食品中の抗酸化性物質の測定は、アスコルビン酸(AsA)などを個別に測定する方法、電子スピン共鳴を使った測定方法、DPPHラジカル消去活性法、フォーリンシオカルト法、β-カロテン退色法などが知られているが、いずれの方法も専門家及び高額な分析機器を必要とし且つ測定に時間と費用が必要である。
【0004】
食品の抗酸化活性を測定することを目的として、例えば特許文献1は、活性酸素(O2−)を電気化学的に生成し、生成した活性酸素を不均一化反応によってH2O2を生成させるときに抗酸化性物質が存在すると、この抗酸化性物質によって活性酸素の一部が捕捉され、この結果、H2O2の生成量が減少する、という現象を使って、H2O2の量をH2O2測定用電極で測定することで抗酸化性物質の有無と抗酸化活性を測定することを提案している。
【0005】
また、特許文献2は、例えば一定量のニンニク抽出液にルミノール及び過酸化水素を添加した試料中に設置した一対の電極間に電位差を与えて電極化学発光(ECL)を発生させ、この発光の強度を測定することでニンニクの抗酸化力を評価することを提案している。
【0006】
【特許文献1】特開2007−170912号公報
【特許文献2】特開2007−279008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の抗酸化活性つまり抗酸化強度の測定方法は、分析センターのように、各種の薬品を所持してこれを管理できる施設内で専門家が実施することを前提としており、手軽に抗酸化強度がどの程度なのかを知りたいという要請に対応することはできない。
【0008】
例えば、収穫した野菜がどの程度の抗酸化強度を備えているのか出荷する前に知ることで、仮に他の産地の同じ野菜よりも高い抗酸化強度を備えていることが分かれば、これを付加価値として販売増加に結び付けることができる。また、自分が育てた農産物の抗酸化強度を手軽に知ることができれば土壌改良や育成方法の工夫に役立てることができる。
【0009】
本発明の目的は、一般人が取り扱っても安全性に優れ且つ手軽に抗酸化強度を知ることのできる測定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、酸化性物質に還元性物質である抗酸化性物質を加えると酸化還元反応によって酸化還元電位が低下する現象に着目して本願発明を案出するに至ったものである。酸化還元電位は、次のネルンストの式から求めることができるが、酸化還元反応前と、反応後の酸化還元電位とを測定して、その電位差の大小を知ることで、酸化還元反応に伴う酸化物質の減少量つまり抗酸化強度を把握することができる。
【0011】
ネルンストの式:E=E0+(RT/nF)×([Ao]/[Ar])
【0012】
ここに、
E:酸化還元電位(実測値)(ボルト(V));
E0:標準酸化還元電位([Ao]=[Ar]の場合の基準電極との電位差)(ボルト(V));
R:気体定数(8.31J・mol−1・K−1);
T:水溶液の絶対温度(25℃の場合には298K);
F:ファラデー定数(9.65×104C・mol−1);
n:酸化還元反応にて授受される電子の数;
[Ao]:酸化性物質の活量;
[Ar]:還元性物質の活量。
【0013】
ところで、JP特開2006−346203号公報に見られるように、電気分解によって所定の濃度のオゾン水を生成するポータブルな装置が開発されている。オゾンは活性酸素の一種で、標準酸化還元電位が高く、フッ素に次ぐ強力な酸化作用を発揮して還元物質との反応によって酸化還元電位が大きく低下するという特性を有している。勿論、オゾン水は時間の経過によってオゾンが消失してしまうため安全性に関する管理は比較的容易である。このことから、本願発明者らはオゾン水の強い酸化作用に着目した。
【0014】
食品中に抗酸化物質が含まれている場合、これを試料としてオゾン水に添加したときには酸化還元電位が低下することになる。しかし、この酸化還元電位の低下量つまり試料を入れないときのオゾン水の酸化還元電位と、試料を入れた後の酸化還元電位との間の電位差を検出したとしても、この電位差がどの程度の抗酸化強度に相当するのかを直感的に認識することができない。
【0015】
ところで、アスコルビン酸(AsA)やカテキン(Catechin)などは抗酸化物質として一般人に良く知られている。この所定の抗酸化物質を指標つまり物差しにした抗酸化強度を提供すれば一般人にとって馴染み易く且つ分かり易い相対評価になると考えられる。
【0016】
上記の技術的課題は、本発明の第1の観点によれば、
酸化還元電極を備えたセルを用意し、
該セル内に所定の濃度及び水量のオゾン水を入れるオゾン水供給工程と、
前記セル内のオゾン水に試料を添加する試料添加工程と、
前記オゾン水に試料を入れないときの酸化還元電位と該オゾン水に試料を添加した後の酸化還元電位との間の電位差を求める電位差検出工程と、
前記電位差検出工程により求めた電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算工程と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定方法を提供することにより達成される。
【0017】
上記の技術的課題は、本発明の第2の観点によれば、
酸化還元電極を備えたセルを用意し、
該セル内に所定の濃度及び水量のオゾン水を入れるオゾン水供給工程と、
該セル内のオゾン水の第1酸化還元電位を求めるオゾン水電位計測工程と、
前記セル内のオゾン水に試料を添加する試料添加工程と、
前記セル内に試料を添加した後の第2酸化還元電位を求める試料電位計測工程と、
前記第1酸化還元電位と前記第2酸化還元電位との間の電位差を求める電位差検出工程と、
前記電位差検出工程により求めた電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算工程と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定方法を提供することにより達成される。
【0018】
上記の技術的課題は、本発明の第3の観点によれば、
酸化還元電極と、
該酸化還元電極が挿入可能なセルと、
所定の濃度のオゾン水を生成するオゾン水生成機と、
前記オゾン水生成機で生成したオゾン水を入れたセルに試料を添加した後の酸化還元電位を計測して、前記オゾン水生成機で生成したオゾン水に試料を入れないときの酸化還元電位との間の電位差を検出する電位差検出手段と、
該電位差検出手段により求めた前記電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算手段と、
該演算手段により求めた抗酸化強度換算値を出力する出力手段と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定装置を提供することにより達成される。
【0019】
本発明によれば、例えば指標としてアスコルビン酸(AsA)を設定したときには、試料の抗酸化強度がアスコルビン酸(AsA)に換算した抗酸化強度換算値で出力される。このことから、例えば収穫した白菜がどの程度の抗酸化強度を備えているのかをイメージし易くなり、農家などの生産者や仲介業者又は消費者にとって都合がよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】オゾン水にアスコルビン酸を添加したときのアスコルビン酸添加量と酸化還元電位(ORP)との関係を示す図である。
【図2】オゾン水にアスコルビン酸を添加したときの酸化還元電位(ORP)の経時的な変化を示す図である。
【図3】非抗酸化性物質であるクエン酸をオゾン水に添加したときの酸化還元電位(ORP)の経時的な変化を示す図である。
【図4】非抗酸化性物質である澱粉をオゾン水に添加したときの酸化還元電位(ORP)の経時的な変化を示す図である。
【図5】抗酸化性物質を多量に含む食品の典型例である緑茶をオゾン水に添加したときの酸化還元電位(ORP)の経時的な変化を示す図である。
【図6】オゾン水にアスコルビン酸を添加した場合の添加量とORPとの関係を示す図である。
【図7】6.3ppmのオゾンを含むオゾン水20mLにアスコルビン酸を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図8】6.3ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにアスコルビン酸を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図9】6.3ppmのオゾンを含むオゾン水40mLにアスコルビン酸を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図10】6.3ppmのオゾンを含むオゾン水50mLにアスコルビン酸を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図11】4.9ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにTrolox(ビタミンEの代謝物)を添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図12】5.1ppmのオゾンを含むオゾン水20mLにCatechinを添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図13】5.1ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにCatechinを添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図14】5.1ppmのオゾンを含むオゾン水40mLにCatechinを添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図15】5.1ppmのオゾンを含むオゾン水50mLにCatechinを添加したときの反応区間3における添加量と添加前後の酸化還元電位の電位差(ΔORP)との関係を示す図である。
【図16】オゾン水生成機でオゾン水を生成する場合、水温と生成濃度との関係を示す図である。
【図17】実施例の抗酸化性物質総量測定装置の概略図である。
【図18】図17の抗酸化性物質総量測定装置に含まれる電位差計のブロック図である。
【図19】実施例の抗酸化性物質総量測定方法の手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【図20】46品目の野菜、果実などを対象に、本法とDPPH法で測定した値を比較した図である。
【図21】品種、産地などの異なるリンゴを対象に、本法とOPPH法で測定した値を比較した図である。
【図22】青ネギ、チンゲンサイの測定部位を示した図である。
【図23】青ネギ、チンゲンサイの測定部位別のAO値の分布を示した図である。
【図24】リンゴの品種、産地別AO値の分布を示した図である。
【図25】リンゴの皮と実の部位別AO値の分布を示した図である。
【図26】29名の各血清に含まれる抗酸化性物質を本発明に従って計測した総量と、高速液体クロマトグラフィーで計測したα-カロテンの実測値との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0021】
本願発明者らは、前述したようにオゾン水に着目し、オゾン水にアスコルビン酸(AsA)を添加して添加量と酸化還元電位(ORP)の関係を調べた。その結果を表1及び図1に示す。ここに、オゾン水のオゾン濃度は6.86ppmであり、このオゾン水の酸化還元電位は1055mVであった。また、1000ppmのアスコルビン酸の添加量は100μL、200μL、250μL、500μL、1000μLであった。
【0022】
【表1】
【0023】
アスコルビン酸(AsA)は食品中に含まれる代表的な抗酸化性物質である。このことから上記の実験結果つまりアスコルビン酸を添加すると酸化還元電位が大幅に低下するのは想定通りであった。また、アスコルビン酸(AsA)を添加したときの経時的な酸化還元電位の変化を実験により求めたところ、表2及び図2の結果を得た。なお、実験に使用したアスコルビン酸(AsA)の添加量は80mgであった。
【0024】
【表2】
【0025】
上記表2によれば、抗酸化性物質であるアスコルビン酸(AsA)をオゾン水に添加すると速やかに酸化還元反応が進んで酸化還元電位(ORP)が急激に低下し、その後、安定した電位を示すことが分かる。他の例について以下に説明するが、各実験に使用したオゾン水のオゾン濃度は約7ppmであった。
【0026】
果実などに多く含まれる有機酸の一種であるクエン酸に関し、クエン酸をオゾン水に添加したときの経時的な酸化還元電位の変化を実験により求めてみたところ、表3及び図3の結果を得た。なお、実験に使用したクエン酸の添加量は80mgであった。
【0027】
【表3】
【0028】
クエン酸が抗酸化性物質で無いことは既知の事実であることから、オゾン水にクエン酸を添加したとしても酸化還元電位が殆ど変化しなかった上記の実験結果は想定通りということができる。なお、経時的に酸化還元電位(ORP)が僅かに低下する傾向が見られるが、これは、クエン酸の分解にオゾンの一部が消費されたためである、と推察される。
【0029】
更なる他の例として、穀類などに多く含まれる澱粉を添加したときの経時的な酸化還元電位の変化を実験により求めてみたところ、表4及び図4の結果を得た。なお、実験に使用した澱粉の添加量は20mgであった。
【0030】
【表4】
【0031】
澱粉は還元物質(抗酸化性物質)では無いことから、オゾン水に澱粉を添加したとしても、上記クエン酸の場合と同様に、酸化還元電位の急激な変化は見られなかった。なお、6分を経過した後に、酸化還元電位が低下する傾向にあるが、この現象は、上記クエン酸と同様に、澱粉の分解にオゾンの一部が消費されたためと推察される。
【0032】
次に、カテキン(Catechin)やアスコルビン酸などの還元物質を多く含む緑茶250mgをオゾン水に添加したときには、表5及び図5に示すようにORPは1055mVから281mVに急激に低下した後にほぼ安定した電位となった。すなわち、強い酸化作用を有するオゾン水の中に、カテキン(Catechin)やアスコルビン酸(AsA)のような抗酸化性物質を多く含む緑茶を添加すると、速やかに酸化還元反応が進み酸化還元電位(ORP)が急激に低下することが分かる。
【0033】
【表5】
【0034】
上記の実験から、オゾン水は強い酸化作用を有することは前述した通りであるが、このオゾン水の中に還元物質である抗酸化性物質を添加すると、瞬時に急激な酸化還元電位の低下を招くという特徴を確認することができた。また、この特性から、どの程度電位が低下するかによって、添加した抗酸化性物質の強度が確認できた。
【0035】
次にアスコルビン酸(AsA)の添加量と酸化還元電位との関係について検討を加えた。先ず、一定量のオゾン水にアスコルビン酸(AsA)を添加した場合の添加量と酸化還元電位(ORP)との関係は、図6に示すように、第1、第2の2カ所の変曲点1、2を境に、区間1、区間3、区間2に区分される。ここに、区間1を「初期区間」、区間2を「終期区間」、区間3を「反応区間」と呼ぶことにする。
【0036】
初期区間1は、アスコルビン酸(AsA)添加前から第1変曲点1までの酸化還元電位(ORP)の変化で、オゾンがアスコルビン酸(AsA)により酸素に還元される反応が起こり、この間のORPはオゾンを酸化物質、酸素を還元物質とする下記の式(1)で表される。
【0037】
式(1):E=E0+(RT/nF)×ln([O3]/[O2])
【0038】
終期区間2は、第2変曲点2からの酸化還元電位(ORP)の変化で、アスコルビン酸(AsA)がデヒドロアスコルビン酸(DAsA)に酸化される反応が起こり、この間の酸化還元電位(ORP)はデヒドロアスコルビン酸(DAsA)を酸化物質、アスコルビン酸(AsA)を還元物質とする下記の式(2)で表される。
【0039】
式(2):E=E0+(RT/nF)×ln([DAsA]/[AsA])
【0040】
第1、第2の変曲点1、2の間の反応区間3の酸化還元電位(ORP)は、オゾンを酸化物質とし、アスコルビン酸(AsA)を還元物質とする酸化還元反応に基づく値を示し、本法の測定原理はこの反応区間3を利用した方法である。
【0041】
アスコルビン酸(AsA)を添加する前のORPをE1とすると、その値は下記の式(3)となる。
式(3):E1=E0
【0042】
アスコルビン酸(AsA)を添加した後のORPをE2とすると、その値は下記の式(4)となる。
【0043】
式(4):E2=Eo+(RT/nF)×ln([O3]/[AsA])
【0044】
アスコルビン酸(AsA)添加前後のORPの差(ΔORP)は式(3)から(4)を引くと、下記の式(5)となる。
【0045】
式(5):ΔORP=E1−E2=−(RT/nF)×ln([O3]/[AsA])
ここに、RT/nF=kとすると、式(5)は下記の式(6)となる。
【0046】
式(6):ΔORP=k×ln[AsA]−k×ln[O3]
【0047】
式(6)の左右を入れ替えると下記の式(7)となる。
式(7):ln[AsA]=1/k×ΔORP+ln[O3]
【0048】
上記式(7)からオゾン活量が既知(ln[O3]=bとする)のオゾン水を反応セルに注水し、反応区間3における還元物質の添加活量(ln[R])とΔORPとの関係を実測し、最小二乗法により定数(1/k=aとする)を求めると、下記の一般式(8)から添加した還元物質の量を算出することができる。但し、定数aは酸化還元反応で授受される電子数の影響を受けるため、指標物質により異なる値をとる。
【0049】
一般式(8):AO=e(a×ΔORP+b)/w
【0050】
ここに、
AO:試料1g中に含まれる抗酸化性物質総量で、指標物質の当量換算(マイクロモル当量:μmol-E)で表す;
(1)指標物質がアスコルビン酸(AsA)の場合は「マイクロモル-AsA当量(μmol-AE/g)」とする。
(2)指標物質がトロロックス(Trolox)の場合は「マイクロモル-Trolox当量(μmol-TE/g)」とする。
(3)指標物質がカテキン(Catechin)の場合は「マイクロモル-Catechin当量(μmol-CE/g)」とする。
e:自然対数の底(e=2.718);
a:指標物質により定まる値;
ΔORP:試料添加前後のORPの差(mV);
w:試料の添加量(g);
b:オゾン水のオゾン活量(μmol)の自然対数;
このbの値に関して、オゾンと指標物質の酸化還元反応から次の補正を行う。
(1)アスコルビン酸(AsA)の場合は、等モル反応のため、b=ln(オゾン活量)である。
(2)Troloxの場合は1モルのオゾンと2モルのTroloxとの反応のため、b=ln(オゾン活量/2)である。
(3)Catechinの場合は1モルのオゾンと6モルのCatechinとの反応のため、b=ln(オゾン活量/6)である。
【0051】
上記式(8)は一般式であるが、アスコルビン酸(AsA)を指標物質とした場合の上記のa値及びb値の具体的な値を求めて、アスコルビン酸換算式を求めてみる。
6.3ppmのオゾンを含むオゾン水20mLにアスコルビン酸(AsA)の一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表6に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図7に示す。AsA換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(9)となる。
【0052】
式(9):AO=e(0.00024ΔORP+0.87)/w
ここに、式(9)の寄与率は93.2%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0053】
【表6】
【0054】
6.3ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにAsAの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表7に示し、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図8に示す。AsA換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(10)となる。
【0055】
式(10):AO=e(0.00023ΔORP+1.35)/w
ここに、式(10)の寄与率は93.4%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0056】
【表7】
【0057】
6.3ppmのオゾンを含むオゾン水40mLにAsAの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表8に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図9に示す。AsA換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは次の式(11)となる。
【0058】
式(11):AO=e(0.00023ΔORP+1.61)/w
ここに、式(11)の寄与率は93.2%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0059】
【表8】
【0060】
6.3ppmのオゾンを含むオゾン水50mLにAsAの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表9に示し、またΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図10に示す。AsA換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(12)となる。
【0061】
式(12):AO=e(0.00023ΔORP+1.88)×176/w
ここに、式(12)の寄与率は94.8%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0062】
【表9】
【0063】
同様に、Troloxを指標物質とした場合の換算式を求めてみる。4.9ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにTroloxの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表10に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図11に示す。Trolox換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(13)となる。
【0064】
式(13):AO=e(0.00047ΔORP+0.46)/w
ここに、式(13)の寄与率は99.9%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0065】
【表10】
【0066】
同様に、Catechinを指標物質とした場合の換算式を求めてみる。5.1ppmのオゾンを含むオゾン水20mLにCatechinの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表11に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図12に示す。Catechin換算のAO値を求めるのは式(14)となる。
【0067】
式(14):AO=e(0.00028ΔORP-1.08)/w
ここに、式(9)の寄与率は99.4%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0068】
【表11】
【0069】
5.1ppmのオゾンを含むオゾン水30mLにCatechinの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表12に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図13に示す。Catechin換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは式(15)となる。
【0070】
式(15):AO=e(0.00026ΔORP-0.63)/w
ここに、式(9)の寄与率は99.1%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0071】
【表12】
【0072】
5.1ppmのオゾンを含むオゾン水40mLにCatechinの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表13に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図14に示す。Catechin換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは下記の式(16)となる。
【0073】
式(16):AO=e(0.00025ΔORP-0.35)/w
ここに、式(9)の寄与率は99.1%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0074】
【表13】
【0075】
5.1ppmのオゾンを含むオゾン水50mLにCatechinの一定量を添加し、反応区間3における添加前後のORPを測定して得た結果を表14に示し、また、ΔORPと添加量を自然対数に変換した値との関係を図15に示す。Catechin換算の抗酸化性物質総量の値つまりAO値を求めるのは下記の式(17)となる。
【0076】
式(17):AO=e(0.00027ΔORP-0.03)/w
ここに、式(9)の寄与率は99.3%であり、回帰式の適合度の高いことがわかる。
【0077】
【表14】
【0078】
上記式(9)〜(17)の妥当性について説明するため、換算式の定数a、bをまとめて表15に示す。AO換算式の定数aの値は、反応セルの容量に影響されず、指標物質により定まることが確認でき、その値はAsAの場合はa=0.00023、Troloxはa=0.00047、Catechinはa=0.00026であった。
【0079】
次にbの値は、式(8)で示した方法で算出した値にほぼ一致し、これらのことから換算式の求め方についての妥当性が裏付けられた。
【0080】
【表15】
【0081】
オゾン活量から算出するb値について説明すると、AsAの場合はln(オゾン活量)であり、Troloxの場合はln(オゾン活量/2)であり、Catechinの場合はln(オゾン活量/6)である。
【0082】
以上の結果から、本法による抗酸化性物質総量は、AsAを指標物質とする場合は下記の式(18)、Troloxを指標物質とする場合は下記の式(19)、Catechinを指標物質とする場合は下記の式(20)でそれぞれ算出することができる。
【0083】
式(18):AO(μmol-AE/g)=e(0.00023ΔORP+b)/w
b=ln(C×V/48)
ここに、Cはオゾン水濃度(ppm)、Vは反応セル容量である。
【0084】
式(19):AO(μmol-TE/g)=e(0.00047ΔORP+b)/w
b=ln(C×V/48/2)
【0085】
式(20):AO(μmol-CE/g)=e(0.00026ΔORP+b)/w
b=ln(C×V/48/6)
【0086】
上記換算式の校正方法について説明する。換算式の定数aはE1、E2測定時の水温に影響されるが、式では電位差(E1−E2)として利用するため、その影響は殆ど無視できる。定数bはオゾン活量(濃度と量との積から求める値)で定まる値であり、その生成濃度は水温により変動することがわかっている。その一例として水温と生成オゾン濃度との関係を図16に示す。そのため、オゾン水生成機内に温度センサを設け生成オゾン濃度を校正し、b値の補正を行う必要がある。
【0087】
図17は、オゾン水を使った実施例の抗酸化性物質総量測定装置の概要を示す図である。図17を参照して、抗酸化性物質総量測定装置100は、大別すると3つの要素からなり、第1の要素は反応系10、第2の要素はオゾン水生成系12、第3の要素は計測系14であり、これら要素は商用電源から供給される電源によって動作することができる。
【0088】
反応系10は、既知のスターラーが採用され、この磁気スターラー10の電磁誘導によって、スターラー10に載置したセル20内の回転子22が回転し、この回転によってセル20内の液体が撹拌され反応が促進される。
【0089】
セル20には、試料の他に、オゾン水生成系12からオゾン水が供給される。オゾン水生成系12は、温度センサを設置する以外は、前述したJP特開2006-346203号公報に記載の電気分解ユニットを有し、この電気分解ユニットは、導電性ダイヤモンド触媒を担持した金属棒からなる陽極の周囲に、イオン交換膜で構成された隔膜ウエブを巻き付け、この隔膜の周囲の金属線からなる陰極を巻き付けることにより構成されている。なお、温度センサは生成オゾン水濃度を校正するために設置したものである。
【0090】
そして、この電気分解ユニットに水を導くことによりオゾンが溶解したオゾン水が生成され、生成した所定量のオゾン水は直ちに加圧方式でセル20に供給される。この電気分解ユニット及びオゾン水生成に関する詳しい説明は上記JP特開2006-346203号公報に開示があるから、当該特開2006-346203号公報に記載の技術的事項の全てを、ここに援用する。
【0091】
計測系14は、図18に示すようにCPU30、タイマ32、メモリ34、テンキー36などを有し、CPU30は、オゾン水生成系12に設置した温度センサからの信号を受けて上記算出式(18)、(19)、(20)の定数を補正し、セル20に挿入された酸化還元電極24からの信号及びテンキー36から入力した試料添加量などに基づいて抗酸化性物質総量を演算し、その値をモニタ26に数値表示する。
【0092】
抗酸化性物質総量測定装置100による測定及びモニタ26の表示に関する手順の一例を図19のフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1において、オゾン水生成系12を起動してオゾン水(オゾン濃度約6ppm)を生成し、10mL刻みで20〜50mLのオゾン水をセル20に注水し、その量をテンキー36からメモリ34に入力する。次いで、ステップS2において、反応系10を起動してセル20内の回転子を回転させながら、オゾン水生成系12から取り出したオゾン水の酸化還元電位E1を計測し(ステップS3)、メモリ34に記憶される。次に、ステップS4で試料の添加が1点方式か連続方式かを選択し、その方式をテンキー36でメモリ34に入力する。それ以降は方式に沿って進めることとなる。
【0093】
1点添加方式の進め方について説明する。
ステップS5において、野菜や果実などの任意の試料からハンディ圧搾器などで抽出液を取り出し、0.05mL(0.05g)容量の分注器などを用いて抽出液の一定量(0.05〜0.5g)をセル20内に添加し、その添加量をテンキー36でメモリ34に入力する。ステップS6で酸化還元電位ORPを測定し、ステップS8においてタイマ32で設定した時間経過後(通常は90秒)の酸化還元電位E2がメモリ34に記憶される。次に、ステップS9において、初期酸化還元電位E1と試料添加後の酸化還元電位E2との差分値(ΔORP)が算出され、オゾン生成機に設けた温度センサで温度補正した換算式により抗酸化性物質総量AO値を算出する。
【0094】
連続添加方式の進め方について説明する。
ステップS5において、野菜や果実などの任意の試料からハンディ圧搾器などで抽出液を取り出し、0.05mL(0.05g)容量の分注器などを用いて抽出液をセル20内に連続添加する。ステップS6で酸化還元電位ORPを測定し、ステップS8において試料添加前後のΔORPが一定以上(通常は30mV以上)に達した時点の酸化還元電位E2がメモリ34に記憶される。また、その時の分注器での試料添加回数(N)をテンキー36でメモリ34に入力する。次に、ステップS9において、初期酸化還元電位E1と試料添加後の酸化還元電位E2との差分値(ΔORP)が算出され、オゾン生成機に設けた温度センサで温度補正した換算式により抗酸化性物質総量AO値を算出する。
【0095】
抗酸化性物質総量AO値は、ステップS10でメモリ34に記憶され、ステップS11でモニタ26に表示される。また、必要であれば計測系14に接続されたプリンタ38によって紙に印刷するようにしても良い。
【0096】
実際に検証した結果は次のとおりである。
煎茶、抹茶、いちご、キウイ、アボガド、洋なし(皮と実)、富有柿(皮と実)、春菊、きぬさや、九条ネギ、青ネギ、大根(葉と根)、ほうれん草、パセリ、ミニトマト、トマト、大麦、栗、椎茸、三度豆、キャベツ、みかん、ブロッコリー、チンゲンサイ、白菜及び5種類7検体のリンゴ(皮と実)など計46検体を対象に本法による抗酸化性物質総量を測定し、併行して抗酸化性物質総量の測定法として多用されているDPPH法(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl法)での測定も行い、両者の測定値を比較することにより、本測定法の妥当性について検証した。
【0097】
試料からの抗酸化性物質総量の抽出は、次の方法により行った。
煎茶、抹茶は、茶葉1gを精製水40mLに入れ室温で5分間浸出させた後、遠心分離機(3,000rpm、10分)で分離して上澄み液を抽出液とする。その他の試料は、適量をホモジナイズした後、遠心分離機(3,000rpm、10分)で分離して上澄液を抽出液とする。
【0098】
測定の結果を表16に示し、本法で求めた抗酸化性物質総量(Trolox換算の値)とDPPH法(Trolox換算)との関係を図20に示す。但し、図20については測定値が広範囲に分布するため、対数変換した値を採用した。本法で測定した値は、オゾンの酸化力がDPPHより強いことから、DPPH法の値に比べて高い傾向を示すが、両者の相関係数は0.890と高く、0.1%の有意水準で相関が認められ、本法の妥当性が確認できる。また、マトリックスが同じ7種類のリンゴ(皮と実)に限定して、本法とDPPH法との関係を図21に示す。その結果、試料中のマトリックスが同じ場合、両者には更に高い相関関係(相関係数:0.980)の成立することが分かった。
【0099】
【表16】
【0100】
以上、野菜や果物に適用した例を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。例えば、血清中の抗酸化性物質の総量を計測するのに適用することができる。具体的な例を説明すると、先ず、測定は採血後分離させた29名の血清を試料とし、上述した食品と同様の方法で行った。また、測定値の評価を行うため、同一試料を対象に抗酸化性物質であるルテイン、リコペン、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンを高速液体クロマトグラフィーで測定した。その結果、血清中の抗酸化性物質総量は210〜232μmol-AE/mLであり、個別に測定した抗酸化性物質との関係については、図26に示すように、α-カロテンとの間に5%以下の危険率で相関が認められた。したがって、本発明を適用して血清中に含まれる抗酸化性物質の総量を測定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
消費者に野菜や果物がどの程度の抗酸化能力を有しているか、各野菜や果物毎に、また、野菜や果物の部分毎に、消費者が理解し易い指標に基づく具体的な数値で表示するのに利用することができる。血清中の抗酸化性物質の総量の計測についても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0102】
100 抗酸化強度測定装置
10 スターラー
12 オゾン水生成機
14 計測系ユニット
20 セル
22 回転子
24 酸化還元電極
26 モニタ
32 タイマ
34 メモリ
36 テンキー
38 プリンタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元電極を備えたセルを用意し、
該セル内に所定の濃度及び水量のオゾン水を入れるオゾン水供給工程と、
前記セル内のオゾン水に試料を添加する試料添加工程と、
前記オゾン水に試料を入れないときの酸化還元電位と該オゾン水に試料を添加した後の酸化還元電位との間の電位差を求める電位差検出工程と、
前記電位差検出工程により求めた電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算工程と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定方法。
【請求項2】
酸化還元電極を備えたセルを用意し、
該セル内に所定の濃度及び水量のオゾン水を入れるオゾン水供給工程と、
該セル内のオゾン水の第1酸化還元電位を求めるオゾン水電位計測工程と、
前記セル内のオゾン水に試料を添加する試料添加工程と、
前記セル内に試料を添加した後の第2酸化還元電位を求める試料電位計測工程と、
前記第1酸化還元電位と前記第2酸化還元電位との間の電位差を求める電位差検出工程と、
前記電位差検出工程により求めた電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算工程と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定方法。
【請求項3】
前記演算工程により求めた抗酸化強度換算値を出力する出力工程を更に有する、請求項1又は2に記載の抗酸化強度測定方法。
【請求項4】
前記所定の抗酸化性物質が、アスコルビン酸、カロテノイド類、ポリフェノール類、脂溶性の抗酸化物質から選択された一種類の抗酸化性物質である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗酸化強度測定方法。
【請求項5】
前記試料を複数回に分けて前記セル内に添加する、請求項4に記載の抗酸化強度測定方法。
【請求項6】
酸化還元電極と、
該酸化還元電極が挿入可能なセルと、
所定の濃度のオゾン水を生成するオゾン水生成機と、
前記オゾン水生成機で生成したオゾン水を入れたセルに試料を添加した後の酸化還元電位を計測して、前記オゾン水生成機で生成したオゾン水に試料を入れないときの酸化還元電位との間の電位差を検出する電位差検出手段と、
該電位差検出手段により求めた前記電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算手段と、
該演算手段により求めた抗酸化強度換算値を出力する出力手段と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定装置。
【請求項7】
前記所定の抗酸化性物質が、アスコルビン酸、カロテノイド類、ポリフェノール類から選択された一種類の抗酸化性物質である、請求項6に記載の抗酸化強度測定方法。
【請求項8】
前記出力手段がモニタ及び/又はプリンタである、請求項6又は7に記載の抗酸化強度測定装置。
【請求項1】
酸化還元電極を備えたセルを用意し、
該セル内に所定の濃度及び水量のオゾン水を入れるオゾン水供給工程と、
前記セル内のオゾン水に試料を添加する試料添加工程と、
前記オゾン水に試料を入れないときの酸化還元電位と該オゾン水に試料を添加した後の酸化還元電位との間の電位差を求める電位差検出工程と、
前記電位差検出工程により求めた電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算工程と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定方法。
【請求項2】
酸化還元電極を備えたセルを用意し、
該セル内に所定の濃度及び水量のオゾン水を入れるオゾン水供給工程と、
該セル内のオゾン水の第1酸化還元電位を求めるオゾン水電位計測工程と、
前記セル内のオゾン水に試料を添加する試料添加工程と、
前記セル内に試料を添加した後の第2酸化還元電位を求める試料電位計測工程と、
前記第1酸化還元電位と前記第2酸化還元電位との間の電位差を求める電位差検出工程と、
前記電位差検出工程により求めた電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算工程と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定方法。
【請求項3】
前記演算工程により求めた抗酸化強度換算値を出力する出力工程を更に有する、請求項1又は2に記載の抗酸化強度測定方法。
【請求項4】
前記所定の抗酸化性物質が、アスコルビン酸、カロテノイド類、ポリフェノール類、脂溶性の抗酸化物質から選択された一種類の抗酸化性物質である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗酸化強度測定方法。
【請求項5】
前記試料を複数回に分けて前記セル内に添加する、請求項4に記載の抗酸化強度測定方法。
【請求項6】
酸化還元電極と、
該酸化還元電極が挿入可能なセルと、
所定の濃度のオゾン水を生成するオゾン水生成機と、
前記オゾン水生成機で生成したオゾン水を入れたセルに試料を添加した後の酸化還元電位を計測して、前記オゾン水生成機で生成したオゾン水に試料を入れないときの酸化還元電位との間の電位差を検出する電位差検出手段と、
該電位差検出手段により求めた前記電位差を、該電位差に基づいて所定の抗酸化性物質の抗酸化強度値に換算する演算手段と、
該演算手段により求めた抗酸化強度換算値を出力する出力手段と、を有することを特徴とする抗酸化強度測定装置。
【請求項7】
前記所定の抗酸化性物質が、アスコルビン酸、カロテノイド類、ポリフェノール類から選択された一種類の抗酸化性物質である、請求項6に記載の抗酸化強度測定方法。
【請求項8】
前記出力手段がモニタ及び/又はプリンタである、請求項6又は7に記載の抗酸化強度測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−66253(P2010−66253A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185579(P2009−185579)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(308008720)社団法人 京都微生物研究所 (1)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(308008720)社団法人 京都微生物研究所 (1)
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