説明

排ガス焼却炉

【課題】排ガスの直接燃焼処理において、処理すべき排ガスを予熱する際の熱回収率を高くし、高温度に予熱された排ガスを予熱器や炉内加熱管から取り出してから焼却炉へ導入することをせず、さらに排ガスのリークを無くすことを目指すものである。
【解決手段】排ガス焼却炉内へ排ガスを導入する導入口を有し、該導入口が該排ガス焼却炉内において挿入管部を有することを特徴とした排ガス焼却炉であり、排ガス温度を排ガス燃焼温度近くまで予熱することができるため、燃料使用量を大幅に削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は悪臭成分や有害な有機物成分を含む排ガスを直接燃焼して処理するための排ガス焼却炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排ガスに含まれる悪臭成分や有害な有機物成分は通常800℃程度の高温度にすると
燃焼空気中の酸素と反応して分解し、無害の炭酸ガスや水分とに変わる。例えば炭化水素系の揮発性有機物質を含む排ガスの場合、600〜800℃程度の高温度で分解することができ、無臭無害の排ガスとなすことができる。またPCBやダイオキシン類を含む排ガスの場合、1100℃程度の高温度において無害化することができる。この方法に基づいて排ガスを処理する方法は、その処理効果が確実であるため、古くから実施されてきている。
【0003】
一方この方法は、排ガスを高温度に加熱する必要があり、そのために排ガス中の有機物濃度が薄い場合には多量の燃料を必要とするのである。通常は有機物濃度は薄い場合が大半である。そこで燃料を節約するために、処理後の高温度排ガスの熱を回収することが必須の要件となっている。
【0004】
従来の熱回収方法は、処理する排ガスを排ガス焼却炉へ導入する前に、予熱器に供給してここで高温度燃焼ガスと熱交換し、高温度に予熱する方法である。予熱器の構造としては熱交換器形式のものや炉内に加熱管を設置した方式のものなどがある。この場合、予熱された排ガスは予熱器から取り出して、次いで排ガス焼却炉へ導入されている。あるいは、排ガス焼却炉内の加熱管から炉外の集合管に取り出して、排ガス焼却炉の燃焼室へ再度導入している。この方法は熱伝達方式によって熱回収する方式であるために、高温度燃焼ガスと排ガスとの温度差をつけておくことが必要であり、熱回収率が悪いという欠点がある。また、予熱された排ガスは高温度であるため、この導管を排ガス焼却炉へ取り付ける際、導管は高温度であり排ガス焼却炉の炉体壁は低温度であるため、この温度差による熱膨張対策を施す必要がある。これは、構造的に高度な技術を要し、またトラブルの原因となり易いものである。
【0005】
従来の方法として、蓄熱式熱交換器を用いる方法も実施されている。これは、処理する排ガスを予熱するための蓄熱体を設置し、これを高温度燃焼ガスによって加熱し、その後排ガスの流れを切り替えて、排ガスと高温度蓄熱体とを接触させる。すると、排ガスは高温度に予熱されるのである。この方法は、熱回収率としては非常に優れた方法であるが、排ガスの流れを切り替える必要があり、その際排ガスのリークが発生するのである。そのために、排ガスの処理性能が低下してしまうという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は排ガスの燃焼処理における従来法の欠点を解決しようとするものである。つまり、高温度の燃焼ガスからの熱回収率を高くすることを目的とするものである。そしてその際、高温度に予熱された排ガスを予熱器や炉内加熱管から取り出してから再度焼却炉へ導入することをせず、さらに排ガスのリークを無くすことを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究した結果本発明をなすに至った。すなわち、排ガスを直接燃焼して処理する排ガス焼却炉において、排ガス焼却炉内へ排ガスを導入する導入口を有し、該導入口が該排ガス焼却炉内において挿入管部を有することを特徴とした排ガス焼却炉である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法を実施する場合、排ガス温度を排ガス燃焼温度近くまで予熱することができるのである。そのために、燃料使用量を大幅に削減することができる。さらに、排ガスを予熱器や炉内加熱管から外部へ取り出す構造を有しないために、構造上のトラブルの恐れはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を詳細に説明する。悪臭成分や有害な有機物成分を含む排ガスは発生源から、通常の場合、ファンによって吸引されそして送風されてくる。その排ガスを、排ガス焼却炉に取り付けられた導入口から炉内へ導入する。この際、配管口径として1B〜6B程度の管に分割して導入する事が望ましい。従って排ガス風量が多い場合には、導入管の本数は増加する。
【0010】
つぎに、これらの導入管はそれぞれに炉内へ伸びる挿入管を有している。挿入管は導入口に接続されていて、炉内に長く伸びている。そして炉内において縦方向あるいは横方向に配列して、配置されている。炉内の内壁面に沿って配置するか、あるいは多管式熱交換器のごとく管列状に配置する。排ガスは導入口そして挿入管を通って炉内へ導入される。挿入管の内部には排ガスが流れており、外部は炉内雰囲気であり高温度燃焼ガスが流れているので、挿入管内の排ガスは流れている間に加熱されるのである。つまり、挿入管は排ガスを炉内へ噴出す前に予熱するための加熱管の役割を果たしているのである。挿入管の長さが充分に長ければ、排ガス温度は高温度燃焼ガス温度近くまで上昇する。挿入管の長さを伸ばすことによって、排ガス温度を高温度燃焼ガス温度から50℃程度低い温度まで上昇させることもできる。
【0011】
排ガスの燃焼温度が800℃程度以下の場合は、挿入管の材質は18−8ステンレス鋼を用いることができるが、1100〜1200℃程度の場合は高級な耐熱鋼を使用する必要がある。しかし、バーナーの火炎と直接接するような箇所においては、金属管は高温酸化されて構造強度が低下し易いため、寿命が短く実用的ではないのである。そこで、本発明においては、挿入管の終端部分の高温度になる部分についてはセラミック管を使用することが望ましい。あるいはバーナーの火炎が直接当たらないように配置することが望ましい。
【0012】
挿入管の終端部は、炉内に配置したままであり、そこから予熱された排ガスを排ガス焼却炉内へ噴出す。このとき、挿入管は炉内部に配置されたままであり、炉体の外部に出ない。そのために、低温度の炉体と高温度の挿入管が接合することはなく、構造上のトラブルの原因となる部分はない。
【0013】
排ガス焼却炉内へ噴出された排ガスは、燃料バーナーによる高温度燃焼ガスと混合して焼却温度まで加熱されて、悪臭成分や有害な有機物成分等は燃焼して分解される。そして高温度燃焼ガスとなって炉内を流れ、挿入管と接しながら流れて行く。その際、挿入管の内部を流れている排ガスを加熱し、自分は温度低下して行くのである。挿入管の長さを伸ばすことによって、排ガスの入口温度から50℃程度高い温度まで低下させることもできる。
【実施例1】
【0014】
本発明の方法を実施例に基づいてさらに詳しく説明する。図1において1は排ガス焼却炉本体である。本実施例の焼却炉は横置円筒型のものであるが、焼却炉構造型式に関しての制約はなく、縦型円筒型や横置角型など様々な構造のもので実施可能である。排ガス焼却炉1には排ガスの導入口13が取り付けられ、これに挿入管2が接続されている。挿入管2は排ガス焼却炉1内に伸びており、固定具10によって固定されている。図1において導入口13および挿入管2は1本のみ図示しているが、通常の実施においては多数本の挿入管を設置する。4は排ガス焼却炉内の燃焼室12の仕切壁であり、耐火材で構成されている。挿入管2の終端部の噴出口11は仕切壁4を貫通して、燃焼室へ通じている。仕切り壁4を貫通する際、挿入管2は熱膨張に応じてスライドできる様に、仕切壁4との間をルーズに設置されている。排ガス6は導入口13より導入され、挿入管2の内部を流れ、その間に加熱されて、終端部の噴出口11へ到達しそして燃焼室12内へ噴出される。
【0015】
排ガス焼却炉の燃焼室12には燃焼装置3が設置されており、燃料8と燃焼空気9が供給され、燃焼が行われている。そして燃焼室12内は排ガス処理に適した温度、本実施例では1200℃の高温度に加熱される。排ガス6は燃焼室12内で高温度となり、悪臭成分や有害な有機物成分は分解され、高温度燃焼ガスとなる。
【0016】
高温度燃焼ガスは燃焼室12から出て、挿入管2と接触しながら焼却炉内を出口へ流れていく。この時、挿入管内部を流れる排ガスと熱交換し、自分は温度低下して焼却炉から処理済みの排ガス7として排出される。
【0017】
本実施例では、燃焼室12内の温度は1200℃であり、処理済み排ガス7の温度は200℃であった。従って、熱回収率は(1200−200)/1200=83%であった。
【実施例2】
【0018】
図2において、21は排ガス焼却炉本体である。排ガス焼却炉21内には排ガスの 導入口33および挿入管22が配置され、固定具30によって固定されている。図2において導入口および挿入管22は1本のみ図示しているが、通常の実施においては多数本の挿入管を設置する。挿入管22の終端部にはセラミックス製の管24が取り付けられている。挿入管22とセラミックス製の管24の接続はルーズに接続されており、相互の熱膨張差に応じてスライドするように設置されている。排ガス26は導入口より導入され、挿入管22の内部を通って、さらにセラミックス製管24の内部を流れ、そして下部の噴出口31から燃焼室32内へ噴出する。
【0019】
排ガス焼却炉の燃焼室32には燃焼装置23が設置されており、燃料28と燃焼空気29が供給され、燃焼が行われている。そして燃焼室32内は排ガス処理に適した温度、本実施例では800℃の高温度に加熱される。排ガス26は燃焼室32内で高温度となり、悪臭成分や有害な有機物成分は分解され、高温度燃焼ガスとなる。
【0020】
高温度燃焼ガスは燃焼室32から出て、挿入管22と接触しながら焼却炉内を出口へ流れていく。この時、挿入管内部を流れる排ガスと熱交換し、温度低下して焼却炉から処理済みの排ガス27として排出される。
【0021】
本実施例では、燃焼室32内の温度は800℃であり、処理済み排ガス7の温度は100℃であった。従って、熱回収率は(800−100)/800=88%であった。
【実施例3】
【0022】
実施例2において示した排ガス26は、可能な限り高い温度まで加熱した上で、さらに燃焼室32の下部の噴出口31から噴出すことが望ましいのである。そのために実施例2においてはセラミックス製管24を設置しているが、この方法以外に図3に示す方法も可能である。
【0023】
焼却炉本体21の下部の耐火断熱材を空洞状となして、そこに排ガス26を導入する方法である。図3において、41は焼却炉本体の耐火断熱材25を加工して中空状となしたもので、通気空洞部である。通気空洞部41の上部は、挿入管22と繋がっており、従って排ガス26が導入される。通気空洞部41と挿入管22は相互の熱膨張差に応じてスライドするようにルーズに設置されている。通気空洞部41の内部は空間となっており、排ガス26が下方へ流れるようになっている。排ガス26は通気空洞部41を通り、下部の噴出口31から燃焼室下部へ噴き出すのである。
【0024】
図3において排ガス挿入管26は1本のみ図示しているが、通常の実施に場合は多数本で実施する。その場合、通気空洞部41も同様に多数個設置し、焼却炉内壁の全周にわたって設置することが適切である。つまり、焼却炉の耐火断熱材25の内側に、さらに内壁を設置しドーナツ状とし、その間を排ガスが流れるようにする方法である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】排ガス焼却炉横置角型本体の図
【図2】排ガス焼却炉縦型円筒型本体の図
【図3】排ガス焼却炉耐火断熱材を加工した図
【符号の説明】
【0026】
1:排ガス焼却炉本体
2:挿入管
3:燃焼装置
4:仕切り壁
5:耐火断熱材
6:排ガス
7:処理済排ガス
8:燃料
9:燃焼空気
10:固定具
11:噴出口
12:燃焼室
13:導入口
21:排ガス焼却炉本体
22:挿入管
23:燃焼装置
24:セラミックス管
25:耐火断熱材
26:排ガス
27:処理済排ガス
28:燃料
29:燃焼空気
30:固定具
31:噴出口
32:燃焼室
33:導入口
41:通気空洞部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪臭成分や有害な有機物成分を含む排ガスを、直接燃焼して処理するための排ガス焼却炉において、排ガス焼却炉内へ排ガスを導入する導入口を有し、該導入口が該排ガス焼却炉内において挿入管部を有することを特徴とした排ガス焼却炉。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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