説明

描画方法

【課題】紫外線照射装置の大型化に伴い、複数の紫外線照射装置を搭載した液滴吐出装置では装置コストが高くなってしまうことがある。
【解決手段】紫外線硬化型の液状体を記録媒体に向けて吐出する吐出ヘッド33と、吐出ヘッドを保持するヘッド保持部材と、ヘッド保持部材の位置をX方向に変化させる主走査方向変位装置と、記録媒体をY方向に間欠的に改行する副走査方向変位装置と、ヘッド保持部材の主走査方向片側に設けられ、記録媒体に吐出された前記液状体に紫外線を照射する紫外線照射装置15と、を備えた液滴吐出装置の描画方法において、紫外線照射装置15がヘッド保持部材の主走査方向の第1の方向の後方に位置するときに紫外線照射による液状体の硬化時間が、紫外線照射装置15がヘッド保持部材の主走査方向の第2の方向の前方に位置するときに紫外線照射による液状体の硬化時間よりも長い液滴を吐出することを特徴とする描画方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の照射を受けることによって硬化する液状体を記録媒体に向けて吐出することによって記録媒体に液状体を塗布し、記録媒体に塗布された液状体を紫外線の照射により硬化させることができる液滴吐出装置がある。このような液滴吐出装置は、例えば、液状体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドを主走査方向に移動させるヘッド移動手段と、記録媒体を副走査方向に移動させる記録媒体移動手段と、液状体に紫外線を照射する紫外線照射装置等を備えている。このような液滴吐出装置では、液滴吐出ヘッドの主走査方向において、複数の液滴吐出ヘッドからなるヘッドユニットの両側と記録媒体の搬送方向でヘッドユニットの下流側とに紫外線照射装置を配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−313445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の液滴吐出装置では、複数の液滴吐出ヘッドからなるヘッドユニットの両側と記録媒体の搬送方向でヘッドユニットの下流側とに複数の紫外線照射装置を配置している。この構成の場合、描画能力を高くするため液滴吐出ヘッド数を多くすることに伴い、紫外線照射装置も大型化が必要となる。このため、紫外線照射装置の放熱対策が困難になり、紫外線照射装置のコストが増大することになる。すなわち、上記の液滴吐出装置のように複数の紫外線照射装置を搭載する場合、装置コストが高くなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る描画方法は、紫外線の照射を受けて硬化する性質を有する液状体を記録媒体に向けて吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドを保持するヘッド保持部材と、前記記録媒体に対する前記ヘッド保持部材の位置を主走査方向の第1の方向と前記第1の方向の反対方向の第2の方向に往復移動させる主走査方向変位装置と、前記ヘッド保持部材に対する前記記録媒体の位置を前記主走査方向と交差する副走査方向に間欠的に変化させる副走査方向変位装置と、前記ヘッド保持部材の主走査方向片側に設けられ、前記記録媒体に吐出された前記液状体に紫外線を照射する紫外線照射装置と、を備えた液滴吐出装置の描画方法において、前記紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第1の方向の後方に位置するときに紫外線照射による前記液状体の硬化時間が、前記紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第2の方向の前方に位置するときに紫外線照射による前記液状体の硬化時間よりも長い液滴を吐出することを特徴とする。
【0007】
本適用例の液滴吐出装置で描画を行う場合、紫外線照射装置がヘッド保持部材の主走査方向の第1の方向の後方に位置するときには、液滴吐出後すぐに紫外線照射が行われる。一方、紫外線照射装置がヘッド保持部材の主走査方向の第2の方向の前方に位置するときには、同一の走査内での紫外線照射は行われない。
この液滴吐出装置では、紫外線照射装置がヘッド保持部材の主走査方向の第1の方向の後方に位置するときには、吐出された液滴にすぐに紫外線が照射されるため、硬化時間が比較的長い液滴を吐出する。また、紫外線照射装置がヘッド保持部材の主走査方向の第2の方向の前方に位置するときには、吐出された液滴に紫外線が照射されるまでの時間が長くなるため、硬化時間が比較的短い液滴を吐出する。
本適用例の描画方法によれば、紫外線照射装置がヘッド保持部材に対して1台の紫外線照射装置でも、吐出ヘッドにより記録媒体に塗布された液状体を十分に硬化することが可能となるので、液滴吐出装置のコストが削減できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載の描画方法において、前記紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第1の方向の後方に位置するときに吐出する液滴量は、前記紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第2の方向の前方に位置するときに吐出する液滴量よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、紫外線照射装置が、ヘッド保持部材の主走査方向の第1の方向の後方に位置するときに吐出する液滴を、ヘッド保持部材の主走査方向の第2の方向の前方に位置するときに吐出する液滴量より大きくすることにより、硬化に時間の必要な液滴に対しては液滴吐出後すぐに紫外線照射を行うことができ、吐出ヘッドにより記録媒体に塗布された液状体を十分に硬化することが可能となる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に記載の描画方法において、前記紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向第1の方向の後方に位置するときの前記ヘッド保持部材の前記主走査方向移動速度は、前記紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第2の方向の前方に位置するときの前記ヘッド保持部材の前記主走査方向移動速度よりも遅くすることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、紫外線照射装置が、ヘッド保持部材の主走査方向片側にしか無いため、ヘッド保持部材の主走査方向の第1の方向と第2の方向で液滴吐出後から紫外線照射までの時間の差が大きくなる。ヘッド保持部材の主走査方向の第1の方向の移動速度を第2の方向の移動速度よりも遅くすることにより、ヘッド保持部材の主走査方向の第1の方向と第2の方向における吐出ヘッドから吐出された液滴に対して紫外線が照射される時間の差を小さくすることができ、これによって、吐出ヘッドにより記録媒体に塗布された液状体を十分に硬化することが可能となる。
【0012】
[適用例4]本適用例に係る描画方法は、紫外線の照射を受けて硬化する性質を有する液状体を記録媒体に向けて吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドを保持するヘッド保持部材と、前記記録媒体に対する前記ヘッド保持部材の位置を主走査方向の第1の方向と前記第1の方向の反対方向の第2の方向に往復移動させる主走査方向変位装置と、前記ヘッド保持部材に対する前記記録媒体の位置を前記主走査方向と交差する副走査方向に間欠的に変化させる副走査方向変位装置と、前記ヘッド保持部材の主走査方向の2つの側面のうち第1の側面に設けられ、前記記録媒体に吐出された前記液状体に紫外線を照射する第1の紫外線照射装置と、前記ヘッド保持部材の主走査方向の第1の側面の反対側の第2の側面に設けられ、前記記録媒体に吐出された前記液状体に紫外線を照射し、前記第1の紫外線照射装置よりも紫外線照度が低い第2の紫外線照射装置と、を備えた液滴吐出装置の描画方法において、前記第1の紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第1の方向の後方に位置するときは、前記第2の紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第2の方向の後方に位置するときに紫外線照射による前記液状体の硬化時間よりも長い液滴を吐出することを特徴とする。
【0013】
本適用例の液滴吐出装置で描画を行う場合、吐出ヘッドから吐出された液滴が紫外線照射により固まるのにかかる時間が長い液滴は、紫外線照度の高い第1の紫外線照射装置がヘッド保持部材の主走査方向の第1の方向の後方に位置する時に吐出し、吐出ヘッドから吐出された液滴が紫外線照射により固まるのにかかる時間が短い液滴は、紫外線照度の低い第2の紫外線照射装置がヘッド保持部材の主走査方向の第2の方向の後方に位置する時に吐出する。
本適用例の描画方法によれば、ヘッド保持部材の主走査方向の2つの側面に取り付けられた紫外線照射装置のうち1台の紫外線照射装置の照度を低くした場合でも、吐出ヘッドにより記録媒体に塗布された液状体を十分に硬化することが可能となるので、液滴吐出装置のコストが削減できる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に記載の描画方法において、前記第1の紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第1の方向の後方に位置するときに吐出する液滴量は、前記第2の紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第2の方向の後方に位置するときに吐出する液滴量よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、第1の紫外線照射装置が、ヘッド保持部材の主走査方向の第1の方向の後方に位置するときに吐出する液滴を、第1の紫外線照射装置よりも照度の小さい第2の紫外線照射装置が、ヘッド保持部材の主走査方向の第2の方向の後方に位置するときに吐出する液滴量より大きくすることにより、硬化に時間の必要な液滴に対しては液滴吐出後すぐに高い照度で紫外線照射を行うことができ、硬化に時間があまり必要でない液滴に対しては低い照度で紫外線照射を行うことができ、吐出ヘッドにより記録媒体に塗布された液状体を十分に硬化することが可能となる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に記載の描画方法において、前記第1の紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第1の方向の後方に位置するときの前記ヘッド保持部材の前記主走査方向移動速度は、前記第2の紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の第2の方向の後方に位置するときの前記ヘッド保持部材の前記主走査方向移動速度よりも遅くすることを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、ヘッド保持部材の主走査方向の第2の方向の移動速度よりも第1の方向の移動速度を遅くすることにより、第1の方向に第1の紫外線照射装置が移動する時間も長くなり、吐出ヘッドから吐出された液滴に対して十分な紫外線を照射することができ、これによって、吐出ヘッドにより記録媒体に塗布された液状体を十分に硬化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態における液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】第1実施形態におけるキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図3】第1実施形態における吐出ヘッドの底面図。
【図4】図2中のB−B線における断面図。
【図5】第1実施形態における液滴吐出装置の概略構成を示すブロック図。
【図6】第1実施形態における液滴吐出装置の描画動作を図1中のA視方向に見て示す説明図。
【図7】第1実施形態における描画処理の流れを示すフローチャート。
【図8】第2実施形態におけるキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図9】第2実施形態における液滴吐出装置の描画動作を図1中のA視方向に見て示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照しながら、記録装置の1つである液滴吐出装置を例に、実施形態について説明する。図1は、第1実施形態における液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、第1実施形態におけるキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図である。また、図3は、第1実施形態における吐出ヘッドの底面図である。また、図4は、図2中のB−B線における断面図である。また、図5は、第1実施形態における液滴吐出装置の概略構成を示すブロック図である。
なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0020】
(第1実施形態)
本実施形態における液滴吐出装置1は、概略の構成を示す斜視図である図1に示すように、副走査方向変位装置としてのワーク搬送装置3と、ヘッド保持部材としてのキャリッジ7と、主走査方向変位装置としてのキャリッジ搬送装置11と、を有している。
キャリッジ7には、ヘッドユニット13と、1個の紫外線照射装置15と、が設けられている。
液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と基板などの記録媒体としてのワークWとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット13から液状体を液滴として吐出させることによって、ワークWに液状体で所望のパターンを描画することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0021】
このような液滴吐出装置1は、例えば、樹脂フィルムなどのように、液状体が浸透しにくい記録媒体への描画に適用され得る。
また、液滴吐出装置1を、例えば、液晶表示パネル等に用いられるカラーフィルターの製造や、有機EL(Electro Luminescence)装置の製造などに適用することもできる。
赤、緑及び青の3色のフィルターエレメントを有するカラーフィルターの場合、液滴吐出装置1は、例えば、基板に赤、緑及び青の各着色層を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各着色層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれのフィルターエレメントのパターンが描画される。
また、有機EL装置の製造では、例えば、赤、緑及び青の画素ごとに、各色に対応する機能層(有機層)を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各色の機能層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれの機能層のパターンが描画される。
【0022】
ここで、液滴吐出装置1の各構成について、詳細を説明する。
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0023】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじやリニアガイドなどを利用した機構が採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、図示しないワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。以下において、Y(−)側の向きをヘッドユニット13の上流側、Y(+)側の向きをヘッドユニット13の下流側とする。
【0024】
ヘッドユニット13は、キャリッジ7を図1中のA視方向に見たときの正面図である図2に示すように、ヘッドプレート31と、吐出ヘッド33と、を有している。
吐出ヘッド33は、底面図である図3に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する4本のノズル列39を構成している。4本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。
以下において、4本のノズル列39のそれぞれが識別される場合に、ノズル列39a、ノズル列39b、ノズル列39c及びノズル列39dという表記が用いられる。
吐出ヘッド33において、ノズル列39aとノズル列39bとは、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。ノズル列39c及びノズル列39dも、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。
【0025】
キャリッジ7は、ヘッドユニット13とヘッドユニットの走査方向(X方向の)の片側に取り付けられた紫外線照射装置15から構成される。また、紫外線照射装置15は、紫外光41を発する光源43を有している。光源43からの紫外光41は、吐出ヘッド33から吐出された液状体53(図4を参照)の硬化を促進させる。液状体53は、紫外光41の照射を受けると、硬化が促進する。
【0026】
吐出ヘッド33は、図2中のB−B線における断面図である図4に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから液状体53が供給される。
【0027】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸長する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小する。このとき、キャビティー51内の液状体53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、液状体53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0028】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ7は、図2に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。
上記により、ワークWには、吐出ヘッド33から液状体53が塗布され得る。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、液状体53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって液状体に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0029】
本実施形態では、液状体53として、光の照射を受けることによって硬化が促進する液状体53が採用されている。本実施形態では、液状体53の硬化を促進させる光として紫外光41が採用されている。
液状体53は、樹脂材料、光重合開始剤及び溶媒を、成分として含んでいる。これらの成分に、顔料や染料等の色素や、親液性や撥液性等の表面改質材料などの機能性材料を添加することによって固有の機能を有する液状体53を生成することができる。顔料や染料等の色素を含有する液状体53は、例えば、ワークWに描画する画像を形成するための液状体53として採用され得る。以下において、ワークWに描画する画像を形成するための液状体53は、画像塗料と呼ばれる。
【0030】
また、液状体53の成分としての樹脂材料に、例えば、アクリル系の樹脂材料などの光透過性を有する樹脂材料を採用することによって、光透過性を有する液状体53を構成することができる。このような光透過性を有する液状体53は、例えば、クリアインクとしての用途が考えられる。以下において、光透過性を有する液状体53は、透光塗料と呼ばれる。
クリアインクの用途としては、例えば、画像を被覆するオーバーコート層としての用途や、画像を形成する前の下地層としての用途などが考えられる。以下において、下地層として適用される液状体53は、下地塗料と呼ばれる。
下地塗料としては、透光塗料だけでなく、透光塗料に種々の顔料を添加した液状体53を採用することもできる。例えば、白色を呈する液状体53や、金属的な光沢(メタリック)を示す液状体53なども、下地塗料として採用され得る。
【0031】
液状体53における樹脂材料は、樹脂膜を形成する材料である。このような樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによってポリマーとなる材料であれば特に限定されない。樹脂材料としては、粘性が小さいものが好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。さらに、樹脂材料としては、モノマーの形態であることが一層好ましい。
光重合開始剤は、ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが採用され得る。本実施形態では、光重合開始剤として、ラジカル型の光重合開始剤が採用されている。ラジカル型の光重合開始剤としては、例えば、チバ・ジャパン(株)社製のイルガキュア819などが採用され得る。
溶媒は、樹脂材料の粘度を調整するためのものである。
【0032】
キャリッジ搬送装置11は、図1に示すように、架台101と、ガイドレール103と、を有している。
架台101は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3をX方向にまたいでいる。架台101は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3に対向している。架台101は、一対の支柱107によって支持されている。一対の支柱107は、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。
なお、以下においては、一対の支柱107のそれぞれを識別する場合に、支柱107a及び支柱107bという表記が用いられる。支柱107a及び支柱107bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台101とワークテーブル25との間には、隙間が保たれている。
【0033】
ガイドレール103は、架台101の定盤21側に設けられている。ガイドレール103は、X方向に沿って延在しており、架台101のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ7は、ガイドレール103に支持されている。キャリッジ7がガイドレール103に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール103によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール103に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
【0034】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじやリニアガイドなどを利用した機構が採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、図示しないキャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール103に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置11は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット13を、X方向に沿って往復移動させることができる。以下において、X(+)側の方向への移動を往路移動、X(−)側の方向への移動を復路移動とする。
上記の構成を有する液滴吐出装置1では、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させることによって、ワークWへのパターンの描画が行われる。
【0035】
液滴吐出装置1は、図5に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、ワーク搬送モーター123と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。
キャリッジ搬送モーター121、及びワーク搬送モーター123は、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、入力装置129及び表示装置131も、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0036】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ7を駆動するための動力を発生させる。ワーク搬送モーター123は、ワークテーブル25を駆動するための動力を発生させる。
入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
なお、吐出ヘッド33及び紫外線照射装置15は、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0037】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)(Read Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、描画すべきパターンが示される描画データや、描画処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、吐出制御部145と、照射制御部147と、表示制御部151と、を有している。
【0038】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、ワーク搬送モーター123の駆動とを、個別に制御する。
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、吐出ヘッド33の駆動を制御する。
照射制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、紫外線照射装置15における光源43の発光状態を制御する。
表示制御部151は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0039】
紫外線照射装置15は、図6(a)に示すように、ヘッドユニット13が往路方向(X(+)方向)に移動するときにヘッドユニット13の後方に位置するよう設けられている。
紫外線照射装置15は、紫外光41を発する光源43を有している。光源43からの紫外光41は、吐出ヘッド33から吐出された液状体53の硬化を促進させる。液状体53は、紫外光41の照射を受けると、硬化が促進する。
光源43としては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源43が採用され得る。
なお、本実施形態では、光源43のY方向における長さは、吐出ヘッド33のノズル列39よりもヘッドユニット13の下流側すなわちY(+)側に少なくともワークWの間欠副走査送り量分以上長くなるように設定されている。このため、ヘッドユニット13が復路方向(X(−)方向)に移動するときに吐出ヘッド33から吐出された液状体53は、ワークWの副走査後にヘッドユニット13の往路方向に移動するときに、吐出ヘッド33からの吐出と同時に、紫外線照射装置15から紫外光41の照射を受ける。この結果、ヘッドユニット13が往路及び復路移動時に、吐出ヘッド33から吐出された液状体53を十分に硬化させることができる。
【0040】
ここで、液滴吐出装置1における描画方法について図面に沿って説明する。
図6は、第1実施形態における液滴吐出装置1の描画動作を図1中のA視方向に見て示す説明図である。また、図7は、第1実施形態における描画処理の流れを示すフローチャートである。
まず、液滴吐出装置1における描画処理について説明する。
図5において、液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェイス133及びバス119を介して描画データを受け取ると、CPU113によって図7に示す描画処理が開始される。
ここで、描画データは、液状体53でワークWに描画すべきパターンを指示するものであり、描画すべきパターンがビットマップ状に表現されている。ワークWへのパターンの描画は、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を所定周期で吐出させることによって行われる。
【0041】
描画処理では、CPU113は、まず、ステップS1において、キャリッジ搬送指令をモーター制御部141に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7を往路開始位置に移動させる。
ここで、液滴吐出装置1では、描画エリアが設定されている。描画エリアは、図1に示すワークテーブル25によってY方向に沿って描かれる軌跡と、吐出ヘッド33によってX方向に沿って描かれる軌跡とが重なり合う領域である。
そして、往路開始位置は、キャリッジ7をX方向に沿って往復移動させるときの往路が開始する位置である。本実施形態では、往路開始位置は、平面視で、描画エリアの外側に位置している。本実施形態では、往路開始位置は、平面視で、描画エリアの支柱107a側に位置している。
【0042】
次いで、ステップS2において、CPU113は、ワーク搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWを描画エリアに移動させる。
【0043】
次いで、ステップS3において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の往復移動を開始させる。
ここで、キャリッジ7の往復移動では、キャリッジ7は、上述した往路開始位置と復路開始位置との間を往復移動する。つまり、往路開始位置から復路開始位置で折り返して往路開始位置に戻る経路がキャリッジ7の1往復である。このため、本実施形態では、往路開始位置から復路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の往路である。他方で、復路開始位置から往路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の復路である。
なお、復路開始位置は、X方向に描画エリアを挟んで往路開始位置に対峙する位置である。復路開始位置は、平面視で、描画エリアの外側に位置している。このため、往路開始位置と復路開始位置とは、平面視で、描画エリアをX方向に挟んで互いに対峙している。本実施形態では、復路開始位置は、平面視で、描画エリアの支柱107b側に位置している。
【0044】
次いで、ステップS4において、CPU113は、紫外線照射装置15に対する照射指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、紫外線照射装置15の光源43の駆動を制御して、紫外線照射装置15の光源43を点灯させる。
次いで、ステップS5において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が往路における描画開始位置に到達したか否かを判定する。
ここで、描画開始位置は、描画エリア内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を開始させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS6に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0045】
次いで、ステップS6において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での描画が開始される。
【0046】
次いで、ステップS7において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が往路における描画停止位置に到達したか否かを判定する。
ここで、描画停止位置は、描画エリア内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を停止させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS8に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達するまで処理が待機される。
【0047】
次いで、ステップS8において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、往路での描画が終了する。
次いで、ステップS9において、CPU113は、紫外線照射装置15に対する照射停止指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、紫外線照射装置15の光源43の駆動を制御して、紫外線照射装置15の光源43を消灯させる。
【0048】
次いで、ステップS10において、CPU113は、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS11に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0049】
次いで、ステップS11において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、改行指令を受けたモーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY(+)側に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
【0050】
ステップS12では、CPU113は、描画データが終了したか否かを判定する。このとき、描画データが終了した(Yes)と判定されると、処理がステップS20に移行する。他方で、描画データが終了していない(No)と判定されると、処理がステップS13に移行する。
ステップS13では、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が復路における描画開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS14に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が描画開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0051】
次いで、ステップS14において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、復路での描画が開始される。
【0052】
次いで、ステップS15において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が復路における描画停止位置に到達したか否かを判定する。このとき、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS16に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が描画停止位置に到達するまで処理が待機される。
【0053】
次いで、ステップS16において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、復路での描画が終了する。
【0054】
次いで、ステップS17において、CPU113は、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS18に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0055】
次いで、ステップS18において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、改行指令を受けたモーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY(+)側に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
【0056】
次いで、ステップS19において、CPU113は、描画データが終了したか否かを判定する。このとき、描画データが終了した(Yes)と判定されると、処理がステップS20に移行する。他方で、描画データが終了していない(No)と判定されると、処理がステップS4に移行する。
【0057】
次いで、ステップS20において、CPU113は、キャリッジ走査停止指令をモーター制御部141(図5)に出力してから、処理を終了させる。このとき、キャリッジ走査停止指令を受けたモーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の往復移動を停止させる。
【0058】
本実施形態において、ワークWが記録媒体に対応し、キャリッジ7がヘッド保持部材に対応し、X方向が主走査方向に対応し、キャリッジ搬送装置11が主走査方向変位装置に対応し、Y方向が副走査方向に対応し、ワーク搬送装置3が副走査方向変位装置に対応し、紫外光41及び紫外光44のそれぞれが紫外線に対応している。
【0059】
本発明の描画方法においては、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときと復路方向に移動するときとで、それぞれ液滴として吐出させる液状体の種類、または、液滴の態様の選定が大きなポイントとなっている。即ち、図6(a)に示すように、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときには、紫外線照射装置15がヘッドユニット13の進行方向に対して後方に位置する。このため、吐出ヘッド33から吐出された液状体の液滴55aがワークWに着弾後すぐに紫外線照射装置15から紫外光41を照射することができる。このため、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときには、比較的硬化時間の長い(硬化しづらい)液状体、または液滴を吐出することで、硬化しづらい液状体を効果的に硬化させることができる。
【0060】
一方、図6(b)に示すように、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときには、紫外線照射装置15がヘッドユニット13の進行方向に対して前方に位置する。このため、吐出ヘッド33から吐出されてワークWに着弾した液滴55bに対してすぐに紫外線照射装置15から紫外光41を照射することができない。このため、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときには、往路方向に移動するときに吐出する液状体よりも硬化しやすい液状体を吐出することで、液状体を効果的に硬化させることができる。
なお、硬化時間の長い(硬化しづらい)液状体とは、例えば図6(b)に示す液滴55bに対する図6(a)の液滴55aのように液滴量が大きいものを含む。
【0061】
本実施形態の描画方法で用いる液滴吐出装置1では、1個の紫外線照射装置15がヘッドユニット13の往路移動方向の後方に設置されている(図2および図6を参照)。このため、ヘッドユニット13の往路移動時には、吐出ヘッド33から吐出された液状体を吐出直後に紫外線照射装置15により紫外光41を照射することができる。また、ヘッドユニット13の復路移動時には、吐出ヘッド33から吐出された液状体を吐出直後に紫外線照射装置15により紫外光41を照射することができないため、ワークWの副走査後の吐出ヘッド往路移動後、ヘッドユニット13の復路移動時に吐出された液状体に対して、紫外線照射装置15により紫外光41を照射することができる。ヘッドユニット13の往路移動時は、液状体を吐出直後に紫外線照射装置15により紫外光41を照射することができるため、吐出ヘッド33からは、比較的効果時間の長い(硬化しづらい)液状体を吐出し、ヘッドユニット13の復路移動時は、液状体が吐出後時間をおいてからの紫外線照射装置15により紫外光41の照射となるため、吐出ヘッド33からは、往路移動時に吐出させる液状体よりも硬化しやすい液状体を吐出する。この結果、ワークWに塗布された液状体53を十分に硬化させることができる。従って、1台の液滴吐出装置1に対して、1台の紫外線照射装置15で、ワークWに塗布された液状体53を十分に硬化させることができるため、低コストな液滴吐出装置1を製造することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときに吐出ヘッド33から吐出された液状体の液滴55aの液滴量は、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときの吐出ヘッド33から吐出された液滴55bの液滴量より大きい。このため、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときに硬化しづらい液滴量の大きい液滴55aを吐出した直後に紫外線照射装置15により紫外光41を照射することができるため、ワークWに塗布された液状体53を十分に硬化させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときの移動速度は、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときの移動速度よりも遅い。ヘッドユニット13が往路方向に移動するときに吐出ヘッド33から吐出された液滴55aに対して紫外線照射装置15により紫外光41が照射されるまでの時間と、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときに吐出ヘッド33から吐出された液滴55bに対して紫外線照射装置15により紫外光41が照射されるまでの時間との差を小さくすることが出来る。これにより、ワークWに塗布された液状体53を十分に硬化させることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときに吐出ヘッド33から吐出された液滴55aの液滴量は、ヘッドユニット13の復路方向に移動するときの吐出ヘッド33から吐出された液滴55bの液滴量より大きいこととしたが、この限りではない。紫外線照射装置15からの紫外光41による液滴の硬化のしやすさは液滴量に拠らない場合があるためである。この場合、ヘッドユニット13の往路と復路で吐出ヘッド33から吐出される液滴量を、紫外線照射装置15からの紫外光41によって適正に硬化できるように液滴量を変化させる。
【0065】
また、本実施形態では、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときに、紫外線照射装置15は照射停止をしたが、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときに吐出ヘッド33から液滴55bを吐出しながら、紫外光41を照射することとしてもよい。この場合、往路で吐出ヘッド33から吐出された液状体53に対して、紫外光41を照射することができるため、より確実に液状体53を硬化させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときと、復路方向に移動するときの両方向とも吐出ヘッド33から液状体53を吐出することとしたが、往路方向のみ吐出ヘッド33から液状体53を吐出しても良い。この場合、吐出ヘッド33から吐出されたすべての液状体53に対して、吐出後すぐに紫外光41を照射することができるため、より確実に液状体53を硬化させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときと、復路方向に移動するときの両方向とも吐出ヘッド33から液状体53を吐出することとしたが、往路方向もしくは復路方向で吐出ヘッド33から液状体を吐出することなく、紫外線照射装置15から紫外光41を照射するのみの動作をしても良い。この場合、吐出ヘッド33から吐出された液状体53に対して、吐出後の紫外線照射とは別に紫外光41を照射することができるため、より確実に液状体53を硬化させることができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、液滴吐出装置1における異なる実施形態について図面に沿って説明する。
図8は、液滴吐出装置の第2実施形態におけるキャリッジを、図1中のA視方向にみたときの正面図である。なお、本実施形態の液滴吐出装置1はキャリッジ以外は第1実施形態と同じであるため、キャリッジ以外の構成は第1実施形態と同一のものとして説明を省略する。
図8において、第2実施形態の液滴吐出装置1におけるキャリッジ7´は、ヘッドユニット13と、2個の紫外線照射装置16a及び16bで構成される。紫外線照射装置16aは、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときの進行方向に対して後方に位置するよう設けられる。また、紫外線照射装置16bは、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときの進行方向に対して後方に位置するよう設けられる。
本実施形態では、紫外線照射装置16aは紫外線照射装置16bよりも照度が高いものとする。
ただし、紫外線照射装置16aは紫外線照射装置16bよりも照度が低いものとしても構わない。
【0069】
ヘッドユニット13が往路方向(X(+)方向)に移動するときに吐出ヘッド33から吐出された液状体の液滴53aは、紫外線照射装置16aの光源45aからの紫外光44aによって硬化される。
ヘッドユニット13が復路方向(X(−)方向)に移動するときに吐出ヘッド33から吐出された液状体の液滴53bは、紫外線照射装置16bの光源45bからの紫外光44bによって硬化される。
光源45a及び45bとしては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源45a及び45bが採用され得る。
紫外線照射装置16a及び16bの照度を変える手段としては、光源45a及び45bの種類を変える、または、LEDなどにおいては、電流値を変える、といったことが挙げられる。
【0070】
ここで、キャリッジ7´を備えた第2実施形態の液滴吐出装置における描画方法について説明する。図9は、第2実施形態における液滴吐出装置の描画動作を図1中のA視方向に見て示す説明図である。
図9(a)に示すように、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときに紫外線照射装置16aは、ヘッドユニット13の進行方向に対して後方に位置する。このため、吐出ヘッド33から吐出された液状体の液滴53aに対して吐出後すぐに照度が高い紫外線照射装置16aにより紫外光44aを照射することができる。そのため、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときには比較的硬化しづらい液状体を吐出することで、硬化しづらい液状体を効果的に硬化させることができる。
【0071】
一方、図9(b)に示すように、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときに紫外線照射装置16bは、ヘッドユニット13の後方に位置する。このため、吐出ヘッド33から吐出された液状体の液滴53bに対して吐出後すぐに紫外線照射装置16bから紫外光44bを照射することができる。紫外線照射装置16bは紫外線照射装置16aよりも照度が低いため、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときには、往路方向に移動するときに吐出する液状体よりも硬化しやすい液状体を吐出することで、液状体を効果的に硬化させることができる。
この場合、硬化しづらい液状体とは、例えば図9(a)に示す液滴53aのように、図9(b)の液滴53bよりも液滴量が大きいものを指す。
【0072】
以上、説明したように、本実施形態の液滴吐出装置のキャリッジ7´には、2個の紫外線照射装置16a及び16bが搭載されている。ここで、紫外線照射装置16bよりも照度が高い紫外線照射装置16aは、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときの進行方向に対して後方に位置するよう設けられている。また、紫外線照射装置16bは、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときの進行方向に対して後方に位置するよう設けられている。このため、ヘッドユニット13の往路移動時には、吐出ヘッド33から吐出された液状体の液滴53aを吐出直後に紫外線照射装置16aで紫外線照射装置16bよりも高い照度の紫外光44aを照射することができるため、吐出ヘッド33からは、硬化しづらい液状体の液滴53aを吐出すればよい。また、ヘッドユニット13の復路移動時には、吐出ヘッド33から吐出された液状体の液滴53bを吐出直後に紫外線照射装置16bから紫外線照射装置16aよりも低い照度の紫外光44bを照射することになるため、吐出ヘッド33からは、往路移動時よりも硬化しやすい液状体を吐出すればよい。この結果、ワークWに塗布された液状体を十分に硬化させることができる。従って、1台の液滴吐出装置に対して、1個の照度の高い紫外線照射装置16aと1個の照度の低い紫外線照射装置16bを搭載することにより、ワークWに塗布された液状体を十分に硬化させることができるため、照度の高い紫外線照射装置を2個搭載するよりも低コストな液滴吐出装置により描画をおこなうことが可能となる。
【0073】
また、本実施形態では、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときに、吐出ヘッド33から吐出された液状体の液滴53aの液滴量はヘッドユニット13が復路方向に移動するときの吐出ヘッド33から吐出された液滴53bの液滴量より大きい。このためヘッドユニット13が往路方向に移動するときには硬化しづらい液滴量の大きい液滴53aを吐出し、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときには硬化しやすい液滴量の小さい液滴53bを吐出する。このため、1台の照度が高い紫外線照射装置16aと1台の照度が低い紫外線照射装置16bとによりワークWに塗布された液状体を十分に硬化させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときの移動速度は、ヘッドユニット13が復路方向に移動するときの移動速度よりも遅い。ヘッドユニット13が往路方向に移動するときに吐出ヘッド33から吐出された液状体に対して紫外線照射装置16aにより紫外光44aが照射されるまでの時間を長くすることにより、吐出ヘッド33から吐出された硬化しづらい液滴53aを十分に硬化することができる。このため、ワークWに塗布された液状体を十分に硬化させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、ヘッドユニット13が往路方向に移動するときに吐出ヘッド33から吐出された液滴53aの液滴量はヘッドユニット13の復路方向に移動するときの吐出ヘッド33から吐出された液滴53bの液滴量より大きいとしたが、この限りではない。紫外線照射装置16a及び16bからの紫外光44a及び44bによる液滴の硬化のしやすさは液滴量に拠らない場合があるためである。この場合、ヘッドユニット13の往路と復路で吐出ヘッド33から吐出される液滴量を、紫外線照射装置16a,16bからの紫外光44a,44bによって適正に硬化できるように液滴量を変化させる。
【符号の説明】
【0076】
1…液滴吐出装置、3…ワーク搬送装置、7,7´…キャリッジ、11…キャリッジ搬送装置、13…ヘッドユニット、15,16a,16b…紫外線照射装置、21…定盤、21a…定盤の上面、23a,23b…ガイドレール、25…ワークテーブル、25a…記録媒体としてのワークを載置する載置面、31…ヘッドプレート、33…吐出ヘッド、35…ノズル面、37…ノズル、39,39a〜39d…ノズル列、41,44a,44b…紫外光、43,45a,45b…光源、46…ノズルプレート、47…キャビティープレート、48…振動板、49…圧電素子、51…キャビティー、53…液状体、53a,53b,55a,55b…液状体の液滴、101…架台、103…ガイドレール、107…一対の支柱、107a,107b…支柱、111…制御部、113…CPU、115…駆動制御部、117…メモリー部、119…バス、121…キャリッジ搬送モーター、123…ワーク搬送モーター、129…入力装置、131…表示装置、133…入出力インターフェイス、135…プログラムソフト、137…データ展開部、141…モーター制御部、145…吐出制御部、147…照射制御部、151…表示制御部、W…記録媒体としてのワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の照射を受けて硬化する性質を有する液状体を記録媒体に向けて吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドを保持するヘッド保持部材と、
前記記録媒体に対する前記ヘッド保持部材の位置を主走査方向の第1の方向と前記第1の方向の反対方向の第2の方向に往復移動させる主走査方向変位装置と、
前記ヘッド保持部材に対する前記記録媒体の位置を前記主走査方向と交差する副走査方向に間欠的に変化させる副走査方向変位装置と、
前記ヘッド保持部材の前記主走査方向の側面に設けられ、前記記録媒体に吐出された前記液状体に紫外線を照射する紫外線照射装置と、を備えた液滴吐出装置を用いた描画方法であって、
前記紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の前記第2の方向側の側面に設けられ、
前記ヘッド保持部材を前記第1の方向に走査したときに前記吐出ヘッドから吐出する第1の液状体の前記紫外線の照射による硬化時間が、前記ヘッド保持部材を前記第2の方向に走査したときに前記吐出ヘッドから吐出する第2の液状体の前記紫外線の照射による硬化時間よりも長いことを特徴とする描画方法。
【請求項2】
前記第1の液状体の液滴量は、前記第2の液状体の液滴量よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の描画方法。
【請求項3】
前記ヘッド保持部材の前記第1の方向に走査したときの移動速度を、前記ヘッド保持部材の前記第2の方向に主走査したときの移動速度よりも遅くすることを特徴とする請求項1及び2に記載の描画方法。
【請求項4】
紫外線の照射を受けて硬化する性質を有する液状体を記録媒体に向けて吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドを保持するヘッド保持部材と、
前記記録媒体に対する前記ヘッド保持部材の位置を主走査方向の第1の方向と前記第1の方向の反対方向の第2の方向に往復移動させる主走査方向変位装置と、
前記ヘッド保持部材に対する前記記録媒体の位置を前記主走査方向と交差する副走査方向に間欠的に変化させる副走査方向変位装置と、
前記ヘッド保持部材の主走査方向の両側面のうち一方の第1の側面に設けられ、前記記録媒体に吐出された前記液状体に紫外線を照射する第1の紫外線照射装置と、
前記ヘッド保持部材の主走査方向の前記第1の側面の反対側の第2の側面に設けられ、前記記録媒体に吐出された前記液状体に紫外線を照射する第2の紫外線照射装置と、を備えた液滴吐出装置を用いた描画方法であって、
前記第1の紫外線照射装置は、前記第2の紫外線照射装置よりも高い紫外線照度を有し、
前記第1の紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の走査方向に対して前記ヘッド保持部材の後方に位置するときに前記吐出ヘッドから吐出する第1の液状体の前記紫外線の照射による硬化時間が、前記第2の紫外線照射装置が前記ヘッド保持部材の走査方向に対して前記ヘッド保持部材の後方に位置するときに前記吐出ヘッドから吐出する第2の液状体の前記紫外線の照射による硬化時間よりも長いことを特徴とする描画方法。
【請求項5】
前記第1の液状体の液滴量は、前記第2の液状体の液滴量よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の描画方法。
【請求項6】
前記第1の液状体を吐出する走査方向での前記ヘッド保持部材の移動速度を、前記第2の液状体を吐出する走査方向での前記ヘッド保持部材の移動速度よりも遅くすることを特徴とする請求項4及び5に記載の描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−94742(P2013−94742A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240913(P2011−240913)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】