説明

折れ戸装置

【課題】開口部の開放時に戸体同士の衝突、接触及び擦れ合うことを防止し、開放時に開口部を広くできるとともに、取り付けが容易であり、見栄えの良い緩衝部を有する折れ戸装置を提供する。
【解決手段】建物の開口部に設置された枠体と、枠体に折り畳みにより開閉可能に取り付けられた折れ戸とを備え、折れ戸は複数の戸体をヒンジを介して連結されており、戸体は框に戸板が取り付けられて構成され、框の端面に緩衝部を有する框キャップが取り付けられ、開口部の開放時に、緩衝部が隣接する戸体の框が対向する位置に配置される折れ戸装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、框キャップを取り付けた折れ戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
折れ戸装置とは、複数の戸体がヒンジで連結されて構成された折れ戸により、開口部を開閉する装置である。戸体をヒンジにより交互に方向を変えて折れ戸を折り畳むことにより開口部を開放し、折り畳まれた折れ戸を伸ばすことで開口部を閉鎖する。開口部の開放時(以下、単に「開放時」ということがある。)には、折り畳んだ戸体が開口部に直交して端に寄るため、通常の窓とは異なり開口部を広くとることができる。また、通常のシャッターと異なり、戸体の戸板をガラスなどで構成できるため、外観的に優れており、閉鎖時にも採光可能であり、内部を見ることもできる。そのため、店舗の出入り口や、住宅で窓を大きく開放したい場合などに使用されている。
【0003】
戸体は、框にガラスなどの戸板をはめ込んで構成される。この框は、アルミニウム合金の押出形材などであり、危険防止、ごみの侵入防止及び美観的な面から端面を覆う框キャップが取り付けられている。また、折れ戸は、開放により戸体が折り重なるため、開放時に隣接する戸体が衝突したり、開放後に隣接する戸体が接触または擦れ合うことで、音が発生したり傷が付いたりする。そのため、隣接する戸体が接触する位置に緩衝部品が取り付けられている。この緩衝部品は、樹脂などの通常使用されている緩衝部材を円柱または円錐状などに形成して適度な厚みを持たせたものであり、ネジ等で戸体表面の隣接する戸体と接触する位置に取り付けることで、戸体同士の直接の接触を防止することが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この緩衝部品は、戸体とネジ等の頭部の間に緩衝部品を固定するための厚さが必要であり、加えて音の発生防止や緩衝のためにネジの頭部が、覆われたうえで適度に緩衝部材の奥に位置する必要がある。そのため、緩衝部品が厚くなり、折れ戸を開放した時に隣接する戸体の間隔が緩衝部品の厚さだけ広くなる。これにより、折り畳んだ折れ戸の幅が大きくなり、開口部が狭くなるという問題があった。また、緩衝部品の取り付けには、戸体にネジ穴を開け、そこに緩衝部品をネジ止めする作業が必要であり、戸体枚数によっては1基の折れ戸装置でも多くの緩衝部品を取り付ける場合があるため、この作業負担が大きいという問題があった。さらに、緩衝部品が戸体から突出しているため、見栄えが悪いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題を解決するため、開放時に開口部を広くできるとともに、取り付けが容易であり、見栄えの良い緩衝部を有する折れ戸装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
請求項1の発明によれば、建物の開口部に設置された枠体(2)と、枠体に折り畳みにより開閉可能に取り付けられた折れ戸(3)とを備え、折れ戸は複数の戸体(4、4、…)をヒンジ(5、5、…)を介して連結されており、戸体は框(8)に戸板(9)を取り付けて構成され、框の端面に緩衝部(10b)を有する框キャップ(10)が取り付けられ、開口部の開放時に、緩衝部が隣接する戸体の框が対向する位置に配置されることを特徴とする折れ戸装置(1)を提供することにより前記課題を解決する。
【0008】
請求項2の発明によれば、緩衝部(10b)が、隣接する戸体(4、4、…)の框(8、8、…)が対向する位置の上端及び下端に配置されることを特徴とする請求項1に記載の折れ戸装置(1)を提供することにより前記課題を解決する。
【0009】
請求項3の発明によれば、緩衝部(10b)が、隣接する戸体(4、4、…)の框(8、8、…)が対向する位置において、一方の框にのみ配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の折れ戸装置(1)を提供することにより前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、框キャップが緩衝部を有するため、この緩衝部を隣接する戸体の框が対向する位置に配置して框キャップを取り付けることで、開放時に隣接する戸体が衝突したり、開放後に隣接する戸体が接触または擦れ合うことで、音が発生したり傷が付いたりすることを防ぐことができる。そのため、独立して緩衝部品をネジなどにより取り付ける必要がなく、従来ネジ等で取り付けていたために必要だった厚さが不要となり、その分の緩衝部の厚さを薄くすることができる。これにより隣接する戸体の間隔が狭くなり、開放した時に開口部を広くすることができる。また、緩衝部の取り付けが框キャップを取り付けることと兼ねられるため、作業負担を軽減することができ、独立して緩衝部材を使用しないことで部品も削減できるため、生産費を低減することができる。さらに、緩衝部は框の端部に配置され、厚さも薄く大きさも小さくすることができるため、見栄えが向上し、そのため建物の外観を損なわずに使用することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、戸板の大きさなどにより一箇所に緩衝部を配置することでは他の箇所において戸板が接触するような場合であっても、緩衝部が戸体の框が対向する位置の上端及び下端に配置されることで戸体の接触を確実に防止することができる。そのため、上述した請求項1の発明における効果を確実に得つつ、緩衝部の機能を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、一方の框にのみ緩衝部を配置することにより、両方の框に緩衝部を配置するときに比べ、開放時の戸板の間隔が狭くなり、開放時の折れ戸の幅を小さくすることができる。これにより、請求項1または2に記載の発明の効果を得つつ、さらに開放時に開口部を広くすることができる。
【0013】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に示す実施形態に基づき、本発明による折れ戸装置の一例として、折れ戸が4枚の戸体からなる片開きの折れ戸装置の場合を説明するが、以下に説明するものは本発明の実施形態の一例であって、本発明はその要旨を超えない限り以下の説明になんら限定されるものではない。
【0015】
図1は、1つの実施形態にかかる本発明の折れ戸装置1を模式的に示した正面図である。折れ戸装置1が設置される建物の開口部に、少なくとも上枠2a及び縦枠2b、2bから構成される枠体2が取り付けられる。枠体2には、折れ戸3が備えられる。折れ戸3は、4枚の戸体4、4、…がヒンジ5を介して結合され、開口部を移動する端面(以下、戸先という。)には戸先部材6が、縦枠2bに固定される端面(以下、吊元という。)には、吊元部材7がそれぞれヒンジ(図示省略)を介して取り付けられている。ここでは、左側が吊元側、右側が戸先側であり、折れ戸3は吊元側への片開きとなっている。戸体4は、上框8a、縦框8b、8b及び下框8cからなる框8にガラスなどの戸板9がはめ込まれている。なお、図1においては、1枚の戸体4にのみ戸体各部8〜9の符号を付し、他の戸体4、4、…については符号を省略する。縦框8b、8bの端面には、開放時に隣接する戸体4、4、…の縦框8b、8bが対向する位置に緩衝部10bを配置して、緩衝部10bを有する框キャップ(図示省略)が取り付けられている。
【0016】
かかる構成により、開放時には戸先部材6に備えられた取っ手(図示省略)を用い、吊元側へ力を加える。これにより、戸体4、4、…が吊元側へ押されて吊元側の戸体4、4、…から順に、両端に備えたヒンジにより開口部と直交する方向へ向きを変える。これにより、折れ戸3は吊元側へ寄せられて折り畳まれるため、開口部は開放される。この開放時には、緩衝部10b、10b、…が接触することで、隣接する戸体4、4、…は接触しない。これにより、開放時に隣接する戸体4、4、…が衝突したり、開放後に隣接する戸体が接触または擦れ合うことで、音が発生したり傷が付いたりすることを防止することができる。
【0017】
開口部の閉鎖時には、戸先部材6に備えられた取っ手を用い、開口部側へ力を加える。これにより、戸体4、4、…が開口部側へ引かれて、戸先側の戸体4、4、…から順に、両端に備えたヒンジにより開口部に平行となるように向きを変えることで折れ戸は伸ばされ、開口部は閉鎖される。なお、図1では、緩衝部10bは、開放時に隣接する戸体において、対向する両方の框の上端及び下端に配置されているが、緩衝部10bは、対向する一方の框のみに配置されても良く、さらに上端または下端の一方にのみ配置されても良い。
【0018】
図2及び図3は、折れ戸装置1の横断面図である。図2は閉鎖状態を、図3は開放状態を示している。戸先部材6側から順に、第一の戸体4A、第一のヒンジ5A、第二の戸体4B、第二のヒンジ5B、…とすると(以下同じ)、折れ戸3は、4枚の戸体4A〜4Dがヒンジ5A〜5Cを介して結合されて構成されている。戸体4A〜4Dは、それぞれ框8(図1参照)に戸板9がはめ込まれて構成されている。図2及び図3では、横断面のため上框8a及び縦框8bが図示されている。なお、図2及び図3においては、1枚の戸体4Dにのみ各部8a、8b、9の符号を付し、他の戸体4A〜4Cについては符号を省略する。縦框8b、8bの端面には、開放時に隣接する戸体4、4、…の縦框8b、8bが対向する位置に緩衝部10bを配置して、緩衝部10bを有する框キャップ(図示省略)が取り付けられている。ヒンジ5A〜5Cは、それぞれヒンジ本体部の両端に支軸部が全長にわたって一体形成され、この支軸部の外面と、縦框8bの端面全長に形成された断面C字状の支軸受部の内面とが回転可能に嵌合して構成されている。折れ戸3の吊元では、戸体4Dの吊元側の端面はヒンジ11を介して吊元部材7に取り付けられ、吊元部材7は上枠2aに沿って移動可能な状態で縦枠2bに取り付けられている。折れ戸3の戸先では、戸体4Aの戸先側の端面はヒンジ12を介して戸先部材6に取り付けられ、戸先部材6は上枠2aに沿って移動し、開口部の閉鎖時に戸先側の縦枠2bと接合する。ヒンジ11は、支軸部が吊元部材7の戸先側の端面全長に一体形成され、この支軸部の外面と、縦框8bの端面全長に形成された断面C字状の支軸受部の内面とが回転可能に嵌合して構成されている。同様に、ヒンジ12は、支軸部が戸先部材6の吊元側の端面全長に一体形成され、この支軸部の外面と、縦框8bの端面全長に形成された断面C字状の支軸受部の内面とが回転可能に嵌合して構成されている。また、開口部の開閉時に上枠2aに沿って移動するヒンジ5B、戸先部材6及び吊元部材7には、後述するように上端に吊車13が取り付けられ、下端には下部レール(図示省略)に取り付けられる下部ガイド部材(図示省略)が取り付けられている。
【0019】
かかる構成により、開口部を図2の閉鎖状態から図3の開放状態にする場合の動作について説明する。上枠2a及び上框8aの所定の位置には、開放時にヒンジ5A、5Cを枠体2(図1参照)の外へ押す部品(図示省略。以下「けりだし部品」という。)が複数取り付けられている。戸先部材6に備えられた取っ手を用い、吊元側への力を加えると、折れ戸3は伸ばされた状態のまま吊元部材7が吊元側の縦枠2bの内部へ当たる位置まで移動する。この移動により、上框8aに取り付けられた第一のけりだし部品が、上枠2aの第一のけりだし部品が取り付けられた位置に到達すると、ヒンジ5Cは枠体2の外へ押され、さらに力を受けることで戸体4C及び戸体4Dは両端に備えたヒンジ5B、5C、11によりヒンジ5Cを外に押し出して、開口部と直交する方向へ折り畳まれる。これにより、ヒンジ5A、5B、戸体4A、4Bは、伸びた状態のまま吊元側へ移動する。移動により、上框8aに取り付けられた第二のけりだし部品が、上枠2aの第二のけりだし部品が取り付けられた位置に到達すると、ヒンジ5Aが枠体2(図1参照)の外へ押され、さらに力を受けることで戸体4A、4Bが両端に備えたヒンジ5A、5B、12によりヒンジ5Aを外に押し出して、開口部と直交する方向へ折り畳まれる。これにより、すべての戸体4A〜4Dが折り畳まれ、開口部の開放が完了する。この開放時には、緩衝部10b、10b、…が接触することにより、隣接する戸体4A〜4Dは接触しない。これにより、開放時に隣接する戸体4A〜4Dが衝突したり、開放後に隣接する戸体4A〜4Dが接触または擦れ合うことで、音が発生したり傷が付いたりすることを防止することができる。
【0020】
一方、開口部を図3の開放状態から図2の閉鎖状態にする場合は、戸先部材6に備えられた取っ手を用い、開口部側への力を加えると、戸体4Aの戸先部材6に接合された端面が戸先側へ引かれることで、ヒンジ5Aが上枠2a側へ移動し、戸体4A、4Bが開口部と平行となるように向きを変えることで、戸先部材6は開口部側に移動する。この時、ヒンジ5B、吊元部材7には、戸先側からの力に対して抵抗力を発生する部品(以下「抵抗部品」という。)が作用することにより、折れ戸3のヒンジ5Bから吊元側は戸先側に移動しない。戸体4A、4Bが伸び、さらに戸先部材6に戸先側への力を加えると、この力がヒンジ5Bに加わり、抵抗部品の抵抗力を超えることでヒンジ5Bが戸先方向へ移動する。これにより、ヒンジ5Bに接合された戸体4Cの端面が戸先側へ引かれることで、ヒンジ5Cが上枠2a側へ移動し、戸体4C、4Dが開口部と平行となるように向きを変えることで、戸先部材6は開口部側に移動する。この時、吊元部材7は、戸先側からの力に対して抵抗部品が作用することにより移動しない。戸体4C、4Dが伸び、さらに戸先部材6に戸先側への力を加えると、この力が吊元部材7に加わり、抵抗部品の抵抗力を超えることで吊元部材7が戸先方向へ移動し、戸先部材6が戸先側の縦枠2bと接合して開口部の閉鎖が完了する。なお、図2及び図3では、緩衝部10bは、開放時に隣接する戸体において、対向する両方の框に配置されているが、緩衝部10bは、対向する一方の框のみに配置されても良い。
【0021】
図4は、折れ戸装置1の縦断面図である。上枠2aは、下部が開放された中空に形成されており、この中空内部には上部レール15が両側面に設けられている。縦框8bの上端及び下端には、開放時に隣接する戸体4の縦框8bが対向する位置に緩衝部10b、10bを配置して、緩衝部10bを有する框キャップ10、10が取り付けられている。折れ戸3の戸先部材6、ヒンジ5B、吊元部材7(図2参照)の上端には水平ガイドローラ16を介して吊車13が取り付けられ、上部レール15に吊車13が乗せられることで、折れ戸3は吊持されている。床面には、中空に形成され上部が開放された下部レール14が、上部レール15と対向する位置に設置されている。吊車13が取り付けられている位置に対応して、折れ戸3の下端には下部ガイド部材17が取り付けられている。下部レール14の中空部にこの下部ガイド部材17がはめ込まれている。なお、下部レール14は、縦枠2b、2bの下端部間に下枠として備えられてもよい。かかる構成により、吊車13が上部レール15を移動し、下部ガイド部材17が下部レール14を移動することで、上述したように折れ戸3が枠体2(図1参照)内を移動するため、これにより折れ戸装置1は開口部を開閉可能となっている。なお、図4では、緩衝部10bは、開放時に隣接する戸体において、対向する縦框8bの上端及び下端に配置されているが、緩衝部10bは、対向する縦框8bの上端または下端の一方にのみ配置されても良い。
【0022】
図5には、緩衝部10bを有する框キャップ10が示されている。図5(a)は框キャップ10の斜視図、図5(b)は正面図、図5(c)は側面図、図5(d)は底面図である。以下、図5(b)、図5(c)及び図5(d)において、紙面の左右方向を幅、上下方向を高さ、垂直方向を厚さとして説明する。図5(a)のとおり、框キャップ10は、挿入部10a、緩衝部10b及び底部10cを備えている。挿入部10aは、框8(図1参照)の端面に挿入される部分である。緩衝部10bは、開放時に隣接する戸体4、4、…(図1参照)の框8が対向する位置に配置され、隣接する戸体4、4、…の接触を防止する部分である。底部10cは、挿入部10a及び緩衝部10bを結合し、框8の端面を覆う部分である。
【0023】
図5(b)に示すとおり、緩衝部10bは略長方形であり、接触面には面取りが施されている。この略長方形の面積及び厚さは、緩衝部10bが隣接する戸体4、4、…の衝突時に十分な緩衝が可能な大きさとされる。緩衝部10bの幅は、緩衝部10bを配置する框8(図1参照)の幅から決まるため、高さ及び厚さにより緩衝部10bの十分な緩衝能力が確保される。この高さ及び厚さは、使用する緩和材の性能などにより異なる。また、面取りは、緩衝部10bが戸体4、4、…(図1参照)の表面から出っ張るため、緩衝部10bに物をぶつけたり、引っ掛けたりした時に框キャップ10が外れないように力を逃がす役割をしている。
【0024】
図5(c)に示すとおり、挿入部10aは略U字形である。この略U字部が框の端面に挿入され、縦框8bと上框8aまたは下框8cとを固定するネジがこの略U字部の内部を通り、框8(図1参照)と一緒に框キャップが固定されるため、挿入部10aの高さはこのネジの位置に合わせて決定される。また、挿入部10aの幅及び厚さは、挿入される框8の内辺の長さ未満となるように設定される。
【0025】
図5(d)に示すとおり、底部10cは、取り付ける框8(図1参照)の端面を覆うように、端面の大きさに合わせた幅及び高さを有し、この幅及び高さを各辺とした中空の長方形の平面を形成する。底面には溝10dが設けられ、後述するように溝10dにひれが取り付けられる場合がある。厚さは、通常の框キャップ程度で良い。底部10cの平面は、挿入部10aと逆U字方向で結合している。緩衝部10bは、底部10cの側面と結合され、挿入部10aとの間には空間を有している。なお、挿入部10aを一体形成するうえにおいて、底部10cの平面を中空とすることで、金型を安くすることが可能である。
【0026】
かかる構成により、挿入部10aを、上框8a、縦框8bまたは下框8c(図1参照)の端面に挿入することで、框キャップ10が取り付けられる。この時、緩衝部10bは、開放時に隣接する戸体4、4、…(図1参照)の框8が対向する位置に配置される。緩衝部10bは、挿入部10aとの間に框8の一面を挿入することで框8の表面に配置される。これにより、開放時には緩衝部10b、10b、…が接触することで、隣接する戸体4、4、…は接触しないため、開放時に隣接する戸体4、4、…が衝突したり、開放後に隣接する戸体が接触または擦れ合うことで、音が発生したり傷が付いたりすることを防止することができる。なお、框キャップ10の材質としては、一般に緩衝材として使用されるものであれば良いが、製造面からABS樹脂、AES樹脂、ナイロン、ゴムなどが好ましい。また、挿入部10a、緩衝部10b及び底部10cの框キャップ10の各部は、一体成形であっても、別々に製造されて組み合わされても良い。別々に製造されるときは、緩衝部10bのみ緩衝材を使用しても良い。上記実施形態では、緩衝部10bを含めた框キャップ10は緩衝材により製造されているが、緩衝部10bとしては他に板ばね、コイルばねなどの弾性体を使用したり、磁石の反発を利用したりする方法が考えられる。
【0027】
図6は、縦框8bの端面に框キャップ10を取り付けた状況を示す図である。図6では、図6(a)は框キャップ10を取り付けた縦框8bの端面側の平面図であり、図6(b)は図6(a)の縦断面図である。框キャップ10の挿入部10aが縦框8bの端面に挿入され、略U字部の内面に縦框8bと上框8aまたは下框8c(図1参照)を固定するネジが通されて、框キャップ10は固定される。この時、緩衝部10bは、開放時に隣接する戸体4の框8と対向する位置に配置される。底部10cは、縦框8bの端面を覆っている。かかる構成により、開放時には緩衝部10bで接触することにより、隣接する戸体4は接触しない。したがって、框キャップ10は、従来の框キャップとしての機能である框8(図1参照)の内部へのごみなどの侵入や、端面への接触による事故を防止することに加え、従来の緩衝部品の機能である開放時に隣接する戸体が衝突したり、開放後に隣接する戸体が接触または擦れ合うことで、音が発生したり傷が付いたりすることを防止することができる。また、独立して緩衝部を取り付ける必要がないため、従来ネジ止めのために必要であった緩衝部品の厚さを、緩衝部では薄くすることができる。これにより、開放時に折り畳んだ戸体の間隔が狭くなり、開口部を広くすることができる。また、緩衝部10bの取り付けが框キャップ10を取り付けることと兼ねられるため、作業負担を軽減することができ、独立して緩衝部品を使用しないことで部品も削減できるため、生産費を低減することができる。さらに、框キャップ10が緩衝部10bを有することで、緩衝部10bは戸体4の端部に配置され、厚さも薄くすることができるため、見栄えが向上し、そのためサッシ全体更には建物の外観を損なわずに使用することができる。
【0028】
図7(a)は框キャップ10の底部10cにひれ21を備えた框キャップ20を、図7(b)は框キャップ20の取り付け状況を示す図である。なお、図6と同じ構成を採るものについては、図6にて使用した符号を付し、その説明を省略する。図7(a)では、框キャップ20の底部10cに設けられた2本の溝10d、10dにひれ21、21が1枚ずつ計2枚取り付けられたものである。ひれ21、21は、嵌合または接合などにより溝10dに取り付けられる。材質は任意で良いが、框キャップ20から突出して取り付けられるため、破損防止からゴム、モヘヤ、塩化ビニルなどの柔らかい物質であることが好ましい。
【0029】
図7(b)は、ひれ21を備えた框キャップ20の取り付け状況を示す図である。図7(b)では、框キャップ20は、上述した框キャップ10と同様に、縦框8bの下端に挿入部10aを挿入して取り付けられ、框8の固定と合わせて挿入部10aがネジで固定されている。この時、ひれ21、21は、下部レール14の開放部を間に挟んで、下部レール14と適度な隙間を有して平行に配置される。
【0030】
かかる構成により、框キャップ20は、框キャップの緩衝部10bで開放時に隣接する戸体4、4の接触を防止するとともに、ひれ21が折れ戸3と下部レール14の間の隙間を塞ぐ。これにより、上述した框キャップ10の効果に加え、ごみなどの侵入を防止し、外観を良くするという効果を得ることができる。なお、ひれ21は必ず框キャップに備えられる必要はなく、必要に応じて備えられれば良い。ただし、ひれ21を備えた框キャップ20を使用する時は、框8にも同様の位置にひれが備えられることが、ひれによる効果を得るためには好ましい。上記実施形態では縦框8bの下端に框キャップ20を取り付けたが、取り付け場所はこれに限定されず、他の端面であっても隙間を塞ぐ必要がある場合には、取り付け可能である。
【0031】
上記実施形態では、図1のとおり框8が左右の縦框8b、8b間に上框8aと下框8cを接合する縦通し接合構造のため、縦框8bの端面が戸体4の端面に現れることから、框キャップ10を縦框8bの端面に取り付けた場合について説明したが、緩衝部10bが開放時に隣接する戸体4、4、…の框8が対向する位置に配置されれば、框キャップの取り付けは縦框8bの端面に限定されない。例えば、上框8aと下框8cの間に左右の縦框8b、8b間を接合する横通し接合構造のときは、上框8a及び下框8cの端面が戸体4の端面に現れることから、框キャップ10を上框8aまたは下框8cの端面に取り付けても良い。また、上記実施形態では、框キャップ10に緩衝部10bを備えたが、緩衝部を備えた他の部品を用い、開放時に隣接する戸体4、4、…が接触する位置に緩衝部を配置することにより、戸体4、4、…同士の接触を防止することも考えられる。またさらに、緩衝部を備えた他の部品を用い、緩衝部を戸体4、4、…が接触する位置でなく、戸体4、4、…が接触しないように戸体4、4、…同士の接近を防止する位置に配置して、戸体の接触を防止することも考えられる。
【0032】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う折れ戸装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】折れ戸装置の正面図である。
【図2】開口部の閉鎖時における折れ戸装置の横断面図である。
【図3】開放時における折れ戸装置の横断面図である。
【図4】折れ戸装置の縦断面図である。
【図5】框キャップの構成図である。
【図6】框キャップの取り付け状況を示す図である。
【図7】ひれを有する框キャップの構成及び取り付け状況を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 折れ戸装置
2 枠体
3 折れ戸
4 戸体
10 框キャップ
10b 緩衝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に設置された枠体と、
前記枠体に折り畳みにより開閉可能に取り付けられた折れ戸とを備え、
前記折れ戸は複数の戸体をヒンジを介して連結されており、
前記戸体は框に戸板が取り付けられて構成され、
前記框の端面に緩衝部を有する框キャップが取り付けられ、
前記開口部の開放時に、前記緩衝部が隣接する前記戸体の框が対向する位置に配置されることを特徴とする折れ戸装置。
【請求項2】
前記緩衝部が、隣接する前記戸体の框が対向する位置の上端及び下端に配置されることを特徴とする請求項1に記載の折れ戸装置。
【請求項3】
前記緩衝部が、隣接する前記戸体の框が対向する位置において、一方の框にのみ配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の折れ戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−297827(P2007−297827A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125838(P2006−125838)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】