説明

振出竿用口栓及び釣り竿

【課題】 口栓としての変形性を大きくし仕舞い処理を円滑に行える振出竿用口栓を提供する。
【解決手段】 穂先竿1、及び、中竿を元竿4に収納した状態でその元竿4の開口を口栓8で閉塞すべく構成する。口栓8をゴム等で形成し、周壁8Bと、その周壁8Bの軸線方向の一端を閉塞する底壁8Aと、周壁8Bの軸線方向の他端を開口とした筒状体に構成する。口栓8を、収納状態の穂先竿1、及び、中竿の竿先端部を覆う作用姿勢と、周壁8Bを捲り上げ底壁8Aに沿った平板状に縮小する非作用姿勢とに切り換え可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穂先竿、及び、中竿を元竿に収納した状態でその元竿の開口を閉塞する振出竿用口栓に関する。
【背景技術】
【0002】
振出竿用口栓は、ゴム等を原材料として筒状に形成されていた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平5−82272号公報(段落番号〔0011〕、及び、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振出竿用口栓は、ゴム等を原材料として筒状に形成されていても変形性が低く、元竿から取り外した状態では、釣り人がポケット等に収納するには大き過ぎ、仕舞い処理に苦慮していた。
【0005】
本発明の目的は、口栓としての変形性を大きくし、仕舞い処理を円滑に行える振出竿用口栓を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、周壁と、その周壁の軸線方向の一端を閉塞する底壁と、周壁の軸線方向の他端を開口とした筒状体に構成するとともに、前記収納状態の穂先竿、及び、前記中竿の竿先端部を覆う作用姿勢と、前記周壁を捲り上げ前記底壁に沿った平板状に縮小する非作用姿勢とに切り換え可能に構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
口栓を元竿から取り外した状態で、その口栓の周壁を捲り上げ底壁に沿った平板状にまで縮小することができるので、収納時に占有スペースを小さくでき、収納スペースを見出し易い。
【0008】
〔効果〕
したがって、元竿に収納する中竿の竿先端部分を被覆するのに十分な大きさのものにしながら、仕舞い時には縮小することが可能であり、占有スペースを小さくでき、仕舞い処理が容易になる。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、振出竿用口栓が前記元竿の竿尻端に形成したグリップ部に被着可能な点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、口栓を元竿の竿先端ではなく、竿尻端に形成したグリップ部に被着することによって、口栓を直接握ることとなり、捲り上げることのできるほど変形性の高い周壁が握る手に馴染んで、グリップ部を握る手の感触が向上する。
しかも、口栓をグリップ部に被着することによって、釣り操作を行うことができるので、口栓の仕舞い処理することについて意を配する必要がなく、仕舞い処理に係る負担が軽減する。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1又は2に係る発明において、前記振出竿が前記中竿を前記元竿内に収納した状態で、その収納状態を保持可能な伸縮式の竿に構成されている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
振出竿が伸縮式竿であるので、中竿を大径側の竿体に収納した収納状態であれば、その状態が保持されるものであるが、釣り場を移動する途中で振動等を受けて収納状態に緩みが生じそうになったとしても、口栓が元竿とその元竿に収納された中竿の竿先端を覆っているので、中竿等が伸長する状態に作動せず、不測の事態を未然に回避できる。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項1〜3の内のいずれか一つに係る発明において、釣り竿が前記振出竿用口栓を備えた点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
このように口栓を備えることによって、穂先竿、中竿を元竿内に収納した状態での持ち運びが容易になり、かつ、口栓の仕舞い処理にも苦慮することがない釣り竿を提供できるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
渓流竿Aについて説明する。図1に示すように、釣り糸aを連結するリリアン等の糸連結具を備えた穂先竿1、二番竿2から元上3までの中竿、元竿4を振出式に繋いで、渓流竿Aを構成してある。
【0016】
図3に示すように、元竿4の竿尻端開口に元上3の後端膨出部3Aを内嵌保持するゴム製の弾性保持体5を装入装着するとともに、弾性保持体5の竿尻側開口に尻栓6を螺着してある。
弾性保持体5の竿先側端から竿尻側に向けて、弾性保持体5の軸線に向かう複数の突起部5Aを内周複数箇所に設けてあり、この突起部5Aで元上3の後端膨出部3Aを内嵌保持すべく構成してある。
【0017】
図中7は、中竿等を受け止める座ゴムである。
また、釣り竿として伸縮構造を採用するのに、元竿4と元上3とで伸縮構造を適用する例を提示したが、元竿4と元上3との伸縮構造だけでなく、各中竿の間で伸縮構造を適用して、多段式の伸縮構造を構成してもよい。
【0018】
口栓8について説明する。図2(イ)〜(ハ)に示すように、口栓8は、底壁8Aとその底壁8Aから軸線に沿って一方向に延出される周壁8Bとで構成され、底壁8Aは厚板に構成されている。周壁8Bは底壁8Aより厚みの薄いものであり、底壁8Aとの連結部位から底壁8Aと対向する開口に向けて拡径する傾斜壁面に形成されている。周壁8Bの前記開口の縁部8bは厚みの厚い部分となっている。
【0019】
口栓8の材料としては、ニトリルゴム、クロロプレンゴム等の弾性変形性の高い軟質ゴムで構成してある。そのような構成になる口栓8で竿先端を覆うものである。つまり、図1(ロ)に示すように、穂先竿1、中竿を元竿4内に収納した状態で穂先竿1、中竿の竿先端が大径側竿体の玉口部分より覗いた部分を覆うように、図1(ハ)に示すように、口栓8の開口縁8bが元竿4の外周面に至るまで、その口栓8を被せる。これによって、渓流竿Aを持ち運ぶ際に、不測に中竿等が元竿4から飛び出すことを防止できる。
このように、口栓8で元竿4に収納された穂先竿1等の竿先端を覆う状態を、口栓8の作用姿勢と称する。
【0020】
口栓8を元竿4に装着した状態で、穂先竿1に連結した釣り糸aは、図1(ハ)に示すように、口栓8の内面と、元竿4に収納されている穂先竿1、中竿、及びその元竿4の竿先端との間を介して口栓8の開口縁8bから外部に表出する。これによって、釣り糸aの先端に取り付けている釣り針9をこの口栓8に引っ掛け係止することができ、仕掛けの処理が容易になる。
【0021】
次に、口栓8を元竿4から取り外して非作用姿勢に切り換える状態を説明する。口栓8は前記したように、軟質ゴム製のものであるので、図1(ロ)に示すように、口栓8を元竿4より取外す際に、または、取り外した後に、口栓8の開口縁8bを外向きに捲り上げるように折り返すことによって、口栓8の軸線方向長さを徐々に短くすることができる。
【0022】
このように、周壁8Bを捲り上げることができるのは、底壁8Aに比べて周壁8Bの肉厚を薄くしてあるからである。そして、この捲り上げを続け、最終的には、図1(イ)に示すように、周壁8Bを底壁8Aの外周縁部位に位置させることができ、底壁8Aと周壁8Bとが略平板状を呈する状態に縮小させることが可能になり、釣り人がポケット等に納めることができる。
このように、口栓8を縮小させてポケット等に収納し易くなっているので、口栓8の仕舞い処理に苦慮することがなくなった。
【0023】
口栓8の仕舞い処理を行う方法としては、次ぎのような方法が考えられる。図4に示すように、釣り場へ移動する際に元竿4の竿先端部位に取り付けていた口栓8を取外し、その取り外した口栓8を元竿4の竿尻端のグリップ部4Aに外嵌装着する。
これによって、軟質ゴムを材料として製作されている口栓8がその弾性変形性を発揮し、グリップ部4Aを握り易いものにすることができ、握る手のフィット感を向上させる。
しかも、口栓8をグリップ部4Aに装着できるので、口栓8の仕舞い場所を他に見出す必要はなく、仕舞い処理にも苦慮する必要はない。
【0024】
〔別実施形態〕
(1)口栓8としては、次のような構成を採ってもよい。図5に示すように、底壁8Aと周壁8Bとからなる口栓8において、周壁8Bの外周面に突条8aを形成してもよい。突条8aとしては、円周方向に沿って全周に亘って設けてもよく、或いは、螺旋状に形成してもよく、または、円周方向と軸線方向とに配置して交差する状態を現出してもよい。
【0025】
周壁8Bに突条8aを形成したので、次ぎのような効果や使い方が可能である。突条8aが周壁8Bの外周面より突出しているので、手でこの口栓8を握った場合に滑り難く、グリップ部4Aに装着した場合に手が滑り難く握りのフィット感が一層向上する。
【0026】
また、元竿4内に穂先竿1等の収納した状態で口栓8を元竿4の竿先端に装着する場合に、突条8a部分に指を掛けて押し込むことができるので、装着するのも容易に行えるようになる。
更に、釣り針9を口栓8の周壁8Bに係止する点について設明したが、この突条8aが周壁8Bの外周面より突出しているので、釣り針を係止するのを容易に行うことができる。
【0027】
(2)上記実施形態においては、周壁8Bの厚さを底壁8Aより薄いものとしたが、口栓8を形成する素材が縁部8bを捲れる程度に軟質なものであれば、周壁8Bの厚さを底壁8Aと同等のものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】渓流竿の全体側面図
【図2】(イ)穂先竿、中竿等を元竿内に収納し、口栓を捲り上げて平面状態に設定した状態を示す側面図、(ロ)口栓を縁部から捲り上げていく途中の状態を示す縦断側面図、(ハ)口栓を元竿の竿先端に装着した状態を示す縦断側面図
【図3】元上を元竿に収納して保持する前の状態を示す縦断側面図
【図4】口栓を元竿の竿尻端のグリップ部に被着した状態を示す縦断側面図
【図5】口栓の周壁に突条を設けた状態を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0029】
1 穂先竿
4 元竿
4A グリップ部
8 口栓
8A 底壁
8B 周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穂先竿、及び、中竿を元竿に収納した状態でその元竿の開口を閉塞する振出竿用口栓であって、
周壁と、その周壁の軸線方向の一端を閉塞する底壁と、周壁の軸線方向の他端を開口とした筒状体に構成するとともに、前記収納状態の穂先竿、及び、前記中竿の竿先端部を覆う作用姿勢と、前記周壁を捲り上げ前記底壁に沿った平板状に縮小する非作用姿勢とに切り換え可能に構成してある振出竿用口栓。
【請求項2】
前記元竿の竿尻端に形成したグリップ部に被着可能な請求項1記載の振出竿用口栓。
【請求項3】
前記振出竿が前記中竿を前記元竿内に収納した状態で、その収納状態を保持可能な伸縮式の竿に構成されている請求項1または2記載の振出竿用口栓。
【請求項4】
前記振出竿用口栓を備えた請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の釣り竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−125442(P2008−125442A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314429(P2006−314429)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】