説明

掛け具

【課題】円筒または円柱の外周面の円周方向に溝が形成された支柱に、着脱自在に設けられるとともに、安定した状態で対象物を懸吊することが可能な掛け具を提供することを提供する。
【解決手段】他端部が開閉自在に設けられた第1囲繞部材5及び第2囲繞部材6からなり、他端部が閉状態の時に、支柱2の外周を円周方向に回動自在に囲繞する円筒状に形成されるとともに、内周面に支柱2の溝部10と係合する係止部9が形成された囲繞部材3と、囲繞部材3に着脱自在に設けられる懸吊部材4とを備え、囲繞部材3は、他端部に取付部11が形成されるとともに、懸吊部材4は、一端部に連結部17が形成され、取付部11及び連結部17は、一方に凹部18が形成され、他方に凹部18と係合する凸部14が形成され、かつ凹部18及び凸部14には、連結部17をその軸線回りに回転させた際に、互いが係合して懸吊部材4の脱落を防止する係合部が形成されてなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒または円柱の外周面の円周方向に溝が形成された支柱に、着脱自在に設けられると共に、対象物を懸吊することが可能となる掛け具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、対象物を懸吊するための掛け具は、壁面や柱に配置して、螺子や釘により固定されるものが多用されている。しかし、このような掛け具は、取り付けに手間がかかるとともに、使用場所が限定され、一度取り付け場所を決めてしまうと、他に移動する際、手間が掛かるとともに、不使用時も壁や柱から突出しているため、通行の妨げとなるなどの問題点がある。
【0003】
そこで、この不具合を解決すべく、下記特許文献1にみられるように、必要に応じて使用できる着脱自在の掛け具が提案されている。この掛け具は連結部の両端に弾性部を介して形成した吊り下げ部と、該吊り下げ部から延長された直線部と、該直線部の先端に形成された挟持部と、該挟持部の一方から垂下された垂下部と、該垂下部の先端に形成された円弧部と、前期挟持部の他方から延長され上記円弧部と重なり合う締め付け部とを一本の弾性線で形成した吊り下げ部本体と、上記直線部に挿入され移動することによって上記挟持部の間隔を挟める締め付けリングとで構成されている。
【特許文献1】実開平4−115476号公報
【0004】
一方、組み立て式の棚として、外周面に、円周方向に延在する溝部が形成された円筒状または円柱状の金属製の支柱と、四隅に嵌合管が形成されている矩形の棚板と、上記棚板を支持する棚板固定部材とで構成され、棚板固定部材を上記支柱の任意の位置まで差し込み、上記棚板を棚板固定部材差し込んで固定することにより組み立てする棚が、家庭内での使用に適したサイズで容易に組み立て及び組み換えができることから、多用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の掛け具は、上記支柱を上記挟持部の間隔を締め付けリングで狭めて圧接することにより固定するために、対象物を落下させないように圧接力を強く固定すると、掛け具が動かなくなり、吊り下げ部の向きが一方向に限定されてしまう。また、回転自在にするために、圧接力を調整すると対象物の荷重により、掛け具ごと落下するという問題点を生じる。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、円筒または円柱の外周面の円周方向に溝が形成された支柱に、着脱自在に設けられるとともに、安定した状態で対象物を懸吊することが可能となる掛け具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、外周面に、円周方向に延在する溝部が形成された円筒状または円柱状の支柱に着脱自在に設けられ、対象物を懸吊するための掛け具であって、一端部同士が枢着されて他端部が開閉自在に設けられた第1及び第2囲繞部材からなり、上記第1及び第2囲繞部材の上記他端部が閉状態の時に、全体として上記支柱の外周を円周方向に回動自在に囲繞する円筒状に形成されるとともに、内周面に上記支柱の溝部と係合する凸状の係止部が形成された囲繞部材と、この上記囲繞部材に着脱自在に設けられる懸吊部材とを備え、かつ上記第1および第2囲繞部材は、上記他端部に各々径方向に突出するとともに、上記閉状態において、一体化されて取付部を構成する第1及び第2取付部が形成され、上記懸吊部材は、その一端部に上記取付部と嵌合して上記第1及び第2囲繞部材の上記閉状態を保持する連結部が形成されてなり、上記取付部及び連結部は、いずれか一方に凹部が形成され、他方に上記凹部と係合する凸部が形成され、かつ上記凹部及び凸部には、上記連結部をその軸線回りに回転させた際に、互いが係合して上記懸吊部材の脱落を防止する係合部が形成されてなることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2に記載の本発明は、上記凹部は、上記凸部より、内法寸法が大きな円形状に形成され、上記係合部は、上記凸部の先端外周から外方に突出するとともに、上記凹部の深さ寸法よりも薄い板厚に形成された第1突片と、上記凹部の開口縁部から径方向内方に突出するとともに底面との間に上記第1突片が係合可能な第2突片とから構成され、かつ上記凹部には、第1及び第2突片の係合状態において、上記第1突片の上記回転方向への回転を阻止するストッパーが形成されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1または請求項2に記載の発明においては、囲繞部材を、第1囲繞部材と第2囲繞部材とから構成し、これらの一端部同士を枢着して他端部を開閉自在に設けているために、囲繞部材を支柱から取り外して、望む位置へ配置して支柱に挟み込んで取り付けるという簡単な作業で、懸吊部材の配置を変更することが可能である。
【0010】
また、支柱に取り付けた状態において、上記囲繞部材を、上記支柱の外周を円周方向に回動自在となる円筒状に形成しているために、上記囲繞部材を支柱に対して回動させることによって、上記懸吊部材の方向を容易に変更することが可能である。
【0011】
この際に、上記支柱の溝部と上記囲繞部材の内周面に形成された凸状の係止部とを係合しているために、重い対象物を懸吊しても、上記懸吊部材が鉛直方向下方に落下することがなくなる。
【0012】
さらに、上記懸吊部材の一端部に、上記取付部と嵌合して上記第1及び第2囲繞部材の上記閉状態を保持する連結部を形成しているために、上記第1及び第2囲繞部材を、支柱に確実に囲繞して固定することが可能である。
【0013】
加えて、上記取付部及び上記連結部は、いずれか一方に凹部を形成しているとともに、他方に上記凹部と係合する凸部を形成して、かつ上記凹部及び凸部には、上記連結部をその軸線回りに回転した際に、互いが係合して上記懸吊部材の脱落を防止する係合部を形成しているために、上記懸吊部材に掛かる荷重を確実に支持することが可能であるとともに、上記懸吊部材の脱落を防ぐことができる。
【0014】
また、請求項2に記載の本発明においては、上記凸部より上記凹部の内法寸法を大きな円形状に形成しているために、上記凸部と上記凹部は、容易に嵌合することが可能であるとともに、上記連結部をその軸線回りに回転する際に、容易に回転することが可能である。
【0015】
加えて、上記凹部に、第1及び第2突片の係合状態において、上記第1突片の上記回転方向への回転を阻止するストッパーを形成しているために、確実に第1及び第2突片が係合する位置で上記懸吊部材の回転を阻止することが可能であるとともに、対象物を懸吊する際に、仮に上記連結部にその軸線回りに回転する方向に力が掛かったとしても、上記懸吊部材が回転することはなく、脱落することがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図7は、本発明の掛け具1の一実施形態を示す物である。この掛け具1は、支柱2に囲繞部材3を囲繞させて、囲繞部材3に懸吊部材4を連結することにより取り付ける構造の物である。
【0017】
図5及び図6、図7に示すように、支柱2は、円筒状または、円柱状であり外周面の円周方向に延在する溝部10が長手方向に等間隔において複数形成されている。
【0018】
図1及び図2に示すように、囲繞部材3は、全体として支柱2を囲繞する円筒状に形成されるとともに、一対の第1囲繞部材5と第2囲繞部材6により構成されている。
【0019】
そして、第1囲繞部材5と第2囲繞部材6は、一端部同士が枢着して他端部が開閉自在に設けられている。すなわち、この囲繞部材3は、第1囲繞部材5の一端部に突設されたピン部7を、第2囲繞部材6の一端部に設けられた凹状の窪み部8に嵌合させることにより、回動自在に一体化されている。
【0020】
さらに、第1囲繞部材5と第2囲繞部材6の内周面は円弧状に形成されるとともに、中央部には、円弧面に沿って凸状の係止部9が形成されている。この係止部9は、支柱2に形成された溝部10に嵌り込む高さ寸法に形成されている。
【0021】
また、第1囲繞部材5と第2囲繞部材6の開閉自在となる他端部側には、各々径方向に向けて突出されるとともに、閉状態にした時に一体化されて取付部11を構成する第1取付部12及び第2取付部13が形成されている。そして、取付部11には、略円板状の凸部14が一体的に設けられている。
【0022】
この凸部14の先端外周には、鉛直方向上部及び下部から、各々径方向外方に突出する第1突片15が形成されている。加えて、先端外周の第1突片15の図中左方に隣接する箇所から、各々径方向外方に突出するフック部16が形成されている。
【0023】
他方、図3及び図4に示すように、懸吊部材4は、略円柱状に形成されるとともに、一端部に取付部11と嵌合して第1囲繞部材5及び第2囲繞部材6の閉状態を保持する連結部17が形成されている。そして、連結部17には、凸部14より内径の大きな有底円筒状の凹部18が一体的に設けられている。
【0024】
この凹部18の開口縁部には、軸線を中心に180度ずつ離間した2箇所から、各々径方向内方に突出するとともに、底面との間に第1突片15が係合可能な第2突片19が形成されている。加えて、底面側の内周面には、第2突片19の図中右方に隣接する位置から、各々径方向内方に突出するとともに、第1突片15及び第2突片19の係合状態において、第1突片15とフック部16との間に嵌合されるストッパー20が設けられている。
【0025】
また、懸吊部材4の他端部側の外周面には、外方に向かって漸次拡径する傾斜面21が形成されている。
【0026】
以上の構成からなる掛け具1を支柱2に取り付けて使用するには、図4及び図5に示すように、第1囲繞部材5と第2囲繞部材6のいずれか一方の内周面に形成された係止部9を支柱2に形成された溝部10に嵌入して、他方を支柱2の他方側から挟み込むようにして第1囲繞部材5と第2囲繞部材6の他端部を閉状態にする。
【0027】
次いで、囲繞部材3の取付部11に形成された凸部14に、懸吊部材4の連結部17に形成された凹部18を嵌合する。そして、懸吊部材4を連結部17の軸線回りに90度回転させて、第2突片19と凹部18の底面との間に第1突片15を挿入させた位置で第1突片19とフック部16との間にストッパー20が嵌合する。
【0028】
したがって、上述の実施形態における掛け具1によれば、囲繞部材3を、第1囲繞部材5と第2囲繞部材6とから構成し、これらの一端部同士を枢着して他端部を開閉自在に設けているために、囲繞部材3を支柱2から取り外して、望む位置へ配置して支柱2に挟み込んで取り付けるという簡単な作業で、懸吊部材4の配置を変更することが可能である。
【0029】
また、支柱に取り付けた状態において、囲繞部材3を、支柱2の外周を円周方向に回動自在となる円筒状に形成しているために、囲繞部材3を、支柱2に対して回動させることによって、懸吊部材4の方向を容易に変更することが可能である。
【0030】
この際に、支柱2の溝部10と囲繞部材3の内周面に形成された凸状の係止部9とを係合しているために、重い対象物を懸吊しても、懸吊部材4が鉛直方向下方に落下することがなくなる。
【0031】
さらに、懸吊部材4の一端部に、取付部11と嵌合して第1囲繞部材5及び第2囲繞部材6の閉状態を保持する連結部17を形成しているために、第1囲繞部材5及び第2囲繞部材6を、支柱2に確実に囲繞して固定することが可能である。
【0032】
加えて、連結部17に形成された凹部18及び取付部11に形成された凸部14に、連結部17をその軸線回りに回転した際に、互いが係合する第1突片15及び第2突片19を形成しているために、懸吊部材4に掛かる荷重を確実に支持することが可能であるとともに、懸吊部材4の脱落を防ぐことができる。
【0033】
また、凸部14より凹部18の内径を大きな円形状に形成しているために、凸部14と凹部18を容易に嵌合することが可能であるとともに、連結部17を軸線回りに回転する際に、容易に回転することが可能である。
【0034】
さらに、凹部18に、第1突片15及び第2突片19の係合状態において、懸吊部材4の連結部17の軸線回りの回転を阻止するストッパー20を形成しているために、確実に第1突片15及び第2突片19が係合する位置で懸吊部材4の回転を阻止することが可能であるとともに、対象物を懸吊する際に、仮に連結部17にその軸線回りに回転する方向に力が掛かったとしても、懸吊部材4が回転することが無く、脱落することがなくなる。
【0035】
そして、懸吊部材4を略円柱状に形成しているとともに、懸吊部材4の他端部側の外周面に、外方に向かって漸次拡径する傾斜面21を形成しているために、容易に対象物を懸吊することが可能であるとともに、対象物が落下することがなくなる。
【0036】
なお、上述の実施形態では、掛け具1として円柱状に形成された懸吊部材4を用いた場合についてのみ説明したが、これに限定される物でなく、例えば図6及び図7に示すような、リング状のタイプ、J型のタイプにして対象物を引っかけて保管するといった形状のものや、図8、図9に示すように、有底筒状のバケット型のタイプにして、対象物を内部に収納して保管するといった形状のものでも対応可能である。
【0037】
加えて、上述の実施形態では、掛け具1を鉛直方向の支柱2に取り付けた場合についてのみ説明したが、本発明の掛け具1は、連結部17が取付部11と嵌合して第1囲繞部材5及び第2囲繞部材6の閉状態を保持するために、囲繞部材3を水平方向の支柱2にも設置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態における囲繞部材を示すもので、(a)は閉状態の斜視図(b)は開状態の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における囲繞部材を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図である。
【図3】本発明の一実施形態における懸吊部を示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)はA−A断面図
【図4】本発明の一実施形態における囲繞部材と懸吊部とを連結した状態を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図、(d)は底面図、(e)はA−A断面図、(f)はB−B断面図である。
【図5】本発明の一実施形態における掛け具を支柱に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の物掛け部の他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の物掛け部の他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明の物かけ部の他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の物かけ部の他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 掛け具
2 支柱
3 囲繞部材
4 懸吊部材
5 第1囲繞部材
6 第2囲繞部材
9 係止部
10 溝部
11 取付部
12 第1取付部
13 第2取付部
14 凸部
15 第1突片
17 連結部
18 凹部
19 第2突片
20 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に、円周方向に延在する溝部が形成された円筒状または円柱状の支柱に着脱自在に設けられ、対象物を懸吊するための掛け具であって、
一端部同士が枢着されて他端部が開閉自在に設けられた第1及び第2囲繞部材からなり、上記第1及び第2囲繞部材の上記他端部が閉状態の時に、全体として上記支柱の外周を円周方向に回動自在に囲繞する円筒状に形成されるとともに、内周面に上記支柱の溝部と係合する凸状の係止部が形成された囲繞部材と、この上記囲繞部材に着脱自在に設けられる懸吊部材とを備え、
かつ上記第1および第2囲繞部材は、上記他端部に各々径方向に突出するとともに、上記閉状態において、一体化されて取付部を構成する第1及び第2取付部が形成され、上記懸吊部材は、その一端部に上記取付部と嵌合して上記第1及び第2囲繞部材の上記閉状態を保持する連結部が形成されてなり、上記取付部及び連結部は、いずれか一方に凹部が形成され、他方に上記凹部と係合する凸部が形成され、かつ上記凹部及び凸部には、上記連結部をその軸線回りに回転させた際に、互いが係合して上記懸吊部材の脱落を防止する係合部が形成されてなることを特徴とする掛け具。
【請求項2】
上記凹部は、上記凸部より、内法寸法が大きな円形状に形成され、
上記係合部は、上記凸部の先端外周から外方に突出するとともに、上記凹部の深さ寸法よりも薄い板厚に形成された第1の突片と、上記凹部の開口縁部から径方向内方に突出するとともに底面との間に上記第1の突片が係合可能な第2突片とから構成され、
かつ上記凹部には、第1及び第2の突片の係合状態において、上記第1の突片の上記回転方向への回転を阻止するストッパーが形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の掛け具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−57558(P2010−57558A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223761(P2008−223761)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000115968)レック株式会社 (49)
【Fターム(参考)】