説明

排水口装置

【課題】床面に溜まった水を、ゴムヘラなどを用いて、簡単に能率よく排水することができる排水口装置を提供することを目的とする。
【解決手段】床スラブ11に形成された排水口用の貫通孔に本体枠1が挿入され、下から立上る排水管10に接続される排水口装置である。本体枠1が円筒状に形成され、本体枠1の上端部に大径フランジ2が外周に拡がるように延設される。大径フランジ2の上面内周部寄りに、本体枠1内の排水口4側に向けてすり鉢状に傾斜したすり鉢状円錐傾斜面2aが形成される。大径フランジ2の上面外周部寄りには、傘状に傾斜した傘状円錐傾斜面2bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工場や厨房の床面などを、水を流して洗浄した際、床面の水を排水するときに使用される排水口として好適な排水口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の床スラブには、通常、排水口用の貫通孔が形成され、その貫通孔には、排水口装置が嵌め込まれ、排水口装置の下部が下側から立上った排水管に接続され、床面の水を排水するようにしている。この際、使用される排水口装置としては、例えば、下記特許文献1に記載される排水口装置が知られている。
【特許文献1】特開2006−90079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の排水口装置は、施工時に設置する場合、図4に示すように、床スラブ11に形成された排水口用の貫通孔に、その金具枠21を差し込み、その上縁部のフランジ部22を床スラブ11上に、出すように嵌め込まれる。
【0004】
この後、食品工場や厨房の床面などでは、水を流して洗浄する床の場合、床スラブ上に、塗り床材が塗布され、塗り床材層23が形成される。
【0005】
しかし、従来の排水口装置は、一般に、図4に示すように、その上縁部のフランジ部22が僅かであるが床スラブの上面から突出していること、及び、塗り床材を施工する際、塗り床材が排水口装置内に付着しないようにするため、フランジ部の上面より段差を付けて下げた位置に、塗り床材を塗布するように、施工されている。このため、図4のように、塗り床材層23の上面は、排水口装置のフランジ部22の上面より段差を伴って僅かに低く形成される。
【0006】
このような排水口装置と塗り床材層23を施工した食品工場や厨房などでは、毎日、床を清掃するために、水を流して清掃し、排水は排水口装置から行うのであるが、流した水を排水する際には、作業者が、略T字状のゴムヘラを持って、床面に溜まった水を、排水口装置の排水口に集めて押し込むようにしている。
【0007】
しかし、この種の排水口装置の排水口の内径は、約10cm前後と比較的小さく、しかも、排水口のフランジ部22の上面が僅かではあるが、床面から立上って施工されているため、作業者がゴムヘラで床面に溜まった水を集めて排水口に排水しようとしても、なかなか排水することができず、清掃した後、床面の水を排水するまでに、時間と手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、床面に溜まった水を、ゴムヘラなどを用いて、簡単に能率よく排水することができる排水口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の排水口装置は、床スラブに形成された排水口用の貫通孔に本体枠が挿入され、下から立上る排水管に接続される排水口装置において、該本体枠が円筒状に形成され、該本体枠の上端部に大径フランジが外周に拡がるように延設され、該大径フランジの上面内周部寄りに、該本体枠内の排水口側に向けてすり鉢状に傾斜したすり鉢状円錐傾斜面が形成されると共に、該大径フランジの上面外周部寄りには、傘状に傾斜した傘状円錐傾斜面が形成されたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、大径フランジが本体枠の上端部の外周に拡がるように設けられ、その上面には、内側にすり鉢状円錐傾斜面と外側に傘状円錐傾斜面が設けられているので、塗り床材を床スラブの上面に塗布施工する場合、排水口内に塗り床材を付着させることなく、大径フランジの上面まで、または大径フランジの外周縁部まで、塗り床材を塗布することができる。このため、従来の排水口装置を貫通孔に嵌着した後、塗り床材を塗布する場合のように、段差を付けて塗り床材が施工されることがなく、塗り床材の床面が段差なく、大径フランジのすり鉢状円錐傾斜面に繋がることとなる。
【0011】
このため、床面に水を流して後、水を集めて排水する際、ゴムヘラなどを用いて大径フランジまで水を集めれば、すり鉢状円錐傾斜面から排水口に、簡単に能率よく水を排出することができる。
【0012】
また、請求項2の排水口装置は、上記請求項1の排水口装置において、上記すり鉢状円錐傾斜面の外径は排水口の内径の約2倍〜3倍としたことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、例えば排水口の内径が約10cmの大きさであっても、すり鉢状円錐傾斜面の外径は約20cm〜約30cmとなる。このため、床面に水を流して後、水を集めて排水する際、ゴムヘラなどを用いて大径フランジのすり鉢状円錐傾斜面の外径円つまり約20cm〜約30cmを直径とする円まで水を集めれば、そのすり鉢状円錐傾斜面から排水口に、簡単に能率よく水を排出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排水口装置によれば、床面に溜まった水を、ゴムヘラなどを用いて、その排水口に簡単に能率よく排水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は排水口装置の斜視図を示し、図2はその断面図を示している。この排水口装置は、円筒状の本体枠1を有して構成され、その本体枠1を床スラブに形成された排水口用の貫通孔に挿入し、その下部を下から立上る排水管に接続される排水口装置である。
【0016】
本体枠1は金属または合成樹脂により円筒状に形成され、本体枠1の上端部には大径フランジ2が外周に拡がるように延設されている。本体枠1の内側は、円形の排水口4が形成され、その排水口4の上部内周面に段差部1aが形成され、その段差部1aに蓋5を嵌め込み、排水口4を閉鎖することができる。つまり、排水口4の内周に段差部1aが円周方向に段差を付けて形成され、その上に蓋5がパッキン6を介して被せられ、排水口4を閉鎖可能としている。
【0017】
大径フランジ2の上面内周部寄りに、本体枠1内の排水口4側に向けてすり鉢状に傾斜したすり鉢状円錐傾斜面2aが形成されると共に、大径フランジ2の上面外周部寄りには、傘状に傾斜した傘状円錐傾斜面2bが形成されている。図1,2では、すり鉢状円錐傾斜面2aと傘状円錐傾斜面2bの境界は、その上面が明確に曲折されて、円形の線として現れているが、その境界を滑らかな曲面として形成する、つまり明確な境界とせずに、なだらかな曲面とすることもできる。
【0018】
図2に示すように、排水口4の内径をaとし、大径フランジ2の外径をbとし、すり鉢状円錐傾斜面2aの外径をcとした場合、大径フランジ2の外径bは排水口4の内径aの約3〜4倍とすることができる。つまり、大径フランジ2の外径bは、排水口4の内径aの約2.5倍〜4倍とし、すり鉢状円錐傾斜面2aの外径cは、排水口4の内径aの約2倍〜3倍とすることができる。
【0019】
実際の排水口装置としては、例えば排水口4の内径が約10cmの場合、大径フランジの外径bは約25cm〜約40cmとなり、すり鉢状円錐傾斜面の外径は約20cm〜約30cmとなる。このため、床面に水を流して後、水を集めて排水する際、ゴムヘラなどを用いて大径フランジ2のすり鉢状円錐傾斜面2aの外径円つまり約20cm〜約30cmを直径とする円まで水を集めれば、そのすり鉢状円錐傾斜面2aから排水口4に、簡単に能率よく水を排出することができる。
【0020】
大径フランジ2の厚さは、床面に塗布する塗り床材層の厚さ、及び大径フランジ2の形状保持性や剛性強度を考慮して決めることができるが、例えば、塗り床材層12の厚さが約4mmである場合、大径フランジ2の最大厚さ部つまり傘状円錐傾斜面2bの内径部分の厚さを約6mm、大径フランジ2の外周縁部の厚さ及びすり鉢状円錐傾斜面2aの内周縁部の厚さを約3mmとすることができる。
【0021】
この場合、塗り床材を床面の塗布する際、大径フランジ2の周縁部に段差なく塗り床材を塗り込むことができ、すり鉢状円錐傾斜面2aはその内側に入った水を排水口4内に流し込むことができる。つまり、大径フランジ2の外周縁部の厚さつまり傘状円錐傾斜面2bの外径部分の厚さを、塗り床材層12の厚さ未満とすれば、段差をつけずに塗り床材層12と大径フランジ2を連続させることができる。
【0022】
円筒状の本体枠1の外周部には、合成樹脂製で円筒状のアダプター3が、床スラブ11に設けた貫通孔用に外嵌される。このアダプター3はその貫通孔の内径によりまたは接続する排水管10に応じてその外径が決定され、下側から立ち上がる排水管10がこのアダプター3にまたは本体枠1の下端部に接続される。
【0023】
上記構成の排水口装置は、食品工場や厨房など、床面に水を流して床を清掃する場所の排水口に使用される。図3に示すように、床面には、床スラブ11が施工され、床スラブ11には、排水口用の貫通孔が形成され、その貫通孔に、下から立上るように排水管10が配置される。
【0024】
排水口装置は、床スラブ11の貫通孔に挿入され、その本体枠1またはアダプター3の下端部が排水管10の上端部に接続される。その際、大径フランジ2は、図3に示すように、床スラブ11上に載置され、その状態で、床スラブ11上に塗り床材が施工される。
【0025】
上述のように、例えば大径フランジ2の外周部の傘状円錐傾斜面2bの外径部分つまり外周縁部の厚さが約3mmの場合、塗り床材の厚さは、その傘状円錐傾斜面2bの外周縁部の厚さ約3mmより厚く、傘状円錐傾斜面2bの内径部分の厚さ約6mmより薄い、例えば約4mm〜約5mm(6mm未満)の厚さになるように、塗り床材が床スラブ11上に塗布される。
【0026】
これにより、床スラブ11上に約4mm〜6mm未満の厚さの塗り床材層12が形成され、排水口装置の大径フランジ2は、図3に示すように、塗り床材層12が傘状円錐傾斜面2bの上に段差を付けずに覆って付着することとなる。
【0027】
このように施工された塗り床材層12の床面に、水を流して清掃する際、床面に残った水は、作業者が略T字状のゴムヘラなどを使用して、排水口4に水を集めて、排水するように作業を行なうが、このとき、大径フランジ2の外周縁部は塗り床材層12と段差なく連続しており、さらに、大径フランジ2にはすり鉢状円錐傾斜面2aが形成されているので、作業者はゴムヘラなどを使用して、床面の水を排水口4に集めることができ、そこに集めた水を排水口4に容易に排水することができる。このため、床面に水を流し、清掃した後、その水を床面から簡単に短時間で排水することができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、塗り床材層12が、図3のように、大径フランジ2の傘状円錐傾斜面2bの上まで塗布するようにしたが、塗り床材層12の厚さが比較的薄く、傘状円錐傾斜面2bの外周縁部の厚さ(例えば3mm)と同じ場合、塗り床材層12は傘状円錐傾斜面2bの上面まで塗布せずに、傘状円錐傾斜面2bの外周縁部までとし、その外周縁部と塗り床材層12を段差なく付き合わせるように施工することもできる。これによっても、大径フランジ2上には、すり鉢状円錐傾斜面2aが排水口4に向けて形成されるため、ゴムヘラなどで集めた水を良好に排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す排水口装置の斜視図である。
【図2】同排水口装置の断面図である。
【図3】使用態様を示す排水口装置の断面図である。
【図4】従来の排水口の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本体枠
1a 段差部
2 大径フランジ
2a 鉢状円錐傾斜面
2b 傘状円錐傾斜面
3 アダプター
4 排水口
5 蓋
6 パッキン
10 排水管
11 床スラブ
12 床材層
21 金具枠
22 フランジ部
23 床材層
a 内径
b 外径
c 外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブに形成された排水口用の貫通孔に本体枠が挿入され、下から立上る排水管に接続される排水口装置において、
該本体枠が円筒状に形成され、該本体枠の上端部に大径フランジが外周に拡がるように延設され、該大径フランジの上面内周部寄りに、該本体枠内の排水口側に向けてすり鉢状に傾斜したすり鉢状円錐傾斜面が形成されると共に、該大径フランジの上面外周部寄りには、傘状に傾斜した傘状円錐傾斜面が形成されたことを特徴とする排水口装置。
【請求項2】
前記すり鉢状円錐傾斜面の外径は上記排水口の内径の約2倍〜約3倍としたことを特徴とする請求項1記載の排水口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−106618(P2010−106618A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281520(P2008−281520)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(507340832)株式会社アイエムイー (5)
【Fターム(参考)】