説明

排ガスの処理方法

【目的】 低pHでもSOXの吸収能力の優れた排煙脱硫法と炭素質材料の損耗の少ない排煙脱硝法とを組合せた技術を提供する。
【構成】 湿式石灰石−石膏排煙脱硫法により硫黄酸化物の大部分を除去した後の窒素酸化物含有排ガスを80〜200℃に加熱し、アンモニアを添加した後に炭素質材料を内蔵する反応層17−19,24へ導入して窒素酸化物を窒素に還元して排ガスから窒素酸化物を除去すると共に、炭素質材料上に生成した硫酸アンモニウムにより触媒能力の低下した炭素質材料を水洗して炭素質材料を再生し、水洗により得られた硫酸アンモニウム水溶液を湿式石灰石−石膏排煙脱硫法の吸収液中へ導入し、湿式石灰石−石膏排煙脱硫法より排出された排水にアルカリを添加して排水中の硫酸アンモニウムを硫酸アルカリとアンモニアに複分解し、発生したアンモニア含有ガスを反応層へ導入前の排ガスに添加する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、硫黄酸化物 (SOx)および窒素酸化物 (NOx)を含有する排ガスの処理方法に関し、更に詳しくは湿式排煙脱硫法と炭素質材料を使用した乾式排煙脱硝法を有機的に結合させた排ガスの処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種燃焼排ガスや工場排ガスなどのSOx やNOx を含む排ガスの処理方法としては、通常はSOx、NOx が別々に処理されている場合が多く、SOx に関しては石灰石を中和吸収剤として使用し、有用且つ需要の多い石膏として回収する湿式の石灰石−石膏法が主流を占めている。しかしながら、この湿式石灰石−石膏法では、吸収した亜硫酸の酸化をスムーズにし、生成亜硫酸カルシウムによるスケーリングを防止するために、吸収液は3.5〜5.5といった低いpHで運転されており、石灰石の溶解速度が小さいためSOx の吸収能力が小さく、大きな液/ガス比を必要とし、必要動力が大きいという問題があった。一方、NOx に関しては 250〜400℃の高温で金属酸化物を触媒とした乾式のアンモニアによる選択接触還元法(SCR) が主流を占めている。
【0003】しかし、この金属酸化物触媒でのSCRは高温が必要なことからボイラーのエアヒータ上流側に脱硝反応器を設置して脱硝を行わねばならず、排ガス中に含まれる三酸化硫黄 (SO3) や脱硝反応触媒上で生成するSO3 と脱硝用に吹き込んだアンモニアが反応し、生成した硫酸アンモニウムや酸性硫酸アンモニウムが下流のエアヒータ上あるいはガスガス熱交換器上で析出堆積して閉塞や腐蝕等を起こすと言う欠点があった。
【0004】また、このアンモニアによるSCRはエアヒータ上流側に脱硝反応器を設置する場所が無いときなどには、湿式の排煙脱硫の後に加熱手段を設けて設置される場合もあるが、 250〜400℃の高温に加熱するための燃料費が嵩むという問題点があった。これらに対し、近年エアヒータ下流の 130〜150℃程度の低温領域で活性炭等の炭素質材料を用いた同時脱硫脱硝法が提案され (たとえば特開昭50-104774号、特開昭50-104775号、特開昭55-81728号および特開平1-274826号など) 、実際に実用化されている。この方法は排ガスにアンモニアを添加して活性炭等の炭素質材料に導入することにより、SOx は硫酸アンモニウムや酸性硫酸アンモニウムとして除去し、NOx は窒素と水に分解するものである。ここで生成した硫酸アンモニウムや酸性硫酸アンモニウムは炭素質材料の表面あるいは細孔中に蓄積し、脱硝反応活性を低下させるため、通常は炭素質材料を移動層として反応器より抜き出し、炭素質材料を不活性ガス中で約400℃に加熱して、硫酸アンモニウムや酸性硫酸アンモニウムを還元脱着させ、炭素質材料を再生している。
【0005】しかしこの方法では、硫酸アンモニウムや酸性硫酸アンモニウムを還元脱着させるのに炭素質材料やアンモニアを消費し、更にこの操作により炭素質材料の強度が低下するため、炭素質材料の移動による損耗も多くなり、運転コストが嵩むという問題点があった。さらに硫酸アンモニウムや酸性硫酸アンモニウムの還元脱着生成物は二酸化硫黄 (SO2) であり、これを硫酸あるいは元素硫黄に変換して回収しているが、変換のための設備費が嵩むことと、これらは石膏に比べ需要が小さく、且つ立地条件に制約が有るという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決せんとする課題は、上記従来の脱硫、脱硝方法の有する欠点を解消する点にある。すなわち、現在最も優れた排煙脱硫法として知られている湿式石灰石−石膏法と、エアヒータ下流の低温域で実施可能な炭素質材料を用いた排煙脱硝法とを有機的に結合させることで、低pHでもSOXの吸収能力の優れた排煙脱硫法と炭素質材料の損耗の少ない排煙脱硝法とを組合せた技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の排ガスの処理方法は、湿式石灰石−石膏排煙脱硫法により硫黄酸化物の大部分を除去した後の窒素酸化物含有排ガスを80〜200℃に加熱し、この加熱した排ガスにアンモニアを添加した後に炭素質材料を内蔵する反応層へ導入して前記窒素酸化物を窒素に還元して前記排ガスから該窒素酸化物を除去すると共に、前記炭素質材料上に生成した硫酸アンモニウムにより触媒能力の低下した炭素質材料を水洗して炭素質材料を再生し、該再生した炭素質材料を前記窒素酸化物の除去に供し、炭素質材料の前記水洗により得られた硫酸アンモニウム水溶液を湿式石灰石−石膏排煙脱硫法の吸収液中へ導入し、湿式石灰石−石膏排煙脱硫法より排出された排水にアルカリを添加して排水中の硫酸アンモニウムを硫酸アルカリとアンモニアに複分解し、発生したアンモニア含有ガスを前記反応層へ導入前の前記排ガスに添加することを特徴とするものである。
【0008】以下本発明を図1に示した工程にもとづき、説明する。ボイラー等燃焼設備より排出されたSOx, NOxを含有する 130〜150℃の排ガスを導管1を経てガスガス熱交換器2で排煙脱硫後の排ガスと熱交換した後、導管3により排ガス冷却塔4に導入する。冷却塔4で導管5より供給される水溶液のスプレーによって冷却された排ガスは導管6によって脱硫塔7の下部に導入される。一方、脱硫塔7の上部には、石灰石を含有するpH5〜5.5の吸収液が導管8によって供給され、スプレー等の手段により噴霧され、脱硫塔7を上昇する冷却された排ガスと向流接触して排ガス中のSOx の大部分が除去される。
【0009】脱硫塔上部より排出され、NOx と少量のSOx を含有する排ガスは導管9を経てガスガス熱交換器2で80〜110℃に加熱された後、導管10を通って排ガス温度調節器11に入り、ここで必要に応じ排ガスの温度は周知の適当な方法、たとえばアフタバーナー等によってNOx が炭素質材料上で還元されやすい温度、80〜200℃に調節される。
【0010】温度調節器11から出た排ガスは導管12の途中でアンモニア供給導管13よりアンモニアガスと混合され、炭素質材料を内蔵する反応層、たとえば固定層充填塔に導かれる。ここで充填塔としては、図示のように複数の固定層充填塔、たとえば図示のように17、18、19および24の四本の固定層充填塔が用いられ、この中、まず充填塔17、18および19においてNOx の還元が行なわれ、一方、充填塔24では後述のように炭素質材料の再生が行なわれる。すなわちアンモニアガスと混合された排ガスは導管12から導管14、15、16に分岐して炭素質材料が充填された固定層充填塔17、18、19にそれぞれ導入される。
【0011】ここでアンモニアガスの供給量Q(kgmol/hr)は排ガス中のNOx、SOx の量によって決められ、通常次式の範囲で用いられる。
0.7× (a+2b) <Q<1.2× (a+2b)aは排ガス中のNOx 量(kgmol/hr)、bはSOx 量(kgmol/hr)である。充填塔17、18、19…24に導入された排ガスは塔内に充填された炭素質材料と接触し、排ガス中のNOx は炭素質材料の触媒作用によってアンモニアと次式の如く反応し、無害な窒素と水に変換される。
【0012】4NO+4NH3 + O2 →4N2 +6H2O6NO2 +8NH3 →7N2 + 12H2Oまた、排ガス中のSOx は炭素質材料に吸着、酸化された後、アンモニアと反応して硫酸アンモニウムを生成し、排ガスより除去される。こうして清浄化された排ガスは導管20、21、22を通って導管23に合流して系外に排出される。本発明で使用される炭素質材料としては例えば比表面積は50〜1500m2/gで通常、活性炭あるいは活性コークスと呼ばれている炭素質材料、あるいはこれらにTi, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, V, Mo, W等から選ばれた1種以上が担持されたもの等が挙げられる。
【0013】炭素質材料に付着、沈積した硫酸アンモニウムは時間とともに増加し、NOx の還元反応活性を徐々に低下させる。従ってNOx の還元反応活性が所定値以下になる前に炭素質材料の再生操作を行うことが必要である。NOx の還元反応活性が所定値以下になるまでの時間については、処理する排ガスの諸条件、使用する炭素質材料の性状、排ガスの処理条件等により予め設定される。
【0014】充填塔17、18、19で排ガスの処理が行われている間、上記のように充填塔24では炭素質材料の再生操作が行われる。再生操作は洗浄水によって行ない、洗浄水としては排煙脱硫吸収液及び/または水を使用する。導管25より石膏を分離した排煙脱硫吸収液及び/または導管26より水を充填塔24の上部に供給し、塔内の炭素質材料を洗浄する。洗浄方法としては充填塔上部よりスプレーする方法や下部バルブ31を閉鎖して浸漬する方法等により行う。この洗浄により炭素質材料に付着、沈積していた硫酸アンモニウムは洗浄水中に溶出し、洗浄水は充填塔下部の導管27より洗浄水タンク28へ導入される。この洗浄操作によって炭素質材料は再生される。
【0015】洗浄操作を終了した充填塔24の炭素質材料の乾燥はダンパー29及び30を開放し、バルブ31及び32を閉鎖して、排ガス塔内に通過させることによって行うことができる。再生を終了した充填塔24は排ガスの処理工程に復帰し、同時にダンパー33及び34を閉鎖し、バルブ35及び36を開放することによって次に充填塔19が再生工程に入る。
【0016】このように各充填塔に設置したダンパー及びバルブの切り替えを行いながら順次、排ガス処理工程と再生工程を繰り返すことによって排ガスを連続的に処理することができる。また上述したように固定層充填層では、炭素質材料の移動がなく、かつ炭素質材料を水洗によって再生しているため、炭素質材料の損耗がほとんどないという利点がある。
【0017】一方、タンク28に貯えられた硫酸アンモニウムを含有する洗浄水は、導管29によって脱硫塔7の下部の脱硫吸収液に混合される。これにより導管8によって脱硫塔上部にSOx 吸収のために供給される吸収液は硫酸アンモニウムを含有し、硫酸アンモニウムのもつpH緩衝作用によりSOx の吸収が促進される。本発明により吸収液中に蓄積する硫酸アンモニウム濃度は、排煙脱硫プロセスからの排水量によって異なるが、0.1〜1.0mol/l通常は0.2〜0.7mol/lの範囲となる。図2は硫酸アンモニウム水溶液のもつpH緩衝作用を示したもので、硫酸アンモニウムを含まない石膏スラリー溶液に比べSO2 吸収に対し大きな緩衝作用を示すことがわかる。従って硫酸アンモニウムを含有しない場合に比べてSOx の吸収によるpHの低下が少ないため、低いpHの吸収液を使用しても効率のよいSOx 除去が可能となる。これにより脱硫塔の液/ガス比 (L/G) を小さくすることが可能となり、ポンプ動力の低減を計ることが出来る。
【0018】SOx を吸収した吸収液は脱硫塔下部で導管37より供給される空気と接触し、吸収液中の亜硫酸は硫酸に酸化される。さらに生成した硫酸は導管38より供給されるアルカリ源である石灰石と反応し、石膏を生成する。この脱硫塔下部においても硫酸アンモニウムのpH緩衝作用により石灰石の表面近傍はpH上昇が少なくて済み、高い石灰石の溶解速度を達成することができる。これにより未反応石灰石が少なくなり、石灰石の利用率を高めることができる。
【0019】図1の脱硫塔7にはスプレー等を使用したガス連続、液分散型の吸収操作を示したが、吸収液中にバブリング等により排ガスを分散させてSOx の吸収を行う液連続、ガス分散型すなわち、一槽内に収容した石膏を懸濁する液相連続の酸性水溶液中で、排ガス中のSOx の吸収と、生成する亜硫酸の硫酸への酸化と、石灰石による硫酸の中和と、生成した石膏の晶折とを行うプロセスの場合、吸収液のpHは通常3.5〜4.5で排ガスと接触する。一方、前記したガス連続、液分散型では吸収液のpHは通常5.0〜5.5であり、液連続、ガス分散型におけるような低いpHでは図2に示すように硫酸アンモニウムのpH緩衝作用はいっそう顕著であり、SOx の吸収が促進される。これにより、脱硫塔での排ガスの圧力損失を小さくすることができ、排ガスファン動力の低減を計ることができる。さらに、石灰石の中和反応も硫酸アンモニウムの緩衝作用により円滑に進行するため石灰石の利用率をいっそう高めることができる。
【0020】石膏を含有した吸収液は導管39によって石膏分離機40に送られ、ここで石膏が分離される。石膏を分離した吸収液は導管41によって濾液タンク42に貯えられ、さらに導管43によってシックナー44及び石灰石スラリータンク45へ送られる。シックナー44では吸収液中に残存する微細石膏が除去され、清澄吸収液は導管46によって吸収液タンク47に貯えられ、微細石膏はシックナー44下部より導管48によって脱硫塔へ返送される。吸収液タンクに貯えられた清澄吸収液は導管49によって再生用洗浄水として充填塔24に送られ、塔内の炭素質材料の洗浄に使用される。
【0021】一方、吸収液タンク47における清澄吸収液の一部は導管50によって排ガス冷却塔4に送られ、排ガスの冷却に使用された後、導管51によって排水処理工程52に送られる。排水処理工程52で有害物質が除去された排水は導管53によって複分解タンク54へ送られ、排水中の硫酸アンモニウムは導管55より供給されるアルカリと反応し、アンモニアと硫酸アルカリに分解する。分解のpHは9〜12を使用するのが望ましい。分解したアンモニアは複分解タンク54の下部より導管56より供給される空気により排水中より放散され、導管57によってアンモニア供給導管13へ送入され、再び炭素質材料充填塔での脱硝、脱硫反応に使用される。
【0022】複分解用アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、消石灰などが使用できるが、消石灰を使用する場合は複分解に伴い石膏が生成するため、石膏スラリーは複分解タンク54の下部より導管58によって脱硫塔7へ送られる。複分解タンク54で複分解を終了した排水は導管59より排水シックナー60に送られ、ここで微細石膏等を分離した後、導管61でpH調整槽62に送られ、導管63より添加される酸によってpHを6〜8に調整後放流される。
【0023】なお図1においては、炭素質充填塔を4塔使用した場合を示したが、塔数には特に制限はなく、排ガスの処理条件や処理に際しての経済性等を考慮して選定することが望ましい。また図1には、排煙脱硝部分に炭素質材料の固定層充填塔を使用した場合を例示したが、図3に示すように、炭素材料を移動層で使用することもできる。すなわち、適量のアンモニアが混合された排ガスは移動層反応塔90に導入され、反応塔内で塔頂から塔底に向かって移動する炭素質材料と接触し、脱硝される。塔底より抜き出された炭素質材料は移送装置92によって水洗再生装置91下部に導入され、水洗再生装置上部よりスプレー等の手段によって供給される排煙脱硫吸収液及び/または水と接触し、炭素質材料に付着、沈積した硫酸アンモニウムが除去される。
【0024】硫酸アンモニウムが除去された炭素質材料は、水洗再生装置91の塔頂より移送装置92によって反応塔90塔頂に導入され、再び排ガス処理に供される。硫酸アンモニウムを溶出した洗浄水は、洗浄水タンク93を経て脱硫塔へ導入される。この移動層の場合には固定層に比べ、炭素質材料の移動に伴う若干の炭素質材料の損耗が生じるが、反応塔が少なくて済み、設置面積が小さいという利点がある。
【0025】さらに、炭素質材料の固定層充填塔と移動層反応塔とを組み合わせて使用することも効果的である。図4は炭素質材料の固定層充填塔の前段と後段に移動層反応塔を設けた例である。適量のアンモニアが混合された排ガスは移動層反応塔94に導入され、塔頂から塔底に向かって移動する炭素質材料と接触し、排ガス中のSOx の大部分はここで硫酸アンモニウムの形で除去される。SOx が除去された排ガスは固定層充填塔95に導入され、脱硝される。固定層充填塔95で脱硝された排ガスは移動層反応塔96に導入され、ここで排ガス中に残存する微量のアンモニアが除去される。一方、移動層反応塔94の塔底より抜き出された炭素質材料は移送装置97によって水洗再生装置98下部に導入され、既述の方法で洗浄再生された後、水洗再生装置98上部より移送装置97によって移動層反応塔96塔頂へ導入される。反応塔96へ導入された炭素質材料は塔頂から塔底へ移動する間に排ガス中のアンモニアを除去すると共に乾燥される。反応塔96の塔底より抜き出された炭素質材料は、反応塔94の塔頂に導入され、再び排ガス処理に供される。固定層充填塔95に導入される排ガスには極微量のSOx しか残存しないが、長期的には硫酸アンモニウムの生成により、活性低下が招じるので、その時には固定層充填塔上部よりスプレー等の手段によって水を供給し、炭素質材料を洗浄再生する。硫酸アンモニウムを溶出した洗浄水は、洗浄水タンク99を経て脱硫塔へ導入される。この移動層と固定層の組み合わせの場合、固定層ではSOx の影響を殆ど受けず高い脱硝活性を得ることができ、さらに移動層はNOx に比べ除去し易いSOx 及び微量のスリップアンモニアが対象であるため反応塔の容積は小さくてすみ、全体としてコンパクトとなる利点がある。
【0026】本発明では排煙脱硫工程の吸収液中に硫酸アンモニウムが導入されるため、排煙脱硫性能が大幅に向上するが、脱硫率を上げ後段の脱硝用炭素質材料の水洗頻度を少なくするか、あるいは排煙脱硫工程の吸収塔循環液量または排ガスファンΔPを低下させ排煙脱硫工程の脱硫率を硫酸アンモニウムが導入される前のレベルに保つかについても、排ガスの処理条件や処理に際しての経済性等を考慮して選定すれば良い。
【0027】さらに本発明では脱硝用炭素質材料の充填層で脱硫反応も生じるため、全工程を通した脱硫率は100%に近い値となるが、例えば95%の脱硫率で良いなら排煙脱硫工程を大幅に簡素化することも可能であり、これも後段の脱硝用炭素質材料の水洗頻度の増加の影響とを考慮し、最適な方法を選定すれば良い。以下、本発明の実施例を述べる。
【0028】
【実施例】図5に示した工程に従って、下記組成の模擬排ガスの処理を行った。


温度50℃の模擬排ガスを塔径40mmφ、塔高2,000mmの脱硫塔70の上部に導入した。脱硫塔70は液連続、ガス分散型の吸収装置であり、導入された排ガスをガス分散管71より吸収液中に分散させた。この時のガス分散口までの液深は静止液深として200mm、ガス分散口から脱硫塔底部までの液深は1,000mmであった。同時に酸化空気12Nl/hr を脱硫塔下部より導入し、さらにガス分散口の直下のpHが4.0を維持するように炭酸カルシウムを含有するスラリー溶液を導入した。
【0029】この時の脱硫率は90%であった。生成した石膏を含有するスラリー溶液は脱硫塔下部よりポンプで石膏分離器75に送り、石膏を分離された溶液から、さらにシックナー76で微細石膏を分離した後、吸収液タンク77へ導入し、一部は炭酸カルシウムスラリータンク78へ供給し、炭酸カルシウムをスラリー状態に分散させた後、脱硫塔へ導入した。
【0030】脱硫塔上部より排出した排ガスは排ガスヒーター85で110℃に昇温し、濃度1%のアンモニアガス50Nl/hr と混合した後、脱硝塔72に導入した。脱硝塔72、73は塔径50mmφ、塔高1,000mmで4mmφ×5mmの脱硝用活性炭触媒が層高700mm 充填されている。この時の脱硝率は88%で、脱硫率は前段の脱硫工程も含め99%であった。脱硝塔で処理された排ガスは系外へ放出した。
【0031】この模擬排ガスの処理を継続して行ったところ、脱硝率は徐々に低下し、10日後に80%まで低下したので、脱硝塔を72から73に切り替えて運転を継続した。脱硝塔を切り替えた後、脱硝塔72の活性炭触媒を脱硫工程の吸収液タンクからの吸収液1,000mlで洗浄し、さらに1,000mlの水で洗浄した。洗浄後の脱硝塔72は活性炭触媒の乾燥を行うため脱硝塔73と並列に排ガスを導入した。一方、洗浄液は脱硫工程の吸収液中へ導入した。これにより吸収液中の硫酸アンモニウム濃度は0.2mol/lとなり、脱硫工程の脱硫率が97%に上昇したため、ガス分散口までの液深を静止液深として85mmまで低下させ、脱硫率を90%に維持した。
【0032】その後、脱硝率が80%となった時点で脱硝塔73を上記と同様な方法にて水洗に供し、更に触媒の乾燥を行った。また、洗浄液も上記と同様に脱硫工程吸収液中へ導入し、上昇した脱硫率はガス分散口の液深の調整により90%に維持し、更に一般の湿式石灰石−石膏法と同程度の排水量として7ml/hr を導管82より系外へ排出させた。この排水により減少した吸収液は石膏の洗浄用として水を補給し、脱硝塔洗浄液の導入により周期的な変動はあるものの、一定量を維持させた。
【0033】このような方法で脱硝塔を切り替え洗浄再生しつつ、97日間連続で排ガスの処理を行った。その結果、連続運転の途中より、脱硫工程の吸収液中の硫酸アンモニウムの濃度は0.5〜0.6mol/l、脱硫率90%でのガス分散口までの液深は静止液深として60mm、脱硝塔の切り替え間隔は9〜10日、トータルの脱硫率は99%と、ほぼ一定値を示した。
【0034】また、ほぼ定常状態に達したため、排水バルブ83を締め、84を開けて系外への排出排水中に消石灰を添加し、pHを11に保ちながら、下部より空気を導入し、アンモニアをストリッピングさせた。ストリッピングしたアンモニアを含む空気は脱硝塔入口で排ガス中に導入した。ストリッピングアンモニアの導入と共に1%アンモニアガスの導入は30Nl/hr に低減した。この排水中からのアンモニア回収操作を行いながら、10日間排ガス処理を継続した。その結果、アンモニア回収を行う前の上記した脱硫及び脱硝性能をほぼ維持することができた。
【0035】
【発明の効果】以上述べたように本発明の排ガスの処理方法は、湿式石灰石−石膏排煙脱硫工程の後段に炭素質材料の反応層によるアンモニア接触還元排煙脱硝工程を設け、アンモニア接触還元法煙脱硝工程の反応層中の炭素質材料上に生成する硫酸アンモニウムを水洗により除去することで炭素質材料の消耗を防ぐと共に、得られた硫酸アンモニウム水溶液を湿式石灰石−石膏法排煙脱硫工程の吸収液中へ導入することで、硫酸アンモニウムのもつSOx 吸収に対するpH緩衝作用を利用し、低いpHでもSOx を吸収することができる優れた吸収液を提供し、排煙脱硫性能をより向上させることができる。さらに排煙脱硫工程より排出される排水にアルカリを添加することでアンモニアを回収し、再び排煙脱硝用反応層へ供給するという、アンモニア循環系の効果的構成を図ることができ、従って本発明の方法は、従来技術の問題点を解決した排ガスの処理方法と云うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱硝工程に炭素質材料の固定層を用いた場合の本発明の工程を示す図である。
【図2】硫酸アンモニア水溶液がSO2 吸収におよぼす緩衝作用を示す図である。
【図3】脱硝工程に炭素質材料の移動層を用いた場合の本発明の部分工程図である。
【図4】脱硝工程に炭素質材料の固定層と移動層を用いた本発明の部分工程図である。
【図5】本発明の実施例の工程を示す図である。
【符号の説明】
7 脱硫塔 17、18、19、24、95 炭素質材料固定層充填塔
28 洗浄水タンク 42 濾液タンク
70 脱硫塔 72、73 脱硝塔
90、94、96 炭素質材料移動層充填塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 湿式石灰石−石膏排煙脱硫法により硫黄酸化物の大部分を除去した後の窒素酸化物含有排ガスを80〜200℃に加熱し、この加熱した排ガスにアンモニアを添加した後に炭素質材料を内蔵する反応層へ導入して前記窒素酸化物を窒素に還元して前記排ガスから該窒素酸化物を除去すると共に、前記炭素質材料上に生成した硫酸アンモニウムにより触媒能力の低下した炭素質材料を水洗して炭素質材料を再生し、該再生した炭素質材料を前記窒素酸化物の除去に供し、炭素質材料の前記水洗により得られた硫酸アンモニウム水溶液を湿式石灰石−石膏排煙脱硫法の吸収液中へ導入し、湿式石灰石−石膏排煙脱硫法より排出された排水にアルカリを添加して排水中の硫酸アンモニウムを硫酸アルカリとアンモニアに複分解し、発生したアンモニア含有ガスを前記反応層へ導入前の前記排ガスに添加することを特徴とする排ガスの処理方法。
【請求項2】 前記反応層が炭素質材料の固定層と移動層とから成り、該固定層の前後に該移動層が配置されている請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記湿式石灰石−石膏排煙脱硫法が、一槽内に収容した石膏を懸濁する液相連続の酸性水溶液中で、排ガス中の硫黄酸化物の吸収と、生成する亜硫酸の硫酸への酸化と、石灰石による硫酸の中和と、生成した石膏のを晶析とを行う方法である請求項1、2記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−317646
【公開日】平成5年(1993)12月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−126458
【出願日】平成4年(1992)5月19日
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)