説明

振動計測装置

【課題】圧電素子にこじり力、プレロードが作用することがない振動計測装置を提供する。
【解決手段】支持体1の円筒状の孔1b内には、その長さ方向(図中、左右方向)の中央部で、且つ、円筒の内面側に、圧電素子を支持するための圧電素子支持部1aが形成されている。圧電素子支持部1aの中心部は、円形の孔が形成されており、この孔内にリング状の圧電素子2が配置固定されている。第2錘7の中心部に形成した突起7aが前記圧電素子2のリング内に挿入され、前記突起7aを介して錘接合ネジ8で第1錘6と第2錘7とが結合されている。第1、第2錘6、7は、圧電素子2の重心と第1錘6、第2錘7の重心とが一致するように錘の重量および形状が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動計測装置に関するものであり、特に高感度型の圧電型加速度センサを使用し水平方向の微振動加速度を精度良く測ることができる振動計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動測定には、加速度、速度、変位等を測定する方法があり、加速度を検出する測定法としては、圧電型、動電式、ひずみゲージ式、半導体式等が良く知られている。
こられのうち、圧電型加速度センサは、振動と衝撃計測の各分野で最も多く使われている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−181843
【0004】
現在、圧電型加速度センサとしては、圧電素子の剪断効果による電荷の発生を利用した剪断型(シェア型)のものが、パイロ効果が少ないため多く採用されている。
ここで、圧電型加速度センサの基本構造を説明すると、図6は従来公知の剪断型の圧電型加速度センサの断面図である。
図6において、101は支持体、102は圧電素子、103は錘、104はカバー、105は外部接続コネクタであり、前記圧電素子102は支持体101と錘103とによって挟まれた構造を有し、さらに各部材は図示のように組み立てられカバー104内に収納される構成となっている。
上記構成からなる圧電型加速度センサでは、加速度により質量mの錘103が移動すると、錘の移動によって圧電素子102に剪断力が作用して変形し、これによって圧電素子102内に電荷が発生する。この電荷を図示せぬ電子回路基板を通して検出することで、加速度を測定できるようになっている。
【0005】
ところで、圧電素子は慣性力Fを受けると電荷を生じる機能性材料であり、下記(1)式にも示すように発生電荷量Qは組成によって一定である。
Q=d・F(d:圧電定数) (1)
このため、前述した圧電加速度センサにおいて、加速度センサに与えられた加速度αと圧電素子に加わる慣性力Fの関係は、質量(錘)をmとすると下記(2)式に示すニュートンの第2法則で表される。
F=m・α (2)
従って、上記(1)、(2)式から発生電荷量Qは
Q=d・m・α (3)
となり、この時、α・mは一定なので、加速度に対して発生電荷Qは一次比例する。
【0006】
上記(3)式から明らかなように、前述した構成からなる加速度センサでは、微振動を計測する場合は、圧電素子の圧電定数dと質量(錘)mを大きくすることが必要となる。 例えば数gal程度の加速度を計測できる圧電型加速度センサの錘の質量は50〜60gr、圧電素子の径は8〜10mm程度であるのに対し、0.1gal程度までの微振動を計測するものでは、錘の重量は300〜400gr程度、圧電素子の径は20mm程度必要になる。
【0007】
ここで問題になるのは、0.1gal程度までの微振動が計測可能なセンサを前述した図6のような構造で作成した場合、水平方向の微振動を計測する時、センサ自体を図7のように倒して使用することになる。このように支持体101を水平となるように設置した場合、通常の、数gal程度の計測できる圧電型加速度センサでは特に問題にならないが、0.1gal程度までの微振動が計測可能な物になると、錘の重量は300〜400gr程度と重くなるため、図7に示すように、支持体に矢印方向の重力による、大きな荷重が掛かり、支持体101に、破線部のような微小変形(たわみ)が起きる場合がある。 このように支持体101に変形が起きると、圧電素子102にこじり力が生じ、振動により実際に加わる慣性力Fに変化が生じ、発生電荷と加速度の関係が、小型の数gal程度の計測できる圧電型加速度センサのような比例関係にならないことが生じることがある。さらに、前記こじり力が圧電素子にプレロードとして掛かり、圧電素子の周囲温度が急変すると等価的に内部応力が変化したことになって非常に低周波の信号、いわゆる熱ゆらぎが発生し易くなる等の問題があった。
【0008】
さらに、もう一つの間題点として従来構造のものでは図7に示す様に支持体が片もち梁の構造になるため、錘の重量が重い場合は図8に示すような水平方向の振動でも、支持体に片もち梁の曲げモードが生じ、水平方向の周波数特性に、支持体の曲げモードの共振成分が発生してしまい、センサの周波数特性が狭まってしまう問題が生じる。
上記構成のもの以外に、圧電型加速度センサとして、図9に示すような圧電素子102の両側に錘103を付けたベンディング型といわれる構造も知られている。このセンサは、薄型板状の圧電素子102の両端に錘103をつけた構造のため、機械的強度が弱く(圧電素子が薄い板状なので重い錘は取り付けられない)、高感度のセンサ構造には向いていない等の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解消するために、現在最も広く使用されているシェア型構造を有する圧電方加速度センサを使用した上で、水平方向の微振動加速度を精度良く測ることができる振動計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が採用した技術解決手段は、
錘の中央部に括れ部を形成し、その括れ部の周囲に圧電素子を配置し、さらに前記圧電素子を支持体で支持し、加速度により錘が振動し、その錘の振動により圧電素子が変形し、圧電素子の変形を電気的に検出することにより微振動を検出できるようにしたことを特徴とする振動計測装置である。
また、前記錘は括れ部で2分割されるように構成されていることを特徴とする振動計測装置である。
また、前記錘の重心と、圧電素子の重心とが一致するように構成したことを特徴とする振動計測装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成からなる振動計測装置(圧電型加速度センサ)によれば、慣性力Fと、発生電荷Qと、加速度αの関係は比例関係を保つことができるため、微小な振動でも正確に計測できる。
また、圧電素子にこじり力が掛から構成であるためプレロードを小さくでき、熱ゆらぎが発生しにくくなる。このため、0.1gal程度までの加速度を正確に計測することができる。
また、錘を圧電素子の両側に配置する構造を採用することで、現在最も使用されているシェア型構造を有する圧電型加速度センサの構造にも適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、錘の中央部に括れ部を形成し、その括れ部の周囲に錘の重心と圧電素子の重心とが一致するように圧電素子を配置し、さらに前記圧電素子を支持体で支持し、さらに、前記錘は括れ部で2分割されるように構成されている。本発明の振動計測装置によれば、慣性力Fと、発生電荷Qと、加速度αの関係は比例関係を保つことができるため、微小な振動でも正確に計測できる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明すると、図1は本発明に係る振動計測装置の断面図、図2は図1の平面図、図3は図面に於いて上下方向の振動を検出する場合の振動計測装置の配置状態を示す図、図4は図面に於いて左右方向の振動を検出する場合の振動計測装置の配置状態を示す図である。
【0014】
図において、1は振動計測装置(圧電型加速度センサ)の支持体であり、支持体1の中心部には円筒状の孔1bが形成されている。前記支持体は振動計測装置のケースを兼用して構成されている。円筒状の孔1b内には、その長さ方向(図中、左右方向)の中央部で、且つ、円筒の内面側に、圧電素子を支持するための圧電素子支持部1aが形成されている。圧電素子支持部1aの中心部は、円形の孔が形成されており、この孔内にリング状の圧電素子2が配置固定されている。前記圧電素子支持部1aの両側には、第1収納室3および第2収納室4が形成されており、第1収納室3および第2収納室4は圧電素子支持部1aに形成した連通孔5によって連通されており、この連通孔5により第1収納室3、第2収納室4の空気の出入りを許容している。
【0015】
第1収納室3、第2収納室4にはそれぞれ第1錘6、第2錘7が配置され、これらの錘6、7は、本例では第2錘7の中心部に形成した突起7aが前記圧電素子2のリング内に挿入され、前記突起7aを介して錘接合ネジ8で第1錘6と第2錘7とが結合されている。第1、第2錘6、7は図1に示すように、圧電素子2の中心部に第1錘6、第2錘7の重心が来るように錘の重量および形状が設定されている。なお、錘の結合構造は上記例に限らず、種々の形態の結合構造を採用することができる。支持体1の両端には、蓋9が設けられ、前述した各部材を収納している。また、支持体1の適宜箇所には圧電素子2に接続したリード線と接続されているコネクタ10が設けられている。
【0016】
上記構成からなる振動計測装置では、第1錘6、第2錘7の重量が大きくても、圧電素子2を支えている圧電素子支持部1aの変形が無く、圧電素子にこじり力等の外力が加わらなく、振動による純粋な慣性力のみが加わる。このため、微小な振動でも精度良く検出することができる。また、図4のようにセンサの向きを90度変えることによって上下方向の振動も精度良く検出可能となる。また、本発明のような構成を採用することにより、支持体に曲げモードが発生しないため、センサの周波数特性が伸びる(600Hzから1000Hz)。図5に従来構造のものと本発明のものとの周波数特性の例を示す。
【0017】
以上、本発明に係る振動計測装置について説明をしたが、錘の分割の仕方、結合の仕方は本例に限定されることなく、同様の機能を達成できるものであれば、種々の分割、結合方法を採用することができる。また、圧電素子支持部の形状も円筒状に限定することなく、同様の機能を達成できるものであれば多角形など種々の形状のものを採用できる。
さらにまた、本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、建築、土木、機械、電気等の分野の振動計測装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る振動計測装置の断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図中、上下方向の振動を検出する場合の振動計測装置の配置状態を示す図である。
【図4】図中、左右方向の振動を検出する場合の振動計測装置の配置状態を示す図である。
【図5】従来構造のものと本発明のものとの周波数特性の比較を示す図である。
【図6】従来公知の剪断型の圧電型加速度センサの断面図である。
【図7】従来公知の剪断型の圧電型加速度センサを倒して使用する例である。
【図8】従来公知の剪断型の圧電型加速度センサを使用して水平方向振動を検出する場合の説明図である。
【図9】圧電素子の両側に錘を付けたベンディング型といわれる従来公知の圧電型加速度センサの構成図である。
【符号の説明】
【0020】
1 支持体
2 圧電素子
3 第1収納室
4 第2収納室
5 連通孔
6 第1錘
7 第2錘
8 錘接合ネジ
9 蓋
10 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘の中央部に括れ部を形成し、その括れ部の周囲に圧電素子を配置し、さらに前記圧電素子を支持体で支持し、加速度により錘が振動し、その錘の振動により圧電素子が変形し、圧電素子の変形を電気的に検出することにより微振動を検出できるようにしたことを特徴とする振動計測装置。
【請求項2】
前記錘は括れ部で2分割されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動計測装置。
【請求項3】
前記錘の重心と、圧電素子の重心とが一致するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−275565(P2006−275565A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90976(P2005−90976)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】