説明

排水弁

【課題】 冷凍冷蔵庫や業務用空調機等から床面に沿って水平状に配管された排水管の途中に接続してドレン等の排水を円滑に行わせると共に、外気や臭気の流入や虫や鼠等の侵入を阻止し、また、内部の清掃が容易に行える排水弁を提供する。
【解決手段】 水よりも比重の軽い球状弁体6を内装している弁室2の前後両端部に、排水管の上流側と下流側とにそれぞれ連結、連通させる流入、流出口3、4を設けていると共に上記弁室2上に下端開口部がこの弁室2内に全面的に連通した短筒部5を上端に向かうに従って後方に傾斜させた状態で突設してあり、この短筒部5の内周面の上端から上記弁室2の両側内壁面の下端間に亘って球状弁体6の両側面を案内して該球状弁体6の前面で流入口3を閉止させるガイド溝等のガイド面を設け、排水時には球状弁体6を浮上させて流入口3を開口させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍冷蔵庫や業務用空調機等に接続している排水管の適所に介装して該排水管の下流側から上流側に虫等が侵入したり、臭気が入るのを防止する排水弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、空調機においては、発生したドレンをドレンパンに収容し、このドレンパンのドレン排出口から該排出口に接続した排水管を通じて屋外に排出するように構成しているが、排水管はドレンパンと外気とを直接、連通させた構造となっているため、この排水管を通じて外気や臭気等が空調機内を通じて室内に侵入するといった問題点が発生する。
【0003】
このため、例えば特許文献1に記載されているように、空調機から室外側に導出した排水管(ドレンホース)の適所に排水弁を接続してこの排水弁により外気との通気を遮断し、外部からの臭気が排水管を通じて室内側に侵入するのを防止するように構成している。詳しくは、この排水弁の構造は、上下端部を接続口に形成しているバルブ本体の中央部をこれらの接続口よりも大径の弁室に形成すると共に、下側の接続口の上端部を弁室の下端部内に突出させてその突出端部を弁室に上下遊動可能に内装している中空球状弁体の弁座に形成してなり、上下接続口を上流側の排水管と下流側の排水管にそれぞれ接続させた状態にして使用し、弁座上に座着する中空球状弁体によって通気を遮断する一方、上流側の排水管からのドレンが弁室内に滞留した際に、中空球状弁体を浮力により浮上させて弁座から離間させ、下流側の排水管に排出するように構成している。
【特許文献1】特開平8−5093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような排水弁によれば、中空球状弁体が着座している状態においては、下流側からの外気が上流側に逆流するのを遮断することができるが、下流側から虫等が侵入した場合には、該中空球状弁体を押し上げてこの排水弁内を通じて上流側に侵入する虞れがある。さらに、気密性を有する室内に換気扇等の作動によって負圧が発生した場合、排水管を通じてこの排水弁の弁室内に吸気力が作用し、この吸気力によって上記中空球状弁体が浮き上がって外気や臭気等が室内に逆流するといった問題点があった。さらに、弁室内に塵埃や異物等が溜まったり詰まった場合には、排水管から排水弁全体を取り外してその除去及び清掃を行うといった煩雑な作業を必要とする。
【0005】
また、この排水弁は上端に流入口を、下端に流出口を設けている縦型の弁であるため、上記のように家庭用の空調機から室外側に導出され、外壁に沿って垂直状に配設されたドレーンホースに対してはこのドレーンホースの下端部等に接続して使用することができるが、大型の冷凍冷蔵庫や業務用空調機等のように、床下空間内等に床面に沿って水平状に配管されている比較的大径の排水管に対しては使用することができなく、このような排水管に対する臭気等の逆流防止は、U字形トラップをその排水管の適所に接続することによって行っているのが現状であり、このような構造では臭気の逆流を防止することができても、排水管の下流側から鼠等が侵入した場合には、このU字形トラップ内を通じて容易に上流側に侵入する虞れがあると共に、床下等のように低くて狭い空間部にこのようなU字形トラップを配設することは極めて困難であるといった問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、床下のような狭い空間部であっても水平状に配管された排水管の適所に簡単に接続して円滑な排水を可能にすると共に、排水管の下流側から虫や鼠等が上流側に侵入したり、臭気が入るのを確実に阻止することができ、その上、排水管から取り外すことなく弁体や内部の清掃等が簡単に行える排水弁を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の排水弁は、請求項1に記載したように、排水管の中間部に接続する排水弁であって、弁本体の前後両端に排水管の上流側と下流側とにそれぞれ接続させる流入口と流出口を設けていると共に弁本体の中央部をこれらの流入口と流出口に連通した弁室に形成し、この弁室に上記流入、流出口の内径よりも大径で且つ水よりも比重の小さい球状弁体を上下動可能に内装していると共に弁室の上周部から上方に向かって上記球状弁体を受け入可能な短筒部を突設して該短筒部の下端開口部を弁室に連通させてあり、さらに、この短筒部の上端開口部に蓋部材を着脱自在に装着していると共に、上記弁室の対向する両側内壁面を球状弁体の両側面を上下方向に摺動させるガイド面に形成して球状弁体が自重によりガイド面の下端部に位置した状態においては該球状弁体の前面で流入口を閉止させるように構成している。
【0008】
このように構成した排水弁において、請求項2に係る発明は、上記短筒部を下端から上端にゆくに従って下流側に向かって斜め後方に傾斜させていることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3に係る発明は、上記短筒部の内径を球状弁体の外径に等しくしてその内周面を球状弁体の摺接ガイド面に形成していると共にこの摺接ガイド面における両側部の下端から下方に連なる弁室の両側内壁面に下端に向かうに従って斜め前方に傾斜したガイド溝を形成してこれらの両側ガイド溝により球状弁体の両側面を案内するガイド面を形成していることを特徴とする。
【0010】
一方、請求項4に係る発明は、上記短筒部の内径を球状弁体の外径よりも大径に形成していると共にその内周面における後部両側内壁面の上端から弁室の両側内壁面の下部にかけて球状弁体の後部両側面を下方に向かうに従って斜め前方に案内する直状突条部を互いに平行に突設していると共に弁本体の両側内壁面の下部にこの両側直状突条部の下端から前方に向かって斜め下方に傾斜した傾斜突条部を突設して、球状弁体がこの両側傾斜突条部の下端部に達した状態においては、該傾斜突条部の傾斜により球状弁体の前面を流入口の開口端に押接させて該開口端を閉止させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、弁本体の前後両端に排水管の上流側と下流側とにそれぞれ接続させる流入口と流出口を設けていると共に弁本体の中央部をこれらの流入口と流出口に連通した弁室に形成し、この弁室に上記流入口を開閉自在に閉止する球状弁体を上下動可能に内装していると共に弁室の上周部から上方に向かって上記球状弁体を受け入れ可能な短筒部を突設した排水弁構造を構成しているので、全体の形状がコンパクトであって多量生産に適し、安価に提供できるのは勿論、弁本体の前後両端に流入口と流出口とを設けている横置型排水弁として冷凍冷蔵庫等から床下の狭い空間部を通じて水平状に配管されている排水管の適所にこの排水弁を簡単に接続して使用することができる。
【0012】
その上、上記球状弁体を流入、流出口よりも大径に形成していると共に、上記弁本体における弁室の対向する両側内壁面を、この球状弁体の両側面を上下方向に摺動させるガイド面に形成して球状弁体が自重によりガイド面の下端部に位置した状態においては該球状弁体の前面で流入口を閉止させるように構成しているので、排水管の上流側からドレン等の排水が行われていない状態においては、球状弁体がガイド面によって前後左右への妄動を抑制された状態に保持されてその前面で流入口の開口端を確実に閉止させておくことができるものであり、さらに、球状弁体の比重を水よりも小さくしているので、排水管の上流側からドレン等が排水された時には、該球状弁体が排水の流動圧によってガイド面に沿って後退しながら浮上して簡単且つ確実に流入口を開放して排水を弁室内に流入させ、弁室内から流出口へと円滑に流出させることができる。
【0013】
この際、排水量に応じて球状弁体をガイド面に沿って短筒部内に向かって上昇させて確実な排水を可能にすると共に、排水が停止した際には、球状弁体がガイド面に沿って正確に下動して流入口を確実に閉止した状態に保持することができる。この状態においては、流出口側から臭気等が上流側に逆流するのを防止することができると共に、排水管の下流側から虫や鼠等が侵入しても、侵入方向が球状弁体の背面側であるから球状弁体が閉止状態を維持して上流側に侵入するのを確実に防止することができる。
【0014】
また、換気扇や空調機のファン等の作動によって負圧が発生し、この負圧によって排水管内の上流側に吸気力が生じてもその吸気力が球状弁体を流入口に一層強固に圧着させる方向に作用することになり、従って、外気や臭気が室内側に侵入する虞れを確実になくすることができる。その上、弁室の上端に球状弁体を受け入れる上記短筒部の下端部を連通させていると共にこの短筒部の上端開口部に蓋部材を着脱自在に装着しているので、弁室内に塵埃や異物等が溜まったり詰まったりした場合には、排水管からこの排水弁を取り外すことなく、蓋部材を取り外すことによって短筒部を通じて球状弁体を粘着テープ等を使用して容易に取り出すことができる。
【0015】
従って、開口した短筒部を通じて弁室内部の塵埃や異物等を容易に除去することができると共に弁室内を隅々まで簡単且つ確実に清掃することができ、その上、球状弁体に付着している塵埃等も水洗等によってきれいに除去することができる。さらに、清掃後においては、上記短筒部の上端開口部を通じて球状弁体を弁室内に投入するだけで、該球状弁体の両側面を弁室の対向する両側内壁面に設けているガイド面に自動的に係合させることができ、このガイド面に沿って下動してその前面で流入口を閉止した使用状態に簡単に復元させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、弁室の上端に突設している上記短筒部を下端から上端にゆくに従って下流側に向かって斜め後方に傾斜させているので、排水弁全体の高さを低くすることができて冷凍冷蔵庫等から床下の狭い空間部に水平状に配管している排水管に対しても、該排水管の適所にこの排水弁を容易に介在させた状態で接続することができ、また、弁室に連通する該短筒部の下端開口部が前後方向に長い楕円形状に形成されて、流入口を閉止している球状弁体の背面側と短筒部の下端開口部における後側周部との間に隙間を設けることができ、従って、球状弁体の開弁動作が確実且つ円滑に行わせることができると共に弁室内の清掃時には球状弁体をこの短筒部を通じて簡単に取り出すことができて清掃作業が容易に行うことができる。
【0017】
さらに、請求項3に係る発明によれば、上記短筒部の内径を球状弁体の外径に等しくしてその内周面を球状弁体の摺接ガイド面に形成していると共にこの摺接ガイド面における両側部の下端から下方に連なる弁室の両側内壁面に下端に向かうに従って斜め前方に傾斜したガイド溝を形成してこれらの両側ガイド溝により球状弁体の両側面を案内するガイド面を形成しているので、球状弁体の開弁、閉弁時には、該球状弁体を前後左右に妄動させることなく、球状弁体の摺接ガイド面とこの摺接ガイド面に連なる弁室の両側ガイド溝とに沿って正確に上下動させながら円滑に開閉動作を行わせることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、上記短筒部の内径を球状弁体の外径よりも大径に形成していると共にその内周面における後部両側内壁面の上端から弁室の両側内壁面の下部にかけて球状弁体の後部両側面を下方に向かうに従って斜め前方に案内する直状突条部を互いに平行に突設していると共に弁本体の両側内壁面の下部にこの両側直状突条部の下端から前方に向かって斜め下方に傾斜した傾斜突条部を突設しているので、これらの直状突条部と傾斜突条部とをガイド面として球状弁体を正確に開閉動作を行わせることができると共に、球状弁体が傾斜突条部の下端部に達して流入口を閉止している状態においては、傾斜突条部の傾斜によって球状弁体が強制的に流入口側に押圧させられて確実に閉弁状態を保持しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は排水弁の縦断側面図、図2はそのA−A線における横断面図、図3はその側面図、図4は分解斜視図であって、弁本体1は透明ないしは半透明の硬質合成樹脂よりなり、中央部を一定長さを有する水平筒状の弁室2に形成していると共にこの弁室2の長さ方向の前後両端開口部を断面円形に形成して該前後両端開口部における前端開口部2aに前方に向かって一定長さを有する円筒形状の流入口3を突設、形成している一方、弁室2の後端開口部2bに後方に向かって同じく一定長さを有し且つ流入口3の内外径と同一内外径の円筒形状の流出口4を突設、形成し、弁室2の前端開口部2aに流入口3の流入終端部を連通させると共に後端開口部2bに流出口4の流出始端部を連通させている。なお、弁室2の長さ方向の一端側を前端とし、他端側を後端としている。
【0020】
これらの弁室2と流入、流出口3、4は、その中心を同一水平軸線上に一致させて全体が一本の直管形状に形成されていると共に流入口3の前端開口部内周面と流出口4の後端開口部内周面を排水管11(図5に示す)の上流側の管端と下流側の管端とを接続させる大径の接続口部3a、4aにそれぞれ形成している。なお、これらの接続口部3a、4aは流入口3と流出口4の外周面によってそれぞれ形成しておいてもよい。さらに、弁室2の上周部から上方に向かって後述する水よりも比重の小さい球状弁体6を受け入れ可能な短筒部5を突設して該短筒部5の下端開口部5aを弁室2内に連通させている。
【0021】
この短筒部5は弁室2の上周部から垂直方向に上方に突設しておいてもよいが、図においては該短筒部5をその下端、即ち、弁室2の上周部から上端開口部5bにゆくに従って下流側に向かって斜め後方に傾斜させている。従って、短筒部5の下端開口部5aは該短筒部5を斜めに切断した平面視楕円形状に形成されていると共に、該短筒部5の下端開口部5aに連通した弁室2の上周部もこの開口部5aと同一大きさの平面視楕円形状の開口部2cに形成されてあり、この開口部2cの周縁に短筒部5の開口下端の周縁を連設させている。
【0022】
弁室2の上半部は前後開口部2a、2bを除いてその両側壁部を上記短筒部5の周方向に凸円弧状に湾曲した両側周壁面に面一状に連続するようにその長さ方向の前後部から中央部に向かうに従って外側方に短筒部5と同一半径でもって凸円弧状に膨出させて互いに平行な壁部に形成することによってその対向する両側内壁面を弁室2の長さ方向に凹円弧状に湾曲したガイド溝7、7に形成してあり、このガイド溝7、7に外径が流入、流出口3、4の内径よりも大径の球状弁体6の両側面を上下摺動自在に係合させた状態にして該球状弁体6を弁室2内に配設している。
【0023】
さらに、上記短筒部5はその内径を球状弁体6の外径に等しい径、若しくは球状弁体6の外径よりも僅かに大径に形成してその内周面を球状弁体6の摺接ガイド面5cに形成していると共にこの摺接ガイド面5cの互いに直径方向に対向する両側部の下端を上記弁室2の両側内壁面に設けている両側ガイド溝7、7の上端にそれぞれ面一状に連続させている。従って、球状弁体6の両側外周面部を摺接させる両側ガイド溝7、7における弁室2の長さ方向に円弧状に湾曲したガイド面は、上記摺接ガイド面5cと同一曲率半径の凹円弧状面に形成されていると共に、これらの対向する両側ガイド面は、摺接ガイド面5cの両側部下端から互いに球状弁体6の直径に略等しい間隔を存して弁室2の上端から該弁室2の高さの中程に至る部分まで設けられている。
【0024】
一方、弁室2の長さ方向の中央周壁部における下半部は、上記両側ガイド溝7、7の下端から下方に向かって弁室2の下半部を半周する半周溝部8に形成されてあり、弁室2の内底面に設けられている該半周溝部8の下端溝部を球状弁体6の下端部の着座部8aに形成している。この半周溝部8の内面は、球状弁体6の外径と同一曲率半径でもって断面凹円弧状に形成されていると共に上記両側ガイド溝7、7における後端縁からこの半周溝部8の後端縁を下方に向かって斜め前方に傾斜した傾斜後端縁9、9に形成してあり、この傾斜後端縁9、9に球状弁体6の両側後部を摺動自在に係合させて、球状弁体6が上記短筒部5側から弁室2内を両側ガイド溝7、7に沿って下動する際には、これらの両側傾斜後端縁9、9により球状弁体6が下動するに従って前方に移動する方向に強制的に付勢されて球状弁体6が上記着座部8aに着座した際には、その前面を短筒部7の前周壁面の下端に連なる流入口3の流入終端開口縁に密接して該流入口3を閉止するように構成している。
【0025】
この状態においては、球状弁体6の中心が弁室2の中心よりも僅かに上方に位置していて、その両側部を上記傾斜後端縁9、9に係合させた状態となっており、従って、球状弁体6の自重による下向きの力を下端に向かうに従って斜め前方に傾斜しているこれらの両側傾斜後端縁9、9によって球状弁体6を前方に移動させようとする付勢力として作用させて該球状弁体6の前面を上記流入口3の開口端に積極的に押し付けて該流入口3を閉止している。また、上記短筒部5の上端開口部に弁本体1と同一樹脂よりなる蓋部材10を着脱自在に装着している。なお、水よりも比重の小さい球状弁体6としては、内部が密閉された合成樹脂よりなる薄肉中空の球状弁体や発泡合成樹脂製の球状弁体を使用することができる。
【0026】
このように構成した排水弁は、図5に示すように、例えば冷凍冷蔵庫、或いは業務用空調機12等から外部にドレンを排出するための水平状に配管された排水管11の適所に介在させた状態で接続して使用される。具体的には弁本体1における短筒部5を上向きに、着座部8aを下向きにした状態にしてその流入口3を上流側の排水管に接続し、流出口4を下流側の排水管に接続した状態にする。この時、排水弁は弁本体1の上端に短筒部5を斜め後方に傾斜させた状態で一定に設けて高さをできるだけ低くした横置型の排水弁であるから、床下等の狭い空間部であっても、容易に配設施工することができる。
【0027】
この配管状態において、上流側からドレン等の排水が行われていない場合には、弁室2内に配設している球状弁体6が着座部8a上に着座していてその前面で弁室2の前端開口部2aに連通している流入口3の流入終端部を閉止している。従って、下流側の排水管から外気や臭気等が上流側の排水管内に入るのを防止していると共に、下流側の排水管を通じて虫や鼠等が弁室2内に侵入しても、侵入方向が球状弁体6の背面側であるから球状弁体6が押し開く虞れはなく、閉止状態を維持して上流側の排水管に侵入するのを確実に防止することができる。また、室内の換気扇や空調機のファン等の作動によって排水管11の上流側に負圧が発生して該管内に吸気力が生じても、その吸気力は球状弁体6を流入口3に一層強固に圧着させる方向に作用することになり、従って、吸気力によって外気等が下流側の排水管を通じて室内側に侵入する虞れを確実になくすることができる。
【0028】
次に、冷凍冷蔵庫や業務用空調機等から排水された場合、この排水が排水管11を通じて弁本体1の流入口3に達すると、該流入口3を閉止している球状弁体6の比重が水よりも軽いので、この球状弁体6が排水によって下周溝部8の両側部から両側ガイド溝7、7に案内されながら後方に向かって斜め上方に浮上し、図6に示すように流入口3の下端部を開放して排水を弁室2内に流入させ、弁室2内を流通して排水管11の下流側に排出する。排水量が増大すると、水面が上昇して球状弁体6がその上昇に応じて浮上しながら両側ガイド溝7、7に沿って上方に向かって斜め後方に移動して短筒部5内に受け入れられ、流入口3を大きく開口させて円滑な排水を可能にする。
【0029】
排水が停止した場合には、球状弁体6が短筒部5の内周面によって形成している摺接ガイド面5cをガイドとして下動し、この摺接ガイド面5cから弁室2の両側内壁面に設けているガイド溝7、7に該球状弁体6の両側面が案内されながら下動するに伴って両側傾斜後端縁9、9により斜め前方に押し進められてその下半部における両側面から下周面に連なる半円周部分が弁室2の下半部内周面に設けている下周溝部8内に嵌合して着座部8aに着座すると、球状弁体6がその前面で弁室2に向かって開口している流入口3の開口端縁を閉止した状態となる。この状態においては、球状弁体6が下周溝部8の傾斜後端縁9、9によって前方に押圧されていてその前面を積極的に流入口3の開口端縁に圧着、閉止した状態を保持する。
【0030】
また、弁本体1は透明ないしは半透明の合成樹脂によって形成されているので、外部からこの弁本体1内を透視することができ、蓋部材10を取り除くことなく弁本体1内の状態を確認することができる。そして、長期の使用中に、ドレン等に混入している塵埃や異物等により弁本体1の弁室2内が汚損されたり、塵埃等が付着して円滑な作動が行えなくなった場合、弁本体1を排水管11から取り外すことなく、接続させた状態で短筒部5の上端開口部5bを閉止している蓋部材10を取り外すと、該開口部5bを通じて弁室2内の球状弁体6の上周部が露呈した状態となるので、開口部5bを通じて粘着テープ片を挿入してその先端部を球状弁体6の上周部に貼着させ、粘着テープ片を引き戻すことによって球状弁体6を弁室2から短筒部5を通じて外部に簡単に取り出すことができる。
【0031】
こうして、球状弁体6の除去によって空になった弁本体1の弁室2や流入、流出口3、4、短筒部5内を水洗等によって清掃すると共に取り出した球状弁体6もその外周面に付着している塵埃等を除去してきれいに洗浄したのち、この球状弁体6を短筒部5の上端開口部5bから投入して弁室2内に配設し、短筒部5の上端開口部5bを蓋部材10により閉止する作業を行うことにより、排水弁を簡単に組み立てることができる。この際、短筒部5の上端開口部5bから球状弁体6を投入すると、該球状弁体6は短筒部5の内周面によって形成されている摺接ガイド面5cを伝って弁室2の両側内壁面に設けているガイド溝7、7に案内されながら弁室2の下半部内周面に設けている下周溝部8、8に自動的に嵌合し、その下面が着座部8aに着座すると共にその前面によって流入口3の流入開口端を閉止した状態となる。
【0032】
なお、以上の実施の形態においては、短筒部5の内径を球状弁体6の外径に等しくしてその内周面を球状弁体6の摺接ガイド面5cに形成し、さらに、弁室2の対向する両側壁面に上記摺接ガイド面5cの両側部に連なるガイド溝7、7を形成しているが、図7〜図9に示すように、短筒部5'の内径を球状弁体6の外径よりも大径に形成してこの短筒部5'内に該短筒部5'の上端から弁室2'の両側内壁面の下部に至るまで、球状弁体6を案内するガイド突条部20、21を突設した構造としておいてもよい。
【0033】
具体的には、この排水弁の弁室2'の下半部を内径が球状弁体6の外径よりも大径に形成されている短筒部5'の内径に等しい径とした半円筒形状に形成されてあり、この弁室2'を中央にして該弁室2'の断面円形に形成されている長さ方向の前後両端開口部に球状弁体6よりも小径の一定長さを有する円筒形状の流入、流入口3、4それぞれ前後方向に突設して弁本体1'を構成している。短筒部5'はその下端開口部を弁室2'の上周部に全面的に連通させた状態で上方にゆくに従って斜め後方に傾斜した状態で弁室2'に一体に設けてあり、この短筒部5'の内周面における後部両側内壁面の上端から弁室2'の両側内壁面の下部に至る部分に球状弁体6の後部両側面を係合状態で案内する一定高さを有する直状突条部20、20を互いに平行に突設している。
【0034】
これらの両側直状突条部20、20は短筒部5'と同一傾斜角度でもって上端から下端に向かって斜め前方に傾斜してあり、さらに、弁室2'の下半部における対向する両側内壁面にはこれらの両側直状突条部20、20の下端から下方に向かってさらに斜め前方に傾斜した傾斜突条部21、21を突設している。この傾斜突条部21、21はその上端を上記両側直状突条部20、20の下端に連続させていると共に下方に向かって互いに平行に設けられているが、必ずしも平行にすることなく、下端に向かって両傾斜突条部21、21間の間隔が狭くなるように、或いは、拡くなるように設けておいてもよく、要するに、球状弁体6の両側面の下周部がこの傾斜突条部21、21上で案内されて該球状弁体6が傾斜突条部21、21の下端部上に達した時に、球状弁体6の前面が流入口3の開口端を閉止するように構成しておけばよい。上記短筒部5'の上端開口部が蓋部材10によって開閉自在に閉止されている等のその他の構造については上記図1〜4で示した実施の形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0035】
このように構成したので、冷凍冷蔵庫や業務用空調機等から排水管11にドレン等の排水が行われていない場合には、球状弁体6の前面によって弁室2の前端開口部2aに連通する流入口3の流入終端部を閉止している。次に、ドレン等が排水された場合には、この排水が排水管11を通じて弁本体1の流入口3に達すると、該流入口3を閉止している球状弁体6の比重が水よりも軽いので、排水によってこの球状弁体6がその両側面の下周部を両側傾斜突条部21、21上に接して斜め上方に向かって後退しながら浮上し、流入口3を開放して排水を弁室2内を通じて排水管11の下流側に排出する。排水量が増大すると、水面の上昇に応じて該球状弁体6が浮上して球状弁体6が短筒部5'内に受け入れられる。この際、上端に向かって斜め後方に傾斜している短筒部5'の内径が球状弁体6の外径よりも大径に形成されているのが、球状弁体6が両側直状突条部20、20から上方に離間してその前面における上周部を短筒部5'の前側傾斜内周面に摺接させながら浮上する。
【0036】
排水が停止した場合には、球状弁体6が降下してその両側面の後周下部を両側直状突条部20、20上に架設状態に係合してこれらの両側直状突条部20、20に接して傾斜突条部21、21上に達し、これらの傾斜突条部21、21上を下動するに伴って斜め前方に移動してその前面を弁室2に向かって開口している流入口3の開口端縁に密接させ、該流入口3を閉止する。この状態においては、球状弁体6が傾斜突条部21、21によって前方に押圧された状態を保持してその前面を積極的に流入口3の開口端縁に圧着、閉止させている。
【0037】
そして、長期の使用中に、ドレン等に混入している塵埃や異物等により弁本体1'の弁室2内が汚損されたり、塵埃等が付着して円滑な作動が行えなくなった場合には、上記実施の形態と同様に、弁本体1'を排水管11から取り外すことなく、接続させた状態で短筒部5'の上端開口部5bを閉止している蓋部材10を取り外し、開口部5bを通じて粘着テープ片等を使用して球状弁体6を弁室2'から取り出し、空になった弁本体1'の弁室2'や流入、流出口3、4、短筒部5'内を水洗等によって清掃すると共に取り出した球状弁体6もその外周面に付着している塵埃等を除去してきれいに洗浄したのち、この球状弁体6を短筒部5'の上端開口部5bから投入して弁室2内に配設する。
【0038】
この際、球状弁体6を短筒部5'に投入すると、その両側面の後周下部が両側直状突条部20、20上に支持されると共に球状弁体6の前面側と短筒部5'の前部内周面との間に一定の隙間を存した状態でこれらの直状突条部20、20に沿って下動し、直状突条部20、20の下端から傾斜突条部21、21上を摺動してこれらの傾斜突条部21、21により流入口3側に移動させられて該流入口3の開口端を自動的に閉止し、再び排水弁としての使用を可能にする。なお、本発明の排水弁は、高層建物の床下内に敷設された排水管や台所の排水管にも接続して使用することもできる。
【0039】
なお、以上のいずれの実施の形態においても、短筒部5、5'を上端に向かうに従って斜め後方に傾斜させているが、図10に示すように、その短筒部5'' を弁室2の上端から垂直状に突設させておいてもよい。この場合、短筒部5'' の内径を球状弁体6の外径よりも大径に形成しておき、弁室2に全面的に連通する該短筒部5'' の下端開口部5aにおける後端両側部から弁室2の長さ方向の中央部における内底面に設けている断面凹円弧状の着座部8aの後端両側部に向かって斜め前方に傾斜した両側傾斜ガイド突条部7'、7'を設け、この両側傾斜ガイド突条部7'、7'に球状弁体6の両側面後部を係合させながら上下動可能にして、球状弁体6が着座部8aに着座している時にはこの両側傾斜ガイド突条部7'、7'の下端部で該球状弁体6を前方方向に押圧した状態にしてその前面で流入口3を閉止した状態に保持し、排水時には球状弁体6を該両側傾斜ガイド突条部7'、7'に沿って上方に浮上させて流入口3を開放させるように構成している。
【0040】
弁室2の前後端に連通した流入、流出口3、4の内径が球状弁体6の外径より小径であることや短筒部5'' の上端開口部5bに蓋部材10を着脱自在に装着していること等、その他の構成については上記実施の形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明排水弁の縦断側面図。
【図2】そのA−A線における横断面図。
【図3】その側面図。
【図4】分解斜視図。
【図5】使用状態を示す簡略縦断側面図。
【図6】流入口が開口した状態の縦断側面図。
【図7】本発明排水弁の別な実施の形態を示す縦断側面図。
【図8】その簡略斜視図。
【図9】図8におけるB−B線横断面図。
【図10】本発明排水弁のさらに別な実施の形態を示す縦断側面図。
【符号の説明】
【0042】
1 弁本体
2 弁室
3 流入口
4 流出口
5 短筒部
6 球状弁体
7 ガイド溝
10 蓋部材
11 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管の中間部に接続する排水弁であって、弁本体の前後両端に排水管の上流側と下流側とにそれぞれ接続させる流入口と流出口を設けていると共に弁本体の中央部をこれらの流入口と流出口に連通した弁室に形成し、この弁室に上記流入、流出口の内径よりも大径で且つ水よりも比重の小さい球状弁体を上下動可能に内装していると共に弁室の上周部から上方に向かって上記球状弁体を受け入可能な短筒部を突設して該短筒部の下端開口部を弁室に連通させてあり、さらに、この短筒部の上端開口部に蓋部材を着脱自在に装着していると共に、上記弁室の対向する両側内壁面を球状弁体の両側面を上下方向に摺動させるガイド面に形成して球状弁体が自重によりガイド面の下端部に位置した状態においては該球状弁体の前面で流入口を閉止させるように構成していることを特徴とする排水弁。
【請求項2】
短筒部を下端から上端にゆくに従って下流側に向かって斜め後方に傾斜させていることを特徴とする請求項1に記載の排水弁。
【請求項3】
短筒部の内径を球状弁体の外径に等しくしてその内周面を球状弁体の摺接ガイド面に形成していると共にこの摺接ガイド面における両側部の下端から下方に連なる弁室の両側内壁面に下端に向かうに従って斜め前方に傾斜したガイド溝を形成してこれらの両側ガイド溝により球状弁体の両側面を案内するガイド面を形成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水弁。
【請求項4】
短筒部の内径を球状弁体の外径よりも大径に形成していると共にその内周面における後部両側内壁面の上端から弁室の両側内壁面の下部にかけて球状弁体の後部両側面を下方に向かうに従って斜め前方に案内する直状突条部を互いに平行に突設していると共に弁本体の両側内壁面の下部にこの両側直状突条部の下端から前方に向かって斜め下方に傾斜した傾斜突条部を突設して、球状弁体がこの両側傾斜突条部の下端部に達した状態においては、該傾斜突条部の傾斜により球状弁体の前面を流入口の開口端に押接させて該開口端を閉止させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−50853(P2008−50853A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228551(P2006−228551)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000114994)ユーシー産業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】