説明

排水栓

【課題】ヘアーキャッチャーの掃除を流水時に自動的に行い、手入れ性の向上した排水栓を提供すること。
【解決手段】複数の捕集リブ8が中心側から外側に向かって放射状に延び、傘状に形成された上キャッチャー部5および下キャッチャー部6が、筒形の胴部7に、胴部を中心として上下対称に配置されて連結され、上キャッチャー部は上方に突出し、下キャッチャー部は下方に突出するヘアーキャッチャー4が、ケレップ2の中心部から下方に延びるケレップ軸3に着脱自在に配設され、取り外し後に上下反転させてケレップ軸に取り付け可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面化粧台の排水口に装着され、毛髪やごみなどを捕集するヘアーキャッチャーを備えた排水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面化粧台の排水口に装着される排水栓には、排水管や下水管に毛髪やごみなどが流出することに起因する配管の詰まりを抑制し、また、浄水処理の負荷を軽減するなどのために、毛髪やごみなどを捕集するヘアーキャッチャーを備えたものが提供されている。
【0003】
そして、ケレップの中央部から下方に延びるケレップ軸にヘアーキャッチャーを着脱自在に配設した排水栓が知られている(特許文献1、2)。
【0004】
上記排水栓では、捕集して溜まったときにはヘアーキャッチャーをケレップ軸から取り外し、毛髪やごみなどを除去し、ヘアーキャッチャーに付着した細かなごみや汚れを歯ブラシなどを用いて磨き、水洗して、掃除することができる。
【特許文献1】特開平9−316957号公報
【特許文献2】特開2007−85107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヘアーキャッチャーを掃除する際には、ヘアーキャッチャーを手に持って作業しなければならず、表面のぬめりなどに直に触れることになるため、嫌悪感が否めない。手袋を嵌めればヘアーキャッチャーへの直接接触は避けられるが、ヘアーキャッチャーの掃除のたびに手袋を嵌めるのは面倒であり、掃除後に手袋を洗浄する手間もかかる。
【0006】
したがって、上記排水栓は、手入れ性の面で改善が望まれる。
【0007】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ヘアーキャッチャーの掃除を流水時に自動的に行い、手入れ性の向上した排水栓を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排水栓は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0009】
すなわち、第1の発明は、複数の捕集リブが中心側から外側に向かって放射状に延び、傘状に形成された上キャッチャー部および下キャッチャー部が、筒形の胴部に、胴部を中心として上下対称に配置されて連結され、上キャッチャー部は上方に突出し、下キャッチャー部は下方に突出するヘアーキャッチャーが、ケレップの中心部から下方に延びるケレップ軸に着脱自在に配設され、取り外し後に上下反転させてケレップ軸に取り付け可能とされていることを特徴としている。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、各捕集リブは、胴部との連結部付近で折れ曲がり、折曲部を有し、折曲部の折曲端が胴部内側に配置され、各捕集リブの胴部との連結部における連結端が、折曲部の折曲端から胴部の内周端縁に向かって斜め外側に向かって延びていることを特徴としている。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、ケレップ軸の下端部に環状溝部が形成され、略U字形状のリングが、環状溝部においてケレップ軸に上下方向に回動自在に配設され、環状溝部の下端縁に沿って水平に配置されるリングの湾曲部はケレップ軸の外周面外側に突出し、リングは、ヘアーキャッチャーを係止してケレップ軸上に保持するとともに、上方への回動によりヘアーキャッチャーのケレップ軸への着脱を自在としていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の発明によれば、ヘアーキャッチャーは、複数の捕集リブが中心側から外側に向かって放射状に延び、傘状に形成された上キャッチャー部および下キャッチャー部が、筒形の胴部に、胴部を中心として上下対称に配置されて連結され、上キャッチャー部は上方に突出し、下キャッチャー部は下方に突出して形成され、上記ヘアーキャッチャーが、ケレップの中心部から下方に延びるケレップ軸に着脱自在に配設され、取り外し後に上下反転させてケレップ軸に取り付け可能とされているので、ケレップ軸に取り付けられた状態ではヘアーキャッチャーの上キャッチャー部または下キャッチャー部のいずれか一方が胴部から上方に突出し、毛髪やごみなどを効率よく捕集することができる。捕集し、溜まった毛髪やごみなどは、ヘアーキャッチャーをケレップ軸から取り外すことにより除去することができる。除去後には、ヘアーキャッチャーを上下反転させ、細かなごみや汚れが付着している上キャッチャー部または下キャッチャー部を下側に向けてケレップ軸に取り付ける。そして、水を流すことにより、流水によって上キャッチャー部または下キャッチャー部に付着している細かなごみや汚れは洗い落とされる。この流水洗浄は、下側に向けられた上キャッチャー部または下キャッチャー部が下方に突出していることから効果的に行われる。したがって、ヘアーキャッチャーの掃除を自動化することができ、表面のぬめりなどに直に触れずに、また、手袋を嵌めることなく掃除することができるので、排水栓の手入れ性が向上する。
【0013】
上記第2の発明によれば、各捕集リブは、胴部との連結部付近で折れ曲がり、折曲部を有し、折曲部の折曲端が胴部の内側に配置され、各捕集リブの胴部との連結部における連結端が、折曲部の折曲端から胴部の内周端縁に向かって斜め外側に向かって延びているため、各捕集リブの折曲部と胴部の内周端縁との間に付着した細かなごみや汚れがより効率的に洗い落とされ、また、毛髪やごみなどをより効率的に捕集することができる。
【0014】
上記第3の発明によれば、ケレップ軸の下端部に環状溝部が形成され、略U字形状のリングが、環状溝部においてケレップ軸に上下方向に回動自在に配設され、環状溝部の下端縁に沿って水平に配置されるリングの湾曲部はケレップ軸の外周面外側に突出し、リングは、ヘアーキャッチャーを係止してケレップ軸上に保持するとともに、上方への回動によりヘアーキャッチャーのケレップ軸への着脱を自在としているので、ヘアーキャッチャーの取り付け状態が安定に保持されるとともに、ヘアーキャッチャーの着脱が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の排水栓の一実施形態を示した斜視図である。
【0016】
図1に示した排水栓1では、洗面化粧台の排水口の口径に対応する外径を有する略円板状のケレップ2の下側中央部からケレップ軸3が垂下している。ケレップ軸3は、断面円形状の金属棒から形成されている。ケレップ軸3には、ヘアーキャッチャー4が着脱自在に配設され、図1に示した取り付け状態では、ヘアーキャッチャー4は、自重によりケレップ軸3の下端部に配置されている。ヘアーキャッチャー4は、ケレップ軸3に着脱自在とされているので、取り付け状態においても配置位置は固定されず、自重により最下位となる下端部からケレップ2の間までをケレップ軸3に沿って上下に移動可能である。
【0017】
ヘアーキャッチャー4は、上キャッチャー部5、下キャッチャー部6および胴部7から形成されている。上キャッチャー部5、下キャッチャー部6は、上下に開口している短尺円筒状の胴部7に、胴部7を中心として上下対称に配置されて連結され、上キャッチャー部5および下キャッチャー部6は同一の形状および構造を有している。
【0018】
上キャッチャー部5および下キャッチャー部6は、複数の片状の捕集リブ8が中心側から外側に向かって放射状に延び、傘状に形成されている。各捕集リブ8は、中心側端において、内径がケレップ軸3の外径より若干大きい環状のリング9に連結され、外側端において胴部7の内周端縁7aに連結されている。
【0019】
各捕集リブ8の胴部7との連結部では、図2にも示したように、各捕集リブ8は、胴部7との連結部付近で折れ曲がり、折曲部10を有し、折曲部10の折曲端10aが胴部7の内側に配置されている。すなわち、上キャッチャー部5では、各捕集リブ8の折曲部10は、胴部7の径方向内側で上端7bより下方に位置し、折曲端10aが胴部7の上端7bより下方に位置している。下キャッチャー部6では、各捕集リブ8の折曲部10は、胴部7の径方向内側で下端7cより上方に位置し、折曲端10aが胴部7の下端7cより上方に位置している。このような折曲部10も上キャッチャー部5および下キャッチャー部6が胴部7に対し上下対称に配置されていることから、胴部7の高さ方向の中心線に対して上下対称に配置されている。また、各捕集リブ8では、胴部7との連結部における連結端8aが、折曲部10の折曲端10aから胴部7の内周端縁7aに向かって斜め外側に向かって延びている。
【0020】
このような上キャッチャー部5、下キャッチャー部6および胴部7から形成されるヘアーキャッチャー4は、中空の部材であり、通水可能であり、図1に示したように、ケレップ軸3に取り付けられ、排水栓1が洗面化粧台の排水口に装着されたとき、排水に支障はなく、しかも、図1に示した取り付け状態では、上キャッチャー部5において排水口から排水とともに流れ落ちる毛髪やごみなどを捕集リブ8によって捕集することができる。ヘアーキャッチャー4は、リング9を含め樹脂の一体成形品として容易に製造することができる。ケレップ軸3への着脱は、上下端に位置するリング9を通じて行うことができる。ケレップ軸3への着脱が自在とされているため、ヘアーキャッチャー4は、取り外し後に上下反転させてケレップ軸3に取り付け可能であり、再装着した際には、上キャッチャー部5と下キャッチャー部6とが上下に反転して配置されるだけであり、ヘアーキャッチャー4の全体は、形状および構造において取り外し前と全く変わらなく、同様に機能する。
【0021】
上記排水栓1は次のように使用される。
【0022】
まず、図1に示したように、上キャッチャー部5を上側に向け、下キャッチャー部6を下側に向けてヘアーキャッチャー4をリング9を通じてケレップ軸3に取り付け、図3<a>に示したように、洗面化粧台11の洗面ボウル12に形成された排水口13から排水管14に向けてヘアーキャッチャー4を挿入し、排水栓1を排水口13に装着する。この状態において洗面化粧台11を使用すると、排水とともに流れ落ちる毛髪やごみ15などが上キャッチャー部5の捕集リブ8によって捕集される。上キャッチャー部5は胴部7から上方に突出しているので、毛髪やごみ15などを効率よく捕集することができる。
【0023】
捕集した毛髪やごみ15などはやがて上キャッチャー部5に溜まるが、その場合、図3<b>に示したように、排水栓1を排水口13から取り外し、ヘアーキャッチャー4をケレップ軸3から取り外す。そして、捕集して溜まった毛髪やごみ15などの大まかなものを上キャッチャー部5から除去する。上キャッチャー部5の捕集リブ8には細かなごみや汚れが付着しているが、歯ブラシなどを用いたヘアーキャッチャー4の掃除は行わない。
【0024】
毛髪やごみ15などの大まかなものを上キャッチャー部5から除去した後は、図3<c>に示したように、そのままの状態でヘアーキャッチャー4を上下反転させ、下キャッチャー部6を上側に向け、上キャッチャー部5を下側に向け、ケレップ軸3に取り付け、排水栓1を排水口13に装着する。洗面化粧台11を使用する際などに水を流すことにより、流水によって上キャッチャー部5に付着している細かなごみや汚れは洗い落とされる。この流水洗浄は、上キャッチャー部5が下方に突出していることから効果的に行われる。したがって、ヘアーキャッチャー4の掃除は自動化され、歯ブラシなどを用いて磨く必要はなく、表面のぬめりなどに直に触れずに、また、手袋を嵌めることなく掃除することができ、排水栓1の手入れ性はきわめて良好である。
【0025】
流水による自動洗浄の際に、上キャッチャー部5の捕集リブ8に付着している細かなごみや汚れなどは、排水管14、さらに下水管に流れるが、これまでも排水栓の掃除は排水口を開放した状態にして行っており、ヘアーキャッチャーに付着している細かなごみや汚れなどは排水管や下水管に洗い流されている。したがって、排水栓1において上キャッチャー部5の捕集リブ8に付着している細かなごみや汚れなどを流水により自動洗浄しても、排水管14および下水管の詰まりや浄水処理の負担が増大することはない。
【0026】
下キャッチャー部6でも同様に捕集リブ8により毛髪やごみ15などの捕集が行われ、溜まったときには同様に操作し、毛髪やごみ15などの除去および下キャッチャー部6の自動洗浄を行うことができる。
【0027】
排水栓1は、ヘアーキャッチャー4の掃除を流水時に自動的に行うことができ、手入れ性が向上している。
【0028】
また、排水栓1では、上記の通り、各捕集リブ8は、胴部7との連結部付近で折れ曲がり、折曲部10を有し、折曲部10の折曲端10aが胴部7の内側に配置され、胴部7との連結部における連結端8aが、折曲部10の折曲端10aから胴部7の内周端縁7aに向かって斜め外側に向かって延びているため、各捕集リブ8の折曲部10と胴部7の内周端縁7aとの間に付着した細かなごみや汚れをより効率的に洗い落とすことができ、また、毛髪やごみ15などをより効率的に捕集することができる。
【0029】
図1および図3に示した排水栓1には、ケレップ軸3へのヘアーキャッチャー4の着脱を自在とするために、ケレップ軸3の下端部にリング16が配設されている。図4<a><b>は、それぞれ、ケレップ軸3の下端部を拡大して示した側面図、A−A断面図である。
【0030】
ケレップ軸3の下端部には、ケレップ軸3の径方向にくぼむ環状溝部17が形成され、略U字形状のリング16が、環状溝部17においてケレップ軸3に上下方向に回動自在に配設されている。環状溝部17が形成された部分においてケレップ軸3には径方向に貫通する孔18が形成されており、リング16の内側に折れ曲がる両端部16aが孔18に回動自在に嵌入され、リング16の上下方向の回動が可能とされている。
【0031】
リング16は、環状溝部17の下端縁17aに沿って水平に配置可能であり、水平配置状態において湾曲部16bはケレップ軸3の外周面外側に突出する。リング16の湾曲部16bがケレップ軸3の外周面外側に突出することにより、図1に示したように、ヘアーキャッチャー4がリング9において湾曲部16bに係止され、ヘアーキャッチャー4はケレップ軸3上に取り付け状態に安定に保持される。ヘアーキャッチャー4をケレップ軸3から取り外す際には、ヘアーキャッチャー4を少し上方に持ち上げ、リング16を、図4<a>に示したように、両端部16aを中心として上方に回動させ、環状溝部17に収納させる。この状態において下方にスライドさせることによりヘアーキャッチャー4はケレップ軸3から取り外すことができる。取り付けの際には、ヘアーキャッチャー4を、リング9にケレップ軸3を通し、上方へスライドさせることにより、ヘアーキャッチャー4のスライドにともなわれてリング16は上方に回動し、環状溝部17に収納され、ヘアーキャッチャー4はケレップ軸3に取り付けられ、排水栓1を垂下させると、リング16が自重により下方に回動し、リング9を係止し、取り付け状態に保持する。
【0032】
このように、上記リング16および環状溝部17によって、ヘアーキャッチャー4のケレップ軸3への着脱が容易となり、ヘアーキャッチャー4の取り付け状態が安定に保持される。
【0033】
なお、本発明の排水栓では、ヘアーキャッチャーをケレップ軸に着脱自在とする構成は、上記リング16および環状溝部17に限定されることはなく、排水栓に容易に組み込むことができ、コストを抑え、また、操作容易であれば、適宜なものを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の排水栓の一実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1に示した排水栓のヘアーキャッチャーにおける捕集リブと胴部との連結部を拡大して示した断面図である。
【図3】<a><b><c>は、それぞれ、図1に示した排水栓の使用例を示した工程斜視図である。
【図4】<a><b>は、それぞれ、図1に示した排水栓のケレップ軸の下端部を拡大して示した側面図、A−A断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 排水栓
2 ケレップ
3 ケレップ軸
4 ヘアーキャッチャー
5 上キャッチャー部
6 下キャッチャー部
7 胴部
8 捕集リブ
8a 連結端
10 折曲部
10a 折曲端
16 リング
16b 湾曲部
17 環状溝部
17a 下端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の捕集リブが中心側から外側に向かって放射状に延び、傘状に形成された上キャッチャー部および下キャッチャー部が、筒形の胴部に、胴部を中心として上下対称に配置されて連結され、上キャッチャー部は上方に突出し、下キャッチャー部は下方に突出するヘアーキャッチャーが、ケレップの中心部から下方に延びるケレップ軸に着脱自在に配設され、取り外し後に上下反転させてケレップ軸に取り付け可能とされていることを特徴とする排水栓。
【請求項2】
各捕集リブは、胴部との連結部付近で折れ曲がり、折曲部を有し、折曲部の折曲端が胴部内側に配置され、各捕集リブの胴部との連結部における連結端が、折曲部の折曲端から胴部の内周端縁に向かって斜め外側に向かって延びていることを特徴とする請求項1に記載の排水栓。
【請求項3】
ケレップ軸の下端部に環状溝部が形成され、略U字形状のリングが、環状溝部においてケレップ軸に上下方向に回動自在に配設され、環状溝部の下端縁に沿って水平に配置されるリングの湾曲部はケレップ軸の外周面外側に突出し、リングは、ヘアーキャッチャーを係止してケレップ軸上に保持するとともに、上方への回動によりヘアーキャッチャーのケレップ軸への着脱を自在としていることを特徴とする請求項1または2に記載の排水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−7756(P2009−7756A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167693(P2007−167693)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】