説明

捕虫器

【課題】 虫を誘引するための光を減衰させることなく有効利用するとともに、広範囲に渡って虫を誘引・捕獲することができるようにする。
【解決手段】 本発明の捕虫器1は、任意に設定された軸7を中心とする略全周の表面に粘着層21aが形成された粘着部材5と、該軸7の周方向へ略等間隔をおいて、該粘着部材5の周囲に列設された複数の光源3とを備え、虫を、光源3からの光により誘引するとともに粘着部材5により捕獲するように構成している。光源3としては、波長が380nm以下の光を発する発光ダイオードを用いている。粘着部材5は、軸7を中心とする略筒状に形成されてなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫を、光で誘引することにより捕獲する捕虫器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
虫を、光で誘引するように構成された捕虫器に関する第一の背景技術として、まず、特許文献1記載の捕虫器を例示する。この捕虫器は、図6に示すように、紫外線発光源101を内部に設けた枠体102と、この枠体102の外面を被覆する捕虫フィルム103とからなっている。捕虫フィルム103は、透明で紫外線発光源101からの波長が通過する基材104と、この基材104の前記紫外線発光源側に設け且つ前記紫外線発光源101からの紫外線により蛍光発色する蛍光体層105と、前記基材104の外側に設け、且つ蛍光が通過する粘着層106とから形成し、この粘着層106で捕虫するようになっている。
【0003】
また、第二の背景技術として、特許文献2記載の超音波照射型捕虫装置を例示する。この捕虫装置は、図7に示すように、前面を開放したケース111と、該ケース111の開放部111aに向けて装着した紫外線ランプ112と、該紫外線ランプ112の背後に装着した粘着捕虫シート113と、紫外線ランプ112の下部に装着された底部に超音波振動子117を装着した容器116と、該容器116に入れられた炭酸ガス発生ビーズ115とからなり、紫外線ランプ112からケース111の開放部111aに向けて紫外線が発生され、炭酸ガス発生ビーズ115に定期的に超音波振動子117から超音波が照射され、紫外線ランプ112からの紫外線及び周囲の光で二酸化炭素を発生して、飛翔する昆虫を誘引し、粘着捕虫シート113で捕獲するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−199471号公報
【特許文献2】特開2008−306953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1記載の捕虫器は、紫外線発光源101が捕虫フィルム103に被覆されているので、捕虫フィルム103を通過するときに紫外線が減衰し、虫の誘引効果が低減するという課題がある。
【0006】
これに対し、特許文献2記載の捕虫装置は、前面を開放したケース111の開放部111aに向けて紫外線ランプ112が装着されており、該紫外線ランプ112の背後に粘着捕虫シート113が装着されているので、特許文献1記載の捕虫器とは異なり、紫外線が減衰するという課題はない。しかし、平面状に形成された粘着捕虫シート113の粘着面の前方に装着された紫外線ランプ112により、該粘着面前方の虫を誘引し捕獲するようになるため、虫の誘引・捕獲可能な範囲が狭いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の捕虫器は、
任意に設定された軸を中心とする略全周の表面に粘着層が形成された粘着部材と、該軸の周方向へ略等間隔をおいて、該粘着部材の周囲に列設された複数の光源とを備え、
虫を、前記光源からの光により誘引するとともに前記粘着部材により捕獲するように構成している。
【0008】
この構成によれば、前記粘着部材の周囲に前記光源が列設されることにより、該光源からの光が直接外部に放射されるようになっているので、光を減衰させることなく有効利用することができる。また、前記軸の周方向へ略等間隔をおいて、前記粘着部材の周囲に複数の光源が列設されるているので、前記軸を中心とする略全周を、虫の誘引・捕獲可能な範囲とすることができる。
【0009】
前記光源としては、捕獲対象の虫に応じて適宜設定することが好ましいが、波長が380nm以下の光を発するものとすることを例示する。前記光源としては、発光ダイオード(以下、「LED」という。)を用いることを例示する。
【0010】
前記捕虫器としては、
前記粘着部材は、前記軸を中心とする略筒状に形成されてなる態様を例示する。
前記略筒状とは、円筒状や、角筒状(三角筒状、四角筒状、多角筒状等)をいう。
【0011】
前記捕虫器としては、
前記粘着部材及び前記光源の上部又は/及び下部には、前記光源からの光を拡散させるための反射部が設けられた態様を例示する。
【0012】
この構成によれば、前記光源からの光を拡散させることにより、広範囲の虫を誘引・捕獲することができる。
【0013】
前記捕虫器としては、
前記粘着部材の近傍に、虫を誘引する誘引剤の格納部が設けられた態様を例示する。
【0014】
この構成によれば、誘引剤から放出される成分により虫の誘引作用を増大させることができる。
【0015】
前記捕虫器としては、
前記誘引剤の成分を前記格納部の外部に対して放出するための放出口は、虫の侵入を防止するための網で覆われた態様を例示する。
【0016】
この構成によれば、前記成分に誘引された虫が格納部の中に侵入することを防止することができる。これにより、格納部内で虫が繁殖することを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る捕虫器によれば、虫を誘引するための光を減衰させることなく有効利用するとともに、広範囲に渡って虫を誘引・捕獲することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る捕虫器を下方から見た斜視図である。
【図2】同捕虫器の縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】粘着部材のシートの使用方法を示す斜視図である。
【図6】従来の捕虫器の断面図である。
【図7】従来の別の捕虫器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図5は本発明を具体化した一実施形態の捕虫器1を示している。本例の捕虫器1は、図1〜図4に示すように、椎茸栽培の害虫を捕獲するためのものであり、虫を誘引するための光を発する複数の光源3と、虫を誘引する成分を発する誘引剤4と、これらに誘引された虫を捕獲するための粘着部材5とが枠体2に装備されている。
【0020】
枠体2は、上下に延びる軸7を中心とする略傘状に形成された上側傘部11及び下側傘部12と、両傘部11,12の間を連接する連接部13とを備えている。
【0021】
上側傘部11は、その上側に、捕虫器1を天井などから吊り下げるための吊り下げ部材15が取り付けられている。また、上側傘部11の下側には、底蓋16が取り付けられている。これにより上側傘部11の内部に空間が形成されており、該空間には、光源3の駆動回路17及び電源18が装備されている。底蓋16の下面には、3個の光源3と、駆動回路17の電源スイッチ19と、粘着部材5を係止するための係止具20とが配設されている。
【0022】
連接部13は、本例では、上下に延びる3本のフレームからなり、軸7の周方向へ略等間隔をおいて、軸7の周囲に列設されている。
【0023】
粘着部材5は、連接部13に巻き付けられることにより、上下方向に延びる軸7を中心とする略筒状に形成されたシート21を備えており、該シート21の全周の表面には粘着層21aが形成されている。シート21は、その両端に設けられた被係止穴21bが係止具20に係止されることにより、枠体2に着脱可能に装着されている。本例のシート21は、可撓性を有する樹脂からなっており、図5に示すように、枠体2に装着される前の状態が、粘着層21a同士が重なるように二つ折りにされた状態となっている。これを、同図に二点鎖線で示すように展開し、枠体2に装着するようになっている。また、本例のシート21は透明に形成されており、粘着部材5の背後に配設された光源3の光が粘着部材5を通過可能なので、少数の光源3でも粘着部材5全体が明るく照らされるようになっている。
【0024】
光源3として、本例では、波長が380nm以下の光を発するLEDを採用している。この波長は、椎茸栽培における公知の各種害虫の誘引に効果的であることを本願出願人は確認している。本例では、上側傘部11の底蓋に、3個の光源3が、軸7の周方向へ略等間隔をおいて、該粘着部材5の周囲に列設されている。また、光源3が配設された底蓋16の底面と、該光源3に対峙する下側傘部12の上面は、光源3からの光を拡散させる反射部となっており、ミラー状に形成されている。
【0025】
下側傘部12は、その下側に(粘着部材5の近傍に)、誘引剤4を格納するための格納部25が設けられている。下側傘部12の中央には、誘引剤4から放出される成分の外部への放出口12aが設けられており、該放出口12aは、虫の侵入を防止するための網26で覆われている。格納部25は、下側傘部12に取り付けられた上部25aに対し、スクリューキャップ状に形成された下部25bが取り外し可能になっており、これにより誘引剤4が交換可能になっている。
【0026】
以上のように構成された本例の捕虫器1によれば、粘着部材5の周囲に光源3が列設されることにより、該光源3からの光が直接外部に放射されるようになっているので、光を減衰させることなく有効利用することができる。また、軸7の周方向へ略等間隔をおいて、粘着部材5の周囲に複数の光源3が列設されるているので、軸7を中心とする略全周を、虫の誘引・捕獲可能な範囲とすることができる。
【0027】
また、前記反射部が設けられているので、光源3からの光を拡散させることにより、広範囲の虫を誘引・捕獲することができる。
【0028】
また、光源3に加え、誘引剤4の格納部25が設けられているので、誘引剤4から放出される成分により虫の誘引作用を増大させることができる。
【0029】
また、誘引剤4の成分を格納部25の外部に対して放出するための放出口12aは、虫の侵入を防止するための網26で覆われているので、前記成分に誘引された虫が格納部25の中に侵入することを防止することができる。これにより、格納部25の中で虫が繁殖することを防止することができる。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)光源3の数を増減したり、光源3の配設箇所を変更したりすること。
(2)光源3として、LED以外のもの(例えば、電球、蛍光灯等)を用いること。
(3)粘着部材5のシートとして、粘着層側の面が光反射性を有するものや、粘着層側の面が蛍光性を有するものを用いること。
(4)粘着部材5の形状として、筒状以外の形状を採用すること。
(5)軸7を上下以外の方向(例えば水平方向)に設定すること。
【符号の説明】
【0031】
1 捕虫器
2 枠体
3 光源
4 誘引剤
5 粘着部材
7 軸
11 上側傘部
12 下側傘部
12a 放出口
13 連接部
15 吊り下げ部材
16 底蓋
17 駆動回路
18 電源
19 電源スイッチ
20 係止具
21 シート
21a 粘着層
21b 被係止穴
25 格納部
25a 上部
25b 下部
26 網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に設定された軸を中心とする略全周の表面に粘着層が形成された粘着部材と、該軸の周方向へ略等間隔をおいて、該粘着部材の周囲に列設された複数の光源とを備え、
虫を、前記光源からの光により誘引するとともに前記粘着部材により捕獲するように構成した捕虫器。
【請求項2】
前記光源は、波長が380nm以下の光を発するものである請求項1記載の捕虫器。
【請求項3】
前記粘着部材は、前記軸を中心とする略筒状に形成されてなる請求項1又は2記載の捕虫器。
【請求項4】
前記粘着部材及び前記光源の上部又は/及び下部には、前記光源からの光を拡散させるための反射部が設けられた請求項1〜3のいずれか一項に記載の捕虫器。
【請求項5】
前記粘着部材の近傍に、虫を誘引する誘引剤の格納部が設けられた請求項1〜4のいずれか一項に記載の捕虫器。
【請求項6】
前記誘引剤の成分を前記格納部の外部に対して放出するための放出口は、虫の侵入を防止するための網で覆われた請求項5記載の捕虫器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−279254(P2010−279254A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132681(P2009−132681)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、農林水産省、先端技術を活用した農林水産研究高度化事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】