説明

拭き取り検査キット

【課題】拭き取り部材の拭き取り能力を向上させると共に、拭き取り部材と軸部との取り付け強度を高め、検査精度の向上を図る。
【解決手段】希釈液を収容する容器本体11の上部開口部に着脱可能に装着されるキャップ21に取り付けた軸部31の下端部に、一対の脚部34a,34aを備えたU字状のクリップ部34を設ける。脚部34aの対向面に、凸部と切込部とを連続して設けた鋸歯状の保持段部34bを形成し、クリップ部34に拭き取り部材41を取り付ける。拭き取り部材41は、吸水力に優れたシート状のスポンジクロスを観音折りにして形成し、観音折りにすることにより形成された2つの輪44の内部に、クリップ部34の脚部34aをそれぞれ挿入し、重ね合わされた拭き取り部材の両側片41aに保持段部34bをそれぞれ係合させて、クリップ部34に拭き取り部材41を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の製造現場や医療現場等で細菌検査をする際に用いられる拭き取り検査キットに係り、詳しくは拭き取り部材を吸水性に優れたスポンジクロスで形成した拭き取り検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の製造加工に使用する器具や機材等に付着した細菌の検査を行う際等に用いられる拭き取り検査キットとして、希釈液を収容する容器本体と、この容器本体の開口部に着脱可能に装着されるキャップと、このキャップに一体形成され、前記容器内に垂下する軸部と、この軸部の先端に取り付けられた拭き取り部材とを備え、該拭き取り部材で検体の表面を拭き取った後に、容器本体にキャップを被着することにより、拭き取り部材を希釈液に浸漬させるものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−344232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のものでは、検体の表面を拭き取る拭き取り部材が綿球で形成され、吸水力が小さいことから、細菌の拭き取り効率が低く、検査精度が低下していた。また、綿球よりも吸水力のある従来の不織布をシート状にして拭き取り部材を形成しても軸部の先端に拭き取り部材を固定することが難しいことから、検体の拭き取り作業の際に拭き取り部材が捩れたり軸部から抜けたりする虞があり、検体から細菌を確実に拭き取ることができなかった。
【0005】
そこで本発明は、拭き取り部材の拭き取り能力を向上させると共に、拭き取り部材と軸部との取り付け強度を高め、検査精度の向上を図ることのできる拭き取り検査キットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の拭き取り検査キットは、希釈液を収容する容器本体と、該容器本体の上部開口部に着脱可能に装着されるキャップと、該キャップの天井部内面に連設した軸部と、該軸部の先端に取り付けられる拭き取り部材とを備えた拭き取り検査キットにおいて、前記軸部は、下端部に、前記拭き取り部材を保持する一対の脚部を備えたU字状のクリップ部が設けられ、前記脚部の対向面には、凸部と切込部とを連続して設けた鋸歯状の保持段部が対向してそれぞれ形成されると共に、前記拭き取り部材は、吸水力を備えたシート状のスポンジクロスを観音折りにして形成され、前記拭き取り部材の観音折りにすることにより形成された2つの輪の内部に前記一対の脚部をそれぞれ挿入し、重ね合わされた前記拭き取り部材の重合片に前記保持段部をそれぞれ係合させて、前記クリップ部に拭き取り部材を取り付けたことを特徴とし、前記スポンジクロスは、セルロースとコットンとを混合して形成すると好適である。
【0007】
また、前記一対の脚部にそれぞれ対向して形成される一対の保持段部は、前記凸部の位置が、上下方向に異なるように形成されると共に、各保持段部の中央部に軸方向のリブが形成されていても良い。さらに、前記拭き取り部材は、観音折りされる谷折り部に折込み用筋目が形成されると共に、前記リブが係合する係合溝が形成されていると好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の拭き取り検査キットによれば、拭き取り部材を吸水性に優れたスポンジクロスで形成することができ、拭き取り部材の拭き取り能力を向上させることができる。また、シート状のスポンジクロスを観音折りにして拭き取り部材を形成すると共に、観音折りにすることにより形成された2つの輪の内部に、クリップ部の脚部を挿入し、重ね合わされた前記拭き取り部材の重合片に、脚部の保持段部をそれぞれ係合させることから、拭き取り部材を軸部に形成したクリップ部に簡単、且つ、確実に取り付けることができ、検査精度の向上を図ることができる。さらに、スポンジクロスをセルロースとコットンとを混合して形成することにより、高い吸水性を確保することができる。
【0009】
また、一対の脚部にそれぞれ対向して形成される一対の保持段部を、凸部の位置が前記軸部の軸方向に異なるように形成し、さらに、各保持段部の中央部に軸方向のリブを設けたことにより、拭き取り部材をクリップ部で確実に保持し、拭き取り部材が捩れることを防止できる。また、拭き取り部材の、観音折りされる谷折り部に折込み用筋目を形成することにより、スポンジクロスで形成した拭き取り部材を容易に観音折りにすることができる。さらに、拭き取り部材に前記リブが当接する係合溝を形成することにより、確実に拭き取り部材をクリップ部に係合させることができ、また、拭き取り部材をクリップ部に係合させる際に、係合溝が保持段部のリブをガイドし、拭き取り部材を適正な状態でクリップ部に係合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一形態例を示す拭き取り検査キットの正面図である。
【図2】同じくクリップ部の拡大正面図である。
【図3】同じくクリップ部の拡大底面図である。
【図4】図2のIV-IV断面図である。
【図5】同じくクリップ部の断面平面図である。
【図6】同じく拭き取り検査キットの一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図6は本発明の拭き取り検査キットの一形態例を示す図で、この拭き取り検査キット10は、希釈液を収容する容器本体11と、該容器本体11の上部開口部12に着脱可能に装着されるキャップ21と、該キャップ21の天井内側面に連設した軸部31と、該軸部31の下端部に設けられ、キャップ密栓状態において前記希釈液中に浸漬する拭き取り部材41とを備えている。
【0012】
容器本体11は、高密度ポリエチレン等の圧縮変形可能な軟質材料で有底円筒状に形成され、上部開口部12にはキャップ21を螺着させる雄ねじ部が形成され、円筒部13の外周部上方には、凹部14,14が対向して形成されている。
【0013】
キャップ21は、容器本体11の上部開口部12に螺着される円筒状蓋体22と、該円筒状蓋体22の天井部に被着される上蓋23とを備えた二重蓋構造となっている。円筒状蓋体22は、内周面に前記容器本体11の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成され、天井部の中心位置には、貫通孔22aが形成されている。天井部の外面には、前記貫通孔22aに沿って嵌着用リブ22bが形成され、天井部の内面には、前記貫通孔22aの周囲に軸部取り付け用の中空連結管22cが突設されている。上蓋23は、短円筒状に形成され、ヒンジ部を介して円筒状蓋体22の上端部に回動可能に支持され、天井部内面には、前記嵌着用リブ22bと貫通孔22aとに嵌入され、該貫通孔22aを閉塞する閉塞部23aと、該閉塞部23aの周囲を囲繞する短尺の円筒状リブ23bとを備えている。
【0014】
軸部31は、基端側に前記中空連結管22cに嵌入される大径軸部32と、該大径軸部32に連続する小径軸部33と、該小径軸部33の下端部に形成されるクリップ部34とを一体に備えている。大径軸部32は、上端面中心部に開口する軸方向の第1連通孔32aと、前記大径軸部32の下端側に形成され、大径軸部32の外周面と第1連通孔32aの下端部とに開口する径方向の第2連通孔32bとを備えている。このように形成した軸部31は、大径軸部32を前記中空連結管22cに嵌入することにより、円筒状蓋体22の天井部内面に取り付けられ、前記第2連通孔32bは、中空連結管22cの下端部よりも下方に配置される。
【0015】
クリップ部34は、図2に示されるように、一対の脚部34a,34aを備えた下向きのU字状に形成され、脚部34a,34aの対向面には、一対の保持段部34b,34bが対向してそれぞれ形成されている。保持段部34b,34bは、凸部34cと切込部34dとを連続して設けた上向きの鋸歯状に形成され、対向して形成される凸部34cの位置が、上下方向に異なるようにそれぞれ形成され、さらに、保持段部34b,34bの中央部に軸方向のリブ34e,34eがそれぞれ形成されている。
【0016】
拭き取り部材41は、セルロースとコットンとを混合して形成した吸水性に優れた長方形のシート状のスポンジクロスを観音折りにして形成されるもので、拭き取り部材41の内面には、観音折りされる3箇所の谷折り部に折込み用筋目42が形成され、さらに、両側部側の折込み用筋目42,42よりも側端側の重合片41a,41aには、保持段部34bのリブ34e,34eが係合する係合溝43,43が形成されている。
【0017】
この拭き取り部材41をクリップ部34に取り付ける際には、まず、拭き取り部材41を折込み用筋目42,42,42に沿って観音折りし、重合片41a,41aを重ね合わせて2つの輪44,44を形成する。重ね合わされた状態の重合片41a,41aに設けられた係合溝43,43に、クリップ部34のリブ34e,34eを係合させながら、クリップ部34の各脚部34a,34aを前記2つの輪44,44にそれぞれ挿入し、クリップ部34に拭き取り部材41を装着する。
【0018】
上述のように形成された拭き取り検査キット10を用いて、細菌検査を行う手順について説明する。拭き取り検査キット10は、容器本体11に予め所定量の希釈液が収容され、上蓋23を閉じた状態で、キャップ21の円筒状蓋体22が容器本体11の上部開口部12に螺着されており、クリップ部34に装着された拭き取り部材41が希釈液に浸漬された状態となっている。このとき、上蓋23に設けられた閉塞部23aは、円筒状蓋体22の嵌着用リブ22bと貫通孔22aとに嵌入された状態となっており、希釈液が外部に漏れ出すことはない。検査時には、キャップ21を容器本体11から外して軸部31を引き上げ、容器本体11に形成した凹部14,14の位置に拭き取り部材41を配置させ、指で凹部14,14を容器本体内に押圧して拭き取り部材41を圧迫し、拭き取り部材41に吸収されていた余分な希釈液を絞る。
【0019】
希釈液を絞った拭き取り部材41を、容器本体11から抜き出し、キャップ21を持って、拭き取り部材41で検体の一定面積を拭き取った後、再び、容器本体11内の希釈液に拭き取り部材41を浸漬させ、キャップ21を容器本体11の上部開口部12に螺着する。検査内容に応じて拭き取り部材41を所定時間希釈液に浸漬させた後、キャップ21の円筒状蓋体22を容器本体11の上部開口部12に螺着させた状態のまま上蓋23を開き、上蓋23に設けられた閉塞部23aを、円筒状蓋体22の嵌着用リブ22bと貫通孔22aとから外して貫通孔22aを開口させ、ペトリ皿の上で容器本体11を傾け、凹部14,14を押圧する。これにより、拭き取った試料と希釈液とが混合した試料液が、軸部31に形成した第2連通孔32b及び第1連通孔32aと、中空連結管22cと、貫通孔22aとを介してペトリ皿に回収され、検査される。
【0020】
本発明の拭き取り検査キット10は上述のように、拭き取り部材41をセルロースとコットンとを混合して形成した吸水性に優れたスポンジクロスで形成することから、拭き取り能力を向上させることができ、検査精度の向上を図ることができる。また、長方形のシート状のスポンジクロスを観音折りにして拭き取り部材41を形成すると共に、観音折りにすることにより形成された2つの輪44,44の内部に、クリップ部34の脚部34a,34aを挿入し、重ね合わされた拭き取り部材41の重合片41a,41aに、脚部34a,34aの保持段部34b,34bをそれぞれ係合させるだけで、拭き取り部材41をクリップ部34に簡単、且つ、確実に取り付けることができ、拭き取り作業中に拭き取り部材41がクリップ部34から抜ける虞がない。
【0021】
さらに、一対の脚部34a,34aにそれぞれ対向して形成した一対の保持段部34b,34bを、凸部34cの位置が軸部31の軸方向に異なるように形成し、各保持段部34bの中央部に軸方向のリブ34eを設けると共に、拭き取り部材41に係合溝43を形成することにより、さらに確実に拭き取り部材41をクリップ部34に係合させることができ、拭き取り部材が捩れることを防止できる。また、拭き取り部材41の、観音折りされる谷折り部に折込み用筋目42,42,42を形成することにより、スポンジクロスで形成した拭き取り部材を容易に観音折りにすることができる。さらに、拭き取り部材41をクリップ部34に係合させる際に、係合溝43が保持段部34bのリブ34eをガイドし、拭き取り部材41を適正な状態でクリップ部34に係合させることができる。
【0022】
尚、本発明の拭き取り検査キットは、上述の形態例に限るものではなく、キャップの構造や容器本体の形状や構造や任意である。また、一対の保持段部は、凸部の高さ位置が一致していても良く、保持段部の中央部にリブを備えていないものでも差し支えない。また、拭き取り部材に折込み用筋目や係合溝を備えていなくても良い。
【符号の説明】
【0023】
10…拭き取り検査キット、11…容器本体、12…上部開口部、13…円筒部、14…凹部、21…キャップ、22…円筒状蓋体、22a…貫通孔、22b…嵌着用リブ、22c…中空連結管、23…上蓋、23a…閉塞部、23b…円筒状リブ、31…軸部、32…大径軸部、32a…第1連通孔、32b…第2連通孔、33…小径軸部、34…クリップ部、34a…脚部、34b…保持段部、34c…凸部、34d…切込部、34e…リブ、41…拭き取り部材、41a…重合片、42…折込み用筋目、43…係合溝、44…輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈液を収容する容器本体と、該容器本体の上部開口部に着脱可能に装着されるキャップと、該キャップの天井部内面に連設した軸部と、該軸部の先端に取り付けられる拭き取り部材とを備えた拭き取り検査キットにおいて、前記軸部は、下端部に、前記拭き取り部材を保持する一対の脚部を備えたU字状のクリップ部が設けられ、前記脚部の対向面には、凸部と切込部とを連続して設けた鋸歯状の保持段部が対向してそれぞれ形成されると共に、前記拭き取り部材は、吸水力を備えたシート状のスポンジクロスを観音折りにして形成され、前記拭き取り部材の観音折りにすることにより形成された2つの輪の内部に前記一対の脚部をそれぞれ挿入し、重ね合わされた前記拭き取り部材の重合片に前記保持段部をそれぞれ係合させて、前記クリップ部に拭き取り部材を取り付けたことを特徴とする拭き取り検査キット。
【請求項2】
前記スポンジクロスは、セルロースとコットンとを混合して形成することを特徴とする請求項1記載の拭き取り検査キット。
【請求項3】
前記一対の脚部にそれぞれ対向して形成される一対の保持段部は、前記凸部の位置が、上下方向に異なるように形成されると共に、各保持段部の中央部に軸方向のリブが形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の拭き取り検査キット。
【請求項4】
前記拭き取り部材は、観音折りされる谷折り部に折込み用筋目が形成されると共に、前記リブが係合する係合溝が形成されることを特徴とする請求項3記載の拭き取り検査キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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