説明

掘削機の傾斜修正装置

【課題】傾斜修正装置を掘削機本体に設けずに掘削機本体を軽量化すると共に傾斜修正装置を種々の掘削機に適用可能とする。
【解決手段】掘削ロッド1の下端に首振りフランジ2が揺動可能に取り付けてあり、掘削ロッド1に設けたシリンダ取付座7に両方向にピストンが伸縮する首振りシリンダ3が固定され、首振りシリンダ3のピストン33にはV字型の首振りアーム5の先端が連結され、首振りアーム5の基端が首振りフランジ2に固定されると共に首振りフランジ2と同軸に揺動可能に支持され、ガイド取付座6には油圧シリンダ41とリンク機構42で外側に張り出し可能なリンク式修正ガイド4が固定されており、傾斜を修正するために首振りシリンダ3を作動させ、首振アーム5をピン26を軸に揺動させて首振フランジ2を揺動させ、掘削機の方向を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水平多軸掘削機やダウンザホール掘削機等、掘削機の傾斜を修正する修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削機を使用して地中深く掘削していく過程において、掘削が鉛直方向からずれて曲がって掘削される場合があり、この曲がりを検知して掘削方向を修正することがおこなわれている。
例えば、特許文献1(特開2003−41614号公報)にあるように、ベースマシンに設けたブームからワイヤーで掘削バケットを吊るした掘削機において、掘削バケット本体の両側方に突出可能なガイドを設け、傾斜計からの信号に基づいてガイドを掘削壁に押し付けて掘削方向を修正することがおこなわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−41614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水平多軸掘削機などにおいて、傾斜を修正する修正ガイドを掘削機本体に組み入れると、掘削機本体の重量が大きくなって小型のベースマシンでは移動が不可能となるので好ましくない。
本発明は、掘削泥水の揚水に使用する掘削ロッドに傾斜修正装置を設けることによって掘削機本体の重量が重くならないようにすると共に、掘削ロッドを使用する種々のタイプの掘削機に適用できるようにした傾斜修正装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
掘削ロッドの下端に首振りフランジが揺動可能に取り付けてあり、掘削ロッドに設けたシリンダ取付座に両方向にピストンが伸縮する首振りシリンダが固定され、首振りシリンダのピストンにはV字型の首振りアームの先端が連結され、首振りアームの基端が首振りフランジに固定されると共に首振りフランジと同軸に揺動可能に支持され、ガイド取付座には油圧シリンダとリンク機構で外側に張り出し可能なリンク式修正ガイドが固定されており、傾斜を修正するために首振りシリンダを作動させて首振アームをピンを軸に揺動させ、首振フランジを揺動させて掘削機の方向を修正するものであり、傾斜修正装置を掘削機本体に設けていないので、小型のベースマシンでも移動が容易である。
【発明の効果】
【0006】
傾斜修正装置を掘削ロッドに設け、掘削ロッドの掘削機に接続する端部には首振りフランジを設けたので、本発明の傾斜修正装置は、種々の掘削機に適用することができる。
傾斜修正装置の首振りシリンダとリンク式修正ガイドの油圧シリンダが連動して作動するように配管してあり、リンク式修正ガイドのガイド板が穴壁に押し付けられて反力を取れるようにしてから掘削機が首振りをおこなうので、傾斜修正の効率が向上し、短時間で修正を完了させることができる。
また、掘削ロッドに傾斜修正装置を設けたので、掘削機本体の重量が増大しておらず、小型のベースマシンであっても移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の傾斜修正装置の分解正面図と平面図。
【図2】本発明の傾斜修正装置の分解側面図。
【図3】本発明の傾斜修正装置の正面図。
【図4】本発明の傾斜修正装置の側面図。
【図5】本発明の傾斜修正装置の油圧回路図。
【図6】本発明を水平多軸掘削機に適用した場合の説明図。
【図7】本発明をダウンザホール掘削機に適用した場合の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図示の実施例を参照して本発明を更に詳しく説明する。
【実施例1】
【0009】
図1の分解正面図・平面図、及び図2の分解側面図に示すように、傾斜修正装置10は、掘削土砂と泥水を揚水する掘削ロッド1に設けたガイド取付座6及びシリンダ取付座7を介して装着してあり、掘削ロッド1の下端には首振りフランジ2が揺動可能に設けてある。
【0010】
掘削ロッド1の上端のフランジ11は、地上に設置したベースマシン側に接続されるものであり、フランジ11には連結時の位置合わせ用のピン12が設けてあり、また、フランジ11の下部には、掘削ロッドの1の円周方向に適宜の間隔で補剛材13が設けてある。
掘削ロッド1の下端には首振りフランジ2が掘削ロッド1に対して首振り可能(揺動可能)に接続されており、首振り時に掘削ロッド1の内部を通る掘削泥水が接続部から漏出することがないようにパッキング21でシールされており、首振りフランジ2には掘削機(図示しない)が接続され、首振りフランジ2が揺動駆動されることによって掘削機が揺動して掘削方向が変更される。
【0011】
首振りフランジ2は、拡径してある掘削ロッド1の下端部に設置したパッキング21を受容する拡径部22が設けてある。拡径部22の両側にはピン支持具23が設けてあり、このピン支持具23にはピン穴24が形成してあり、このピン穴24に挿入されたピン26を軸にして首フランジ2は掘削ロッド1に対して揺動するようにしてある。首振りフランジ2の側面には円周方向に適宜の間隔で補剛材25が設けてある。
【0012】
掘削ロッド1にはガイド取付座6とシリンダ取付座7が設けてあり、シリンダ取付座7の下側にはブラケット71が設けてある。
シリンダ取付座7は、掘削ロッド1を挟んで対向した位置に設けてあり、傾斜修正装置10の首振りアーム5を駆動する首振りシリンダ3(図3参照)の中央部がシリンダ取付座7に設けた軸支持部材32(図3参照)に軸支持されて揺動可能に設けてある。
ガイド取付座6は、図1に示すように、掘削ロッド1の中間部に上部材61が固定してあり、下部に下部材62、63が固定してあり、下部材62、63には、首振りフランジ2を揺動可能に取り付けるための固定具64が設けてある。この固定具64にはピン穴65が設けてあり、首振りフランジ2がピン26で揺動可能に支持される。
【0013】
シリンダ取付座7に揺動可能に設置された首振りシリンダ3は、両方向にピストンが伸縮するものであり、V字型の首振りアーム5のV字の両先端に首振りシリンダ3のピストン33、33が連結されている。首振りアーム5の基端は、首振りフランジ2にボルト52で固定されており、首振りアーム5には固定用の穴53が設けてあり、ピン26を軸にして首振りアーム5が揺動すると同軸に支持されている首振りフランジ2も揺動する。
【0014】
リンク式修正ガイド4は、ガイド取付座6に固定されており、油圧シリンダ41が内蔵されており、ガイド板43は油圧シリンダ41に連結されたリンク機構42に連結されており、油圧シリンダ41を作動させることによってガイド板43が外側に張り出す。このリンク式修正ガイド4に内蔵された油圧シリンダ41は、図5(1)に例示する油圧回路によって首振りシリンダ3と連動して作動するようにしてあり、図5(2)は、首振りシリンダ3と油圧シリンダ41を作動させてガイド板43を外側に張り出させ、首振りフランジ2を揺動させた状態を示すものである。
首振りシリンダ3を作動させて掘削機の首振り操作をしようとした場合、掘削機本体は、リンク式修正ガイド4に比較して大きな重量を有しているため、掘削機を首振りさせるのに必要な力に比べて小さな力でリンク式修正ガイド4が作動するので、最初にリンク式修正ガイド4の油圧シリンダ41が作動してリンク式修正ガイド4のガイド板43が穴壁に押し付けられるまで外側に張り出し、リンク式修正ガイド4が穴壁から受ける反力が大きくなった時点で首振りシリンダ3が作動して首振りアーム5を揺動させ、首振りアーム5に連結されている首振りフランジ2を揺動させて掘削機の首振りがおこなわれる。
【0015】
このときの首振りに要する反力は、穴壁に押し付けられているリンク式修正ガイド4が受けるため、掘削ロッド1は影響を受けず傾斜しない。
なお、油圧回路によって首振りシリンダ3が遅れて作動するようにしているが、制御装置によってリンク式修正ガイド4に作用する力が一定以上になったときに首振りシリンダ3が作動するようにしてもよい。
以上、説明した傾斜修正装置10の組み立てた状態の正面図・平面図を図3に、側面図を図4に示す。
【0016】
本発明の傾斜修正装置10を水平多軸掘削機8に適用した場合を図6に基づいて説明する。図6は、溝を掘削する水平多軸掘削装置に本発明の傾斜修正装置10を適用した事例の概略説明図であり、図6(1)は、掘削溝の長手方向の断面図、図6(2)は、掘削溝の幅方向の断面図であり、水平多軸掘削機8が溝穴の底部において鉛直方向に対して傾斜している状態を示している。
水平多軸掘削機8の場合、溝穴の長手方向に対しての掘削機の傾斜の修正は、左右2個のカッター81の回転差によって修正できるので、本発明の傾斜修正装置10を使用する必要がない。
図6(2)に示すように、溝穴の幅方向に水平多軸掘削機8が傾斜していることが掘削装置8に装備した傾斜計(図示しない)によって検知されると、オペレータが傾斜修正装置10の掘削方向を修正するため、首振りシリンダのピストンが傾斜した側に伸びるように操作すると、反対側のリンク式修正ガイド4の油圧シリンダが先に作動してリンク式修正ガイド4のガイド板43が反対側の溝壁に押し付けられる。溝壁から一定以上の反力が得られと、首振りシリンダが作動して首振りアームをピンを中心に揺動させるので首振りフランジに接続されている水平多軸掘削機の掘削方向が修正される。
【0017】
図7に示すように、丸い杭穴をダウンザホールドリルで掘削する場合について、本発明の傾斜修正装置10を適用した場合を説明する。
ダウンザホールドリル(掘削機)9の傾斜が検知された場合、掘削機9を吊り下げているベースマシンを操作して傾斜修正装置10の首振りシリンダが傾斜方向と一致するまで掘削ロッドを回転させ、この状態で傾斜修正装置10を作動させて掘削機9の傾斜を修正する。
【符号の説明】
【0018】
1 掘削ロッド
10 傾斜修正装置
2 首振りフランジ
26 ピン
3 首振りシリンダ
4 リンク式修正ガイド
41 油圧シリンダ
42 リンク機構
5 首振りアーム
6 ガイド取付座
7 シリンダ取付座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ロッドの下端に首振りフランジが揺動可能に取り付けてあり、掘削ロッドに設けた取付座に両方向にピストンが伸縮する首振りシリンダが固定され、首振りシリンダのピストンにはV字型の首振りアームの先端が連結され、首振りアームの基端が首振りフランジに固定されると共に首振りフランジと同軸に揺動可能に支持され、取付座には油圧シリンダとリンク機構で外側に張り出し可能なリンク式修正ガイドが固定されている掘削機の傾斜修正装置。
【請求項2】
請求項1において、首振りフランジと修正ガイドの油圧シリンダの油圧回路が連結してあり、修正ガイドに所定の反力が発生してから首振りシリンダが作動するようにした掘削機の傾斜修正装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−41775(P2012−41775A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185532(P2010−185532)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(599112113)株式会社東亜利根ボーリング (25)
【Fターム(参考)】