説明

接着剤組成物、その製造方法、その硬化物、及びこれを用いた電子デバイス

【課題】少量でも所望の量を安定に塗布可能な、信頼性の高い接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)融点が25℃以下のエポキシ樹脂と、(B)重量平均粒子径が0.1〜3.0μmでありガラス転移温度が−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から成るコア20〜80重量%、及びガラス転移温度が70℃以上の(メタ)アクリレート系重合体から成るシェル80〜20重量%から構成され、軟化点が70℃以上のコアシェル型粉末状重合体と、(C)エポキシ樹脂用潜在型硬化剤とを含有し、前記(B)成分の含有量が前記(A)成分100重量部当たり10〜100重量部の範囲にあり、E型粘度計で測定される25℃、2.5rpmでの粘度が0.1〜500Pa・sであり、かつ25℃、100Paの真空度下で2分間放置後に直径1mm以上の気泡が発生しない、接着剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、その製造方法、その硬化物、及びこれを用いた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化が求められており、半導体素子も小型化している。これに伴い、半導体素子の固定に用いる接着剤組成物には、少量で十分な接着強度を有することが求められている。このような接着剤組成物の塗布は、通常ディスペンサー等により行われ、その塗布量が制御されている。
【0003】
ここで、半導体素子の接着に用いられる接着剤組成物は、耐衝撃性の向上や粘度調整を目的として、各種フィラーやゴム等の粉体成分を含み、その製造の際には、各種混練が行われる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−65391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粉体成分を含む場合、混練の際に接着剤組成物中に空気が取り込まれやすく、混練後の接着剤組成物中に気泡が内包されることとなる。接着剤組成物中に気泡を含む場合、ディスペンス時に接着剤組成物と共に空気が吐出され、接着剤組成物の塗布量を精密に制御できない。これにより、塗布された接着剤組成物の塗布量が不足して所望の接着強度が得られない場合が生じるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、少量でも所望の量を安定に塗布可能な、信頼性の高い接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の通り、接着剤を安定した塗布量で供給するためには接着剤中の気泡が少ないことが重要である。
本発明者らは、接着剤組成物の脱泡方法、及び接着剤組成物中に内包される気泡の量について検討し、所定の条件下で気泡が生じない接着剤組成物であれば、ディスペンス後の塗布量が均一となり、信頼性の高い接着剤組成物とできることを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明の第1は接着剤組成物に関する。
[1](A)融点が25℃以下のエポキシ樹脂と、(B)重量平均粒子径が0.1〜3.0μmでありガラス転移温度が−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から成るコア20〜80重量%、及びガラス転移温度が70℃以上の(メタ)アクリレート系重合体から成るシェル80〜20重量%から構成され、軟化点が70℃以上のコアシェル型粉末状重合体と、(C)エポキシ樹脂用潜在型硬化剤とを含有し、前記(B)成分の含有量が前記(A)成分100重量部当たり10〜100重量部の範囲にあり、E型粘度計で測定される25℃、2.5rpmでの粘度が0.1〜500Pa・sであり、かつ25℃、100Paの真空度下で2分間放置後に直径1mm以上の気泡が発生しない、接着剤組成物。
[2]前記(B)成分が、(メタ)アクリレート系単量体と架橋性単量体とを重合させて得られる、ガラス転移温度が−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から成るコアと、(メタ)アクリレート系単量体と、架橋性単量体と、必要に応じてこれらと共重合可能な単量体とをグラフト共重合させて得られる、ガラス転移温度が70℃以上の(メタ)アクリレート系共重合体からなり、平均厚さが50Å以上のシェルとからなる[1]に記載の接着剤組成物。
[3]前記(C)成分が、イミダゾール系硬化促進剤、又はアミノウレア系硬化促進剤であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]前記イミダゾール系硬化促進剤が、マイクロカプセル型であることを特徴とする[3]に記載の接着剤組成物。
[5]205℃で5秒間加熱硬化した後のせん断接着強度が2×10Pa以上である[1]〜[4]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[6]半導体チップの接着に用いられる[1]〜[5]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の接着剤組成物の製造方法であって、前記エポキシ樹脂と、前記コアシェル型粉末状重合体と、前記エポキシ樹脂用潜在型硬化剤とを混合した後、自転公転型攪拌機により脱泡処理する接着剤組成物の製造方法。
[8][1]〜[6]のいずれかに記載の接着剤組成物を硬化させた、接着剤組成物の硬化物。
[9][1]〜[6]のいずれかに記載の接着剤組成物により接着された半導体素子を含む電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少量でも所望の量を安定に塗布可能な、信頼性の高い接着剤組成物とすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.接着剤組成物
本発明の接着剤組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)コアシェル型粉末状重合体と、(C)エポキシ樹脂用潜在型硬化剤とを含有し、必要に応じて、例えばフィラーや熱可塑性ポリマー微粒子、各種添加剤等を含有する。
【0011】
本発明の接着剤組成物のE型粘度計で測定される25℃、2.5rpmでの粘度は、0.1〜500Pa・s、好ましくは5〜200Pa・sである。下限値未満では、接着剤組成物を塗布した際に流れやすく、接着剤組成物を所望の範囲のみに塗布することが困難となる。一方、上限値を超える場合には、接着剤組成物の脱泡処理時に気泡が抜けにくく、製造効率の面から好ましくない。
【0012】
また、本発明の接着剤組成物は、25℃、100Paの真空度下で2分間放置後に直径1mm以上の気泡が発生しない。このような条件下で気泡が発生しない接着剤組成物であれば、接着剤組成物組成物に殆ど気泡が内包されておらず、接着剤組成物を少量ずつ塗布した際にも、その塗布量を安定させることが可能となる。なお、気泡の発生は目視にて観察する。
【0013】
また、本発明の接着剤組成物は、205℃で5秒間加熱硬化した後のせん断接着強度が2×10Pa以上であることが好ましく、2.5×10Pa以上であることがより好ましい。せん断接着強度を2×10Pa以上とすることにより、本発明の接着剤組成物を、種々の用途に使用可能となる。せん断接着強度はJIS K6850に従い、引張試験機によって測定する。
【0014】
1−1.(A)エポキシ樹脂
本発明の接着剤組成物におけるエポキシ樹脂は、融点が25℃以下、すなわち室温で液状の樹脂であり、加熱によりエポキシ樹脂用潜在型硬化剤と反応して硬化する。
【0015】
このようなエポキシ樹脂としては、1分子中に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限はない。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等で代表される芳香族ジオール類およびそれらをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール変性したジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物(以下、例えばビスフェノールAを原料としたものは「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」のように表記する。);フェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂;ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等で代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;キシリレンフェノール樹脂のグリシジルエーテル化合物類等が含まれる。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
これらのうち好ましくは、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が含まれる。
なお、融点が25℃以上のエポキシ樹脂も、配合後の接着剤組成物が液体であり、取り扱いに支障がない程度であれば、各種特性の調整のために併用可能である。
【0017】
エポキシ樹脂は、接着剤組成物100重量部当たり、30〜90重量部含有されることが好ましく、より好ましくは40〜80重量部である。エポキシ樹脂が上記範囲含有されることにより、接着剤組成物の接着強度が十分となる。
【0018】
1−2.(B)コアシェル型粉末状重合体
コアシェル型粉末状重合体は、接着剤組成物の硬化物の耐衝撃性、及び加熱硬化時の形状保持性を向上させること等を目的として添加する。本発明の接着剤組成物は、コアシェル型粉末状重合体を含有することから、接着剤組成物が熱硬化(本硬化)する温度より低い温度で、非粘着状態または粘着状態で固化する性質(疑似硬化性)を示す。
【0019】
接着剤組成物を塗布する被接着物の種類によっては、接着剤組成物の塗布後、接着剤組成物の本硬化前に、被接着物の折り曲げ、切断、脱脂洗浄、酸処理等、各種加工処理が必要となる。しかしながら、接着剤組成物が未硬化の状態で上記加工処理を行うと、加工処理中に接着剤組成物が脱落、飛散したり、処理液中に接着剤組成物が溶出する等の問題がある。
【0020】
一方、本発明の接着剤組成物では、接着剤組成物が疑似硬化性を有するため、接着剤組成物を被接着物に塗布した後、短時間の加熱を行うことによって接着剤組成物を疑似硬化(固化)させることができ、加工処理の際、接着剤組成物の脱落や飛散、溶出等が生じることがない。また接着剤組成物を疑似硬化させることにより、余剰の接着剤組成物の除去も容易となる。
【0021】
コアシェル型粉末状重合体は、粉末状であり、接着剤組成物中に分散して用いられる。
本発明の接着剤組成物におけるコアシェル型粉末状重合体は、重量平均粒子径が0.1〜3.0μmの範囲でありガラス転移温度が−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から成るコア20〜80重量%と、ガラス転移温度が70℃以上の(メタ)アクリレート系重合体から成るシェル80〜20重量%とから構成される。
【0022】
コアシェル型粉末状重合体はその軟化点が70℃以上、好ましくは80℃〜150℃である。軟化点が70℃未満であると、接着剤組成物中での保存安定性が不十分であり、接着剤組成物の塗布時にノズルの詰まり等を生じる可能性がある。
【0023】
コアシェル型粉末状重合体のコアは、ガラス転移温度が−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から構成される。ガラス転移温度が−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から構成されるコアを有することにより、コアシェル型粉末状重合体が外部からの応力を吸収する働きをし、接着剤組成物の硬化物の耐衝撃強度が大幅に向上する。
【0024】
コアを構成する(メタ)アクリレート系重合体は、(メタ)アクリレート系単量体と架橋性単量体とを共重合させて得られるものが好ましい。
(メタ)アクリレート系単量体は、アルキル基の炭素数が2〜8の(メタ)アクリレート系単量体であることが好ましく、例えばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどが用いられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、架橋性単量体としては、2個以上の反応性が実質上等しい二重結合を有する単量体が挙げられる。例として、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールメタクリレート、オリゴエチレンジアクリレート、オリゴエチレンジメタクリレート、ジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニル単量体、トリメリット酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらの架橋性単量体はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、コアの形成に用いる単量体全重量に基づき、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲とする。
【0026】
コアを構成する(メタ)アクリレート系重合体には、前記(メタ)アクリレート系単量体及び架橋性単量体とともに、必要に応じ、(メタ)アクリレート系単量体及び架橋性単量体と共重合可能な他の単量体を用いることも可能である。他の単量体の量は、コアに用いる単量体全重量に基づき、通常50重量%以下とする。
【0027】
コアの重量平均粒子径は、0.1〜3.0μmの範囲とされる。コア粒子の粒子径が0.1μm未満の場合、同一重量では表面積が大きくなるために、接着剤組成物中での分散性が低下し、コアシェル型粉末状重合体を含有する粘着剤組成物の保存安定性、及び接着剤組成物の硬化物の機械的強度が顕著に低下する。一方、コア粒子の粒子径が3.0μmを超える場合、接着剤組成物の硬化物のせん断接着強度や、剥離強度が低下する可能性がある。重量平均粒子径は、光散乱測定法により特定する。
【0028】
コアシェル型粉末状重合体のシェルは、ガラス転移温度が70℃以上の(メタ)アクリレート系重合体から成る。シェルのガラス転移温度が70℃未満では接着剤組成物とした際、保存安定性が不十分となる可能性がある。
【0029】
シェルを構成する(メタ)アクリレート系重合体は、(メタ)アクリレート系単量体と、架橋性単量体と、必要に応じてこれらと共重合可能な単量体とをグラフト共重合させて得られるものが好ましい。(メタ)アクリレート系単量体としては、炭素数が1〜4である(メタ)アクリレート系単量体を1種単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリレート系単量体としては、例えばエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどが挙げられ、これらは1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で特にメチルメタクリレートが好適である。
【0030】
また、架橋性単量体、及び必要に応じて用いられる他の単量体としては、上記コアに用いるものと同様とすることができる。
架橋性単量体の使用量は、シェルに含まれる単量体の全重量に基づき、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲とする。また、他の単量体の使用量は、通常50重量%以下とする。
【0031】
シェルの平均厚みは50Å以上とする。シェルの厚みが50Å未満ではシェルによるコアの被覆性が十分でなく、コアが露出し、接着剤組成物の保存安定性が低下する可能性がある。
【0032】
上記コアシェル型粉末状重合体は、2段階の連続した多段シード乳化重合法により製造することができる。また、1段目で調製したシードラテックスをソルベント凝固などで部分凝集させたのち、その上にグラフト重合させてシェルを形成することも可能である。
【0033】
コアシェル型粉末状重合体の含有量は、前記(A)エポキシ樹脂100重量部当たり10〜100重量部の範囲とされ、好ましくは10〜50重量部の範囲とする。コアシェル型粉末状重合体の含有量が下限値未満では、接着剤組成物の硬化物の耐衝撃性が十分とならない可能性がある。一方、上限値を超えると、接着剤組成物の粘度が著しく高くなり、取り扱い性が低下する。
【0034】
1−3.(C)エポキシ樹脂用潜在型硬化剤
本発明におけるエポキシ樹脂用潜在型硬化剤とは、(A)エポキシ樹脂に混合されていても、接着剤組成物を通常保存する室温下では(A)エポキシ樹脂のエポキシ基とほとんど反応しないが、熱を与えることによってエポキシ基の反応活性を呈する硬化剤を意味する。
【0035】
本発明では、エポキシ樹脂用潜在型硬化剤は、70℃以上でエポキシ基の反応活性を呈する硬化剤が好ましく、より好ましくは80〜120℃である。このような温度で反応活性を呈するエポキシ樹脂用潜在型硬化剤を用いることにより、接着剤組成物の保存安定性を良好なものとできる。また接着剤組成物の脱泡処理時に接着剤組成物の温度が上昇した場合であっても、接着剤組成物が固化してしまうことを防ぐことができる。
【0036】
(C)エポキシ樹脂用潜在型熱硬化剤は特に限定されないが、イミダゾール型硬化促進剤、又はアミノウレア系硬化促進剤を用いることが好ましい。
イミダゾール型硬化促進剤の例としては、2−フェニルイミダゾール(四国化成製・商品名「キュアゾール2PZ」)、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチルイミダゾリル−(1’)]−エチルトリアジン(四国化成製・商品名「キュアゾール2E4MZ−A」)等が挙げられる。
またアミノウレア型硬化促進剤としては、PTIジャパン製・商品名「オミキュアー94」、商品名「オミキュアー52」、富士化成製・商品名「フジキュアFXE−1030」等のアミン、尿素とイソシアネートを反応させて得られるウレア結合を有するアミノウレア系化合物が挙げられる。
【0037】
また(C)エポキシ樹脂用潜在型熱硬化剤として、より好ましくは、マイクロカプセル型の硬化促進剤が挙げられる。マイクロカプセル型の硬化促進剤は、マイクロカプセルの中に、硬化促進剤が封入されており、加熱によりマイクロカプセルが破壊され、硬化促進剤が接着剤組成物中に拡散してエポキシ樹脂(A)の反応活性を呈する。
【0038】
マイクロカプセルの中に封入される硬化促進剤としては、例えばアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤、ハロゲン化ホウ素塩系硬化剤、四級アンモニウム塩系硬化剤、尿素系硬化剤、ホスフィン系硬化剤等が挙げられる。本発明においては特にアミン系硬化剤が好ましく、中でもイミダゾール系硬化剤が好ましい。
【0039】
封入される硬化促進剤のメジアン径で定義される平均粒径は0.3μm超12μm以下が好ましい。より好ましくは1〜10μm、より好ましくは1.5〜5μmである。粒径が12μmを超えると、個々のマイクロカプセルに封入される硬化促進剤の量が多くなり、接着剤組成物中のエポキシ樹脂を均質に硬化させることが困難となる。一方、粒径が0.3μmより小さいと、カプセル膜の形成が困難となり、接着剤組成物の保存安定性が低下し、またマイクロカプセル型の硬化促進剤の耐溶剤性を損なうことがある。
【0040】
また、上記硬化促進剤を封入するためのマイクロカプセルとしては、保存時の接着剤組成物中の安定性と、加熱による活性発現のバランスの点から高分子化合物からなるものが好ましい。マイクロカプセルに用いられる高分子化合物としては、例えば、ポリウレタン化合物、ポリウレタンウレア化合物、ポリウレア化合物、ポリビニル化合物やメラミン化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂から得られる高分子化合物が例示される。
【0041】
なお、マイクロカプセル型の硬化促進剤は、通常エポキシ樹脂に分散されたペーストとして提供される。
【0042】
エポキシ樹脂用潜在型硬化剤は、前記(A)エポキシ樹脂100重量部当たり1〜50重量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。エポキシ樹脂用潜在型硬化剤の量をこのような範囲とすることにより、(A)エポキシ樹脂の硬化を十分に促進させることが可能となり、接着剤組成物の硬化物の強度を十分なものとすることができる。
【0043】
1−4.フィラー
本発明の接着剤組成物には、接着剤組成物の粘度制御、接着剤組成物の硬化物の強度向上や線膨張性制御等を目的としてフィラーを配合してもよい。
フィラーの種類は、特に制限はなく、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機フィラーを用いることができる。
【0044】
また、有機フィラーとして、環球法(JACT試験法:RS−2)による軟化点温度が120℃を超えるポリマー粒子を配合してもよい。これらの例には、ポリスチレンおよびこれと共重合可能なモノマー類を共重合した共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子等が含まれる。
【0045】
上記フィラーの形状は特に限定されず、球状、板状、針状等の定形状あるいは非定形状のいずれであってもよい。フィラーは平均一次粒子径が1.5μm以下であることが好ましい。またその比表面積は、1m/g〜500m/gであることが好ましい。
フィラーの平均一次粒子径は、JIS Z8825−1に記載のレーザー回折法で測定できる。また、比表面積測定は、JIS Z8830に記載のBET法により測定できる。
【0046】
フィラーを配合する場合には、接着剤組成物中に30重量%以下配合することが好ましい。フィラーの含有量が、上限値を超えると、接着剤組成物の製造時に取り込まれる気泡の量が増えるだけでなく、接着剤組成物の粘度が上昇し、接着剤組成物の脱泡処理の効率が低下する。
【0047】
1−5.熱可塑性ポリマー微粒子
本発明の接着剤組成物中には、必要に応じて、環球法により測定される軟化点温度が50〜120℃、好ましくは70〜100℃の熱可塑性ポリマーを含み、かつ数平均粒子径が0.05〜5μm、好ましくは0.1〜3μmである熱可塑性ポリマー微粒子を配合してもよい。接着剤組成物中に、熱可塑性ポリマー微粒子を含有することにより、接着剤組成物の硬化物の耐衝撃性を向上させることができる。また、数平均粒子径を上限値以下とすることにより、熱可塑性ポリマー微粒子によって、接着剤組成物の粘度が上昇することを防ぐことができる。数平均粒子径の測定方法は、乾式粒度分布計で特定可能である。
【0048】
熱可塑性ポリマー微粒子としては、例えばエポキシ基と二重結合基とを含む樹脂を、ラジカル重合可能なモノマーと懸濁重合して得られる微粒子が挙げられる。エポキシ基と二重結合基とを含む樹脂の例には、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とメタアクリル酸を三級アミン存在下で反応させた樹脂が含まれる。ラジカル重合可能なモノマーの例には、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびジビニルベンゼンが含まれる。
【0049】
熱可塑性ポリマー微粒子の配合量は、接着剤組成物100質量部に対して、1〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。このような範囲とすることにより、熱可塑性ポリマー微粒子が接着剤組成物の硬化物の耐衝撃性を向上させることができる。
【0050】
1−6.その他の添加剤
本発明の接着剤組成物は、必要に応じてさらに、シランカップリング剤等のカップリング剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0051】
1−7.接着剤組成物の製造方法
本発明の接着剤組成物は、上記(A)エポキシ樹脂、(B)コアシェル型粉末状重合体、及び(C)エポキシ樹脂用潜在型硬化剤と、必要に応じてフィラーや熱可塑性ポリマー微粒子、各種添加剤等を混合した後、脱泡処理を行うことにより得られる。
【0052】
上記各成分は、全成分を一時に混合してもよく、また数回にわけて混合してもよい。混合方法は特に限定されないが、例えば、双腕式攪拌機、ロール混練機、2軸押出機、ボールミル混練機、遊星式撹拌機等の公知の混練機械を用いて行うことができる。接着剤組成物をゲル化させることなく均一に混練するために、混練温度は25〜35℃に設定されることが好ましい。
【0053】
各成分を均一に混合した後、脱泡処理を行う。従来の接着剤組成物では、真空減圧処理や、振動処理によりを行うことにより、脱泡を行うことも行われているが、これらの方法では、脱泡に時間がかかり、脱泡を確実に行うことができない可能性がある。そこで、本発明の接着剤組成物の脱泡処理は、減圧条件下で自転公転型攪拌機により攪拌することが好ましい。自転公転型攪拌機を用いる場合、機械摩擦熱及び攪拌による蓄熱等により接着剤組成物の温度が上昇し、接着剤組成物の粘度が低下するため、脱泡を行いやすい。ただし、上述の(C)エポキシ樹脂用潜在型硬化剤がエポキシ基の反応活性を呈する温度未満で脱泡処理を行うことが好ましい。具体的には接着剤組成物の温度が50℃未満となるように温度管理しながら脱泡処理を行うことが好ましい。
【0054】
自転公転型攪拌機により脱泡処理する際、減圧度を−0.1MPa以下とすることが好ましい。このような範囲とすることにより、効率よく脱泡処理することができる。
【0055】
自転公転型攪拌機により脱泡処理する際の攪拌スピードは、公転回転数を600〜3000rpmとすることが好ましく、自転回転数200rpm〜1000rpmとすることが好ましい。公転回転数及び自転回転数が下限値未満では、脱泡処理に時間がかかり製造効率の面から好ましくない。一方、上限置を超えると、機械摩擦熱及び攪拌による蓄熱による接着剤組成物の温度上昇が大きくなり、接着剤組成物が硬化してしまう可能性がある。
【0056】
なお、従来の接着剤組成物では、自転公転型攪拌機により脱泡処理を行った場合、攪拌時に生じる機械摩擦熱等により、接着剤組成物温度が上昇し、接着剤組成物が固化するという問題がある。しかしながら、本発明では、(C)エポキシ樹脂用潜在型硬化剤を用いており、特に、マイクロカプセル型のエポキシ樹脂用潜在型硬化剤を用いる場合には、攪拌時に接着剤組成物の温度が上昇したとしても、エポキシ樹脂の硬化が促進されず、十分な脱泡を行うことができる。
【0057】
1−8.接着剤組成物の用途
本発明の接着剤組成物は、1液型の接着剤組成物として、種々の部材の接着に用いることが可能である。特に本発明の接着剤組成物は、気泡を殆ど内在していないことから、少量塗布して接着が行われる用途に適用可能である。具体的には、10mg以下の接着剤組成物を塗布して接着する用途に特に好適である。このような例としては、例えば半導体装置などの電子デバイスにおける半導体素子の接着等が挙げられる。
電子デバイスとしては、例えばセンサー、コンデンサ、スイッチ、リレー等の電子・電気部品を接着する際に好適である。
【実施例】
【0058】
<合成例1>
熱可塑性ポリマー微粒子(アクリルゴム変性エポキシ樹脂)の合成
攪拌機、気体導入管、温度計、冷却管を備えた2000mlの四つ口フラスコ中に、液状エポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポミックR−140P;三井化学(株)製)600g、アクリル酸12g、ジメチルエタノールアミン1g、トルエン50gを加え、空気を導入しながら110℃で5時間反応させ二重結合を導入した。
次にブチルアクリレート350g、グリシジルメタクリレート20g、ジビニルベンゼン1g、アゾビスジメチルバレロニトリル1g、およびアゾビスイソブチロニトリル2gを加え、反応系内に窒素を導入しながら70℃で3時間反応させ、さらに90℃で1時間反応させた。
【0059】
次いで110℃の減圧下で脱トルエンを行い、該組成物を光硬化触媒の存在下に低温で速硬化させ、その硬化物の破断面モルフォロジーを電子顕微鏡で観察して分散ゴム粒子径を測定する方法で得た平均粒子径が0.05μmの微架橋型アクリルゴム微粒子が均一に分散したアクリルゴム変性エポキシ樹脂を得た。
【0060】
<実施例1>
25℃で液状のエポキシ樹脂A(三菱化学社製:YL−983U)30重量部、25℃で液状のエポキシ樹脂B(三井化学社製:VG−3101L(ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂))20重量部、コアシェル型粉末状重合体(ガンツ化成社製:F351G)10重量部、合成例1で得られたアクリルゴム変性エポキシ樹脂9重量部、及びシランカップリング剤(信越化学社製:KBM−403)1重量部を混合し、三本ロールミルで混練した。更に、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤A(旭化成社製:ノバキュアHXA−4922(マイクロカプセル型イミダゾール系硬化促進剤))30重量部を添加して接着剤組成物とした。
【0061】
得られた接着剤組成物を、真空下(100Pa)で自転公転型攪拌機にて攪拌した。所定時間攪拌後に、25℃、100Paの真空度下で2分間放置後、直径1mm以上の気泡が発生しなくなるまで脱泡処理した。気泡の発生は目視により確認した。なお、攪拌機による攪拌時、機械摩擦熱及び攪拌による蓄熱により、接着剤組成物の温度が50℃以上に上昇しないよう管理した。
【0062】
得られた接着剤組成物を、下記の方法により粘度安定性、弾性率、接着強度、及び接着信頼性試験を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(粘度安定性測定方法)
E型粘度計を用い、室温(25℃)、2.5rpmにおける接着剤組成物の初期粘度η1(25℃)を測定した。この接着剤組成物を23℃の恒温槽で24時間保存した後、恒温槽から取り出し、室温(25℃)、1rpmにおける保存後粘度η2(25℃)を測定した。これらの測定値を、下記式(1)に当てはめて粘度上昇率を求めた。式(1)で求められる粘度上昇率が1以上1.2未満を○、1.2超1.5未満を△、1.5以上を×とした。
粘度上昇率=23℃保存後の粘度η2(25℃)/初期粘度η1(25℃)・・(1)
【0064】
(弾性率の測定方法)
接着剤組成物を専用のアプリケータを使用して離型紙上に100μm厚に塗布した。この接着剤組成物を150℃で1時間加熱し、室温まで冷却後、離型紙から剥がし取り、所定を大きさに切り取り、DMS(Dynamic Mechanical Spectrometer)を使用して、引張りモードで弾性率を測定した。
【0065】
(接着強度の測定方法)
JIS K6850に従い、接着強度を測定した。被着体にはSUS304を使用した。被着体に、得られた接着剤組成物を半径10mmの円で塗布した試験片(SUS304)を貼り合わせ、治具で固定した後、150℃で60分加熱し、接着試験片を作製した。この接着試験片を用い、引張試験機(インテスコ社製)にて、せん断接着強度を測定した。接着強度が20MPa以上を○(良好)、10MPa以上20MPa未満の範囲を△(やや劣る)、10MPa未満を×(劣る)とした。
【0066】
(加熱後の形状保持性)
上記接着強度の測定の際、150℃で60分加熱して得た接着試験片における接着剤層の形状保持性を目視で観察した。
加熱前と加熱後の形状で、変化がない場合を○(良好)、接着剤層が広がった場合×(劣る)とした。
【0067】
(接着信頼性試験)
上記の接着強度の測定方法と同様にして作製した接着試験片を85℃、85%Rhで500時間保存し、接着性試験と同様にせん断接着強度を測定した。
また、上記の接着強度の測定方法と同様にして作製した接着試験片をプレッシャークッカーテストし、評価した。具体的には、121℃、2気圧、湿度100%の条件で100時間保存し、接着性試験と同様にせん断接着強度を測定した。
それぞれ、接着強度が20MPa以上を○(良好)、10MPa以上20MPa未満の範囲を△(やや劣る)、10MPa未満を×(劣る)とした。
【0068】
<実施例2>
25℃で液状のエポキシ樹脂Aの量を40重量部、25℃で液状のエポキシ樹脂Bの量を30重量部とし、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤として、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤B(味の素ファインテクノ社製、アミキュアPN−40J)10重量部を用いた以外は実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
【0069】
<実施例3>
25℃で液状のエポキシ樹脂Aの量を35重量部、25℃で液状のエポキシ樹脂Bの量を24重量部とし、アクリルゴム変成エポキシ樹脂を用いなかった以外は実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
【0070】
<実施例4>
25℃で液状のエポキシ樹脂Aの量を50重量部、25℃で液状のエポキシ樹脂Bの量を20重量部とした以外は実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
【0071】
<比較例1>
所定時間攪拌後、25℃、100Paの真空度下で2分間放置後、直径1mm以上の気泡が発生する状態で脱泡処理を終えた以外は実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
【0072】
<比較例2>
所定時間攪拌後、25℃、100Paの真空度下で2分間放置後、直径1mm以上の気泡が発生する状態で脱泡処理を終えた以外は実施例2と同様に接着剤組成物を得た。
【0073】
<比較例3>
所定時間攪拌後、25℃、100Paの真空度下で2分間放置後、直径1mm以上の気泡が発生する状態で脱泡処理を終えた以外は実施例3と同様に接着剤組成物を得た。
【0074】
<比較例4>
所定時間攪拌後、25℃、100Paの真空度下で2分間放置後、直径1mm以上の気泡が発生する状態で脱泡処理を終えた以外は実施例4と同様に接着剤組成物を得た。
【0075】
<比較例5>
25℃で液状のエポキシ樹脂Aの量を35重量部、25℃で液状のエポキシ樹脂Bの量を25重量部とし、コアシェル型粉末状重合体を用いなかった以外は実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
【0076】
<比較例6>
25℃で液状のエポキシ樹脂Aの量を40重量部、25℃で液状のエポキシ樹脂Bの量を30重量部とし、エポキシ樹脂用硬化剤として、エポキシ樹脂用硬化剤C(四国化成社製、2E4MZ)10重量部を用いた以外は実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
【0077】
<比較例7>
接着剤組成物の脱泡方法を、自転公転型攪拌機を使用せず、真空下(100Pa)で1時間静置する方法とした以外は、実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
【0078】
<比較例8>
コアシェル型粉末状重合体に替えて、シリコンゴム(東レダウコーニング社製、E−601)を用いた以外は、実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
【表1】

【0079】
上記結果から、自転公転型攪拌機により、脱泡処理を25℃、100Paの真空度下で2分間放置後、直径1mm以上の気泡が発生しない状態まで行った場合には、高温高湿下に500時間放置後、及びPCT100時間後の接着強度が、優れていた(実施例1〜4)。また特に、マイクロカプセル型のエポキシ樹脂用潜在性硬化剤を用いた場合(実施例1、3、4)には、粘度安定性、接着強度、高温高湿下に500時間放置後、及びPCT100時間後の接着強度のいずれもが優れていた。
【0080】
一方、脱泡処理を上記の状態まで行わなかった場合には、高温高湿下に500時間放置後、及びPCT100時間後の接着強度が低下した(比較例1〜4)。
また、コアシェル型粉末状重合体を用いなかった場合には、脱泡処理を25℃、100Paの真空度下で2分間放置後、直径1mm以上の気泡が発生しない状態まで行っても接着強度が低く、さらに加熱後の形状保持性が低かった(比較例5)。また、コアシェル型粉末状重合体の替わりにシリコンゴムを用いた場合には、加熱後の形状保持性が低かった(比較例8)。
【0081】
エポキシ樹脂用の硬化剤として潜在型ではないものを用いた場合(比較例6)では、粘度安定性が低く、さらに高温高湿下に500時間放置後、及びPCT100時間後の接着強度が低かった。これは、接着剤組成物の脱泡処理時に発生した熱によって硬化剤がエポキシ樹脂と反応したためと推察される。
また、脱泡処理方法として、真空下で放置したのみでは、高温高湿下に500時間放置後、及びPCT100時間後の接着強度が低かった(比較例7)。これは、真空下での放置のみでは、十分に脱泡処理が行割れなかったためであると推察される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の接着剤組成物は、その組成物中に気泡を殆ど含んでおらず、少量ずつ塗布した場合にも、塗布量が変化することがない。したがって、半導体素子の接着等、種々の用途に使用可能な接着剤組成物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)融点が25℃以下のエポキシ樹脂と、
(B)重量平均粒子径が0.1〜3.0μmでありガラス転移温度が−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から成るコア20〜80重量%、及びガラス転移温度が70℃以上の(メタ)アクリレート系重合体から成るシェル80〜20重量%から構成され、軟化点が70℃以上のコアシェル型粉末状重合体と、
(C)エポキシ樹脂用潜在型硬化剤とを含有し、
前記(B)成分の含有量が前記(A)成分100重量部当たり10〜100重量部の範囲にあり、
E型粘度計で測定される25℃、2.5rpmでの粘度が0.1〜500Pa・sであり、
かつ25℃、100Paの真空度下で2分間放置後に直径1mm以上の気泡が発生しない、接着剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、
(メタ)アクリレート系単量体と架橋性単量体とを重合させて得られる、ガラス転移温度が−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から成るコアと、
(メタ)アクリレート系単量体と、架橋性単量体と、必要に応じてこれらと共重合可能な単量体とをグラフト共重合させて得られる、ガラス転移温度が70℃以上の(メタ)アクリレート系共重合体からなり、平均厚さが50Å以上のシェルとからなる請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、イミダゾール系硬化促進剤、又はアミノウレア系硬化促進剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記イミダゾール系硬化促進剤が、マイクロカプセル型であることを特徴とする請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
205℃で5秒間加熱硬化した後のせん断接着強度が2×10Pa以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
半導体チップの接着に用いられる請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物の製造方法であって、
前記エポキシ樹脂と、前記コアシェル型粉末状重合体と、前記エポキシ樹脂用潜在型硬化剤とを混合した後、自転公転型攪拌機により脱泡処理する、接着剤組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物を硬化させた、接着剤組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物により接着された半導体素子を含む電子デバイス。


【公開番号】特開2012−224733(P2012−224733A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93039(P2011−93039)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】