説明

掘削バケット

【課題】 薄い板状体から厚みをもった構造体まで、様々な運搬部材を安定的に、かつ簡単に運搬できるようにする。
【解決手段】 掘削バケット11には、土砂収容空間16の開口部16A側となる左,右のサイドエッジ15の基端側に位置して左,右の鉤状突起22を設け、先端側の各掘削爪18に乗せた鋼板23、構造体24の端部を左,右の鉤状突起22によって支持する構成としている。従って、掘削バケット11は、複数個の掘削爪18と左,右の鉤状突起22とにより、薄く平坦な鋼板23、厚く凹凸のある構造物24等の様々な運搬部材を、3点以上の支点で支持することができる。これにより、鋼板23、構造物24を安定的に、かつ簡単に運搬することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に設けられた作業装置に用いて好適な掘削バケットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、土砂等の掘削作業に用いられる油圧ショベルは、下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。そして、作業装置は、ブーム、アームおよび掘削バケット等により構成され、前記アームの先端側で掘削バケットを回動させることにより土砂等を掘削するものである。
【0003】
また、掘削バケットは、基端側から先端側に向け略U字状に湾曲した底板と、該底板の左,右両側に設けられた左,右の側板と、前記底板と左,右の側板とによって囲まれ前側が開口部となった土砂収容空間と、前記底板の先端側に位置して設けられたカッティングエッジと、該カッティングエッジの先端側に左,右方向に並んで設けられた複数個の掘削爪と、前記底板の基端側に設けられ作業装置のアームに取付けられるブラケットとにより大略構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−90052号公報
【0005】
ここで、油圧ショベルは、作業装置を用いて掘削バケットに収まらない大きな運搬部材、例えば作業現場の軟質な地盤に敷設する鋼板等を運搬することがある。この鋼板の運搬作業に用いる掘削バケットとしては、左,右の側板または該各側板に設けたサイドカッタに切込み状の間隙を設け、この間隙に鋼板を差し入れて運搬する構成としたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献2】特開2001−115484号公報
【0007】
また、鋼板を運搬することができる他の掘削バケットとしては、左,右の側板にサイドカッタを位置調整可能に固定し、掘削爪とサイドカッタとの隙間に鋼板を挟む構成としたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献3】特開平7−127088号公報
【0009】
この特許文献3による掘削バケットは、運搬する鋼板の厚さ寸法が変わっても、鋼板の厚さ寸法に応じてサイドカッタの取付位置を移動することにより、異なる厚さ寸法の鋼板を挟んで運搬することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述した特許文献2による掘削バケットは、側板またはサイドカッタに形成した間隙に鋼板を差し入れて運搬するようにしているから、間隙の幅寸法に適合した板状体以外の部材は運搬することができないという問題がある。
【0011】
また、特許文献3による掘削バケットでは、サイドカッタの取付位置を移動することにより異なる厚さ寸法の鋼板を運搬することができる。しかし、鋼板の厚さ寸法が変わる度にサイドカッタの調整をしなくてはならず、運搬作業に手間を要するという問題がある。
【0012】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、薄い板状体に限らずに厚みをもった構造体も安定的に、かつ簡単に運搬することができるようにした掘削バケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による掘削バケットは、基端側から先端側に向け略U字状に湾曲した底板と、該底板の左,右両側に設けられた左,右の側板と、前記底板と左,右の側板とによって囲まれ前側が開口部となった土砂収容空間と、前記底板の先端側に位置して設けられたカッティングエッジと、該カッティングエッジの先端側に左,右方向に並んで設けられた複数個の掘削爪と、前記底板の基端側に設けられ作業装置のアームに取付けられるブラケットとを備えている。
【0014】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記土砂収容空間の開口部側には前記各掘削爪から前記ブラケット側に離れた位置に突起を設け、前記各掘削爪と突起とによって運搬部材を支持する構成としたことにある。
【0015】
請求項2の発明によると、前記突起は前記土砂収容空間の開口部側に位置して左,右方向に間隔をもって設ける構成としたことにある。
【0016】
請求項3の発明によると、前記突起は前記側板の前端から前方に突出して設ける構成としたことにある。
【0017】
請求項4の発明によると、前記突起は前記土砂収容空間の開口部側に位置して前記底板の基端側に設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、複数個の掘削爪と該各掘削爪からブラケット側に離れた位置に設けた突起とにより、運搬対象となる部材を挟むのではなく、各掘削爪と突起との3点以上で運搬部材を支持することができる。この結果、比較的に厚さ寸法の小さな鋼板等の板状体に限らず、大きな厚さ寸法をもった運搬部材、凹凸をもった運搬部材等を3点以上の支持によって安定的に、かつ簡単に運搬することができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、土砂収容空間の開口部側に位置して左,右方向に間隔をもって突起を設けることにより、この左,右の突起と複数個の掘削爪との3点以上の支持によって運搬部材を安定的に固定しつつ、容易に運搬することができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、突起は側板の前端から前方に突出して設けているから、各突起は、土砂の出し入れに邪魔にならない位置に配設することができる。また、突起は、側板に対して溶接、ボルト止め等の手段を用いて簡単かつ確実に取付けることができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、突起は土砂収容空間の開口部側に位置して底板の基端側に設けているから、突起を土砂収容空間に収めることができ、周囲の障害物との干渉による突起の損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態による掘削バケットを油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0023】
まず、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図1ないし図3において、1は建設機械としてのクローラ式の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた後述の作業装置4とにより大略構成されている。また、上部旋回体3には、オペレータが着座する運転席3Aが設けられ、該運転席3Aの左,右両側には、作業装置4等を操作するための操作レバー3Bが配設されている。
【0024】
4は上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置である。この作業装置4は、基端側が上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられたブーム5と、該ブーム5の先端側に俯仰動可能に設けられたアーム6と、該アーム6の先端側に回動可能に設けられた後述の掘削バケット11と、前記アーム6の先端側と該掘削バケット11との間に設けられたバケットリンク7と、上部旋回体3とブーム5との間に設けられたブームシリンダ8と、ブーム5とアーム6との間に設けられたアームシリンダ9と、アーム6とバケットリンク7との間に設けられたバケットシリンダ10とにより大略構成されている。
【0025】
11はアーム6の先端側に回動可能に取付けられた本実施の形態による掘削バケットを示している。この掘削バケット11は、図1に示すように、例えば地面を掘削して掬った土砂を所定の場所に運ぶものである。また、掘削バケット11は、図2、図3に示すように、後述する平板状の鋼板23、該鋼板23よりも厚肉なフレーム状の構造物24等を運搬することもできる。そして、掘削バケット11は、図4、図5に示すように、後述の底板12、左,右の側板14、土砂収容空間16、カッティングエッジ17、掘削爪18、ブラケット19、鉤状突起22等により構成されている。
【0026】
12は掘削バケット11の底部をなす底板で、該底板12は、例えば長方形状の鋼板材に折曲加工等を施すことにより、基端側から先端側に向け略U字状に湾曲している。また、底板12の基端側には、円筒体からなる補強部材13が左,右方向に延びるように溶接手段を用いて一体的に固着されている。この補強部材13は、アーム6の先端部に取付けられる掘削バケット11の基端側の強度を高めるものである。
【0027】
14は底板12の左,右両側に設けられた左,右の側板で、これら左,右の側板14は、例えば平坦な鋼板材を用いて略半円形状に形成されている。また、各側板14には、後述する土砂収容空間16の開口部16A側を基端側から先端側に延びるようにサイドエッジ15が設けられている。そして、側板14は、底板12を挟んで左,右方向に一定の間隔をもって対面した状態で、該底板12の左,右方向の両端縁に溶接手段を用いて固着されている。
【0028】
また、左,右のサイドエッジ15は、側板14の強度を高めるもので、例えば厚さ寸法の大きな長方形状の鋼板材等により形成されている。ここで、左,右のサイドエッジ15の基端部は補強部材13によって連結され、先端部は後述のカッティングエッジ17によって連結されている。また、各サイドエッジ15の先端側には、後述のサイドカッタ20を取付けるためのボルト挿通穴(図示せず)が複数個設けられている。
【0029】
16は底板12と左,右の側板14とによって囲まれた土砂収容空間で、該土砂収容空間16は、略U字状の底板12により前側が開口部16Aとなっている。そして、土砂収容空間16は、掘削した土砂を収容するもので、その開口部16A側には後述の鉤状突起22が設けられている。
【0030】
17は底板12の先端側に位置して設けられたカッティングエッジで、該カッティングエッジ17は、底板12の先端側(開口部16A側)の強度を高めるもので、例えば底板本体13よりも厚さ寸法の大きな長方形状の鋼板材等からなり、該底板12の先端縁に沿って溶接されている。そして、カッティングエッジ17の左,右方向の両端部は、左,右のサイドエッジ15の先端部に溶接されている。また、カッティングエッジ17の先端側には、地面等を突き崩すための複数個の掘削爪18が設けられている。
【0031】
18はカッティングエッジ17の先端側に左,右方向に並んで設けられた複数個、例えば4個の掘削爪である。これらの掘削爪18は、カッティングエッジ17の先端縁から土砂収容空間16の開口部16A側に突出するように設けられている。詳しくは、4個の掘削爪18は、左,右方向にほぼ等間隔で配置され、開口部16A側に突出した先端部18Aが鋭角な楔状に形成されている。そして、各掘削爪18は、尖った先端部18Aによって地面や壁面を突き崩すものである。また、各掘削爪18の先端部18Aは、後述する鋼板23、構造物24を運搬するときに、これらの途中部分(端縁から内側に入った部分)を下側から支持する1つの支点を構成している。
【0032】
19は底板12の基端側に設けられた左,右一対のブラケットで、該各ブラケット19は、左,右方向に所定の間隔をもって配置され、底板12の基端側と補強部材13とに亘って延び、これらの外面側(背面側)に溶接手段を用いて固着されている。また、左,右のブラケット19には、アーム6の先端部がピン結合されるボス部19Aと、バケットリンク7がピン結合されるボス部19Bとが設けられている。これにより、掘削バケット11は、アーム6とバケットリンク7とに連結され、バケットシリンダ10の伸縮に応じてアーム6の先端側で上,下方向に回動する。
【0033】
20は左,右のサイドエッジ15の先端側に設けられた左,右のサイドカッタで、該各サイドカッタ20は、例えば鋼材等により略台形状の板体として形成され、土砂収容空間16の開口部16A側に突出した先端側に向け薄肉となるように形成されている。また、各サイドカッタ20は、左,右のサイドエッジ15の先端側に設けられたボルト挿通穴にボルト・ナット21を用いて着脱可能に取付けられている。
【0034】
22は掘削バケット11に設けられた突起としての鉤状突起を示している。この鉤状突起22は、土砂収容空間16の開口部16A側に位置して各掘削爪18からブラケット19側に離れた位置、即ち、左,右のサイドエッジ15の基端側の外側面にそれぞれ設けられている。この左,右の鉤状突起22は、サイドエッジ15の前端から前方に突出して設けられ、後述の鋼板23、構造物24を運搬するときに、これらの端部を上側から支持する2つの支点を構成している。
【0035】
そして、左,右の鉤状突起22は、サイドエッジ15の左,右方向の外側面に溶接手段を用いて一体的に取付けられた取付部22Aと、該取付部22Aから土砂収容空間16の開口部16A側に延びた後、先端側に向けて屈曲した係合突起部22Bとにより略逆J字状に形成されている。
【0036】
ここで、鉤状突起22は、図4に示すように、係合突起部22Bの先端側でサイドエッジ15側の角隅部22Cが、鋼板23、構造物24の端部を上側から支持する支点を構成している。これにより、左,右の鉤状突起22は、それぞれの角隅部22Cによって鋼板23、構造物24の端部を上側から2点で支持することができる。
【0037】
また、23は掘削バケット11によって運搬される運搬部材の1つとなる鋼板で、該鋼板23は、図4中に実線で示すように、例えば厚さ寸法が小さく(薄肉な)平坦な長方形状の板体として形成されている。そして、鋼板23は、例えば作業現場の軟質な地盤に敷設するもので、図3に示すように、掘削バケット11よりも大幅に大きく形成されている。
【0038】
このような鋼板23を運搬する場合には、掘削バケット11の先端側を鋼板23の下側に差し入れ、鋼板23の端部を掘削バケット11の基端側に設けた左,右の鉤状突起22の係合突起部22Bの下側に配置し、この状態で掘削バケット11の先端側を持ち上げる。これにより、各掘削爪18の先端部18Aは鋼板23の途中部分を下側から支持することができ、各鉤状突起22の角隅部22Cは鋼板23の端部を引っ掛けて上側から支持することができ、鋼板23を各掘削爪18と左,右の鉤状突起22との3点以上で支持した状態で掘削バケット11と一緒に持ち上げて運搬することができる。
【0039】
一方、24は掘削バケット11によって運搬される他の運搬部材の1つとなる構造物で、該構造物24は、図4中に二点鎖線で示すように、例えば厚さ寸法が大きな(厚肉な)フレーム状の構造体として形成されている。このような構造物24を運搬する場合には、鋼板23を運搬する場合とほぼ同様に、掘削バケット11の先端側を構造物24の下側に差し入れ、構造物24の端部を掘削バケット11の基端側に設けた左,右の鉤状突起22の係合突起部22Bの下側に配置し、この状態で掘削バケット11の先端側を持ち上げる。これにより、構造物24を各掘削爪18と左,右の鉤状突起22との3点以上で支持した状態で掘削バケット11と一緒に持ち上げて運搬することができる。
【0040】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、この油圧ショベル1に搭載された作業装置4を用いて掘削作業等を行う場合について説明する。
【0041】
まず、オペレータは、運転席3Aに着座し、この状態で操作レバー3Bを操作することにより、図1に示すように、作業装置4のブーム5、アーム6、掘削バケット11を各シリンダ8,9,10によって動作し、土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0042】
また、第1の実施の形態による作業装置4は、図2、図3に示すように、掘削バケット11により鋼板23、構造物24のように厚さ寸法も形状も異なる運搬部材を持ち上げて運搬することができる。即ち、鋼板23や構造物24を運搬する場合には、これらを挟むのではなく、それぞれが離れた位置に設けられた複数個の掘削爪18と左,右の鉤状突起22との3点以上で支持することにより、鋼板23や構造物24を安定的に、かつ簡単に運搬することができる。
【0043】
かくして、第1の実施の形態によれば、掘削バケット11の土砂収容空間16の開口部16A側には、先端側の掘削爪18からブラケット19側に離れた左,右のサイドエッジ15の基端側に左,右の鉤状突起22を設け、各掘削爪18と2個の鉤状突起22とによって鋼板23や構造物24を支持する構成としている。従って、掘削バケット11に設けた各掘削爪18と各鉤状突起22は、運搬対象となる鋼板23や構造物24を挟むのではなく、3点以上の支点で支持することができる。
【0044】
この結果、掘削バケット11を用いた運搬作業において、厚さ寸法の小さな鋼板23、大きな厚さ寸法をもった異形な構造物24等の種々の運搬部材を3点支持またはそれ以上の複数点支持で安定的に、かつ簡単に運搬することができる。
【0045】
しかも、第1の実施の形態の掘削バケット11による運搬作業では、各掘削爪18の先端部18Aにより鋼板23、構造物24の途中部分を下側から支持しつつ、各鉤状突起22の係合突起部22Bに鋼板23、構造物24の端部を引っ掛けて上側から支持することにより、厚さ寸法、形状に関係なく多くの部材を支持しつつ運搬することができる。これにより、鋼板23、構造物24の厚さ寸法、形状が変更された場合でも、調整作業等を行うことなく、簡単に運ぶことができる。
【0046】
また、左,右の鉤状突起22は、左,右のサイドエッジ15の前端から前方に突出して設ける構成としているから、各鉤状突起22は、土砂収容空間16への土砂の出し入れに邪魔にならない位置に配設することができる。また、鉤状突起22は、サイドエッジ15に対して溶接手段を用いて簡単かつ確実に取付けることができる。
【0047】
次に、図6および図7は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、突起を側板に対してボルト・ナットを用いて着脱可能に取付ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0048】
図6、図7において、31は掘削バケット11の左,右の側板14を構成する左,右のサイドエッジ15に設けられた第2の実施の形態による突起としての鉤状突起を示している。この左,右の鉤状突起31は、第1の実施の形態による鉤状突起22とほぼ同様に、鋼板23、構造物24を運搬するときに、これらの端部を上側から支持する2つの支点を構成するものである。
【0049】
即ち、左,右の鉤状突起31は、サイドエッジ15に着脱可能に取付けられた取付部31Aと、該取付部31Aから土砂収容空間16の開口部16A側に突出して延びた後、先端側に向けて屈曲した略L字状の係合突起部31Bとからなり、該係合突起部31Bの先端側の底部側の角隅部31Cが鋼板23、構造物24を上側から支持する支点となっている。
【0050】
また、左,右のサイドエッジ15には、掘削爪18から基端側に離れた位置となる長さ方向のほぼ中間部に位置して複数個のボルト挿通孔(図示せず)が形成されている。そして、左,右の鉤状突起31は、前記各ボルト挿通孔に挿通される複数組、例えば3組のボルト・ナット32を用いて各サイドエッジ15に取付け、取外し可能に取付けられている。
【0051】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、左,右の鉤状突起31は、その取付部31Aをボルト・ナット32を用いて左,右のサイドエッジ15に着脱可能に取付けているから、鉤状突起31が摩耗したり、損傷した場合には、ボルト・ナット32を緩めることにより、新しいものに簡単に交換することができる。
【0052】
次に、図8および図9は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、サイドカッタに代えて突起を取付ける構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
図8、図9において、41は掘削バケット11の左,右の側板14を構成する左,右のサイドエッジ15に設けられた第3の実施の形態による突起としての鉤状突起を示している。この左,右の鉤状突起41は、サイドカッタ20に代えて取付けられているから、該サイドエッジ15の先端側に取付けられている。
【0054】
しかし、各鉤状突起41は、ボルト・ナット21によってサイドエッジ15の先端側に取付けられる取付部41Aが基端側に向け延びて形成されている。従って、取付部41Aの基端側から開口側に突出して設けられた鉤状突起41の本体部分をなす略L字状の係合突起部41Bは、掘削爪18から基端側に離れた位置に配設されている。これにより、左,右の鉤状突起41は、その係合突起部41Bの底部側の角隅部41Cにより鋼板23、構造物24等の基端側の端部を上側から支持する2つの支点を構成することができる。
【0055】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、サイドカッタ20に代えて鉤状突起41をサイドエッジ15に取付けることができるから、新たにボルト挿通孔を形成することなく、既存の掘削バケット11に鉤状突起41を簡単に設けることができる。
【0056】
次に、図10および図11は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、突起を運搬部材に対して面接触させることにより、突起で運搬部材の端部を支持する構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
図10、図11において、51は掘削バケット11の左,右の側板14を構成する左,右のサイドエッジ15の基端側に設けられた第4の実施の形態による突起としての鉤状突起を示している。この左,右の鉤状突起51は、第1の実施の形態による鉤状突起22とほぼ同様に、鋼板23、構造物24を運搬するときに、これらの端部を上側から支持する2つの支点を構成するもので、取付部51Aと係合突起部51Bとからなり、該取付部51Aが溶接手段によってサイドエッジ15に固着されている。
【0058】
しかし、第4の実施の形態による左,右の鉤状突起51は、その係合突起部51Bのサイドエッジ15側(底部側)に段部51Cが形成されている点で、第1の実施の形態による鉤状突起22と相違している。
【0059】
そして、段部51Cは、係合突起部51Bの底部側に、鋼板23の端部の上面に当接して支持する第1の支持面51Dと、該第1の支持面51Dよりも奥所に位置して構造物24の端部の上面に当接して支持する第2の支持面51Eとを形成している。
【0060】
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態によれば、左,右の鉤状突起51には、係合突起部51Bの底部側に段部51Cを設けることにより、鋼板23の基端側の上面に当接する第1の支持面51Dと、構造物24の端部側の上面に当接する第2の支持面51Eとを形成している。従って、第1の支持面51D、第2の支持面51Eは、鋼板23、構造物24を面接触により支持することができるから、鋼板23、構造物24の基端側がずれないように安定的に支持することができ、運搬作業の作業性を向上することができる。
【0061】
次に、図12および図13は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、突起を土砂収容空間の開口部側に位置して底板の基端側に設ける構成としたことにある。なお、第5の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0062】
図12、図13において、61は掘削バケット11の底板12の基端側となる補強部材13に設けられた第5の実施の形態による突起としての左,右の爪状突起を示している。この左,右の爪状突起61は、土砂収容空間16の開口部16A側に位置して補強部材13の長さ方向(左,右方向)に離間した位置に溶接手段を用いて固着されている。また、各爪状突起61は、左,右の側板14の間隔よりも狭く土砂収容空間16内に挿入することができる例えば足場板のような狭幅構造物62を運搬するときに、その基端側を上側から支持する2つの支点を構成している。
【0063】
即ち、左,右の爪状突起61は、略台形状の板体からなり、底板12の基端側の内面となる補強部材13の周面の先端側位置に、掘削バケット11の先端側に向け突出するように設けられている。そして、各爪状突起61の底部側の角隅部61Aが狭幅構造物62の端部を上側から支持する支点となっている。これにより、各爪状突起61は土砂収容空間16内に格納することができる。
【0064】
かくして、このように構成された第5の実施の形態においても、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第5の実施の形態によれば、各爪状突起61は、土砂収容空間16内に格納することができるから、周囲の障害物との干渉による各爪状突起61の損傷を防止することができる。
【0065】
次に、図14および図15は本発明の第6の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、各突起を底板の基端側の内面から先端側に向け突出して設けると共に、土砂収容空間の開口部側に板状体を支持するための突起部を設ける構成としたことにある。なお、第6の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0066】
図14、図15において、71は掘削バケット11の底板12の基端側となる補強部材13に設けられた第6の実施の形態による突起としての左,右のS字状突起を示している。この左,右のS字状突起71は、土砂収容空間16の開口部16A側に位置して補強部材13の長さ方向(左,右方向)に離間した位置に溶接手段を用いて固着されている。また、左,右のS字状突起71は、略台形状の板体からなり、底板12の基端側の内面となる補強部材13の周面の先端側位置に、掘削バケット11の先端側に向け突出するように設けられている。
【0067】
そして、各S字状突起71は、土砂収容空間16内で底部側の先端に設けられた角隅部71Aと、各サイドエッジ15の前端よりも前方に突出した位置に先端側に延びて設けられた係合突起部71Bとを備えている。ここで、各S字状突起71の底部側の角隅部71Aは、狭幅構造物62の端部を上側から支持する支点となっている。また、係合突起部71Bの底部側に設けられた他の角隅部71Cは、運搬部材をなす鋼板やフレーム材等の広幅構造物72の端部を上側から支持する支点となっている。
【0068】
かくして、このように構成された第6の実施の形態においても、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第6の実施の形態によれば、S字状突起71には係合突起部71Bを設けているから、狭幅構造物62以外にも広幅構造物72(図14中に二点鎖線で図示)を運搬することができる。
【0069】
なお、第1の実施の形態では、鉤状突起22をサイドエッジ15に溶接する構成とし、第2の実施の形態では、鉤状突起31をサイドエッジ15にボルト・ナット32を用いて着脱可能に取付ける構成とした場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、第1の実施の形態による鉤状突起22をサイドエッジ15に着脱可能にボルト止めする構成としてもよい。また、第2の実施の形態による鉤状突起31をサイドエッジ15に溶接する構成としてもよい。これらの取付手段は、作業内容等に応じて適宜に選択することができるものである。これらの構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0070】
また、第1の実施の形態では、掘削バケット11に鉤状突起22を左,右方向に間隔をもって2個設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば掘削バケット11に鉤状突起22を1個または3個以上設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0071】
さらに、各実施の形態では、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1の作業装置4に掘削バケット11を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベルの作業装置に適用する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施の形態による掘削バケットによって掘削している状態の油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】第1の実施の形態による掘削バケットによって鋼板を運搬している状態の油圧ショベルを示す正面図である。
【図3】第1の実施の形態による掘削バケットによって鋼板を運搬している状態の油圧ショベルを示す外観斜視図である。
【図4】図2中の掘削バケットを鋼板と共に拡大して示す正面図である。
【図5】第1の実施の形態による掘削バケットを単体で示す外観斜視図である。
【図6】第2の実施の形態による掘削バケットを鋼板と共に拡大して示す正面図である。
【図7】第2の実施の形態による掘削バケットを単体で示す外観斜視図である。
【図8】第3の実施の形態による掘削バケットを鋼板と共に拡大して示す正面図である。
【図9】第3の実施の形態による掘削バケットを単体で示す外観斜視図である。
【図10】第4の実施の形態による掘削バケットを鋼板と共に拡大して示す正面図である。
【図11】第4の実施の形態による掘削バケットを単体で示す外観斜視図である。
【図12】第5の実施の形態による掘削バケットを狭幅構造体と共に拡大して示す一部破断の正面図である。
【図13】第5の実施の形態による掘削バケットを単体で示す外観斜視図である。
【図14】第6の実施の形態による掘削バケットを狭幅構造体と共に拡大して示す一部破断の正面図である。
【図15】第6の実施の形態による掘削バケットを単体で示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
4 作業装置
5 ブーム
6 アーム
11 掘削バケット
12 底板
13 補強部材
14 側板
15 サイドエッジ
16 土砂収容空間
16A 開口部
17 カッティングエッジ
18 掘削爪
19 ブラケット
20 サイドカッタ
21,32 ボルト・ナット
22,31,41,51 鉤状突起(突起)
22A,31A,41A,51A 取付部
22B,31B,41B,51B,71B 係合突起部
22C,31C,41C,61A,71A,71C 角隅部
23 鋼板(運搬部材)
24 構造物(運搬部材)
51C 段部
51D 第1の支持面
51E 第2の支持面
61 爪状突起(突起)
62 狭幅構造物(運搬部材)
71 S字状突起(突起)
72 広幅構造物(運搬部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側から先端側に向け略U字状に湾曲した底板と、該底板の左,右両側に設けられた左,右の側板と、前記底板と左,右の側板とによって囲まれ前側が開口部となった土砂収容空間と、前記底板の先端側に位置して設けられたカッティングエッジと、該カッティングエッジの先端側に左,右方向に並んで設けられた複数個の掘削爪と、前記底板の基端側に設けられ作業装置のアームに取付けられるブラケットとを備えてなる掘削バケットにおいて、
前記土砂収容空間の開口部側には前記各掘削爪から前記ブラケット側に離れた位置に突起を設け、
前記各掘削爪と突起とによって運搬部材を支持する構成としたことを特徴とする掘削バケット。
【請求項2】
前記突起は前記土砂収容空間の開口部側に位置して左,右方向に間隔をもって設ける構成としてなる請求項1に記載の掘削バケット。
【請求項3】
前記突起は前記側板の前端から前方に突出して設ける構成としてなる請求項1または2に記載の掘削バケット。
【請求項4】
前記突起は前記土砂収容空間の開口部側に位置して前記底板の基端側に設ける構成としてなる請求項1または2に記載の掘削バケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−70972(P2010−70972A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239349(P2008−239349)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】