説明

排水管の接続状態の検査方法

【課題】本発明は、トラップを有する設備機器であっても正確な検査を行い得る排水管の接続状態の検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】(1)設備機器毎に色を設定する。(2)球形に成形された後に上記各色に塗装された(あるいは予め着色された後成形された)検査片を数個用意する。(3)全ての設備機器からの排水管が合流した点よりも下流に位置する枡の蓋をあけ、捕虫網を転用した受取具の針金製の枠の部分を枡の形状に対応するように変形し、枡に設置、固定する。(4)夫々の設備機器の排水口から設備機器に設定された色の検査片を投入する。(5)すべての設備器具について水を流し、しばらく経過した後水を止める。(6)受取具で受け止められた検査片の色・数を投入した小球の色・数と照合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内部の設備機器からの排水を建物外部の枡に導く排水管の接続状態の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トイレ、台所、浴室などの設備機器の排水口から検査ボールを水とともに流し、検査ボールが枡に到達するか否かで排水管の接続状態を検査することが行われてきた。例えば、特許文献1にはピンポン球や中空穴あきのゴムボール、特許文献2には数字を刻印したゴム製、あるいは樹脂製で空洞状、中実状の排水検査ボールにて検査を行う方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開平05−038080号公報
【特許文献2】実用新案登録第3103782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、トラップを有する設備機器の場合、検査ボールが水の流れに乗ってトラップを通過することができず、検査が正確に行われないことがあった。また、検査ボールが枝排水管と主排水管の合流部で枝排水管のほうへ流れ込んで滞留してしまい正確な検査ができないこともあった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、トラップを有する設備機器であっても正確な検査を行い得る排水管の接続状態の検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術部の課題を解決する為の本発明に係る排水管の接続状態の検査方法の第1の構成は、排水経路上にトラップを有する設備器具における排水管の接続状態の検査方法であって、設備器具の排水口からみかけ比重が1より若干大きな略球形の検査片を投入しトラップの底部に沈下させる工程と、前記排水口に水を流す工程と、排水経路上の下流の枡において、前記水とともに流れてきた前記検査片を受け止める工程と、からなることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る排水管の接続状態の検査方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記検査片が前記設備機器の種類及び位置に対応して色分けされて、前記枡に連通されたすべての設備機器に複数個投入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、検査片を水の比重である1よりも若干大きな比重を有する略球形としたので、排水口に投入すると重力が浮力にわずかに勝り、一旦トラップの底部に沈み、その後、排水口から落下しトラップ内に流れ落ちる水の流れによって引き上げられトラップ内部からスムーズに排出させることができる。
【0009】
また、設備機器の位置や場所に応じて異なる色の検査片を複数個投入した場合は、複数個のうちの少なくともひとつがトラップを通過し枡に到達すればよく、検査片のトラップ内での滞留の問題は更に解消されやすくなる。また、すべての設備機器の排水口に同時に水を流すことにより、主排水管を流れる検査片が枝排水管の方向へ逆流しようとしても枝排水管から流れてくる水によって押し戻されるので確実に検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の最も好ましい形態について図を参照して説明する。検査には排水口に投入する検査片および検査片を受け止める受取具を使用する。
【0011】
検査片としては、吸水して比重、形状、性状が変動することがなく、排水管や枡に付着することもなく、繰り返し使える材質が好ましく、このような材質としてはナイロン、ABS、ポリカーボネート、ポリスチレン等の硬質合成樹脂がある。また、検査片の形状は球形や球形に準ずる正多面体が好ましく、その大きさは、排水経路上の障害物に引っかからない程度の大きさであればよく、例えば洗面化粧台のヘアーキャッチャーを通過させる場合は6mm程度が好ましい。
【0012】
また、検査片は、設備機器のトラップの形状や容積、水量などにもよるが、出願人が一般的な設備機器で通常の上水道からの水量での実験を重ねた結果、その比重が、概ね水の比重である1よりも大きく、概ね1.2よりも小さな値であれば、トラップに滞留することなく水の流れに乗って排出されることが確認できた。
【0013】
トラップ内に落下した検査片は、検査片の比重が水の比重よりも小さい場合、水量にも左右されるが、検査片を投入後に水を流したとしても、その浮力によって、トラップ内の水面上に浮き出た状態を常に維持したり、落下する水の勢いで一瞬水中に潜りこんだとしても直ちに封水の表面に浮き上がって出てきたりしてしまい、トラップを通過することができないことがある。また、検査片の比重が水の比重に比して極端に大きい場合、排水口から投入された検査片はトラップの底部に沈んだままの状態を維持し、水流によって引き上げられることなくトラップの底部に滞留してしまうことがある。
【0014】
これらに対し、検査片を水の比重よりも若干大きな比重とした場合、排水口から投入された検査片は、重力が浮力にわずかに勝ることにより一旦トラップの底部に沈むが、その後、排水口からトラップ内に落下した水がその勢いによってトラップ内を上向きに進む。そして、検査片は水の流れに乗って引き上げられトラップ内部からスムーズに排出させることができる。
【0015】
図1は、洗面化粧台等の設備機器で使用されるSトラップが形成された排水管において、球形の検査片が排出される様子を示している。Sトラップ4には封水2が貯留しており、設備機器の排水口から投入された複数の検査片1は一旦Sトラップ4の第1屈曲部4aの底に沈む(図1(a)参照)。排水口から流れ落ちてきた水Cの勢いによって封水2や水3がSトラップ4の中間の直管部4bを上昇する。この流れとともに第1屈曲部4aの底部に沈んでいた検査片1が引き上げられ上昇する(図1(b)参照)。そして、検査片1は封水2や水3とともにSトラップ4の第2屈曲部4cを乗り越えて外部の排水枡方向に流れてゆく(図1(c)参照)。
【0016】
上記実験結果の裏付けとなる研究としては、「水流に引き上げられる卵、ゴルフボールおよび球まわりの流れに関する研究」(五十嵐 保氏、(社)日本流体力学会発行「ながれ」20巻第5号に掲載)がある。本研究論文のなかに、比重が1.05から1.10の鶏卵、ゴルフボール、木製球の水流による浮き上がり現象についての記載がある。
【0017】
受取具は、枡に設置、固定し検査球を受け止めるものである。受取具は、枡(汚水や雑排水用の断面円弧状のインバート枡)の形状に対応させやすく、またその形状を維持しやすく、水の流れを妨げず、且つ受け止めた検査片の色や数を確認しやすいものが好ましく、これらの条件を満たすものとしては、検査片の大きさよりも細かな網目を有する捕虫網がある。
【0018】
住宅内の設備機器において、上記検査片及び受取具を用いて行う排水管の接続状態の検査方法は以下のとおりである。
(1) 設備機器毎に色を設定する。(例えば、キッチン:赤、洗面化粧台:橙、洗濯機置場排水口:緑、浴室:青、トイレ手洗い:黒)
(2) 球形に成形された後に上記各色に塗装された(あるいは予め着色された後成形された)検査片を数個用意する。
(3) 排水系路上で全ての設備機器からの排水管が合流した点よりも下流に位置する枡の蓋をあけ、捕虫網を転用した受取具の針金製の枠の部分を枡の形状に対応するように変形し、枡に設置、固定する。
(4) 夫々の設備機器の排水口から設備機器に設定された色の検査片を投入しトラップの底部に沈下させる。
(5) すべての設備器具について水を流し、しばらく経過した後水を止める。
(6) 受取具で受け止められた検査片の色・数を投入した小球の色・数と照合する。
【0019】
上記検査方法では、受取具で受け止められた検査片の数によって排水管の接続状態を推測される。即ち、全く受け止められなかった色がある場合は、その色に対応した設備機器の排水管の接続に問題がある(接続されていない、あるいは、排水管内部に障害物が存在する)可能性が極めて高く、少なくともひとつが受け止められた場合は、正しく接続はなされている可能性が高いと推測される。
【0020】
上記検査方法によれば、検査片の比重を適切な値に設定し、更に検査片を夫々の設備機器に対し複数個投入するので検査片が全く受け止められない事態となる可能性が極めて低い。また、全ての設備機器について同時に水を流すので枝排水管方向への逆流が防止される。従って、極めて高い確率で排水管の接続状態を推測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る検査方法は、排水経路中にトラップを有しない設備機器の排水管の接続状態の検査においても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】Sトラップが形成された排水管において、球形の検査片が排出される様子を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1…検査片
2…封水
3…水
4…Sトラップ
4a…第1屈曲部
4b…直管部
4c…第2屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備器具の排水口からみかけ比重が1より若干大きな略球形の検査片を投入しトラップの底部に沈下させる工程と、
前記排水口に水を流す工程と、
排水経路上の下流の枡において、前記水とともに流れてきた前記検査片を受け止める工程と、
からなることを特徴とする排水経路上にトラップを有する設備器具における排水管の接続状態の検査方法。
【請求項2】
前記検査片は、設備機器の種類及び位置に対応して色分けされて、前記枡に連通されたすべての前記設備機器に複数個投入されることを特徴とする請求項1に記載した排水管の接続状態の検査方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−228354(P2009−228354A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77166(P2008−77166)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】