説明

描画装置

【課題】パターンの描画時間を短縮することが可能な描画装置を提供する。
【解決手段】ステージ1上にマスクブランクス10が固定される。ステージ1は、ステージ駆動部2によりY方向に沿って移動する。キャリッジ3A,3Bは、ステージ1の上方でX方向に延びるヘッド移動部31a,31bをそれぞれ有する。キャリッジ3Aのヘッド移動部31aには、ヘッド部4Aが取り付けられる。キャリッジ3Bのヘッド移動部31bには、ヘッド部4Bが取り付けられる。
レーザ光発生部5により発生されたレーザ光がヘッド部4A,4Bからステージ1上のマスクブランクス10に向けてそれぞれ出射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの製造のために、マスクブランクスにパターンを描画する描画方法および描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フォトマスクの製造には、レーザ光によりマスクブランクスにパターンの描画を行う描画装置が用いられる(例えば特許文献1参照)。描画装置は、一方向(以下、Y方向と呼ぶ)に移動可能なステージを有する。ステージの上方には、レーザ光を出射するためのヘッド部がY方向に垂直な一方向(以下、X方向と呼ぶ)に移動可能に設けられる。
【0003】
ステージ上にマスクブランクスが固定される。その状態で、ヘッド部がX方向に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクスに向けてレーザ光を出射する。これにより、マスクブランクス上のX方向に沿った一定幅の領域においてパターンの描画が行われる。
【0004】
次いで、ステージがY方向に沿って移動することにより、マスクブランクスの位置がY方向にずらされる。その状態で、上記同様にヘッド部がX方向に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクスに向けてレーザ光を出射する。これにより、上記の一定幅の領域と隣接する他の一定幅の領域において、パターンの描画が行われる。
【0005】
このように、X方向に沿った一定幅の領域において描画を行う毎に、マスクブランクスの位置をY方向にずらすことにより、マスクブランクスの全面において描画を行うことができる。
【特許文献1】特開2002−244272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、液晶ディスプレイ等の製品の大型化が進んでおり、これらの製品の製造時に必要なフォトマスクも大型化している。フォトマスクの大型化に伴い、パターンの描画時間が著しく増加する。そこで、生産効率を上げるためにパターンの描画時間の短縮が要望されている。
【0007】
本発明の目的は、パターンの描画時間を短縮することが可能な描画装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る描画装置は、レーザ光によりマスクブランクスにパターンの描画を行う描画装置であって、レーザ光を出射するための複数のレーザ光出射部と、複数のレーザ出射部を第1の方向およびその逆方向に往復移動させる複数の第1の移動機構と、複数のレーザ光出射部とマスクブランクスとを第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動させる第2の移動機構と、複数の第1の移動機構および第2の移動機構を制御するとともに複数のレーザ光出射部からのレーザ光の出射および非出射をそれぞれ制御する制御手段とを備えたものである。
【0009】
この描画装置においては、複数の第1の移動機構により複数のレーザ光出射部が第1の方向およびその逆方向に往復移動し、第2の移動機構により複数のレーザ光出射部とマスクブランクスとが第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動する。
【0010】
また、制御手段により複数の第1の移動機構および第2の移動機構が制御されるとともに複数のレーザ光出射部からのレーザ光の出射および非出射がそれぞれ制御される。それらにより、マスクブランクスの描画すべきパターンの部分にレーザ光が出射され、パターンが描画される。
【0011】
この場合、複数のレーザ光出射部によりパターンの描画を行うことにより、1つのレーザ光出射部によりパターンの描画を行う場合に比べて描画効率が向上する。それにより、パターンの描画時間を短縮することができる。
【0012】
(2)マスクブランクスは複数のレーザ光出射部に対応した複数の描画領域を有し、制御手段は、複数のレーザ光出射部によりそれぞれ異なる描画領域にそれぞれ独立して描画が行われるように、複数の第1の移動機構および第2の移動機構を制御するとともに複数のレーザ光出射部からのレーザ光の出射および非出射をそれぞれ制御してもよい。
【0013】
この場合、マスクブランクスの複数の描画領域に並行してパターンの描画を行うことができる。それにより、1つのレーザ光出射部によりパターンの描画を行う場合に比べて、パターンの描画時間を大幅に短縮することができる。
【0014】
(3)複数のレーザ光出射部は第2の方向に間隔をおいて配置され、制御手段は、複数のレーザ光出射部が第1の方向およびその逆方向に往復移動しつつそれぞれ所定のタイミングでレーザ光を出射し、複数のレーザ光出射部の往復移動ごとに複数のレーザ光出射部とマスクブランクスとが相対的に第2の方向に移動するように、複数の第1の移動機構および第2の移動機構を制御するとともに複数のレーザ光出射部からのレーザ光の出射および非出射をそれぞれ制御してもよい。
【0015】
この場合、第2の方向に間隔をおいて配置された複数のレーザ光出射部の各々により、マスクブランクスの第1の方向に沿った一定幅の領域ごとにパターンの描画が行われる。それにより、マスクブランクスの第2の方向に並ぶ複数の領域において並行して描画が行われる。その結果、パターンの描画時間が大幅に短縮される。
【0016】
(4)マスクブランクスは共通の描画領域を有し、制御手段は、複数のレーザ光出射部によりそれぞれ異なる描画条件で共通の描画領域に描画が行われるように、複数の第1の移動機構および第2の移動機構を制御するとともに複数のレーザ光出射部からのレーザ光の出射および非出射をそれぞれ制御してもよい。
【0017】
この場合、1回の動作で複数の異なる描画条件によるパターンの描画を行うことができる。それにより、短時間で高精細なパターンの描画を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数のレーザ光出射部によりパターンの描画を行うことにより、1つのレーザ光出射部によりパターンの描画を行う場合に比べて描画効率が向上する。それにより、パターンの描画時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る描画装置について図面を参照しながら説明する。
【0020】
(1)第1の実施の形態
(1−1)構成
図1は、第1の実施の形態に係る描画装置の構成を示す模式図である。図1において、水平面内で互いに直交する2方向をX方向およびY方向と定義する。
【0021】
図1に示すように、描画装置100は、ステージ1、ステージ駆動部2、キャリッジ3A,3B、ヘッド部4A,4B、レーザ光発生部5、オンオフ切替部6A,6Bおよび制御部7を備える。
【0022】
ステージ1上にマスクブランクス10が固定される。マスクブランクス10は、例えばガラス基板上にクロム(Cr)等からなる遮光性薄膜および感光性膜が順に形成された構成を有する。ステージ1は、ステージ駆動部2によりY方向に沿って移動する。
【0023】
キャリッジ3A,3Bはそれぞれ門型形状を有し、ステージ1の上方でX方向に延びるヘッド移動部31a,31bをそれぞれ有する。ヘッド移動部31a,31bのY方向における間隔は、ステージ1上に固定されるマスクブランクス10のY方向における長さの略2分の1に設定される。なお、種々の大きさのマスクブランクス1に対応するために、ヘッド移動部31a,31bのY方向における間隔が変更可能であることが好ましい。
【0024】
キャリッジ3Aのヘッド移動部31aには、ヘッド部4Aが取り付けられる。ヘッド部4Aは、キャリッジ3Aのヘッド移動部31aに沿ってX方向に移動可能に構成される。キャリッジ3Bのヘッド移動部31bには、ヘッド部4Bが取り付けられる。ヘッド部4Bは、キャリッジ3Bのヘッド移動部31bに沿ってX方向に移動可能に構成される。
【0025】
レーザ光発生部5は、例えばクリプトンイオンレーザを有し、レーザ光を発生する。そのレーザ光は、図示しないビームスプリッタにより2つに分離される。分離された一方のレーザ光は、図示しない光学系および反射鏡によりオンオフ切替部6Aを通してヘッド部4Aに導かれる。他方のレーザ光は、図示しない光学系および反射鏡によりオンオフ切替部6Bを通してヘッド部4Bに導かれる。そして、これらのレーザ光がヘッド部4A,4Bからステージ1上のマスクブランクス10に向けてそれぞれ出射される。なお、ヘッド部4A,4Bに導かれるレーザ光がさらに分離され、複数本のレーザ光がヘッド部4A,4Bの各々から出射されてもよい。
【0026】
また、本実施の形態では、共通のレーザ光発生部5により発生されたレーザ光がヘッド部4A,4Bから出射されるが、ヘッド部4A,4Bの各々に対応するように2つのレーザ光発生部が設けられてもよい。
【0027】
オンオフ切替部6Aにより、ヘッド部4Aからのレーザ光の出射のオンオフが切り替えられる。また、オンオフ切替部6Bにより、ヘッド部4Bからのレーザ光の出射のオンオフが切り替えられる。
【0028】
ここで、図1においては、マスクブランクス10上の領域が、X方向に平行な破線S1によって2等分されている。以下の説明において、破線S1を境界とするマスクブランクス10上の一方の領域を第1の描画領域10Aと呼び、他方の領域を第2の描画領域10Bと呼ぶ。
【0029】
本実施の形態では、ヘッド部4Aによってマスクブランクス10の第1の描画領域10Aにおけるパターンの描画が行われ、ヘッド部4Bによってマスクブランクス10の第2の描画領域10Bにおけるパターンの描画が行われる。
【0030】
制御部7は、描画すべきパターンに対応する描画データに基づいてオンオフ切替部6A,6Bをそれぞれ制御する。本実施の形態では、マスクブランクス10の第1の描画領域10Aに対応する描画データに基づいてオンオフ切替部6Aのオンオフが制御され、マスクブランクス10の第2の描画領域10Bに対応する描画データに基づいてオンオフ切替部6Bのオンオフが制御される。
【0031】
また、制御部7は、ヘッド部4A,4Bの動作およびステージ駆動部2の動作をそれぞれ制御する。なお、複数のオンオフ切替部および複数のヘッド部に対応するように複数の制御部が設けられてもよい。
【0032】
(1−2)動作
次に、図1に示した描画装置100の動作の概要について説明する。図2〜図4は、描画装置100の動作について説明するための模式的平面図である。
【0033】
まず、図2(a)に示すように、ヘッド部4Aの下方にマスクブランクス10の第1の描画領域10Aの端部が位置しかつヘッド部4Bの下方にマスクブランクス10の第2の描画領域10Bの端部が位置するように、ステージ1の位置が調整される。
【0034】
なお、上記のように、ヘッド移動部31a,31bのY方向における間隔は、マスクブランクス10のY方向における長さの略2分の1に設定される。そのため、第1の描画領域10Aに対するヘッド部4AのY方向における相対位置と、第2の描画領域10Bに対するヘッド部4BのY方向における相対位置とが、互いにほぼ一致する。すなわち、ヘッド部4Aの下方に第1の描画領域10Aの端部が位置する状態では、ヘッド部4Bの下方に第2の描画領域10Bの端部が位置する。
【0035】
次に、図2(b)に示すように、ヘッド部4Aがヘッド移動部31aの一端部から他端部に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクス10の第1の描画領域10Aに向けてレーザ光を出射する。同時に、ヘッド部4Bがヘッド移動部31bの一端部から他端部に移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクス10の第2の描画領域10Bに向けてレーザ光を出射する。
【0036】
これにより、マスクブランクス10の第1の描画領域10Aにおいて、X方向に沿ったストライプ領域P1aにパターンの描画が行われ、マスクブランクス10の第2の描画領域10Bにおいて、X方向に沿ったストライプ領域P1bにパターンの描画が行われる。なお、ストライプ領域P1aは第1および第2の描画領域10Aの境界線(破線S1)に沿い、ストライプ領域P1bはマスクブランクス10のX方向に平行な一辺に沿う。
【0037】
続いて、図3(c)に示すように、ヘッド部4A,4Bがレーザ光の出射を停止した状態でヘッド移動部31a,31bの一端部にそれぞれ戻る。また、ステージ1がストライプ領域P1a,P1bの幅分だけY方向に移動する。
【0038】
そして、図3(d)に示すように、ヘッド部4A,4Bが再びヘッド移動部31a,31bの一端部から他端部にそれぞれ移動しつつ所定のタイミングでマスクブランクス10の第1および第2の描画領域10A,10Bに向けてそれぞれレーザ光を出射する。これにより、ストライプ領域P1aに隣接するストライプ領域P2aにパターンの描画が行われるとともに、ストライプ領域P1bに隣接するストライプ領域P2bにパターンの描画が行われる。
【0039】
このようにして、マスクブランクス10の第1および第2の描画領域10A,10Bにおいて、それぞれストライプ領域毎にパターンの描画が行われる。最終的に、図4(e)に示すように、ヘッド部4Aによってマスクブランクス10の第1の描画領域10Aの全面(複数のストライプ領域P1a〜Pza)においてパターンの描画が行われる。また、ヘッド部4Bによってマスクブランクス10の第2の描画領域10Bの全面(複数のストライプ領域P1b〜Pzb)においてパターンの描画が行われる。ここで、Zは2以上の整数である。
【0040】
(1−3)効果
このように、本実施の形態では、マスクブランクス10の第1の描画領域10Aにおける描画と第2の描画領域10Bにおける描画とがヘッド部4A,4Bに分担されて同時に行われる。これにより、1つのヘッド部によってマスクブランクス10の全面に描画を行う場合に比べて、描画時間を略半分に短縮することができる。
【0041】
また、描画装置100の動作の精度は所定量の許容誤差を有するが、その許容誤差は描画の開始時点から終了時点までの過程で累積される。そのため、例えば1つのヘッド部によりマスクブランクス10のX方向に沿う一辺から他辺にかけて描画を行う場合、他辺側の領域において、描画すべきパターンと実際に描画されるパターンとのずれが大きくなる。
【0042】
それに対して、本実施の形態では、ヘッド部4A,4Bにより分担して描画を行うことにより、許容誤差の累積を抑制することができる。したがって、描画すべきパターンと実際に描画されるパターンとの間に大きなずれが発生することを抑制することができる。
【0043】
(1−4)応用例
上記実施の形態では、キャリッジおよびヘッド部が2対設けられるが、キャリッジおよびヘッド部がそれぞれ3対以上設けられてもよい。この場合、マスクブランクス10へのパターンの描画を3つ以上のヘッド部に分担して同時に行うことができる。それにより、描画時間のさらなる短縮が可能になるとともに、許容誤差の累積をより十分に抑制することができる。
【0044】
なお、複数のキャリッジは、それぞれY方向に一定の間隔で配置されることが好ましい。その場合、各ヘッド部による描画面積を均一にすることができる。そのため、描画効率をさらに向上させることができる。ただし、複数のヘッド部間の干渉および複数のヘッド部から出射されるレーザ光間の干渉が生じないように、複数のキャリッジの間隔を調整する必要がある。
【0045】
また、上記実施の形態では、ヘッド部4A,4BがY方向に固定され、ステージ1がY方向に移動可能に構成されるが、これに限らず、ステージ1がY方向に固定され、ヘッド部4A,4BがY方向にそれぞれ独立に移動可能に構成されてもよい。
【0046】
この場合、ヘッド部4Aとヘッド部4Bとを互いに異なる速度でY方向に移動させることができる。そのため、例えばヘッド部4A,4Bの一方により高密度なパターンの描画を行い、他方により低密度なパターンの描画を行うときに、一方のヘッド部の移動速度を低くし、他方のヘッド部の移動速度を高くすることができる。これにより、描画効率をさらに向上させることが可能になる。
【0047】
なお、この場合には、ヘッド部4Aにより描画を行う領域の面積とヘッド部4Bにより描画を行う領域の面積とが異なってもよい。
【0048】
(2)第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態に係る描画装置について、上記第1の実施の形態と異なる点を説明する。
【0049】
本実施の形態では、ヘッド部4Aに対応する描画パラメータとヘッド部4Bに対応する描画パラメータとが互いに異なる値に設定される。ここで、描画パラメータは、マスクブランクス10への描画条件を決定するための種々のパラメータを含む。
【0050】
描画パラメータの例として、レーザ光のビーム数およびビーム径が挙げられる。また、実際のパターンの描画時には、ヘッド部4A,4BがX方向に移動しながらヘッド部4A,4Bから出射されるレーザ光が一定の周期でX方向と交差する方向に振られる。この振れ量を描画パラメータとしてもよい。
【0051】
また、パターンの描画時には、レーザ光による温度変化等に起因してマスクブランクス10に歪みが発生する。さらに、パターンの描画後の工程においてもマスクブランクス10に歪みが発生することがある。このような歪みによる精度の低下を抑制するために、予め補正値を算出し、その補正値に基づいて描画を行ってもよい。その場合、この補正値を描画パラメータとしてもよい。
【0052】
ところで、高精細なパターンの描画を行うためには、パターンの部分に応じて描画パラメータの値を変更することが望ましい。例えば、パターンの縁部を描画する場合には、その内側の領域を描画する場合に比べてより細かい描画が可能なように描画パラメータを変更することが望ましい。
【0053】
しかしながら、動作中に描画パラメータの値を変更することは困難である。そのため、ヘッド部を1つのみ備えた描画装置においては、一旦マスクブランクス10の全面への描画を終了した後に、描画パラメータの値を変更して再度マスクブランクス10の全面への描画を行う必要がある。通常、ヘッド部の移動速度は一定であるので、マスクブランクス10の全面への描画を複数回行う場合には、描画時間が著しく増加する。
【0054】
それに対して、本実施の形態では、ヘッド部4Aに対応する描画パラメータとヘッド部4Bに対応する描画パラメータとが互いに異なる値に設定されることにより、短い時間で高精細なパターンの描画を行うことが可能となる。以下、その詳細を説明する。
【0055】
(2−1)動作
第2の実施の形態に係る描画装置の動作について説明する。図5〜図7は、第2の実施の形態に係る描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【0056】
なお、図5(a)に示すように、本実施の形態に係る描画装置100aにおいては、上記第1の実施の形態に係る描画装置100に比べて、キャリッジ3A,3Bが互いに近接するように設けられる。
【0057】
まず、図5(a)に示すように、ヘッド部4Aの下方にマスクブランクス10の端部が位置するように、ステージ1の位置が調整される。続いて、図5(b)に示すように、ヘッド部4Aによりストライプ領域P1,P2,・・・に順にパターンの描画が行われる。この場合、ヘッド部4Bは停止した状態で維持される。なお、ストライプ領域P1,P2,・・・への描画時におけるヘッド部4Aの動作は、ストライプ領域P1a,P2a,・・・への描画時におけるヘッド部4Aの動作と同様である(図2〜図5参照)。
【0058】
ヘッド部4Aによるストライプ領域Piへの描画が終了した時点で、図6(c)に示すように、ヘッド部4Bがマスクブランクス10の端部の上方(ストライプ領域P1の上方)に位置する状態となる。ここで、iは1以上の整数であり、本例では4である。
【0059】
この場合、図6(d)に示すように、ヘッド部4Aによりストライプ領域Pi+1(本例ではP5)への描画が行われるときに、ヘッド部4Bによりストライプ領域P1への描画が行われる。
【0060】
上記のように、ヘッド部4Bに対応する描画パラメータの値は、ヘッド部4Aに対応する描画パラメータの値と異なる。そのため、ヘッド部4Bにより、ヘッド部4Aと異なる条件でストライプ領域P1に描画が行われる。
【0061】
そして、ヘッド部4Aによりストライプ領域Pi+1,Pi+2,・・・に順に描画が行われるとともに、ヘッド部4Bによりストライプ領域P1,P2,・・・に順に描画が行われる。なお、ストライプ領域P1,P2,・・・への描画時におけるヘッド部4Bの動作は、ストライプ領域P1b,P2b,・・・への描画時におけるヘッド部4Bの動作と同様である(図2〜図5参照)。
【0062】
その後、図7(e)に示すように、ヘッド部4Aによるマスクブランクス10の全面(ストライプ領域P1〜Pz)への描画が終了する。続いて、図7(f)に示すように、ヘッド部4Bによるマスクブランクス10の全面(ストライプ領域P1〜Pw)への描画が終了する。ここで、wは2以上の整数であり、上記zの略2倍である。
【0063】
(2−2)効果
このように、本実施の形態では、ヘッド部4A,4Bに対応する描画パラメータが互いに異なる値に設定された状態で、ヘッド部4A,4Bによりマスクブランクス10の全面にパターンの描画が行われる。この場合、1回の動作で、パターンの部分に応じて異なる条件で描画を行うことができる。したがって、1つのヘッド部により描画を行う場合に比べて、短時間で高精細なパターンの描画を行うことができる。
【0064】
(2−3)応用例
上記第2の実施の形態では、キャリッジおよびヘッド部が2対設けられるが、キャリッジおよびヘッド部がそれぞれ3対以上設けられてもよい。この場合、3つ以上のヘッド部に対応する描画パラメータをそれぞれ異なる値に設定することにより、1回の動作において3つ以上の条件で描画を行うことが可能になる。
【0065】
また、上記第2の実施の形態では、ヘッド部4A,4BがY方向に固定され、ステージ1がY方向に移動可能に構成されるが、これに限らず、ステージ1がY方向に固定され、ヘッド部4A,4BがそれぞれY方向に移動可能に構成されてもよい。この場合、設定された描画パラメータに応じて、ヘッド部4Aとヘッド部4Bとを互いに異なる速度でY方向に移動させることができる。
【0066】
(3) 請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0067】
上記実施の形態においては、X方向が第1の方向の例であり、Y方向が第2の方向の例であり、ヘッド部4A,4Bがレーザ光出射部の例であり、キャリッジ3A,3Bおよびヘッド部4A,4Bが第1の移動機構の例であり、ステージ駆動部2が第2の移動機構の例であり、制御部7が制御手段の例であり、第1および第2の描画領域10A,10Bが描画領域の例である。
【0068】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、種々のマスクブランクスへのパターンの描画に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施の形態に係る描画装置の構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施の形態に係る描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【図5】第2の実施の形態に係る描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【図6】第2の実施の形態に係る描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【図7】第2の実施の形態に係る描画装置の動作について説明するための模式的平面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ステージ
2 ステージ駆動部
3A,3B キャリッジ
4A,4B ヘッド部
5 レーザ光発生部
6A,6B オンオフ切替部
7 制御部
10 マスクブランクス
10A 第1の描画領域
10B 第2の描画領域
31a,31b ヘッド移動部
100,100a 描画装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光によりマスクブランクスにパターンの描画を行う描画装置であって、
レーザ光を出射するための複数のレーザ光出射部と、
前記複数のレーザ出射部を第1の方向およびその逆方向に往復移動させる複数の第1の移動機構と、
前記複数のレーザ光出射部と前記マスクブランクスとを前記第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動させる第2の移動機構と、
前記複数の第1の移動機構および前記第2の移動機構を制御するとともに前記複数のレーザ光出射部からのレーザ光の出射および非出射をそれぞれ制御する制御手段とを備えたことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記マスクブランクスは前記複数のレーザ光出射部に対応した複数の描画領域を有し、
前記制御手段は、前記複数のレーザ光出射部によりそれぞれ異なる描画領域にそれぞれ独立して描画が行われるように、前記複数の第1の移動機構および前記第2の移動機構を制御するとともに前記複数のレーザ光出射部からのレーザ光の出射および非出射をそれぞれ制御することを特徴とする請求項1記載の描画装置。
【請求項3】
前記複数のレーザ光出射部は前記第2の方向に間隔をおいて配置され、
前記制御手段は、前記複数のレーザ光出射部が前記第1の方向およびその逆方向に往復移動しつつそれぞれ所定のタイミングでレーザ光を出射し、前記複数のレーザ光出射部の往復移動ごとに前記複数のレーザ光出射部と前記マスクブランクスとが相対的に前記第2の方向に移動するように、前記複数の第1の移動機構および前記第2の移動機構を制御するとともに前記複数のレーザ光出射部からのレーザ光の出射および非出射をそれぞれ制御することを特徴とする請求項2記載の描画装置。
【請求項4】
前記マスクブランクスは共通の描画領域を有し、
前記制御手段は、前記複数のレーザ光出射部によりそれぞれ異なる条件で前記共通の描画領域に描画が行われるように、前記複数の第1の移動機構および前記第2の移動機構を制御するとともに前記複数のレーザ光出射部からのレーザ光の出射および非出射をそれぞれ制御することを特徴とする請求項1記載の描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−44261(P2010−44261A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208957(P2008−208957)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(302003244)株式会社エスケーエレクトロニクス (31)
【Fターム(参考)】