説明

押ボタンスイッチ装置

【課題】 押ボタンの押圧部位に関係なく操作荷重をほぼ均一にする。
【解決手段】 操作体68に対し複数箇所においてばねにより上向きの付勢力を付与し、押ボタン72の押圧による操作体68の押圧時に、押圧体の上面ほぼ中央に操作体68が当接して押圧体が上向きの付勢力に抗して下動される。このとき、押ボタン72の押圧時に、押ボタン72の押圧部位つまり操作体68の押圧部位に応じて操作体68の下方への回転の支点が切り換わり、操作体68の押圧部位と支点との距離が押圧部位に関係なくほぼ同じになり、操作体68の押圧部位に関係なく操作荷重をほぼ均一にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチがスイッチケース内の中央部より端部側にずれて配設された押ボタンスイッチ装置に関し、例えばスイッチケース内の中央部に発光素子が配置されてエレベータ用などに適用されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチケース内の中央部に発光素子が配置されてエレベータ用に適用される押ボタンスイッチ装置は、例えば図15に示すように構成されている。即ち、図15に示すように、スイッチケース1の下面側にプリント基板3が配設され、このプリント基板3の上面に発光ダイオード(以下、LEDと称する)5が実装され、円錐台の周面状の反射面を有しこのLED5の光を上方に反射するリフレクタ7がLED5と共にスイッチケース1内のほぼ中央部に臨んで配設され、プリント基板3のリフレクタ7の右方に、例えばタクトスイッチから成る内蔵スイッチ9が実装されている。
【0003】
さらに、押ボタン11が着脱自在に装着された操作体13がスイッチケース1の上面を閉塞するように配設され、押ボタン11の押圧により操作体13が一体的に押下され、押下された操作体13により、内蔵スイッチ9の上面側に配置されたスイッチ片9aが可撓性を有するラバー15を介して下方に押されて内蔵スイッチ9がオンするようになっている。
【0004】
このとき、操作体13の左端13aがスイッチケース1の左端の段差部17上に載置されてスイッチケース1の左上端の係止突起19の下面に係止し、操作体13の右端下面に下方に垂下して一体形成された鉤状部13bが、スイッチケース1の右端の断面L字状の係合部21に下方から係脱自在に係合している。
【0005】
そして、ラバー15の弾性によって操作体13には上向きに付勢力が付与され、押ボタン11の押圧によりこの付勢力に抗して操作体13が押下されると、操作体13の左端13aを支点として操作体13の右端の鉤状部13bが、図15中の矢印のように下方に回転し、操作体13の右端部下面がラバー15を圧迫して内蔵スイッチ9のスイッチ片9aが押下され、内蔵スイッチ9がオンする。
【0006】
ところで、押ボタン1の押圧を解除すると、ラバー15の弾性によって操作体13の右端の鉤状部13bが上方に回転し、操作体13の右端の鉤状部13bが再びスイッチケース1の係合部21に係合し、操作体13が押下前の元の状態に復帰する。
【0007】
尚、操作体13への付勢力はラバー15以外のばね等の付勢手段によって与えられることもある。
【0008】
このような押ボタンスイッチ装置の他の例として、押ボタンの押圧時に押ボタンの一端が当接部材に当接し、その一端を支点として押ボタンの他端側が回転してスイッチを動作させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、異なる例として、押ボタン本体の下面側に一対の支持軸を設け、これら両支持軸に2枚重ねに折り曲げられたバネ部材を係止し、バネ部材の折り返し片によりスイッチを押圧操作するようにし、このとき押ボタン本体のどの部分を押圧しても折り返し片の一部分を支点として押ボタン本体が押し下げられるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】特開2004−119238号公報(段落0012、図2)
【特許文献2】特開平5−266754号公報(段落0022,0023,0026、図8、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これら従来の押ボタンスイッチは、押ボタン或いは押ボタン本体を押圧操作したときの支点が1つだけであるため、押ボタン或いは押ボタン本体の押圧部位によって支点から押圧部位までの距離が大きく異なり、その結果、支点から遠い部位と近い部位とで操作荷重の差が大きくなり、操作者に対して、押圧部位の違いによる操作荷重の軽重に伴う違和感を与えることになるという問題点があった。
【0012】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、操作体ないし押ボタンの押圧部位に関係なく操作荷重をほぼ均一にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するために、請求項1に記載の押ボタンスイッチ装置は、スイッチがスイッチケース内の中央部より端部側にずれて配設された押ボタンスイッチ装置において、前記スイッチケース内に上下動自在に上向きに付勢されて配設され下動時に前記スイッチを押圧する押圧体と、前記スイッチケース内の前記押圧体の上方に上下動自在に配設され前記スイッチケースから外れないように周縁の複数の係合箇所が前記スイッチケースの周縁に係合し、押圧時に下面ほぼ中央の当接部が前記押圧体の上面ほぼ中央に当接して前記押圧体を上向きの付勢力に抗して下動させる操作体とを備え、前記操作体の押圧時に、前記操作体の押圧部位に応じた前記係合箇所を支点として前記操作体の押圧部位が下向きに回転することを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に記載の押ボタンスイッチ装置では、前記押圧体が付勢体により付勢されていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項3に記載の押ボタンスイッチ装置では、前記押圧体が弾性部材により形成され、前記押圧体の一端が前記スイッチケースに係止されることで他端側に付勢力が付与されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項4に記載の押ボタンスイッチ装置では、前記操作体が上向きに付勢されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項5に記載の押ボタンスイッチ装置では、前記押圧体が付勢体により付勢され、前記操作体が他の付勢体により上向きに付勢されていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項6に記載の押ボタンスイッチ装置では、前記押圧体が、弾性部材により形成されてその一端が前記スイッチケースに係止されることで他端側に付勢力が付与されると共に、付勢体により付勢され、前記操作体が他の付勢体により上向きに付勢されていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項7に記載の押ボタンスイッチ装置では、請求項3または6に記載のような構成において、前記押圧体の一端の係止部位と前記スイッチの中心と前記スイッチケースの中心とが平面視で同列上に配列されていることを特徴としている。
【0020】
また、請求項8に記載の押ボタンスイッチ装置では、前記操作体の複数の前記係合箇所が、前記操作体の周縁の相対向する位置に形成されていることを特徴としている。
【0021】
また、請求項9に記載の押ボタンスイッチ装置では、前記操作体の前記各係合箇所のうち一部が、係止された前記押圧体の一端部と同じ側に形成されていることを特徴としている。
【0022】
また、請求項10に記載の押ボタンスイッチ装置では、前記押圧体及び前記操作体がほぼ矩形や円形などの対称形状に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、操作体の押圧時に押圧体の上面ほぼ中央に操作体が当接して押圧体が上向きの付勢力に抗して下動される。このとき、操作体の押圧時に、操作体の押圧部位に応じた係合箇所を支点として操作体の押圧部位が下向きに回転することになる。
【0024】
従って、操作体の押圧部位に応じて支点が切り換わるため、操作体の押圧部位がどこであっても押圧部位と支点との距離がほぼ同じになり、従来のように支点が1つに固定されている場合に比べて、操作体の押圧部位に関係なく操作荷重をほぼ均一にすることができる。
【0025】
このとき、請求項2に記載のように、押圧体を付勢体により付勢すると、付勢体の上向きの付勢によって、操作荷重を調整することができる。
【0026】
また、請求項3に記載のように、押圧体自体が弾性部材により形成されているため、請求項2に記載のように付勢体による付勢する場合に比べて、部品点数を削減することができ、安価に構成することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、操作体が上向きに付勢されているため、操作体の押圧部位の荷重のばらつきを低減することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、押圧体を付勢体により付勢することで、操作荷重を調整することができ、操作体を他の付勢体により付勢することで、操作体の押圧部位の荷重のばらつきを低減することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、押圧体自体が弾性部材により形成されて付勢体により付勢されているため、操作荷重を調整することができる。一方、操作体が他の付勢体により付勢されているため、操作体の押圧部位の荷重のばらつきを低減することができる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、押圧体の一端の係止部位とスイッチの中心とスイッチケースの中心とが平面視で同列上に配列されているため、操作体の押圧によって押圧体のほぼ中央部に操作体が当接して押圧体が押下されるときに、操作体の操作部位に関係なく押圧体によるスイッチの押下時におけるモーメントはほぼ一定になり、操作荷重の均一性を確保することができる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、操作体の複数の係合箇所が、操作体の周縁の相対向する位置に形成されているため、操作体の押圧部位と支点との距離を押圧部位に関係なくほぼ同じにすることができ、操作荷重の均一性を確保することができる。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、操作体の各係合箇所のうち一部が、係止された押圧体の一端部と同じ側に形成され、操作体の各係合箇所の残りがその反対側に形成されているため、操作体の押圧部位と支点との距離を押圧部位に関係なくほぼ同じにすることができ、操作荷重の均一性を確保することができる。
【0033】
請求項10に記載の発明によれば、押圧体及び操作体がほぼ矩形や円形などの対称形状に形成されているため、操作体の押圧部位と支点との距離の均一性を容易に担保することができ、操作荷重の均一性を確保する上で有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明の一実施形態について図1ないし図10を参照して説明する。但し、図1は外観斜視図、図2は平面図、図3は正面図、図4は切断平面図、図5は底面側から見た斜視図、図6は図2中のX−X線における切断正面図、図7は図2中のY−Y線における切断正面図、図8は図2中のZ−Z線における切断正面図、図9は斜め上方から見た分解斜視図、図10は斜め下方から見た分解斜視図である。
【0035】
<構成>
本実施形態における押ボタンスイッチ装置は、図1〜10に示すように構成されている。即ち、平面視ほぼ矩形の平板50aと、隅部を避けて平板の周縁に沿って立設された立設板50bとから成る樹脂製スイッチケース50が設けられ、このスイッチケース50の右前を除く3つの隅部に透設された挿通孔52にボルトが挿通されてスイッチケース50が所定の取り付け位置に固定される。
【0036】
このスイッチケース50の立設板50bで囲まれた内側に、各種の回路素子が実装されたプリント基板54が配設されている。そして、このプリント基板54のほぼ中央部には発光素子である発光ダイオード(以下、LEDと称する)が実装され、このLEDを囲むようにリフレクタ56がスイッチケース50に固着され、リフレクタ56によってLEDの発する光が上向きに反射されるようになっている。
【0037】
尚、リフレクタ56の左側周面の下端に一体形成された一対の係合片56a、及び、リフレクタ56の右側周面の下端に一体形成された係合片56とは異なる形状の一対の係合片56bが、スイッチケース50の立設板50bで囲まれた内側上面に一体形成された係合ボス部にそれぞれ係脱自在に係合することでリフレクタ56が着脱自在に固着されている。
【0038】
また、挿通孔52が形成されていないスイッチケース50の右前隅部に対応するプリント基板54の角位置には、外部リード線との接続のためのコネクタ58が実装されると共に、リフレクタ56の右側にタクトスイッチ60が配置されてプリント基板54に実装されており、タクトスイッチ60のスイッチ片がその上面に位置している。このように、本実施形態では、タクトスイッチ60がスイッチケース50内の中央部より右端部側にずれて配設された構成となっている。
【0039】
さらに、弾性を有する金属等により形成された矩形枠状を成す押圧体62がリフレクタ56を囲むように配置され、この押圧体62の左端部には一対の延出片62aが斜め下方に延出して一体形成され、延出片62aの先端には係止爪62bが形成されると共に、スイッチケース50の左側の立設板50bには一対の係止突部50cが形成され、両係止爪62bの下面がスイッチケース50の上面に当接した状態で、両係止爪62bが両係止突部50cの下側に嵌挿し、これにより両係止爪62bがスイッチケース50に着脱自在に係止されており、かかる両係止爪62bの係止部分を支点として押圧体62の右端部がスイッチケース50内に上下動自在に配設されている。
【0040】
このとき、後に詳述する付勢体としてのばね66の付勢力により、少し上向きに屈曲された押圧体62の右端部が上向きに付勢されており、この付勢力に抗して押圧体62の右端部が押し下げられると、押圧体62の右端部に下方に突出形成された突起が、可撓性を有する平面視四角形のラバー64を介してタクトスイッチ60のスイッチ片を押下し、これによりタクトスイッチ60がオンする。
【0041】
ところで、押圧体62の左端部中央の下方に位置するスイッチケース50の上面には円柱状のボスが一体的に突出形成され、このボスにばね66が外装されて押圧体62の左端部とスイッチケース50との間にばね66が介挿され、このばね66により押圧体62の付勢力が調整されている。
【0042】
尚、係止された押圧体62の両係止爪62bの中間部とタクトスイッチ60の中心とスイッチケース50の中心とが平面視でほぼ同列上に配列されている。これにより、押圧体62が押下されるときに、タクトスイッチ60の押下時における押圧体62のモーメントを、後述する操作体の押圧部位に関係なくほぼ同じにすることができる。
【0043】
そして、スイッチケース50の立設板50bで囲まれた内側に嵌挿可能な形状を有する樹脂製の操作体68がスイッチケース50の内側に配置され、この操作体68の中央部には正方形状の透孔68aが透設され、この透孔68aの周縁に沿って短い正四角筒部68bが操作体68に一体形成されている。
【0044】
さらに、操作体68の左端及び右端の下面にはそれぞれ外向きの係合爪68cが一対ずつ形成され、これら各係合爪68cが、スイッチケース50の左右の立設板50bの上端に内向きに突出形成された係合突起50dに下方から係脱自在に係合し、各係合爪68cの係合突起50dとの係合により、操作体68が外れないようにスイッチケース50内に上下動自在に配設されている。
【0045】
また、操作体68の左右端部の中央下方に位置するスイッチケース50の上面にはそれぞれ円柱状のボスが一体的に突出形成され、これらのボスに他の付勢体としてのばね70が外装されて操作体68とスイッチケース50との間にばね70が介挿され、これら両ばね70により操作体68が常に上向きに付勢されている。
【0046】
このとき、操作体68の前後の下面には、押圧体62の前後端部の中央に一体形成された当接片62cにそれぞれ当接する当接部が形成され、両ばね70に抗して操作体68が押圧されたときに操作体68の両当接部が押圧体62の両当接片62cにそれぞれ当接して押圧体62を押下するようになっている。
【0047】
ところで、透光性を有する樹脂等から成る平面視正方形の押ボタン72が操作体68の正四角筒部68bの外周面及び上面を覆うように着脱自在に装着されている。ここで、正四角筒部68bの各周壁外側の下部中央には係止溝68dが形成され、押ボタン72の各周壁内側の下部中央には各掛止溝68dに係合可能な弾性を有する係止突起72aが一体形成され、各係止突起72aが各係止溝68dに係脱自在に係止し、押ボタン72が操作体68に着脱自在に装着される。
【0048】
尚、押ボタン72の押圧操作により操作体68が押ボタン72と一体的に押圧されることになるため、以下の動作等の説明では、押ボタン72の押圧部位を操作体68の押圧部位と同一に扱って説明することとする。
【0049】
<中央押しの動作>
上記の構成を有する押ボタンスイッチ装置が例えばエレベータ用スイッチに適用され、使用者が押ボタン72を押圧操作した場合には、操作体68が両ばね70に抗して押圧されて押圧体62が押下され、タクトスイッチ60がオンしてLEDが点灯し、図外の制御回路によりLEDの点灯状態が所定条件の成立(エレベータの扉の開放など)まで保持され、押ボタン72を通してLEDの点灯が使用者に目視できるようになっている。
【0050】
いま、図2中に示す押ボタン72の中央であるB部分が押圧されると、押ボタン72への押圧力が操作体68のほぼ中央部に加わる。このとき、操作体68は、各係合爪68cの係合突起50dとの係合箇所のいずれを支点とすることがなく、操作体68は両ばね70に抗して下方に平行移動し、押ボタン72への押圧力が操作体68の中央付近に位置する両当接部にそのまま伝わる。このとき、押圧時に両当接部を介して操作体68が受ける反力は、両ばね70と押圧体62とばね66の各復元力の合力であり、これが操作荷重に相当する。
【0051】
その結果、操作体68の両当接部が押圧体62の両当接片62cにそれぞれ当接して押圧体62が押下され、押圧体62の右端部が両係止爪62bの係止部分を支点として下動し、これによりラバー64を介してタクトスイッチ60のスイッチ片が押下されてタクトスイッチ60がオンする。
【0052】
<端押しの動作>
次に、図2中に示す押ボタン72の中央B部分の左側のA部分が押圧されると、押ボタン72への押圧力が操作体68の左端部寄りに加わるため、操作体68を上向きに付勢する両ばね70のうち左側のばね70が右側よりも強く圧縮され、その結果、操作体68の左端部が、右側の両係合爪68cと両係合突起50dとの係合箇所P1,P2を支点として両ばね70に抗して下動することになる。
【0053】
そして、操作体68の左端部の下動により、操作体68の両当接部が押圧体62の両当接片62cに当接して押圧体62に押圧力が伝達され、押圧体62が押下され、押圧体62の右端部が両係止爪62bの係止部分を支点として下動し、これによりラバー64を介してタクトスイッチ60のスイッチ片が押下されてタクトスイッチ60がオンする。
【0054】
一方、図2中に示す押ボタン72の中央B部分の右側のC部分が押圧されると、押ボタン72への押圧力が操作体68の右端部寄りに加わるため、操作体68を上向きに付勢する両ばね70のうち右側のばね70が左側よりも強く圧縮され、その結果、操作体68の右端部が、左側の両係合爪68cと両係合突起50dとの係合箇所P3,P4を支点として両ばね70に抗して下動することになる。
【0055】
そして、操作体68の右端部の下動により、操作体68の両当接部が押圧体62の両当接片62cに当接して押圧体62に押圧力が伝達され、押圧体62が押下され、押圧体62の右端部が両係止爪62bの係止部分を支点として下動し、これによりラバー64を介してタクトスイッチ60のスイッチ片が押下されてタクトスイッチ60がオンする。
【0056】
このとき、押ボタン72のA部分及びC部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比すると、押圧部位であるA部分から支点P1,P2までの距離と、押圧部位であるC部分から支点P3,P4までの距離とはほぼ同じになり、しかも押ボタン72のA部分及びC部分をそれぞれ押圧したときの操作体68が受ける反力もほとんど同じであるため、押ボタン72のA部分及びC部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重にほとんど差はない。
【0057】
また、押ボタン72のB部分及びA(またはC)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比しても、押ボタン72のB部分及びA(またはC)部分をそれぞれ押圧したときの操作体68が受ける反力に大きな差はないことから、押ボタン72のB部分及びA(またはC)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重の差は小さく、従来のように、押ボタンの操作時における支点が1つで、その支点から遠い部位を押圧したときと近い部位を押圧したときの操作荷重の差ほど大きくなることはない。よって、押ボタン72のB部分及びA(またはC)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重は、使用者が違和感を覚えるほど大きくなることがなく、ほぼ同じような操作荷重になる。
【0058】
ところで、図2中に示す押ボタン72の中央B部分の後側のE部分が押圧されると、押ボタン72への押圧力が操作体68の後端部寄りに加わるが、操作体68を上向きに付勢する両ばね70は同じように圧縮されるものの、操作体68の後端部寄りの押圧ゆえに、各係合爪68cと各係合突起50dとの係合箇所のうち前側、つまり上記したP2,P4を支点として、操作体68の後端部が両ばね70に抗して下動することになる。
【0059】
そして、操作体68の後端部の下動により、操作体68の少なくとも後側の当接部が押圧体62の当接片62cに当接するか、或いは両当接部が両当接片62cそれぞれに当接して押圧体62に押圧力が伝達され、これにより押圧体62が押下され、押圧体62の右端部が両係止爪62bの係止部分を支点として下動し、ラバー64を介してタクトスイッチ60のスイッチ片が押下されてタクトスイッチ60がオンする。
【0060】
また、図2中に示す押ボタン72の中央B部分の前側のH部分が押圧されると、押ボタン72への押圧力が操作体68の前端部寄りに加わるが、操作体68を上向きに付勢する両ばね70は同じように圧縮されるものの、操作体68の前端部寄りの押圧ゆえに、各係合爪68cと各係合突起50dとの係合箇所のうち後側、つまり上記したP1,P3を支点として、操作体68の前端部が両ばね70に抗して下動することになる。
【0061】
そして、操作体68の前端部の下動により、操作体68の少なくとも前側の当接部が押圧体62の当接片62cに当接するか、或いは両当接部が両当接片62cそれぞれに当接して押圧体62に押圧力が伝達され、これにより押圧体62が押下され、押圧体62の右端部が両係止爪62bの係止部分を支点として下動し、ラバー64を介してタクトスイッチ60のスイッチ片が押下されてタクトスイッチ60がオンする。
【0062】
このとき、押ボタン72のE部分及びH部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比すると、押圧部位であるE部分から支点P2,P4までの距離と、押圧部位であるH部分から支点P1,P3までの距離とはほぼ同じになり、しかも押ボタン72のE部分及びH部分をそれぞれ押圧したときの操作体68が受ける反力もほとんど同じであるため、押ボタン72のE部分及びH部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重にほとんど差はない。
【0063】
また、押ボタン72のB部分及びE(またはH)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比しても、押ボタン72のB部分及びE(またはH)部分をそれぞれ押圧したときの操作体68が受ける反力に大きな差はないことから、押ボタン72のB部分及びE(またはH)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重の差は小さく、従来のように、押ボタンの操作時における支点が1つで、その支点から遠い部位を押圧したときと近い部位を押圧したときの操作荷重の差ほど大きくなることはない。よって、押ボタン72のB部分及びE(またはH)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重は、使用者が違和感を覚えるほど大きくなることがなく、ほぼ同じような操作荷重になる。
【0064】
<隅押しの動作>
さらに、図2中に示す押ボタン72の左後側のD部分が押圧されると、押ボタン72への押圧力が操作体68の左後端部寄りに加わるため、操作体68を上向きに付勢する両ばね70のうち左側のばね70が右側よりも強く圧縮され、右前側の両係合爪68cとこれに対応する係合突起50dとの係合箇所P2を支点として、操作体68の左後端部を主として左端部が両ばね70に抗して下動することになる。
【0065】
また、図2中に示す押ボタン72の右後側のF部分が押圧されると、押ボタン72への押圧力が操作体68の右後端部寄りに加わるため、操作体68を上向きに付勢する両ばね70のうち右側のばね70が左側よりも強く圧縮され、左前側の両係合爪68cとこれに対応する係合突起50dとの係合箇所P4を支点として、操作体68の右後端部を主として右端部が両ばね70に抗して下動する。
【0066】
一方、図2中に示す押ボタン72の左前側のG部分が押圧されると、押ボタン72への押圧力が操作体68の左前端部寄りに加わるため、操作体68を上向きに付勢する両ばね70のうち左側のばね70が右側よりも強く圧縮され、右後側の両係合爪68cとこれに対応する係合突起50dとの係合箇所P1を支点として、操作体68の左前端部を主として左端部が両ばね70に抗して下動する。
【0067】
さらに、図2中に示す押ボタン72の右前側のI部分が押圧されると、押ボタン72への押圧力が操作体68の右前端部寄りに加わるため、操作体68を上向きに付勢する両ばね70のうち右側のばね70が左側よりも強く圧縮され、左後側の両係合爪68cとこれに対応する係合突起50dとの係合箇所P3を支点として、操作体68の右前端部を主として右端部が両ばね70に抗して下動する。
【0068】
そして、操作体68の左端部の下動により、操作体68の両当接部が両当接片62cそれぞれに当接して押圧体62に押圧力が伝達され、これにより押圧体62が押下され、押圧体62の右端部が両係止爪62bの係止部分を支点として下動し、ラバー64を介してタクトスイッチ60のスイッチ片が押下されてタクトスイッチ60がオンする。
【0069】
このとき、押ボタン72のD部分及びF部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比すると、押圧部位であるD部分から支点P2までの距離と、押圧部位であるF部分から支点P4までの距離とはほぼ同じになり、しかも押ボタン72のD部分及びF部分をそれぞれ押圧したときの操作体68が受ける反力もほとんど同じであるため、押ボタン72のD部分及びF部分をぞれぞれ押圧したときの操作荷重にほとんど差はない。
【0070】
また、押ボタン72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重を対比しても、押ボタン72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときの操作体68が受ける反力に大きな差はないことから、押ボタン72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重の差は小さく、従来のように、押ボタンの操作時における支点が1つで、その支点から遠い部位を押圧したときと近い部位を押圧したときの操作荷重の差ほど大きくなることはない。よって、押ボタン72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重は、使用者が違和感を覚えるほど大きくなることがなく、ほぼ同じような操作荷重になる。
【0071】
尚、押ボタン72のG部分及びI部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重は、押ボタン72のD部分及びF部分をそれぞれ押圧したときと同様の理由からほとんど同じになり、押ボタン72のB部分及びG(またはI)部分をそれぞれ押圧したときの操作荷重の差についても、押ボタン72のB部分及びD(またはF)部分をそれぞれ押圧したときと同様の理由から、使用者が違和感を覚えるほど大きくなることがなく、ほぼ同じような操作荷重になる。
【0072】
従って、上記した実施形態によれば、特に押ボタン72の中央以外の端部や隅部を押圧する場合に、押ボタン72の押圧部位つまり操作体68の押圧部位と、それに応じた操作体68の下動時の支点との距離がほぼ同じになり、操作体68の押圧部位に関係なく操作荷重をほぼ均一にすることができる。
【0073】
さらに、支点P1,P2を右側に、支点P3,P4を左側に配置し、支点P1,P2間に右側のばね70を、支点P1,P2間に左側のばね70をそれぞれ配置した構成であるため、操作体68の押圧部位(押ボタン72の押圧部位)に応じて適正な支点で操作体68を下向きに回転(下動)させることができ、操作荷重の均一性を確保することができる。
【0074】
また、押圧体62の両係止爪62bの係止部位とタクトスイッチ60の中心とスイッチケース50の中心とが平面視で同列上に配列されているため、操作体68の押圧によって押圧体62のほぼ中央部に操作体68が当接して押圧体62が押下されるときに、操作体68の押圧部位(押ボタン72の押圧部位)に関係なく押圧体62によるタクトスイッチ60の押下時における押圧体62のモーメントはほぼ同じになり、操作荷重の均一性を確保することができる。
【0075】
(変形例)
次に、図11ないし図14は、上記した実施形態の変形例であり、図11は外観斜視図、図12は底面側から見た斜視図、図13は斜め上方から見た分解斜視図、図14は斜め下方から見た分解斜視図である。但し、図11ないし図14において、図1ないし図10と同一符号は同一若しくは相当するものを示す。
【0076】
本変形例における押ボタンスイッチ装置の基本構成は上記した実施形態とほぼ同じであり、押圧体62の当接片62cを削除し、操作体68の前後の下面の当接部を押圧体62の前後端部の中央にそれぞれ直接当接させて押圧体62を押下するようにした点が相違している。
【0077】
こうすると、押圧体62の当接片62cを削除した分、押圧体62を小型にできるため、スイッチ装置全体の小型化を図ることができる。
【0078】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0079】
例えば、上記した実施形態ではスイッチケース50をはじめ、押圧体62や操作体68を平面視矩形にした例を示したが、これらは円形その他の対称形状であってもよく、この場合にも上記した実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0080】
また、上記した実施形態では、操作体68に押ボタン72を着脱自在に装着するように構成したが、操作体68が押ボタン72を一体化した構成であっても構わない。
【0081】
さらに、押ボタンスイッチ装置として、必ずしもLEDやランプ等の発光素子を内蔵する必要はない。スイッチケース50に配設するスイッチも上記したタクトスイッチ60に限定されるものではない。
【0082】
また、上記した実施形態では、押圧体62の付勢力を調整するためのばね66を設けているが、付勢力によってはばね66を設ける必要はなく削除しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
ところで、本発明の押ボタンスイッチ装置は、上記した実施形態において説明した如くエレベータ用に適用するのに限らず、いわゆるコピー機のスタートスイッチをはじめ、特に発光素子を内蔵してスイッチ操作の有無を発光状態によって報知する電子機器用の各種スイッチに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施形態の外観斜視図である。
【図2】一実施形態の平面図である。
【図3】一実施形態の正面図である。
【図4】一実施形態の内部構成を示す切断平面図である。
【図5】一実施形態の底面側から見た斜視図である。
【図6】図2中のX−X線における切断正面図である。
【図7】図2中のY−Y線における切断正面図である。
【図8】図2中のZ−Z線における切断正面図である。
【図9】一実施形態の斜め上方から見た分解斜視図である。
【図10】一実施形態の斜め下方から見た分解斜視図である。
【図11】変形例の外観斜視図である。
【図12】変形例の底面側から見た斜視図である。
【図13】変形例の斜め上方から見た分解斜視図である。
【図14】変形例の斜め下方から見た分解斜視図である。
【図15】従来例の断面図である。
【符号の説明】
【0085】
50……スイッチケース
60……タクトスイッチ
62……押圧体
66……ばね(付勢体)
68……操作体
70……ばね(他の付勢体)
72……押ボタン
A,B,C,D,E,F,G,H,I……押圧部位
P1,P2,P3,P4……支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチがスイッチケース内の中央部より端部側にずれて配設された押ボタンスイッチ装置において、
前記スイッチケース内に上下動自在に上向きに付勢されて配設され下動時に前記スイッチを押圧する押圧体と、
前記スイッチケース内の前記押圧体の上方に上下動自在に配設され前記スイッチケースから外れないように周縁の複数の係合箇所が前記スイッチケースの周縁に係合し、押圧時に下面ほぼ中央の当接部が前記押圧体の上面ほぼ中央に当接して前記押圧体を上向きの付勢力に抗して下動させる操作体と
を備え、
前記操作体の押圧時に、前記操作体の押圧部位に応じた前記係合箇所を支点として前記操作体の押圧部位が下向きに回転することを特徴とする押ボタンスイッチ装置。
【請求項2】
前記押圧体が付勢体により付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項3】
前記押圧体が弾性部材により形成され、前記押圧体の一端が前記スイッチケースに係止されることで他端側に付勢力が付与されていることを特徴とする請求項1に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項4】
前記操作体が上向きに付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項5】
前記押圧体が付勢体により付勢され、前記操作体が他の付勢体により上向きに付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項6】
前記押圧体が、弾性部材により形成されてその一端が前記スイッチケースに係止されることで他端側に付勢力が付与されると共に、付勢体により付勢され、前記操作体が他の付勢体により上向きに付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項7】
前記押圧体の一端の係止部位と前記スイッチの中心と前記スイッチケースの中心とが平面視で同列上に配列されていることを特徴とする請求項3または6に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項8】
前記操作体の複数の前記係合箇所が、前記操作体の周縁の相対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項9】
前記操作体の前記各係合箇所のうち一部が、係止された前記押圧体の一端部と同じ側に形成され、前記操作体の前記各係合箇所の残りがその反対側に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の押ボタンスイッチ装置。
【請求項10】
前記押圧体及び前記操作体がほぼ矩形や円形などの対称形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の押ボタンスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−140096(P2006−140096A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330528(P2004−330528)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】