説明

接続端子

【課題】寸法が増加することを抑えつつ、接続信頼性を確保することができる接続端子を提供すること。
【解決手段】板状部材からなり、一端が解放されて板内に切り込まれてなる切り欠き10が形成され、該切り欠き10の向かい合う一対の縁面11aの各縁面11aが接続対象物Wに接触される縁面となる一対の接触片11を有してなる接続端子1において、前記一対の接触片11の各接触片11は、前記接触片11の表面11b内で前記切り欠き10の縁底10a位置に対して該接触片11の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に凸状に形成されてなる補強部20を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続対象物に接触される一対の接触片を有してなる接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状部材からなり、一端が解放されて板内に切り込まれてなる切り欠きが形成され、切り欠きの向かい合う一対の縁面の各縁面が接続対象物に接触される縁面となる一対の接触片を有してなる接続端子として、いわゆる、圧接端子、あるいは音叉端子が用いられる。このような接続端子は、例えば、圧接端子が電気接続箱内の布線板に配線された電線に接続され、音叉端子がバスバー、あるいはヒューズ、リレー等の電気部品のタブ端子に接続されるようになっている。
【0003】
このような接続端子は、例えば、電線が一対の接触片の間の切り欠きに押し込まれ、一対の接触片が開く方向に撓んだ場合、切り欠きの下端部周辺、すなわち各接触片の根元周辺に応力が集中して付加される。このため、各接触片の根元周辺で塑性変形が発生し、一対の接触片と接続対象物とその接触圧が弱くなり、結果的に接続信頼性が低下してしまうおそれがある。
このような問題を解消するため、例えば、特許文献1には、一対の接触片と接続対象物との接続信頼性を確保するようにしたバスバー接続構造が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載のバスバー接続構造は、バスバーに立設された端子板の幅方向中央にU字スロット状の圧接刃を形成し、この圧接刃に被圧接物を圧接することにより、バスバーと被圧接物とを電気的に接続するバスバー接続構造において、端子板に圧接刃の開きに対する反力を付加する構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−118927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたバスバーの接続構造では、圧接刃に開きに対する反力を付加するための構造としての折り返し部が圧接刃の表面に重なるようにして設けられるため、接続端子の寸法が増加してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、寸法が増加することを抑えつつ、接続信頼性を確保することができる接続端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる接続端子は、板状部材からなり、一端が解放されて板内に切り込まれてなる切り欠きが形成され、該切り欠きの向かい合う一対の縁面の各縁面が接続対象物に接触される縁面となる一対の接触片を有してなる接続端子において、前記一対の接触片の各接触片は、前記接触片の表面内で前記切り欠きの縁底位置に対して該接触片の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に凸状に形成されてなる補強部を有してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2にかかる接続端子は、上記の発明において、前記補強部は、前記各接触片の表裏の一方の面から他方の面に向けて打ち出し加工を施すことによって形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3にかかる接続端子は、上記の発明において、前記補強部は、当該接続端子の幅方向の両縁を当該接続端子の表面内に折り返すことによって形成されてなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4にかかる接続端子は、上記の発明において、前記補強部は、前記各接触片の延出方向に沿う直線状に形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る接続端子は、前記一対の接触片の各接触片が接触片の表面内で前記切り欠きの縁底位置に対して前記接触片の延出方向下方位置から上方位置にわたって連続的に凸状に形成されてなる前記補強部を有してなるので、前記接触片の表面内で、前記一対の接触片が開く際の応力が集中する領域の断面二次モーメントが増加される。このため、寸法が増加することを抑えつつ、接続信頼性を確保することができる。
【0013】
本発明の請求項2に係る接続端子は、前記補強部が前記各接触片の表裏の一方の面から他方の面に向けて打ち出し加工を施すことによって形成されてなるので、前記各接触片の表面内に容易に前記補強部を形成することができる。
【0014】
本発明の請求項3に係る接続端子は、前記補強部が前記接続端子の縁に形成されるので、前記補強部が前記接続対象物により干渉され難いようにすることができる。
【0015】
本発明の請求項4に係る接続端子は、前記補強部が前記各接触片の延出方向に沿う直線状に形成されてなるので、前記接続対象物と干渉され難い位置に前記補強部を容易に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る接続端子を示した斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した接続端子のA−A線断面図である。
【図3】図3は、図1に示した接続端子に電線が接続された状態を示した図である。
【図4】図4は、変形例1の接続端子を示した斜視図である。
【図5】図5は、図4に示した接続端子のB−B線断面図である。
【図6】図6は、変形例2の接続端子を示した斜視図である。
【図7】図7は、電線と接続された従来の接続端子の応力分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明に係る接続端子の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る接続端子1を示した斜視図である。図2は、図1に示した接続端子1のA−A線断面図である。図3は、図1に示した接続端子1に電線Wが接続された状態を示した図である。
接続端子1は、不図示の布線板等に立設され、電線Wと接続される、いわゆる圧接端子であり、図3に示すように、接続端子1の切り欠き10内に電線Wが押し込められると、電線Wの芯線W1を覆う絶縁被覆部W2に切り込みが入り、芯線W1と接続端子1とが電気的に接続されるようになっている。
【0019】
この接続端子1は、板状部材からなり、一端が解放されて板内に切り込まれてなる切り欠き10が形成され、切り欠き10の向かい合う一対の縁面11aの各縁面11aが接続対象物としての電線Wに接触される縁面となる一対の接触片11を有してなる。
【0020】
一対の接触片11の各接触片11は、図1に示すように、接触片11の表面11b内で切り欠き10の縁底10a位置Pに対して接触片11の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に凸状に形成されてなる補強部20を有してなる。
この補強部20は、図2に示すように各接触片11の表裏の一方の面11b1から他方の面11b2に向けて打ち出し加工、いわゆるビード打ち加工を施すことによって形成される。
このため、切り欠き10の縁底10a位置に対して接触片11の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に接触片11の開きに対する断面二次モーメントが大きくなる。すなわち、一対の接触片11が、補強部20によって開く方向の力に対する反力が増加されるようになっている。
このような補強部20、小型化のために接触端子1の厚みが薄くなるにつれ、打ち出し加工が容易になる。
【0021】
ここで、補強部20を有しない従来の接続端子100の応力分布について説明する。図7は、電線Wと接続された従来の接続端子100の応力分布を示した図である。
従来の接続端子100では、図7に示したように、電線Wが接続されると、応力が各接触片110の根元周辺の領域Arに集中して付加される。より具体的には、切り欠き10の縁底10a位置に対して接触片110の延在方向下方位置から上方位置にわたった領域Arに応力が集中して付加される。このような領域Arで分布される応力が、一対の接触片110が開いた状態で塑性変形される原因となる。
【0022】
本発明の実施例に係る接続端子1は、補強部20が接触片11の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に形成されている。すなわち、一対の接触片11が開いた状態で塑性変形される原因となる応力が集中する領域Arが補強されるようになっている。
【0023】
このような接続端子1は、切り欠き10に電線Wが押し込まれる際、一対の接触片11が開く方向に撓むものの、応力が集中する領域Arで補強部20によって開く方向の力に対する反力が増加されるので、一対の接触片11が弾性を有した状態、すなわち接触圧を所定の大きさで維持した状態で電線Wに接続される。
しかも、補強部20が、図1に示すように、各接触片11の表面11b内に形成されるので、接続端子1の幅方向の寸法S1が増加されないようになっている。
【0024】
また、補強部20は、接触片11の延出方向に沿う直線状に形成されてなる。より具体的には、補強部20は、図1および図2に示すように、接触片11の延出方向に直交する断面が三角形状をなし、この三角形状の頂点が延出方向に沿う直線となるように形成されている。
【0025】
このため、補強部20は、接触片11の幅方向での寸法S2が小さく抑えられるようになっている。すなわち、図3に示すように、電線Wの絶縁被覆部W2と干渉し難い位置に配置し易いようになっている。
【0026】
また、接続端子1は、補強部20が設けられることによって剛性が向上されるようになっている。このため、補強部20は、図2に示した捩れ方向Tの力によって、接続端子1に捩れが発生すること抑える機能をなしている。
【0027】
本発明の実施例に係る接続端子1は、一対の接触片11の各接触片11が接触片11の表面11b内で切り欠き10の縁底10a位置に対して接触片11の延出方向下方位置から上方位置にわたって連続的に凸状に形成されてなる補強部20を有してなるので、接触片11の表面11b内で、一対の接触片11が開く際の応力が集中する領域Arの断面二次モーメントが増加される。このため、寸法が増加することを抑えつつ、接続信頼性を確保することができる。
【0028】
また、本発明の実施例に係る接続端子1は、補強部20が各接触片11の表裏の一方の面11b1から他方の面11b2に向けて打ち出し加工を施すことによって形成されてなるので、各接触片11の表面11b内に容易に補強部20を形成することができる。
【0029】
また、本発明の実施例に係る接続端子1は、補強部20が各接触片11の延出方向に沿う直線状に形成されてなるので、電線Wの絶縁被覆部W1と干渉され難い位置に補強部20を容易に配置することができる。
【0030】
また、本発明の実施例に係る接続端子1は、補強部20を形成するために別部材を用いる必要がないので、部品点数が削減され、結果的に歩留まりを向上させることができる。
【0031】
(変形例1)
次に、本発明の実施例の変形例1について図4および図5を用いて説明する。図4は、変形例1の接続端子2を示した斜視図である。図5は、図4に示した接続端子2のB−B線断面図である。
この変形例1の接続端子2は、補強部20に代わって補強部30を有してなる点で、実施例の接続端子1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0032】
補強部30は、実施例の補強部20と同様に、接触片11の表面11b内で切り欠き10の縁底10a位置に対して接触片11の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に凸状に形成されてなる。この補強部30は、接続端子2の幅方向の両縁2aを接続端子2の表面11b内に折り返すことによって形成されている。
【0033】
この変形例1の接続端子2は、実施例の接続端子1と同様な効果を奏するとともに、補強部30が接続端子2の縁2aに形成されるので、補強部30が電線Wの絶縁被覆部W2により干渉され難くすることができる。
【0034】
なお、補強部30は、両縁2aを凸状に残すように接続端子2の内側を薄くするようなプレス加工を施すことによって形成されても構わない。
【0035】
(変形例2)
次に、本発明の実施例の変形例2について図6を用いて説明する。図6は、変形例2の接続端子3を示した斜視図である。なお、図6中には接続端子3に接続されるヒューズ200のタブ端子210周辺を加えて示している。
この変形例2の接続端子3は、ヒューズ200のタブ端子210等に接続される、いわゆる音叉端子として用いられる点で実施例の接続端子1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0036】
接続端子3は、補強部20が接触片11の表面11b内で切り欠き10の縁底10a位置に対して接触片11の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に凸状に形成されている。
【0037】
この変形例2の接続端子3は、接触片11の表面11b内で、一対の接触片11が開く際の応力が集中する領域Arの断面二次モーメントが増加される。このため、実施例の接続端子1と同様に、寸法が増加することを抑えつつ、接続信頼性を確保することができる。
【0038】
また、この変形例2の接続端子3は、補強部20が設けられることによって接続端子1の剛性が向上されるので、実施例の接続端子1と同様に、接続端子1の捩れの発生を抑えることができる。
【0039】
また、この変形例2の接続端子3は、補強部20が各接触片11の表裏の一方の面11b1から他方の面11b2に向けて打ち出し加工を施すことによって形成されてなるので、実施例の接続端子1と同様に、各接触片11の表面11b内に容易に補強部20を形成することができる。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1、2、3 接続端子
2a 縁
10 切り欠き
10a 縁底
11 接触片
11a 縁面
11b 表面
11b1 一方の面
11b2 他方の面
20 補強部
W 電線
W1 芯線
W2 絶縁被覆部
100 接続端子
110 接触片
200 ヒューズ
210 タブ端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材からなり、一端が解放されて板内に切り込まれてなる切り欠きが形成され、該切り欠きの向かい合う一対の縁面の各縁面が接続対象物に接触される縁面となる一対の接触片を有してなる接続端子において、
前記一対の接触片の各接触片は、
前記接触片の表面内で前記切り欠きの縁底位置に対して該接触片の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に凸状に形成されてなる補強部を有してなることを特徴とする接続端子。
【請求項2】
前記補強部は、
前記各接触片の表裏の一方の面から他方の面に向けて打ち出し加工を施すことによって形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の接続端子。
【請求項3】
前記補強部は、
当該接続端子の幅方向の両縁を当該接続端子の表面内に折り返すことによって形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の接続端子。
【請求項4】
前記補強部は、
前記各接触片の延出方向に沿う直線状に形成されてなることを特徴とする請求項1、2、または3に記載の接続端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109990(P2013−109990A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254604(P2011−254604)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】