説明

折り畳み椅子

【課題】リンクを有する折り畳み椅子において、重量化や大型化を招くことなく、折り畳み状態から自然に展開してしまうことを防止する。
【解決手段】折り畳み椅子は、座部13の下面に設けられたリンク取付座45と、リンク取付座45に回転自在に支持されたリンク24とを備えている。リンク取付座45には、弾性突片45Cと、スリット溝45Eとが形成されている。リンク24の根元側の外周部分には、リンク側突起24Eが形成されている。折り畳み椅子の折り畳み時には、リンク24が回転し、リンク側突起24Eが弾性突片45Cを押し下げてスリット溝45Eに嵌り込み、折り畳み椅子が折り畳み状態にロックされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に高齢者や身体障害者等が浴室内でシャワーを浴びる場合などに使用する折り畳み椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、浴室は狭いため、浴室内で使用される椅子として、不使用時に折り畳んでコンパクトにすることのできる折り畳み椅子がよく用いられている。特許文献1には、そのような折り畳み椅子が開示されている。
【0003】
図17に示すように、特許文献1に開示された折り畳み椅子は、上端部に背もたれ105が取り付けられるとともに座部104を支持する水平部を有する前脚(以下、第1フレーム部材という)102と、第1フレーム部材102の水平部の略中間位置に回転自在に軸支された後脚(以下、第2フレーム部材という)103と、第1フレーム部材102および第2フレーム部材103に支持される座部104と、を備えている。左右の第1フレーム部材102間には左右に延びる補強杆261が架け渡され、左右の第2フレーム部材103間であって第1フレーム部材102の補強杆261よりも後方斜め下側には、第2フレーム部材103の補強杆136が架け渡されている。座部104の後方部分は、第1フレーム部材102の補強杆261に回転自在に支持されており、座部104はこの補強杆261を中心として上下方向に回転自在となっている。また、座部104の後端部分と第2フレーム部材103の補強杆136とは、リンク106を介して連結されている。
【0004】
上記折り畳み椅子を折り畳む際には、座部104の前端部を上方に持ち上げる。すると、座部104の後端部と第2フレーム部材103の補強杆136との間のリンク106が、座部104の後端部から下向きの力を受け、その力がリンク106から第2フレーム部材103に伝わり、第2フレーム部材103が押し下げられる。その結果、第1フレーム部材102と第2フレーム部材103とが接近するとともに、座部104が第1フレーム部材102の補強杆261を中心として回転し、起立状態となる。このように、この種の折り畳み椅子では、座部104と第2フレーム部材103とに別々に力を加えなくても、座部104のみに力を加えることによって、容易に折り畳むことができる。
【0005】
ところで、折り畳み椅子では、折り畳んだ状態で自立等させた際に、座部104の自重等によって自然に展開しないようにする必要がある。上記折り畳み椅子では、折り畳んだ状態では座部104およびリンク106がく字状に折り曲げられ、リンク106と座部104との連結点106aは、リンク106と第1フレーム部材102との連結点(補強杆261)と、リンク106と第2フレーム部材103との連結点(補強杆136)とを結ぶ線分よりも、前側に位置するようになっている。これにより、折り畳み椅子が折り畳み状態から独りでに展開することを抑制している。
【特許文献1】特開2007−37608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記折り畳み椅子では、上記連結点106aが上記線分よりも後側に移動すると座部104の自重によって独りでに展開するので、座部104に対してわずかな力が加わっただけで、自然に展開してしまうおそれがある。一方、独りでに展開することを積極的に防止するため、折り畳み椅子に、別途新たな部材を追加してロック機構を形成する方法も考えられる。しかし、そのようなロック機構を追加すると、部品点数の増加を招き、折り畳み椅子の重量化や大型化を招く要因となる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リンクを有する折り畳み椅子において、重量化や大型化を招くことなく、折り畳み状態から自然に展開してしまうことを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る折り畳み椅子は、前脚部と前記前脚部の上端から後方に延びる水平部とを有する左右一対の第1フレーム部材と、後脚部と前記後脚部の上端から前方に延びる水平部とを有し、前記第1フレーム部材に対して水平軸周りに回転自在に連結された左右一対の第2フレーム部材と、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材のうちの一方のフレーム部材に対して水平軸周りに回転自在に連結され、前記第1フレーム部材の水平部と前記第2フレーム部材の水平部とに支持される座部と、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材のうちの他方のフレーム部材から左右方向に延びるリンクバーと、前記座部の裏側に設けられたリンク取付座と、一端が前記リンクバーに対して水平軸周りに回転自在に連結され、他端が前記リンク取付座に対して水平軸周りに回転自在に取り付けられ、前記一方のフレーム部材に対する前記座部の回転と、前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材との間の相対的な回転とを連動させるリンクと、を備えた折り畳み椅子であって、前記リンクの他端側には、前記リンクの他端側が水平軸周りに回転する際に前記水平軸周りに旋回移動するリンク側突起が設けられ、前記リンク取付座には、少なくとも左右方向に延びる溝と、前記溝と前後方向に隣り合う弾性突起とが形成され、折り畳み時に前記リンクの他端側が回転し、前記リンク側突起が前記弾性突起を押し下げて前記溝に嵌り込むことによって、折り畳み状態にロックされるものである。
【0009】
本発明に係る他の折り畳み椅子は、前脚部と前記前脚部の上端から後方に延びる水平部とを有する左右一対の第1フレーム部材と、後脚部と前記後脚部の上端から前方に延びる水平部とを有する左右一対の第2フレーム部材と、前記第1フレーム部材の水平部と前記第2フレーム部材の水平部とに支持される座部と、前記左右の第1フレーム部材における前記前脚部から左右方向に延びるリンクバーと、前記第1フレーム部材の水平部における前後方向の中途部分と前記第2フレーム部材の水平部における前後方向の中途部分とを、互いに水平軸周りに回転自在に連結する第1連結部と、前記第2フレーム部材の水平部の前端部と前記座部とを、互いに水平軸周りに回転自在に連結する第2連結部と、前記座部の裏側かつ前記第2連結部よりも前側に設けられたリンク取付座と、一端が前記リンクバーに対して水平軸周りに回転自在に連結され、他端が前記リンク取付座に対して水平軸周りに回転自在に連結されたリンクと、を備えた折り畳み椅子であって、前記リンクの他端側には、前記リンクの他端側が水平軸周りに回転する際に前記水平軸周りに旋回移動するリンク側突起が設けられ、前記リンク取付座には、少なくとも左右方向に延びる溝と、前記溝と前後方向に隣り合う弾性突起とが形成され、折り畳み時に前記リンクの他端側が回転し、前記リンク側突起が前記弾性突起を押し下げて前記溝に嵌り込むことによって、折り畳み状態にロックされるものである。
【0010】
上記各折り畳み椅子を折り畳むと、リンクの他端側がリンク取付座に支持されながら回転し、その際に、リンク側突起がリンク取付座の弾性突片を押し下げることによって溝に嵌り込む。これにより、折り畳み椅子が折り畳み状態にロックされる。このように、上記各折り畳み椅子によれば、リンクおよびリンク取付座によってロック機構が構成されるので、別途新たなロック機構を設けることが不要となり、重量化や大型化を招くことなく、折り畳み状態からの自然な展開を防止することができる。
【0011】
前記リンク取付座および前記リンクは、プラスチック製であってもよい。
【0012】
このことにより、折り畳み椅子の軽量化を促進することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リンクを有する折り畳み椅子において、重量化や大型化を招くことなく、折り畳み状態からの自然な展開を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図6に示すように、本発明の実施形態に係る折り畳み椅子10は、左右一対の第1フレーム部材41と、左右一対の第2フレーム部材42と、これら第1フレーム部材41および第2フレーム部材42によって下方から支持される座部13と、背もたれ14と、肘掛け15とを備えている。
【0015】
図5に示すように、第1フレーム部材41は、前脚部11と、前脚部11の上端から後方へ延びる水平部16とを備えている。左右の水平部16の後端には、平面視逆U字状の背もたれ枠17が設けられている(図2参照)。本実施形態では、左右の第1フレーム部材41,41と背もたれ枠17とは一体化されており、後述の滑り止めキャップ11Eおよび下部パイプ11Bを除いて、1本のアルミニウム製パイプによって形成されている。
【0016】
図5に示すように、前脚部11は、下部パイプ11Bと、下部パイプ11Bに挿入された上部パイプ11Aとを有している。上部パイプ11Aには、半径方向外向きに突出する挿通ピン11Dが設けられている。挿通ピン11Dは、上部パイプ11Aの内部から外側に付勢されている。下部パイプ11Bには、複数の止め孔11Cが形成されており、これら複数の止め孔11Cのいずれかに挿通ピン11Dが挿入される。折り畳み椅子10では、これら挿通ピン11Dおよび止め孔11Cによって、下部パイプ11Bに対する上部パイプ11Aの挿入量が調整自在となっており、これにより、前脚部11は長さ調整が可能となっている。すなわち、挿通ピン11Dを上部パイプ11A内に押し込みつつ、上部パイプ11Aに対して下部パイプ11Bをスライドさせ、挿通ピン11Dが係合される止め孔11Cを適宜変更することにより、前脚部11の長さを調整することができる。さらに、下部パイプ11Bの下端には、ゴム製の滑り止めキャップ11Eが取り付けられている。この滑り止めキャップ11Eにより、前脚部11が床上で滑ることが抑制される。
【0017】
図4に示すように、左右の第1フレーム部材41の水平部16の前側部分には、左右方向に延びる支持バー19が架け渡されている。図1に示すように、左側の前脚部11の上側部分と支持バー19の左側部分とには、L字状のリンクバー18が架け渡されている。詳しくは、左側のリンクバー18の左端は、左側の前脚部11の上側部分に接合され、左側のリンクバー18の上端は、支持バー19の中間位置よりも左側の部分に接合されている。同様に、右側の前脚部11の上側部分と支持バー19の右側部分とにも、L字状のリンクバー18が架け渡されている。
【0018】
図6に示すように、第2フレーム部材42は、後脚部12と、後脚部12の上端から前方に延びる水平部21とを備えている。本実施形態では、左右の後脚部12および水平部21は、それぞれ一体化されており、1本のアルミニウム製パイプによって形成されている。すなわち、各第2フレーム部材42は、1本のパイプによって形成されている。図4に示すように、左右の水平部16の後側部分には、左右方向に延びる後側支持バー22が架け渡されている。また、図4および図6に示すように、左右の水平部16の後端部分には、左右方向に延びるロックバー20が架け渡されている。
【0019】
図4に示すように、座部13の下面における左右の両端部分には、回動座13Aが取り付けられている。この回動座13Aには、第2フレーム部材42の水平部21の前端部分が回転自在に支持されている。したがって、第2フレーム部材42は、回動座13Aを介して座部13に対して回転自在となっている。第1フレーム部材41の水平部16の中途部分と、第2フレーム部材42の水平部21の中途部分とは、回転軸23によって水平軸周りに回転自在に連結されている。
【0020】
図5に示すように、後脚部12も前脚部11と同様、長さ調整が自在となっている。後脚部12も、下部パイプ12Bと、下部パイプ12Bに挿入された上部パイプ12Aとを有している。上部パイプ12Aには、半径方向外向きに突出する挿通ピン12Dが設けられ、挿通ピン12Dは、上部パイプ12Aの内部から外側に付勢されている。下部パイプ12Bには、複数の止め孔12Cが形成されている。これら挿通ピン12Dおよび止め孔12Cによって、下部パイプ12Bに対する上部パイプ12Aの挿入量が調整自在となっており、これにより、後脚部12は長さ調整が可能となっている。また、下部パイプ12Bの下端には、ゴム製の滑り止めキャップ12Eが取り付けられている。この滑り止めキャップ12Eにより、後脚部12が床上で滑ることが抑制される。
【0021】
座部13は、その上面が座面として使用されるものである。図4に示すように、座部13の下面の左右前端部には、リンク取付座45がそれぞれ設けられている。座部13の下面における前後方向の中間部よりも前側の部分には、左右一対の前側支持座13Dが設けられている。また、座部13の下面における前後方向の中間部よりも後側には、左右一対の後側支持座13Eが設けられている。折り畳み椅子10を展開した状態(着座可能な状態)では、前側支持座13Dは第1フレーム部材41の前側支持バー19上に支持され、後側支持座13Eは第2フレーム部材42の後側支持バー22上に支持される。それにより、座部13は、前側支持座13Dおよび前側支持バー19を介して左右の第1フレーム部材41に安定して支持されるとともに、後側支持座13Eおよび後側支持バー22を介して左右の第2フレーム部材42に安定して支持される。なお、座部13の材料は特に限定されないが、本実施形態では、座部13はプラスチックのブロー成形品である。
【0022】
図2に示すように、背もたれ14は、背もたれ枠17の上部に取り付けられている。背もたれ14には、把持孔14Aが形成されている。利用者は、この把持孔14Aに指を挿入して背もたれ14を把持することによって、折り畳み椅子10を片手で持ち上げたり、移動させることが可能となっている。背もたれ14の材料は何ら限定されないが、本実施形態では、背もたれ14はプラスチックのブロー成形品である。
【0023】
図1および図5に示すように、肘掛け15は、背もたれ枠17の左右両側にそれぞれ取り付けられている。肘掛け15は、背もたれ枠17に固定されていてもよく、また、背もたれ枠17に対して回転自在に取り付けられていてもよい。肘掛け15を背もたれ枠17に回転自在に取り付けた場合、折り畳み椅子10に使用者が座る際に、肘掛け15を上方に跳ね上げておくことによって、肘掛け15が着座動作の邪魔にならないようにすることができる。また、折り畳み椅子10を折り畳む際に、予め肘掛け15を上方に跳ね上げておくことによって、肘掛け15が折り畳み動作の邪魔にならないようにすることができる。
【0024】
図12は、座部13の下面に取り付けられたリンク取付座45の斜視図である。図12に示すように、リンク取付座45の左右両側部分には、略円筒状の軸受部45Bが形成されている。軸受部45Bの内側には、円孔45Aが形成されている。左右の軸受部45B,45Bの間には、弾性突片45Cが設けられている。弾性突片45Cは、左辺と後辺と右辺とが切り欠かれたような片持ちの略板状に形成されている。弾性突片45Cは、下方に突出する突起45Dを有している。弾性突片45Cの後方には、左右方向に延びるスリット溝45Eが形成されており、弾性突片45Cとスリット溝45Eとは前後に並んでいる。本実施形態では、リンク取付座45はプラスチック製である。ただし、リンク取付座45をプラスチック以外の材料で形成することも勿論可能である。
【0025】
図13に示すように、リンク取付座45とリンクバー18との間には、リンク24が架け渡されている。リンク24は、第2フレーム部材42に対する座部13の回転と、第2フレーム部材42に対する第1フレーム部材41の回転とを連動させるものである(図8参照)。
【0026】
図10はリンク24の平面図、図11はリンク24の側面図である。図10および図11に示すように、リンク24の根元部24Aは半円筒状に形成されており、根元部24Aの内側には、リンク軸46(図13参照)を挿通させる円孔24Bが形成されている。なお、リンク軸46は、リンク24の根元部24Aを水平軸周りに回転自在に支持する軸であり、リンク取付座45の軸受部25Bに支持される。リンク24の根元部24Aの外周側には、左右一対のリンク側突起24Eが形成されている。
【0027】
図10に示すように、リンク24の先端側には、リンクバー係止部24Cと、リンクバー保持部24Dとが設けられている。リンクバー係止部24Cおよびリンクバー保持部24Dのそれぞれは、平面視において先端側を切り欠いたような略円筒状に形成されている。リンクバー係止部24Cの内側には、リンクバー18の外径に略等しい内径を有する略円孔24C1が形成され、リンクバー保持部24Dの内側には、リンクバー18の外径に略等しい内径を有する略円孔24D1が形成されている。ただし、上述の通り、リンクバー係止部24Cおよびリンクバー保持部24Dの先端側は切り欠かれたような形状に形成されているので、これらの略円孔24C1,24D1は連続している。リンク24の先端部は、先端側に向かって開放された形状に形成されている。
【0028】
本実施形態では、リンク24はプラスチック製である。ただし、リンク24をプラスチック以外の材料で形成することも可能である。リンク24の横断面形状は、上下対称かつ左右対称の形状に形成されている。これにより、リンク24は、引張応力にも強く、圧縮応力にも強くなっている。また、リンク24の内部には、リブ24Fが設けられており、このリブ24Fによっても強度の向上が図られている。ただし、リンク24の具体的形状は特に限定されず、上下対称でなくてもよく、左右対称でなくてもよい。また、リブ24Fは必ずしも必要ではない。
【0029】
図14(a)は、折り畳み椅子10の座部13の後端部を拡大した断面図である。座部13の後縁における左右方向の中央部には、下側が窪んだ凹部が形成されており、この凹部の内部に把手25が設けられている。把手25の下方には、操作ハンドル26が設けられている。
【0030】
操作ハンドル26は、左右一対の係合爪27と、左右の係合爪27の先端部間(前端部間)に架け渡された断面横L字状の連結棒28と、後端部間に架け渡された丸棒状の掴みバー29とからなっている。操作ハンドル26における各係合爪27の外側面の先端部には、軸30が設けられている。操作ハンドル26は、軸30が座部13の後縁部下部に枢着されることにより、掴みバー29が把手25に接近または離間するように軸30を中心に上下方向へ回動できるように取り付けられている。また、掴みバー29は、把手25と平行に配置され、座部13の後縁よりも後方に突出しないように配置されている。
【0031】
係合爪27の後端部上面と、座部13の後縁部下面の凹部の天面との間には、ばね31が設けられている。ばね31は、掴みバー29が把手25から離れる方向(下方向)に操作ハンドル26を常時付勢している。そして、ばね31に付勢された操作ハンドル26は、係合爪27をロックバー20に係合させている。
【0032】
次に、折り畳み椅子10の折り畳み方法について説明する。
【0033】
折り畳み椅子10の折り畳みは、座部13の後縁を掴んで持ち上げることによって行われる。座部13の後縁を持ち上げると、座部13の上面が前側となるように、回動座13Aを中心として座部13が後ろ上がりに回転する。すると、前脚部11がリンク24を介して座部13から後方斜め下向きの力を受け、第1フレーム部材41が回転軸23を中心として第2フレーム部材42に対して回転する。その結果、前脚部11と後脚部12とが接近し、折り畳み椅子10は折り畳まれる。
【0034】
図14(b)および(c)は、折り畳み時における座部13の後縁部を拡大した断面図である。掴みバー29は把手25と平行に配置されているため、折り畳み時において、把手25と掴みバー29とを握り込むようにして掴むことができる(図14(b)参照)。その結果、把手25を握り込むという自然な動作でありながら、手のひら全体で力を加えて掴みバー29を動かすことができる。したがって、握力の小さい者、例えば高齢者等であっても、掴みバー29の操作を楽に行うことができる。
【0035】
上述のように、把手25とともに掴みバー29を掴めば、掴みバー29の移動に伴い、ばね31の付勢力に抗して操作ハンドル26の全体が軸30を中心に回転し、係合爪27とロックバー20との係合が解除される。このとき、左右の係合爪27は、連結棒28と掴みバー29とで繋がれているため、掴みバー29を動かすことにより、左右の係合爪27が連動して動き、ロックバー20に対するそれぞれの係合または解除の動作を一度で確実に行うことができる。
【0036】
そして、係合爪27とロックバー20との係合が解除された後、使用者は、把手25を握り込んだまま、座部13の後縁を掴んで持ち上げる(図14(c)参照)。すると、リンク24により、座部13に連動して前脚部11が後脚部12に接近し、折り畳み椅子10が折り畳まれる。
【0037】
上記折り畳み動作は、座部13の後縁部を片手で掴んで持ち上げるだけで実行することができ、両手を使う必要がない。すなわち、座部13の後縁部を掴んで持ち上げると、第1フレーム部材41および第2フレーム部材42は、それぞれの自重によって、前脚部11および後脚部12が接近するように回転する。
【0038】
図15(a)および(b)に示すように、折り畳み椅子10が折り畳まれると、リンク24の根元部24Aがリンク軸46を中心として回転する。そして、所定の折り畳み位置になると、リンク24のリンク側突起24Eがリンク取付座45の弾性突片45Cを押し下げ、リンク取付座45のスリット溝45Eに嵌り込む。リンク取付座45の弾性突片45Cには突起45Dが設けられているので、リンク側突起24Eがスリット溝45Eにいったん嵌り込むと、ある程度大きな力を加えない限り、リンク側突起24Eが弾性突片45Cの突起45Dを乗り越えてスリット溝45Eから外れることはない。そのため、リンク側突起24Eがスリット溝45Eに嵌り込むと、リンク24の逆回転が規制され、折り畳み椅子10は所定の折り畳み状態にロックされることになる。なお、所定の折り畳み状態とは、図7および図8に示す状態であり、前脚部11と後脚部12とがある程度大きく離れた状態である。
【0039】
図8に示すように、第1フレーム部材41の水平部16と第2フレーム部材42の水平部21とが回転自在に連結されているため、折り畳み状態における折り畳み椅子10では、前脚部11の下端部(キャップ11E)と後脚部12の下端部(キャップ12E)とが、間を開けて前後方向に並ぶように配置される。このため、本実施形態の折り畳み椅子10では、折り畳んだ状態において、前脚部11および後脚部12を床面に載置することによって自立させることができる。そして、上述のように、リンク24とリンク取付座45との係合によって、自立した状態でロックすることができる。
【0040】
折り畳んだ状態の折り畳み椅子10は、座部13の把手25を掴んで持ち運びすることができる。つまり、折り畳んだ状態の折り畳み椅子10にあっては、背もたれ14を持つ場合に比べ、座部13の把手25から前脚部11あるいは後脚部12の下端までの長さが短いため、前脚部11あるいは後脚部12が床に着きづらい。したがって、力のない者、例えば高齢者等であっても、前脚部11あるいは後脚部12が床に着かないように持ち上げやすいので、前脚部11あるいは後脚部12を床に引きずりながら持ち運びしなくてもすむ。
【0041】
持ち上げた折り畳み椅子10を床に置く際には、場合によっては、わずかながら折り畳み椅子10に衝撃が加わる。しかし、本実施形態の折り畳み椅子10は、リンク24およびリンク取付座45によって折り畳み状態にロックされるので、そのような衝撃が加わったとしても、折り畳み状態から自然に展開することはない。
【0042】
折り畳み椅子10を折り畳んだ状態から展開する場合には、上述の折り畳み動作と逆の動作を行えばよい。なお、前脚部11および後脚部12のいずれか一方の下端部を床に押し当てた状態で、座部13の後縁部を握ったまま下方に押し下げると、リンク24およびリンク取付座45によるロックが解除されるとともに、リンク24によって前脚部11と後脚部12とが離れ、座部13は水平な状態となる。
【0043】
ところで、例えば、上記折り畳み状態のまま折り畳み椅子10を横に倒し、前脚部11または後脚部12に上方から大きな力を加えると、第1フレーム部材41および第2フレーム部材42は、前脚部11および後脚部12がより接近する方向に回転する。その結果、リンクバー18はリンク取付座45からより遠ざかる方向に移動しようとし、リンク24には、比較的大きな引張応力が加えられることになる。しかし、本実施形態では、リンク24のリンクバー係止部24Cの先端側が開放されているので、前脚部11および後脚部12がより接近する方向に回転すると、リンクバー18はリンクバー係止孔24C1から先端側に移動し、リンクバー係止部24Cから外れる。したがって、リンク24に過大な引張応力が加わることはなく、リンク24の破損は防止される。
【0044】
また、リンク24のリンクバー係止部24Cの先端側には、リンクバー保持部24Dが設けられている。そのため、リンクバー18は、リンクバー係止部24Cから外れたとしても、リンクバー保持部24D内に留まり、リンク24自体から外れることがない。
【0045】
なお、前脚部11の下端部と後脚部12の下端部とが当接すると、前脚部11と後脚部12とのそれ以上の接近は阻止される。したがって、リンクバー保持部24Dは、前脚部11の下端部と後脚部12の下端部とが当接するときのリンクバー18の位置まで、リンクバー18を保持するように形成されていてもよい。
【0046】
リンクバー保持部24D内に保持されたリンクバー18をリンクバー係止部24C内に復帰させる動作は、折り畳み椅子10を折り畳んだ状態から展開状態(使用状態)にしてから行われる。すなわち、リンクバー18がリンクバー保持部24D内に保持された状態であっても、リンク24の根元側はリンク取付座45に対して回転自在であり、リンク24の先端側はリンクバー18に対して回転自在である。そのため、リンク24は座部13および前脚部11に対して回転自在である。したがって、通常の展開動作と同様にして、折り畳み椅子10を折り畳み状態から展開することができる。
【0047】
折り畳み椅子10を展開した後は、座部13に上方から力を与える。例えば、座部13を上方から手で押したり、あるいは、腰掛けることによって座部13に体重を加えてもよい。その結果、座部13は上方から押され、リンク取付座45を介してリンク24にも上方から力が加えられる。すると、リンク24がリンクバー18上を滑り、リンクバー18がリンクバー保持部24Dからリンクバー係止部23Dに移動する。その結果、折り畳み椅子10は、リンクバー18がリンクバー係止部23D内に位置する正規の状態に復帰する。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る折り畳み椅子10によれば、折り畳んだときに、リンク24のリンク側突起24Eがリンク取付座45のスリット溝24Eに係合し、ロックされる。そのため、折り畳んだ状態から自然に展開することが防止される。本実施形態では、リンク24およびリンク取付座45がロック機構を構成しているので、ロック機構を構成するために別途新たな部品を追加する必要はない。そのため、折り畳み椅子10の重量化や大型化を招くことなく、ロック機構を実現することができる。
【0049】
本実施形態では、リンク取付座45およびリンク24は、いずれもプラスチック製である。そのため、折り畳み椅子10の軽量化を促進することができる。
【0050】
《変形例》
なお、本発明において、リンク取付座45の弾性突起は、弾性突片45Cに限定されるわけではない。リンク取付座45の弾性突起は、折り畳み時のリンク24の回転に伴い、リンク側突起24Eに押されて変形することによってリンク側突起24Eを溝45Eに案内する一方、リンク側突起24Eが溝45Eに嵌り込んだ後は弾性力によって復元し、リンク側突起24Eの逆方向の移動を規制するものであればよく、その具体的形状としては種々の変形例があり得る。
【0051】
また、リンク24の具体的形状は、前記実施形態のものに限定されない。前記実施形態では、リンク24のリンクバー保持部24Dは、リンクバー18を挟み込むものであった。しかし、リンクバー保持部24Dは、リンクバー18を挟み込まないものであってもよい。図16に示すように、リンクバー係止部23Dの先端側が延長されることにより、リンクバー保持部24Dが形成されていてもよい。このリンクバー保持部24Dは、リンクバー18の両側を囲むことにより、リンクバー18の脱落を防止するものである。図示は省略するが、リンクバー保持部24Dの先端側は、開放されていなくてもよい。例えば、図16に示すリンクバー保持部24Dにおいて、左右の先端部同士が接続されていてもよい。
【0052】
前記実施形態に係る折り畳み椅子10は、座部13の上面が前側を向くように折り畳まれるものであった。言い換えると、折り畳まれた状態において、座部13の前端部が後端部よりも下方に位置するものであった。しかし、本発明は、前記特許文献1に開示されている折り畳み椅子のように、座部13の上面が後側を向くように折り畳まれるものであってもよい。すなわち、折り畳まれた状態において座部13の前端部が後端部よりも上方に位置するような折り畳み椅子に対して、本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明は、浴室等において使用される折り畳み椅子について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】使用状態の折り畳み椅子の正面図である。
【図2】使用状態の折り畳み椅子の背面図である。
【図3】使用状態の折り畳み椅子の平面図である。
【図4】使用状態の折り畳み椅子の裏面図である。
【図5】使用状態の折り畳み椅子の側面図である。
【図6】使用状態の折り畳み椅子の断面図である。
【図7】折り畳み状態の折り畳み椅子の正面図である。
【図8】折り畳み状態の折り畳み椅子の断面図である。
【図9】前脚部と後脚部とが過剰に接近したときの折り畳み椅子の断面図である。
【図10】リンクの平面図である。
【図11】リンクの側面図である。
【図12】リンク取付座の斜視図である。
【図13】リンクの斜視図である。
【図14】(a)〜(c)は、折り畳み椅子の折り畳み時の操作を示す断面図である。
【図15】(a)はロック解除時のリンク側突起および弾性突片の断面図、(b)はロック状態のリンク側突起および弾性突片の断面図である。
【図16】変形例に係るリンクの平面図である。
【図17】従来の折り畳み椅子の折り畳み状態の側面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 折り畳み椅子
11 前脚部
12 後脚部
13 座部
13A 回動座(第2連結部)
14 背もたれ
15 肘掛け
16 第1フレーム部材の水平部
18 リンクバー
21 第2フレーム部材の水平部
23 回転軸(第1連結部)
24 リンク
24E リンク側突起
41 第1フレーム部材
42 第2フレーム部材
45 リンク取付座
45C 弾性突片(弾性突起)
45E スリット溝(溝)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前脚部と前記前脚部の上端から後方に延びる水平部とを有する左右一対の第1フレーム部材と、
後脚部と前記後脚部の上端から前方に延びる水平部とを有し、前記第1フレーム部材に対して水平軸周りに回転自在に連結された左右一対の第2フレーム部材と、
前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材のうちの一方のフレーム部材に対して水平軸周りに回転自在に連結され、前記第1フレーム部材の水平部と前記第2フレーム部材の水平部とに支持される座部と、
前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材のうちの他方のフレーム部材から左右方向に延びるリンクバーと、
前記座部の裏側に設けられたリンク取付座と、
一端が前記リンクバーに対して水平軸周りに回転自在に連結され、他端が前記リンク取付座に対して水平軸周りに回転自在に取り付けられ、前記一方のフレーム部材に対する前記座部の回転と、前記第1フレーム部材と前記第2フレーム部材との間の相対的な回転とを連動させるリンクと、
を備えた折り畳み椅子であって、
前記リンクの他端側には、前記リンクの他端側が水平軸周りに回転する際に前記水平軸周りに旋回移動するリンク側突起が設けられ、
前記リンク取付座には、少なくとも左右方向に延びる溝と、前記溝と前後方向に隣り合う弾性突起とが形成され、
折り畳み時に前記リンクの他端側が回転し、前記リンク側突起が前記弾性突起を押し下げて前記溝に嵌り込むことによって、折り畳み状態にロックされる折り畳み椅子。
【請求項2】
前脚部と前記前脚部の上端から後方に延びる水平部とを有する左右一対の第1フレーム部材と、
後脚部と前記後脚部の上端から前方に延びる水平部とを有する左右一対の第2フレーム部材と、
前記第1フレーム部材の水平部と前記第2フレーム部材の水平部とに支持される座部と、
前記左右の第1フレーム部材における前記前脚部から左右方向に延びるリンクバーと、
前記第1フレーム部材の水平部における前後方向の中途部分と前記第2フレーム部材の水平部における前後方向の中途部分とを、互いに水平軸周りに回転自在に連結する第1連結部と、
前記第2フレーム部材の水平部の前端部と前記座部とを、互いに水平軸周りに回転自在に連結する第2連結部と、
前記座部の裏側かつ前記第2連結部よりも前側に設けられたリンク取付座と、
一端が前記リンクバーに対して水平軸周りに回転自在に連結され、他端が前記リンク取付座に対して水平軸周りに回転自在に連結されたリンクと、
を備えた折り畳み椅子であって、
前記リンクの他端側には、前記リンクの他端側が水平軸周りに回転する際に前記水平軸周りに旋回移動するリンク側突起が設けられ、
前記リンク取付座には、少なくとも左右方向に延びる溝と、前記溝と前後方向に隣り合う弾性突起とが形成され、
折り畳み時に前記リンクの他端側が回転し、前記リンク側突起が前記弾性突起を押し下げて前記溝に嵌り込むことによって、折り畳み状態にロックされる折り畳み椅子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の折り畳み椅子において、
前記リンク取付座および前記リンクは、プラスチック製である折り畳み椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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