説明

提灯

【課題】作業時の傷付きを防止でき、更に、作業性や加工性に優れること。
【解決手段】基台10に対して回動自在な回動部材51と、基台10に穿設した取付穴13に装着され、回動部材51の軸部52が挿通される貫通孔63を有し、回動部材50の軸部52を回動自在に保持する保持部材60とから火袋止め具40が構成され、回動部材50の軸部52は、スリット溝部58によって弾性的に変位可能に形成された係止突部57を下部に設け、保持部材60の貫通孔63への挿入に伴って、この係止突部5がその弾性変化によって貫通孔63を通過し、その通過後に、自己の弾性力で復元して保持部材60に係合することにより、保持部材60からの離脱が防止される。また、回動部材50の軸部52の上部に垂直に一体形成され水平方向に延びたストッパ部51は、保持部材60への装着状態で、その下端面が基台10の上面に当接しないように配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お盆用、葬祭用、納涼用、装飾用、照明用等に使用される据え置き型等の提灯で、大内行灯、行灯、灯篭とも呼ばれるもので、特に、火袋止め具の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
据え置き型の提灯として、例えば、本発明者らが先に特許を取得した特許文献1に開示された提灯を挙げることができる。特許文献1に開示された提灯を始めとする一般的な据え置き型の提灯(Usual)においては、図13に示すように、主に、光源を収容する火袋(U5)(なお、ここで( )内の数字は、特許文献1の図面の構成部品を示すものであり、それを区別するために頭部に「U」を付して表現する。)と、火袋(U5)の下部が設置される基台(U1)(ツバ、ロクロとも呼ばれる)と、基台(U1)の下部に取付けられる複数本の脚(U3)(下足とも呼ばれる)と、基台(U1)に立設され、火袋(U5)の上部を保持する火袋吊り具(U2)とから構成されており、通常、基台(U1)には、火袋(U5)の下部外輪(U53)をフランジ(U11)に固定するための火袋止め具(U23)(押さえ具)が取付けられている。
【0003】
そして、特許文献1に開示された従来の火袋止め具(U23)は、図14に示すように、一端を外方向斜め上方に屈曲させた平板状の金属金具をネジや釘によって基台(1)の上部に回動自在に取付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−47429
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に開示された従来の火袋止め具(U23)は、上述の如く、金属板の金具であり、かつ、回動操作を行い易くするために金属板の一端を外方向斜め上方に屈曲させていることから、提灯の使用にあたって提灯を組み立てる際や解体する際に、不意に、提灯の構成部品や作業周辺にある物に対して傷を付けてしまう恐れがあった。
また、嵩張りや収納の観点から、購入時に火袋止め具(U23)と基台(U1)とが別途となっていて、購入後に火袋止め具(U23)を基台(U1)に取付ける形態の場合に、従来においては、ネジや釘によって火袋止め具(U23)を回動自在に基台(U1)に取付ける構造であったことから、ネジの締め具合や釘の打ち込み具合によっては火袋止め具(U23)の金具の下面が回動により基台(U1)に当接し、基台(U1)を傷付けてしまう恐れがあった。そのうえ、火袋止め具(U23)の繰り返しの回動操作により、ネジや釘等に緩みが生じやすく、金具の下面が回動により基台(U1)に当接して基台(U1)を傷付けてしまわないよう微調整が必要となることもあり、金具とネジや釘とを適切な位置に調節し、維持することが困難で、この点でも使用性に劣っていた。
【0006】
そこで、本発明は、かかる不具合を解決すべくなされたものであって、作業時の傷付きを防止でき、作業性や加工性にも優れた提灯の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の提灯は、光源を収容する火袋の上部を保持する火袋吊り具が立設されると共に、前記火袋吊り具が立設される面の反対側の下面に複数本の脚が取付けられる基台の上面側に取付けられ、前記火袋の下部を前記基台に固定する火袋止め具は、前記基台に穿設した取付穴に装着される保持部材と、前記保持部材に対して回動自在に挿入され、前記保持部材との係合によって離脱を防止する軸部及び前記軸部の上部から水平方向に延びたストッパ部を有する回動部材で構成されたものである。
【0008】
ところで、上記火袋は、ローソク、なつめ電球、LED等の光源を収容する、所謂、提灯の本体部分を意味するものである。
また、上記基台は、光源を保持し、火袋の下部が設置され、かつ、火袋吊り具の取付台となるものであり、この火袋吊り具は、提灯を展開するのに必要な背骨に当るものである。
【0009】
そして、上記火袋止め具は、基台に設置される火袋下部の上方向への移動を規制して火袋を基台に固定し、火袋の基台からの離脱を防止するものであり、基台に穿設した取付穴に装着される保持部材と、この保持部材に対して回動自在に装着され、火袋の上方向への移動を規制する回動部材とによって構成されている。
【0010】
上記保持部材は、回動部材が挿入されて回動部材を回動自在に保持するものであり、また、基台に穿設した取付穴に挿入されて基台に取付けられるものである。その取付手段は、火袋の展開により回動部材を介して保持部材が上方向に引っ張られたときでも取付穴から離脱する(上方へ抜け出す)ことなく、安定した取付状態を維持できれば、特に問われるものではなく、例えば、係止片を形成し、この係止片を基台に係合させる物理的手段や、接着剤やネジ等による機械的手段等が挙げられる。
【0011】
また、上記回動部材は、保持部材に対して回動自在に挿入されるものであり、保持部材との係合によって離脱を防止する軸部と、当該軸部の上部から水平方向に延びて基台の上面側に配設され、火袋の下部に対向してその上方向への移動を規制するストッパ部とを有するものである。
ここで、上記回動部材の軸部において、保持部材との係合によって離脱を防止するとは、火袋の展開により回動部材に上方向への引っ張り力が加えられたときでも、回動部材の軸部と保持部材との係合によって軸部の上方向への移動を規制して保持部材から抜け出ることのないようにすることを意味する。
【0012】
請求項2の発明の提灯は、光源を収容する火袋の下面に取付けられる基台の前記火袋側に取付けられ、前記火袋の下部を前記基台に固定する火袋止め具は、前記基台に穿設した取付穴に装着される保持部材と、前記保持部材に対して回動自在に挿入され、前記保持部材との係合によって離脱を防止する軸部及び前記軸部の上部から水平方向に延びたストッパ部を有する回動部材で構成されたものである。
【0013】
ところで、上記火袋は、ローソク、なつめ電球、LED等の光源を収容する、所謂、提灯の本体部分を意味するものである。
また、上記基台は、光源を保持し、火袋の下部が設置される取付台となるものである。
【0014】
そして、上記火袋止め具は、基台に設置される火袋下部の上方向への移動を規制して火袋を基台に固定し、火袋の基台からの離脱を防止するものであり、基台に穿設した取付穴に装着される保持部材と、この保持部材に対して回動自在に装着され、火袋の上方向への移動を規制する回動部材とによって構成されている。
【0015】
上記保持部材は、回動部材が挿入されて回動部材を回動自在に保持するものであり、また、基台に穿設した取付穴に挿入されて基台に取付けられるものである。その取付手段は、火袋の展開により回動部材を介して保持部材が上方向に引っ張られたときでも取付穴から離脱する(上方へ抜け出す)ことなく、安定した取付状態を維持できれば、特に問われるものではなく、例えば、係止片を形成し、この係止片を基台に係合させる物理的手段や、接着剤やネジ等による機械的手段等が挙げられる。
【0016】
また、上記回動部材は、保持部材に対して回動自在に挿入されるものであり、保持部材との係合によって離脱を防止する軸部と、当該軸部の上部から水平方向に延びて基台の上面側に配設され、火袋の下部に対向してその上方向への移動を規制するストッパ部とを有するものである。
ここで、上記回動部材の軸部において、保持部材との係合によって離脱を防止するとは、火袋の展開により回動部材に上方向への引っ張り力が加えられたときでも、回動部材の軸部と保持部材との係合によって軸部の上方向への移動を規制して保持部材から抜け出ることのないようにすることを意味する。
【0017】
請求項3の発明の前記火袋止め具の保持部材は、前記軸部が挿通される貫通孔を有し、前記基台に穿設した取付穴に弾接し、その離脱を困難とする係止片を設けたものである。
ここで、上記軸部が挿通される貫通孔は、軸部に対して所定の接触抵抗で軸部を回動自在に保持することができれば、その形状は、特に問われるものではなく、水平断面が略円形状の貫通孔とすることもできるし、水平断面を略角形状に形成することもできる。
【0018】
請求項4の発明の前記火袋止め具の保持部材は、下方に向かって縮径するテーパ状の斜状部を有する逆円錐台の係止片を有し、前記係止片における斜状部の周囲が前記基台に穿設した取付穴の周面に係合することにより、前記取付穴からの離脱が防止されるものである。
ここで、上記保持部材は、下方に向かって縮径するテーパ状の斜状部を複数段有する逆円錐台の係止片を有し、前記係止片における斜状部の周囲が前記基台に穿設した取付穴の周面に係合するものである。
【0019】
請求項5の発明の前記火袋止め具の保持部材は、ネジまたは釘によって前記基台に取付けられたものである。
ここで、上記保持部材は、ネジまたは釘によって、基台に固着自在に配設されるものであればよい。
【0020】
請求項6の発明の前記火袋止め具の保持部材は、前記軸部が挿通される貫通孔の周囲に上下方向に貫通するスリット開口を設け、その弾性的に変位によって前記基台に穿設した取付穴に固着自在としたものである。
ここで、前記軸部が挿通される貫通孔の周囲に上下方向に貫通するスリット開口は、保持部材全体を弾性体として機能させるものである。
【0021】
請求項7の発明の前記火袋止め具の軸部は、前記保持部材に対して回動自在に挿入され、自己の弾性力によって前記保持部材の端部と係合してその離脱を防止するものである。
ここで、前記保持部材の端部と前記軸部との係合とは、前記保持部材の端部に前記軸部の端部が係合することにより軸部の離脱が防止できればよい。
【0022】
請求項8の発明の前記火袋止め具のストッパ部は、前記軸部の上部から水平方向に延び、その下端面が前記基台の上面に当接しないように配設され、回動によって基台の周囲から食み出して突出するものである。
ここで、前記軸部の上部から水平方向に延び、その下端面が前記基台の上面に当接しないように配設とは、前記軸部の基端部に形成したストッパ部が前記基台の上面に接触して擦り傷等を生じさせないものであればよい。
【0023】
請求項9の発明の前記火袋止め具のストッパ部は、前記保持部材と特定の位置で嵌合する凸部または凹部を設けたものである。
ここで、特定の位置で嵌合する凸部と凹部は、前記ストッパ部と前記保持部材との何れに、凸部または凹部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明に係る提灯は、光源を収容する火袋の上部を保持する火袋吊り具が立設されると共に、前記火袋吊り具が立設される面の反対側の下面に複数本の脚が取付けられる基台の上面側に取付けられ、前記火袋の下部を前記基台に固定する火袋止め具は、前記基台に穿設した取付穴に装着される保持部材と、前記保持部材に対して回動自在に挿入され、前記保持部材との係合によって離脱を防止する軸部及び前記軸部の上部から水平方向に延びたストッパ部を有する回動部材で構成されたものである。
したがって、回動部材を保持部材に挿入するという簡単な操作で、回動部材が保持部材に回動自在に安定して保持され、回動部材の回動によって基台を傷付けることのない適切な位置にその取付状態が維持されることになる。また、使用者にとっても、火袋止め具の回動部材において、その回動によって基台を傷付けることのない適切な位置への取付けが容易にできることになる。故に、この発明に係る提灯は、作業時の傷付きを防止でき、作業性や加工性に優れるものである。
【0025】
請求項2の発明に係る提灯は、光源を収容する火袋の下面に取付けられる基台の前記火袋側に取付けられ、前記火袋の下部を前記基台に固定する火袋止め具は、前記基台に穿設した取付穴に装着される保持部材と、前記保持部材に対して回動自在に挿入され、前記保持部材との係合によって離脱を防止する軸部及び前記軸部の上部から水平方向に延びたストッパ部を有する回動部材で構成されている。
したがって、回動部材を保持部材に挿入するという簡単な操作で、回動部材が保持部材に回動自在に安定して保持され、回動部材の回動によって基台を傷付けることのない適切な位置にその取付状態が維持されることになる。また、使用者にとっても、火袋止め具の回動部材において、その回動によって基台を傷付けることのない適切な位置への取付けが容易にできることになる。故に、この発明に係る提灯は、作業時の傷付きを防止でき、作業性や加工性に優れるものである。
【0026】
請求項3の発明に係る提灯の前記火袋止め具の保持部材は、前記軸部が挿通される貫通孔を有し、前記基台に穿設した取付穴に弾接し、その離脱を困難とする係止片を設けたものであるから、前記貫通孔に前記軸部が挿通されるだけで、適切な位置に回動部材を保持し、また、係止片によって基台に穿設した取付穴に弾接し、取付穴からの離脱が困難となる。よって、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、簡単な係合方法であり、安定した取付け状態が維持できる。
【0027】
請求項4の発明に係る提灯の前記火袋止め具の保持部材は、下方に向かって縮径するテーパ状の斜状部を有する逆円錐台の係止片を有し、前記係止片における斜状部の周囲が前記基台に穿設した取付穴の周面に係合することにより、前記取付穴からの離脱が防止されるものであるから、請求項1または請求項2記載の効果に加えて、前記基台に穿設した取付穴に簡単に挿着でき、容易に離脱できなくなる。即ち、簡単な構成で安定した取付け状態が維持できる。
【0028】
請求項5の発明に係る提灯の前記火袋止め具の保持部材は、ネジまたは釘によって前記基台に取付けられものであるから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、ネジまたは釘という常套手段で固着が可能である。
【0029】
請求項6の発明に係る提灯の前記火袋止め具の保持部材は、前記軸部が挿通される貫通孔の周囲に上下方向に貫通するスリット開口を設け、その弾性的に変位によって前記基台に穿設した取付穴に固着自在としたものであるから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、前記基台に穿設した取付穴に簡単に挿着でき、容易に離脱できなくなる。即ち、簡単な構成で安定した取付け状態が維持できる。
【0030】
請求項7の発明に係る提灯の前記火袋止め具の軸部は、前記保持部材に対して回動自在に挿入され、自己の弾性力によって前記保持部材の端部と係合してその離脱を防止するものであるから、前記保持部材に前記軸部が挿入されるだけで、前記保持部材の端部と係合してその離脱が困難となる。したがって、請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の効果に加えて、簡単な係合方法であり、安定した取付け状態が維持できる。
【0031】
請求項8の発明に係る提灯の前記火袋止め具のストッパ部は、前記軸部の上部から水平方向に延び、その下端面が前記基台の上面に当接しないように配設され、回動によって基台の周囲から食み出して突出する構造を有しているから、請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の効果に加えて、回動部材のストッパ部の下面が基台の上面に当接しない適切な配置状態となり、かつ、回動部材を保持部材の貫通孔に挿入するだけで、確実に前記回動部材の回動によって基台を傷付けることのない適切な位置に回動部材が保持部材に取付けられることになる。
【0032】
請求項9の発明に係る前記火袋止め具のストッパ部は、前記保持部材と特定の位置で嵌合する凸部と凹部を設けものであるから、請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の効果に加えて、ストッパ部の停止位置を正確にすることができ、かつ、容易に変化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る提灯の全体構造を示す全体斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋が火袋止め具によって基台に固定される状態を示す火袋周辺の部分斜視図及びその要部拡大図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具の構造を説明するための分解斜視図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具の詳細を示す斜視図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具が基台に取付けられた状態を示す図2の切断線A−AによるA−A断面図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具における保持部材の貫通孔の形状を説明するための説明図であり、(a)は貫通孔を丸孔とした事例の説明図であり、(b)は貫通孔を三角孔とした事例の説明図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具における保持部材の貫通孔の形状を説明するための説明図であり、(a)は貫通孔を四角孔とした事例の説明図、(b)は貫通孔を六角孔とした事例の説明図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具の変形例1に係る回動部材の軸部を説明するための説明図であり、(a)は斜視図、(b)は基台に取付けられた状態を示す断面図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具の変形例2に係る回動部材のストッパ部を説明するための説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は上から見た平面図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具の変形例3に係るに回動部材のストッパ部を説明するための説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は上から見た平面図である。
【図11】図11は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具の変形例4に係るに保持部材を説明するための説明図であり、(a)は斜視図、(b)は上から見た平面図、(c)は側面図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態に係る提灯の火袋止め具の変形例5に係る保持部材を説明するための説明図であり、(a)は斜視図、(b)は上から見た平面図、(c)は側面図である。
【図13】図13は従来の据え置き型の提灯の一般的な構造を説明するための提灯の斜視図である。
【図14】図14は従来の火袋止め具を説明するための火袋止め具周辺の部分斜視図及びその拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分を意味するものであるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0035】
[実施の形態]
まず、本発明の実施の形態に係る提灯の全体構造について、図1及び図2を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る提灯Lは、蝋燭や電球等の光源を収容する火袋1と、火袋1の下部が設置される略円盤状の基台10と、基台10の下面側に取付けられる複数本(図1においては、約120℃の間隔で放射線状に3本)の脚20と、基台10の上面側に立設され火袋1の上部を保持する火袋吊り具30とを基本骨格として構成されており、更に、基台10の上面側に設けられ火袋1の下部を固定する火袋止め具40を有している。
【0036】
火袋1は、竹ひご等の細線材で全体の骨組みを形成し、それに和紙や絹等を張って伸縮自在に形成された本体2と、本体2の上部に設けられ所定幅のリング状からなる木製の上部外輪3と、本体1の下部に設けられ同じく所定幅のリング状からなる木製の下部外輪4とから構成されており、上部外輪3には火袋1を吊るための吊り紐3aが配設されている。
【0037】
基台10は、下部外周に外方に向かって突出するフランジ部11が一体形成された円盤体であり、フランジ部11の上側に火袋1の下部外輪4が載置されるようになっている。因みに、基台10において、フランジ部11より上部の厚さは、下部外輪4をフランジ部11上に載置して基台10の周囲に嵌め込んだときに、基台10の上面と下部外輪4の上面とが略面一となるように下部外輪4の厚さと略同一に形成されている。
また、基台10の略中央部には、発光手段である電球等の光源を取付けるための光源取付孔12が厚み方向(上下方向)に貫通して形成されており、光源が着脱自在に設けられるようになっている。なお、通常、基台10の上部周縁には後述する火袋吊り具30の一対の支柱31を立設するための一対の凹部12a(図1のみ図示。図2及び図3においては、図示省略されている。)が形成されており、また、基台10の下面側には後述する複数の脚20を取付けるための複数の凹部(図示せず)が形成されている。
【0038】
脚20は、基台10を支える支持脚であり、基台10の下面側に取付けられるものである。基台10への接続は公知の手段が採用され、通常、上端部に凸部(図示せず)が形成されており、この凸部(図示せず)を基台10の下面部に形成された凹部(図示せず)に嵌合させることにより、基台10の下面側に取付けられるようになっている。脚20が基台10の下面側に取付けられた後は、脚20の内側で上下方向の略中央部に略三角形の補強部材21が装着され、脚20が互いに連結して補強されると共に、各脚20間の間隔が維持されて位置決めされ、各脚20の配置が固定される。なお、補強部材21の脚20への接続も公知の手段が採用され、通常、補強部材21の端部に形成した凸部(図示せず)と、脚20の内側の上下方向の略中央部に設けた凹部(図示せず)との嵌合によって行われる。
【0039】
火袋吊り具30は、火袋1の上部を保持する一対の支柱31と、一対の支柱31の上端を跨ぐようにして取付けられて支柱31を所定の感覚で維持する略C字状の雲手32から構成されている。そして、雲手32の下方であって、一対の支柱31の上部外側部には一対の釘状の掛け具33が突設されており、火袋1の上部外輪3に取付けられた吊り紐3aが掛けられるようになっている。一対の支柱31の基台10への接続は公知の手段が採用され、通常、一対の支柱31の下端に形成された凸部(図示せず)を基台10の上部周縁に形成された凹部12a(図1)に嵌入することによって、基台10の上部に立設される。また、一対の支柱31と略C字状の雲手32との接続も公知の手段が採用され、通常、支柱31の上部外側部に形成された凹部(図示せず)と略C字状の雲手21の端部に設けられた凸部(図示せず)の嵌合によって行われる。
【0040】
これらの基本的形態はそれが公知のものと相違するものではなく、個々の部品形状が相違するものがあっても、公知の提灯の構成である。また、基台10、脚20、火袋吊り具30は、通常、ほぼ全体が木製で構成されている。
そして、このように構成される提灯Lは、基台10の下面側に脚20を取付け、また、基台10の上面側に火袋吊り具30を取付け、更に、火袋1の下部外輪4を基台10のフランジ部11上に載置して基台10の外周に嵌め込み、火袋1の吊り紐3aを火袋吊り具30の掛け具33に掛けることで火袋1が展開し、使用状態とされる。
【0041】
このとき、図2に示すように、基台10の上面側には、その中心に対して同心円状に約120℃の間隔で3つの火袋止め具40が設けてあるので、この火袋止め具40を基台10のフランジ部11上に載置された火袋1の下部外輪4に対向するよう配置させることで、火袋1の展開によって火袋1が基台10から離脱する(外れる)のを防止することができ、火袋1を基台10に安定して固定することができる。
なお、図1及び図2において、火袋止め具40は、基台10の中心に対して同心円状に約120℃の間隔で基台10の周縁側に3つ設けられているが、本発明を実施する場合には、火袋1を基台10に安定して固定することができれば、その数はこれに限定されるものではなく、通常は、2個乃4個程度設けられる。
【0042】
ここで、本実施の形態に係る火袋止め具40の詳細な構造について図3乃至図7を参照して説明する。
本実施の形態に係る火袋止め具40は、図3乃至図7に示すように、水平方向に延びるストッパ部51及びストッパ部51の下部から垂直に突出する軸部52が合成樹脂により一体成形されてなる回動部材50と、回動部材50の軸部52が挿通される貫通孔63を有し、同じく合成樹脂により一体形成されてなる保持部材60とから構成されている。
【0043】
具体的に、本実施の形態に係る回動部材50のストッパ部51は、その上面が一様に水平に形成されており、その下面は段差状に形成され、後述する保持部材60が基台10の取付穴13に嵌入された状態で生じるフランジ部62と基台10の上面との段差に対応している(図5参照)。なお、便宜上、段差状に形成された下面のうち、下部に向かって軸部52が突出形成されている面を軸部形成面53とし、軸部形成面53から段差を介して連続に形成され、火袋1の下部外輪4に対向させる面を押さえ面54とした。
また、ストッパ部51の長手方向一端の側面側には、押さえ面54から連続して斜め上方向に傾斜する傾斜面55が形成されており、下部が上方に向かってカーブする形状となる火袋1の展開状態に対応可能となっている。
更に、傾斜面55が形成されている側の長手方向端部は、手を掛けて容易に回動操作を行うための上方突部56とされている。
【0044】
ストッパ部51の下部から垂直方向に突出した軸部52は、その下部に、下端に向かって縮径するテーパ状の係止突部57を形成しており、この係止突部57を含む軸部52の下部の水平方向略中央には、軸部52を2分する縦方向のスリット溝部58が形成されている。そして、この軸方向(上下方向)に延びて下部に向かって開口するスリット溝部58によって、係止突部57の内方(縮径方向)への弾性変形が許容され、係止突部57は弾性的に変位可能となっている。また、係止突部57の上面は、軸方向に略直交する段差面57aとされていて、後述するように、弾性変形により保持部材60の貫通孔63を通過した係止突部57は、自己の弾性力により形状復帰して、その段差面57aが貫通孔63周囲の保持部材60の下端面に対向するようになっている。そして、火袋1の展開により上方への外力が加えられたときでも、この段差面57aが貫通孔63周囲の保持部材60の下端面に当接し、貫通孔63に挿通された軸部52の上方向の移動が規制されるようになっている。
【0045】
なお、係止突部57の略水平方向(軸方向に対して略直交する方向)への突出度合は、スリット溝部58を閉塞させる方向にスリット溝部58両側の係止突部57を互いに弾性変形させて接近させたときに、スリット溝部58を介しての係止突部57の直径が、後述する保持部材60の貫通孔63の直径より小さくなり、係止突部57の貫通孔63への通過が許容されるよう適宜範囲に設定される。
【0046】
そして、本実施の形態においては、後述するように、保持部材60が基台10に装着された状態において、保持部材60がフランジ部62の厚み分だけ基台10の上面から突出する構造となっており、上述の如く、それに対応すべくストッパ部51の下面は段差状に形成され、軸部形成面53が押さえ面54より上側に位置し、回動部材50の保持部材60への装着状態で、軸部形成面53は基台10の上面に接触しない位置関係となっているが、更に、ストッパ部51の下端面となる押さえ面54においても、基台10の上面に当接しない構造となるように、軸部形成面53と押さえ面54との段差寸法が設計される。具体的には、回動部材50の保持部材60への装着状態で、ストッパ部51がその押さえ面54と基台10の上面との間に約0.2mm〜約1mmの間隙を設けて配設されるように設定される。また、ストッパ部51の長さは、回動によって基台10の上面周囲から食み出して突出するよう、基台10に対して相対的に設定される。
【0047】
ストッパ部51の押さえ面54と基台10の上面との間の間隙は、保持部材60のフランジ部62の厚みと軸部形成面53との接触によって決定され、押さえ面54は火袋1の下部外輪4をがたつくことなく押圧するように、軸部形成面53の面よりも基台10側にその面が形成されている。即ち、軸部形成面53の面と押さえ面54との間に段差をなくしても、火袋1の下部外輪4をがたつくことなく押圧する構造にするには、火袋1の下部外輪4を幅広に形成すればよい。故に、軸部形成面53の面と押さえ面54との間の段差は、本発明を実施する場合、必ずしも必要とするものではない。
しかし、本実施の形態のように、軸部形成面53の面と押さえ面54との段差により、ストッパ部51の押さえ面54と基台10の上面との間の間隙を狭くする方が見栄えがよい。
【0048】
また、本実施の形態に係る火袋止め具40を構成する保持部材60は、下方に向かって縮径するテーパ状の斜状部61aを有する逆円錐台の係止片61が複数(本実施の形態においては4つ)連続的に接続された形状を呈し、その上部には円盤状のフランジ部62が一体形成されている。また、保持部材60の略中央には、上下方向に貫通する貫通孔63が形成されている。
ここで、水平断面が略円形状の軸部52が挿通される貫通孔63の水平断面の形状は、例えば、図6(a)に示すように、円形状とすることもできるし、図6(b)に示すように、三角形状とすることもできるし、図7(a)に示すように、四角形状とすることもできるし、図7(b)に示すように、六角形状とすることもできる。何れにせよ、軸部52に貫通孔63の周面(保持部材60の内周面)が線接触または面接触して適度な弾接状態で軸部52が回動自在に保持される寸法形状であればよく、様々な形状を採用することができる。
【0049】
なお、本実施の形態において、保持部材60の上に形成されたフランジ部62の直径は、基台10に穿設される取付穴13の直径よりも大きく設定されており、保持部材60を取付穴13に挿入した際に、このフランジ部62が取付穴13周囲の基台10の上面に当接して保持部材60のそれ以上の下方向への侵入が規制されるようになっている。このため、保持部材60の取付穴13への装着状態で、フランジ部62がその厚み分だけ基台10から僅かに突出することになる(図5参照)。
【0050】
このように構成された火袋止め具40の基台10への組み付けにあたっては、基台10に保持部材60に対応する断面円形状の取付穴13が凹状にドリル等によって穿設され、図5に示すように、この取付穴13に保持部材60を挿入し、また、保持部材60の貫通孔63に回動部材50の軸部52を挿入することよって、火袋止め具40が基台10に組み付けられる。なお、この取付けは前後を逆にすることもできる。
なお、基台10に穿設される取付穴13は、保持部材60における各係止片61の上面と略同径にし、その深さは、保持部材60の取付穴13への装着状態において、保持部材60の貫通孔63に回動部材50を挿入したときに、回動部材50の係止突部57が保持部材60の下端部から突出するのを凹状の取付穴13の底面によって阻止しないよう、換言すれば、係止突部57が貫通孔63を通過して保持部材60下端部からの突出が許容されるよう、適宜範囲に設定される。
【0051】
ここで、保持部材60を基台10の取付穴13に順に押し込んでいくと、保持部材60の係止片61が取付穴13の側周面に沿って下方向へと摺動する。
そして、本実施の形態においては、保持部材60の上部に一体形成されたフランジ部62の直径が基台10の取付穴13の径よりも大きく設定されているため、このフランジ部62が取付穴13周囲の基台10の上面に当接して保持部材60のそれ以上の下方向への侵入が規制され、保持部材60の取付穴13への嵌め込みが完了する。なお、このとき、上述の如く、フランジ部62はその厚み分だけ僅かに基台10から突出することになる。
【0052】
また、回動部材50の軸部52を保持部材60の貫通孔63に順に押し込んでいくと、貫通孔63の周面により軸部52におけるスリット溝部58両側の一対の係止突部57が互いに接近する方向へ押圧されて弾性変形され、スリット溝部58を介しての係止突部57の直径が貫通孔63の径より小さくなり、係止突部57の貫通孔63への通過が許容される。その通過後は、係止突部57が自己の弾性力によって形状復帰し、軸方向に略直交する係止突部57の段差面57aが貫通孔63周囲の保持部材60の下端面(底面)に対向する。
【0053】
そして、本実施の形態においては、回動部材50は、保持部材60のフランジ部62にストッパ部51の軸部形成面53が当接するまで押し込まれ、保持部材60に装着される。このとき、回動部材50においては、ストッパ部51の下端面となる押さえ面54が基台10の上面と当接しないように基台10に対して約0.2mm〜約1mmの間隙を設けて配設されるようになっている。
このようにして貫通孔63に挿通された軸部52は、保持部材60よって回動自在に保持される。特に、保持部材60及び回動部材60は合成樹脂で形成されており、合成樹脂の性質である弾力性のため、保持部材60は回動部材60にガタつきなく回動自在に保持される。
【0054】
このように、本実施の形態に係る火袋止め具40は、保持部材60を基台10の取付穴13に挿入し、また、回動部材50を保持部材60の貫通孔63に挿入するという簡単な操作で、基台10に容易に組み付けることができる。
特に、本実施の形態において、回動部材50の軸部52は、その下部の係止突部57が下部に向かって縮径するテーパ状に形成されているため、容易に貫通孔63へ挿入することができ、更に、保持部材60においても、その形状が逆円錐台の係止片61が連続的に接続された形状であり、下端部が下部に向かって縮径するテーパ状に形成されているため、取付穴13への挿入が容易にできる。
【0055】
また、この回動部材50の保持部材60への装着状態で、回動部材50におけるストッパ部51下端面の押さえ面54が基台10の上面と当接しないように所定の間隙を設けて配設されているので、回動部材50の回動によって基台10の上面に傷が付くことはない。
故に、回動部材50を保持部材60の貫通孔63に挿入するだけで、回動部材50の回動によって基台10を傷付けることのない適切な位置に回動部材50が保持部材60に取付けられることになる。
【0056】
このため、回動部材50と保持部材60が別体であることから保持部材60のみを取付穴13に取付けた状態で販売し、購入後に、使用者が回動部材50を保持部材60に取付ける形態とした場合には、使用者(特に提灯Lの購入が多い年配者)にとっても火袋止め具40の回動部材50を保持部材60の貫通孔63に挿入するだけで、基台10を傷付けることのない適切な位置への取付けが容易にできることになる。また、保持部材60の貫通孔63に回動部材50の軸部52を楽な力で挿入できるため、無理な外力の付与、殊に、軸部52のスリット溝部58の根元側に弾性限界を超えて無理な力がかかることが防止され、スリット溝部58の根本付近が破損する恐れもなく、組付信頼性も向上する。
したがって、本実施の形態に係る火袋止め具40は、作業性や加工性に優れるものである。
【0057】
そして、このようにして基台10に組み付けられた火袋止め具40は、基台10のフランジ部11上に火袋1の下部外輪4が挿着される際、挿着の邪魔とならないようにストッパ部51の上方突部56側の一端が基台10の上面と対向する位置に回動され、下部外輪4が基台1の外周に嵌め込まれフランジ部11上に下部外輪4が載置された後は、ストッパ部51が回動によって基台10の周囲から食み出して突出するように設計されていることから、ストッパ部51の押さえ面54がフランジ部11上の下部外輪4と対向する位置に回動される。
【0058】
このとき、本実施の形態においては、回動部材50のストッパ部51の一端側に、水平方向に延びる上方突部56が形成されていることから、その上方突部56に手を掛けることで簡単に回動操作ができる。
【0059】
また、本実施の形態に係る火袋止め具40は、ストッパ部51の上面が水平方向に延びる水平面となっており、図14に示した従来例のように金具の一端が外方に向けて斜め上方に突き出ている構造でないため、火袋1を基台10へ装着する作業時や脚20及び火袋吊り具30を基台10に取付ける作業時等の提灯Lの組み立て作業時、または解体作業時に、不意に、これら提灯Lの構成部品や周辺にある物に接触して傷を付けてしまうという事態を防ぐことができる。特に、本実施の形態に係る火袋止め具40は合成樹脂で形成されているため、構成部品等に接触した場合であっても傷を付けにくい。
【0060】
更に、提灯Lを組み立てる際には、初めに、脚20を取付けるために基台10をその上面が下となるように載置し、基台10の下面を上にして脚20を取付けるのが一般的であり、従来例においては、金具の上面が外方に向けて斜め上方に屈曲しているため、金具が基台10に取付けられている状態で基台10を地面等に載置した際に、がたついていて基台10に脚20が取付け難く作業性が悪かったが、本実施の形態においては、ストッパ部51の上面が一様に水平に形成されているため、基台10を安定的に載置でき、基台10への脚20の取付けが行いやすく作業性が良好となる。
【0061】
そして、ストッパ部51の押さえ面54がフランジ部11上の下部外輪4と対向する位置に配置されることで、火袋1を折り畳み状態から展開してその上部の吊り紐3aを火袋吊り具30の掛け具33に掛けるときに火袋1が上方向に引っ張られても、火袋止め具40によって下部外輪4が押さえられ、フランジ部11から下部外輪4が離脱することなく、火袋1が基台10に安定的に固定される。
【0062】
このとき、保持部材60の貫通孔63に挿通された回動部材50は、その軸部52における係止突部57が、貫通孔63を通過後に自己の弾性力で復元して貫通孔63の径より大きくなり、その上面の段差面57aが貫通孔63周囲の保持部材60の下端面(底面)に対向するため、火袋1の展開により上方向に引っ張られたときでも、係止突部57の段差面57aが保持部材60の下端面に当接(係合)することで、軸部52の上方向への移動が規制され、回動軸部50は保持部材60に安定して保持される。即ち、火袋1が上方向に引っ張られたときでも、回動部材50の係止突部57が保持部材60の下端面に係止されるため、回動部材50が保持部材60から離脱する(上方へ抜け出す)ことはなく、安定した取付け状態が維持される。
【0063】
また、本実施の形態においては、保持部材60が下方に向かって縮径するテーパ状の斜状部61aを有する逆円錐台の係止片61によって形成されているため、保持部材60を基台10の取付穴13に挿入した際に、取付穴13の周面に斜状部61aの上部外周(係止片61の上面外周)が摺接し、更に、合成樹脂の性質である弾力性により、斜状部61aの上部外周が下端側に撓んだ状態になる。このため、火袋1を吊るべく折り畳み状態から展開するときに上方向の引っ張り力が加えられても、斜状部61aの上部外周が取付穴13の内周面に引っ掛かって(係合して)圧接力(接触抵抗)が増し、保持部材60が取付穴13から離脱する(上方へ抜け出す)ことはない。即ち、保持部材60においても、安定した取付け状態が維持されている。なお、図においては、保持部材60は逆円錐台の係止片61が4つ連続的に接続された構造を呈しているが、取付穴13の周面に対して所定の接触抵抗以上となり取付穴13から離脱し難い構造であれば、勿論、係止片61の数はこれに限定されるものではなく、また、係止片61を軸方向に断続的に配設した構造とすることも可能である。
【0064】
更に、火袋1が展開した使用状態では、火袋1における本体2の下部が上方向に向かってカーブする形状となるため、本実施の形態においては、それに対応し、回動部材50におけるストッパ部51一端の側面側には、押さえ面54から連続して上方向に傾斜する傾斜面55が形成されている。このため、回動部材50が基台1に装着された状態でストッパ部51が火袋1の本体2の下部に接触して火袋1を破損させる恐れはない。
【0065】
このように、本実施の形態に係る提灯Lは、光源を収容する火袋1と、上面側に火袋1の上部を保持する火袋吊り具30が立設されると共に、火袋1の下部が設置され、下面側に複数本の脚20が取付けられる基台10と、基台10の上面側に取付けられ、火袋1の下部を基台10に固定する火袋止め具40とを具備し、火袋止め具40は、スリット溝部58によって弾性的に変位可能に形成された係止突部57を下部に設けた軸部52及び軸部52の上部に垂直に一体形成され水平方向に延びたストッパ部51からなり基台10に対して回動自在な回動部材50と、基台10に穿設した取付穴13に装着され、回動部材51の軸部52が挿通される貫通孔63を有し、回動部材50の軸部52を回動自在に保持する保持部材60とから構成され、回動部材50の軸部52においては、保持部材60の貫通孔63への挿入に伴って係止突部57がその弾性変化によって貫通孔63を通過し、その通過後に、自己の弾性力で復元して保持部材60に係合することにより、保持部材60からの離脱が防止され、また、回動部材50のストッパ部51においては、保持部材60への装着状態で、その下端面が基台10の上面に当接しないように配設され、かつ、長手方向の両端部の上面が外方に向けて傾斜しておらず水平に形成されているものである。
【0066】
したがって、本実施の形態に係る提灯Lによれば、回動部材50を保持部材60に挿入するという簡単な操作で、回動部材50が保持部材60に回動自在に安定して保持されてその取付状態が維持され、また、このとき、回動部材50のストッパ部51下端面の押さえ面54が基台10の上面に当接しない適切な配置状態となる。即ち、回動部材50を保持部材60の貫通孔63に挿入するだけで、回動部材50の回動によって基台10を傷付けることのない適切な位置に回動部材50が保持部材60に取付けられることになる。
このため、使用者にとっても、火袋止め具40の回動部材50において、その回動によって基台10を傷付けることのない適切な位置への取付けが容易にできることになる。
【0067】
また、本実施の形態に係る提灯Lは、作業性や加工性に優れるものである。
特に、回動部材50における軸部52の下部に設けた係止突部57は、下方に向かって縮径するテーパ状に形成されていることから、保持部材60の貫通孔63への挿入が容易にできる。また、無理な外力が付与されることが防止されることから、回動部材50を破損する恐れもない。
【0068】
加えて、保持部材60においても、下方に向かって縮径するテーパ状の段差面57aを有する逆円錐台の係止片57によって形成されているため、保持部材60の貫通孔63への挿入が容易にでき、更に、段差面57aの上部外周が取付穴13に係合し離脱が防止される。よって、保持部材60を基台10の取付穴13に挿入するという簡単な操作だけで安定して固定され、組み付けが容易である。
更に、回動部材50及び保持部材60を合成樹脂で形成したことで、適度な弾性が付与されることから、基台10に穿設した取付穴13への保持部材60の挿入や、保持部材60の貫通孔63への軸部52の挿入が一層容易に行える。加えて、回動部材50及び保持部材60が、合成樹脂で形成してあることで、挿入後は、ガタつきなく保持され、更に、任意の強い機械的強度を有することから、繰り返しの使用に耐えることができる。
【0069】
また、回動部材50のストッパ部51においては、長手方向の両端部の上面が外方に向けて傾斜しておらず上面が一様に水平に形成されてなるものであるから、提灯Lの組み立て作業時または解体作業時に、不意に、これら提灯Lの構成部品や周辺にある物に接触して傷付けてしまうという事態を防止することができる。
更に、本実施の形態においては、回動部材50のストッパ部51の一端の側面側には、火袋1の下部外輪4と対向する押さえ面54から斜め上方に向かって傾斜する傾斜面55が形成されているため、展開状態で上方向に向かってカーブする形状となる火袋1の本体2の下部にストッパ部51が接触して火袋1を破損してしまう恐れもない。
加えて、回動部材50及び保持部材60は、合成樹脂で形成したものであることから、例え、構成部材等に接触しても傷を付けにくい。
【0070】
更に、本実施の形態においては、回動部材50のストッパ部51の長手方向一端側に、水平方向に延びる上方突部56を形成していることから、その上方突部56に手を掛けて簡単に回動操作ができ、操作性が良好である。
このようにして、作業時の傷付きを防止でき、作業性や加工性にも優れた提灯Lとなる。
【0071】
ところで、本発明を実施する場合には、回動部材70は、上記のストッパ部51及び軸部52の形状に限定されるものではなく、軸部52においては、係止突部が溝部によって弾性的に変位可能に形成されていればよく、例えば、スリット溝部58を十字状に形成(軸部52を4分割するように形成)することもできるし、更に、軸部の形状を図8に示すような形状とすることができる。
【0072】
図8に示すように、変形例1に係る回動部材70の軸部72は、ストッパ部51から垂直方向に延び、途中で段差的に縮径する軸本体部79とその下部に一体形成された下端に向かって縮径するテーパ状の係止突部77からなり、軸本体部79と係止突部77と間に、上部が開口し下部に向かって縮径する溝部78が環状に連続して形成されている。なお、変形例1に係る回動部材70も合成樹脂により一体に形成されたものである。
そして、この軸本体部79と係止突部77の間に形成された溝部78によって、係止突部77は内方(縮径方向)への弾性変形が許容され、弾性的に変位可能となっている。
【0073】
また、係止突部77の上面は、軸本体部79の軸方向に略直交する段差面77aとされていて、上記実施の形態における係止突部57と同様、図8(b)に示すように、弾性変形により保持部材60の貫通孔63を通過した係止突部77は、自己の弾性力により形状復帰して、その段差面77aが貫通孔63周囲の保持部材60の下端面(底面)に対向するようになっている。そして、火袋1の展開により上方への外力が加えられたときでも、この段差面77aが貫通孔63周囲の保持部材60の下端面に当接し、貫通孔63に挿通された軸部72の上方向の移動が規制されるようになっている。
なお、係止突部77の略水平方向への突出度合も、上記実施の形態における係止突部57と同様、溝部78を閉塞する方向に係止突部77を弾性変形させたときに、溝部78を介しての係止突部77の直径が、保持部材60の貫通孔63の直径より小さくなり、係止突部77の通過が許容されるよう、適宜範囲に設定される。
【0074】
そして、このように構成された回動部材70の軸部72においても、保持部材60の貫通孔63に押し込まれると、貫通孔63の周面により軸本体部79と係止突部77と間に形成された溝部78を介して係止突部77が軸本体部79に接近する方向へ押圧されて弾性変形され、貫通孔63の径より小さくなり、係止突部77の貫通孔63への通過が許容される。その通過後は、係止突部77が自己の弾性力により形状復帰し、軸方向に略直交する係止突部77の段差面77aが貫通孔63周囲の保持部材60の下端面(底面)に対向する。このため、火袋1を吊るべく折り畳み状態から展開するときに上方向の引っ張り力が加えられたときでも、係止突部77の段差面77aが保持部材60の下端面に当接(係合)し、軸部72の上方向への移動が規制され、保持部材60からの離脱が防止される。
更に、本変形例1では、回動部材70のストッパ部51は、保持部材60に形成された丘陵状の凸部66に嵌合する凹部69を設け、保持部材60の特定の位置で嵌合するものであり、火袋1の下部外輪4がストッパ部51によって効率よく抑えられた位置で、両者が嵌合し、その嵌合によって安定した保持状態が維持できる。この変形例1では、保持部材60に凸部66と回動部材70に凹部69を設けたものであるが、逆に、回動部材70に凸部66と保持部材60に凹部69を設けることもできる。何れにせよ、相対的に嵌合が生じるものであればよい。
【0075】
また、本発明を実施する場合には、ストッパ部においても、上記のストッパ部51の形状に限定されるものではなく、例えば、図9または図10に示すような形状に形成することも可能である。
図9に示すように、変形例2に係る回動部材80のストッパ部81は、上面が水平に形成されてなる上方突部86を長手方向一端部の上部に設けており、ストッパ部81の上部は段差状となっているものの、その上面は水平に形成されている。また、その下面も、上記のストッパ部51と同様、段差状に形成されていて、下部に向かって軸部52が突出形成されている面を軸部形成面83とし、軸部形成面83から段差を介して連続に形成され、火袋1の下部外輪4に対向させる面を押さえ面84としている。更に、ストッパ部81の長手方向一端の側面は、押さえ面84から連続して斜め上方向に傾斜する傾斜面85となっており、下部が上方に向かってカーブする形状となる火袋1の展開状態に対応している。
【0076】
このように構成された回動部材80においても、ストッパ部81の長手方向一端部の上部に、水平方向に延びる上方突部86が形成されていることから、その上方突部86に手を掛けることで簡単に回動部材80の回動操作ができることになる。そして、この変形例2に係る回動部材80においても、長手方向の両端部の上面が外方に向けて傾斜していないことから、提灯Lの組み立て作業時または解体作業時に、不意に、これら提灯Lの構成部品や周辺にある物に接触して傷付けてしまうという事態は防止される。また、ストッパ部81の一端部の側面に、火袋1の下部外輪4と対向する押さえ面84から斜め上方に向かって傾斜する傾斜面85が形成されているため、展開状態で上方向に向かってカーブする形状となる火袋1の下部にストッパ部81が接触して火袋1を破損してしまう恐れはない。
【0077】
また、図10に示すように、変形例3に係る回動部材90のストッパ部91は、上部に長手方向に延びる弓なりに曲がっている弧状山脈状の上方突部96を形成しているものの上面は水平に形成され、また、その下面は、上記のストッパ部51と同様、段差状に形成されていて、下部に向かって軸部52が突出形成されている面を軸部形成面93し、軸部形成面93から段差を介して連続に形成され、火袋1の下部外輪4に対向させる面を押さえ面94としている。更に、ストッパ部91の長手方向一端の側は、押さえ面94から連続して斜め上方向に傾斜する傾斜面95となっており、火袋1の下部が上方に向かってカーブする形状となる火袋1の展開状態に対応している。
【0078】
このような構成のストッパ部91においても、上部に長手方向に延びる上方突部96が形成されていることから、その上方突部96に手を掛けることで簡単に回動部材50の回動操作ができることになる。そして、この変形例3に係る回動部材80においても、長手方向の両端部の上面が外方に向けて傾斜していないことから、提灯Lの組み立て作業時または解体作業時に、不意に、これら提灯Lの構成部品や周辺にある物に接触して傷付けてしまうという事態は防止される。また、ストッパ部91の一端部の側面に、火袋1の下部外輪4と対向する押さえ面94から斜め上方に向かって傾斜する傾斜面95が形成されているため、展開状態で上方向に向かってカーブする形状となる火袋1の下部にストッパ部91が接触して火袋1を破損してしまう恐れはない。
【0079】
更に、本発明を実施する場合には、保持部材は、その形状や基台10への装着形態が、上記の保持部材60の形状や装着形態に限定されるものではなく、基台10の取付穴13から離脱し難く基台10に対して安定した装着状態が維持できれば、例えば、図11や図12に示すような構造を採用することもできる。
図11に示すように、変形例4に係る保持部材100は、上記の保持部材60と同様、合成樹脂で形成されており、下方に向かって縮径するテーパ状の斜状部101aを有する略逆円錐台の係止片101が複数(図11においては4つ)連続的に接続された形状を呈し、その中心には上下方向に貫通する貫通孔103が形成され、また、その上部にはフランジ部102が一体形成されている。そして、この変形例4に係る保持部材100においては、更に、長さ方向に延びるスリット開口104が一側面に形成されており、水平断面が略C字状となっている。
【0080】
このような構成の保持部材100は、その貫通孔103の周囲に設けられた上下方向に貫通するスリット開口104によって弾性的に変位可能となることから、基台10に穿設した取付穴13に挿入する際に、スリット開口104を閉塞する方向に弾性変形させ、保持部材10の係止片101の直径を基台10の取付穴13の直径より小さくして挿入することができる。よって、基台10の取付穴13への挿入が極めて容易にできることになる。
【0081】
また、この保持部材100においても、上記保持部材60と同様、取付穴13への挿入状態で、係止片101における斜状部101aの上部周囲(係止片101の上面周囲)が下端側に撓んで、斜状部101aの上部周囲が取付穴13の周面(内壁面)に圧接し接触抵抗が増すため、取付穴13から離脱し難くなっている。
特に、斜状部101aの上部の直径が、通常状態では取付穴13の直径よりやや大きく、スリット開口104を閉塞する方向に弾性変形されたときには取付穴13の直径より小さく取付穴13への通過が許容されるように設定されることで、取付穴13に挿入された保持部材100は、自己の弾性力により形状復帰しようとして、取付穴13の内周面に対して弾接状態で拡径方向への復元力が働くため、接触抵抗が増し、保持部材100の取付穴13からの離脱が一層困難となる。また、周囲の湿度や温度等の変化によって木材からなる基台10の取付穴13の寸法が変化した場合にも、対応できる。
よって、変形例4に係る保持部材100によれば、取付穴13への組み付けが極めて容易であるうえに、簡単な構造で離脱を一段と容易に防止することができ、より安定した取付け状態を維持できる。
【0082】
更に、図12に示すように、変形例5に係る保持部材110は、中心部に回動部材50が挿通される貫通孔113を有し、下端部が下部に向かって縮径するテーパ状に形成されており、上部にはフランジ部112が一体形成されている。このフランジ部112は、上述の保持部材60と同様、その外径が基台10の取付穴13の径より大きく形成されていて、基台10への装着時に、基台10からその厚み分が僅かに突出するようになっている。更に、このフランジ部112からは外方向に向かって水平に突出する一対の突出片111が一体に形成されていて、各突出片111には、ネジ114による接続のためのネジ穴111aが穿設されている。
【0083】
このように構成された保持部材110は、フランジ部112より下部が基台10の取付穴13に押し込まれ、フランジ部112が取付穴13周囲の基台10上面に当接して保持部材110のそれ以上の下方向への侵入が規制されたところで、フランジ部112に一体形成された突出片111のネジ穴111aを通してネジ114によって基台10に固定される。特に、変形例5に係る保持部材110は、その下端部が下部に向かって縮径するテーパ状に形成されているため、容易に基台10の取付穴13に挿入することができる。また、ネジ穴111aを通してネジ114によって保持部材110を基台10に取付ける構造であるため、保持部材110は堅固に基台10に固定される。
勿論、本発明を実施する場合には、ネジ114の代わりに釘を用いてもよく、また、基台10の木材に含浸するような接着剤等を使用して保持部材を基台10の取付穴13に固着することも可能であり、接着剤の使用した場合、木材の亀裂等を防止することもできる。
【0084】
更に、上記実施の形態及びその変形例においては、回動部材50及び保持部材60が合成樹脂からなるものであるが、本発明を実施する場合には、適度な弾性を有し接触抵抗が高い材料であれば何れでも使用可能であり、例えば、硬質ゴム、シリコン、金属等で形成することも可能である。
【0085】
なお、本実施の形態においては、基台10に穿設した取付穴13は、水平断面が略円形状の保持部材60に対応し、取付穴13の内周面に係止片61の上部周囲が圧接されて係止片61が離脱することのないよう、水平断面が略円形状の丸孔としているが、本発明を実施する場合には、角孔等にすることも可能である。しかし、丸孔の場合はドリル等の穿設処理で容易に正確な加工ができる。
【0086】
上記実施の形態及びその変形例の提灯Lは、光源を収容する火袋1と、上面側に火袋1の上部を保持する火袋吊り具30が立設されると共に、火袋1の下部が設置され、下面側に複数本の脚20が取付けられる基台10と、基台10の上面側に取付けられ、火袋1の下部を基台10に固定する火袋止め具40とを具備し、この火袋止め具40は、軸部52,72及び軸部52,72の上部に垂直に一体形成され水平方向に延びたストッパ部51,81,91からなり基台10に対して回動自在な回動部材50,70,80,90と、基台10に穿設した取付穴13に装着され回動部材50,70,80,90の軸部52,72を回動可能に保持する保持部材60,100,110とから構成され、回動部材50,70,80,90の軸部52,72においては、溝部58,78によって弾性的に変位可能に形成された係止突部57,77が下部に設けられていて、保持部材60,100,110の貫通孔63,103,113への挿入に伴い、係止突部57,77がその弾性変化によって貫通孔63,103,113を通過し、その通過後に、自己の弾性力で復元し保持部材60,100,110に係合することにより、保持部材60,100,110からの離脱が防止され、また、回動部材50,70,80,90のストッパ部51,81,91においては、保持部材60,100,110への装着状態で、その下端面が基台10の上面に当接しないように配設され、かつ、長手方向の両端部の上面が斜め上方の外方に向けて傾斜していないものである。
【0087】
即ち、上記実施の形態及びその変形例1乃至変形例5の提灯Lは、光源を収容する火袋1と、火袋1の上部を保持する火袋吊り具30が立設されると共に、火袋吊り具30が立設される面の反対側の下面に複数本の脚20が取付けられる基台10と、基台10の上面側に取付けられ、火袋1の下部を基台10に固定する火袋止め具40とを具備し、火袋止め具40は、基台10に穿設した取付穴13に装着される保持部材60,100,110と、保持部材60,100,110に対して回動自在に挿入され、保持部材60,100,110との係合によって離脱を防止する軸部52,72及び軸部の52,72上部から水平方向に延びたストッパ部51,81,91とを有する回動部材50,70,80,90で構成したものである。
【0088】
ところで、上記火袋1は、ローソク、なつめ電球、LED等の光源を収容する、所謂、提灯Lの本体部分を意味するものである。
そして、上記基台10は、光源を保持し、火袋1の下部が設置され、かつ、火袋吊り具30の取付台となるものであり、この火袋吊り具30は、提灯Lを展開する背骨に当るものである。
特に、本発明の実施の形態の提灯Lは、基台10の下面側に複数本の脚20が取付けられる事例で説明したが、脚20が取付けられることのない提灯Lにも使用できるものである。
【0089】
即ち、光源を収容する火袋1と、火袋1の下面に取付けられる基台10と、基台10の火袋1側に取付けられ、火袋1の下部を基台10に固定する火袋止め具40とを具備し、火袋止め具40は、基台10に穿設した取付穴13に装着される保持部材60,100,110と、保持部材60,100,110に対して回動自在に挿入され、保持部材60,100,110との係合によって離脱を防止する軸部52,72及び軸部52,72の上部から水平方向に延びたストッパ部51,81,91とを有する回動部材50,70,80,90で構成される脚20で自立することのない提灯Lとすることができる。
【0090】
ここで、上記火袋止め具40は、基台10に設置される火袋1の下部が上方向へ移動するのを規制して火袋1を基台10に固定し、火袋1の基台10からの離脱を防止するものであり、火袋1の上方向への移動を規制する回動部材50,70,80,90と、基台10に穿設した取付穴13に挿入され回動部材50,70,80,90を回動自在に保持する保持部材60,100,110とによって構成されている。
【0091】
上記回動部材50,70,80,90は、保持部材60,100,110の貫通孔63,103,113に挿通される軸部52,72と、軸部52,72に垂直で水平方向に延びて基台10の上面側に配設され、火袋1の下部に対向してその上方向への移動を規制するストッパ部51,81,91とを有するものである。更に、軸部52,72は、溝部58,78によって弾性的に変位可能に形成された係止突部57,77を下部に設けており、この係止突部57,77と保持部材60,100,110との係合によって離脱を防止する。なお、この溝部58,78は、係止突部57,77の弾性変形を可能とするものであり、その形状は特に問われるものではない。
【0092】
また、上記保持部材60,100,110は、回動部材50,70,80,90の軸部52,72が挿通される貫通孔63,103,113を有し、貫通孔63,103,113への軸部52,72の挿入状態で軸部52,72を回転自在に保持するものであり、基台10に穿設した取付穴13に挿入されて基台10に取付けられる。その取付手段は、火袋1の展開により回動部材50,70,80,90を介して保持部材60,100,110が上方向に引っ張られたときでも取付穴から離脱する(上方へ抜け出す)ことなく、安定した取付状態を維持できれば、特に問われるものではなく、例えば、保持部材60,100,110に係止片61,101を形成し、この係止片61,101を基台10に係合させる物理的手段や、接着剤やネジ114等による機械的手段等が挙げられる。なお、保持部材60,100,110において、回動部材50,70,80,90の軸部52,72に対して所定の接触抵抗で軸部52,72を回動自在に保持することができれば、貫通孔63,103,113の形状は、特に問われるものではなく、水平断面が略円形状の貫通孔63,103,113とすることもできるし、水平断面が略角形状の貫通孔63,103,113に形成することもできる。
【0093】
したがって、回動部材50,70,80,90を保持部材60,100,110に挿入するという簡単な操作で、回動部材50,70,80,90が保持部材60,100,110に回動自在に安定して保持され、回動部材50,70,80,90の回動によって基台10を傷付けることのない適切な位置にその取付状態が維持されることになる。また、使用者にとっても、火袋止め具40の回動部材50,70,80,90において、その回動によって基台10を傷付けることのない適切な位置への取付けが容易にできることになる。故に、この発明に係る提灯Lは、作業時の傷付きを防止でき、作業性や加工性に優れるものである。
【0094】
特に、上記実施の形態及びその変形例1乃至変形例5の提灯Lは、火袋止め具40のストッパ部51,81,91が、軸部52,72の上部から水平方向に延び、その下端面が基台10の上面に当接しないように配設され、回動によって基台10の周囲から食み出して突出する構造であることから、回動部材50,70,80,90を保持部材60,100,110の貫通孔63,103,113に挿入するだけで、回動部材50,70,80,90のストッパ部51,81,91の下面が基台10の上面に当接しない適切な配置状態となり、確実に回動部材50,70,80,90の回動によって基台10を傷付けることのない適切な位置に回動部材50,70,80,90が保持部材50,70,80,90に取付けられることになる。
【0095】
上記実施の形態及びその変形例1乃至変形例5の提灯Lは、火袋止め具40の軸部52,72が、保持部材60,100,110に対して回動自在に挿入され、自己の弾性力によって保持部材60,100,110の端部と係合してその離脱を防止するものである。
即ち、保持部材60,100,110の貫通孔63,103,113に回動部材50,70,80,90の軸部52,72が挿入されるだけで、軸部52,72の下部に設けられた係止突部57,77が保持部材60,100,110の端部と係合してその離脱が困難となることから、簡単な係合方法で安定した取付け状態が維持できる。
【0096】
特に、回動部材50,70,80,90の軸部52,72の下部に設けられる係止突部57,77は、下部に向かって縮径するテーパ状に形成されているものであり、保持部材60,100,110の貫通孔63,103,113への挿入を容易に行えるようにしたものである。
即ち、回動部材50,70,80,90における軸部52,72の下部に設けた係止突部57,77は、下方に向かって縮径するテーパ状に形成されていることから、保持部材60,100,110の貫通孔63,103,113への挿入が容易にできる。また、無理な外力の付与が防止され、回動部材50,70,80,90を破損する恐れがない。
【0097】
上記実施の形態及びその変形例1乃至変形例5の提灯Lは、回動部材50,70,80,90のストッパ部51,81,91の一端部の側面側に、斜め上方に向かって傾斜する傾斜面55,85,95が形成されているものであり、下部が上方に向かってカーブする形状となる展開状態の火袋1に対応したものである。
即ち、回動部材50,70,80,90のストッパ部51,81,91の一端部の側面側には、斜め上方に向かって傾斜する傾斜面55,85,95が形成されていることから、展開状態で上方向に向かってカーブする形状となる火袋1の下部に回動部材50,70,80,90のストッパ部51,81,91が接触して、火袋1を破損してしまう恐れはない。
【0098】
また、回動部材50,70,80,90のストッパ部51,81,91においては、長手方向の両端部の上面が斜め上方の外方に向けて傾斜していない構造であり、従来のように、一端が斜め上方の外方に突き出ていないため、提灯Lの組み立て作業時または解体作業時に、不意に、これら提灯Lの構成部品や周辺にある物に接触して傷付けてしまうという事態を防止することができる。
【0099】
上記実施の形態の形態及びその変形例1乃至変形例5の提灯Lの回動部材50,70,80,90及び保持部材60,100,110は、合成樹脂で形成されたものである。
即ち、回動部材50,70,80,90及び保持部材60,100,110は、合成樹脂で形成されていることから、構成部材等に接触しても傷が付きにくい。また、適度な弾性を有し、基台10に穿設した取付穴13への保持部材60,100,110の挿入や、保持部材60,100,110の貫通孔63,103,113への回動部材50,70,80,90の軸部52,72の挿入が容易にできる。更に、挿入後は、ガタつきなく保持される。加えて、任意の強い機械的強度を有し、繰り返しの使用に耐えることができる。
【0100】
上記実施の形態及びその変形例1乃至変形例5の提灯Lは、回動部材50,70,80,90のストッパ部51,81,91の一端部または上部に、所定方向に延びる上方突部56,86,96を形成しているものであり、上方突部56,86,96により回動操作を容易に行えるようにしたものである。
故に、回動部材50,70,80,90のストッパ部51,81,91の一端部または上部には、所定方向に延びる上方突部56,86,96が形成されていることから、その上方突部56,86,96に手を掛けて簡単に回動操作ができ、操作性が良好である。
【0101】
ここで、上記実施の形態及びその変形例1乃至変形例4の提灯Lは、火袋止め具40の保持部材60,100が、軸部52,72が挿通される貫通孔63,103を有し、基台10に穿設した取付穴13に弾接し、その離脱を困難とする係止片61,101を設けたものである。
即ち、火袋止め具40の保持部材60,100は、貫通孔63,103に軸部52,72が挿通されるだけで、適切な位置に回動部材50,70,80,90を保持し、また、係止片61,101によって基台10に穿設した取付穴13に弾接し、取付穴13からの離脱が困難となることから、簡単な係合方法で、安定した取付け状態が維持できる。
【0102】
特に、上記実施の形態及びその変形例1乃至変形例4の提灯Lの保持部材60,100は、下方に向かって縮径するテーパ状の斜状部61a,101aを有する逆円錐台の係止片61,101によって形成されており、係止片61,101における斜状部61a,101aの上部周囲が基台10に穿設した取付穴13の周面に係合することにより、取付穴13からの離脱が防止されるものである。
即ち、保持部材60,100は、下方に向かって縮径するテーパ状の斜状部61a,101aを有する逆円錐台の係止片61,101によって形成されているため、基台10に穿設した取付穴13への挿入が容易にできる。更に、保持部材60,100を基台10の取付穴13に挿入した際に、係止片61,101の斜状部61a,101aの上部周囲が取付穴13の周面(内壁面)に摺接し、下端側に撓んだ状態となる。このため、火袋1の展開により上方向への引っ張り力が加えられたときでも、圧接力(接触抵抗)が増し、係止片61,101における斜状部61a,101aの上部周囲が基台10の取付穴13の周面(内壁面)に係合することにより、保持部材60,100の取付穴13からの離脱が防止される。したがって、基台10の取付穴13に簡単に挿着できるうえに、容易に離脱できなくなり、簡単な構成で安定した取付け状態が維持できる。
【0103】
また、上記実施の形態の変形例4の提灯Lの保持部材100は、軸部52,72が挿通される貫通孔103の周囲に上下方向に貫通するスリット開口104を設け、その弾性的に変位によって基台10に穿設した取付穴13に固着自在としたものであり、上下方向に貫通するスリット開口104を一側面に有して断面が略C字状に形成されたものである。
即ち、保持部材100は、その側面部に上下方向に貫通するスリット開口104が設けられ、弾性的に変位可能に形成されていることから、基台10に穿設した取付穴13に挿入する際に、スリット開口104を狭める方向へ弾性変形させ、保持部材100の直径を基台10に穿設した取付穴13の径より小さくさせて挿入することかできる。また、挿入後は自己の弾性力により復元し、取付穴13の周面に対して弾接状態とすることができ、離脱防止を図ることができる。故に、保持部材100を取付穴13へ極めて容易に挿入することができ、更に、簡単な構造で保持部材100が容易に離脱することのない構造とすることができる。即ち、簡単な構成で安定した取付け状態が維持できる。
【0104】
更に、上記実施の形態の変形例5の提灯Lの保持部材110は、ネジ114によって基台10に取付けるものである。
即ち、保持部材110は、ネジ114によって基台10に取付けることから、常套手段で固着が可能であり、保持部材110を基台10に堅固に固定することができる。
【0105】
また、上記実施の形態の変形例1の提灯Lは、火袋止め具40のストッパ部51に、保持部材60と特定の位置で嵌合する凹部69が設けているものである。
即ち、ストッパ部51は、保持部材60に形成された丘陵状の凸部66に嵌合する凹部69を設け、保持部材60の特定の位置で嵌合することから、その停止位置を正確にすることができ、かつ、容易に変化することがない。
【符号の説明】
【0106】
1 火袋
10 基台
13 取付穴
20 脚
30 火袋吊り具
40 火袋止め具
50,70,80,90 回動部材
51,81,91 ストッパ部
52,72 軸部
60,100,110 保持部材
61,101 係止片
61a,101a 斜状部
63,103,113 貫通孔
66 凸部
69 凹部
104 スリット開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を収容する火袋と、
前記火袋の上部を保持する火袋吊り具が立設されると共に、前記火袋吊り具が立設される面の反対側の下面に複数本の脚が取付けられる基台と、
前記基台の上面側に取付けられ、前記火袋の下部を前記基台に固定する火袋止め具とを具備し、
前記火袋止め具は、前記基台に穿設した取付穴に装着される保持部材と、前記保持部材に対して回動自在に挿入され、前記保持部材との係合によって離脱を防止する軸部及び前記軸部の上部から水平方向に延びたストッパ部を有する回動部材で構成されたことを特徴とする提灯。
【請求項2】
光源を収容する火袋と、
前記火袋の下面に取付けられる基台と、
前記基台の前記火袋側に取付けられ、前記火袋の下部を前記基台に固定する火袋止め具とを具備し、
前記火袋止め具は、前記基台に穿設した取付穴に装着される保持部材と、前記保持部材に対して回動自在に挿入され、前記保持部材との係合によって離脱を防止する軸部及び前記軸部の上部から水平方向に延びたストッパ部を有する回動部材で構成されたことを特徴とする提灯。
【請求項3】
前記火袋止め具の保持部材は、前記軸部が挿通される貫通孔を有し、前記基台に穿設した取付穴に弾接し、その離脱を困難とする係止片を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の提灯。
【請求項4】
前記火袋止め具の保持部材は、下方に向かって縮径するテーパ状の斜状部を有する逆円錐台の係止片を有し、前記係止片における斜状部の周囲が前記基台に穿設した取付穴の周面に係合することにより、前記取付穴からの離脱が防止されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の提灯。
【請求項5】
前記火袋止め具の保持部材は、ネジまたは釘によって前記基台に取付けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の提灯。
【請求項6】
前記火袋止め具の保持部材は、前記軸部が挿通される貫通孔の周囲に上下方向に貫通するスリット開口を設け、その弾性的に変位によって前記基台に穿設した取付穴に固着自在としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の提灯。
【請求項7】
前記火袋止め具の軸部は、前記保持部材に対して回動自在に挿入され、自己の弾性力によって前記保持部材の端部と係合してその離脱を防止することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の提灯。
【請求項8】
前記火袋止め具のストッパ部は、前記軸部の上部から水平方向に延び、その下端面が前記基台の上面に当接しないように配設され、回動によって基台の周囲から食み出して突出することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の提灯。
【請求項9】
前記火袋止め具のストッパ部は、前記保持部材と特定の位置で嵌合する凸部と凹部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の提灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−45614(P2013−45614A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182353(P2011−182353)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(502179916)
【Fターム(参考)】