説明

接着フィルムの製造方法

【課題】本発明は、従来既存の方法に比して飛躍的に高い生産性を有する接着フィルムの製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、共押出−流延塗布法により、高耐熱性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を積層して接着フィルムを製造する方法であって、高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液、かつ/または、熱可塑性ポリイミドを含有する溶液若しくは熱可塑性ポリイミドの前駆体を含有する溶液中に、化学脱水剤及び触媒を含有せしめることを特徴とする、接着フィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けた接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化にともない、各種プリント基板の需要が伸びているが、中でも、フレキシブル積層板(フレキシブルプリント配線板(FPC)等とも称する)の需要が特に伸びている。フレキシブル積層板は、絶縁性フィルム上に金属箔からなる回路が形成された構造を有している。
【0003】
上記フレキシブル積層板は、一般に、各種絶縁材料により形成され、柔軟性を有する絶縁性フィルムを基板とし、この基板の表面に、各種接着材料を介して金属箔を加熱・圧着することにより貼りあわせる方法により製造される。上記絶縁性フィルムとしては、ポリイミドフィルム等が好ましく用いられている。上記接着材料としては、エポキシ系、アクリル系等の熱硬化性接着剤が一般的に用いられている(これら熱硬化性接着剤を用いたFPCを以下、三層FPCともいう)。
【0004】
熱硬化性接着剤は比較的低温での接着が可能であるという利点がある。しかし今後、耐熱性、屈曲性、電気的信頼性といった要求特性が厳しくなるに従い、熱硬化性接着剤を用いた三層FPCでは対応が困難になると考えられる。これに対し、絶縁性フィルムに直接金属層を設けたり、接着層に熱可塑性ポリイミドを使用したFPC(以下、二層FPCともいう)が提案されている。この二層FPCは、三層FPCより優れた特性を有し、今後需要が伸びていくことが期待される。
【0005】
二層FPCに用いるフレキシブル金属張積層板の作製方法としては、金属箔上にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を流延、塗布した後イミド化するキャスト法、スパッタ、メッキによりポリイミドフィルム上に直接金属層を設けるメタライジング法、熱可塑性ポリイミドを介してポリイミドフィルムと金属箔とを貼り合わせるラミネート法が挙げられる。この中で、ラミネート法は、対応できる金属箔の厚み範囲がキャスト法よりも広く、装置コストがメタライジング法よりも低いという点で優れている。ラミネートを行う装置としては、ロール状の材料を繰り出しながら連続的にラミネートする熱ロールラミネート装置またはダブルベルトプレス装置等が用いられている。
【0006】
ここで、ラミネート法に用いられる基板材料としては、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド層を設けた接着フィルムが広く用いられている。このようなポリイミドフィルムを基材とする接着フィルムの製造方法としては、基材ポリイミドフィルムの片面または両面に、溶液状態の熱可塑性ポリイミド若しくはその前駆体を塗工し乾燥させて製造する塗工法と、基材ポリイミドフィルムの片面または両面に熱可塑性ポリイミドフィルムとを加熱貼合せ加工し製造する熱ラミネート法、さらには、基材ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層を同時に流延塗布して形成する共押出−流延塗布法(例えば、特許文献1および2)が挙げられる。なかでも、共押出−流延塗布法は、必要な工程数が少ないことから、他の方法と比して生産性及び製品歩留まりが高いという利点がある。しかしながら、従来の共押出−流延塗布法は、実質的に加熱によってのみイミド化を行う、所謂熱キュア法を前提にして検討されてきた。熱キュア法では、製膜工程における溶媒の揮散・除去及びイミド化の工程が極めて長時間となるため、生産性が低いという問題点があった。生産性の低さは、トータルコストの増大に繋がり、従って、従来の共押出し−流延塗布法では、市場が要求するコストで接着フィルムを必ずしも提供することができないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2946416号公報
【特許文献2】特開平7−214637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、従来の方法に比して飛躍的に高い生産性を有する接着フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、高い生産性を有する接着フィルムの製造方法を独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、共押出−流延塗布法により、高耐熱性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を積層して接着フィルムを製造する方法であって、高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液、かつ/または、熱可塑性ポリイミドを含有する溶液若しくは熱可塑性ポリイミドの前駆体を含有する溶液中に、化学脱水剤及び触媒を含有せしめることを特徴とする、接着フィルムの製造方法に関する。
【0011】
好ましい実施態様は、化学脱水剤及び触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.5〜5モル化学脱水剤を含有せしめることを特徴とする、前記の接着フィルムの製造方法に関する。
【0012】
更に好ましい実施態様は、化学脱水剤及び触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜3モル触媒を含有せしめることを特徴とする、前記の接着フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接着フィルムの生産性を、従来法に比して飛躍的に向上せしめることができ、ひいては、接着フィルムを安価に提供可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0015】
本発明に係る接着フィルムは、高耐熱性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を設けて成ることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る高耐熱性ポリイミド層は、各種ポリイミド材料を使用して形成することができるが、その接着フィルムを用いて加工する際の工程、または最終製品の形態で通常さらされる温度において、容易に熱変形しないものであることが好ましく、れば特に非熱可塑性ポリイミド樹脂を90wt%以上含有していることが好ましい。尚、その分子構造、厚みは特に限定されない。
【0017】
以下、実施の形態の一例に基づき説明する。
【0018】
本発明に用いられる高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができるが、通常、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンを、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られた溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度が得やすくなる。
【0019】
重合方法としてはあらゆる公知の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ポリアミド酸の重合における重合方法の特徴はそのモノマーの添加順序にあり、このモノマー添加順序を制御することにより得られる高耐熱性ポリイミドの諸物性を制御することができる。従い、本発明においてポリアミド酸の重合にはいかなるモノマーの添加方法を用いても良い。代表的な重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。これら方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
【0020】
本発明において、上記のいかなる重合方法を用いて得られたポリアミド酸を用いても良く、重合方法は特に限定されるのもではない。
【0021】
本発明に係る接着フィルムに使用するのに適した物性を有する高耐熱性ポリイミド層を得るためには、パラフェニレンジアミンや置換ベンジジンに代表される剛直構造を有するジアミン成分を用いてプレポリマーを得る重合方法を用いることが好ましい。本方法を用いることにより、弾性率が高く、吸湿膨張係数が小さいポリイミドフィルムが得やすくなる傾向にある。本方法においてプレポリマー調製時に用いる剛直構造を有するジアミンと酸二無水物のモル比は100:70〜100:99もしくは70:100〜99:100、さらには100:75〜100:90もしくは75:100〜90:100が好ましい。この比が上記範囲を下回ると弾性率および吸湿膨張係数の改善効果が得られにくく、上記範囲を上回ると熱膨張係数が小さくなりすぎたり、引張伸びが小さくなるなどの弊害が生じることがある。
【0022】
ここで、本発明に係る高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸組成物に好適に用いられる材料について説明する。
【0023】
本発明において好適に用いうる適当な酸無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物を含み、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。
【0024】
本発明に係る接着フィルムに使用するのに適した物性を有する高耐熱性ポリイミド層を得るためには、これら酸二無水物の中で特にはピロメリット酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び/又は4,4’−オキシフタル酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の使用が好ましい。
【0025】
またこれら酸二無水物の中で3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び/又は4,4’−オキシフタル酸二無水物の好ましい使用量は、全酸二無水物に対して、60mol%以下、好ましくは55mol%以下、更に好ましくは50mol%以下である。3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び/又は4,4’−オキシフタル酸二無水物の使用量がこの範囲を上回ると高耐熱性ポリイミド層のガラス転移温度が低くなりすぎたり、高温下の貯蔵弾性率が低くなりすぎて製膜そのものが困難になったりすることがあるため好ましくない。
【0026】
また、ピロメリット酸二無水物を用いる場合、好ましい使用量は40〜100mol%、更に好ましくは45〜100mol%、特に好ましくは50〜100mol%である。ピロメリット酸二無水物をこの範囲で用いることによりガラス転移温度および高温下の貯蔵弾性率を使用または製膜に好適な範囲に保ちやすくなる。
【0027】
本発明に係る高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸組成物において好適に使用し得る適当なジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3‘−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン及びそれらの類似物などが挙げられる。
【0028】
これらジアミン類をジアミノベンゼン類、ベンジジン類などに代表されるいわゆる剛直構造のジアミンとエーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基など柔軟構造を有するジアミンとに分類して考えると、剛直構造と柔軟構造のジアミンの使用比率はモル比で80/20〜20/80、好ましくは70/30〜30/70、特に好ましくは60/40〜30/70である。剛直構造のジアミンの使用比率が上記範囲を上回ると得られる層の引張伸びが小さくなる傾向にあり、またこの範囲を下回るとガラス転移温度が低くなりすぎたり、高温下の貯蔵弾性率が低くなりすぎて製膜が困難になるなどの弊害を伴うことがあるため好ましくない。
【0029】
本発明において用いられる高耐熱性ポリイミド層は、上記の範囲に限定される訳ではないが、上記の範囲の中で所望の特性を有する層となるように適宜芳香族酸二無水物および芳香族ジアミンの種類、配合比を決定して用いることが特に好ましい。
【0030】
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができ、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒が特に好ましく用い得る。また、水は、ポリアミック酸の分解を促進するため、可能な限り除去することが好ましい。
【0031】
また、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いても良いが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0032】
フィラーの粒子径は改質すべきフィルム特性と添加するフィラーの種類によって決定されるため、特に限定されるものではないが、一般的には平均粒径が0.05〜100μm、好ましくは0.1〜75μm、更に好ましくは0.1〜50μm、特に好ましくは0.1〜25μmである。粒子径がこの範囲を下回ると改質効果が現れにくくなり、この範囲を上回ると表面性を大きく損なったり、機械的特性が大きく低下したりする可能性がある。また、フィラーの添加部数についても改質すべきフィルム特性やフィラー粒子径などにより決定されるため特に限定されるものではない。しかし、一般的にフィラーの添加量はポリイミド100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.01〜90重量部、更に好ましくは0.02〜80重量部である。フィラー添加量がこの範囲を下回るとフィラーによる改質効果が現れにくく、この範囲を上回るとフィルムの機械的特性が大きく損なわれる可能性がある。フィラーの添加は、
1.重合前または途中に重合反応液に添加する方法
2.重合完了後、3本ロールなどを用いてフィラーを混錬する方法
3.フィラーを含む分散液を用意し、これをポリアミド酸有機溶媒溶液に混合する方法
などいかなる方法を用いてもよいが、フィラーを含む分散液をポリアミド酸溶液に混合する方法、特に製膜直前に混合する方法が製造ラインのフィラーによる汚染が最も少なくすむため、好ましい。フィラーを含む分散液を用意する場合、ポリアミド酸の重合溶媒と同じ溶媒を用いるのが好ましい。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために分散剤、増粘剤等をフィルム物性に影響を及ぼさない範囲内で用いることもできる。
【0033】
接着層に含有される熱可塑性ポリイミドとしては、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等を好適に用いることができる。中でも、低吸湿特性の点から、熱可塑性ポリエステルイミドが特に好適に用いられる。
【0034】
また、既存の装置でラミネートが可能であり、かつ得られる金属張積層板の耐熱性を損なわないという点から考えると、本発明における熱可塑性ポリイミドは、150〜300℃の範囲にガラス転移温度(Tg)を有していることが好ましい。なお、Tgは動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により求めることができる。
【0035】
熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸についても、特に限定されるわけではなく、公知のあらゆるポリアミド酸を用いることができる。その製造に関しても、公知の原料や反応条件等を用いることができる(例えば、後述する実施例参照)。また、必要に応じて無機あるいは有機物のフィラーを添加しても良い。
【0036】
本発明に係る、共押出−流延塗布法とは、高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液と、熱可塑性ポリイミドを含有する溶液若しくは熱可塑性ポリイミドの前駆体を含有する溶液とを、二層以上の押出し成形用ダイスを有する押出成形機へ同時に供給して、前記ダイスの吐出口から両溶液を少なくとも二層の薄膜状体として押出す工程を含むフィルムの製造方法である。一般的に用いられる方法について説明すると、二層以上の押出し成型用ダイスから押出された前記の両溶液を、平滑な支持体上に連続的に押し出し、次いで、前記支持体上の多層の薄膜状体の溶媒の少なくとも一部を揮散せしめることで、自己支持性を有する多層フィルムが得られる。さらに、当該多層フィルムを前記支持体上から剥離し、最後に、当該多層フィルムを高温(250−600℃)で充分に加熱処理することによって、溶媒を実質的に除去すると共にイミド化を進行させることで、目的の接着フィルムが得られる。また、接着層の熔融流動性を改善する目的で、意図的にイミド化率を低くする及び/又は溶媒を残留させてもよい。
【0037】
二層以上の押出し成型用ダイスから押出された高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液と、熱可塑性ポリイミドを含有する溶液若しくは熱可塑性ポリイミドの前駆体を含有する溶液中の溶媒の揮散方法に関しては特に限定されないが、加熱かつ/または送風による方法が最も簡易な方法である。上記加熱の際の温度は、高すぎると溶媒が急激に揮散し、当該揮散の痕が最終的に得られる接着フィルム中に微小欠陥を形成せしめる要因となるため、用いる溶媒の沸点+50℃未満であることが好ましい。
【0038】
上記の二層以上の押出し成形用ダイスとしては各種構造のものが使用できるが、、例えば複数層用フィルム作成用のTダイス等が使用できる。また、従来既知のあらゆる構造のものを好適に使用可能であるが、特に好適に使用可能なものとして、フィードブロックTダイスやマルチマニホールドTダイスが例示される。
【0039】
ここで、本発明に係る接着フィルムの製造方法は、高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液、かつ/または、熱可塑性ポリイミドを含有する溶液若しくは熱可塑性ポリイミドの前駆体を含有する溶液中に、化学脱水剤及び触媒を含有せしめることが必須である(この様な方法を、以下化学キュア法と呼ぶ。)。一般的にポリイミドは、ポリイミドの前駆体、即ちポリアミド酸からの脱水転化反応により得られ、当該転化反応を行う方法としては、熱によってのみ行う熱キュア法と、化学脱水剤を使用する化学キュア法の2法が知られている。本発明の様に、化学キュア法を使用することにより、熱キュア法に比して、ポリイミド樹脂の製造に際し、飛躍的に高い生産性を付与することが可能となる。
【0040】
本発明に係る化学脱水剤としては、各種ポリアミド酸に対する脱水閉環剤が使用できるが、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物を好ましく用いることができる。その中でも特に、脂肪族酸無水物及び芳香族酸無水物が良好に作用する。また、触媒とは、ポリアミド酸に対する化学脱水剤の脱水閉環作用を促進する効果を有する成分を広く示すが、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンを用いることができる。そのうち、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、キノリン、またはβ−ピコリンなどの含窒素複素環化合物であることが特に好ましい。
【0041】
化学脱水剤の好ましい量は、化学脱水剤及び触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.5〜5モル、好ましくは0.7〜4モルである。また、触媒の好ましい量は、化学脱水剤及び触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜3モル、好ましくは0.2〜2モルである。脱水剤及び触媒が上記範囲を下回ると化学的イミド化が不十分で、焼成途中で破断したり、機械的強度が低下したりすることがある。また、これらの量が上記範囲を上回ると、イミド化の進行が早くなりすぎ、フィルム状にキャストすることが困難となることがあるため好ましくない。
【0042】
最終的に得られる接着フィルムは、ラミネート法により金属箔を少なくとも片側表面に接着せしめることが、好ましい実施の形態の一つである。従って、金属箔を少なくとも片側表面に接着させた形態、即ち、フレキシブル金属張積層板に加工した際の、寸法安定性を考慮すると、接着フィルムの熱膨張係数を以下のように制御することが好ましい。
1. 50〜200℃における熱膨張係数が4〜30ppm/℃、好ましくは6〜25ppm/℃、特に好ましくは8〜22ppm/℃
ポリイミドフィルムの熱膨張係数が上記範囲を上回る場合、接着層を設けて接着フィルムとした際の熱膨張係数が金属箔よりも大きくなりすぎるため、ラミネート時の接着フィルムと金属箔の熱挙動の差が大きくなり、得られるフレキシブル金属張積層板の寸法変化が大きくなる場合がある。熱膨張係数が上記範囲を下回る場合、逆に接着フィルムの熱膨張係数が金属箔よりも小さくなりすぎるため、やはりラミネート時の熱挙動の差が大きくなり、得られるフレキシブル金属張積層板の寸法変化が大きくなる場合がある。
【0043】
接着フィルム各層の厚み構成については、用途に応じた総厚みになるように適宜調整すれば良いが、得られる接着フィルムの長手方向及び幅方向の引張弾性率が、5.0〜11GPa、好ましくは5.5〜10GPaとなるようにすることが好ましい。引張弾性率が上記範囲を下回る場合、ラミネート時において張力の影響を受けやすくなるため、MD方向とTD方向で異なる熱応力が発生し、得られるフレキシブル金属張積層板の寸法変化が大きくなる場合がある。逆に引張弾性率が上記範囲を上回る場合、得られるフレキシブル金属張積層板の屈曲性に劣る場合がある。一般的に、高耐熱性ポリイミド層よりも接着層の引張弾性率の方が小さいため、接着層の厚み比率が増えるに従って、接着フィルムの引張弾性率が低下する傾向にある。
【0044】
また、接着フィルムの熱膨張係数と、貼り合わせる金属箔の熱膨張係数の差が大きくなると、貼り合わせ時の膨張・収縮の挙動の差が大きくなるため、得られるフレキシブル金属張積層板に歪みが残留し、金属箔除去後の寸法変化率が大きくなる場合がある。接着フィルムの熱膨張係数は、200〜300℃における値が、金属箔の熱膨張係数±6ppm/℃の範囲となるように調整することが好ましい。接着フィルムの熱膨張係数は、高耐熱性ポリイミド層と接着層の厚み比率を変更することにより、調整することが可能である。
【0045】
上記の金属箔としては特に限定されるものではないが、電子機器・電気機器用途に本発明のフレキシブル金属張積層板を用いる場合には、例えば、銅若しくは銅合金、ステンレス鋼若しくはその合金、ニッケル若しくはニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる箔を挙げることができる。一般的なフレキシブル金属張積層板では、圧延銅箔、電解銅箔といった銅箔が多用されるが、本発明においても好ましく用いることができる。なお、これらの金属箔の表面には、防錆層や耐熱層あるいは接着層が塗布されていてもよい。
【実施例】
【0046】
次に、本発明に係る接着フィルムの製造方法を実施例により詳しく説明する。
【0047】
(合成例1;高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の合成)
10℃に冷却したN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)239kgに4,4’−オキシジアニリン(以下、ODAともいう)6.9kg、p−フェニレンジアミン(以下、p−PDAともいう)6.2kg、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、BAPPともいう)9.4kgを溶解した後、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAともいう)10.4kgを添加し1時間撹拌して溶解させた。ここに、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAともいう)20.3kgを添加し1時間撹拌させて溶解させた。
【0048】
別途調製しておいたPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=0.9kg:7.0kg)を上記反応液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度18重量%、23℃での回転粘度が3500ポイズの、高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を得た。
【0049】
(合成例2;高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の合成)
10℃に冷却したDMF239kgにODAを12.6kg、p−PDAを6.8kg溶解した後、PMDAを15.6kg添加し1時間撹拌させて溶解させた。続いて、BTDAを12.2kg添加し1時間撹拌させて溶解させた。ここに、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下、TMHQともいう)5.8kgを添加し、2時間撹拌して溶解させた。
【0050】
別途調製しておいたPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=0.9kg:7.0kg)を上記反応液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度18重量%、23℃での回転粘度が3500ポイズの、高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を得た。
【0051】
(合成例3;高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の合成)
10℃に冷却したDMF221kgにODA4.9kg、4,4’−ジアミノベンズアニリド(以下、DABAともいう)22.3kgを溶解した後、PMDA26.0kgを添加し1時間撹拌して溶解させた。
【0052】
別途調製しておいたPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=0.80kg:10.0kg)を上記反応液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度18重量%、23℃での回転粘度が3500ポイズの、高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を得た。
【0053】
(合成例4;高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の合成)
10℃に冷却したDMF187kgにODA21.1kgを溶解した後、PMDA30.6kgを添加し1時間撹拌して溶解させた。ここに、p−PDA3.78kgを添加し1時間撹拌させて溶解させた。
【0054】
別途調製しておいたp−PDAのDMF溶液(PMDA:DMF=3.78kg:38.0kg)を上記反応液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度18重量%、23℃での回転粘度が3400ポイズの高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を得た。
【0055】
(合成例5;高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の合成)
10℃に冷却したDMF236kgにODA25.8kgを溶解した後、PMDA27.4kgを添加し1時間撹拌して溶解させた。
【0056】
別途調製しておいたPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=0.90kg:10.2kg)を上記反応液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度18重量%、23℃での回転粘度が3400ポイズの、高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を得た。
【0057】
(合成例6;熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを780g、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン(以下、BAPSともいう。)を117.2g加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAともいう。)を71.7g徐々に添加した。続いて、3,3’,4,4’−エチレングリコールジベンゾエートテトラカルボン酸二無水物(以下、TMEGともいう。)を5.6g添加し、氷浴下で30分間撹拌した。5.5gのTMEGを20gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が3000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を得た。
【0058】
(合成例7;熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを780g、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)を115.6g加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を78.7g徐々に添加した。続いて、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMEG)を3.8g添加し、氷浴下で30分間撹拌した。2.0gのTMEGを20gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が3000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を得た。
【0059】
(実施例1)
合成例1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液に、以下の化学脱水剤及び触媒を含有せしめた。
1.化学脱水剤:無水酢酸を高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して2モル
2.触媒:イソキノリンを高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して1モル
更に、合成例6で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液に、以下の化学脱水剤及び触媒を含有せしめた。
1.化学脱水剤:無水酢酸を熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して2モル
2.触媒:イソキノリンを熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して2モル
次いで、3層マルチマニホールドTダイスから、外層が熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液、内層が高耐熱性ポリイミド溶液の前駆体のポリアミド酸溶液となる順番で、各ポリアミド酸溶液を連続的に押出して、当該Tダイスの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を130℃×100秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、300℃×30秒、400℃×50秒、450℃×10秒で乾燥・イミド化させ、各熱可塑性ポリイミド層4μm、高耐熱性ポリイミド層17μmの接着フィルムを得た。
【0060】
(実施例3)
合成例1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を用いる代わりに、合成例3で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を用いることを除いて、実施例1と同様の手順で接着フィルムを作成した。
【0061】
(実施例4)
合成例1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を用いる代わりに、合成例4で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を用いることを除いて、実施例1と同様の手順で接着フィルムを作成した。
【0062】
(実施例5)
合成例1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を用いる代わりに、合成例5で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を用いることを除いて、実施例1と同様の手順で接着フィルムを作成した。
【0063】
(実施例6)
合成例6で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を用いる代わりに、合成例7で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を用いることを除いて、実施例1と同様の手順で接着フィルムを作成した。
【0064】
(実施例7)
合成例1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液に、以下の触媒を含有せしめた。
1.触媒:イソキノリンを高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して1モル
更に、合成例6で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液に、以下の化学脱水剤及び触媒を含有せしめた。
1.化学脱水剤:無水酢酸を熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して3モル
2.触媒:イソキノリンを熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して2モル
以下、実施例1と同様の手順で接着フィルムを作成した。高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液には化学脱水剤を含有せしめていなかったが、熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液から沁み出した化学脱水剤の作用により、高耐熱性ポリイミドの前駆体も十分に自己支持性のゲル膜に転化したものと推定される。
【0065】
(実施例8)
合成例1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液に、以下の化学脱水剤及び触媒を含有せしめた。
1.化学脱水剤:無水酢酸を高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して3モル
2.触媒:イソキノリンを高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して1モル
更に、合成例6で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液に、以下の触媒を含有せしめた。
1.触媒:イソキノリンを熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して2モル
以下、実施例1と同様の手順で接着フィルムを作成した。熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液には化学脱水剤を含有せしめていなかったが、高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液から沁み出した化学脱水剤の作用により、熱可塑性ポリイミドの前駆体も十分に自己支持性のゲル膜に転化したものと推定される。
【0066】
(比較例1)
各ポリアミド酸溶液中に、化学脱水剤及び触媒を混合しないことを除いて、実施例1と同様に接着フィルムを作成しようと試みた。しかしながら、この樹脂膜を130℃×100秒で加熱した後、当該樹脂膜はまだ流動性を有しており自己支持性のゲル膜にならず、エンドレスベルトからゲル膜を引き剥がすことができなかった。そのため、実施例1と同一の条件では、接着フィルムは得られなかった。
【0067】
(比較例2)
合成例1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液と、合成例6で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を、3層マルチマニホールドTダイスから、外層が熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液、内層が高耐熱性ポリイミド溶液の前駆体のポリアミド酸溶液となる順番で、各ポリアミド酸溶液を連続的に押出して、当該Tダイスの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を130℃×500秒で加熱した後、当該樹脂膜はまだ流動性を有しており自己支持性のゲル膜にならず、エンドレスベルトからゲル膜を引き剥がすことができなかった。そのため、実施例1と同一の条件では、接着フィルムは得られなかった。
【0068】
(比較例3)
合成例1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液と、合成例6で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を、3層マルチマニホールドTダイスから、外層が熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液、内層が高耐熱性ポリイミド溶液の前駆体のポリアミド酸溶液となる順番で、各ポリアミド酸溶液を連続的に押出して、当該Tダイスの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を130℃×600秒で加熱した後、エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、300℃×300秒、400℃×300秒、450℃×60秒(加熱時間:計1260秒)で乾燥・イミド化させることで、目的の接着フィルムを得た。しかしながら、得られた接着フィルムには無数のクラックが入っており、当該接着フィルムは、二層FPC用の接着フィルムとして使用不可能であった。
【0069】
(比較例4)
合成例1で得られた高耐熱性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液と、合成例6で得られた熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を、3層マルチマニホールドTダイスから、外層が熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液、内層が高耐熱性ポリイミド溶液の前駆体のポリアミド酸溶液となる順番で、各ポリアミド酸溶液を連続的に押出して、当該Tダイスの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を130℃×600秒で加熱した後、エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、200℃×300秒、300℃×300秒、400℃×300秒、450℃×60秒(加熱時間:計1560秒)で乾燥・イミド化させることで、目的の接着フィルムを得た。
【0070】
上記の如く、実施例の接着フィルムの製造方法は、比較例の接着フィルムの製造方法に対して極めて短い製造時間で接着フィルムを提供可能である。
【0071】
以上、本発明に係る接着フィルムの製造方法について説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではない。例示するまでもなく記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
接着フィルムの製造の際に化学脱水剤及び触媒を用いることにより、従来の熱キュア法による共押出−流延塗布法に比べ、接着フィルムの生産性を、飛躍的に向上せしめることができ、ひいては、接着フィルムを安価に提供可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共押出−流延塗布法により、高耐熱性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を積層して接着フィルムを製造する方法であって、高耐熱性ポリイミドの前駆体溶液、かつ/または、熱可塑性ポリイミドを含有する溶液若しくは熱可塑性ポリイミドの前駆体を含有する溶液中に、化学脱水剤及び触媒を含有せしめることを特徴とする、接着フィルムの製造方法。
【請求項2】
化学脱水剤及び触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.5〜5モル化学脱水剤を含有せしめることを特徴とする、請求項1に記載の接着フィルムの製造方法。
【請求項3】
化学脱水剤及び触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜3モル触媒を含有せしめることを特徴とする、請求項1に記載の接着フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2013−32532(P2013−32532A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210020(P2012−210020)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2006−513521(P2006−513521)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】