説明

排水用管継手

【課題】パイプ内に差し込む部位が肉厚になるため、大きな段差が生じて排水管路に採用するが困難であった。
【解決手段】排水用管継手10においては、塩ビ製パイプ21への挿入部位、すなわち、薄肉筒体11をステンレス製にすることにより、排水用配管の内部に生じる段差をなるべく低減させて排水特性の悪化を防いでいる。また、塩ビ製パイプ21の開口端21aに対して短管12の開口端12aが突き当たる位置で、すなわち、薄肉筒体11が軸方向長さの二分の一長さだけ挿入された位置で、塩ビ製パイプ21に薄肉筒体11を接着固定する。かかる構成により、塩ビ製パイプ21に対する薄肉筒体11の挿入量の過不足による不良施工を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の排水パイプを延設する際に用いる排水用管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製の建物基礎に埋設された樹脂パイプの開口端が基礎壁面に合わせて切断されているとき、基礎壁面が障害となって同樹脂パイプの外径に対応する受口の径寸法を備えた樹脂製管継手を接続することができなかった。このため、建物基礎を砕いて同樹脂パイプの先端部位を露出させた上で、この露出部位に同樹脂製管継手を接続せざるを得ず、配管時の作業性が良くなかった。
特許文献1の第2図では継手体が開示されており、建物基礎を砕くことなくパイプを延設して管継手を接続することが可能となっている。
【特許文献1】実開平3−99293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された継手体については、樹脂製とした場合、成形性や強度確保などの条件を満たすため、樹脂パイプに挿入する部位を肉厚にせざるを得ない。排水配管においては、排水特性を悪化させないためにパイプ内の段差を低減させなければならず、同特許文献1に開示された継手体を排水管路に採用することはできなかった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、パイプ内の段差を低減させつつ確実に樹脂パイプを延設することが可能な排水用管継手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、所定の樹脂パイプの内径と概略同一の外径を備えた金属製の薄肉筒体と、上記樹脂パイプと概略同一の内外径を有するとともに、上記薄肉筒体の軸方向長さの二分の一長さで構成され、上記薄肉筒体の一端側半分を挿入して接着固定される樹脂製の短管とにより構成されるとしている。
上記のように構成した請求項1にかかる発明においては、建物基礎などのコンクリート層に埋設される樹脂パイプの開口端がコンクリート壁面に合わせて切断されているとき、この樹脂パイプの内径と概略一致する外径を備えた金属製の薄肉筒体を一端側から軸方向長さの半分まで挿入する。このように、同薄肉筒体を半分まで同樹脂パイプに挿入可能な構成とすることで、同樹脂パイプに対する同薄肉筒体の挿入量の過不足による不良施工を防ぐことが可能となる。本発明にいう二分の一長さおよび半分といった表現は、この種の不良施工を防止することができる程度の寸法設定を意味しており、厳密な意味での全体寸法の50%という意味合いに限定されるものではない。
上記樹脂パイプへの挿入部位、すなわち、薄肉筒体を金属製としているのは、排水用配管の内部に生じる段差をなるべく低減させて排水特性の悪化を防ぎたいとの背景があるためである。当該排水用管継手を樹脂製の上記短管と一体で成形する場合には、成形性や強度維持といった観点からも筒体部位の薄肉化に限界があり、排水特性の悪化を免れない。このような意味で、上記薄肉筒体の金属製化は有用な構成となっている。
【0005】
同薄肉筒体の他端側半分は、同樹脂パイプの内外径と概略一致するとともに同薄肉筒体の軸方向長さの半分に切断された短管に挿入され、同短管に接着固定されている。このため、上記薄肉筒体を一端側から軸方向長さの半分まで挿入したとき、上記短管の開口端が上記樹脂パイプの開口端に当接することから、同短管と同樹脂パイプとの間に隙間が生じない。従って、同短管と同樹脂パイプとの接続部位を省スペース化することができる。また、同短管と同樹脂パイプとの間をシーリング材で覆う必要がない。さらに、同短管と同樹脂パイプとの隙間で外観を悪化させないといった観点でも有用となる。
その際、上記薄肉筒体を上記樹脂パイプに接着固定すると、上記樹脂パイプと連通する上記短管がコンクリート壁面から上記薄肉筒体の軸方向長さの半分だけ突出した状態となる。すると、上記樹脂パイプの外径に対応する受口の径寸法を有する樹脂製管継手であっても、同受口に上記短管を挿入させ、同短管と同受口とを接着固定することにより、上記樹脂パイプと連通する樹脂製管継手をコンクリート壁面の外側に延設することが可能となる。
【0006】
また、別の構成として、請求項2にかかる発明は、開口端の内側角部を周方向に面取りしつつ内外径が概略同一の樹脂パイプを連通接続させるための排水用管継手であって、上記樹脂パイプの内径と概略同一の外径を有するとともに、上記面取り部位に生じるパイプ内壁の空間に収容可能な周方向の凸条を軸方向長さの中間位置に備えた金属製の薄肉筒体で構成されるとしている。
上記のように構成した請求項2にかかる発明においては、建物基礎などのコンクリート層に埋設される樹脂パイプの開口端がコンクリート壁面に合わせて切断されているとき、この樹脂パイプの内径と概略一致する外径を有するとともに、上記面取り部位に生じる空間に収容可能な周方向の凸条を軸方向長さの中間位置に備えた金属製の薄肉筒体を一端側から同凸条が同樹脂パイプの開口端に突き当たるまで軸方向長さの半分だけ挿入する。そして、上記薄肉筒体の他端側を上記樹脂パイプと内外径が概略一致する延長用樹脂パイプに挿入させる。同延長用樹脂パイプの開口端が同樹脂パイプの開口端と当接するまで、上記薄肉筒体の他端側が同延長用樹脂パイプに挿入されるところで同延長用樹脂パイプと接着固定する。このように、上記薄肉筒体の軸方向長さの中間位置に凸条を設けることにより、同薄肉筒体を半分まで各樹脂パイプに挿入できる構成とし、各樹脂パイプに対する同薄肉筒体の挿入量の過不足による不良施工を防いでいる。本発明にいう軸方向長さの中間位置といった表現は、上記請求項1と同様に、この種の不良施工を防止することができる程度の寸法設定を意味しており、厳密な意味での全体寸法の50%という意味合いに限定されるものではない。なお、当該排水用管継手を金属製とした理由は、上記請求項1と同様である。
【0007】
上記樹脂パイプと連通する上記延長用樹脂パイプがコンクリート壁面から突出した状態となる。すると、上記樹脂パイプの外径に対応する受口の径寸法を有する樹脂製管継手であっても、同受口に上記延長用樹脂パイプを挿入させ、同短管と同受口とを接着固定することにより、上記樹脂パイプと連通する樹脂製管継手をコンクリート壁面の外側に延設することが可能となる。
このとき、開口端の内側角部を周方向に面取りしつつ、上記樹脂パイプと上記延長用樹脂パイプとを連通接続しているため、両樹脂パイプの当接部位には内周側に空間が形成されており、上記凸条は同空間に収容され、両樹脂パイプの開口端の間に隙間が生じない。従って、両樹脂パイプの接続部位を省スペース化することができる。また、両樹脂パイプの間をシーリング材で覆う必要がない。さらに、樹脂パイプ間の隙間で外観を悪化させないといった観点でも有用となる。
【0008】
上記薄肉筒体の具体構成の一例として、請求項3にかかる発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の排水用管継手において、上記薄肉筒体の軸方向長さの二分の一長さ、または、軸方向長さの中間位置は、上記樹脂パイプの外径に対応する接着受口の径寸法を有する樹脂製管継手の受口奥行き寸法と概略一致するとしている。
上記のように構成した請求項3にかかる発明においては、上記樹脂パイプの外径に対応する接着受口の径寸法を有する樹脂製管継手の受口奥行き寸法を二倍した長さと概略一致するように、上記薄肉筒体の軸方向長さを設定している。このため、上記請求項1の短管に上記樹脂製管継手を接続する場合には、作業者が樹脂製管継手の受口開口端を上記コンクリート壁面に当接するまで挿入するだけで、標線がなくても確実に同短管を同受口の奥端まで差し込んで接着固定することができる。また、狭小スペースの場合には、特にスペースを効率良く利用して上記樹脂製管継手を接続できる点で有用な構成となる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように請求項1または請求項2は、パイプ内の段差を低減させつつ確実に樹脂パイプを延設することが可能な排水用管継手を提供することができる。
また、請求項3にかかる発明によれば、配管作業を一層確実なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる排水用管継手を平面図により示している。
同図において、排水用管継手10は、ステンレス製の薄肉筒体11と、薄肉筒体11の一端側半分が挿入された状態で接着固定されている塩ビ製の短管12とにより構成される。
薄肉筒体11は、肉厚0.5mm、軸方向長さ80mmであるとともに、呼び径75mmの塩ビ製パイプの内径(約77mm)と概略一致する外径を備えている。また、短管12は、呼び径75mmの塩ビ製パイプを薄肉筒体11の軸方向長さの二分の一長さ(40mm)に切断したもので構成される。なお、薄肉筒体11の肉厚は、1mm以下が好ましく、0.1〜0.5mmが望ましい。
【0011】
図2は、管継手10の使用例を概略図により示している。
同図において、コンクリート製の建物基礎20には、呼び径75mmの塩ビ製パイプ21が排水用配管として埋設されている。塩ビ製パイプ21の開口端21aは、建物基礎20のコンクリート壁面20aに合わせて面一になるように切断されている。
塩ビ製パイプ21の開口端21aに対して、短管12が接着固定されていない側から薄肉筒体11を挿入し、短管12の開口端12aが突き当たる位置で、すなわち、薄肉筒体11が軸方向長さの二分の一長さ(40mm)だけ挿入された位置で、塩ビ製パイプ21に薄肉筒体11を接着固定する。このように、薄肉筒体11を半分まで塩ビ製パイプ21に挿入可能な構成とすることで、塩ビ製パイプ21に対する薄肉筒体11の挿入量の過不足による不良施工を防ぐことができる。
【0012】
このとき、短管12の開口端12aが塩ビ製パイプ21の開口端21aに当接していることから、短管12と塩ビ製パイプ21との間に隙間が生じない。このため、短管12と塩ビ製パイプ21との接続部位を省スペース化することができる。また、短管12と塩ビ製パイプ21との間をシーリング材で覆う必要がない。さらに、短管12と塩ビ製パイプ21との間の隙間で外観を悪化させることもない。
また、塩ビ製パイプ21への挿入部位、すなわち、薄肉筒体11をステンレス製としているのは、排水用配管の内部に生じる段差をなるべく低減させて排水特性の悪化を防ぐためである。すなわち、薄肉筒体11と短管12とを塩ビ製で一体成形する場合には、成形性や強度維持といった観点から薄肉筒体11の薄肉化に限界があり、排水特性の悪化を免れない。このような意味で、薄肉筒体11のステンレス化は有用な構成となっている。なお、薄肉筒体11の素材としてステンレスを選択すると、防錆性という観点からも好適である。
【0013】
その際、薄肉筒体11を塩ビ製パイプ21に接着固定すると、塩ビ製パイプ21と連通する短管12がコンクリート壁面20aから薄肉筒体11の軸方向長さの二分の一長さ(40mm)だけ突出した状態となる。すると、塩ビ製パイプ21の外径に対応する受口31の径寸法を有する塩ビ製管継手30であっても、受口31に短管12を挿入させ、短管12と受口31とを接着固定することにより、塩ビ製パイプ21と連通する塩ビ製管継手30をコンクリート壁面20aの外側に延設することができる。つまり、建物基礎20を削り取らなくても塩ビ製管継手30の接続が可能となる。
なお、薄肉筒体11の軸方向長さの二分の一長さ(40mm)は、塩ビ製管継手30における受口31の奥行き寸法と概略一致している。このため、作業者は、受口31の開口端をコンクリート壁面20aに当接するまで挿入するだけで、標線がなくても確実に短管12を受口31の奥端まで差し込んで接着固定することが可能となる。建物基礎20が込み入った狭小スペースに設置されている場合には、特にスペースを効率良く利用して塩ビ製管継手30を接続できる点で有用となる。
【0014】
図3は、別構成を有する管継手を平面図により示している。
同図において、管継手40は、ステンレス製の薄肉筒体41で構成される。
薄肉筒体41は、肉厚0.5mm、軸方向長さ80mmであるとともに、呼び径75mmの塩ビ製パイプの内径(約77mm)と概略一致する外径を備えている。また、薄肉筒体41の軸方向長さの中間位置(両開口端から各々約40mmの位置)には、周方向に高さ約0.5mmの凸条41aが形成されている。薄肉筒体41を金属製とした理由は上記実施例と同様である。
【0015】
図4は、管継手40の使用例を概略図により示している。
同図において、コンクリート製の建物基礎20には、呼び径75mmの塩ビ製パイプ21が排水用配管として埋設されている。塩ビ製パイプ21の開口端21aは、建物基礎20のコンクリート壁面20aに合わせて面一になるように切断されている。
塩ビ製パイプ21の開口端21aに対して、薄肉筒体11の一端側を挿入し、凸条41aが突き当たる位置で、すなわち、薄肉筒体11が軸方向長さの二分の一長さ(約40mm)だけ挿入された位置で、塩ビ製パイプ21に薄肉筒体11を接着固定する。そして、塩ビ製パイプ21の開口端21aから突出している薄肉筒体11の半分が、開口端の内側角部を周方向に面取りした延長用塩ビ製パイプ50の面取りされた側の開口端51に差し込まれ、開口端21a,51が互いに当接するように、延長用塩ビ製パイプ50を薄肉筒体11に接着固定する。このように、塩ビ製パイプ21および延長用塩ビ製パイプ50に薄肉筒体11を各々半分まで挿入可能な構成とすることで、各塩ビ製パイプ21,50に対する薄肉筒体11の挿入量の過不足による不良施工を防ぐことができる。
【0016】
このとき、開口端51の内側角部を周方向に面取りしつつ、塩ビ製パイプ21と延長用塩ビ製パイプ50とを連通接続しているため、両塩ビ製パイプ21,50の当接部位には内周側に空間51aが形成されており、凸条41aは空間51aに収容され、塩ビ製パイプ21,50の開口端の間に隙間が生じない。従って、塩ビ製パイプ21,50の接続部位を省スペース化することができる。また、塩ビ製パイプ21,50の間をシーリング材で覆う必要がない。さらに、塩ビ製パイプ21,50の隙間で外観を悪化させないといった観点でも有用となる。
なお、本発明は、延長用塩ビ製パイプ50の長さを限定するものではないため、作業者は延長用塩ビ製パイプ50を所望の寸法(50mmや80mmなど)に切断することができるものの、接着固定された延長用塩ビ製パイプ50を薄肉筒体11の開口端に合わせて切断すると、上述した実施例と同様に、延長用塩ビ製パイプ50を長さ40mm、すなわち、塩ビ製管継手30における受口31の奥行き寸法と概略一致させることが可能となる。すると、作業者は、受口31の開口端をコンクリート壁面20aに当接するまで挿入だけで、標線がなくても確実に延長用塩ビ製パイプ50を受口31の奥端まで差し込んで接着固定することが可能となる。
【0017】
このように、排水用管継手10においては、塩ビ製パイプ21への挿入部位、すなわち、薄肉筒体11をステンレス製にすることにより、排水用配管の内部に生じる段差をなるべく低減させて排水特性の悪化を防いでいる。また、塩ビ製パイプ21の開口端21aに対して短管12の開口端12aが突き当たる位置で、すなわち、薄肉筒体11が軸方向長さの二分の一長さ(40mm)だけ挿入された位置で、塩ビ製パイプ21に薄肉筒体11を接着固定する。かかる構成により、塩ビ製パイプ21に対する薄肉筒体11の挿入量の過不足による不良施工を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかる排水用管継手を示す平面図である。
【図2】図1における排水用管継手の使用状態を示す概略図である。
【図3】別構成を有する排水用管継手を示す斜視図である。
【図4】図4における排水用管継手の使用状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0019】
10 排水用管継手
11 薄肉筒体
12 短管
40 排水用管継手
41 凸条
51a 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の樹脂パイプの内径と概略同一の外径を備えた金属製の薄肉筒体と、
上記樹脂パイプと概略同一の内外径を有するとともに、上記薄肉筒体の軸方向長さの二分の一長さで構成され、上記薄肉筒体の一端側半分を挿入して接着固定される樹脂製の短管とにより構成されることを特徴とする排水用管継手。
【請求項2】
開口端の内側角部を周方向に面取りしつつ内外径が概略同一の樹脂パイプを連通接続させるための排水用管継手であって、
上記樹脂パイプの内径と概略同一の外径を有するとともに、上記面取り部位に生じるパイプ内壁の空間に収容可能な周方向の凸条を軸方向長さの中間位置に備えた金属製の薄肉筒体で構成されることを特徴とする排水用管継手。
【請求項3】
上記薄肉筒体の軸方向長さの二分の一長さ、または、軸方向長さの中間位置は、上記樹脂パイプの外径に対応する接着受口の径寸法を有する樹脂製管継手の受口奥行き寸法と概略一致することを特徴とする上記請求項1または請求項2のいずれかに記載の排水用管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−170463(P2007−170463A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365881(P2005−365881)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)