説明

掘削用バケット

【課題】 簡素な構成で、圧密による土砂の内部付着を防止できるようにした、掘削用バケットを提供する。
【解決手段】 掘削した掘削物を内空間に収容する外郭形状を有した掘削用バケット1に関し、前記内空間の奥壁面及び底面をなすベースプレート10と、前記ベースプレート10の左右両端部にそれぞれ固設されて、前記内空間の側面をなす一対のサイドプレート11,11とをそなえ、前記内空間の開口部1aよりも奥部1bの方を広く形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に用いて好適の、掘削用バケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械による掘削作業では、一般に、作業ツールとして標準バケットが用いられている。標準バケット(以下、単にバケットと記す)は、側面視で略C字形状のベースプレートと、そのベースプレートの両側面を塞ぐようにベースプレートの左右両端に固設されたサイドプレートとをそなえた容器状の作業ツールであり、土砂等を掘削するのと同時に、掘削したその土砂を内部に一時的に収容するのに適した形状になっている。
【0003】
ところで、掘削作業において、例えば粘性の大きい粘性土壌(粘土)等の土砂を掘削すると、バケット内周面の底部や側部等(バケット内部)にこのような粘性土壌が付着しやすい。そして、バケット内部に土砂が付着している状態だと、付着した土砂の体積の分だけバケットの容量が減少することになるため、バケット一掘りで掘削できる土砂の量が実質的に減少し、掘削効率が低下してしまう。
【0004】
また、掘削作業においては、通常、バケット内部に収容された土砂は、バケットを掘削した場所とは異なる場所に移動させてひっくり返し、自然落下によって排出されるが、上述のような粘性土壌等の土砂はその粘性によって土砂同士が付着しあい、比較的大きな塊状となるため、落下しにくくなる。
そのため、例えば、バケットを逆さにした状態で、バケットを繰り返し瞬時的に急激に作動させたり、硬い構造物にバケットをぶつけたりして、バケットにショックを与えて土砂とバケットとの土離れや土砂同士の土離れを起こして落下排出させたり、スコップ等を用いて作業者が付着した土砂を手作業で排出したりする必要があるが、排出されるまでに時間を要することがあり、作業効率が低下してしまう。
【0005】
このような課題に対し、例えば、特許文献1には、バケット内部の土砂を容易に落下排出させる技術として、バケット内部の周面上に断面積絞り部を形成することが開示されている。この技術では、バケットの側壁(サイドプレート)は奥部ほど狭くなるように配設されるとともに、バケットの側壁の内面に、バケット内部へ進入する土砂の進入断面積を絞る突条体が設けられるようになっている。つまり、突条体の間に土砂の塊(土壌塊)を通過させることで、バケット内部における土壌塊の横幅を減少せしめ、土壌塊をバケット内部から剥離しやすい状態にできるようになっている。
【特許文献1】特開平9−316913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、バケットの側壁に突条体を設ける必要があるため、例えば鋼板を用いてバケットの側壁を形成する場合には、突条体を形づくる部材を側壁に溶接したり、側壁を折り曲げ加工したりしなければならず、製造工程やコストが増加してしまう。また、突条体の部分がバケット内部に突出しているために、バケット内部に土砂が進入する際に突条体が障害物となり、突条体に土砂が付着してしまうおそれもある。
【0007】
さらに、例えば特許文献1記載の、開口部に比べて奥部ほど側面が狭くなるようなバケットの形状では、バケット内部に進入した土砂は、開口部から奥部へと進むほどバケットの側壁等から受ける圧力が強くなり、圧密されるため、バケット内周面の側部や底部に付着しやすい。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、簡素な構成で、圧密による土砂の内部付着を防止できるようにした、掘削用バケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の掘削用バケットは、掘削した掘削物を内空間に収容する外郭形状を有した掘削用バケットであって、前記内空間の奥壁面及び底面をなすベースプレートと、前記ベースプレートの左右両端部にそれぞれ固設されて、前記内空間の側面をなす一対のサイドプレートとをそなえ、前記内空間は、開口部よりも奥部の方が広く形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の本発明の掘削用バケットは、請求項1記載の掘削用バケットにおいて、前記内空間は、前記一対のサイドプレートの内法幅方向に対する寸法が前記開口部側よりも前記奥部側の方で大きく形成されることにより、前記開口部よりも前記奥部の方が広く形成されていることを特徴としている。
請求項3記載の本発明の掘削用バケットは、請求項2記載の掘削用バケットにおいて、前記一対のサイドプレートは、その内面を前記開口部から前記奥部へ向かって次第に間隔が広くなるように傾斜させて、前記ベースプレートの左右両端部にそれぞれ固設されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の本発明の掘削用バケットは、請求項1〜3の何れか1項に記載の掘削用バケットにおいて、前記一対のサイドプレートは、前記開口部から前記奥部に亘って均一な厚みを有することを特徴としている。
請求項5記載の本発明の掘削用バケットは、請求項1〜3の何れか1項に記載の掘削用バケットにおいて、前記一対のサイドプレートは、前記開口部から前記奥部へ向かって次第に厚みが薄くなっていくテーパ状に形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項6記載の本発明の掘削用バケットは、請求項1〜5の何れか1項に記載の掘削用バケットにおいて、前記一対のサイドプレートは、その外面が互いに平行になるように形成されていることを特徴としている。
請求項7記載の本発明の掘削用バケットは、請求項1〜6の何れか1項に記載の掘削用バケットにおいて、前記一対のサイドプレートの開口端部にそれぞれ固設され、前記ベースプレートの弦方向に延在して前記開口部を補強する一対のサイドカッタプレートをそなえ、前記一対のサイドカッタプレートは、前記一対のサイドプレートよりも肉厚に形成され、その内面が前記サイドプレートの内面よりも内側にずれた状態で固設されていることを特徴としている。
【0012】
請求項8記載の本発明の掘削用バケットは、請求項7記載の掘削用バケットにおいて、前記サイドカッタプレートは、その外面が前記サイドプレートの前記開口端部における外面と同一面上に配置されていることを特徴としている。
請求項9記載の本発明の掘削用バケットは、請求項1〜8の何れか1項に記載の掘削用バケットにおいて、前記ベースプレートの底面側開口端部に固設され、前記一対のサイドプレートの内法幅方向に延在して前記開口部を補強するエッジプレートをそなえ、前記エッジプレートは、前記ベースプレートよりも肉厚に形成され、その内面が前記ベースプレートの内面よりも内側にずれた状態で固設されていることを特徴としている。
【0013】
請求項10記載の本発明の掘削用バケットは、請求項9記載の掘削用バケットにおいて、前記エッジプレートは、その外面が前記ベースプレートの外面と同一面上に配置されていることを特徴としている。
請求項11記載の本発明の掘削用バケットは、請求項1〜8の何れか1項に記載の掘削用バケットにおいて、前記ベースプレートの底面側開口端部に固設され、前記一対のサイドプレートの内法幅方向に延在して前記開口部を補強するエッジプレートをそなえ、前記ベースプレートは、その底面部分において、前記エッジプレートの内面よりも外面側に張り出す膨出部を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の本発明の掘削用バケットによれば、バケットの内空間は開口部よりも奥部の方が広く形成されているので、バケットの開口部から奥部へ進入する土砂の、バケット内面から受ける圧力を小さくすることができ、土砂の圧密を抑制することができる。したがって、圧密による土砂の内部付着を防止することが可能となる。
請求項2記載の本発明の掘削用バケットによれば、バケットの内空間は、一対のサイドプレートの内法幅寸法が開口部側よりも奥部側の方で大きく形成されるので、バケットの内空間において、側面方向(左右方向)への土砂の圧密を抑制することができる。また、バケットの内空間を簡素な構成で開口部よりも奥部の方を容易に広く形成することができる。
【0015】
請求項3記載の本発明の掘削用バケットによれば、一対のサイドプレートは、その内面を開口部から奥部に向かって次第に間隔が広くなるように傾斜させて、ベースプレートの左右両端部にそれぞれ固設されているので、一対のサイドプレートの内法幅寸法をより容易に開口部側よりも奥部側の方で大きく形成することができる。
請求項4記載の本発明の掘削用バケットによれば、均一な厚みのサイドプレートを用いるので、廉価にバケットを形成することが可能となる。
【0016】
請求項5記載の本発明の掘削用バケットによれば、一対のサイドプレートはその厚みをテーパ状に形成されているので、バケットの内空間を開口部よりも奥部の方を広く形成しながら、その外面形状を容易に変更することができる。
請求項6記載の本発明の掘削用バケットによれば、一対のサイドプレートはその外面が互いに平行になるように形成されているので、サイドプレートの外面は掘削方向に対して平行になり、掘削抵抗が減少して、バケットの側外面の磨耗を抑制することができる。
【0017】
請求項7記載の本発明の掘削用バケットによれば、一対のサイドプレートの開口端部に一対のサイドカッタプレートをそなえ、サイドカッタプレートはサイドプレートよりも肉厚に形成され、その内面はサイドプレートの内面よりも内側に張り出すようにずれているので、側面方向においてバケットの内空間を簡素な構成で開口部よりも奥部の方を広く形成することができ、したがって、側面方向への土砂の圧密を抑制することができる。
【0018】
請求項8記載の本発明の掘削用バケットによれば、サイドカッタプレートの外面とサイドカッタプレートの外面とは同一面上に配置されているので、バケットの内空間を開口部よりも奥部の方をより広く形成することができる。
請求項9記載の本発明の掘削用バケットによれば、ベースプレートの底面側開口端部にエッジプレートをそなえ、エッジプレートはベースプレートよりも肉厚に形成され、エッジプレートの内面はサイドカッタプレートの内面よりも内側に張り出すようにずれているので、上下方向においてバケットの内空間を簡素な構成で開口部よりも奥部の方を広く形成することができ、したがって、上下方向への土砂の圧密を抑制することができる。
【0019】
請求項10記載の本発明の掘削用バケットによれば、エッジプレートの外面とベースプレートの外面とは同一面上に配置されているので、バケットの内空間を開口部よりも奥部の方をより広く形成することができる。
請求項11記載の本発明の掘削用バケットによれば、ベースプレートは、その底面部分において膨出部が形成されているので、上下方向においてバケットの内空間を簡素な構成で開口部よりも奥部の方を広く形成することができ、したがって、上下方向への土砂の圧密を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図3は本発明の第1実施形態の掘削用バケットを示し、図1はその模式的な側面図、図2は図1のA−A矢視断面図、図3はその掘削用バケットの模式的な分解斜視図である。
【0021】
図1〜図3に示すように、掘削用バケット1は、側面視で略C字形状に湾曲したベースプレート10と、ベースプレート10の左右両端部10a,10bに一端部11a,11aを溶接された平板状の左右一対のサイドプレート11,11と、一対のサイドプレート11,11の他端部11b,11bに溶接され、ベースプレート10の弦方向に延在する平板状の左右一対のサイドカッタプレート12,12と、一対のサイドカッタプレート12,12間に位置してベースプレート10の下端部10cに奥端部13aを溶接され、左右方向に延在する平板状のエッジプレート13と、エッジプレート13の先端部に装着された複数個のツース14とをそなえて構成されている。なお、図3には便宜上ツース14を図示していない。また、弦方向とは、ベースプレート10のC字形状の弧に対応する弦の方向である。
【0022】
サイドプレート11とサイドカッタプレート12とはバケット1の側面をなし、ベースプレート10とエッジプレート13とはバケット1の底面をなしている。また、ベースプレート10は奥壁面も同時になしている。そして、掘削用バケット1は、ベースプレート10とエッジプレート13と左右一対のサイドプレート11,11と左右一対のサイドカッタプレート12,12とによる外郭に囲繞された内空間に、掘削した土砂等を収容するようになっている。内空間は、図1に示すように、バケット1外部に面する開口部1aと、開口部1aよりも内部側(図1の矢印B方向)の奥部1bとを有して構成されている。
【0023】
ここで、サイドプレート11における一端部11a及び他端部11bについて、図3に示すように、サイドプレート11の外辺、すなわち、弧状の一辺11aと直線状の一辺11bとのうち、一端部11aは奥部1b側の弧状の一辺を指し、他端部11bは開口部1a側の直線状の一辺を指すものである。なお、サイドカッタプレート12の一端部12aは、サイドカッタプレート12の外辺(四辺)のうち奥部1b側の一辺を指し、他端部12bは開口部1a側の一辺を指す。また、ベースプレート10の下端部10cは開口部1a側且つ底面側(図1に示す上下方向における下側)の一辺を指し、エッジプレート13の奥端部13aは奥部1b側の一辺を指す。
【0024】
図2に示すように、サイドカッタプレート12の板厚D12は、サイドプレート11の板厚D11よりも大きく肉厚に形成されている(D12>D11)。これにより、開口部1a周りが補強されて、変形等に対する掘削用バケット1の強度が向上するようになっている。同様に、図1に示すように、エッジプレート13の板厚D13はベースプレート10の板厚D10よりも大きく形成され(D13>D10)、開口部1a周りが補強されて、変形等に対する強度がより向上するようになっている。
【0025】
ここで、本実施形態の特徴として、図3に示すように、ベースプレート10の板幅は、開口部1a側における幅W10aよりも奥部1bにおける幅W10bの方が大きく形成されている。つまり図2に示すように、開口部1aから奥部1bへ向かって、左右方向の幅W10が次第に広くなるように、上面視で略台形状に形成されている。また、エッジプレート13は、開口部1aから奥部1b側へ向かって、左右方向の幅W13が次第に広くなるように、上面視で略台形状に形成されている。
【0026】
そして、サイドプレート11及びサイドカッタプレート12はそれぞれ、他端部11b,12bから一端部11a,12aに向かって、つまり、開口部1aから奥部1bへ向かって、内法幅方向に対する寸法(内面幅及びプレート11,12同士の離隔距離)W11,W12が次第に大きくなるように、それらの内面を傾斜させてベースプレート10及びエッジプレート13にそれぞれ溶接されている。つまり、バケット1の内空間は、開口部1aから奥部1bへ向かって次第に広くなっている。もちろん、バケット1は左右対称であるから、各サイドプレート11の内面はいずれも、内空間の奥部1b向きに微小に傾斜している。
【0027】
本発明の第1実施形態にかかる掘削用バケットは上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
バケット1のベースプレート10とエッジプレート13と左右一対のサイドプレート11,11と左右一対のサイドカッタプレート12,12とが囲繞する内空間は、開口部1aよりも奥部1bの方が広く形成されているので、バケット1の開口部1aより進入した土砂は、奥部1bに向かってさらに進入する際にバケット内面から受ける圧力が減少して、圧密されない。したがって、バケット1内部への土砂の付着を減少させることができる。
【0028】
さらに、バケット1の内空間は、一対のサイドプレート11,11の内面幅W11を開口部側1aよりも奥部側1bの方で大きく形成するという簡素な構成で、開口部1aよりも奥部1bの方を広く形成することができる。
また、一対のサイドプレート11,11は、その内面を開口部1aから奥部1bに向かって次第に間隔が広くなるように傾斜させて、ベースプレート10の左右両端部10a,10bにそれぞれ固設されているので、バケット1の内空間を開口部1aよりも奥部1bの方で十分に広く形成することができる。
【0029】
なお、本実施形態のバケット1は、掘削抵抗が少なく土離れが悪い、軟弱地や粘土質等の粘性の大きい土質に対して用いることが好ましい。
また、本実施形態のバケット1は、図2には、各サイドプレート11の内面はいずれも傾斜を大きくつけて記載しているが、この傾斜は微小であっても良い。
【0030】
〔第2実施形態〕
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る掘削用バケットを示した模式的な断面図ある。
本実施形態でも、掘削用バケット2は、第1実施形態と同様に、図4に示すように、側面視で略C字形状に湾曲したベースプレート20と、ベースプレート20の左右両端部に一端部を溶接された平板状の左右一対のサイドプレート21,21と、一対のサイドプレート21,21の他端部に溶接され、弦方向に延在する平板状の左右一対のサイドカッタプレート22,22と、一対のサイドカッタプレート22,22間に位置してベースプレート20の下端部に奥端部を溶接され、左右方向に延在する平板状のエッジプレート23と、エッジプレート23の先端に装着された複数個のツース24とをそなえて構成されている。そして、サイドカッタプレート22の板厚は、サイドプレート21の板厚よりも大きく形成され、エッジプレート23の板厚はベースプレート20の板厚よりも大きく形成されている。
【0031】
ここで、本実施形態の特徴として、ベースプレート20の左右方向の幅W20は、開口部2a側から奥部2bに亘って均一又は略均一に形成されている。また、エッジプレート23の幅W23も、ベースプレートの幅W20と同様に、開口部2aから奥部2b側に亘って均一又は略均一に形成されており、エッジプレート23は矩形状の平板により構成されている。そして、一対のサイドプレート21,21は、互いに平行又は略平行にベースプレート20に溶接され、一対のサイドカッタプレート22もそれぞれ、互いに平行又は略平行に一対のサイドプレート21,21に溶接されている。
【0032】
また、サイドプレート21の他端部には、その外面21OUTとサイドカッタプレート22の外面22OUTとが同一面上に配置されて、サイドカッタプレート22の一端部が溶接されている。つまり、サイドプレート21とサイドカッタプレート22とは、外面21OUT,22OUTを合わせ、内面21IN,22INをずらして溶接されている。
【0033】
本発明の第2実施形態にかかる掘削用バケットは上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
一対のサイドプレート21,21と一対のサイドカッタプレート22,22とはそれぞれ、互いに平行に配設されると同時に、外面21OUT,22OUTを合わせ、内面21IN,22INをずらして溶接されているので、エッジプレート23とサイドカッタプレート22により囲繞される開口部2aにおける内空間に比べて、サイドプレート21とベースプレート20とにより囲繞される奥部2bにおける内空間はバケット2の左右方向に広くなる。
したがって、バケット2の開口部2aより進入した土砂は、バケット2内部(内空間)の奥部2bに向かってさらに進入しても圧密されずに、バケット2内部への土砂の付着を減少させることができる。
【0034】
また、サイドカッタプレート22はサイドプレート21よりも肉厚に形成され、その内面22INをサイドプレート21の内面21INよりも内側に張り出すようにずらして溶接されているので、バケット2の内空間を簡素な構成で開口部2aよりも奥部2bの方を広く形成することができる。
さらに、サイドカッタプレート22の外面22OUTとサイドプレート21の外面21OUTとは互いに平行に形成されているので、各外面21OUT,22OUTは掘削方向に対して平行になり、掘削抵抗が減少して、バケット2の側外面21OUT,22OUTの磨耗を抑制することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、サイドプレート21とサイドカッタプレート22とは、外面21OUT,22OUTを合わせ、内面21IN,22INをずらして溶接されているが、特に外面21OUT,22OUTを合わせることなく、サイドプレート21は、その内面21INを外面21OUT側にずらしてサイドカッタプレート22に溶接されても良い。このような構成であっても、エッジプレート23とサイドカッタプレート22により囲繞される開口部2aにおける内空間に比べて、サイドプレート21とベースプレート20とにより囲繞される奥部2bにおける内空間は広くなるので、バケット2の開口部2aより進入した土砂は、バケット2内部(内空間)の奥部2bに向かってさらに進入しても圧密されずに、バケット2内部への土砂の付着を減少させることができる。
【0036】
〔第3実施形態〕
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図5は、本発明の第3実施形態に係る掘削用バケットを示した模式的な側面図である。第1実施形態及び第2実施形態では、バケット内の側面形状の設定により、開口部よりも奥部の方を広く形成しているが、本実施形態では、バケット内の底面形状の設定により、開口部よりも奥部の方を広く形成している。
【0037】
本実施形態でも、掘削用バケット3は、第1,第2実施形態と同様に、側面視で略C字形状に湾曲したベースプレート30と、ベースプレート30の左右両端部に一端部を溶接された左右一対のサイドプレート31,31と、一対のサイドプレート31,31の他端部に溶接され、弦方向に延在する平板状の左右一対のサイドカッタプレート32,32と、一対のサイドカッタプレート32,32間に位置してベースプレート30の下端部に奥端部を溶接され、左右方向に延在するエッジプレート33と、エッジプレート30の先端に装着された複数個のツース34とをそなえて構成されている。そして、サイドカッタプレート32の板厚は、サイドプレート31の板厚よりも大きく形成され、エッジプレート33の板厚D33はベースプレート30の板厚D30よりも大きく形成されている(D33>D30)。
【0038】
ここで、本実施形態の特徴として、ベースプレート30の下端部には、その下面30OUTとエッジプレート33の下面33OUTとが同一面上に配置されて、エッジプレート33の奥端部が溶接されている。つまり、ベースプレート30とエッジプレート33とは、下面30OUT,33OUTを合わせ、上面30IN,33INをずらして溶接されている。
【0039】
本発明の第3実施形態にかかる掘削用バケットは上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
ベースプレート30とエッジプレート33とは、下面30OUT,33OUTを合わせ、上面33OUTをずらして溶接されているので、エッジプレート33とサイドカッタプレート32により囲繞される開口部3aにおける内空間に比べて、サイドプレート31とベースプレート30とにより囲繞される奥部3bにおける内空間はバケット3の下方向に広くなる。
したがって、バケット3の開口部3aより進入した土砂は、バケット3内部(内空間)の奥部3bに向かってさらに進入しても圧密されずに、バケット3内部への土砂の付着を減少させることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、ベースプレート30とエッジプレート33とは、下面30OUT,33OUT合わせ、上面30IN,33INをずらして溶接されているが、特に下面30OUT,33OUTを合わせることなく、ベースプレート30は、その上面30INが下面30OUT側にずれた状態でエッジプレート33に溶接されても良い。このような構成であっても、エッジプレート33とサイドカッタプレート32により囲繞される開口部3aにおける内空間に比べて、サイドプレート31とベースプレート30とにより囲繞される奥部3bにおける内空間は広くなるので、バケット3の開口部3aより進入した土砂は、バケット3内部(内空間)の奥部3bに向かってさらに進入しても圧密されずに、バケット3内部への土砂の付着を減少させることができる。
【0041】
また、図6に示すように、ベースプレート30の底面部分において、エッジプレート33の内面よりも外面側に張り出すように膨出部35を形成しても良い。この場合、ベースプレート30の上面30INとエッジプレート33の上面33INとは一致していることが好ましい。そして、膨出部35の最下端は、エッジプレート33の下面33OUTの延長線上に位置するように形成して、膨出部35を大きく形成することが好ましい。このような構成であっても、開口部3aよりも奥部3bにおける内空間が広くなるので、土砂は圧密されずに、バケット3内部への付着が減少する。
【0042】
〔第4実施形態〕
次に、図7を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。図7は、本発明の第4実施形態に係る掘削用バケットを示した模式的な断面図である。
本実施形態は、第1実施形態の掘削用バケットの変形例であって、サイドプレート及びサイドカッタプレートの厚みの点で異なるものである。
つまり、本実施形態のバケット4は、第1実施形態と同様に、側面視で略C字形状に湾曲したベースプレート40と、ベースプレート40の左右両端部に一端部を溶接された左右一対のサイドプレート41,41と、一対のサイドプレート41,41の他端部に溶接され、弦方向に延在する左右一対のサイドカッタプレート42,42と、一対のサイドカッタプレート42,42間に位置してベースプレート40の下端部に奥端部を溶接され、左右方向に延在するエッジプレート43と、エッジプレート43の先端部に装着された複数個のツース44とをそなえて構成されている。
【0043】
しかし、本実施形態は、第1実施形態と異なり、サイドプレート41の板厚D41は均一ではない。つまり、サイドプレート41の厚みD41は、開口部4aから奥部4bに向かって次第に小さくなるように傾斜を付けたテーパ状に形成されている。また、サイドカッタプレート42も、その厚みD42がサイドプレート41と同様の傾斜を有するテーパ状になるように形成されている。
【0044】
そして、サイドプレート41の内面41INとサイドカッタプレート42の内面42INとは滑らかに連続し、且つ、その内面幅がそれぞれ開口部4aから奥部4bに向かって広くなるように形成されている。また、サイドプレート41の外面41OUTとサイドカッタプレート42の外面42OUTとはそれぞれ、滑らかに連続し、且つ、その一対の外面41OUT,42OUT同士が図7に実線で示すように互いに平行になるように配設されている。
【0045】
本発明の第4実施形態にかかる掘削用バケットは上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
第1実施形態と同様に、ベースプレート40とエッジプレート43と左右一対のサイドプレート41,41と左右一対のサイドカッタプレート42,42とが囲繞する内空間は、開口部4aよりも奥部4bの方が広くなるように形成されているので、バケット4の開口部4aより進入した土砂は、バケット4内部(内空間)の奥部4bに向かってさらに進入しても圧密されずに、バケット4内部への土砂の付着を減少させることができる。
【0046】
同時に、バケット4の側部の外面、つまり、サイドプレート41及びサイドカッタプレート42の外面41OUT,42OUTが、掘削方向に対して平行になるように形成されているので、掘削抵抗が減少し、バケットの側面の磨耗を抑制することができる。
なお、本実施形態では、サイドプレート41及びサイドカッタプレート42は、それぞれ外面41OUT,42OUTが互いに平行に形成されているが、図7に二点鎖線で示すように、対向する外面41OUT,41OUT(42OUT,42OUT)は、開口部4aから奥部4bに向かって次第に間隔が小さくなるように形成されてもよい。
【0047】
また、本実施形態のバケット4は、図7では、各サイドプレート41及びサイドカッタプレート42の内面41IN,42INはいずれも傾斜を大きくつけて記載しているが、この傾斜は微小であっても良い。
【0048】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、第1〜第4実施形態を適宜組み合わせた構造にしても良い。つまり、例えば第1実施形態に第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせた構造にしても良い。具体的には、サイドプレートとサイドカッタプレートとはそれぞれ、開口部から奥部へ向かって内法幅寸法が次第に大きくなるように傾斜して(第1実施形態)、かつ、それらの外面を合わせ内面をずらして配設され(第2実施形態の一部分)、さらに、ベースプレートとエッジプレートとは下面を合わせ上面をずらして配設され(第3実施形態)、バケットの内空間が、側面形状及び底面形状両方の設定によって、開口部よりも奥部の方で広くなるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る掘削用バケットを示す模式的な側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る掘削用バケットを示す、図1のA−A矢視断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る掘削用バケットを示す、模式的な分解斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る掘削用バケットを示す模式的な断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る掘削用バケットを示す模式的な側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の変形例に係る掘削用バケットを示す模式的な側面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る掘削用バケットを示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1,2,3,4 バケット(掘削用バケット)
1a,2a,3a,4a 開口部
1b,2b,3b,4b 奥部
10,20,30,40 ベースプレート
10a,10b 左右両端部
10c 下端部(底面側開口端部)
10d 上端部
11,21,31,41 サイドプレート
11a 一端部
11b 他端部(開口端部)
12,22,32,42 サイドカッタプレート
12a 一端部
12b 他端部
13,23,33,43 エッジプレート
13a 奥端部
14,24,34,44 ツース
35 膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削した掘削物を内空間に収容する外郭形状を有した掘削用バケットであって、
前記内空間の奥壁面及び底面をなすベースプレートと、
前記ベースプレートの左右両端部にそれぞれ固設されて、前記内空間の側面をなす一対のサイドプレートとをそなえ、
前記内空間は、開口部よりも奥部の方が広く形成されている
ことを特徴とする、掘削用バケット。
【請求項2】
前記内空間は、前記一対のサイドプレートの内法幅方向に対する寸法が前記開口部側よりも前記奥部側の方で大きく形成されることにより、前記開口部よりも前記奥部の方が広く形成されている
ことを特徴とする、請求項1記載の掘削用バケット。
【請求項3】
前記一対のサイドプレートは、その内面を前記開口部から前記奥部へ向かって次第に間隔が広くなるように傾斜させて、前記ベースプレートの左右両端部にそれぞれ固設されている
ことを特徴とする、請求項2記載の掘削用バケット。
【請求項4】
前記一対のサイドプレートは、前記開口部から前記奥部に亘って均一な厚みを有する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の掘削用バケット。
【請求項5】
前記一対のサイドプレートは、前記開口部から前記奥部へ向かって次第に厚みが薄くなっていくテーパ状に形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の掘削用バケット。
【請求項6】
前記一対のサイドプレートは、その外面が互いに平行になるように形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の掘削用バケット。
【請求項7】
前記一対のサイドプレートの開口端部にそれぞれ固設され、前記ベースプレートの弦方向に延在して前記開口部を補強する一対のサイドカッタプレートをそなえ、
前記一対のサイドカッタプレートは、前記一対のサイドプレートよりも肉厚に形成され、その内面が前記サイドプレートの内面よりも内側にずれた状態で固設されている
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の掘削用バケット。
【請求項8】
前記サイドカッタプレートは、その外面が前記サイドプレートの前記開口端部における外面と同一面上に配置されている
ことを特徴とする、請求項7記載の掘削用バケット。
【請求項9】
前記ベースプレートの底面側開口端部に固設され、前記一対のサイドプレートの内法幅方向に延在して前記開口部を補強するエッジプレートをそなえ、
前記エッジプレートは、前記ベースプレートよりも肉厚に形成され、その内面が前記ベースプレートの内面よりも内側にずれた状態で固設されている
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の掘削用バケット。
【請求項10】
前記エッジプレートは、その外面が前記ベースプレートの外面と同一面上に配置されている
ことを特徴とする、請求項9記載の掘削用バケット。
【請求項11】
前記ベースプレートの底面側開口端部に固設され、前記一対のサイドプレートの内法幅方向に延在して前記開口部を補強するエッジプレートをそなえ、
前記ベースプレートは、その底面部分において、前記エッジプレートの内面よりも外面側に張り出す膨出部を有している
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の掘削用バケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−322206(P2006−322206A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145927(P2005−145927)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】