説明

接続部受口構造及びそれを備えた管継手、ます、パイプ

【課題】本体接続部に対して固定リングが不用意に逆回転するという事態を簡易に且つ適切に防止することにより、管体の良好な配管状態を確実に維持できるようする。
【解決手段】外周面に係合溝7が周方向に形成された本体接続部5と、前記係合溝7に挿入されスライド自在に係合する係合凸部14を内周面に有し、前記本体接続部5に取り付けられる固定リング13と、該固定リング13を回転させて開口側から奥側に向かって締め込むにあたり管軸方向に圧縮されるシール体30を前記固定リング13の内側に有する環状シール構造Kとを備え、前記係合溝7に該固定リング13の逆回転を防止するための逆回転防止手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水配管及び排水・下水配管等に幅広く使用されている管継手、ます、及びパイプの接続部の構造及びそれを備えた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管継手、ます、パイプ等を用いて給水配管、排水・下水配管がなされるが、その接続部は、主として、接着タイプ、ゴム輪タイプ、球形自在タイプ等が知られている。これらは一方の接続部受口に、他方の接続部差口、例えば管継手の差口、ますの差口、あるいはパイプの差口などが接続されて配管がなされている。接着タイプの場合は接着剤を塗布して接合し、ゴム輪受口タイプの場合は滑剤を塗布してこれらの差口を受口に挿入して接合している。以下、管継手の差口、ますの差口、あるいはパイプの差口を総称して「管体」という。また、接着剤や滑剤を塗布しないで接合できるメカニカル式管継手を使用して配管されることもある。この種の管継手としては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは、仕切弁の受口と、半割り状のロック部材を外嵌した管体との接続構造に関するものである。
【0003】
かかるロック部材には、周方向に所定間隔を有して複数の係止部が設けられている。一方、仕切弁の受口の端面には、ロック部材の係止部を挿入可能な複数の切欠が形成されると共に、これに連通させて内周面には係合溝が周方向に形成されている。また、管体の挿入側に位置する前記係合溝の終端には、係合凹部が設けられている。更に、管体にはロック部材の先端面が当接する係合突起が設けられ、その内方位置にはゴム製の弾性部材が装着されている。
【0004】
そして、管体を仕切弁の受口に接続する場合は、管体を保持しつつロック部材の係止部を受口の切欠から挿入して回転させる。これにより、係止部は係合溝内を移動することになる。その後、管体の保持状態を解除すると、弾性部材によりロック部材は押圧力を受けて、その係止部が前記係合凹部に係合する。これにより、ロック部材の逆回転が防止された状態で、前記管体が仕切弁に接続される。
【特許文献1】特開2006−200608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のものに於いて、仕切弁から管体を離脱する場合は、弾性部材の付勢力に抗して管体を仕切弁側に押圧し、係止部と係合凹部との係合を解除して行わなければならない。しかるに、かかる係止部と係合凹部との係合状態を解除して行う離脱作業は非常に厄介であるために、作業性に欠けるという問題点があった。
【0006】
また、このように管体を仕切弁側へ押圧した際には、弾性部材は径外方向に膨出するために、弾性部材の外周面が仕切弁の内壁面に接触することになる。この場合、管体を回転させるには、該管体に相当の回転力を加える必要が生じるために、作業者にかかる負担が大きくなるという不都合もあった。
【0007】
それ故に、本発明は上記従来の問題点を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、固定リングが本体接続部に対して不用意に逆回転するという事態を簡易に且つ適切に防止することにより、管体の良好な接続状態を確実に維持できるようすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、外周面に係合溝が周方向に形成された本体接続部と、前記係合溝に挿入されスライド自在に係合する係合凸部を内周面に有し、前記本体接続部に取り付けられる固定リングと、前記固定リングを回転させて開口側から奥側に向かって締め込むにあたり管軸方向に圧縮されるシール体を前記固定リングの内側に形成した環状シール構造と、を備え、前記係合溝に該固定リングの逆回転を防止するための逆回転防止手段を備えたことを特徴とする接続部受口構造にある。
【0009】
また、本発明は、係合溝に挿入されスライド自在に係合する係合凸部を外周面に有する本体接続部と、内周面に前記係合凸部と係合する係合溝が周方向に形成され、前記本体接続部に取り付けられる固定リングと、前記固定リングを回転させて開口側から奥側に向かって締め込むにあたり管軸方向に圧縮されるシール体を前記固定リングの内側に形成して環状シール構造と、を備え、前記係合溝に該固定リングの逆回転を防止するための逆回転防止手段を備えたことを特徴とする接続部受口構造にある。
【0010】
尚、ここにいう「係合溝が周方向に形成された」とは、係合溝が厳密な意味で周方向(即ち、管軸方向と直交する方向)に延びていることを意味するわけではなく、係合溝が全体として周方向に渡って形成されていることを意味する。従って、係合溝の一部又は全部が周方向と傾斜する方向に延びていてもよい。
【0011】
また、ここにいう「本体接続部」とは、接続部受口に対して管体を接続するにあたり、例えば、管継手、ます、あるいはパイプ等の流入側接続部又は流出側接続部等の接続部分を意図し、固定リングが取り付けられる構造であり、構造部分が本体と一体に成形されていてもよく、また別体で製作され一体的にされたものでもよい。
【0012】
上記に於いては、先ず接続すべき管体を接続部受口に挿入して、固定リングを周方向に回転させる。かかる固定リング又は本体接続部の係合凸部は、係合溝に沿ってスライド移動し、逆回転防止手段により、固定リングの逆回転が確実に防止された状態で固定される。これにより、管体の接続作業は完了する。また、開口側から奥側に向かって固定リングを締め込む際には、環状シール構造を構成するシール体が管軸方向に圧縮される。これにより、シール体は径方向の内方に膨出して管体に圧接し、この両者間のシールが適切に図られることになる。尚、かかる接続状態に於いて、シール体は復元力を有しているために、固定リングが不用意に逆回転してしまうと、固定リングと管体との圧接状態を維持することができない。しかるに、接続部受口構造は固定リングの逆回転防止手段を有しているので、シール体と管体との良好な圧接状態を維持できる。
【0013】
一方、管体を接続部受口から離脱する場合は、先ず固定リングを先程とは逆に回転させて、逆回転防止手段による逆回転防止状態を解除する。更に、固定リングを逆回転させて係合溝に沿ってスライド移動させ、シール体の圧接状態を解除させた後、管体を接続部受口から離脱する。
【0014】
このように、固定リングの回転動作により、管体と接続部受口とを接続、又は、離脱させることができる。このため、作業者に負担をかけることなく、一連の接続及び離脱作業を簡易に行うことができる。
【0015】
また、係合溝の奥に凸部を設けて、これを前記逆回転防止手段としてもよい。
【0016】
この場合は、固定リングを回転させることにより、係合凸部と係合溝の凸部とを係脱させることが可能である。これにより、管体と接続部受口とを簡単に接続又は離脱させることができる。また、この係脱状態は固定リングの回転時の感触により作業者が認識できるので、作業の確実性が向上することになる。尚、ここにいう「係合溝の奥」とは、必ずしも係合溝の終端部分のみを意味するのではなく、例えば係合溝の形状等によっては終端までの途中部分をも含む広い概念である。
【0017】
更に、前記係合溝の凸部は、曲面状又は山型状に形成してもよい。尚、かかる凸部は、例えば係合溝の底から隆起させて設けたり、或いは係合溝の側面に内方に突出させるように設けることが考えられる。
【0018】
このようにすると、係合凸部と係合溝の凸部とを無理なくスムーズに係脱させることができる。
【0019】
また、前記係合溝は、周方向に形成される第一直線部と、周方向に対して所望の角度を有して該第一直線部に連設される傾斜部と、該傾斜部に連設させて周方向に形成される第二直線部とで構成することもできる。
【0020】
これによれば、固定リングの回転により、係合凸部は係合溝の第一直線部及び傾斜部を介して第二直線部にスライド移動することになる。この係合凸部が傾斜部を移動する際に、固定リングは開口側から奥側に向かって、即ち本体接続部に接近するように移動する。従って、傾斜部の周方向に対する傾斜角度を変更することにより、固定リングの本体接続部側への移動距離を適宜変更することができる。これにより、例えば傾斜角度を大きく設定すると、小さな回転角度で固定リングを本体接続部に固定等することができるため、接続作業の効率化が図れることになる。
【0021】
更に、前記逆回転防止手段は第ニ直線部の奥に設けてもよい。
【0022】
これによると、係合凸部が係合溝の第二直線部の奥にスライド移動するように固定リングを回転させれば、該固定リングの逆回転が逆回転防止手段により阻止された状態で、管体と本体接続部とが接続される。
【0023】
また、前記第一直線部に、固定リングの係合凸部を挿入するための挿入部を管軸方向に連設して、前記係合溝を構成してもよい。
【0024】
この場合、挿入部は管軸方向に形成されているので、かかる挿入部への係合凸部の挿入は容易に行える。このため、該係合凸部を第一直線部に適切に誘導することができて、固定リングの回転動作が良好に行えることになる。また、係合凸部の挿入部内の移動により、固定リングの本体接続部側への移動距離を確保することができる。このために、傾斜部を急角度に設定したり、その長さを必要以上に確保するようなことは必要なくなり、よって本体接続部のコンパクト化が図れる。
【0025】
また、前記係合溝の挿入部には、挿入側程低く傾斜するテーパ面を備えた凸状部を設けることも可能である。
【0026】
この場合は、固定リングの係合凸部が係合溝の挿入部に形成された凸状部を乗り越えるように、該固定リングを本体接続部側に押圧して、固定リングを本体接続部に取付ける。前記凸状部は挿入側程低く傾斜するテーパ面を有しているので、かかる取付け作業は簡易に行うことができる。
【0027】
また、これら係合凸部と凸状部との係合により、固定リングと本体接続部との一体性が保たれる。このため、不用意に固定リングが本体接続部から離脱することはない。その結果、接続作業や搬送作業が行い易くなるばかりではなく、固定リング等の各構成部品を紛失するという事態も良好に回避できる。
【0028】
更に、本発明に係る管継手は、前記接続部受口構造を少なくとも一つ備えた管継手である。
【0029】
更に、本発明に係るますは、前記接続部受口構造を少なくとも一つ備えたますである。
【0030】
更に、本発明に係るパイプは、前記接続部受口構造を少なくとも一つ備えたパイプである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、本体接続部に取付けた固定リングが不用意に逆回転するという事態を簡易に且つ適切に防止することが可能となるために、良好な接続状態を確実に維持できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<第一実施形態>
以下、本発明に係る管継手を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係る管継手を示す一部断面を含む正面図である。図中の符号1は、直管部2の側面に分岐部3を設けた継手本体で、直管部2及び分岐部3の先端部側には鍔部4を有する本体接続部5が夫々設けられている。
【0034】
この鍔部4には、図2に示すように所定間隔を有して三個の切欠6が形成されている。また、本体接続部5の外周面には、同図に示すように所定間隔を有して三個の係合溝7が設けられている。かかる係合溝7は、管軸方向に形成した挿入部8と、該挿入部8に直交して周方向に連設した第一直線部9と、後述する固定リング13を前記本体接続部5側に接近させるべく、該第一直線部9に連設した所定の角度を有する傾斜部10と、該傾斜部10に連設した周方向の第二直線部11とからなっている。該第二直線部11の奥には、逆回転防止手段としての曲面状の凸部12が膨出形成されている。図3、図4に示すように、符号40はテーパ面41を有する凸状部である。このテーパ面41は、前記係合溝7の挿入部8の挿入側(図2の下側、図3の右側)に向かって下るように傾斜している。
【0035】
図5に示すように、符号13は、継手本体1の本体接続部5に取付ける固定リングを示す。かかる固定リング13は、その回転動作により後述するシール体30を管体Xの外周面に圧接せしめて、該管体Xを本体接続部5に接続するためのものである。固定リング13の、その一端側内周面には、前記本体接続部5の係合溝7(図3参照)にスライド自在に係合する三個の係合凸部14が所定間隔を有して設けられている。尚、固定リング13を本体接続部5に取付ける場合は、固定リング13の係合凸部14を本体接続部5の係合溝7の挿入部8に設けたテーパ面41及び凸状部40を乗り越えるようにして挿入部8内に挿入する。これにより、固定リング13と本体接続部5との一体性が保たれる。このため、工場等に於いて、予めこの状態にまで製作しておけば、現場への搬送作業や現場に於ける接続作業の簡略化が図れて、作業効率が大幅に向上することになる。また、固定リング13等の各構成部品を紛失するという事態も良好に回避できる。尚、固定リング13は、上述したように必ずしも本体接続部5から離脱しないように設ける必要はなく、取り外せるように構成してもよい。
【0036】
また、前記挿入部8は管軸方向に形成されているので、かかる挿入部8への係合凸部14の挿入は容易に行える。このため、係合凸部14を第一直線部9に適切に誘導することができて、固定リング13の回転動作が良好に行えることになる。更に、係合凸部14の挿入部8内の移動により、固定リング13の本体接続部5側への移動距離を確保することができる。このために、傾斜部10を急角度に設定したり、その長さを必要以上に確保するようなことは必要なくなり、よって本体接続部5のコンパクト化が図れる利点がある。
【0037】
尚、前記係合溝7の第一直線部9、傾斜部10及び第二直線部11を固定リング13の係合凸部14が移動する際には、固定リング13は図4に示すように、夫々10°、40°及び10°回転するように設定している。この場合、傾斜部10の傾斜角度を大きく設定すれば、少ない回転動作で固定リング13を継手本体1(本体接続部5)に固定することができる。一方、傾斜部10の傾斜角度を小さく設定すれば、固定リング13は無理なくスムーズに回転することになる。従って、傾斜部10の傾斜角度はこのような点を考慮して決定される。本実施形態では、前記係合凸部14が傾斜部10をスライド移動することにより、固定リング13が継手本体1(本体接続部5)に2.5mm接近するように設定している。傾斜部10の周方向に対する傾斜角度αは約4°である。尚、固定リング13の係合凸部14を係合溝7の凸部12に係合せしめて、該固定リング13を継手本体1の本体接続部5に固定すると、継手本体1の鍔部4と固定リング13の端面とが隙間なく当接するように構成されている(11図参照)。このように構成すると、接続した管体に曲げ応力が加わった場合であっても、接続部受口の強度を確保することができる。
【0038】
図5に示すように、符号15は、固定リング13の一端部に設けた鍔部である。該鍔部15には、三個の切欠16が所定間隔を有して形成されている。これら三個の切欠16は、固定リング13の係合凸部14を本体接続部5の係合溝7の第二直線部11の終端に移動せしめた際に、該本体接続部5の鍔部4の切欠6と一致するような位置に形成されている。符号17は、固定リング13の他端部内周面に内向きに設けた環状凸部である。固定リング13の他端部側外周面は、多角形状に形成されている。
【0039】
図6に示すように、符号18は固定リング13にスライド自在に外嵌したストッパーである。同図のように、環状のストッパー本体19には、所定間隔を有して三個の係止片20が図面上で上向きに突設されている。かかる係止片20の個数は変更が可能であり、これに合わせて前記本体接続部5の鍔部4及び固定リング13の鍔部15に設けた各切欠6、16の個数も適宜変更すればよい。係止片20の先端部内周面には、係合部21が設けられている。尚、係止片20は固定リング13の切欠16を介して鍔部4の切欠6に係入され、その鍔部4に係合部21が係合して、固定リング13の逆回転を防止する。図5(b)に示すように、符号22は、固定リング13の外周面に接着した目印としてのテープである。この目印22が外部に露出しているか否かに基づいて、前記ストッパー18の係合部21が継手本体1(本体接続部5の鍔部4)に係合しているか否かを外部から目視で確認することができる。この場合、テープ22に代えて、例えばリングを外嵌したり、塗料等を塗布してもよい。また、ストッパー18の係合部21が本体接続部5に係合している場合にテープ22等がストッパー本体19により隠蔽されるように構成してもよい。
【0040】
図7,図8に示すように、符号23は、固定リング13の内側に回転自在に嵌合される一対の環状体である。環状体23の一端側内周面には、図7に示すように、外側の段部24、内側の段部25が設けられている。外側の段部24は、周面部26とテーパ部27と内壁部28とからなっている。また、環状体23の外周面には、二条の環状凸部29が管軸方向に所定間隔を有して設けられている。尚、この環状凸部29の外径寸法は、固定リング13の内径寸法よりも若干小さく設定されている。このため、環状体23は固定リング13の内側に回転自在に嵌合することになる。
【0041】
符号30は、図8に示すように対向配置した一対の環状体23間に配すべく、外側の段部24に嵌合させたゴム製のシール体である。この状態では、環状体23間に間隙42が形成される。符号31はシール体30の外周面略中央部に形成した断面略Vの字状の凹状部である。本実施形態では、以上に説明した一対の環状体23とシール体30とで、環状シール構造Kを構成している。
【0042】
尚、図9に示すように、シール体30の凹状部31の深さAは、環状体23のテーパ部27と内壁部28とを合わせた高さBに対して、A>Bとなるように設定している。この場合、A=Bとなるように設定しても構わない。また、各環状体23のテーパ部27の管軸方向に対する角度Θは同角度の45°としている。一対の環状体23にシール体30を装着した状態で、対向する環状体23の端面間の間隙幅Cは、シール体30の凹状部31の幅Dよりも小さくなっている。更に、シール体30の端面とこれに対向する環状体23の内側の段部25とが形成する間隙幅Eは、極力小となるべく設定している。
【0043】
また、同図の如くシール体30の内径Fは、環状体23の内径Gよりも若干大きく設定され、該環状体23の内径Gは、接続すべき管体の外径よりも若干大きく設定されている。また、環状体23はジュラコン等の合成樹脂からなり、継手本体1及び固定リング13等は塩化ビニル等の合成樹脂で構成している。
【0044】
符号32は、図3に示すように、本体接続部5の端面に環状に形成された溝33に装着したOリングである。本体接続部5に固定リング13を取付けた際に、内側に位置する環状体23の背面が前記本体接続部5の端面に当接してOリング32によりシールが図られることになる。尚、Oリング32の表面には、潤滑剤が塗布されている。
【0045】
本実施形態は以上のような構成からなる。次に、かかる管継手を使用して給水管や排水管等を配管する場合について説明する。
【0046】
先ず、固定リング13に接続すべき管体Xを挿入する。本実施形態では、シール体30の内径Fを環状体23の内径Gよりも若干大きく設定すると共に、環状体23の内径Gを接続すべき管体Xの外径よりも大きく設定しており、しかもシール体30の端面とこれに対向する環状体23の内側の段部25とが形成する間隙幅Eを極力小さく設定しているために、管体Xをスムーズに挿入することができる。
【0047】
次に、図10のように、固定リング13を継手本体1側(本体接続部5側)に押圧して、固定リング13の係合凸部14を係合溝7の挿入部8の終端にまで移動させる。その際、外側の環状体23は固定リング13の環状凸部17により押圧されるので、一対の環状体23及びシール体30は一体となって継手本体1側(本体接続部5側)へと移動し、内側の環状体23の背面が本体接続部5の端面に当接することになる。
【0048】
更に、固定リング13を回転すると、図11のように、その係合凸部14は係合溝7の第一直線部9、傾斜部10を介して第二直線部11をスライド移動し、該第二直線部11に設けた凸部12を乗り越えてその終端にまで移動することになる。この場合、凸部12は曲面状に形成されてなるために、該凸部12と固定リング13の係合凸部14とを無理なくスムーズに係脱させることができる。また、この係脱状態は固定リング13の回転時の感触により作業者が認識できるので、作業の確実性が向上することになる。
【0049】
かかる係合凸部14が係合溝7の傾斜部10を移動する際には、固定リング13の環状凸部17により外側の環状体23を介してシール体30が押圧される。この際、内側の環状体23は継手本体1の本体接続部5によりその移動が規制されているので、シール体30は押圧力を受けて撓み、その内径Fが縮径するように内方に膨出して管体Xの外周面に圧接することになる。
【0050】
この場合に於いて、シール体30の押圧は、環状体23の外側の段部24のテーパ部27及び内壁部28により行われるのであるが、かかる環状体23のテーパ部27と内壁部28とを合わせた高さBは、シール体30の凹状部31の深さAよりも小さく設定されている。そのため、固定リング13を回転させると、同図のようにシール体30の凹状部31が閉じるように押圧力が加わって、シール体30が内方に膨出することなる。このため、固定リング13にさほど回転力をかけることなく、管体Xを簡易に接続することができる。
【0051】
また、各環状体23のテーパ部27の管軸方向に対する角度Θは同角度の45°としているために、各環状体23から略均等に押圧力がシール体30に加わって、偏りが生じることなく内方に膨出することになる。よって、シール体30の管体Xに対する圧接面積を十分に確保できるという利点がある。
【0052】
更に、一対の環状体23にシール体30を装着した状態で、対向する環状体23の端面間の間隙幅Cはシール体30の凹状部31の幅Dよりも小さくなっているために、シール体30が環状体23間から外方へ膨出して固定リング13の内周面に接触するようなことはない。それ故、固定リング13の回転トルクを増大せしめるようなこともない。また、シール体30が継手本体1の回転に支障を与えることもない。
【0053】
また、シール体30が管体Xに圧接された後は、かかる圧接によりシール体30と管体Xとが一体的となり回転せず、固定リング13と環状体23との間で回転し得ることになる。固定リング13は各環状体23の二条の環状凸部29でのみ接触しており、且つ環状体23は滑り易いジュラコンで構成しているので、容易に回転させることができる。故に、継手本体1と管体Xとは相対的に回転する。従って、作業がし易くなる。
【0054】
その後、ストッパー18の係止片20を本体接続部5側にスライド移動させて、鍔部4の切欠6に係止片20を係入し、その係合部21を本体接続部5の鍔部4に係合させる。その結果、固定リング13に設けた目印22が露出し、ストッパー18が確実に機能していることを外部から目視で確認することができる。これにより、一連の管体Xの接続作業は完了する。かかる一連の接続作業は極めて簡易に行えるという利点があり、このため作業スペースが制限されるような状況下、例えば床下配管に於いても作業者に負担をかけることなく、効率良く一連の接続作業を行うことができる。
【0055】
また、このようにして接続された管体Xは、本体接続部5の係合溝7に設けた凸部12と固定リング13の係合凸部14との係止、及びストッパー18の鍔部4の切欠6への係入により逆回転が防止されて、管体Xの接続状態は強固に維持されることになる。従って、固定リング13が不用意に逆回転して流通流体が漏洩したり、管体Xが継手本体1から離脱するような事態を確実に阻止することができるのである。
【0056】
また、この状態に於いては、固定リング13と環状体23とは回転自在に嵌合させているので、継手本体1は管体Xに対して回転させることが可能である。
【0057】
従って、配管の施工後にレイアウトの変更等により、給排水機器の設置場所が変更された場合、例えば本体接続部5の分岐部3に配管すべき管体Xの配置に変更が生じた場合は、図12に示すように本体接続部5の分岐部3を新たに接続すべき管体Xの位置に応じて適宜回転させた後、上述のように分岐部3に新たな管体Xを接続して配管を行えばよい。このようにして、配管の施工後に於けるレイアウトの変更等にも迅速且つ柔軟に対応することができる。尚、継手本体1の直管部2に配管すべき管体Xの配置に変更が生じた場合も同様にして対処することができる。
【0058】
一方、配管した管体Xを管継手から取り外す場合は、ストッパー18を管体X側、即ち本体接続部5から離脱する方向(図10の右方向)にスライドさせて、その係合部21と本体接続部5の鍔部4との係合状態を解除すると共に、ストッパー18の係止片20を前記鍔部4の切欠6から離脱させる。これが確実に行われたことは、目印22がストッパー18のストッパー本体19により隠蔽されていることで外部から確認できる。
【0059】
次に、固定リング13を先程とは逆方向に回転させるべく少し強めに回転力を加えると、本体接続部5の係合溝7に設けた凸部12は曲面状に形成されているために、該凸部12と固定リング13の係合凸部14との係合状態は解除される。更に、この係合凸部14が係合溝7の挿入部8に設けた凸状部40に相対する位置(元の位置)にまで、固定リング13を回転させる。
【0060】
尚、かかる係合凸部14が係合溝7の傾斜部10を逆方向に移動することにより、外側の環状体23からの押圧力が除去されるために、シール体30の内径Fは拡径して元の状態に戻る。これにより、管体Xとの圧接状態が解除されるので、管体Xを管継手から容易に取り外すことができる。
【0061】
また、本実施形態に係る管継手は、全体が極めて簡易な構成からなるために、その製作も容易に且つ安価に行えるという利点も有している。
【0062】
尚、上記実施形態に於いては、係合溝7の挿入部8にテーパ面41を有する凸状部40を設けて、固定リング13が本体接続部5から離脱しないように構成したが、取り外せるように構成してもよい。
【0063】
また、該実施形態では、係合溝7の第二直線部11の奥に凸部12を設けて、これに固定リング13の係合凸部14を係止させることにより、固定リング13の逆回転を防止している。しかるに、かかる逆回転防止手段は決してこれに限定されるものではない。更に、逆回転防止手段を設ける位置も係合溝7の奥に限られず、例えばシール体30によるシール効果や係合溝7の形状等に応じて、逆回転防止手段は係合溝7の所望位置に設ければよい。尚、逆回転防止手段を凸部12で構成する場合は、該凸部12の形状は上記実施形態の曲面状の他に、例えば山型状に形成することも可能であり、また凸部12は係合溝7の側面に内方に突出するように形成してもよい。
【0064】
また、係合溝7の具体的な構成も、決して上記実施形態に限定されない。例えば、複数の傾斜部10を設けて係合溝7を構成したり、挿入部8を省略して構成してもよい。
【0065】
また、本発明に係る接続受口構造は、上記実施形態のように継手本体1が分岐部3を有している場合に特に有用であるが、本発明は分岐部3を有しない直管部2のみで構成した継手本体1にも勿論適用可能である。更に、一般に呼称されているソケット、エルボ、チーズ、インクリーザー等の管継手の接続部に適用できるものである。尚、上記接続部受口を有する管継手を用いてますの流入側接続部にパイプを接続することを妨げるものではない。
【0066】
更に、上記実施形態に於いては、環状シール構造Kを一対の環状体23及びシール体30で構成したが、本発明は決してこれに限定されるものではない。例えば、シール体30のみで構成したり、一方の環状体23とシール体30とで前記環状シール体Kを構成することも可能である。
【0067】
その他、継手本体1や固定リング13の形状、係合溝7や係合凸部14の数等の具体的な構成も、本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【0068】
<第二実施形態>
本実施形態に係る接続部受口構造は、上記第一実施形態とは異なり、図13(a)に示すように本体接続部5の外周面に係合凸部14を形成し、同図(b)に示すように固定リング13の内周面に係合溝7を形成して構成したものである。尚、他の各部は上記第一実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0069】
<第三実施形態>
本発明に係る接続部受口構造は、次のようにますに適用することも可能である。以下、上記接続部受口Yを備えたますについて、図14及び図15を参照しつつ説明する。尚、第一実施形態と共通する部分については、同様の符号を付して、その説明は省略する。
【0070】
図14に示すますZは、前記継手本体1の直管部2や分岐部3に対応する、流入部50及び流出部51が形成されたます本体52と、該流入部50及び流出部51に設けられる接続部受口Yとからなっている。尚、ます本体52の上部には点検口53が開口形成されている。
【0071】
また、図15に示すますZは、ます本体52の側部に対向させて流入部50及び流出部51が形成されたものであり、これら流入部50及び流出部51には接続部受口Yが夫々設けられている。尚、ます本体52の上部には点検口53が開口形成されている。
【0072】
このように、接続部受口Yをますに適用した場合に於いても、上述したと同様の効果を得ることができる。
【0073】
この場合に於いて、ますの形状等の具体的な構成は、上記実施形態の如きものに限定されるものでない。
<第四実施形態>
【0074】
本発明に係る接続部受口構造は、パイプに適用することも可能である。図16及び図17に示すように接続部受口Yは上記実施形態と共通するので、その説明は省略する。図16に示す実施形態は接続部受口Yを別体で製作してパイプ本体60の端部に接着により一体化してものであり、図17に示す実施形態は接続部受口Yを有する別体のものをパイプ本体60の端部に挿入接着したものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明は、管体に配管接続される接続部受口構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】接続部受口構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本体接続部の一部を示す正面図である。
【図3】固定リングを本体接続部に取付けた状態を示す断面図である。
【図4】本体接続部の係合溝を示す正面図である。
【図5】(a)は固定リングの平面図であり、(b)はその断面図である。
【図6】(a)はストッパーの平面図であり、(b)はその正面図である。
【図7】(a)は環状体の平面図であり、(b)はその断面図である。
【図8】環状体にシール体を装着した状態を示す断面図である。
【図9】環状体にシール体を装着した状態を示す断面図である。
【図10】継手に管体を挿入した状態を示す断面図である。
【図11】継手に管体を挿入して固定した状態を示す断面図である。
【図12】継手の使用状態を示す正面図である。
【図13】第二実施形態を示し、(a)は本体接続部の一部を示す正面図であり、(b)は固定リングの断面図である。
【図14】ますの一実施形態を示す断面図である。
【図15】ますの他の一実施形態を示す断面図である。
【図16】パイプの一実施形態を示す断面図である。
【図17】パイプの他の一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 継手本体
5 本体接続部
7 係合溝
8 挿入部
9 第一直線部
10 傾斜部
11 第二直線部
12 凸部
13 固定リング
14 係合凸部
30 シール体
40 凸状部
41 テーパ面
52 ます本体
60 パイプ本体
X 管体
Y 接続部受口
K 環状シール構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に係合溝が周方向に形成された本体接続部と、
前記係合溝に挿入されスライド自在に係合する係合凸部を内周面に有し、前記本体接続部に取り付けられる固定リングと、
該固定リングを回転させて開口側から奥側に向かって締め込むにあたり管軸方向に圧縮されるシール体を前記固定リングの内側に有する環状シール構造と、を備え、
前記係合溝に該固定リングの逆回転を防止するための逆回転防止手段を備えたことを特徴とする接続部受口構造。
【請求項2】
係合凸部を外周面に有する本体接続部と、
内周面に前記係合凸部とスライド自在に係合する係合溝が周方向に形成され、前記本体接続部に取り付けられる固定リングと、
該固定リングを回転させて開口側から奥側に向かって締め込むにあたり管軸方向に圧縮されるシール体を前記固定リングの内側に有する環状シール構造と、を備え、
前記係合溝に該固定リングの逆回転を防止するための逆回転防止手段を備えたことを特徴とする接続部受口構造。
【請求項3】
前記逆回転防止手段は、前記係合溝の奥に設けられた凸部である、請求項1又は2記載の接続部受口構造。
【請求項4】
前記係合溝に設けられた凸部が曲面状又は山型状に形成されてなる、請求項3記載の接続部受口構造。
【請求項5】
前記係合溝が、周方向に形成される第一直線部と、
前記固定リングを本体接続部に接近させるべく周方向に対して所望の角度を有して該第一直線部に連設される傾斜部と、
該傾斜部に連設させて周方向に形成される第二直線部と、
からなる請求項1乃至4の何れか一つに記載の接続部受口構造。
【請求項6】
前記逆回転防止手段が第ニ直線部の奥に設けられてなる、請求項5記載の接続部受口構造。
【請求項7】
前記第一直線部に、前記係合凸部を挿入するための挿入部を管軸方向に連設させて、前記係合溝が構成されてなる請求項5又は6記載の接続部受口構造。
【請求項8】
前記係合溝の挿入部に、挿入側程低く傾斜するテーパ面を備えた凸状部が設けられてなる請求項7記載の接続部受口構造。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一つに記載の接続部受口構造を備えた管継手。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか一つに記載の接続部受口構造を備えたます。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れか一つに記載の接続部受口構造を備えたパイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−25225(P2010−25225A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187067(P2008−187067)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】