説明

掘進機の排土装置

【課題】泥土圧式の掘進機に配設される排土装置について、過大なコストアップを伴うことなくメインの排土バルブが開いたままの状態で排土通路を容易に開閉できるようにする。
【解決手段】カッターヘッド11及びカッターチャンバ12を有し隔壁13で後続側と区画された掘削部10に泥水を圧送して所定圧力以上に維持しながら地盤を掘削する泥土圧式の掘進機1Aに配設され、カッターチャンバ12から後方に延設された排土通路とこの排土通路を開閉する排土バルブ21Aを備えて、カッターチャンバ12内の流動化された土砂を後方側に送って排出する略管状の排土装置2Aにおいて、排土通路の排土バルブ21A上流側に、排土通路を手動で開閉する通路開閉手段としての開閉部20を備えたものとして、排土バルブ21Aが開いた状態で排土通路を手動で開閉可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘進機の排土装置に関し、殊に、泥土圧シールド式の掘進機において掘削した土砂を圧送した泥水とともに掘削部側から後続の搬送手段まで搬送するために用いられる排土装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水分が多い等の理由で切羽の安定性に欠ける地盤を掘削する場合に、掘削部の密閉性を確保しながら泥水を圧送して切羽の安定を図りながら掘進し、内装した排土装置で掘削部内に溜まった土砂を後方の搬送手段まで送って排出するものとした泥土圧シールド式の掘進機が使用されることが多い。
【0003】
例えば、立坑等の発進スペースから既設の構造物に到達するように掘り進む既設構造物到達型の掘進機は、工事規模を最小限として交通障害や騒音の問題を回避しながら短期間で掘進できるものとして知られており、特開平11―210375号公報に記載されているように、比較的コンパクト且つ分解可能な構造を有し、到達した構造物側で分解・回収できるものとして、工事規模の縮小および低コスト化を実現している。
【0004】
このような掘進機は、図4の縦断面図に示すように、カッターヘッド11後方のカッターチャンバ12内に溜まって流動化した土砂を、排土バルブ21Bを備えた略管状の排土装置2Bで後続の搬送手段5まで送って排出させるようになっている。この排土装置2Bは、カッターヘッド11とカッターチャンバ12とを有する掘削部10と後続の空間を仕切る隔壁13を貫通して後方に延設され、掘削停止中は排土バルブ21Bを閉じることで掘削部10側の圧力を維持しながら泥水が掘削部10外に漏出しないものとしている。
【0005】
ところが、このような従来の掘進機1Bにおいて、排土装置2Bの排土バルブ21Bに不具合が生じた場合には内部スペースに余裕が少ないこともあって短時間でこれを修復することが容易ではないため、掘削部10側の泥水が掘進機1B内部に漏出して以後の作業が困難となることがある。また、メインの排土バルブ21Bが開いた状態で、これとは別に排土通路を簡易に開閉できるサブの排土バルブを備えていれば作業上便利な場合もある。
【特許文献1】特開平11−210375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、泥土圧シールド式の掘進機に配設される排土装置について、過大なコストアップを伴うことなくメインの排土バルブを開いたままの状態で排土通路を容易に開閉できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、カッターヘッド及びカッターチャンバを有し隔壁により後続側と区画された掘削部に泥水を圧送して該掘削部側を所定圧力以上に維持しながら地盤を掘削する泥土圧式シールドの掘進機に配設され、前記カッターチャンバから後方のシールド内に延設された管状の排土通路とこの排土通路を開閉する排土バルブを備えて前記カッターチャンバ内の流動化された土砂をシールド後方側に送って排出する略管状の排土装置において、前記排土通路の前記排土バルブ上流側に、前記排土通路を開閉する通路開閉手段を備えており、前記排土バルブが開いた状態で前記排土通路を手動で開閉可能としたことを特徴とする。
【0008】
これにより、例えば排土バルブが故障して排土通路を閉鎖できない場合でも、その上流側に配設された通路開閉手段を用いて排土通路を開閉可能となるため、過大なコストアップを伴うことなく掘削部側の泥水が装置内に漏出する等のトラブルを容易に回避できるようになる。
【0009】
また、その通路開閉手段が、前記排土通路を閉鎖する閉鎖板が円弧状に湾曲して該円弧の中心軸線が前記排土通路の中心軸線に略直交するように配置され、前記閉鎖板の円弧状に突出する外面が前記排土通路の開口部を有して円弧状に陥凹した合わせ面に密接して前記排土通路を閉鎖し、前記円弧の中心軸線の延長線上で軸棒を外向き且つ垂直に一端側から各々延設された対向する一対の側板が他端側を前記閉鎖板の円弧状の両端面に各々接続して通路閉鎖部材を形成するとともに、前記軸棒が前記通路閉鎖部材を収装したケーシング側面で軸支されており、ケーシング外側から補棒を回すことで、前記閉鎖板が前記合わせ面上を摺動することにより前記排土通路を開閉する構成とした場合には、簡易な構成で配設のために大きなスペースを要することなく、しかも軸を回転させるという簡易な操作で排土通路を確実に開閉できるようになる。
【0010】
また、前記軸棒をケーシング外側に配置したクランクハンドルを用いて手動で回す場合には別途に駆動源を必要とせずに更に経済性に有利となる。
【発明の効果】
【0011】
排土バルブ上流に手動式の通路閉鎖手段を設けた本発明により、過大なコストアップを伴うことなくメインの排土バルブが開いた状態で排土通路を容易に開閉できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の排土装置2Aを配設した泥土圧式の掘進機1Aを示している。掘進機1Aは、例えば立坑等発進用のスペースから導入され、そのスペースから既設の構築物である坑道や人坑等まで掘進して坑道を連通させるために用いる、いわゆる既設構造物到達型の掘進機であり、比較的小型で作業員1名程度が入って作業できる内部スペースを有しており、比較的簡易な構造とされて到達した既設構造物側で分解・再利用可能なものとなっている。
【0014】
掘進機1Aは、先端側に地盤を掘削するためのカッターヘッド11が設けられ、その後方に掘削された土砂を溜めるスペースとなるカッターチャンバ12が設けられている。このカッターヘッド11およびカッターチャンバ12は、それより後方のスペースとは隔壁13で仕切られて掘削部10を構成しており、この掘削部10側を所定の圧力に維持して密閉できるようになっており、切羽が不安定になりやすい地盤に対し、泥水を圧送しながら所定の圧力をかけることで切羽の安定を確保しながら掘進し、掘削した土砂を排土装置2Aで後方に送って排出するようになっている。
【0015】
そして、本発明の排土装置2Aは、内部に排土通路を備えた略管状の部材で、カッターチャンバ12内と後続側のスペースとを連通するように隔壁12aから後方に延設されている。排土装置2Aの後端側には排土バルブ21Aが配設されて排土通路を開閉できるようになっており、これを開放することで排土装置2A後端の排出部22から土砂を排出して後続の搬送手段5に送るようになっている。
【0016】
この排土装置2Aにおいて、排土バルブ21Aの上流側に通路開閉手段としての開閉部20を備えている点が本発明の特徴部分である。即ち、図2(A)の開閉部20の拡大部分図、およびそのX−X線に沿う断面図を参照して、開閉部20は排土通路25を形成する管状の本体部分に設けられ、円柱状の排土通路25を略角柱状に拡大してなるケーシング21中で、排土通路25を閉鎖するための円弧状に湾曲した閉鎖板23aが、その円弧の中心軸線Yを排土通路25の中心軸線Zに直交するように配置され、この閉鎖板23aの円弧状に突出する外面が、ケーシング21内面に形成され排土通路25の開口部を有して円弧状に陥凹してなる合わせ面23dに密接して、排土通路25を閉鎖するようになっている。
【0017】
この円弧の中心軸線Yの延長線上で、扇形状部材の要部分から軸棒231,232を外向き且つ垂直に各々延設されて内側面を対向させた一対の側板23b,23cが、その円弧状の端面側を閉鎖板23aの円弧状の両端面側に各々接続して全体として通路閉鎖部材23を構成しており、軸棒231,232がケーシング21の両側面で軸支され、その一方の軸棒231の先端側が排土通路25外部側に突出している。そして、この軸棒231先端側にクランクハンドル23eの基端軸が接続されており、これを作業員が手動で回すことで通路閉鎖部材23が回動し、閉鎖板23aが合わせ面23d上を摺動して排土通路25を開閉するようになっている。
【0018】
排土装置2Aの開閉部20はこのように比較的簡易な構成であり、配設するために製造コストを大幅に高騰させることがないものである。また、図2(A)の開閉部20の右側面図を示す図2(C)から分かるように、その通路閉鎖部材23を収装したケーシング21は本体部分から続く管状部材の外周部を略角柱状に僅かに拡大しただけのものであり、配設のために大きなスペースを要することがなく、内部スペースが比較的狭い掘進機1Aにおいて作業者が入ってクランクハンドル23eを回すだけのスペースは容易に確保できるものである。
【0019】
次に、本発明における開閉部20の動作について図3(A),(B)を用いて説明する。
【0020】
図3(A)は、開閉部20を開放させている状態を示しており、破線で示す通路閉鎖部材23は閉鎖板23aが最上部に位置して、合わせ面23dの排土通路25開口部を露出させて開放した状態となっている。この状態で、下流側の図示しない排土バルブ21Aは開放しており、圧力の高いカッターチャンバ12側から流動化した土砂が、圧力差により搬送手段5に向かって排出される。
【0021】
そして、点検等の目的で掘進機1Aを停止させる場合、排土バルブ21Aを閉鎖してカッターチャンバ12側の気・液密性を確保するものであるが、何らかの原因で排土バルブ21Aが完全に閉鎖しない場合がある。或いは、作業員が掘進機1A内部で作業を行っている際に、その場で一時的に排土通路25を閉鎖できれば便利な場合もある。
【0022】
このような場合、図3(B)に示すように開閉部20のクランクハンドル23eを作業員が下方向に手動で約90度回すことにより、通路閉鎖部材23が回動して閉鎖板23aは合わせ面23d上を摺動して横向きとなり、排土通路25開口部を完全に覆うものとなり、容易に排土通路25を閉鎖することができる。
【0023】
即ち、クランクハンドル23eを回すことで湾曲した閉鎖板23aがヘルメットのシールドを開閉する時のような動作をするものであり、僅かな動作で確実に排土通路25を開閉することができる。また、閉鎖板23aが合わせ面23dに密接して摺動することから、砂や小石が排土通路25開口部周囲に挟まりにくく、しかもカッターチャンバ12側の高圧で閉鎖板23aが合わせ面23dに押し付けられる状態となるため、簡易な構成でもシール性に優れている点を特徴としている。
【0024】
そして、排土通路25を閉鎖したことにより、排出部22から泥水が一気に漏出することがないため、作業員が排土バルブ21Aの修理等の作業を掘進機1A内で進めることが容易となる。さらに、メインの排土バルブ21Aの修復が困難な場合は、掘進作業の終了まで開閉部20を排土バルブ21Aの代わりに使用することもできる。
【0025】
以上、述べたように、通常の泥土圧式掘進機の排土装置に開閉部を設けただけの簡易な構成である本発明により、過大なコストアップを伴うことなくメインの排土バルブが開いた状態で排土通路を容易に開閉できるものである。尚、上述の説明において、本発明を既設構造物到達型の掘進機に適用した場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、略管状で圧力差により土砂を排出する排土装置を内装したものであれば、これよりも規模の大きなシールド掘進機等にも同様に適用できることは言うまでもない。また、開閉部の閉鎖板と合わせ面との間にゴムなどのシール部材を配設することにより、シール性能をより高めることができる。
【0026】
尚、本実施の形態では、軸棒231をケーシング21の外側に配置したクランクハンドル23eにより手動で回す構成としたので別途に駆動源を必要とせず、構成が複雑でなく経済的にも有利であるが、前記軸棒231を例えば電動機、油圧式のアクチュエータなどの駆動源を用いて回しても良く、これらの場合には離れた場所から開閉部を制御することができるので利便性に優れているとともに自動制御化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明における実施の形態の排土装置が配設された掘進機を示す縦断面図。
【図2】(A)は図1の排土装置の開閉部の拡大部分図、(B)は(A)のX−X線に沿う断面図、(C)は(A)の左側面図。
【図3】(A),(B)は、図1の排土装置の開閉部の動作を説明するための拡大部分図。
【図4】従来例の排土装置を備えた掘進機を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0028】
1A 掘進機、2A 排土装置、5 搬送手段、10 掘削部、11 カッターヘッド、12 カッターチャンバ、13 隔壁、20 開閉部、21 ケーシング、22 排出口、23 通路閉鎖部材、23a 閉鎖板、23b,23c 側板、23d 合わせ面、23e クランクハンドル、25 排土通路、231,232 軸棒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターヘッド及びカッターチャンバを有し隔壁により後続側と区画された掘削部に泥水を圧送して該掘削部側を所定圧力以上に維持しながら地盤を掘削する泥土圧式シールドの掘進機に配設され、前記カッターチャンバから後方のシールド内に延設された管状の排土通路とこの排土通路を開閉する排土バルブを備えて前記カッターチャンバ内の流動化された土砂をシールド後方側に送って排出する略管状の排土装置において、前記排土通路の前記排土バルブ上流側に、前記排土通路を開閉する通路開閉手段を備え、前記排土バルブが開いた状態で前記排土通路を開閉可能としたことを特徴とする掘進機の排土装置。
【請求項2】
前記通路開閉手段は、前記排土通路を閉鎖する閉鎖板が円弧状に湾曲して該円弧の中心軸線が前記排土通路の中心軸線に略直交するように配置され、前記閉鎖板の円弧状に突出する外面が前記排土通路の開口部を有して円弧状に陥凹した合わせ面に密接して前記排土通路を閉鎖し、前記円弧の中心軸線の延長線上で軸棒を外向き且つ垂直に一端側から各々延設された対向する一対の側板が他端側を前記閉鎖板の円弧状の両端面に各々接続して通路閉鎖部材を形成するとともに、前記軸棒が前記通路閉鎖部材を収装したケーシング側面で軸支されており、前記軸棒を前記ケーシング外側から回すことで、前記閉鎖板が前記合わせ面上を摺動することにより前記排土通路を開閉することを特徴とする請求項1に記載した掘進機。
【請求項3】
前記軸棒を前記ケーシング外側のクランクハンドルを用いて手動で回すことを特徴とする請求項1または2に記載した掘進機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−277805(P2007−277805A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101339(P2006−101339)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【Fターム(参考)】