説明

携帯機

【課題】利便性を向上させることのできる携帯機を提供する。
【解決手段】この携帯機2では、ケース25の内部に収容された通信装置を通じて車両に搭載された車載機と無線通信を行う。また、ケース25の側面には、メカニカルキー24を収容するための収容溝26が形成されている。ここでは、メカニカルキー24をケース25から露出した状態で矢印bで示す方向に一回転可能に支持する支持機構と、メカニカルキー24の矢印bで示す方向への回転運動を利用して発電する発電機とを設ける。そして、発電機を通じて発電される電力を通信装置に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルキーが脱着可能に収容された携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機(電子キー)を所持したユーザが車両のドアに接近することにより車両ドアが自動的に解錠される、いわゆる電子キーシステムが周知である。そして従来、このような電子キーシステムとしては、例えば特許文献1に記載のシステムが知られている。図11に、この特許文献1に記載のシステムを含めて、従来一般に採用されている電子キーシステムの概要を示す。
【0003】
同図11に示されるように、この電子キーシステムでは、例えば車両ドアに設けられた送信部10から車両ドアの周辺に設定された通信エリアAにリクエスト信号が送信される。またこの電子キーシステムでは、送信部10から送信されたリクエスト信号を受信するとともに、受信したリクエスト信号に対して識別コード(IDコード)等の情報を含む応答信号を送信する携帯機2をユーザが所持する。すなわち、携帯機2を所持したユーザが通信エリアAに進入することによって携帯機2から応答信号が送信される。そしてこのシステムにおいて、携帯機2から送信された応答信号は、車室内に設けられた受信部11により受信されて、車両にかかる各種制御を実行する車載制御部12に伝達される。この車載制御部12では、受信された応答信号に含まれる携帯機2のIDコードと、同制御部12内のメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて、車両ドアに設けられているドアロック機構13を解錠するなどの車両制御を実行する。このような電子キーシステムによれば、ユーザの直接的な手動操作によることなく車両の各種制御が自動的に行われるため、車両の操作にかかる利便性が大きく向上するようになる。
【0004】
一方、このような電子キーシステムでは、携帯機2が電池切れの状態になると、携帯機2が無線通信を行うことができなくなる。すなわちこの場合には、ユーザが携帯機2を所持した状態で通信エリアAに進入したとしても車両ドアが解錠されないため、ユーザが車両に乗車することができなくなるなどの不都合が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、このような電子キーシステムに用いられる携帯機2には、通常、例えば特許文献2に見られるように、車両ドアに設けられたキーシリンダ14に差し込むことにより車両ドアを機械的に解錠させることが可能なメカニカルキーが装着されていることが多い。このような携帯機2によれば、仮に携帯機2が電池切れの状態になったとしても、ユーザはメカニカルキーを用いることで車両ドアを解錠することができるため、上述した不都合が解消されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−311333号公報
【特許文献2】特開2006−249875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、携帯機にメカニカルキーを装着することで、確かに携帯機の電池切れの際の不都合を解消することができるようにはなる。ただし、携帯機が一旦電池切れの状態になると、電池を交換するまでメカニカルキーを使用し続けなければならないため、ユーザによってはこのような操作を煩わしく感じる人も存在し、なお改良の余地を残すものとなっている。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、利便性を向上させることのできる携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ケースの内部に収容された通信装置を通じて通信対象と無線通信を行うとともに、前記ケースにメカニカルキーが収容されてなる携帯機において、前記ケースに設けられ前記メカニカルキーを前記ケースから露出した状態で特定の方向に一回転可能に支持する支持機構と、前記メカニカルキーの前記特定の方向への回転運動を利用して発電する発電機とを備え、同発電機を通じて発電される電力が前記通信装置に供給されることを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、ケースから露出したメカニカルキーをユーザが指で掴んで特定の方向に回転操作すると、発電機が発電して、発電機により発電された電力が通信装置に供給される。このため、仮に携帯機が電池切れの状態に陥ったとしても、携帯機と通信対象との間で無線通信を行うことが可能であるため、メカニカルキーを使用する必要がない。したがって、利便性を向上させることができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の携帯機において、前記メカニカルキーが平板状に形成されたものであって、前記支持機構は、前記メカニカルキーを、その平板面が前記ケースの外面に対して直交するように支持するものであることを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、ユーザはメカニカルキーの平板面を指で掴むことができるため、メカニカルキーを特定の方向に回転させやすくなる。このため、発電作業に際しての操作性が向上するようになる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の携帯機において、前記ケースの外面には、前記メカニカルキーが収容される収容溝が形成されており、前記支持機構は、前記メカニカルキーを、前記収容溝に収容されている位置から、同メカニカルキーの全体が前記ケースから露出する位置まで揺動可能に支持する揺動支持部材と、同揺動支持部材を前記特定の方向に回転可能に支持する回転軸とから構成され、前記発電機は、前記回転軸の回転に基づき発電するものであることを要旨とする。
【0014】
同構成によるように、ケースの収容溝に収容されている位置から、ケースから露出する位置までメカニカルキーを揺動可能に支持する揺動支持部材を設けることとすれば、ケースにメカニカルキーが取り付けられた状態のまま、ケースの収容溝からメカニカルキーを取り出してキーシリンダなどを操作することが可能となる。また、揺動支持部材を回転軸により特定の方向に回転可能に支持する回転軸を設けることとすれば、ケースにメカニカルキーが取り付けられた状態のまま、メカニカルキーを特定の方向に回転操作することもできる。これにより、キーシリンダの操作、並びに発電機50による発電を可能としつつも、ケースからメカニカルキーを取り外す必要がなくなるため、メカニカルキーの紛失を未然に防止する上で有効となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の携帯機において、前記支持機構は、前記特定の方向が、前記メカニカルキーが前記ケースから露出した位置に位置している状態でキーシリンダへの挿入時に使用される方向と異なる方向となるように前記メカニカルキーを支持するものであることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、ケースから露出したメカニカルキーをキーシリンダに挿入した後、ケース全体を特定の方向と異なる方向に回転させれば、メカニカルキーを通常通りに使用することができる。このため、利便性が向上するようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の携帯機において、前記メカニカルキーの前記特定の方向への回転運動に基づき発生する運動エネルギを蓄積するとともに、前記ケースに設けられた操作ボタンの操作に基づき前記蓄積されたエネルギを前記発電機に伝達するエネルギ蓄積機構を更に備えることを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、メカニカルキーを特定の方向へ回転操作してその運動エネルギをエネルギ蓄積機構に一旦蓄積した後、ケースに設けられたボタンを操作してエネルギ蓄積機構に蓄積されたエネルギを発電機に伝達することで、運動エネルギを発電機に効率良く伝達することができる。このため、発電効率を高めることができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる携帯機によれば、利便性を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる携帯機を利用した車両の電子キーシステムの一実施形態についてそのシステム構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の携帯機についてその斜視構造を示す斜視図。
【図3】同実施形態の携帯機についてそのメカニカルキー周辺の断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態の携帯機についてそのメカニカルキーの先端部周辺の拡大断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態の携帯機についてそのエネルギ蓄積機構の構造を模式的に示す斜視図。
【図6】同実施形態の携帯機についてその動作例を示す斜視図。
【図7】同実施形態の携帯機についてその動作例を示す斜視図。
【図8】本発明にかかる携帯機の他の例についてその斜視構造を示す斜視図。
【図9】同他の例の携帯機についてその動作例を示す斜視図。
【図10】本発明にかかる携帯機の他の例についてその斜視構造を示す斜視図。
【図11】従来の車両の電子キーシステムの構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる携帯機を車両の電子キーシステムの携帯機に適用した一実施形態について図1〜図7を参照して説明する。なお、本実施形態が適用対象とする電子キーシステムの基本構成は、先の図11に例示した電子キーシステムと同様である。はじめに、図1を参照して、本実施形態の電子キーシステムの構成をより具体的に説明する。
【0022】
図1に示すように、この電子キーシステムでは、車両に搭載された車載機1と、ユーザが携帯所持する携帯機2との間で、無線通信による各種通信制御が実行される。
このうち、車載機1には、車両ドアの周辺に設定された通信エリアAにリクエスト信号を送信する送信部10、及び携帯機2から送信される応答信号を受信する受信部11が設けられている。そして、送信部10からのリクエスト信号の送信制御、並びに受信部11を介して受信される応答信号の処理が、マイクロコンピュータを中心に構成された車載制御部12を通じて行われる。なお、車載制御部12は、車両ドアの施錠及び解錠を行うドアロック機構13の駆動を制御する部分でもある。この車載制御部12は、例えば車両が駐車状態であるときに送信部10から一定の周期でリクエスト信号を送信する。また、車載制御部12は、携帯機2から送信される応答信号を受信部11を介して受信すると、同応答信号に含まれるIDコードと、内蔵する不揮発性のメモリ12aに予め記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて互いのIDコードが一致しているか否かを判断する。そして、互いのIDコードが一致している場合には、ドアロック機構13を通じて車両ドアを解錠させる。
【0023】
また、携帯機2には、通信対象となる車載機1から送信されるリクエスト信号を受信する受信部20、及びリクエスト信号の受信に基づき車載機1に対して応答信号を送信する送信部21が設けられている。そして、受信部20を介して受信されるリクエスト信号の処理、並びに送信部21からの応答信号の送信制御が、マイクロコンピュータを中心に構成された携帯機制御部22を通じて行われる。この携帯機制御部22は、車載機1から送信されるリクエスト信号を受信部20を介して受信すると、内蔵する不揮発性のメモリ22aに予め記憶されているIDコードを含む応答信号を生成してこれを送信部21から送信する。すなわち、この電子キーシステムでは、車載機1の送信部10から通信エリアAに一定の周期でリクエスト信号が送信されているときに、携帯機2を所持したユーザが通信エリアAに進入すると、携帯機2からIDコードを含む応答信号が自動的に送信されて、車両ドアが解錠されるようになっている。なお、この携帯機2では、受信部20、送信部21、及び携帯機制御部22によって通信装置Teが構成されている。
【0024】
次に、図2を参照して、この携帯機2の構造について詳述する。
図2に示すように、携帯機2は、上記通信装置Teが実装された基板(図示略)が直方体状のケース25の内部に収容された構造をなしている。そして、このケース25の側面に形成された収容溝26に、図示しない車両ドアに設けられたキーシリンダに挿入することで車両ドアを手動で施錠及び解錠させることの可能なメカニカルキー24が収容されている。なお、収容溝26の上方は、ケース25の外面(上面)25aに開口している。
【0025】
ここで、図2のA−A線に沿った部分断面構造を図3に示すように、メカニカルキー24は、平板状に形成された部材であって、その板厚方向がケース25の板厚方向と平行となるようにして収容溝26に収容されている。また、メカニカルキー24の基端部には、収容溝26の内部に延びる突出部24aが形成されており、この突出部24aの先端部が、収容溝26の内部に設けられた揺動支持部材27aに対し軸27bによって回動可能に支持されている。これにより、メカニカルキー24がケース25に対して軸27bを中心に図中の矢印aで示す方向に揺動可能に軸支されている。そして、メカニカルキー24が収容溝26に収容されている位置から矢印aで示す方向に90°だけ揺動すると、図中に二点鎖線で示すように、突出部24aを除くメカニカルキー24の全体がケース25の上方に露出する。なおこのとき、メカニカルキー24のキー溝24bの形成されている平板面24dがケース25の上面25aに対して直交した状態となるとともに、メカニカルキー24のキー溝24bの形成されている部分がケース25から突出した状態となる。
【0026】
また、揺動支持部材27aの底面には、ケース25の内部に延びる回転軸27cの先端部が取り付けられている。すなわち、揺動支持部材27aは、回転軸27cを回転中心としてケース25の上面に平行な方向(矢印dで示す方向)に回転可能に支持されている。これにより、メカニカルキー24を図中の二点鎖線で示す位置まで揺動させたとき、同メカニカルキー24をその基端部分を中心として図中の矢印bで示す方向に更に回転させることが可能となっている。そして、このようなメカニカルキー24の矢印bで示す方向への回転に基づいて回転軸27cが矢印cで示す方向に回転する。なお、本実施形態では、揺動支持部材27a及び回転軸27cによって支持機構27が構成されている。
【0027】
一方、メカニカルキー24の先端部周辺の拡大断面構造を図4に示すように、収容溝26の下方側の内壁には、メカニカルキー24の先端部に形成された凹部24cに係合される爪部30が突設されている。そして、メカニカルキー24の凹部24cとケース25の爪部30との係合により、メカニカルキー24が収容溝26に収容された状態で保持されている。なお、爪部30は、図示しない付勢手段により収容溝26の内部に突出した状態で保持されるとともに、先の図2に例示した携帯機2の側面に形成された操作部31に連結されている。また、メカニカルキー24は、図示しない付勢手段により、矢印aで示す方向に付勢されている。これにより、例えばユーザが指で操作部31を下方に操作したとすると、爪部30が収容溝26の内壁に埋没して爪部30と凹部24cとの係合が解除されて、メカニカルキー24が収容溝26に収容されている位置から先の図3に例示した二点鎖線の位置まで自動的に揺動する。また、メカニカルキー24が図3の二点鎖線の位置に位置している場合には、ユーザが指で操作部31を下方に押圧操作しつつ、矢印aで示す方向と逆方向の外力をメカニカルキー24に付与すれば、収容溝26の内部にメカニカルキー24を収容することができる。そして、収容溝26にメカニカルキー24を収容した後、操作部31から指を離せば、爪部30がメカニカルキー24の凹部24cに係合して、メカニカルキー24が収容溝26に収容された状態で保持される。
【0028】
また、図3に示すように、ケース25の内部には、回転軸27cの基端部に連結されて同回転軸27cの回転運動に基づき発生する運動エネルギを蓄積するエネルギ蓄積機構、及び同エネルギ蓄積機構にて蓄積されたエネルギを利用して発電する発電機50が設けられている。
【0029】
次に、図5を参照して、エネルギ蓄積機構の構造について詳述する。
同図5に示すように、エネルギ蓄積機構40では、回転軸27cの基端部にぜんまいばね41が連結されており、回転軸27cの矢印cで示す方向への回転に基づきぜんまいばね41が巻かれることにより機械的エネルギ(弾性エネルギ)が蓄積される構造となっている。また、回転軸27cの途中部分には、ぜんまいばね41が緩む方向(矢印cで示す方向と逆の方向)への回転軸27cの回転を規制すべく、回転軸27cと一体的に回転する歯車61と、同歯車61に噛合される爪部62とから構成されるラチェット機構60が設けられている。一方、ぜんまいばね41には、蓄積された機械的エネルギの開放に伴い回転する出力軸42の一端部が連結されるとともに、出力軸42の他端部には、例えばステッピングモータなどからなる発電機50が連結されている。これにより、ぜんまいばね41に蓄積された機械的なエネルギが開放されて出力軸42が回転すると、発電機50にて発電が行われる。
【0030】
なお、出力軸42の途中部分には、上記ケース25に設けられた係合爪44に係合される係合部43が形成されている。そして、これら係合爪44と係合部43との係合を通じて出力軸42の回転が規制されている。一方、係合爪44は、図示しない付勢手段により係合部43の側に付勢されるとともに、先の図2に例示したケース25の正面部に設けられた操作ボタン29に連結されている。そして、操作ボタン29が押圧操作されると、係合爪44が係合部43から離間してそれらの係合が解除され、出力軸42の回転が許容されるようになっている。これにより、出力軸42の係合部43に係合爪44が係合している場合には、出力軸42の回転が規制されるため、ぜんまいばね41に機械的エネルギを蓄積することができる。そして、ぜんまいばね41に機械的エネルギを蓄積した後、操作ボタン29を操作すれば、ぜんまいばね41に蓄積されたエネルギが一度に開放されるため、出力軸42を十分な速度で回転させることができる。このため、発電機50による発電を効率良く行うことができる。
【0031】
そして、先の図1に示すように、発電機50にて発電された電力は、携帯機2に設けられたキャパシタ23bに充電される。なお、携帯機2では、キャパシタ23bと、交換可能な電池(1次電池)23aとにより構成される電源ユニット23によって通信装置Teの電源が確保されている。
【0032】
次に、先の図2を含め、図6及び図7を参照して、本実施形態にかかる携帯機2の作用について説明する。
例えば携帯機2が電池切れの状態になって、携帯機2が車載機1と無線通信を行うことができなくなったとする。この場合、先の図2に示すように、ユーザが携帯機2のケース25の側面に形成された操作部31を下方に押圧操作すると、メカニカルキー24がケース25の収容溝26から飛び出して、図6に示すようにケース25の上方に露出する。またこのとき、メカニカルキー24のキー溝24bの形成されている部分がケース25から突出した状態となる。このため、ユーザは、例えば図中に示すようにケース25を手で掴んだ状態でメカニカルキー24の先端部を車両ドアのキーシリンダに挿入した後、ケース25を矢印eで示す方向に回せば、キーシリンダを操作して車両ドアを解錠させることができる。
【0033】
一方、こうしたメカニカルキー24の操作を行いたくない場合には、図7に示すように、メカニカルキー24の平板面24dを指で掴んだ後、その基端部を中心にメカニカルキー24を矢印bで示す方向に回転操作し、上述したぜんまいばね41に機械的エネルギを蓄積させる。その後、ケース25の正面に設けられた操作ボタン29を操作すれば、ぜんまいばね41に蓄積された機械的なエネルギが発電機50に伝達される。これにより、発電機50にて発電が行われるとともに、その発電された電力がキャパシタ23bに蓄えられる。そして、このキャパシタ23bに蓄えられた電力を動作電源として携帯機2の通信装置Teが駆動する。このため、仮に携帯機2が電池切れの状態になったとしても、携帯機2と車載機1との間で無線通信を行うことが可能となるため、ユーザによるメカニカルキー24の使用は不要となる。したがって、利便性が向上するようになる。
【0034】
また、この携帯機2では、ケース25からメカニカルキー24を取り外すことなく、キーシリンダの操作、及び発電機50による発電が可能であるため、メカニカルキー24の紛失を未然に防止することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態にかかる携帯機2によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)ケース25に設けられたメカニカルキー24をケース25から露出した状態で一回転可能に支持する支持機構27と、メカニカルキー24の回転運動を利用して発電する発電機50とを設けることとした。そして、発電機50を通じて発電された電力を通信装置Teに供給することとした。これにより、仮に携帯機2が電池切れの状態に陥ったとしても、メカニカルキー24を回転操作すれば、携帯機2と車載機1との間で無線通信を行うことが可能となる。したがって、メカニカルキー24を使用する必要がないため、利便性を向上させることができるようになる。
【0036】
(2)支持機構27によりメカニカルキー24をケース25から露出した状態で支持するに際して、メカニカルキー24の平板面24dをケース25の上面25aに対して直交させるようにした。これにより、ユーザはメカニカルキー24の平板面24dを指で掴むことができるため、メカニカルキー24を回転させやすくなる。このため、発電作業に際しての操作性を向上させることができるようになる。
【0037】
(3)メカニカルキー24を収容溝26に収容されている位置から、メカニカルキー24の全体がケース25から露出する位置まで揺動可能に支持する揺動支持部材27aと、同揺動支持部材27aを回転可能に支持する回転軸27cとを設け、これら揺動支持部材27a及び回転軸27cにより支持機構27を構成することとした。そして、発電機50では、回転軸27cの回転を利用して発電を行うこととした。これにより、キーシリンダの操作、並びに発電機50の駆動を可能としつつも、メカニカルキー24をケース25から取り外す必要がなくなるため、メカニカルキー24の紛失を未然に防止する上で有効となる。
【0038】
(4)支持機構27では、発電時にメカニカルキー24が回転操作される方向と、メカニカルキー24がキーシリンダへの挿入時に使用される方向とが互いに異なる方向となるようにメカニカルキー24を支持することとした。これにより、ケース25から露出したメカニカルキー24をキーシリンダに挿入した後、ケース25全体を先の図6に例示した矢印eで示す方向に回転させれば、メカニカルキー24を通常通り使用することができるため、利便性が向上するようになる。
【0039】
(5)メカニカルキー24の回転運動に基づき発生する運動エネルギを蓄積するとともに、ケース25に設けられた操作ボタン29の操作に基づき蓄積されたエネルギを発電機50に伝達するエネルギ蓄積機構40を設けることとした。これにより、メカニカルキー24の回転運動に基づき発生する運動エネルギを発電機50に効率良く伝達することができるため、発電効率を高めることができるようになる。
【0040】
(6)回転軸27cにラチェット機構60に設けることとした。これにより、メカニカルキー24の回転運動に基づき発生する運動エネルギをエネルギ蓄積機構40に効率良く蓄積することができるため、発電機50の発電効率を高めることができるようになる。
【0041】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・図8に示すように、ケース25の側面に、メカニカルキー24の板厚方向がケース25の板厚方向と直交する方向となるようにメカニカルキー24を収容する収容溝70を形成してもよい。なおこの場合、図9に示すように、メカニカルキー24がケース25の上方に露出したとき、メカニカルキー24の平板面24dがケース25の上面25aに対して平行な方向となる。このような構成であっても、図中の矢印bで示す方向にメカニカルキー24を回転操作すれば、上記実施形態と同様に、発電機50を駆動させることができるため、上記(1)の効果に準じた効果を得ることが可能である。
【0042】
・図10に示すように、ケース25では、メカニカルキー24を取り外すことの可能な構造を採用してもよい。この場合、図中に示すように、メカニカルキー24の基端部に突出部24eを形成するとともに、この突出部24eが係合される係合穴25bをケース25の上面25aに形成する。そして、図中に二点鎖線で示すように、ユーザがメカニカルキー24の突出部24eをケース25の係合穴25bに係合した後、メカニカルキー24を矢印bで示す方向に回転操作することで、上記ぜんまいばね41に機械的エネルギが蓄積されるようにする。このような構成であっても、上記実施形態と同様に、発電機50を駆動させることができるため、上記(1)の効果に準じた効果を得ることが可能である。
【0043】
・上記実施形態では、支持機構27の回転軸27cにラチェット機構60を設けることとしたが、このラチェット機構60を省略してもよい。なおこの場合には、ぜんまいばね41に蓄積された機械的エネルギを開放するまで、ユーザがメカニカルキー24を手で押さえればよい。
【0044】
・上記実施形態では、エネルギ蓄積機構40をぜんまいばね41により構成することとしたが、支持機構27の回転軸27cの回転運動により生じるエネルギを蓄積することができるものであれば、適宜のエネルギ蓄積機構を採用することが可能である。
【0045】
・上記実施形態では、本発明にかかる携帯機を、車両の電子キーシステムに用いられる携帯機に適用することとしたが、これ以外の携帯機にも適用することが可能である。要は、ケースの内部に収容された通信装置を通じて通信対象と無線通信を行うとともに、ケースにメカニカルキーが収容された構造からなる携帯機であれば、本発明にかかる携帯機を適用することが可能である。
【0046】
<付記>
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)請求項5に記載の携帯機において、前記エネルギ蓄積機構が、ぜんまいばねからなることを特徴とする携帯機。同構成によるように、エネルギ蓄積機構としてぜんまいばねを用いることとすれば、メカニカルキーの回転運動により生じる運動エネルギを蓄積するといった構造を容易に実現することができるため、請求項5に記載の発明の実現も容易となる。
【0047】
(ロ)請求項4に記載の携帯機において、前記回転軸の前記特定の方向への回転運動により生じるエネルギを蓄積するとともに、前記ケースに設けられたボタンの操作に基づき前記蓄積されたエネルギを前記発電機に伝達するエネルギ蓄積機構を更に備え、前記回転軸には、前記特定の方向と逆方向への回転を規制するラチェット機構が設けられていることを特徴とする携帯機。同構成によれば、ラチェット機構によって回転軸の特定の方向と逆方向の回転が規制されるため、回転軸の逆方向の回転によりエネルギ蓄積機構に蓄積されたエネルギが開放されることがない。このため、メカニカルキーの回転運動により生じる運動エネルギをエネルギ蓄積機構に効率良く蓄積することができるため、発電機の発電効率を高めることができるようになる。
【符号の説明】
【0048】
A…通信エリア、Te…通信装置、1…車載機、2…携帯機、10,21…送信部、11,20…受信部、12…車載制御部、12a,22a…メモリ、13…ドアロック機構、14…キーシリンダ、22…携帯機制御部、23…電源ユニット、23a…電池、23b…キャパシタ、24…メカニカルキー、24a,24e…突出部、24b…キー溝、24c…凹部、24d…平板面、25…ケース、25a…外面(上面)、25b…係合穴、26,70…収容溝、27…支持機構、27a…揺動支持部材、27b…軸、27c…回転軸、29…操作ボタン、30…爪部、31…操作部、40…エネルギ蓄積機構、41…ぜんまいばね、42…出力軸、43…係合部、44…係合爪、50…発電機、60…ラチェット機構、61…歯車、62…爪部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内部に収容された通信装置を通じて通信対象と無線通信を行うとともに、前記ケースにメカニカルキーが収容されてなる携帯機において、
前記ケースに設けられ前記メカニカルキーを前記ケースから露出した状態で特定の方向に一回転可能に支持する支持機構と、前記メカニカルキーの前記特定の方向への回転運動を利用して発電する発電機とを備え、同発電機を通じて発電される電力が前記通信装置に供給される
ことを特徴とする携帯機。
【請求項2】
前記メカニカルキーが平板状に形成されたものであって、
前記支持機構は、前記メカニカルキーを、その平板面が前記ケースの外面に対して直交するように支持するものである
請求項1に記載の携帯機。
【請求項3】
前記ケースの外面には、前記メカニカルキーが収容される収容溝が形成されており、
前記支持機構は、前記メカニカルキーを、前記収容溝に収容されている位置から、同メカニカルキーの全体が前記ケースから露出する位置まで揺動可能に支持する揺動支持部材と、同揺動支持部材を前記特定の方向に回転可能に支持する回転軸とから構成され、
前記発電機は、前記回転軸の回転に基づき発電するものである
請求項1又は2に記載の携帯機。
【請求項4】
前記支持機構は、前記特定の方向が、前記メカニカルキーが前記ケースから露出した位置に位置している状態でキーシリンダへの挿入時に使用される方向と異なる方向となるように前記メカニカルキーを支持するものである
請求項3に記載の携帯機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の携帯機において、
前記メカニカルキーの前記特定の方向への回転運動に基づき発生する運動エネルギを蓄積するとともに、前記ケースに設けられた操作ボタンの操作に基づき前記蓄積されたエネルギを前記発電機に伝達するエネルギ蓄積機構を更に備える
ことを特徴とする携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−87521(P2013−87521A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230023(P2011−230023)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)