接合構造、接合方法、及び建築物
【課題】接合部の初期変形を低減することができる、ピン部材を用いた接合構造、接合方法、及び建築物を提供する。
【解決手段】重ね合わせた部材12、14を貫通する貫通孔16に、スペーサ部材20を介在させて中実のピン部材18を挿入する。そして、スペーサ部材20と孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させて貫通孔16にピン部材18を固定する。よって、重ね合わせた部材12、14の接合部30に生じる初期変形を低減することができる。
【解決手段】重ね合わせた部材12、14を貫通する貫通孔16に、スペーサ部材20を介在させて中実のピン部材18を挿入する。そして、スペーサ部材20と孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させて貫通孔16にピン部材18を固定する。よって、重ね合わせた部材12、14の接合部30に生じる初期変形を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた部材を接合する接合構造、重ね合わせた部材の接合方法、及び重ね合わせた部材を接合する接合構造を有する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
H形鋼桁部材等の構造部材同士を繋ぎ合わせる場合、一般に、繋ぎ合わせる一方の構造部材の端部から他方の構造部材の端部に渡って、鋼製の添接板を添わせる。そして、構造部材と添接板とを高力ボルト、ボルト、ピン等により接合する。
【0003】
高力ボルトによる摩擦接合では、構造部材と添接板との接合部に形成された孔に挿入された高力ボルトと、この高力ボルトに取り付けられたナットとによって、構造部材及び添接板を挟み込む。そして、ナットに対する高力ボルトの締め付けにより、構造部材と添接板との接合面(接触面)に摩擦力を生じさせて構造部材と添接板との接合部の接合強度を確保する。
【0004】
しかし、例えば、強い接合強度を必要とする高強度鋼部材同士の接合の場合、構造部材と添接板との接合面(接触面)に大きな摩擦力を生じさせるためには、多くの数の高力ボルトで構造部材と添接板とを接合しなければならない。
さらに、これに伴って高力ボルトが挿入される孔の数も多くなるので、構造部材及び添接板の断面欠損面積も大きくなり、構造部材及び添接板の部材自体の強度が大きく低下してしまう。
【0005】
ボルトやピン等のせん断力伝達部材(以下、「ピン部材」とする)による支圧接合では、構造部材と添接板との接合部に形成された孔にピン部材を挿入して構造部材と添接板とを接合するので、接合作業が簡単である。また、支圧接合強度はピン部材のせん断耐力に依存するので、ピン部材の本数は、同じ径の高力ボルトを用いた摩擦接合と比べて少なくなる。
【0006】
しかし、構造部材と添接板との接合部に形成された孔と、ピン部材との間に隙間があるので、構造部材と添接板との接合部に曲げモーメントやせん断力が発生したときに初期変形が生じ、これによって接合部の十分な初期剛性が期待できない。
【0007】
図16(a)に示すように、特許文献1の接合方法では、鍔302を有する管304とこの管304に挿入される芯306とによって、ブラインドリベット300が構成されている。芯306のリベット頭308の径は管304の内径よりも大きく、リベット頭308下部付近には括れ部310が形成されている。
【0008】
柱312に設けられたリベット継ぎ手316と、壁パネル314とを締結する場合、まず、リベット継ぎ手316及び壁パネル314を貫通するリベット穴318にブラインドリベット300を差し込む。
【0009】
次に、チャック320で芯306を掴み、工具322で鍔302を押さえながらチャック320により芯306を引っ張る。これによって、管304が変形してその外周がリベット穴318と密着し且つ管304の上端部が膨らむ。そして、管304の変形が限界に達したときに芯306は括れ部310で引きちぎられる。これにより、リベット継ぎ手316と壁パネル314とが締結される。
【0010】
しかし、締結後の管304を描いた図16(b)の拡大断面図に示すように、リベット継ぎ手316と壁パネル314とを締結する管304は中空なので大きなせん断強度(せん断面積)を得ることができない。
よって、特許文献1の接合方法を構造部材と添接板との接合に用いた場合、構造部材と添接板との接合部の剛性は管304のせん断強度(せん断面積)に依存するので、接合部の十分な初期剛性が期待できない。
【特許文献1】特開平8−41997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は係る事実を考慮し、接合部の初期変形を低減することができる、ピン部材を用いた接合構造、接合方法、及び建築物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、重ね合わせた部材を接合する接合構造において、前記重ね合わせた部材を貫通する孔と、前記孔に挿入される中実のピン部材と、前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在するスペーサ部材と、を有し、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させて前記孔に前記ピン部材を固定する。
【0013】
請求項1に記載の発明では、重ね合わせた部材を接合する接合構造において、重ね合わせた部材を貫通する孔が、部材のそれぞれに形成されている。孔には、中実のピン部材が挿入され、このピン部材と孔の孔壁との間にはスペーサ部材が介在している。
そして、スペーサ部材と孔の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材とピン部材とを密着させることにより、孔にピン部材を固定する。
【0014】
よって、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させて孔にピン部材を固定するので、部材が重ね合わされた接合部(以下、「接合部」とする)に曲げモーメントやせん断力が発生したときに生じる初期変形を低減することができる。
すなわち、ピン部材を用いた接合において、孔クリアランスが0となるリベット接合の場合と同様の(孔に対するピン部材のがたつきがない)支圧接合の状態を実現することができるので、初期剛性を確実に得ることができる。
【0015】
また、ピン部材を孔に固定するときに、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させるので、スペーサ部材と孔の孔壁との間や、スペーサ部材とピン部材との間に隙間を有した状態で、スペーサ部材やピン部材を孔に挿入することができる。これにより、スペーサ部材やピン部材を簡単に孔に挿入することが可能になるので、接合作業の手間を低減することができる。
【0016】
また、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させることによって、3次元的な拘束力が周囲からスペーサ部材に作用するので、スペーサ部材の部材強度が小さくても見かけ上の部材強度が大きくなる。これにより、部材強度の小さいスペーサ部材を用いた場合でも、必要とする支圧強度を確保することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記スペーサ部材は、筒状の部材である。
【0018】
請求項2に記載の発明では、スペーサ部材を筒状の部材とすることにより、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材との間で力を均等に伝達させることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記スペーサ部材は、径方向に向かって膨らむ形状記憶合金によって形成されている。
【0020】
請求項3に記載の発明では、スペーサ部材を形状記憶合金によって形成し、このスペーサ部材の温度を形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材の径方向に向かってスペーサ部材を膨張(形状回復)させる。
よって、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させるタイミングを容易に制御することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、前記形状記憶合金は、鉄系形状記憶合金である。
【0022】
請求項4に記載の発明では、形状記憶合金を鉄系形状記憶合金としている。鉄系形状記憶合金は、一般的に安価であり剛性が高い材料なので、低コストの接合構造を実現することができる。また、鉄系形状記憶合金は大型部材の製造が容易な材料なので、大きなスペーサ部材を必要とする場合に特に有効となる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、前記スペーサ部材の内径及び前記ピン部材の外径の少なくとも一方は前記ピン部材の挿入方向に向かって縮径し、前記孔の孔壁との間に前記スペーサ部材が介在された前記ピン部材の端部を引っ張って、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させる。
【0024】
請求項5に記載の発明では、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の少なくとも一方が、ピン部材の挿入方向に向かって縮径している。そして、孔の孔壁との間にスペーサ部材が介在されたピン部材の端部を引っ張り、これによりスペーサ部材と孔の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材とピン部材とを密着させる。
【0025】
よって、孔の孔壁との間にスペーサ部材が介在されたピン部材の端部を引っ張るとき、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の少なくとも一方はピン部材の挿入方向に向かって縮径しているので、楔の効果によりピン部材からスペーサ部材に径方向外向きの力が作用する。また、これによってスペーサ部材から孔の孔壁に径方向外向きの力が作用する。
【0026】
そして、これらによりスペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させてピン部材を孔に固定するので、リベット接合の際に行われる接合部材(リベット)の加熱作業(温度管理)を行わずに部材同士を接合することが可能となる。
【0027】
また、スペーサ部材を形状記憶合金によって形成した場合には、スペーサ部材の径方向に向かってスペーサ部材を膨張(形状回復)させることにより、接合部の初期変形をさらに低減することが可能となり、接合部の初期剛性をさらに大きくすることができる。
【0028】
スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の少なくとも一方はピン部材の挿入方向に向かって縮径しているので、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径が縮径していない場合に比べてスペーサ部材やピン部材が挿入し難くなる。
【0029】
このような場合に、スペーサ部材を形状記憶合金によって形成すれば、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材との間にある程度の隙間を設けていても、接合部において所定の剛性を確保することが可能なので、このような隙間を設けることによりスペーサ部材やピン部材を挿入し易くすることができる。
【0030】
請求項6に記載の発明は、前記ピン部材の端部は、前記ピン部材の端部に締め付けられるナットによって引っ張られる。
【0031】
請求項6に記載の発明では、ピン部材の端部にナットが設けられている。そして、ピン部材に対するこのナットの締め付けによってピン部材の端部が引っ張られる。
よって、簡単な工具や装置等によってナットを締め付けることにより、ピン部材の端部を引っ張ることができる。
【0032】
また、打撃力を用いずに、孔にピン部材を固定することができる。これにより、騒音を出さずに接合作業を行うことが可能になるので、接合作業によって作業環境や近隣の周辺環境等が悪化することを防止できる。
【0033】
請求項7に記載の発明は、前記ピン部材は、該ピン部材を引っ張る力が所定値に達したときに該ピン部材の所定位置で切断される。
【0034】
請求項7に記載の発明では、ピン部材を引っ張る力が所定値に達したときに、ピン部材の所定位置でピン部材が切断される。よって、接合部が所定の剛性となる引っ張り力の値を事前に求めておき、この値を所定値とすれば、接合部を所定の剛性にすることができる。
また、これと同時にスペーサ部材とピン部材とが引き合う力(スペーサ部材とピン部材との一体化の強さ)を管理することができる。
【0035】
請求項8に記載の発明は、前記スペーサ部材の端部は、前記スペーサ部材を前記孔に挿入した後に前記スペーサ部材の径方向外側に折り返される。
【0036】
請求項8に記載の発明では、スペーサ部材を孔に挿入した後に、スペーサ部材の端部がスペーサ部材の径方向外側に折り返されるので、ピン部材が孔に固定された後に振動等によってスペーサ部材が孔から抜けることを防止できる。
【0037】
請求項9に記載の発明は、前記スペーサ部材の端部は、切り込みを有する。
【0038】
請求項9に記載の発明では、スペーサ部材の端部が切り込みを有することにより、スペーサ部材の端部を折り返し易くすることができる。
【0039】
請求項10に記載の発明は、前記スペーサ部材の内壁又は前記ピン部材の外壁は、粗面である。
【0040】
請求項10に記載の発明では、スペーサ部材の内壁又はピン部材の外壁を粗面とすることにより、ピン部材が孔に固定された後に振動等によってピン部材がスペーサ部材(孔)から抜けることを防止できる。
【0041】
請求項11に記載の発明は、重ね合わせた部材を接合する接合方法において、前記重ね合わせた部材を貫通する孔に中実のピン部材を挿入するピン部材挿入工程と、前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を前記孔に挿入するスペーサ部材挿入工程と、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させて前記孔に前記ピン部材を固定するピン部材固定工程と、を有する。
【0042】
請求項11に記載の発明では、重ね合わせた部材を接合する接合方法が、ピン部材挿入工程と、スペーサ部材挿入工程と、ピン部材固定工程とを有している。
【0043】
ピン部材挿入工程は、重ね合わせた部材を貫通する孔に、中実のピン部材を挿入する。
スペーサ部材挿入工程は、重ね合わせた部材を貫通する孔に、ピン部材と孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を挿入する。
ピン部材固定工程は、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させて孔にピン部材を固定する。
よって、請求項1と同じ効果を得ることができる。
【0044】
請求項12に記載の発明は、前記スペーサ部材は、径方向に向かって膨らむ形状記憶合金によって形成されている。
【0045】
請求項12に記載の発明では、スペーサ部材を形状記憶合金によって形成し、このスペーサ部材の温度を形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材の径方向に向かってスペーサ部材を膨張(形状回復)させる。
よって、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させるタイミングを容易に制御することができる。
【0046】
請求項13に記載の発明は、重ね合わせた部材を接合する接合方法において、前記重ね合わせた部材を貫通する孔に中実のピン部材を挿入するピン部材挿入工程と、前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を前記孔に挿入するスペーサ部材挿入工程と、前記孔の孔壁との間に前記スペーサ部材が介在された前記ピン部材の端部を引っ張って、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させるピン部材固定工程と、を有する。
【0047】
請求項13に記載の発明では、重ね合わせた部材を接合する接合方法が、ピン部材挿入工程と、スペーサ部材挿入工程と、ピン部材固定工程とを有している。
【0048】
ピン部材挿入工程は、重ね合わせた部材を貫通する孔に、中実のピン部材を挿入する。
スペーサ部材挿入工程は、重ね合わせた部材を貫通する孔に、ピン部材と孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を挿入する。
ピン部材固定工程は、孔の孔壁との間にスペーサ部材が介在されたピン部材の端部を引っ張る。これによって、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させる。
よって、請求項1と同じ効果を得ることができる。
【0049】
請求項14に記載の発明は、前記スペーサ部材の内径及び前記ピン部材の外径の少なくとも一方は前記ピン部材の挿入方向に向かって縮径している。
【0050】
請求項14に記載の発明では、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の少なくとも一方が、ピン部材の挿入方向に向かって縮径している。
そして、孔の孔壁との間にスペーサ部材が介在されたピン部材の端部を引っ張り、これによりスペーサ部材と孔の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材とピン部材とを密着させる。
よって、請求項5と同じ効果を得ることができる。
【0051】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜10の何れか1項に記載の接合構造を有する建築物である。
【0052】
請求項15に記載の発明では、請求項1〜10の何れか1項に記載の接合構造を有することにより、接合部の初期変形を低減することができる、ピン部材を用いた接合構造を有する建築物を構築することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明は上記構成としたので、接合部の初期変形を低減することができる、ピン部材を用いた接合構造、接合方法、及び建築物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
図面を参照しながら、本発明の接合構造、接合方法、及び建築物を説明する。なお、本実施形態では、部材としての2つの板材を重ね合わせ、この2つの板材同士を接合する例を示したが、さまざまな形状の部材同士の接合や、さまざまな材料によって形成された部材同士の接合に適用することができる。例えば、板材と角材、又は角材と角材の接合に本実施形態を適用してもよい。
【0055】
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0056】
図1(b)の側断面図のように、第1の実施形態の接合構造10では、部材としての鋼板12、14を重ね合わせている。そして、この重ね合わせた鋼板12、14を貫通する貫通孔16が、鋼板12、14のそれぞれに形成されている。すなわち、鋼板12に形成された孔16Aと、鋼板14に形成された孔16Bとによって、貫通孔16が構成されている。
貫通孔16には、鋼製のピン部材18が挿入されている。また、ピン部材18は、中実となっている。
【0057】
ピン部材18と貫通孔16の孔壁との間には、筒状のスペーサ部材20が介在している。スペーサ部材20は、鉄系形状記憶合金により形成されている。よって、スペーサ部材20の温度を鉄系形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材20の径方向の内側及び外側に向かってスペーサ部材20を膨張(形状回復)させることができる。
【0058】
ここで、接合構造10における鋼板12と鋼板14との接合方法の一例について説明する。
まず、図1(a)の側断面図に示すように、重ね合わせた鋼板12、14を貫通する貫通孔16に、ピン部材18と貫通孔16の孔壁との間に介在するスペーサ部材20を挿入する(スペーサ部材挿入工程)。
【0059】
スペーサ部材20の挿入は、この挿入方向後方のスペーサ部材20に設けられた鍔部22が鋼板12に接触するまで行い、これによりスペーサ部材20の端部26を鋼板14の外側に突出させる。
【0060】
スペーサ部材20の端部26の内径は、スペーサ部材20の中央部28の内径よりも小さくなっている。すなわち、スペーサ部材20の端部26の内壁は、中央部28の内壁よりも内側に突出している。
【0061】
次に、スペーサ部材20の孔32(貫通孔16)に、ピン部材18を挿入する(ピン部材挿入工程)。ピン部材18の挿入は、このピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26の内壁に接触する程度まで行う。
【0062】
次に、ピン部材18の頭部24をハンマー(不図示)等で打撃する。これにより、ピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26を押し、スペーサ部材20の端部26がスペーサ部材20の径方向外側に折り返されると共に、ピン部材18が貫通孔16を貫通する(ピン部材貫通工程)。
【0063】
次に、図1(b)に示すように、スペーサ部材20の温度を鉄系形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材20の径方向の内側及び外側に向かってスペーサ部材20を膨張(形状回復)させる(矢印S)。これによって、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材20とピン部材18とを密着させて、貫通孔16にピン部材18を固定する(ピン部材固定工程)。
スペーサ部材20の温度を鉄系形状記憶合金の形状回復温度にする場合には、バーナー、電磁誘導加熱、及び高周波加熱等によってスペーサ部材20を加熱すればよい。
【0064】
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0065】
第1の実施形態の接合構造10では、図1(b)に示すように、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させて貫通孔16にピン部材18を固定するので、部材12、14が重ね合わされた接合部30に曲げモーメントやせん断力が発生したときに生じる初期変形を低減することができる。
すなわち、ピン部材18を用いた接合において、リベット接合のような孔クリアランス(ピン部材18と貫通孔16の孔壁との間の隙間)が0の支圧接合を実現することができるので、接合部30の初期剛性を確実に得ることができる。
【0066】
ここで、孔クリアランスが0の支圧接合(例えば、図2に示すようなリベット接合)によって、重ね合わせた部材34、36を接合した場合と、図3(a)に示すような孔クリアランスを有するボルト接合又は図3(b)に示すような孔クリアランスを有するピン接合によって、重ね合わせた部材34、36を接合した場合とを考える。
【0067】
そして、これらの部材34、36の接合部にせん断力Fが発生した場合、接合部の変形Rに対するせん断力Fは、図4、5(図4は、図2の接合部にせん断力Fが発生したときの変形−せん断力特性、図5は、図3(a)、(b)の接合部にせん断力Fが発生したときの変形−せん断力特性)のようになる。
すなわち、図2の支圧接合では、接合部に初期変形が生じないが、図3(a)、(b)のボルト接合又はピン接合では、接合部に初期変形が生じてしまう。
【0068】
これに対して、図1(b)で示した接合構造10では、ピン接合においても図2で示したような孔クリアランスが0の支圧接合を実現することができるので、図4で示したような接合部の初期剛性を確実に得ることができる。
【0069】
また、ピン部材18を固定するときに、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させるので、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁との間や、スペーサ部材20とピン部材18との間に隙間を有した状態で、スペーサ部材20やピン部材18を貫通孔16に挿入することができる。これにより、スペーサ部材20やピン部材18を簡単に貫通孔16に挿入することが可能になるので、接合作業の手間を低減することができる。
【0070】
また、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させることによって、3次元的な拘束力が周囲からスペーサ部材20に作用するので、スペーサ部材20の部材強度が小さくても見かけ上の部材強度が大きくなる。これにより、部材強度の小さいスペーサ部材20を用いた場合でも、必要とする支圧強度を確保することができる。
【0071】
また、スペーサ部材20を筒状の部材とすることにより、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18との間で力を均等に伝達させることができる。
【0072】
また、スペーサ部材20を形状記憶合金によって形成し、このスペーサ部材20の温度を形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材20を膨張(形状回復)させるので、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させるタイミングを容易に制御することができる。
【0073】
また、形状記憶合金として用いた鉄系形状記憶合金は、一般的にニッケルチタン系の形状記憶合金よりも安価であり剛性が高い材料なので、低コストの接合構造を実現することができる。また、鉄系形状記憶合金は大型部材の製造が容易な材料なので、大きなスペーサ部材を必要とする場合に特に有効となる。
【0074】
また、スペーサ部材20を貫通孔16に挿入した後に、スペーサ部材20の端部がスペーサ部材20の径方向外側に折り返されるので、ピン部材18が貫通孔16に固定された後に振動等によってスペーサ部材20が貫通孔16から抜けることを防止できる。
【0075】
また、スペーサ部材挿入工程、ピン部材挿入工程、ピン部材貫通工程、及びピン部材固定工程の作業の全てを接合構造10の片側(図1(a)の場合には、鋼板12の左側)から行うことができる。
【0076】
また、図1(a)、(b)では、ピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26を押すことによって、スペーサ部材20の端部26がスペーサ部材20の径方向外側に折り返される例を示したが、図6(a)に示すように、スペーサ部材20の端部26の内壁と、スペーサ部材20の中央部28の内壁とが面一になるようにし、図6(b)に示すように、鉄系形状記憶合金の形状回復によってスペーサ部材20の端部26をスペーサ部材20の径方向外側に折り返す(矢印42)ようにしてもよい。
【0077】
このようにすれば、打撃力を用いずにピン部材18を貫通孔16に貫通させることができる。これにより、騒音を出さずに部材(鋼板12、14)同士の接合作業を行うことが可能になる。
また、ピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26を押すことによって径方向外側に折り返された図1(b)のスペーサ部材20の端部26をさらに形状回復させて、確実に折り返すようにしてもよい。
【0078】
また、ピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26を押すことによって、又は鉄系形状記憶合金の形状回復によって、スペーサ部材20の端部26をスペーサ部材20の径方向外側に折り返され易くするために、図7(a)、(b)に示すように、スペーサ部材20の端部26に切り込み38を入れてもよい。
【0079】
この場合、切り込み38を入れることによって形成される折り返し部40は、図7(a)に示すようにスペーサ部材20の端部26全周に渡って配置されるようにしてもよいし、切り込み38の割合を大きくして、端部26の周方向に対して点在するようにしてもよい。
【0080】
また、図8に示すように、スペーサ部材20の内壁を粗面とすれば、ピン部材18が貫通孔16に固定された後に、振動等によってピン部材18がスペーサ部材20(貫通孔16)から抜けることを防止できる。
なお、ピン部材18の外壁を粗面としてもよいし、スペーサ部材20の内壁とピン部材18の外壁との両方を粗面としてもよい。これらの構成にした場合においても、振動等によってピン部材18がスペーサ部材20(貫通孔16)から抜けることを防止できる。
【0081】
また、図1、6、8では、スペーサ部材20を鉄系形状記憶合金により形成されている例を示したが、スペーサ部材20は、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材20とピン部材18とを密着させる(スペーサ部材20の径方向の内側及び外側に向かってスペーサ部材20を膨張させる)ことができる材料によって形成されていればよい。また、図1、6、8で示したピン部材18にボルトを用いてもよい。
【0082】
また、接合構造10における鋼板12と鋼板14との接合方法で示した、スペーサ部材挿入工程とピン部材挿入工程との順番は逆にしてもよい。例えば、図1(a)で示した鍔部22をスペーサ部材20の端部に設けないようにして、先にピン部材18を貫通孔16に挿入した後に、反対側から貫通孔16にスペーサ部材20を挿入してもよい。また、ピン部材18が挿入された状態のスペーサ部材20を貫通孔16に挿入するようにしてもよい。
【0083】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0084】
第2の実施形態は、第1の実施形態のスペーサ部材20の構成を違えたものである。したがって、第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0085】
図9(b)の側断面図のように、第2の実施形態の接合構造44では、貫通孔16に、鋼製のピン部材46が挿入されている。
ピン部材46は中実となっており、ピン部材46の外径が、ピン部材の挿入方向(矢印48)に向かって縮径している。
【0086】
また、ピン部材46と貫通孔16の孔壁との間には、鋼製のスペーサ部材50が介在している。スペーサ部材50は筒状の部材であり、内径がピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径している。
【0087】
そして、ピン部材46の外壁部に形成されたテーパと、スペーサ部材50の内壁部に形成されたテーパの傾きはほぼ等しくなっており、ピン部材46が貫通孔16に所定量だけ挿入された状態(図9(a)の側断面図を参照のこと)で、ピン部材46の外壁面とスペーサ部材50の内壁面とが、ほぼ隙間なく面接触する。
また、図9(a)に示すように、ピン部材46の端部60には、ナット52がねじ込まれる雄ネジ54が形成されている。
【0088】
ここで、接合構造44における鋼板12と鋼板14との接合方法の一例について説明する。
まず、図9(a)に示すように、重ね合わせた鋼板12、14を貫通する貫通孔16に、ピン部材46と貫通孔16の孔壁との間に介在するスペーサ部材50を挿入する(スペーサ部材挿入工程)。
スペーサ部材50の挿入は、この挿入方向(矢印48)後方に設けられたスペーサ部材50の鍔部56が鋼板12に接触するまで行う。
【0089】
次に、スペーサ部材50の孔62(貫通孔16)に、ピン部材46を挿入する(ピン部材挿入工程)。ピン部材46の挿入は、このピン部材46の端部60が鋼板12から外側へ突出するまで行う(ピン部材貫通工程)。
【0090】
次に、雄ネジ54にねじ込んだナット52を締め付けてピン部材46の端部60を挿入方向(矢印48)に引っ張る。これによって、スペーサ部材50と孔16の孔壁、及びスペーサ部材50とピン部材46とを密着させ、貫通孔16にピン部材46を固定する(ピン部材固定工程)。ナット52を締め付けるときには、ナット52がスペーサ部材50の鍔部56を押すので、スペーサ部材50が貫通孔16から抜けてしまうことはない。
【0091】
次に、図9(b)に示すように、ピン部材46を引っ張る力が所定値に達したときに、ピン部材46の所定位置でピン部材が切断される(ピン部材切断工程)。
【0092】
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0093】
第2の実施形態の接合構造44では、図9(b)に示すように、貫通孔16の孔壁との間にスペーサ部材50が介在されたピン部材46の端部60を引っ張るとき、スペーサ部材50の内径及びピン部材46の外径がピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径しているので、楔の効果によりピン部材46からスペーサ部材50に径方向の外側に向かって力が作用する(矢印T1)。また、これによってスペーサ部材50から貫通孔16の孔壁に径方向の外側に向かって力が作用する(矢印T2)。
【0094】
そして、これらによりスペーサ部材50と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材50とピン部材46とを密着させてピン部材46を貫通孔16に固定するので、リベット接合の際に行われる接合部材(リベット)の加熱作業(温度管理)を行わずに部材(鋼板12、14)同士を接合することが可能となる。
【0095】
また、ナット52を締め付けてピン部材46の端部60を挿入方向(矢印48)に引っ張るので、打撃力を用いずに貫通孔16にピン部材46を固定することができる。これにより、騒音を出さずに部材(鋼板12、14)同士の接合作業を行うことが可能になるので、接合作業によって作業環境や近隣の周辺環境等が悪化することを防止できる。
【0096】
また、ピン部材46を引っ張る力が所定値に達したときに、ピン部材46の所定位置でピン部材46が切断される。よって、接合部58が所定の剛性となる引っ張り力の値を事前に求めておき、この値を所定値とすれば、接合部58を所定の剛性にすることができる。また、これと同時にスペーサ部材50とピン部材46とが引き合う力(スペーサ部材50とピン部材46との一体化の強さ)を管理することができる。
【0097】
図9(a)、(b)では、スペーサ部材50の内径及びピン部材46の外径が、ピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径している例を示したが、スペーサ部材50の内径及びピン部材46の外径の少なくとも一方が、ピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径していればよい。
【0098】
例えば、図10(a)の側断面図のように、スペーサ部材50の内径のみがピン部材64の挿入方向(矢印48)に向かって縮径していてもよいし、図10(b)の側断面図のように、ピン部材46の外径のみがピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径していてもよい。
【0099】
スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の両方が、ピン部材の挿入方向に向かって縮径していれば、ピン部材の根元から先端に渡って、ピン部材からスペーサ部材に作用させる力(図9(b)の矢印T1を参照のこと)を均等に与えることができるので好ましい。
なお、図10(a)、(b)の場合においても、スペーサ部材50、66が変形してスペーサ部材50、66の内壁面と、ピン部材64、46の外壁面とが最終的に密着するようにしてもよい。
【0100】
また、図9(b)では、ピン部材46を引っ張る力が所定値に達したときに、ピン部材46の所定位置でピン部材46が切断されるようにして、接合部58を所定の剛性にすると共に、スペーサ部材50とピン部材46とが引き合う力を管理した例を示したが、ピン部材46の所定位置(切断箇所)に切り欠きを形成し、この切欠き量によって剛性や引き合う力を管理してもよい。
【0101】
また、ピン部材46を切断させずに、ナット52を締め付けるトルクレンチで剛性や引き合う力を管理してもよい。ピン部材46が切断されるようにしたほうが、ピン部材46を貫通孔16に固定した後にナット52やピン部材46の端部60がなくなるので、鋼板12から突出する部材を少なくすることができる。
【0102】
また、接合構造44における鋼板12と鋼板14との接合方法で示した、スペーサ部材挿入工程とピン部材挿入工程との順番は逆にしてもよい。例えば、図9(a)で示したピン部材46を先に貫通孔16に挿入した後に、反対側から貫通孔16にスペーサ部材50を挿入してもよい。また、鍔部56をスペーサ部材50の端部に設けないようにして、ピン部材46が挿入された状態のスペーサ部材50を貫通孔16に挿入するようにしてもよい。
【0103】
また、図9(a)、(b)では、ナット52を締め付けてピン部材46の端部60を挿入方向(矢印48)に引っ張る例を示したが、ピン部材46の端部60を挿入方向(矢印48)に移動できればよく、例えば図11(a)、(b)の側断面図に示すように、チャック68でピン部材72の端部74を掴み、台座70でスペーサ部材50の鍔56を押さえながら油圧ジャッキ76等によりピン部材72の端部74を引っ張ってもよい。図11(a)にはピン部材72の端部74を引っ張る前の状態が示され、図11(b)にはピン部材72の端部74を引っ張ってピン部材72の端部74の根元に形成した切り欠き78の位置で切断されている状態が示されている。
【0104】
また、このような装置を用いずに、図12(a)、(b)の側断面図に示すように、ハンマー等でピン部材80の頭部82を打撃し、これによってスペーサ部材50の孔62(貫通孔16)へピン部材80を貫入させてもよい。図12(a)にはスペーサ部材50の孔62(貫通孔16)へピン部材80を貫入される前の状態が示され、図12(b)にはスペーサ部材50の孔62(貫通孔16)へピン部材80が貫入されて、ピン部材80が貫通孔16に固定された状態が示されている。
【0105】
このような場合には、図12(a)に示すように、ピン部材80を挿入する側(図12(a)の右側)のスペーサ部材50端部に鍔部56を設ければ、ハンマー等の打撃によってスペーサ部材50が貫通孔16から抜け出てしまうのを防げるので好ましい。
【0106】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
なお、第1の実施形態では、スペーサ部材20が鉄系形状記憶合金により形成されている例を示したが、第2の実施形態のスペーサ部材50、66を鉄系形状記憶合金等の形状記憶合金としてもよい。
スペーサ部材50、66を鉄系形状記憶合金等の形状記憶合金とすれば、スペーサ部材50、66の径方向の内側及び外側に向かってスペーサ部材50、66を膨張(形状回復)させることにより、接合部58に曲げモーメントやせん断力が発生したときに生じる初期変形をさらに低減することが可能となり、接合部58の初期剛性をさらに大きくすることができる。
【0107】
スペーサ部材50の内径及びピン部材46、72、80の外径はピン部材46、72、80の挿入方向に向かって縮径しているので、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径が縮径していない場合に比べてスペーサ部材やピン部材が挿入し難くなる。
【0108】
このような場合に、スペーサ部材50、66に形状記憶合金を用いれば、スペーサ部材50、66と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材50、66とピン部材46、64、72、80との間にある程度の隙間を設けていても、接合部58において所定の剛性を確保することが可能なので、このような隙間を設けることによりスペーサ部材やピン部材を挿入し易くすることができる。
【0109】
第1及び第2の実施形態のスペーサ部材20、50、66の形成が可能な形状記憶合金としては、鉄系形状記憶合金のFe−Mn−Si基の一種である、Fe−28%Mn−6%Si−5%Cr−0.5%NbC合金(以下、「NbC添加合金」とする)、Fe−28%Mn−6%Si−5%Cr合金、Fe−32%Mn−6%Si合金、Fe−20%Mn−5%Si−8%Cr−5%Ni合金、Fe−16%Mn−5%Si−12%Cr−5%Ni合金等が挙げられる。スペーサ部材20、50、66を形成する材料には、Fe−28%Mn−6%Si−5%Cr合金を用いるのが好ましく、NbC添加合金を用いるのがより好ましい。
【0110】
形状記憶合金によって形成される部材(以下、「形状記憶部材」とする)の形状記憶処理及び形状回復処理は、例えば、図13のフロー図に示す手順によって行うことができる。
【0111】
まず、ステップ100で、所定の形状を有するように形状記憶部材を製作する(形状製作工程)。
次に、ステップ102で、形状回復時の形状に形状記憶部材を拘束した状態で形状回復させるときの温度(以下、「形状回復温度」とする)に加熱し、この形状(形状回復時の形状)を記憶させる(記憶処理工程)。
次に、ステップ104で、トレーニング処理を行う(トレーニング処理工程)。このトレーニング処理工程では、形状回復前の形状(例えば、図1(a)における膨張前のスペーサ部材20の形状)に変形させるトレーニング処理時変形付与工程と、所定の温度に加熱するトレーニング処理時加熱工程とを繰り返し行うことにより、形状記憶効果を改善し、形状回復率を向上させる。
【0112】
このようにして、形状が記憶された形状記憶部材は、形状回復前の形状(例えば、図1(a)における膨張前のスペーサ部材20の形状)に変形させた(ステップ106の変形付与工程)後において、形状を回復させたいタイミングで形状回復温度(約300゜C以上)に加熱する(ステップ108の加熱工程)ことにより形状を回復させることができる(ステップ110の形状回復工程)。
【0113】
例えば、NbC添加合金の場合、トレーニング処理工程での加工熱処理の仕方によって異なった「回復ひずみ−温度特性」を発揮させることができる。例えば、NbC添加合金に溶体化処理を施した合金(以下、「第1の合金」とする)、NbC添加合金に600°C、14%の温間圧延を施した後、時効してNbCを微細析出させた合金(以下、「第2の合金」とする)、又はNbC添加合金に10%室温引張りでの前加工を施した後、NbCを時効析出させた合金(以下、「第3の合金」とする)によって、スペーサ部材20、50、66を形成することができる。
【0114】
ここで、例えば、図1(b)で示した接合構造10において、図14に示すように、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁との間、及びスペーサ部材20とピン部材18との間の径方向の長さをそれぞれd1、d2とし、スペーサ部材20の外形の直径をDとする。
【0115】
このとき、第1〜第3の合金を用いた場合には、スペーサ部材20の径方向において最大で2%程度の膨張率(スペーサ部材20の材軸方向においては最大で2.5〜4%程度の膨張率)が得られるので、d1=d2≦D×0.02/2を満たす程度の隙間を確保することができる。
【0116】
また、第1及び第2の実施形態で示したスペーサ部材20、50、66、及びピン部材18、46、64、72、80の部材強度は、鋼板12、14の部材強度以上にするのが好ましい。特に、スペーサ部材20、50、66の部材強度を大きくすれば、鋼板12、14の接合部に大きな初期剛性を与えることができるので好ましい。
【0117】
また、第1及び第2の実施形態では、スペーサ部材20、50、66を筒状としたが、図15(a)〜(c)の斜視図に示すように、スリット92が形成された中空管状の部材90も、第1及び第2の実施形態における筒状のスペーサ部材に含まれる。図15(a)〜(c)の部材90に示すように、スペーサ部材(部材90)にスリット92を形成することにより、貫通孔16へスペーサ部材(部材90)を挿入し易くなる。
【0118】
また、第2の実施形態の図12(a)で示したスペーサ部材50の端部(鋼板12側)を、第1の実施形態の図1(a)、(b)や図6(a)、(b)で示したスペーサ部材20の端部26のように、スペーサ部材20の径方向外側に折り返すようにしてもよい。この場合、スペーサ部材50の端部(鋼板12側)に第1の実施形態の図7(a)で示した切り込み38を入れてもよい。
【0119】
また、第1及び第2の実施形態の接合構造10、44を利用して、さまざまな構造部材同士を繋ぎ合わせることができる。例えば、H形鋼桁部材等の構造部材同士を繋ぎ合わせる場合、繋ぎ合わせる一方の構造部材の端部から他方の構造部材の端部に渡って、鋼製の添接板を添わせる。そして、構造部材と添接板とを第1及び第2の実施形態の接合構造10、44を用いて接合する。
【0120】
また、第1及び第2の実施形態では、1枚の鋼板12と1枚の鋼板14とを接合構造10、44によって接合した例を示したが、鋼板12、14は、複数枚であってもよい。例えば、1枚の鋼板12を2枚の鋼板14で挟み、これらの鋼板12、14を貫通するピン部材によって3枚の鋼板12、14を接合してもよいし、また、4枚以上の鋼板を重ね合わせてこれらの鋼板を貫通するピン部材によってこれらの鋼板を接合してもよい。
【0121】
また、第1及び第2の実施形態では、接合する部材を鋼板12、14としたが、板材以外の部材であってもよい。例えば、角材同士を接合構造10、44によって接合してもよい。
【0122】
強い接合強度を必要とする高強度鋼部材同士を添接板を用いて接合する場合、構造部材と添接板との接合面(接触面)に大きな摩擦力を生じさせるためには、多くの数の高力ボルトで構造部材と添接板とを接合しなければならない。さらに、これに伴って高力ボルトが挿入される孔の数も多くなるので、構造部材及び添接板の断面欠損面積も大きくなり、構造部材及び添接板の部材自体の強度が大きく低下してしまう。また、先塗装が施された部材同士を接合する場合、高力ボルトによる摩擦接合では十分な摩擦接合強度が得られないことが考えられる。このように高力ボルトによる摩擦接合が難しい部材同士の接合に、第1及び第2の実施形態の接合構造10、44は特に有効となる。
【0123】
また、第1及び第2の実施形態で示した接合構造10、44を、建築物の一部又は全部に用いれば、接合部30、58に曲げモーメントやせん断力が発生したときに生じる初期変形を低減することができる、ピン部材18、46、64、72、80を用いた接合構造10、44を有する建築物を構築することができる。
【0124】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る接合構造を示す側断面図である。
【図2】従来の接合構造を示す側断面図である。
【図3】従来の接合構造を示す側断面図である。
【図4】従来の接合構造の変形に対するせん断力を示す線図である。
【図5】従来の接合構造の変形に対するせん断力を示す線図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る接合構造の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る接合構造を示す側断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る形状記憶処理手順及び形状回復処理手順を示す説明図である。
【図14】本発明の実施形態に係るスペーサ部材と貫通孔の孔壁との間、及びスペーサ部材とピン部材との間に形成される隙間を示す説明図である。
【図15】本発明の実施形態に係るスペーサ部材の変形例を示す斜視図である。
【図16】従来の接合方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0126】
10、44 接合構造
12、14 鋼板(部材)
16 貫通孔(孔)
18、46、64、72、80 ピン部材
20、50、66 スペーサ部材
26 端部
38 切り込み
52 ナット
60、74 端部
90 部材(スペーサ部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた部材を接合する接合構造、重ね合わせた部材の接合方法、及び重ね合わせた部材を接合する接合構造を有する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
H形鋼桁部材等の構造部材同士を繋ぎ合わせる場合、一般に、繋ぎ合わせる一方の構造部材の端部から他方の構造部材の端部に渡って、鋼製の添接板を添わせる。そして、構造部材と添接板とを高力ボルト、ボルト、ピン等により接合する。
【0003】
高力ボルトによる摩擦接合では、構造部材と添接板との接合部に形成された孔に挿入された高力ボルトと、この高力ボルトに取り付けられたナットとによって、構造部材及び添接板を挟み込む。そして、ナットに対する高力ボルトの締め付けにより、構造部材と添接板との接合面(接触面)に摩擦力を生じさせて構造部材と添接板との接合部の接合強度を確保する。
【0004】
しかし、例えば、強い接合強度を必要とする高強度鋼部材同士の接合の場合、構造部材と添接板との接合面(接触面)に大きな摩擦力を生じさせるためには、多くの数の高力ボルトで構造部材と添接板とを接合しなければならない。
さらに、これに伴って高力ボルトが挿入される孔の数も多くなるので、構造部材及び添接板の断面欠損面積も大きくなり、構造部材及び添接板の部材自体の強度が大きく低下してしまう。
【0005】
ボルトやピン等のせん断力伝達部材(以下、「ピン部材」とする)による支圧接合では、構造部材と添接板との接合部に形成された孔にピン部材を挿入して構造部材と添接板とを接合するので、接合作業が簡単である。また、支圧接合強度はピン部材のせん断耐力に依存するので、ピン部材の本数は、同じ径の高力ボルトを用いた摩擦接合と比べて少なくなる。
【0006】
しかし、構造部材と添接板との接合部に形成された孔と、ピン部材との間に隙間があるので、構造部材と添接板との接合部に曲げモーメントやせん断力が発生したときに初期変形が生じ、これによって接合部の十分な初期剛性が期待できない。
【0007】
図16(a)に示すように、特許文献1の接合方法では、鍔302を有する管304とこの管304に挿入される芯306とによって、ブラインドリベット300が構成されている。芯306のリベット頭308の径は管304の内径よりも大きく、リベット頭308下部付近には括れ部310が形成されている。
【0008】
柱312に設けられたリベット継ぎ手316と、壁パネル314とを締結する場合、まず、リベット継ぎ手316及び壁パネル314を貫通するリベット穴318にブラインドリベット300を差し込む。
【0009】
次に、チャック320で芯306を掴み、工具322で鍔302を押さえながらチャック320により芯306を引っ張る。これによって、管304が変形してその外周がリベット穴318と密着し且つ管304の上端部が膨らむ。そして、管304の変形が限界に達したときに芯306は括れ部310で引きちぎられる。これにより、リベット継ぎ手316と壁パネル314とが締結される。
【0010】
しかし、締結後の管304を描いた図16(b)の拡大断面図に示すように、リベット継ぎ手316と壁パネル314とを締結する管304は中空なので大きなせん断強度(せん断面積)を得ることができない。
よって、特許文献1の接合方法を構造部材と添接板との接合に用いた場合、構造部材と添接板との接合部の剛性は管304のせん断強度(せん断面積)に依存するので、接合部の十分な初期剛性が期待できない。
【特許文献1】特開平8−41997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は係る事実を考慮し、接合部の初期変形を低減することができる、ピン部材を用いた接合構造、接合方法、及び建築物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、重ね合わせた部材を接合する接合構造において、前記重ね合わせた部材を貫通する孔と、前記孔に挿入される中実のピン部材と、前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在するスペーサ部材と、を有し、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させて前記孔に前記ピン部材を固定する。
【0013】
請求項1に記載の発明では、重ね合わせた部材を接合する接合構造において、重ね合わせた部材を貫通する孔が、部材のそれぞれに形成されている。孔には、中実のピン部材が挿入され、このピン部材と孔の孔壁との間にはスペーサ部材が介在している。
そして、スペーサ部材と孔の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材とピン部材とを密着させることにより、孔にピン部材を固定する。
【0014】
よって、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させて孔にピン部材を固定するので、部材が重ね合わされた接合部(以下、「接合部」とする)に曲げモーメントやせん断力が発生したときに生じる初期変形を低減することができる。
すなわち、ピン部材を用いた接合において、孔クリアランスが0となるリベット接合の場合と同様の(孔に対するピン部材のがたつきがない)支圧接合の状態を実現することができるので、初期剛性を確実に得ることができる。
【0015】
また、ピン部材を孔に固定するときに、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させるので、スペーサ部材と孔の孔壁との間や、スペーサ部材とピン部材との間に隙間を有した状態で、スペーサ部材やピン部材を孔に挿入することができる。これにより、スペーサ部材やピン部材を簡単に孔に挿入することが可能になるので、接合作業の手間を低減することができる。
【0016】
また、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させることによって、3次元的な拘束力が周囲からスペーサ部材に作用するので、スペーサ部材の部材強度が小さくても見かけ上の部材強度が大きくなる。これにより、部材強度の小さいスペーサ部材を用いた場合でも、必要とする支圧強度を確保することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記スペーサ部材は、筒状の部材である。
【0018】
請求項2に記載の発明では、スペーサ部材を筒状の部材とすることにより、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材との間で力を均等に伝達させることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記スペーサ部材は、径方向に向かって膨らむ形状記憶合金によって形成されている。
【0020】
請求項3に記載の発明では、スペーサ部材を形状記憶合金によって形成し、このスペーサ部材の温度を形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材の径方向に向かってスペーサ部材を膨張(形状回復)させる。
よって、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させるタイミングを容易に制御することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、前記形状記憶合金は、鉄系形状記憶合金である。
【0022】
請求項4に記載の発明では、形状記憶合金を鉄系形状記憶合金としている。鉄系形状記憶合金は、一般的に安価であり剛性が高い材料なので、低コストの接合構造を実現することができる。また、鉄系形状記憶合金は大型部材の製造が容易な材料なので、大きなスペーサ部材を必要とする場合に特に有効となる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、前記スペーサ部材の内径及び前記ピン部材の外径の少なくとも一方は前記ピン部材の挿入方向に向かって縮径し、前記孔の孔壁との間に前記スペーサ部材が介在された前記ピン部材の端部を引っ張って、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させる。
【0024】
請求項5に記載の発明では、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の少なくとも一方が、ピン部材の挿入方向に向かって縮径している。そして、孔の孔壁との間にスペーサ部材が介在されたピン部材の端部を引っ張り、これによりスペーサ部材と孔の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材とピン部材とを密着させる。
【0025】
よって、孔の孔壁との間にスペーサ部材が介在されたピン部材の端部を引っ張るとき、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の少なくとも一方はピン部材の挿入方向に向かって縮径しているので、楔の効果によりピン部材からスペーサ部材に径方向外向きの力が作用する。また、これによってスペーサ部材から孔の孔壁に径方向外向きの力が作用する。
【0026】
そして、これらによりスペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させてピン部材を孔に固定するので、リベット接合の際に行われる接合部材(リベット)の加熱作業(温度管理)を行わずに部材同士を接合することが可能となる。
【0027】
また、スペーサ部材を形状記憶合金によって形成した場合には、スペーサ部材の径方向に向かってスペーサ部材を膨張(形状回復)させることにより、接合部の初期変形をさらに低減することが可能となり、接合部の初期剛性をさらに大きくすることができる。
【0028】
スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の少なくとも一方はピン部材の挿入方向に向かって縮径しているので、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径が縮径していない場合に比べてスペーサ部材やピン部材が挿入し難くなる。
【0029】
このような場合に、スペーサ部材を形状記憶合金によって形成すれば、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材との間にある程度の隙間を設けていても、接合部において所定の剛性を確保することが可能なので、このような隙間を設けることによりスペーサ部材やピン部材を挿入し易くすることができる。
【0030】
請求項6に記載の発明は、前記ピン部材の端部は、前記ピン部材の端部に締め付けられるナットによって引っ張られる。
【0031】
請求項6に記載の発明では、ピン部材の端部にナットが設けられている。そして、ピン部材に対するこのナットの締め付けによってピン部材の端部が引っ張られる。
よって、簡単な工具や装置等によってナットを締め付けることにより、ピン部材の端部を引っ張ることができる。
【0032】
また、打撃力を用いずに、孔にピン部材を固定することができる。これにより、騒音を出さずに接合作業を行うことが可能になるので、接合作業によって作業環境や近隣の周辺環境等が悪化することを防止できる。
【0033】
請求項7に記載の発明は、前記ピン部材は、該ピン部材を引っ張る力が所定値に達したときに該ピン部材の所定位置で切断される。
【0034】
請求項7に記載の発明では、ピン部材を引っ張る力が所定値に達したときに、ピン部材の所定位置でピン部材が切断される。よって、接合部が所定の剛性となる引っ張り力の値を事前に求めておき、この値を所定値とすれば、接合部を所定の剛性にすることができる。
また、これと同時にスペーサ部材とピン部材とが引き合う力(スペーサ部材とピン部材との一体化の強さ)を管理することができる。
【0035】
請求項8に記載の発明は、前記スペーサ部材の端部は、前記スペーサ部材を前記孔に挿入した後に前記スペーサ部材の径方向外側に折り返される。
【0036】
請求項8に記載の発明では、スペーサ部材を孔に挿入した後に、スペーサ部材の端部がスペーサ部材の径方向外側に折り返されるので、ピン部材が孔に固定された後に振動等によってスペーサ部材が孔から抜けることを防止できる。
【0037】
請求項9に記載の発明は、前記スペーサ部材の端部は、切り込みを有する。
【0038】
請求項9に記載の発明では、スペーサ部材の端部が切り込みを有することにより、スペーサ部材の端部を折り返し易くすることができる。
【0039】
請求項10に記載の発明は、前記スペーサ部材の内壁又は前記ピン部材の外壁は、粗面である。
【0040】
請求項10に記載の発明では、スペーサ部材の内壁又はピン部材の外壁を粗面とすることにより、ピン部材が孔に固定された後に振動等によってピン部材がスペーサ部材(孔)から抜けることを防止できる。
【0041】
請求項11に記載の発明は、重ね合わせた部材を接合する接合方法において、前記重ね合わせた部材を貫通する孔に中実のピン部材を挿入するピン部材挿入工程と、前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を前記孔に挿入するスペーサ部材挿入工程と、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させて前記孔に前記ピン部材を固定するピン部材固定工程と、を有する。
【0042】
請求項11に記載の発明では、重ね合わせた部材を接合する接合方法が、ピン部材挿入工程と、スペーサ部材挿入工程と、ピン部材固定工程とを有している。
【0043】
ピン部材挿入工程は、重ね合わせた部材を貫通する孔に、中実のピン部材を挿入する。
スペーサ部材挿入工程は、重ね合わせた部材を貫通する孔に、ピン部材と孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を挿入する。
ピン部材固定工程は、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させて孔にピン部材を固定する。
よって、請求項1と同じ効果を得ることができる。
【0044】
請求項12に記載の発明は、前記スペーサ部材は、径方向に向かって膨らむ形状記憶合金によって形成されている。
【0045】
請求項12に記載の発明では、スペーサ部材を形状記憶合金によって形成し、このスペーサ部材の温度を形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材の径方向に向かってスペーサ部材を膨張(形状回復)させる。
よって、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させるタイミングを容易に制御することができる。
【0046】
請求項13に記載の発明は、重ね合わせた部材を接合する接合方法において、前記重ね合わせた部材を貫通する孔に中実のピン部材を挿入するピン部材挿入工程と、前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を前記孔に挿入するスペーサ部材挿入工程と、前記孔の孔壁との間に前記スペーサ部材が介在された前記ピン部材の端部を引っ張って、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させるピン部材固定工程と、を有する。
【0047】
請求項13に記載の発明では、重ね合わせた部材を接合する接合方法が、ピン部材挿入工程と、スペーサ部材挿入工程と、ピン部材固定工程とを有している。
【0048】
ピン部材挿入工程は、重ね合わせた部材を貫通する孔に、中実のピン部材を挿入する。
スペーサ部材挿入工程は、重ね合わせた部材を貫通する孔に、ピン部材と孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を挿入する。
ピン部材固定工程は、孔の孔壁との間にスペーサ部材が介在されたピン部材の端部を引っ張る。これによって、スペーサ部材と孔の孔壁、及びスペーサ部材とピン部材とを密着させる。
よって、請求項1と同じ効果を得ることができる。
【0049】
請求項14に記載の発明は、前記スペーサ部材の内径及び前記ピン部材の外径の少なくとも一方は前記ピン部材の挿入方向に向かって縮径している。
【0050】
請求項14に記載の発明では、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の少なくとも一方が、ピン部材の挿入方向に向かって縮径している。
そして、孔の孔壁との間にスペーサ部材が介在されたピン部材の端部を引っ張り、これによりスペーサ部材と孔の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材とピン部材とを密着させる。
よって、請求項5と同じ効果を得ることができる。
【0051】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜10の何れか1項に記載の接合構造を有する建築物である。
【0052】
請求項15に記載の発明では、請求項1〜10の何れか1項に記載の接合構造を有することにより、接合部の初期変形を低減することができる、ピン部材を用いた接合構造を有する建築物を構築することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明は上記構成としたので、接合部の初期変形を低減することができる、ピン部材を用いた接合構造、接合方法、及び建築物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
図面を参照しながら、本発明の接合構造、接合方法、及び建築物を説明する。なお、本実施形態では、部材としての2つの板材を重ね合わせ、この2つの板材同士を接合する例を示したが、さまざまな形状の部材同士の接合や、さまざまな材料によって形成された部材同士の接合に適用することができる。例えば、板材と角材、又は角材と角材の接合に本実施形態を適用してもよい。
【0055】
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0056】
図1(b)の側断面図のように、第1の実施形態の接合構造10では、部材としての鋼板12、14を重ね合わせている。そして、この重ね合わせた鋼板12、14を貫通する貫通孔16が、鋼板12、14のそれぞれに形成されている。すなわち、鋼板12に形成された孔16Aと、鋼板14に形成された孔16Bとによって、貫通孔16が構成されている。
貫通孔16には、鋼製のピン部材18が挿入されている。また、ピン部材18は、中実となっている。
【0057】
ピン部材18と貫通孔16の孔壁との間には、筒状のスペーサ部材20が介在している。スペーサ部材20は、鉄系形状記憶合金により形成されている。よって、スペーサ部材20の温度を鉄系形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材20の径方向の内側及び外側に向かってスペーサ部材20を膨張(形状回復)させることができる。
【0058】
ここで、接合構造10における鋼板12と鋼板14との接合方法の一例について説明する。
まず、図1(a)の側断面図に示すように、重ね合わせた鋼板12、14を貫通する貫通孔16に、ピン部材18と貫通孔16の孔壁との間に介在するスペーサ部材20を挿入する(スペーサ部材挿入工程)。
【0059】
スペーサ部材20の挿入は、この挿入方向後方のスペーサ部材20に設けられた鍔部22が鋼板12に接触するまで行い、これによりスペーサ部材20の端部26を鋼板14の外側に突出させる。
【0060】
スペーサ部材20の端部26の内径は、スペーサ部材20の中央部28の内径よりも小さくなっている。すなわち、スペーサ部材20の端部26の内壁は、中央部28の内壁よりも内側に突出している。
【0061】
次に、スペーサ部材20の孔32(貫通孔16)に、ピン部材18を挿入する(ピン部材挿入工程)。ピン部材18の挿入は、このピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26の内壁に接触する程度まで行う。
【0062】
次に、ピン部材18の頭部24をハンマー(不図示)等で打撃する。これにより、ピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26を押し、スペーサ部材20の端部26がスペーサ部材20の径方向外側に折り返されると共に、ピン部材18が貫通孔16を貫通する(ピン部材貫通工程)。
【0063】
次に、図1(b)に示すように、スペーサ部材20の温度を鉄系形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材20の径方向の内側及び外側に向かってスペーサ部材20を膨張(形状回復)させる(矢印S)。これによって、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材20とピン部材18とを密着させて、貫通孔16にピン部材18を固定する(ピン部材固定工程)。
スペーサ部材20の温度を鉄系形状記憶合金の形状回復温度にする場合には、バーナー、電磁誘導加熱、及び高周波加熱等によってスペーサ部材20を加熱すればよい。
【0064】
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0065】
第1の実施形態の接合構造10では、図1(b)に示すように、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させて貫通孔16にピン部材18を固定するので、部材12、14が重ね合わされた接合部30に曲げモーメントやせん断力が発生したときに生じる初期変形を低減することができる。
すなわち、ピン部材18を用いた接合において、リベット接合のような孔クリアランス(ピン部材18と貫通孔16の孔壁との間の隙間)が0の支圧接合を実現することができるので、接合部30の初期剛性を確実に得ることができる。
【0066】
ここで、孔クリアランスが0の支圧接合(例えば、図2に示すようなリベット接合)によって、重ね合わせた部材34、36を接合した場合と、図3(a)に示すような孔クリアランスを有するボルト接合又は図3(b)に示すような孔クリアランスを有するピン接合によって、重ね合わせた部材34、36を接合した場合とを考える。
【0067】
そして、これらの部材34、36の接合部にせん断力Fが発生した場合、接合部の変形Rに対するせん断力Fは、図4、5(図4は、図2の接合部にせん断力Fが発生したときの変形−せん断力特性、図5は、図3(a)、(b)の接合部にせん断力Fが発生したときの変形−せん断力特性)のようになる。
すなわち、図2の支圧接合では、接合部に初期変形が生じないが、図3(a)、(b)のボルト接合又はピン接合では、接合部に初期変形が生じてしまう。
【0068】
これに対して、図1(b)で示した接合構造10では、ピン接合においても図2で示したような孔クリアランスが0の支圧接合を実現することができるので、図4で示したような接合部の初期剛性を確実に得ることができる。
【0069】
また、ピン部材18を固定するときに、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させるので、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁との間や、スペーサ部材20とピン部材18との間に隙間を有した状態で、スペーサ部材20やピン部材18を貫通孔16に挿入することができる。これにより、スペーサ部材20やピン部材18を簡単に貫通孔16に挿入することが可能になるので、接合作業の手間を低減することができる。
【0070】
また、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させることによって、3次元的な拘束力が周囲からスペーサ部材20に作用するので、スペーサ部材20の部材強度が小さくても見かけ上の部材強度が大きくなる。これにより、部材強度の小さいスペーサ部材20を用いた場合でも、必要とする支圧強度を確保することができる。
【0071】
また、スペーサ部材20を筒状の部材とすることにより、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18との間で力を均等に伝達させることができる。
【0072】
また、スペーサ部材20を形状記憶合金によって形成し、このスペーサ部材20の温度を形状記憶合金の形状回復温度にすることにより、スペーサ部材20を膨張(形状回復)させるので、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材20とピン部材18とを密着させるタイミングを容易に制御することができる。
【0073】
また、形状記憶合金として用いた鉄系形状記憶合金は、一般的にニッケルチタン系の形状記憶合金よりも安価であり剛性が高い材料なので、低コストの接合構造を実現することができる。また、鉄系形状記憶合金は大型部材の製造が容易な材料なので、大きなスペーサ部材を必要とする場合に特に有効となる。
【0074】
また、スペーサ部材20を貫通孔16に挿入した後に、スペーサ部材20の端部がスペーサ部材20の径方向外側に折り返されるので、ピン部材18が貫通孔16に固定された後に振動等によってスペーサ部材20が貫通孔16から抜けることを防止できる。
【0075】
また、スペーサ部材挿入工程、ピン部材挿入工程、ピン部材貫通工程、及びピン部材固定工程の作業の全てを接合構造10の片側(図1(a)の場合には、鋼板12の左側)から行うことができる。
【0076】
また、図1(a)、(b)では、ピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26を押すことによって、スペーサ部材20の端部26がスペーサ部材20の径方向外側に折り返される例を示したが、図6(a)に示すように、スペーサ部材20の端部26の内壁と、スペーサ部材20の中央部28の内壁とが面一になるようにし、図6(b)に示すように、鉄系形状記憶合金の形状回復によってスペーサ部材20の端部26をスペーサ部材20の径方向外側に折り返す(矢印42)ようにしてもよい。
【0077】
このようにすれば、打撃力を用いずにピン部材18を貫通孔16に貫通させることができる。これにより、騒音を出さずに部材(鋼板12、14)同士の接合作業を行うことが可能になる。
また、ピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26を押すことによって径方向外側に折り返された図1(b)のスペーサ部材20の端部26をさらに形状回復させて、確実に折り返すようにしてもよい。
【0078】
また、ピン部材18の先端部がスペーサ部材20の端部26を押すことによって、又は鉄系形状記憶合金の形状回復によって、スペーサ部材20の端部26をスペーサ部材20の径方向外側に折り返され易くするために、図7(a)、(b)に示すように、スペーサ部材20の端部26に切り込み38を入れてもよい。
【0079】
この場合、切り込み38を入れることによって形成される折り返し部40は、図7(a)に示すようにスペーサ部材20の端部26全周に渡って配置されるようにしてもよいし、切り込み38の割合を大きくして、端部26の周方向に対して点在するようにしてもよい。
【0080】
また、図8に示すように、スペーサ部材20の内壁を粗面とすれば、ピン部材18が貫通孔16に固定された後に、振動等によってピン部材18がスペーサ部材20(貫通孔16)から抜けることを防止できる。
なお、ピン部材18の外壁を粗面としてもよいし、スペーサ部材20の内壁とピン部材18の外壁との両方を粗面としてもよい。これらの構成にした場合においても、振動等によってピン部材18がスペーサ部材20(貫通孔16)から抜けることを防止できる。
【0081】
また、図1、6、8では、スペーサ部材20を鉄系形状記憶合金により形成されている例を示したが、スペーサ部材20は、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁とを密着させると共に、スペーサ部材20とピン部材18とを密着させる(スペーサ部材20の径方向の内側及び外側に向かってスペーサ部材20を膨張させる)ことができる材料によって形成されていればよい。また、図1、6、8で示したピン部材18にボルトを用いてもよい。
【0082】
また、接合構造10における鋼板12と鋼板14との接合方法で示した、スペーサ部材挿入工程とピン部材挿入工程との順番は逆にしてもよい。例えば、図1(a)で示した鍔部22をスペーサ部材20の端部に設けないようにして、先にピン部材18を貫通孔16に挿入した後に、反対側から貫通孔16にスペーサ部材20を挿入してもよい。また、ピン部材18が挿入された状態のスペーサ部材20を貫通孔16に挿入するようにしてもよい。
【0083】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0084】
第2の実施形態は、第1の実施形態のスペーサ部材20の構成を違えたものである。したがって、第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0085】
図9(b)の側断面図のように、第2の実施形態の接合構造44では、貫通孔16に、鋼製のピン部材46が挿入されている。
ピン部材46は中実となっており、ピン部材46の外径が、ピン部材の挿入方向(矢印48)に向かって縮径している。
【0086】
また、ピン部材46と貫通孔16の孔壁との間には、鋼製のスペーサ部材50が介在している。スペーサ部材50は筒状の部材であり、内径がピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径している。
【0087】
そして、ピン部材46の外壁部に形成されたテーパと、スペーサ部材50の内壁部に形成されたテーパの傾きはほぼ等しくなっており、ピン部材46が貫通孔16に所定量だけ挿入された状態(図9(a)の側断面図を参照のこと)で、ピン部材46の外壁面とスペーサ部材50の内壁面とが、ほぼ隙間なく面接触する。
また、図9(a)に示すように、ピン部材46の端部60には、ナット52がねじ込まれる雄ネジ54が形成されている。
【0088】
ここで、接合構造44における鋼板12と鋼板14との接合方法の一例について説明する。
まず、図9(a)に示すように、重ね合わせた鋼板12、14を貫通する貫通孔16に、ピン部材46と貫通孔16の孔壁との間に介在するスペーサ部材50を挿入する(スペーサ部材挿入工程)。
スペーサ部材50の挿入は、この挿入方向(矢印48)後方に設けられたスペーサ部材50の鍔部56が鋼板12に接触するまで行う。
【0089】
次に、スペーサ部材50の孔62(貫通孔16)に、ピン部材46を挿入する(ピン部材挿入工程)。ピン部材46の挿入は、このピン部材46の端部60が鋼板12から外側へ突出するまで行う(ピン部材貫通工程)。
【0090】
次に、雄ネジ54にねじ込んだナット52を締め付けてピン部材46の端部60を挿入方向(矢印48)に引っ張る。これによって、スペーサ部材50と孔16の孔壁、及びスペーサ部材50とピン部材46とを密着させ、貫通孔16にピン部材46を固定する(ピン部材固定工程)。ナット52を締め付けるときには、ナット52がスペーサ部材50の鍔部56を押すので、スペーサ部材50が貫通孔16から抜けてしまうことはない。
【0091】
次に、図9(b)に示すように、ピン部材46を引っ張る力が所定値に達したときに、ピン部材46の所定位置でピン部材が切断される(ピン部材切断工程)。
【0092】
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0093】
第2の実施形態の接合構造44では、図9(b)に示すように、貫通孔16の孔壁との間にスペーサ部材50が介在されたピン部材46の端部60を引っ張るとき、スペーサ部材50の内径及びピン部材46の外径がピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径しているので、楔の効果によりピン部材46からスペーサ部材50に径方向の外側に向かって力が作用する(矢印T1)。また、これによってスペーサ部材50から貫通孔16の孔壁に径方向の外側に向かって力が作用する(矢印T2)。
【0094】
そして、これらによりスペーサ部材50と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材50とピン部材46とを密着させてピン部材46を貫通孔16に固定するので、リベット接合の際に行われる接合部材(リベット)の加熱作業(温度管理)を行わずに部材(鋼板12、14)同士を接合することが可能となる。
【0095】
また、ナット52を締め付けてピン部材46の端部60を挿入方向(矢印48)に引っ張るので、打撃力を用いずに貫通孔16にピン部材46を固定することができる。これにより、騒音を出さずに部材(鋼板12、14)同士の接合作業を行うことが可能になるので、接合作業によって作業環境や近隣の周辺環境等が悪化することを防止できる。
【0096】
また、ピン部材46を引っ張る力が所定値に達したときに、ピン部材46の所定位置でピン部材46が切断される。よって、接合部58が所定の剛性となる引っ張り力の値を事前に求めておき、この値を所定値とすれば、接合部58を所定の剛性にすることができる。また、これと同時にスペーサ部材50とピン部材46とが引き合う力(スペーサ部材50とピン部材46との一体化の強さ)を管理することができる。
【0097】
図9(a)、(b)では、スペーサ部材50の内径及びピン部材46の外径が、ピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径している例を示したが、スペーサ部材50の内径及びピン部材46の外径の少なくとも一方が、ピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径していればよい。
【0098】
例えば、図10(a)の側断面図のように、スペーサ部材50の内径のみがピン部材64の挿入方向(矢印48)に向かって縮径していてもよいし、図10(b)の側断面図のように、ピン部材46の外径のみがピン部材46の挿入方向(矢印48)に向かって縮径していてもよい。
【0099】
スペーサ部材の内径及びピン部材の外径の両方が、ピン部材の挿入方向に向かって縮径していれば、ピン部材の根元から先端に渡って、ピン部材からスペーサ部材に作用させる力(図9(b)の矢印T1を参照のこと)を均等に与えることができるので好ましい。
なお、図10(a)、(b)の場合においても、スペーサ部材50、66が変形してスペーサ部材50、66の内壁面と、ピン部材64、46の外壁面とが最終的に密着するようにしてもよい。
【0100】
また、図9(b)では、ピン部材46を引っ張る力が所定値に達したときに、ピン部材46の所定位置でピン部材46が切断されるようにして、接合部58を所定の剛性にすると共に、スペーサ部材50とピン部材46とが引き合う力を管理した例を示したが、ピン部材46の所定位置(切断箇所)に切り欠きを形成し、この切欠き量によって剛性や引き合う力を管理してもよい。
【0101】
また、ピン部材46を切断させずに、ナット52を締め付けるトルクレンチで剛性や引き合う力を管理してもよい。ピン部材46が切断されるようにしたほうが、ピン部材46を貫通孔16に固定した後にナット52やピン部材46の端部60がなくなるので、鋼板12から突出する部材を少なくすることができる。
【0102】
また、接合構造44における鋼板12と鋼板14との接合方法で示した、スペーサ部材挿入工程とピン部材挿入工程との順番は逆にしてもよい。例えば、図9(a)で示したピン部材46を先に貫通孔16に挿入した後に、反対側から貫通孔16にスペーサ部材50を挿入してもよい。また、鍔部56をスペーサ部材50の端部に設けないようにして、ピン部材46が挿入された状態のスペーサ部材50を貫通孔16に挿入するようにしてもよい。
【0103】
また、図9(a)、(b)では、ナット52を締め付けてピン部材46の端部60を挿入方向(矢印48)に引っ張る例を示したが、ピン部材46の端部60を挿入方向(矢印48)に移動できればよく、例えば図11(a)、(b)の側断面図に示すように、チャック68でピン部材72の端部74を掴み、台座70でスペーサ部材50の鍔56を押さえながら油圧ジャッキ76等によりピン部材72の端部74を引っ張ってもよい。図11(a)にはピン部材72の端部74を引っ張る前の状態が示され、図11(b)にはピン部材72の端部74を引っ張ってピン部材72の端部74の根元に形成した切り欠き78の位置で切断されている状態が示されている。
【0104】
また、このような装置を用いずに、図12(a)、(b)の側断面図に示すように、ハンマー等でピン部材80の頭部82を打撃し、これによってスペーサ部材50の孔62(貫通孔16)へピン部材80を貫入させてもよい。図12(a)にはスペーサ部材50の孔62(貫通孔16)へピン部材80を貫入される前の状態が示され、図12(b)にはスペーサ部材50の孔62(貫通孔16)へピン部材80が貫入されて、ピン部材80が貫通孔16に固定された状態が示されている。
【0105】
このような場合には、図12(a)に示すように、ピン部材80を挿入する側(図12(a)の右側)のスペーサ部材50端部に鍔部56を設ければ、ハンマー等の打撃によってスペーサ部材50が貫通孔16から抜け出てしまうのを防げるので好ましい。
【0106】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
なお、第1の実施形態では、スペーサ部材20が鉄系形状記憶合金により形成されている例を示したが、第2の実施形態のスペーサ部材50、66を鉄系形状記憶合金等の形状記憶合金としてもよい。
スペーサ部材50、66を鉄系形状記憶合金等の形状記憶合金とすれば、スペーサ部材50、66の径方向の内側及び外側に向かってスペーサ部材50、66を膨張(形状回復)させることにより、接合部58に曲げモーメントやせん断力が発生したときに生じる初期変形をさらに低減することが可能となり、接合部58の初期剛性をさらに大きくすることができる。
【0107】
スペーサ部材50の内径及びピン部材46、72、80の外径はピン部材46、72、80の挿入方向に向かって縮径しているので、スペーサ部材の内径及びピン部材の外径が縮径していない場合に比べてスペーサ部材やピン部材が挿入し難くなる。
【0108】
このような場合に、スペーサ部材50、66に形状記憶合金を用いれば、スペーサ部材50、66と貫通孔16の孔壁、及びスペーサ部材50、66とピン部材46、64、72、80との間にある程度の隙間を設けていても、接合部58において所定の剛性を確保することが可能なので、このような隙間を設けることによりスペーサ部材やピン部材を挿入し易くすることができる。
【0109】
第1及び第2の実施形態のスペーサ部材20、50、66の形成が可能な形状記憶合金としては、鉄系形状記憶合金のFe−Mn−Si基の一種である、Fe−28%Mn−6%Si−5%Cr−0.5%NbC合金(以下、「NbC添加合金」とする)、Fe−28%Mn−6%Si−5%Cr合金、Fe−32%Mn−6%Si合金、Fe−20%Mn−5%Si−8%Cr−5%Ni合金、Fe−16%Mn−5%Si−12%Cr−5%Ni合金等が挙げられる。スペーサ部材20、50、66を形成する材料には、Fe−28%Mn−6%Si−5%Cr合金を用いるのが好ましく、NbC添加合金を用いるのがより好ましい。
【0110】
形状記憶合金によって形成される部材(以下、「形状記憶部材」とする)の形状記憶処理及び形状回復処理は、例えば、図13のフロー図に示す手順によって行うことができる。
【0111】
まず、ステップ100で、所定の形状を有するように形状記憶部材を製作する(形状製作工程)。
次に、ステップ102で、形状回復時の形状に形状記憶部材を拘束した状態で形状回復させるときの温度(以下、「形状回復温度」とする)に加熱し、この形状(形状回復時の形状)を記憶させる(記憶処理工程)。
次に、ステップ104で、トレーニング処理を行う(トレーニング処理工程)。このトレーニング処理工程では、形状回復前の形状(例えば、図1(a)における膨張前のスペーサ部材20の形状)に変形させるトレーニング処理時変形付与工程と、所定の温度に加熱するトレーニング処理時加熱工程とを繰り返し行うことにより、形状記憶効果を改善し、形状回復率を向上させる。
【0112】
このようにして、形状が記憶された形状記憶部材は、形状回復前の形状(例えば、図1(a)における膨張前のスペーサ部材20の形状)に変形させた(ステップ106の変形付与工程)後において、形状を回復させたいタイミングで形状回復温度(約300゜C以上)に加熱する(ステップ108の加熱工程)ことにより形状を回復させることができる(ステップ110の形状回復工程)。
【0113】
例えば、NbC添加合金の場合、トレーニング処理工程での加工熱処理の仕方によって異なった「回復ひずみ−温度特性」を発揮させることができる。例えば、NbC添加合金に溶体化処理を施した合金(以下、「第1の合金」とする)、NbC添加合金に600°C、14%の温間圧延を施した後、時効してNbCを微細析出させた合金(以下、「第2の合金」とする)、又はNbC添加合金に10%室温引張りでの前加工を施した後、NbCを時効析出させた合金(以下、「第3の合金」とする)によって、スペーサ部材20、50、66を形成することができる。
【0114】
ここで、例えば、図1(b)で示した接合構造10において、図14に示すように、スペーサ部材20と貫通孔16の孔壁との間、及びスペーサ部材20とピン部材18との間の径方向の長さをそれぞれd1、d2とし、スペーサ部材20の外形の直径をDとする。
【0115】
このとき、第1〜第3の合金を用いた場合には、スペーサ部材20の径方向において最大で2%程度の膨張率(スペーサ部材20の材軸方向においては最大で2.5〜4%程度の膨張率)が得られるので、d1=d2≦D×0.02/2を満たす程度の隙間を確保することができる。
【0116】
また、第1及び第2の実施形態で示したスペーサ部材20、50、66、及びピン部材18、46、64、72、80の部材強度は、鋼板12、14の部材強度以上にするのが好ましい。特に、スペーサ部材20、50、66の部材強度を大きくすれば、鋼板12、14の接合部に大きな初期剛性を与えることができるので好ましい。
【0117】
また、第1及び第2の実施形態では、スペーサ部材20、50、66を筒状としたが、図15(a)〜(c)の斜視図に示すように、スリット92が形成された中空管状の部材90も、第1及び第2の実施形態における筒状のスペーサ部材に含まれる。図15(a)〜(c)の部材90に示すように、スペーサ部材(部材90)にスリット92を形成することにより、貫通孔16へスペーサ部材(部材90)を挿入し易くなる。
【0118】
また、第2の実施形態の図12(a)で示したスペーサ部材50の端部(鋼板12側)を、第1の実施形態の図1(a)、(b)や図6(a)、(b)で示したスペーサ部材20の端部26のように、スペーサ部材20の径方向外側に折り返すようにしてもよい。この場合、スペーサ部材50の端部(鋼板12側)に第1の実施形態の図7(a)で示した切り込み38を入れてもよい。
【0119】
また、第1及び第2の実施形態の接合構造10、44を利用して、さまざまな構造部材同士を繋ぎ合わせることができる。例えば、H形鋼桁部材等の構造部材同士を繋ぎ合わせる場合、繋ぎ合わせる一方の構造部材の端部から他方の構造部材の端部に渡って、鋼製の添接板を添わせる。そして、構造部材と添接板とを第1及び第2の実施形態の接合構造10、44を用いて接合する。
【0120】
また、第1及び第2の実施形態では、1枚の鋼板12と1枚の鋼板14とを接合構造10、44によって接合した例を示したが、鋼板12、14は、複数枚であってもよい。例えば、1枚の鋼板12を2枚の鋼板14で挟み、これらの鋼板12、14を貫通するピン部材によって3枚の鋼板12、14を接合してもよいし、また、4枚以上の鋼板を重ね合わせてこれらの鋼板を貫通するピン部材によってこれらの鋼板を接合してもよい。
【0121】
また、第1及び第2の実施形態では、接合する部材を鋼板12、14としたが、板材以外の部材であってもよい。例えば、角材同士を接合構造10、44によって接合してもよい。
【0122】
強い接合強度を必要とする高強度鋼部材同士を添接板を用いて接合する場合、構造部材と添接板との接合面(接触面)に大きな摩擦力を生じさせるためには、多くの数の高力ボルトで構造部材と添接板とを接合しなければならない。さらに、これに伴って高力ボルトが挿入される孔の数も多くなるので、構造部材及び添接板の断面欠損面積も大きくなり、構造部材及び添接板の部材自体の強度が大きく低下してしまう。また、先塗装が施された部材同士を接合する場合、高力ボルトによる摩擦接合では十分な摩擦接合強度が得られないことが考えられる。このように高力ボルトによる摩擦接合が難しい部材同士の接合に、第1及び第2の実施形態の接合構造10、44は特に有効となる。
【0123】
また、第1及び第2の実施形態で示した接合構造10、44を、建築物の一部又は全部に用いれば、接合部30、58に曲げモーメントやせん断力が発生したときに生じる初期変形を低減することができる、ピン部材18、46、64、72、80を用いた接合構造10、44を有する建築物を構築することができる。
【0124】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る接合構造を示す側断面図である。
【図2】従来の接合構造を示す側断面図である。
【図3】従来の接合構造を示す側断面図である。
【図4】従来の接合構造の変形に対するせん断力を示す線図である。
【図5】従来の接合構造の変形に対するせん断力を示す線図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る接合構造の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る接合構造を示す側断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る接合構造の変形例を示す側断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る形状記憶処理手順及び形状回復処理手順を示す説明図である。
【図14】本発明の実施形態に係るスペーサ部材と貫通孔の孔壁との間、及びスペーサ部材とピン部材との間に形成される隙間を示す説明図である。
【図15】本発明の実施形態に係るスペーサ部材の変形例を示す斜視図である。
【図16】従来の接合方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0126】
10、44 接合構造
12、14 鋼板(部材)
16 貫通孔(孔)
18、46、64、72、80 ピン部材
20、50、66 スペーサ部材
26 端部
38 切り込み
52 ナット
60、74 端部
90 部材(スペーサ部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた部材を接合する接合構造において、
前記重ね合わせた部材を貫通する孔と、
前記孔に挿入される中実のピン部材と、
前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在するスペーサ部材と、
を有し、
前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させて前記孔に前記ピン部材を固定する接合構造。
【請求項2】
前記スペーサ部材は、筒状の部材である請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記スペーサ部材は、径方向に向かって膨らむ形状記憶合金によって形成されている請求項2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記形状記憶合金は、鉄系形状記憶合金である請求項3に記載の接合構造。
【請求項5】
前記スペーサ部材の内径及び前記ピン部材の外径の少なくとも一方は前記ピン部材の挿入方向に向かって縮径し、前記孔の孔壁との間に前記スペーサ部材が介在された前記ピン部材の端部を引っ張って、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させる請求項2〜4の何れか1項に記載の接合構造。
【請求項6】
前記ピン部材の端部は、前記ピン部材の端部に締め付けられるナットによって引っ張られる請求項5に記載の接合構造。
【請求項7】
前記ピン部材は、該ピン部材を引っ張る力が所定値に達したときに該ピン部材の所定位置で切断される請求項5又は6に記載の接合構造。
【請求項8】
前記スペーサ部材の端部は、前記スペーサ部材を前記孔に挿入した後に前記スペーサ部材の径方向外側に折り返される請求項2〜7の何れか1項に記載の接合構造。
【請求項9】
前記スペーサ部材の端部は、切り込みを有する請求項8に記載の接合構造。
【請求項10】
前記スペーサ部材の内壁又は前記ピン部材の外壁は、粗面である請求項2〜9の何れか1項に記載の接合構造。
【請求項11】
重ね合わせた部材を接合する接合方法において、
前記重ね合わせた部材を貫通する孔に中実のピン部材を挿入するピン部材挿入工程と、
前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を前記孔に挿入するスペーサ部材挿入工程と、
前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させて前記孔に前記ピン部材を固定するピン部材固定工程と、
を有する接合方法。
【請求項12】
前記スペーサ部材は、径方向に向かって膨らむ形状記憶合金によって形成されている請求項11に記載の接合方法。
【請求項13】
重ね合わせた部材を接合する接合方法において、
前記重ね合わせた部材を貫通する孔に中実のピン部材を挿入するピン部材挿入工程と、
前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を前記孔に挿入するスペーサ部材挿入工程と、
前記孔の孔壁との間に前記スペーサ部材が介在された前記ピン部材の端部を引っ張って、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させるピン部材固定工程と、
を有する接合方法。
【請求項14】
前記スペーサ部材の内径及び前記ピン部材の外径の少なくとも一方は前記ピン部材の挿入方向に向かって縮径している請求項13に記載の接合方法。
【請求項15】
請求項1〜10の何れか1項に記載の接合構造を有する建築物。
【請求項1】
重ね合わせた部材を接合する接合構造において、
前記重ね合わせた部材を貫通する孔と、
前記孔に挿入される中実のピン部材と、
前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在するスペーサ部材と、
を有し、
前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させて前記孔に前記ピン部材を固定する接合構造。
【請求項2】
前記スペーサ部材は、筒状の部材である請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記スペーサ部材は、径方向に向かって膨らむ形状記憶合金によって形成されている請求項2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記形状記憶合金は、鉄系形状記憶合金である請求項3に記載の接合構造。
【請求項5】
前記スペーサ部材の内径及び前記ピン部材の外径の少なくとも一方は前記ピン部材の挿入方向に向かって縮径し、前記孔の孔壁との間に前記スペーサ部材が介在された前記ピン部材の端部を引っ張って、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させる請求項2〜4の何れか1項に記載の接合構造。
【請求項6】
前記ピン部材の端部は、前記ピン部材の端部に締め付けられるナットによって引っ張られる請求項5に記載の接合構造。
【請求項7】
前記ピン部材は、該ピン部材を引っ張る力が所定値に達したときに該ピン部材の所定位置で切断される請求項5又は6に記載の接合構造。
【請求項8】
前記スペーサ部材の端部は、前記スペーサ部材を前記孔に挿入した後に前記スペーサ部材の径方向外側に折り返される請求項2〜7の何れか1項に記載の接合構造。
【請求項9】
前記スペーサ部材の端部は、切り込みを有する請求項8に記載の接合構造。
【請求項10】
前記スペーサ部材の内壁又は前記ピン部材の外壁は、粗面である請求項2〜9の何れか1項に記載の接合構造。
【請求項11】
重ね合わせた部材を接合する接合方法において、
前記重ね合わせた部材を貫通する孔に中実のピン部材を挿入するピン部材挿入工程と、
前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を前記孔に挿入するスペーサ部材挿入工程と、
前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させて前記孔に前記ピン部材を固定するピン部材固定工程と、
を有する接合方法。
【請求項12】
前記スペーサ部材は、径方向に向かって膨らむ形状記憶合金によって形成されている請求項11に記載の接合方法。
【請求項13】
重ね合わせた部材を接合する接合方法において、
前記重ね合わせた部材を貫通する孔に中実のピン部材を挿入するピン部材挿入工程と、
前記ピン部材と前記孔の孔壁との間に介在する筒状のスペーサ部材を前記孔に挿入するスペーサ部材挿入工程と、
前記孔の孔壁との間に前記スペーサ部材が介在された前記ピン部材の端部を引っ張って、前記スペーサ部材と前記孔の孔壁、及び前記スペーサ部材と前記ピン部材とを密着させるピン部材固定工程と、
を有する接合方法。
【請求項14】
前記スペーサ部材の内径及び前記ピン部材の外径の少なくとも一方は前記ピン部材の挿入方向に向かって縮径している請求項13に記載の接合方法。
【請求項15】
請求項1〜10の何れか1項に記載の接合構造を有する建築物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−121289(P2010−121289A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293428(P2008−293428)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]