説明

接着状態検査装置及び接着状態検査方法

【課題】被接着物に対する接着物の接着状態の良否の判定ができると共に、接着状態の不良箇所がある場合には、その箇所を容易に特定することが可能な接着状態検査装置及び接着状態検査方法を提供する。
【解決手段】接着状態検査装置11は、本体ケース15に剥離可能に接着された可撓性を有するアルミ蓋16を剥離方向となる一方向に沿って剥離するチャック部20と、該チャック部20によって本体ケース15からアルミ蓋16を剥離する際の負荷を剥離進行状態に合わせて測定する測定部17と、該測定部17によって測定された負荷の測定値と予め設定された判定基準となる閾値とを比較して本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の良否を判定する判定部と、該判定部の判定結果に基づき本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着領域における接着状態の不良箇所を識別可能な表示態様でモニタ23に表示させる出力部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接着物に剥離可能に接着された接着物における剥離時の負荷である剥離強度に基づき被接着物に対する接着物の接着状態を検査するための接着状態検査装置及び接着状態検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば食品容器(被接着物)の開口部に剥離可能に接着されたアルミ蓋(接着物)のシール状態(接着状態)を剥離時の負荷変化に基づき検査する装置として、特許文献1に示すものが知られている。この特許文献1の良否選別装置(接着状態検査装置)では、食品容器の開口部に対して該開口部を閉塞するように接着されているアルミ蓋の中央部を上下移動する押圧頭によって押圧した際の圧力変化を測定し、その測定値を予め設定した標準圧力値と比較することで、食品容器に対するアルミ蓋のシール状態の良否を判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−231976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の良否選別装置では、アルミ蓋の中央部のみを押圧頭によって押圧し続けた際の圧力変化を測定しているため、その測定値は食品容器とアルミ蓋との間の接着領域全体での合計値を示すものとなる。したがって、かかる合計の測定値によっては、食品容器に対するアルミ蓋全体としてのシール状態の良否は判定できるが、食品容器に対するアルミ蓋の接着領域の一部にシール状態の悪い部分があっても、それが接着領域全体のうちでどこであるかを特定することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、被接着物に対する接着物の接着状態の良否の判定ができると共に、接着状態の不良箇所がある場合には、その箇所を容易に特定することが可能な接着状態検査装置及び接着状態検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、接着状態検査装置に係る請求項1に記載の発明は、被接着物に剥離可能に接着された可撓性を有する接着物を剥離方向となる一方向に向けて剥離する剥離手段と、該剥離手段によって前記被接着物から前記接着物を剥離する際の負荷を剥離進行状態に合わせて測定する測定手段と、該測定手段によって測定された前記負荷の測定値と予め設定された判定基準となる閾値とを比較して前記被接着物に対する前記接着物の接着状態の良否を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に基づき前記被接着物に対する前記接着物の接着領域内における前記接着状態の不良箇所を識別可能な表示態様で出力手段から出力させる制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、被接着物に対する接着物の接着状態が不良であると判定された場合には、その接着物の接着領域内における接着状態の不良箇所が識別可能に出力手段から出力される。このため、被接着物に対する接着物の接着状態の良否の判定ができるばかりでなく、接着状態の不良箇所がある場合には、その箇所を接着領域内において容易に特定することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記判定手段は、剥離進行過程における前記負荷の測定値と前記閾値との乖離程度に基づき、更に前記接着状態の不良箇所における接着不良の程度を判定し、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果に基づき、更に前記接着状態の不良箇所での接着不良の程度が識別可能な表示態様で出力されるように、前記出力手段を制御することを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、接着領域内における接着状態の不良箇所を識別できるばかりでなく、その不良箇所での接着不良の程度についても識別できるようになる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記測定手段によって測定された前記負荷の測定値の変化を剥離進行状態に応じた負荷波形として生成する負荷波形生成手段と、前記閾値に基づき前記剥離進行状態に応じた閾値波形を生成する閾値波形生成手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記負荷波形生成手段によって生成された前記負荷波形と前記閾値波形生成手段によって生成された前記閾値波形とが重畳表示態様で出力されるように、前記出力手段を制御することを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、出力手段によって負荷波形と閾値波形とが比較可能な重畳表示態様で出力されるので、剥離進行過程で剥離開始位置から剥離終了位置まで剥離位置が移動する接着物の接着領域内での接着状態の不良箇所が負荷波形と閾値波形との比較により識別できるようになる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記負荷波形と前記閾値波形との剥離進行過程における波形生成のタイミングを合わせるための基準となる基準負荷値を設定する基準負荷値設定手段を更に備え、前記制御手段は、前記負荷波形において前記負荷の測定値が前記基準負荷値を超えるタイミングと前記閾値波形において前記閾値が前記基準負荷値を超えるタイミングとを一致させた状態で前記負荷波形と前記閾値波形とが重畳表示されるように、前記出力手段を制御することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、例えば負荷を測定するために剥離される接着物における剥離手段の駆動開始後に剥離開始に伴い負荷が発生するまでの時間に差がある場合でも、その接着物を剥離した場合の負荷波形を、その負荷波形が比較される閾値波形に対して適切な重畳表示態様にして比較表示させることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記閾値波形生成手段は、前記接着状態が良好な複数の前記被接着物から前記接着物を前記剥離手段によって剥離する際の負荷を前記測定手段が剥離進行状態に合わせてそれぞれ測定した場合における各測定値の最大値のつながり集合である上限閾値に基づき剥離進行状態に応じた上限閾値波形を生成すると共に、前記各測定値の最小値のつながり集合である下限閾値に基づき剥離進行状態に応じた下限閾値波形を生成し、前記判定手段は、前記負荷波形生成手段によって生成された前記負荷波形が前記閾値波形生成手段によって生成された前記上限閾値波形と前記下限閾値波形とで囲み形成される良好判定領域内にあるか否かに基づき、前記接着状態の良否を判定することを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、上限閾値波形と下限閾値波形とで囲み形成される良好判定領域内に負荷波形があるか否かにより接着状態の良否を判定するようにしたので、接着状態の良否判定を簡単に行うことができると共に、剥離進行過程に対応した接着領域内での接着状態の不良箇所が一目で分かるようになる。また、良好判定領域を形成する上限閾値波形及び下限閾値波形が、接着状態が良好な複数の被接着物から接着物を剥離する際の負荷の測定値に基づいて生成されるので、時時に応じて適切な良好判定領域を形成することが可能となる。
【0015】
さらに、接着状態検査装置に係る請求項6に記載の発明は、被接着物に剥離可能に接着された可撓性を有する接着物を剥離方向となる一方向に向けて剥離する剥離手段と、該剥離手段によって前記被接着物から前記接着物を剥離する際の負荷を剥離進行状態に合わせて測定する測定手段と、該測定手段によって測定された前記負荷の測定値を前記剥離方向と直交する方向における前記被接着物に対する前記接着物の接着幅で除した計算値を前記剥離進行状態に合わせて算出する算出手段と、該算出手段によって算出された前記計算値と予め設定された判定基準とを比較して前記被接着物に対する前記接着物の接着状態の良否を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に基づき前記被接着物に対する前記接着物の接着領域内における前記接着状態の不良箇所を識別可能な表示態様で出力手段から出力させる制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、上記した接着状態検査装置に係る請求項1に記載の発明と同様の作用効果を得ることが可能となる。
一方、接着状態検査方法に係る請求項7に記載の発明は、被接着物に剥離可能に接着された可撓性を有する接着物を剥離方向となる一方向に向けて剥離する剥離ステップと、該剥離ステップで前記被接着物から前記接着物を剥離する際の負荷を剥離進行状態に合わせて測定する測定ステップと、該測定ステップで測定された前記負荷の測定値と予め設定された判定基準となる閾値とを比較して前記被接着物に対する前記接着物の接着状態の良否を判定する判定ステップと、該判定ステップでの判定結果に基づき前記被接着物に対する前記接着物の接着領域内における前記接着状態の不良箇所を識別可能な表示態様で出力させる出力ステップとを備えたことを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、上記した接着状態検査装置に係る請求項1に記載の発明と同様の作用効果を得ることが可能となる。
さらに、接着状態検査方法に係る請求項8に記載の発明は、被接着物に剥離可能に接着された可撓性を有する接着物を剥離方向となる一方向に向けて剥離する剥離ステップと、該剥離ステップで前記被接着物から前記接着物を剥離する際の負荷を剥離進行状態に合わせて測定する測定ステップと、該測定ステップによって測定された前記負荷の測定値を前記剥離方向と直交する方向における前記被接着物に対する前記接着物の接着幅で除した計算値を前記剥離進行状態に合わせて算出する算出ステップと、該算出ステップで算出された前記計算値と予め設定された判定基準とを比較して前記被接着物に対する前記接着物の接着状態の良否を判定する判定ステップと、該判定ステップでの判定結果に基づき前記被接着物に対する前記接着物の接着領域内における前記接着状態の不良箇所を識別可能な表示態様で出力させる出力ステップとを備えたことを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、上記した接着状態検査装置に係る請求項1に記載の発明と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被接着物に対する接着物の接着状態の良否の判定ができると共に、接着状態の不良箇所がある場合には、その箇所を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の接着状態検査装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】同接着状態検査装置によって検査される食品容器の平面図。
【図3】同接着状態検査装置のモニタの表示画面を示す説明図。
【図4】同接着状態検査装置の制御部内を示すブロック図。
【図5】(a)〜(c)は、同接着状態検査装置を用いて食品容器の本体ケースからアルミ蓋を剥離するときの剥離進行状態を示す模式図。
【図6】第2実施形態における接着状態検査装置の制御部内を示すブロック図。
【図7】同接着状態検査装置のモニタの表示画面を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明をヨーグルトなどが収容される食品容器のアルミ蓋の接着状態の検査を行うための接着状態検査装置及び同装置を用いた接着状態検査方法に具体化した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、接着状態検査装置11は、検査対象である食品容器12を支持する支持プレート13と、該支持プレート13を左右方向に水平移動させる水平移動装置14とを備えている。支持プレート13上には、該支持プレート13上に載置された食品容器12を固定することが可能な一対のロック部材13aが設けられている。
【0023】
図1及び図2に示すように、食品容器12は、有底円筒状をなす被接着物としての本体ケース15と、該本体ケース15の上端の開口部15aを封止するように該本体ケース15の円環状の上面15bに剥離可能に接着(溶着)された可撓性を有する接着物としての略円形シート状のアルミ蓋16とにより構成されている。したがって、本体ケース15の上面15bは、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着領域Sとなっている。なお、アルミ蓋16の周縁の一部には、本体ケース15からアルミ蓋16を剥離する際に掴むための舌片部16aが設けられている。
【0024】
図1に示すように、水平移動装置14における支持プレート13が水平移動する領域の上方となる位置には、本体ケース15とアルミ蓋16との接着力(接着強度)を測定する測定手段としての測定部17と、該測定部17を昇降可能に支持する昇降装置18とが配置されている。測定部17はロードセル(力の大きさを電気信号に変換する荷重変換器)とハイホルダ(電気信号の最大値を保持する信号変換器)とを備えている。
【0025】
ロードセルの受感ロッド19は測定部17から下方に向かって真っ直ぐに延びており、該受感ロッド19の下端部にはアルミ蓋16の舌片部16aを掴むことが可能なチャック部20が設けられている。なお、本実施形態では、水平移動装置14、昇降装置18、及びチャック部20によって剥離手段が構成されている。
【0026】
また、接着状態検査装置11は、該接着状態検査装置11の稼働状態を制御する制御手段としての制御部21を備えている。制御部21は、水平移動装置14、昇降装置18、及び測定部17と電気的に接続されており、測定部17から送信される電気信号を受信するとともに水平移動装置14及び昇降装置18を駆動制御する。
【0027】
さらに、制御部21には入力部22、出力手段としてのモニタ23、及び記憶部24が電気的に接続されており、本実施形態において、制御部21、入力部22、モニタ23、及び記憶部24はパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と言う。)によって構成されている。
【0028】
制御部21はCPU及びRAMを備えた構成とされ、入力部22はマウス及びキーボードを備えた構成とされ、記憶部24はハードディスクドライブ(以下、「HDD」と言う。)を備えた構成とされている。記憶部24のHDDには、検査用のプログラムがインストールされている。そして、PCの起動により該検査用のプログラムが実行されることで、モニタ23には、図3に示すような所定の検査画面が表示される。
【0029】
なお、本実施形態における制御部21内には、図4に示すように、負荷波形生成手段としての負荷波形生成部25、閾値波形生成手段としての閾値波形生成部26、判定手段としての判定部27、基準負荷値設定手段及び判定値設定手段としての設定部28、出力部46、昇降装置18を駆動制御する第1駆動制御部29、及び水平移動装置14を駆動制御する第2駆動制御部30が構築されている。
【0030】
そして、図1に示すように、支持プレート13上にセットされた食品容器12のアルミ蓋16の舌片部16aをチャック部20によって掴ませた状態で、該支持プレート13を右側から左側に向かって水平移動させるとともに、その水平移動に同期するように測定部17を上昇させることで、本体ケース15からアルミ蓋16が剥離進行方向である右方向へ向かって剥離されるようになっている。そして、このアルミ蓋16が剥離されるときの負荷(荷重)は、測定部17により電気信号に変換されて制御部21に送信される。
【0031】
図1、図3及び図4に示すように、負荷波形生成部25は、測定部17から送信される電気信号に基づいて本体ケース15からアルミ蓋16が剥離されるときの負荷の測定値の変化と経過時間との関係を表す負荷波形31を生成する。すなわち、負荷波形生成部25は、アルミ蓋16が剥離されるときの負荷の測定値をデータ化し、該データに基づいて該負荷の測定値の変化を剥離進行状態に応じた負荷波形31として生成する。
【0032】
この場合、アルミ蓋16の接着領域である本体ケース15の上面15bは円環状になっているため、該上面15bにおける左右方向の両端部は他の部分に比べてアルミ蓋16の接着領域Sが広くなっている。このため、負荷波形31において、剥離開始時と対応する最初の波形部分及び剥離終了時と対応する最後の波形部分は、剥離途中段階と対応する他の波形部分に比べて剥離進行過程で発生する負荷が大きくなる。特に、負荷波形31における最初の波形部分は、アルミ蓋16の剥離開始時と対応する部分であるため、アルミ蓋16の剥離終了時と対応する部分である負荷波形31における最後の波形部分よりも負荷の測定値が大きくなる。したがって、負荷波形31には、その最初の剥離開始時と対応した波形部分に負荷の測定値が最も大きいピーク値が出現する。
【0033】
一方、閾値波形生成部26は、後述するサンプリングモードにて、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好な複数(例えば、50個)の食品容器12を用いて本体ケース15からアルミ蓋16が剥離されるときの負荷の測定値の変化と経過時間との関係を表す負荷波形31を複数生成する。そして、このように生成した全負荷波形31における剥離進行過程での負荷の測定値の最大値のつながり集合である上限閾値と同じく負荷の測定値の最小値のつながり集合である下限閾値とを求め、それらの上限閾値及び下限閾値に基づき剥離進行状態に応じた上限閾値波形33と下限閾値波形34とをそれぞれ生成する。
【0034】
そして、上限閾値波形33と下限閾値波形34とから、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好であると判定部27に判定させるための一次的判定基準となる良好判定領域35を生成する。すなわち、上限閾値波形33と下限閾値波形34とで挟まれた領域が良好判定領域35となり、このようにして生成された良好判定領域35は、食品容器12の品種毎に品種データとして記憶部24のHDDにそれぞれ記憶される。このとき、入力部22のキーボードから食品容器12の品種毎の入力情報(例えば、商品名や納入先など)を入力すると、該入力情報に基づいて設定部28により後述する上限判定値38、下限判定値39、ピーク上限判定値40、及び下限設定値41が設定され、該設定された各値38〜41が対応する良好判定領域35とともに記憶部24のHDDにそれぞれ記憶される。
【0035】
そして、このような良好判定領域35が生成されていることを前提として、判定部27は、検査対象の食品容器12からアルミ蓋16が剥離される度毎に、そのアルミ蓋16の剥離進行状態に応じて生成された負荷波形31が良好判定領域35内に収まっているか否かを判定する。
【0036】
また、設定部28は、入力部22からの入力情報に基づいて、一次的判定基準である良好判定領域35よりも良否判定レベルが緩やかとなる二次的判定基準としての上限判定値38と下限判定値39を設定する。上限判定値38は、剥離進行過程において負荷が最大となる剥離開始時及び該剥離開始時の次に負荷が大きくなる剥離終了時を除く剥離途中段階での前記上限閾値よりも大きな値に設定され、下限判定値39は、同様に剥離途中段階での前記下限閾値よりも小さな値に設定される。
【0037】
そして、こうした上限判定値38及び下限判定値39を設定した場合には、負荷波形31において良好判定領域35内に収まっていない部分(例えば図3においてB矢印やC矢印で示す部分)があっても、該部分が上限判定値38と下限判定値39との間に収まっていれば、判定部27によってアルミ蓋16の接着状態は良好状態であると判定される。すなわち、上限判定値38及び下限判定値39を設定した場合には、上限判定値38及び下限判定値39が良好判定領域35の上限閾値及び下限閾値に代わって判定部27の良否の判定基準となる。
【0038】
また、設定部28は、入力部22からの入力情報に基づいて、前記上限判定値38及び下限判定値39の場合と同様に二次的判定基準となるピーク上限判定値40を設定する。ピーク上限判定値40は、剥離進行過程において負荷が最大となる剥離開始時の上限閾値よりも大きな値に設定される。そして、このピーク上限判定値40を設定した場合には、負荷波形31のピーク値(例えば図3においてA矢印で示す部分の最大負荷値)が良好判定領域35のピーク値を超えていても、ピーク上限判定値40を超えなければ判定部27によってアルミ蓋16の接着状態は良好状態であると判定される。すなわち、ピーク上限判定値40を設定した場合には、ピーク上限判定値40が、良好判定領域35のピーク値に代わって、判定部27の良否の判定基準となる。
【0039】
さらに、設定部28は、入力部22からの入力情報に基づいて、負荷波形31と良好判定領域35との剥離進行過程における波形生成のタイミング(本体ケース15からアルミ蓋16が順次剥離されるときのタイミング)を合わせるための基準となる基準負荷値として下限設定値41を設定する。下限設定値41は、剥離手段における昇降装置18の駆動に伴いチャック部20が上昇し始めた場合において、このチャック部20により掴まれつつ剥離方向に捲り上げられるアルミ蓋16の舌片部16aに実質的に引っ張り力が及ぶときの負荷の大きさ(下限判定値39よりも小さな値)に設定されている。そして、このような下限設定値41を設定した場合には、負荷波形31において本体ケース15からアルミ蓋16が剥離されるときの負荷の測定値が下限設定値41を超えるタイミングと、閾値波形33,34における閾値が同じく下限設定値41を超えるタイミングとが一致させられた状態で負荷波形31と閾値波形33,34とが重畳表示されるようにモニタ23が表示制御される。
【0040】
出力部46は、負荷波形生成部25によって生成された負荷波形31と閾値波形生成部26によって生成された良好判定領域35とを、モニタ23の画面の上側半分を占める波形表示部32に重畳表示態様で表示させる。また、出力部46は、判定部27により負荷波形31が良好判定領域35内に収まっていないと判定されれば、モニタ23の画面の中央最上部に設けられた測定結果表示部36にアルミ蓋16の接着状態が不良状態であることを示す「NG」と表示させる。なお、この場合において、負荷波形31が良好判定領域35内に収まっていると判定されれば、モニタ23の画面の測定結果表示部36にはアルミ蓋16の接着状態が良好状態であることを示す「GOOD」と表示させる。
【0041】
さらに、出力部46は、判定部27により、負荷波形31が良好判定領域35内に収まっていないと判定された場合には、負荷波形31における良好判定領域35からはみ出した部分の位置表示を、モニタ23の画面における波形表示部32の下側に位置する接着状態表示部37に表示されたアルミ蓋16の接着領域(本体ケース15の上面15b)Sのスケールに合わせて、剥離進行方向で対応する位置ごとに識別可能に該接着領域Sに表示させる。なお、接着状態表示部37には、アルミ蓋16の接着領域(本体ケース15の上面15b)Sをアルミ蓋16の剥離進行方向(図3では左から右へ向かう方向)に沿って半分にしたものが模式的に表示されている。
【0042】
また、図3に示すように、モニタ23の画面における波形表示部32の下側であって接着状態表示部37の右側には、品種選択ボタン42、測定部下降ボタン43、測定開始ボタン44、及びサンプリングモードボタン45が表示されている。
【0043】
品種選択ボタン42を入力部22のマウスでクリックすると、検査対象である食品容器12の品種を示すメニュー(図示略)が表示され、そのメニューから該当する品種を選択すると、選択した品種の良好判定領域35が波形表示部32に表示される。
【0044】
また、測定部下降ボタン43を入力部22のマウスでクリックすると、支持プレート13上にセットされた食品容器12のアルミ蓋16の舌片部16aを掴むことが可能な高さまでチャック部20が下降するように、測定部17が昇降装置18によって下降される。
【0045】
また、測定開始ボタン44を入力部22のマウスでクリックすると、支持プレート13が水平移動装置14によって右から左に向かって一定速度で水平移動されるとともに、この水平移動に同期して測定部17が昇降装置18によって一定速度(支持プレート13が水平移動する際の一定速度と同じ速度)で鉛直方向に沿って上昇される。
【0046】
また、サンプリングモードボタン45を入力部22のマウスでクリックすると、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好な複数の食品容器12に対して剥離検査を実施して各々における本体ケース15からアルミ蓋16が剥離されるときの負荷の各測定値から良好判定領域35を生成するためのサンプリングモードとなる。
【0047】
次に、上記のように構成された接着状態検査装置11を用いて食品容器12における本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の良否を検査するための方法について説明する。
【0048】
さて、PCを起動すると、検査用のプログラムが実行されてモニタ23に所定の検査画面(図3参照)が表示される。続いて、その画面上で品種選択ボタン42を入力部22のマウスでクリックして表示されたメニューからこれから検査する食品容器12に対応する品種を選択すると、閾値波形生成部26は選択された品種の良好判定領域35、上限判定値38、下限判定値39、ピーク上限判定値40、及び下限設定値41を記憶部24のHDDから読み出してRAMに記憶させる。
【0049】
続いて、支持プレート13上に、アルミ蓋16の舌片部16aが左側に位置するように食品容器12を載置し、各ロック部材13aにより該食品容器12を該支持プレート13上に固定する。
【0050】
続いて、測定部下降ボタン43を入力部22のマウスでクリックすると、第1駆動制御部29は測定部17が下降するように昇降装置18を駆動する。そして、第1駆動制御部29は、支持プレート13上にセットされた食品容器12のアルミ蓋16の舌片部16aを掴むことが可能な高さまでチャック部20が下降したところで測定部17が停止するように昇降装置18の駆動を停止させる。
【0051】
続いて、図1に示すように、支持プレート13上に固定された食品容器12のアルミ蓋16の舌片部16aをチャック部20に掴ませる。そして、測定開始ボタン44を入力部22のマウスでクリックすると、第1駆動制御部29は測定部17(チャック部20)が一定速度で上昇するように昇降装置18を駆動するとともに、これに同期して第2駆動制御部30は支持プレート13が一定速度(チャック部20が上昇する一定速度と同じ速度)で左方向に向かって水平移動するように水平移動装置14を駆動する。
【0052】
すると、図5(a)に示すように、アルミ蓋16の舌片部16aがチャック部20に引っ張られ、その引っ張り力がアルミ蓋16の接着領域Sに実質的な剥離力となって達すると、測定部17による負荷の測定値が急激に上昇し始める。そして、測定部17による負荷の測定値が下限設定値41に達すると、負荷波形生成部25は、このときを剥離開始時として急峻なピーク波形を形成することになる負荷波形31の生成を開始する。なお、その場合において、昇降装置18及び水平移動装置14が駆動開始してから、前記負荷の測定値が下限設定値41に達する(超える)までに要した時間の長短如何に拘わらず、負荷波形生成部25は、RAMに記憶されている良好判定領域35の閾値波形33,34の閾値が下限設定値41に達する(超える)タイミングと一致したタイミングで前記負荷の測定値が下限設定値41に達する(超える)波形に負荷波形31を生成する。
【0053】
引き続き、支持プレート13が左方向へ移動されるとともに測定部17が上昇されると、図5(b)に示すように、本体ケース15からアルミ蓋16が剥離進行方向である右方向へ向かって徐々に剥離される(剥離ステップ)。このとき、支持プレート13と測定部17とは同期して同じ速度で移動するため、本体ケース15からのアルミ蓋16の剥離中においては、該アルミ蓋16の剥離された部分が常に鉛直方向に延びた状態になる。
【0054】
そして、このアルミ蓋16が剥離されるときの負荷(荷重)は、測定部17により順次電気信号に変換されて制御部21に送信される。すなわち、アルミ蓋16が剥離されるときの負荷は、測定部17により測定される(測定ステップ)。そして、負荷波形生成部25は、測定部17から順次送信される電気信号に基づいて負荷波形31を生成する。
【0055】
引き続き、支持プレート13が左方向へ移動されるとともに測定部17が上昇されると、図5(c)に示すように、本体ケース15からアルミ蓋16が剥離進行方向である右方向へ向かってさらに剥離され、その後、本体ケース15からアルミ蓋16が完全に剥離される。すると、第1駆動制御部29は測定部17が停止するように昇降装置18の駆動を停止させるとともに、第2駆動制御部30は支持プレート13が停止するように水平移動装置14の駆動を停止させる。
【0056】
判定部27は、負荷波形生成部25によって生成された負荷波形31と良好判定領域35とを比較して、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好であるか否かを判定する(判定ステップ)。そして、出力部46は、判定部27により、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好であると判定されれば、モニタ23の画面の測定結果表示部36に「GOOD」と表示させ、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好でないと判定されれば、モニタ23の画面の測定結果表示部36に「NG」と表示させる。
【0057】
この場合、設定部28により上限判定値38、下限判定値39、及びピーク上限判定値40が設定されているため、剥離開始時と剥離終了時を除く剥離途中段階での負荷波形31に良好判定領域35から外れる部分があっても、その部分が上限判定値38と下限判定値39との間に収まっていれば、判定部27は、アルミ蓋16の接着状態が良好であると判定する。さらに、剥離開始時の負荷波形31におけるピーク値が良好判定領域35のピーク値を超えていた場合でも、そのピーク値がピーク上限判定値40を下回っていれば、判定部27は、アルミ蓋16の接着状態は良好であると判定する。すなわち、一次的判定基準である良好判定領域35だけを判定基準とする場合よりも二次的判定基準である上限判定値38、下限判定値39、及びピーク上限判定値40が設定されている場合には、接着状態の良否判定の基準が緩やかになる。
【0058】
引き続き、出力部46は、負荷波形31を良好判定領域35に重ねるようにして波形表示部32に表示させる(出力ステップ)。このとき、図3に示すように、波形表示部32に表示された負荷波形31において良好判定領域35からはみ出した部分A〜Eがあった場合には、接着状態表示部37に表示されたアルミ蓋16の接着領域(本体ケース15の上面15b)Sに、スケールを合わせて各部分A〜Eに対応する各不良箇所a〜eがそれらの接着不良の程度に応じて識別可能に色分け表示される。
【0059】
すなわち、負荷波形31において一次的判定基準である良好判定領域35から外れ且つ剥離進行過程で対応する二次的判定基準であるピーク上限判定値40を超えた部分A、及び同じく負荷波形31において良好判定領域35から外れ且つ剥離進行過程で対応する上限判定値38を超えた部分Dは、接着状態表示部37の接着領域Sの不良箇所a及び不良箇所dにそれぞれ赤色で表示される。また、負荷波形31において良好判定領域35からは外れるものの剥離進行過程で対応する上限判定値38を下回る部分Bは接着状態表示部37の接着領域Sの不良箇所bに黄色で表示される。同様に、負荷波形31において良好判定領域35からは外れるものの剥離進行過程で対応する下限判定値39を上回る部分Cは接着状態表示部37の接着領域Sの不良箇所cに桃色で表示される。さらに、負荷波形31において良好判定領域35から外れ且つ剥離進行過程で対応する下限判定値39を下回る部分Eは接着状態表示部37の接着領域Sの不良箇所eに紫色で表示される。
【0060】
ちなみに、赤色又は紫色で表示される場合は、負荷波形31と閾値波形33,34との乖離の程度が、良好判定領域35からの外れ方向において、剥離進行過程で対応する判定値38,39,40をも超える程に大きい不良箇所、すなわち、接着不良の程度が重い不良箇所であることを示している。
【0061】
また、この場合において、赤色表示は、剥離時の負荷が大きすぎる場合、すなわち、食品容器12の本体ケース15からアルミ蓋16を剥がし難い程に接着強度が強すぎる接着不良の場合を示している。また、同様に紫色表示は、負荷が小さすぎる場合、すなわち、食品容器12の本体ケース15の開口部15aがアルミ蓋16によっては十分にシール確保できない程度の接着強度が弱すぎる接着不良の場合を示している。
【0062】
その一方、黄色又は桃色で表示される場合は、負荷波形31と閾値波形33,34との乖離の程度が、良好判定領域35からの外れ方向において、剥離進行過程で対応する判定値38,39までは超えない程度の小さい不良箇所、すなわち、接着不良の程度が軽い不良箇所であることを示している。
【0063】
また、この場合において、黄色表示は、負荷が少し大きい場合、すなわち、食品容器12の本体ケース15からアルミ蓋16を剥がす際に通常よりは少々剥離し難い程度の接着強度がやや強い接着不良の場合を示している。また、同様に桃色表示は、負荷が少し小さい場合、すなわち、食品容器12の本体ケース15の開口部15aをアルミ蓋16によってシール確保するためには、もう少し強い接着強度であることが望ましいとされる程度の接着強度がやや弱い接着不良の場合を示している。
【0064】
したがって、良好判定領域35に対する負荷波形31の乖離したずれ位置(不良箇所)及び該各ずれ位置のずれ具合(不良具合)が一目で分かる。この結果、本体ケース15にアルミ蓋16を接着(溶着)するための接着工程を的確に改善することができる。なお、検査後の各食品容器12の検査データは、記憶部24のHDDに個別に記憶される。
【0065】
以上詳述した第1実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の不良箇所a〜eをモニタ23の接着状態表示部37に色分け状態で識別可能に表示することができる。このため、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の良否の判定ができると共に、接着状態の不良箇所a〜eがある場合には、その箇所を本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着領域S内において容易に特定することができる。
【0066】
(2)モニタ23の波形表示部32に負荷波形31と良好判定領域35とがモニタ23の波形表示部32に剥離進行過程での乖離状態を比較可能な重畳表示態様で表示されるので、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の不良箇所a〜eとともに該不良箇所a〜eでの接着不良の程度が接着領域S内において一目で分かるようになる。
【0067】
(3)通常、アルミ蓋16の舌片部16aをチャック部20によって掴ませる際に、該チャック部20による舌片部16aの掴み位置が変わると、測定開始ボタン44を入力部22のマウスでクリックしてからアルミ蓋16を本体ケース15から剥離する際の負荷の測定値のピークに達するまでの時間(又は負荷が急激に上昇するまでの時間)が変わってしまう。すなわち、チャック部20によって舌片部16aの基端を掴ませた場合よりも舌片部16aの先端を掴ませた場合の方が測定開始ボタン44を入力部22のマウスでクリックしてからアルミ蓋16を本体ケース15から剥離する際の負荷の測定値のピークに達するまでの時間(又は負荷が急激に上昇するまでの時間)が長くなる。このため、負荷波形31と良好判定領域35とが経過時間軸方向にずれた状態でモニタ23の波形表示部32に表示されてしまうことになり、これでは剥離進行過程での互いの乖離状態を比較することもできなくなる。
【0068】
この点、本実施形態では、下限設定値41を設定することで、チャック部20による舌片部16aの掴み位置の違いによって生じる誤差が吸収されるので、該下限設定値41以後の負荷波形31と良好判定領域35との剥離進行過程での波形生成のタイミング(経過時間軸方向の位置)を合わせた適切な重畳表示状態で負荷波形31と良好判定領域35(上限閾値波形33及び下限閾値波形34)とをモニタ23の波形表示部32に表示させることができる。
【0069】
(4)良好判定領域35に対する負荷波形31のずれ位置及びずれ具合(すなわち、負荷波形31と良好判定領域35(上限閾値波形33及び下限閾値波形34)との乖離程度)に対応して、アルミ蓋16の本体ケース15に対する接着領域Sにおける各不良箇所a〜eの不良具合(接着不良具合)がそれぞれ色分けして識別可能にモニタ23に表示される。このため、アルミ蓋16の接着領域S内での接着状態の各不良箇所a〜eの位置ばかりでなく、各不良箇所a〜eでの接着不良の程度までも一目で把握することができる。
【0070】
(5)モニタ23によって負荷波形31(線)と良好判定領域35(領域)とが重畳表示態様で表示され、負荷波形31が良好判定領域35内にあるか否かを一次的判定基準として良否判定を行っているので、接着状態の良否判定を簡単に実行することができると共に、接着状態が強すぎる箇所と弱すぎる箇所とを区別しつつ一目で分かるようになる。
【0071】
(6)ピーク上限判定値40、上限判定値38、及び下限判定値39が設定可能であるため、これらを納入先(顧客)の要求品質などに応じた値に設定を変更することで、納入先ごとに柔軟に対応してアルミ蓋16の接着状態検査を行うことができる。
【0072】
(7)閾値波形生成部26は、サンプリングモードにて、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好な複数(例えば、50個)の食品容器12の負荷波形31を複数生成し、該各負荷波形31に基づいて上限閾値波形33及び下限閾値波形34を生成し、該上限閾値波形33及び下限閾値波形34に基づいて良好判定領域35を生成する。このため、食品容器12の生産ロット毎に最適な良好判定領域35を設定することができるので、食品容器12における本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の良否を適切に検査することができる。
【0073】
(第2実施形態)
以下、この発明の第2実施形態を、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第2実施形態では、図6に示すように、上記第1実施形態における制御部21内において、算出手段としての計算値波形生成部50及び接着幅波形生成部51を追加するとともに、負荷波形生成部25及び閾値波形生成部26を削除している。
【0074】
また、記憶部24のHDDには、本体ケース15からアルミ蓋16を剥離する剥離方向と直交する前後方向における本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着幅のデータが、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着領域(本体ケース15の上面15b)S全体にわたって記憶されている。すなわち、記憶部24のHDDには、本体ケース15からアルミ蓋16を剥離する際の剥離位置ごとの本体ケース15に対するアルミ蓋16の前後方向の接着幅のデータが記憶されている。さらに、記憶部24のHDDには、各食品容器12に対応する品種の計算値波形52の良否を判定するための判定基準となる上限許容値54及び下限許容値55がそれぞれ記憶されている。
【0075】
図6及び図7に示すように、計算値波形生成部50は、本体ケース15からアルミ蓋16が剥離されるときの負荷の測定値を本体ケース15に対するアルミ蓋16の前後方向の接着幅で除した計算値を算出するとともに、該算出した計算値の変化と経過時間との関係を表す計算値波形52を生成する。すなわち、計算値波形生成部50は、アルミ蓋16が剥離されるときに算出される計算値をデータ化し、該データに基づいて該計算値の変化を剥離進行状態に応じた計算値波形52として生成する。
【0076】
接着幅波形生成部51は、記憶部24のHDDに記憶された本体ケース15に対するアルミ蓋16の前後方向の接着幅のデータに基づいて、本体ケース15からアルミ蓋16が剥離されるときの該接着幅の値の変化と経過時間との関係を表す接着幅波形53を生成する。
【0077】
次に、上記のように構成された接着状態検査装置11を用いて食品容器12における本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の良否を検査するための方法について説明する。
【0078】
さて、PCを起動すると、検査用のプログラムが実行されてモニタ23に所定の検査画面(図7参照)が表示される。続いて、その画面上で品種選択ボタン42を入力部22のマウスでクリックして表示されたメニューからこれから検査する食品容器12に対応する品種を選択すると、設定部28は選択された品種の計算値波形52に対応した上限許容値54及び下限許容値55を記憶部24のHDDから読み出してRAMに記憶させる。
【0079】
続いて、支持プレート13上に、アルミ蓋16の舌片部16aが左側に位置するように食品容器12を載置し、各ロック部材13aにより該食品容器12を該支持プレート13上に固定する。
【0080】
続いて、測定部下降ボタン43を入力部22のマウスでクリックすると、第1駆動制御部29は測定部17が下降するように昇降装置18を駆動する。そして、第1駆動制御部29は、支持プレート13上にセットされた食品容器12のアルミ蓋16の舌片部16aを掴むことが可能な高さまでチャック部20が下降したところで測定部17が停止するように昇降装置18の駆動を停止させる。
【0081】
続いて、図1に示すように、支持プレート13上に固定された食品容器12のアルミ蓋16の舌片部16aをチャック部20に掴ませる。そして、測定開始ボタン44を入力部22のマウスでクリックすると、第1駆動制御部29は測定部17(チャック部20)が一定速度で上昇するように昇降装置18を駆動するとともに、これに同期して第2駆動制御部30は支持プレート13が一定速度(チャック部20が上昇する一定速度と同じ速度)で左方向に向かって水平移動するように水平移動装置14を駆動する。
【0082】
すると、図5(a)に示すように、アルミ蓋16の舌片部16aがチャック部20に引っ張られ、その引っ張り力がアルミ蓋16の接着領域Sに実質的な剥離力となって達すると、測定部17による負荷の測定値が急激に上昇し始める。
【0083】
引き続き、支持プレート13が左方向へ移動されるとともに測定部17が上昇されると、図5(b)に示すように、本体ケース15からアルミ蓋16が剥離進行方向である右方向へ向かって徐々に剥離される(剥離ステップ)。このとき、支持プレート13と測定部17とは同期して同じ速度で移動するため、本体ケース15からのアルミ蓋16の剥離中においては、該アルミ蓋16の剥離された部分が常に鉛直方向に延びた状態になる。
【0084】
そして、このアルミ蓋16が剥離されるときの負荷(荷重)は、測定部17により順次電気信号に変換されて制御部21に送信される。すなわち、アルミ蓋16が剥離されるときの負荷は、測定部17により測定される(測定ステップ)。そして、接着幅波形生成部51は記憶部24のHDDから読み出した接着幅のデータに基づいて接着幅波形53を生成する。このとき、計算値波形生成部50は、本体ケース15からアルミ蓋16が剥離されるときの負荷の測定値を、該測定値に対応する剥離位置における接着幅で除した計算値を算出して計算値波形52を生成する(算出ステップ)。
【0085】
引き続き、支持プレート13が左方向へ移動されるとともに測定部17が上昇されると、図5(c)に示すように、本体ケース15からアルミ蓋16が剥離進行方向である右方向へ向かってさらに剥離され、その後、本体ケース15からアルミ蓋16が完全に剥離される。すると、第1駆動制御部29は測定部17が停止するように昇降装置18の駆動を停止させるとともに、第2駆動制御部30は支持プレート13が停止するように水平移動装置14の駆動を停止させる。
【0086】
判定部27は、計算値波形生成部50によって生成された計算値波形52と、設定部28によりRAMに記憶された上限許容値54及び下限許容値55とを比較して、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好であるか否かを判定する(判定ステップ)。すなわち、判定部27は、計算値波形52が全領域において上限許容値54と下限許容値55との間に収まっていれば本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好であると判定するとともに、計算値波形52に僅かでも上限許容値54と下限許容値55との間から外れた部分があれば本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好でないと判定する。なお、本実施形態では、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の良否の判定基準として上限許容値54及び下限許容値55が採用される。
【0087】
そして、出力部46は、判定部27により、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好であると判定されれば、モニタ23の画面の測定結果表示部36に「GOOD」と表示させ、本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態が良好でないと判定されれば、モニタ23の画面の測定結果表示部36に「NG」と表示させる。
【0088】
引き続き、出力部46は、計算値波形52及び接着幅波形53を、上限許容値54及び下限許容値55を示すそれぞれの直線とともに波形表示部32に表示させる(出力ステップ)。このとき、図7に示すように、波形表示部32に表示された計算値波形52において上限許容値54と下限許容値55との間からはみ出した部分F,Gがあった場合には、接着状態表示部37に表示されたアルミ蓋16の接着領域(本体ケース15の上面15b)Sに、スケールを合わせて各部分F,Gに対応する各不良箇所f,gが識別可能に色分け表示される。この場合、計算値波形52において、上限許容値54を上回った不良箇所を示す表示色(例えば赤色)と下限許容値55を下回った不良箇所を示す表示色(例えば青色)とは異なっている。なお、検査後の各食品容器12の検査データは、記憶部24のHDDに個別に記憶される。
【0089】
このように、食品容器12における本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の良否を判定するための計算値波形52は、本体ケース15からアルミ蓋16が剥離されるときの負荷の測定値を、該測定値と対応する剥離位置における接着幅で除した計算値を算出して生成した波形である。このため、計算値波形52は、本体ケース15に対するアルミ蓋16の剥離進行過程の終始にわたって変動幅の小さい形状となる。すなわち、計算値波形52は、接着幅あたりの負荷(測定値)であるため、第1実施形態の負荷波形31とは異なり、剥離進行過程における相対的に接着幅の大きい最初の部分及び最後の部分が相対的に接着幅の小さい他の部分に比べて著しく突出することはない。したがって、本実施形態では、計算値波形52の生成により、上限許容値54及び下限許容値55を設定するだけで、食品容器12における本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の良否を容易且つ確実に判定することができる。
【0090】
以上詳述した第2実施形態によれば、上記(1)に記載の効果に加えて次のような効果が発揮される。
(8)接着幅あたりの負荷(測定値)に基づいて生成される計算値波形52は、波形の変動幅(最大値と最小値との差)が第1実施形態の負荷波形31に比べて格段に小さくなる。このため、上限許容値54及び下限許容値55を設定するだけで、食品容器12における本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態の良否を容易且つ確実に判定することができる。すなわち、上限許容値54及び下限許容値55を設定するだけで、計算値波形52(食品容器12における本体ケース15に対するアルミ蓋16の接着状態)の良否を全体にわたって一括で管理することができる。
【0091】
(変更例)
なお、上記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・第1実施形態において、ピーク上限判定値40、上限判定値38、及び下限判定値39は、必ずしも設定する必要はない。すなわち、ピーク上限判定値40、上限判定値38、及び下限判定値39のうち少なくとも1つを設定しないようにしてもよい。この場合、ピーク上限判定値40、上限判定値38、及び下限判定値39を全て設定しない場合には、良好判定領域35のみが判定部27による接着状態の良否の判定基準となる。
【0092】
・第1実施形態において、下限設定値41は、必ずしも設定する必要はない。下限設定値41を設定しない場合には、舌片部16aにおいてチャック部20を掴ませる位置を常に一定にすることが好ましい。
【0093】
・第1実施形態において、負荷波形31と閾値波形33,34とが乖離した各部分A〜Eに対応して接着状態表示部37に表示される各接着状態の不良箇所a〜eの表示態様は、色分け表示でなく、模様や記号などによって区別して表示するようにしてもよい。同様に第2実施形態を変更して実施してもよい。
【0094】
・第1実施形態において、判定部27の良否の判定基準を、良好判定領域35の代わりに、上限閾値波形33及び下限閾値波形34のうちの少なくとも一方を使用するように変更してもよい。
【0095】
・第1実施形態において、モニタ23の代わりに、出力手段としてプリンタを用いてもよい。この場合、プリンタによって負荷波形31と良好判定領域35とが重畳表示態様で用紙に印刷される。同様に第2実施形態を変更して実施してもよい。
【0096】
・第1実施形態において、本体ケース15からのアルミ蓋16の剥離時の負荷の測定値は、負荷波形31でなく、数値データとしてモニタ23に表形式で表示させるようにしてもよい。この場合、良好判定領域35も数値データとしてモニタ23に表示させることが好ましい。同様に第2実施形態を変更して実施してもよい。
【0097】
・第1実施形態において、検査段階で良好判定領域35からはみ出して判定部27によって接着状態が不良であると判定された負荷波形31であっても、これを良品登録することで、該負荷波形31が含まれることになる判定基準の緩やかな良好判定領域35が再設定されるように構成してもよい。
【0098】
・第2実施形態において、接着幅波形53を波形表示部32に表示させないようにしてもよいし、接着幅波形53を波形表示部32に表示させるか否かを選択できるようにしてもよい。
【0099】
・上記各実施形態において、接着状態検査装置11は、被接着物としての各種製品に接着(貼着)された接着物としての各種ラベルの接着状態を検査する装置として用いてもよい。
【0100】
・上記各実施形態では、負荷波形生成部25、閾値波形生成部26、判定部27、設定部28、出力部46、第1駆動制御部29、及び第2駆動制御部30をCPUがプログラムを実行して構築されるソフトウェアにより実現したが、これらをICなどのハードウェアにより構成してもよい。さらに、これらをソフトウェアとハードウェアとの協働により実現される構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
11…接着状態検査装置、14…剥離手段を構成する水平移動装置、15…被接着物としての本体ケース、15b…接着領域となる上面、16…接着物としてのアルミ蓋、17…測定手段としての測定部、18…剥離手段を構成する昇降装置、20…剥離手段を構成するチャック部、21…制御手段としての制御部、23…出力手段としてのモニタ、25…負荷波形生成手段としての負荷波形生成部、26…閾値波形生成手段としての閾値波形生成部、27…判定手段としての判定部、28…基準負荷値設定手段及び判定値設定手段としての設定部、31…負荷波形、33…上限閾値波形、34…下限閾値波形、35…良好判定領域、38…上限判定値、39…下限判定値、40…ピーク上限判定値、41…下限設定値、50…算出手段としての計算値波形生成部、54…上限許容値、55…下限許容値、a〜g…不良箇所、S…接着領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接着物に剥離可能に接着された可撓性を有する接着物を剥離方向となる一方向に向けて剥離する剥離手段と、
該剥離手段によって前記被接着物から前記接着物を剥離する際の負荷を剥離進行状態に合わせて測定する測定手段と、
該測定手段によって測定された前記負荷の測定値と予め設定された判定基準となる閾値とを比較して前記被接着物に対する前記接着物の接着状態の良否を判定する判定手段と、
該判定手段の判定結果に基づき前記被接着物に対する前記接着物の接着領域内における前記接着状態の不良箇所を識別可能な表示態様で出力手段から出力させる制御手段と
を備えたことを特徴とする接着状態検査装置。
【請求項2】
前記判定手段は、剥離進行過程における前記負荷の測定値と前記閾値との乖離程度に基づき、更に前記接着状態の不良箇所における接着不良の程度を判定し、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果に基づき、更に前記接着状態の不良箇所での接着不良の程度が識別可能な表示態様で出力されるように、前記出力手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の接着状態検査装置。
【請求項3】
前記測定手段によって測定された前記負荷の測定値の変化を剥離進行状態に応じた負荷波形として生成する負荷波形生成手段と、前記閾値に基づき前記剥離進行状態に応じた閾値波形を生成する閾値波形生成手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記負荷波形生成手段によって生成された前記負荷波形と前記閾値波形生成手段によって生成された前記閾値波形とが重畳表示態様で出力されるように、前記出力手段を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接着状態検査装置。
【請求項4】
前記負荷波形と前記閾値波形との剥離進行過程における波形生成のタイミングを合わせるための基準となる基準負荷値を設定する基準負荷値設定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記負荷波形において前記負荷の測定値が前記基準負荷値を超えるタイミングと前記閾値波形において前記閾値が前記基準負荷値を超えるタイミングとを一致させた状態で前記負荷波形と前記閾値波形とが重畳表示されるように、前記出力手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の接着状態検査装置。
【請求項5】
前記閾値波形生成手段は、前記接着状態が良好な複数の前記被接着物から前記接着物を前記剥離手段によって剥離する際の負荷を前記測定手段が剥離進行状態に合わせてそれぞれ測定した場合における各測定値の最大値のつながり集合である上限閾値に基づき剥離進行状態に応じた上限閾値波形を生成すると共に、前記各測定値の最小値のつながり集合である下限閾値に基づき剥離進行状態に応じた下限閾値波形を生成し、
前記判定手段は、前記負荷波形生成手段によって生成された前記負荷波形が前記閾値波形生成手段によって生成された前記上限閾値波形と前記下限閾値波形とで囲み形成される良好判定領域内にあるか否かに基づき、前記接着状態の良否を判定することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の接着状態検査装置。
【請求項6】
被接着物に剥離可能に接着された可撓性を有する接着物を剥離方向となる一方向に向けて剥離する剥離手段と、
該剥離手段によって前記被接着物から前記接着物を剥離する際の負荷を剥離進行状態に合わせて測定する測定手段と、
該測定手段によって測定された前記負荷の測定値を前記剥離方向と直交する方向における前記被接着物に対する前記接着物の接着幅で除した計算値を前記剥離進行状態に合わせて算出する算出手段と、
該算出手段によって算出された前記計算値と予め設定された判定基準とを比較して前記被接着物に対する前記接着物の接着状態の良否を判定する判定手段と、
該判定手段の判定結果に基づき前記被接着物に対する前記接着物の接着領域内における前記接着状態の不良箇所を識別可能な表示態様で出力手段から出力させる制御手段と
を備えたことを特徴とする接着状態検査装置。
【請求項7】
被接着物に剥離可能に接着された可撓性を有する接着物を剥離方向となる一方向に向けて剥離する剥離ステップと、
該剥離ステップで前記被接着物から前記接着物を剥離する際の負荷を剥離進行状態に合わせて測定する測定ステップと、
該測定ステップで測定された前記負荷の測定値と予め設定された判定基準となる閾値とを比較して前記被接着物に対する前記接着物の接着状態の良否を判定する判定ステップと、
該判定ステップでの判定結果に基づき前記被接着物に対する前記接着物の接着領域内における前記接着状態の不良箇所を識別可能な表示態様で出力させる出力ステップと
を備えたことを特徴とする接着状態検査方法。
【請求項8】
被接着物に剥離可能に接着された可撓性を有する接着物を剥離方向となる一方向に向けて剥離する剥離ステップと、
該剥離ステップで前記被接着物から前記接着物を剥離する際の負荷を剥離進行状態に合わせて測定する測定ステップと、
該測定ステップによって測定された前記負荷の測定値を前記剥離方向と直交する方向における前記被接着物に対する前記接着物の接着幅で除した計算値を前記剥離進行状態に合わせて算出する算出ステップと、
該算出ステップで算出された前記計算値と予め設定された判定基準とを比較して前記被接着物に対する前記接着物の接着状態の良否を判定する判定ステップと、
該判定ステップでの判定結果に基づき前記被接着物に対する前記接着物の接着領域内における前記接着状態の不良箇所を識別可能な表示態様で出力させる出力ステップと
を備えたことを特徴とする接着状態検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−64672(P2011−64672A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140811(P2010−140811)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000128131)株式会社エヌテック (16)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【出願人】(593205831)東邦商事株式会社 (14)
【Fターム(参考)】