説明

搬送式粉砕装置

【課題】 廃タイヤなどの大型の粉砕対象物を連続的に且つ効率的に微粉化を行う。
【解決手段】 搬送コンベア11の移動部に、密封構造とした粉砕処理通路21に形成すると共に、粉砕処理通路における入口側及び出口側に2段の密封ゲート22,23を設けて導入室211と排出室212を形成し、前記導入室と排出室との間に粉砕処理室213を形成し、粉砕処理室上方に圧縮空気と燃料を供給して点火燃焼させてノズル口から音速以上の高温ジェット流として下向きに噴射させるバーナ体24を適宜数、適宜位置に設けると共に、窒素発生機構26を別設し、粉砕処理室にジェット噴射流と共に窒素ガスを供給し、上方に微粉末吸引口25を設けてなる粉砕処理機構部2と、導入室に所定の時間毎に粉砕対象物を送りこむ原料供給機構部3と、粉砕処理室の微粉末吸引口に接続される粉体分離部41,42及び吸引ファン43を備えてなる分離機構部4とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として廃タイヤや廃キャタピラ等において、ワイヤーや連結基板等の金属部分等を残して他の構成部材を粉状物とする搬送式粉砕装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤの粉砕手段としては従前より種々提案されているが、廃タイヤを非分割状態で粉砕する手段としては、ジェットバーナ又はジェットバーナを使用した蒸気ジェットを使用する手段(特許文献1:特開昭55−162387号)や、ウォータージェットを使用する手段(特開2005−46758号)が知られている。
【0003】
特許文献1に記載されている粉砕装置は、ホッパー状の処理タンク内に複数本の廃タイヤを投入し、タンク頂部に設けた蒸気ジェットでタンク内のタイヤの粉砕を行うようにしており、所定の粉砕が終了すると、タンク内に残ったビートワイヤーやスチールコードをタンク下方より取り出すようにしている。
【0004】
特許文献2記載の粉砕装置は、上下方向に積層したタイヤの下方位置で、タイヤに対して径φ1〜5mmのノズルから高圧水を噴射し、水と混濁した粉砕物を搬出分離するものであり、積層タイヤの粉砕が終了すると、残余のビートワイヤーやスチールコードを積層箇所から取りはずすようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開昭55−162387号公報
【特許文献2】特開2005−46758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の特許文献1,2に記載されている粉砕処理装置は、粉砕対象物の連続供給による連続粉砕ではなく、所定量毎の単位体処理となっている。従って各単一体の処理毎に、金属部分の除去、廃タイヤの供給、分離装置(固気・固液)の再作動を繰り返すもので、連続作業が望ましい装置の自動化の点から問題がある。
【0007】
また特に特許文献1記載の粉砕装置は、火焔ジェットバーナによる粉砕は、高温処理となって粉砕された粉末が炭化してしまうので、200〜300℃の過熱蒸気ジェットで粉砕する手段を提案したもので、これは1台のジェットバーナで複数個のタイヤを粉砕するような、大型のバーナ体を採用したため、粉砕処理タンク内の高温化が避けられなかった結果によるものである。
【0008】
しかし近年のジェットバーナにおいては、音速2〜3以上のジェット噴射流を得ることができ、口径2cm程度のノズル口からのジェット噴射流をタイヤに当てると、その高速衝撃によって半径10cm程度の半球状範囲で一瞬にして微粉末化され、しかも直接高温に曝されるのではなく衝撃力による粉砕であり、炭化することなく微粉末化することが可能となる。
【0009】
そこで本発明は、音速以上のジェット噴射流を採用して、連続作業による粉砕を実現する搬送式粉砕装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る搬送式粉砕装置は、搬送コンベアの移動部に、密封構造とした粉砕処理通路に形成すると共に、粉砕処理通路における入口側及び出口側に2段の密封ゲートを設けて導入室と排出室を形成し、前記導入室と排出室との間に粉砕処理室を形成し、粉砕処理室上方に圧縮空気と燃料を供給して点火燃焼させてノズル口から音速以上の高温ジェット流として下向きに噴射させるバーナ体を適宜数、適宜位置に設けると共に、微粉末吸引口を設けてなる粉砕処理機構部と、導入室に所定の時間毎に粉砕対象物を送りこむ原料供給機構部と、粉砕処理室の微粉末吸引口に接続される粉体分離部及び吸引ファンを備えてなる分離機構部とで構成したことを特徴とするものである。
【0011】
また特に窒素発生機構を別設し、粉砕処理室にジェット噴射流と共に窒素ガスを供給するようにしてなるものである。
【0012】
而してバーナ体に点火してノズル口より燃焼ガスを噴射させ、同時に吸引ファンを作動させて粉砕処理室にジェット噴射流と共に窒素ガスを供給し、この状態で原料供給機構部から粉砕対象物(例えば廃タイヤ等)を外側ゲートのみを開放して導入室に供給し、外側ゲートを閉じた後、内側ゲートを開放すると、粉砕処理対象物は、搬送コンベアの移動によって粉砕処理室に入る。そして粉砕対象物が粉砕処理室に入ると導入室の内側ゲートは閉じて、次の処理対象物の導入室への供給準備状態とする。
【0013】
粉砕処理室に移動した粉砕処理対象物は、音速以上の高温ジェット噴射流の衝撃波を受けて所定の範囲が瞬時に微粉末化される。従って粉砕処理室の移動の期間において、高温ジェット噴射流を受ける位置がずれるようにしておくことで、廃タイヤのような大きな処理対象物も完全に微粉化がなされる。
【0014】
粉砕処理室の微粉末は、吸引ファンによる吸引作用で、吸引口から分離機構部に送られ、微粉体が分離される。
【0015】
粉末化されない残渣(廃タイヤの場合には、ビートワイヤーやスチールコード等)は、排出室の直前まで移動すると、排出室内側ゲートが開放して排出室に入り、内側ゲートが閉塞された後に外側ゲートが開放して残渣を排出するものである。
【0016】
従って粉砕対象物(廃タイヤ等)を所定の間隔で順次供給することで、微粉化処理がなされると共に、窒素ガスを常時供給し、粉砕処理室への処理対象物の導入ならびに残渣の排出に際して二重ゲートを採用し、非酸素状態で雰囲気中の微粉化処理を行うことで、粉塵爆発の発生を防止したものである。
【0017】
尚廃タイヤ・廃キャタピラ等の粉塵爆発の虞が無い対象物の場合には、窒素ガス供給を行わなくても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記の構成を採用したものであるから、廃タイヤのような大きな処理対象物や、廃キャタピラのように大きな金属製連結基板の表面にゴム質材を設けた部材のように不定形で金属部分が多い複雑な形状のものでも、処理対象物の形態に応じてバーナ体の配置を決定することで、容易に微粉末処理が可能であり、且つ残渣が存在する粉砕対象物であっても、連続的な処理が実現できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明の実施の形態について説明する。実施形態に示した搬送式粉砕装置は、粉砕処理対象物として廃タイヤAの場合を例にしたものである。
【0020】
実施形態の粉砕装置は、搬送機構部1と、粉砕処理機後部2と、原料供給機構部3と、分離機構部4と、残渣排出機構部5とで構成される。
【0021】
搬送機構部1は、耐熱構造で所定の速度で移動する搬送コンベア11及びその駆動機構12で構成されるものである。
【0022】
粉砕処理機構部2は、前記搬送コンベア11の搬送移動範囲において、コンベア下方に密封板を配置し、且つコンベア上方を覆うようにして粉砕処理通路21を形成し、粉砕処理通路21における入口側及び出口側に2段の密封ゲート(入口ゲート22,出口ゲート23)を設けて、導入室211と排出室212を形成し、前記導入室211と排出室212との間に粉砕処理室213を形成したものである。
【0023】
前記の粉砕処理室213には、バーナ体24と、微粉末吸引口25を設けたもので、バーナ体24は、周面を空冷又は液冷構造とした燃焼室に、高圧空気と燃料を供給し、点火燃焼させ、燃焼ガスをノズル口(径φ2cm程度)から噴射させるもので、噴射流は高温(1330℃〜2000℃)で音速以上(マッハ2〜3)のジェット噴射流とするもので、搬送コンベア11に向けて上方から下方に噴射する。このバーナ体24は、搬送コンベア11の進行方向に添って適宜数・適宜位置(粉砕対象物である廃タイヤAがジェット噴射流で粉末化される範囲に対応して定められる)に設けたものである。勿論バーナ体24には、コンプレッサー(高圧空気供給源)や燃料供給機構が付設されている。
【0024】
微粉末吸引口25は、粉砕処理室213内の微粉末B全体を吸引できるようにフード構造に形成したものである。
【0025】
更に窒素発生機構26を別設して、粉砕処理室213にジェット噴射流と共に、或いは単独で窒素ガスEを供給するようにしてなる。
【0026】
原料供給機構部3は、搬送コンベア11の搬入位置まで廃タイヤAを搬送する供給コンベア31と、供給コンベア31で運搬されてきた廃タイヤAを導入室211に押し込む押し込み機構(油圧シリンダーなどで形成される)32とで構成したものである。
【0027】
分離機構部4は、微粉末吸引口25と接続したもので、側方から噴出して渦流となり固形物は自重で下方に沈下し、気体は中央上部から取り出す構造のサイクロン型分離部41,と、フィルター部42と、吸引ファン43とで構成される。
【0028】
残渣排出部5は、搬送コンベア11の搬出側に配設したものであり、残渣Cを装置外にコンベア等で搬出する構成を採用しているものである。
【0029】
而して入口ゲート22及び出口ゲート23を閉塞した状態で、搬送コンベア11を動作させ、バーナ体24を点火して、粉砕処理室213にジェット噴射流Dを噴出すと共に窒素ガスEを供給し、同時に吸引ファン43を作動させる。
【0030】
そしてこの状態で原料供給機構部3の供給コンベア31から一定の間隔で粉砕対象物である廃タイヤAが送られて、所定位置(入口ゲート22前)にくると、入口ゲート22の外側ゲート22aが開放され、廃タイヤAは、押し込み機構32で速やかに導入室211内の搬送コンベア11上に押し出され、前記外側ゲート22aが閉じられる(図4イ、ロ)。
【0031】
廃タイヤAが導入室211内に位置すると、入口ゲート22の内側ゲート22bが開放され、廃タイヤAは、搬送コンベア11で粉砕処理室213に運ばれ、導入室211は空室となると、内側ゲート22bが閉じて、次の廃タイヤAの供給待機状態となる。そして順次廃タイヤAは粉砕処理室213内に送り込まれ、この送り込みに際しては、前記の導入室211を設けることによって、粉砕処理室213内の微粉末B並びに充満している窒素ガスが外に漏れでることを防止しているものである。
【0032】
粉砕処理室213内では、搬送コンベア11で移動する廃タイヤAに対して、バーナ体24のノズル口からの音速以上の高温ジェット噴射流Dが吹き付けられ、ジェット噴射流Dの衝撃波によって、廃タイヤAの所定の範囲部分は、瞬時に微粉末化される。
【0033】
この粉砕処理室213内の移動の間、廃タイヤAの各部分はジェット噴射流Dの噴射を受けるので、廃タイヤAのような大きな処理対象物であっても完全に微粉化がなされる。
【0034】
更に粉砕処理室213内の微粉末Bは、吸引ファン43による吸引作用で、吸引口25から分離機構部4に送られ、微粉末Bは、気体と分離される。
【0035】
分離機構部4では、サイクロン型分離部41において、微粉末Bは自重でサイクロン下方に沈下堆積し、サイクロン型分離部41の底部から取り出されることになり、更にフィルター部42で気体中から微粉末Bが完全に除去されることになる。そしてこの廃タイヤAの微粉末Bは、再度タイヤ原料として使用できるものである。
【0036】
粉砕処理室213内におけるジェット噴射流によって粉末化されない残渣(ビートワイヤーやスチールコード等)Cは、そのまま搬送コンベアで搬送されることになるので、排出室212の直前まで移動すると、排出室212を区切る出口ゲート23の内側ゲート23bが開放し、残渣Cは、排出室212に入り、直ぐに内側ゲート23bが閉塞され、その後外側ゲート23aが開放して残渣Cは、搬送コンベア11外に排出される。
【0037】
搬送コンベア11から排出された残渣Cは、残渣排出部5によって適宜な処理場所に搬出されることになる。
【0038】
従って前記の廃タイヤの粉砕処理は、大きな廃タイヤをそのままの状態から連続的に微粉末化を行うことができたものである。
【0039】
また本発明装置は前記の廃タイヤ以外にも複雑な形状をした連結基板の接地面部分にゴム被覆した廃キャタピラ片についても、金属製の連結基板が残渣として残り、再生部品として使用するこができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
また本発明は、粉塵爆発の危険がない処理対象物においては、窒素ガスの供給の必要が無いものであり、他の種々の粉砕対象処理物の粉砕を行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態の全体の構成図。
【図2】同一部省略した平面図
【図3】同粉砕処理機構部の説明図。
【図4】同粉砕処理機構部の動作説明図。
【符号の説明】
【0042】
1 搬送機構部
11 搬送コンベア
12 駆動機構
2 粉砕処理機構部
21 粉砕処理通路
211 導入室
212 排出室
213 粉砕処理室
22 入口ゲート
23 出口ゲート
24 バーナ体
25 微粉末吸引口
26 窒素発生機構
3 原料供給機構部
31 供給コンベア
32 押し込み機構
4 分離機構部
41 サイクロン型分離部
42 フィルター部
43 吸引ファン
5 残渣排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送コンベアの移動部に、密封構造とした粉砕処理通路に形成すると共に、粉砕処理通路における入口側及び出口側に2段の密封ゲートを設けて導入室と排出室を形成し、前記導入室と排出室との間に粉砕処理室を形成し、粉砕処理室上方に圧縮空気と燃料を供給して点火燃焼させてノズル口から音速以上の高温ジェット流として下向きに噴射させるバーナ体を適宜数、適宜位置に設けると共に、微粉末吸引口を設けてなる粉砕処理機構部と、導入室に所定の時間毎に粉砕対象物を送りこむ原料供給機構部と、粉砕処理室の微粉末吸引口に接続される粉体分離部及び吸引ファンを備えてなる分離機構部とで構成したことを特徴とする搬送式粉砕装置。
【請求項2】
窒素発生機構を別設し、粉砕処理室にジェット噴射流と共に窒素ガスを供給するようにしてなる請求1記載の搬送式粉砕装置。
【請求項3】
分離機構部が、1段または多段のサイクロン型分離部と、フィルター部と、吸引ファンとで構成した請求項1又は2記載の搬送式粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−54777(P2007−54777A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245662(P2005−245662)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(397014019)株式会社エスケーテック (3)
【Fターム(参考)】