説明

摩擦ローラ式減速機

【課題】必要とする冷却能力を確保しつつ、動力損失を少なく抑えられる構造を実現する。
【解決手段】太陽ローラの外周面と環状ローラの内周面との間に配置した複数個の中間ローラ27、27により、これら太陽ローラと環状ローラとの間でトルク伝達を行う。これら各中間ローラ27、27を支持する為のキャリア33の柱部36、36内に設けた供給路41、41を通じて、前記各ローラの周面同士の転がり接触部であるトラクション部にトラクションオイルを供給する。このうち、前記太陽ローラの外周面と前記各中間ローラ27、27の外周面との転がり接触部である内径側トラクション部への供給量を、これら各中間ローラ27、27の外周面と前記環状ローラの内周面との転がり接触部である外径側トラクション部への供給量よりも多くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電気自動車の駆動系に組み込んだ状態で、電動モータから駆動輪にトルクを伝達する、摩擦ローラ式減速機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年普及し始めている電気自動車の利便性を向上させるべく、充電1回当りの走行可能距離を長くする為に、電動モータの効率を向上させる事が重要である。そして、この効率を向上させるには、高速回転する小型の電動モータを使用し、この電動モータの出力軸の回転を減速してから駆動輪に伝達する事が効果がある。この様な場合に使用する減速機のうち、少なくとも前記電動モータの出力軸に直接繋がる第一段目の減速機は、運転速度が非常に速くなるので、運転時の振動及び騒音を抑える為に、摩擦ローラ式減速機を使用する事が考えられる。又、前記電動モータの出力軸と、駆動輪に繋がるデファレンシャルギヤとの間に変速装置を設ける事で、車両の走行速度と加速度との関係を、ガソリンエンジンを搭載した自動車に近い、滑らかなものにできるものと考えられる。この点に就いて、図14を参照しつつ説明する。
【0003】
例えば、前記電動モータの出力軸と前記デファレンシャルギヤの入力部との間部分に、減速比の大きな動力伝達装置を設けた場合、電気自動車の加速度(G)と走行速度(km/h)との関係は、図14の実線aの左半部と鎖線bとを連続させた様になる。即ち、低速時の加速性能は優れているが、高速走行ができなくなる。これに対して、前記間部分に減速比の小さな動力伝達装置を設けた場合、前記関係は、図14の鎖線cと実線aの右半部とを連続させた様になる。即ち、高速走行は可能になるが、低速時の加速性能が損なわれる。これに対して、前記間部分に変速装置を設け、車速に応じてこの変速装置の減速比を変えれば、前記実線aの左半部と右半部とを連続させた如き特性を得られる。この特性は、図14に破線dで示した、同等の出力を有するガソリンエンジン車とほぼ同等であり、加速性能及び高速性能に関して、ガソリンエンジン車と同等の性能を得られる事が分かる。
【0004】
図15は、この様な事情に鑑みて先に考えた、電気自動車用駆動装置の1例を示している(特願2011−51297)。この先発明に係る電気自動車用駆動装置は、電動モータ1と、摩擦ローラ式減速機2と、変速装置3と、回転伝達装置4とを備える。そして、この摩擦ローラ式減速機2の入力軸5と、前記電動モータ1の出力軸6とを互いに同心に配置して、トルクの伝達を可能に接続する。又、前記摩擦ローラ式減速機2の出力軸(図示省略)を、前記変速装置3の入力側伝達軸7と同心に配置して、トルクの伝達を可能に接続する。
【0005】
前記変速装置3は、前記入力側伝達軸7と出力側伝達軸8との間に、減速比が互いに異なる、1対の歯車伝達機構9a、9bを設けて成る。そして、1対のクラッチ機構10a、10bの切り換えにより、何れか一方の歯車伝達機構9a(9b)のみを、動力の伝達を可能な状態として、前記入力側伝達軸7と前記出力側伝達軸8との間の減速比を、高低の2段階に変換可能としている。
更に、前記回転伝達装置4は、複数の歯車を組み合わせた、一般的な歯車伝達機構であり、前記出力側伝達軸8の回転をデファレンシャルギヤ11の入力部に伝達し、左右1対の駆動輪を回転駆動する様に構成している。
【0006】
上述の様な先発明に係る電気自動車用駆動装置の構造によれば、電気エネルギの効率的利用の為、前記電動モータ1として、小型且つ高回転型(例えば最高回転速度が3〜4万min-1程度)のものを使用しても、運転時の振動及び騒音を抑えられる。即ち、第一段目の減速機として、前記摩擦ローラ式減速機2を使用しているので、高速回転部分での振動の発生を抑えられる。それぞれが歯車伝達機構である、前記変速装置3及び回転伝達装置4の回転速度は、一般的なガソリンエンジンを搭載した自動車の変速装置部分の運転速度と同程度(最高で数千〜1万min-1程度)に抑えられるので、何れの部分でも、不快な振動や騒音が発生する事はない。
【0007】
上述の様な電気自動車用駆動装置に組み込んで使用可能な摩擦ローラ式減速機として、例えば特許文献1〜3に記載されたものが知られている。このうちの特許文献3に記載された従来構造に就いて、図16〜18により説明する。この特許文献3に記載された摩擦ローラ式減速機2aは、入力軸5aと、出力軸12と、太陽ローラ13と、環状ローラ14と、それぞれが中間ローラである複数個の遊星ローラ15、15と、ローディングカム装置16とを備える。
このうちの太陽ローラ13は、軸方向に分割された1対の太陽ローラ素子17a、17bを前記入力軸5aの周囲に、互いの先端面同士の間に隙間を介在させた状態で互いに同心に、且つ、このうちの太陽ローラ素子17aを、前記入力軸5aに対する相対回転を可能に配置して成る。前記両太陽ローラ素子17a、17bの外周面は、それぞれの先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面であって、これら両傾斜面を転がり接触面としている。従ってこの転がり接触面の外径は、軸方向中間部で小さく、両端部に向かうに従って大きくなる。
【0008】
又、前記環状ローラ14は、全体を円環状としたもので、前記太陽ローラ13の周囲にこの太陽ローラ13と同心に配置した状態で、図示しないハウジング等の固定の部分に支持固定している。又、前記環状ローラ14の内周面は、軸方向中央部に向かうに従って内径が大きくなる方向に傾斜した転がり接触面としている。
又、前記各遊星ローラ15、15は、前記太陽ローラ13の外周面と前記環状ローラ14の内周面との間の環状空間18の円周方向複数箇所に配置している。前記各遊星ローラ15、15は、それぞれが前記入力軸5a及び前記出力軸12と平行に配置された、自転軸である遊星軸19、19の周囲に回転自在に支持している。これら各遊星軸19、19の基端部は、前記出力軸12の基端部に結合固定されたキャリア20に、支持固定されている。前記各遊星ローラ15、15の外周面は、母線形状が部分円弧状の凸曲面で、それぞれ前記太陽ローラ13の外周面と前記環状ローラ14の内周面とに転がり接触している。
【0009】
更に、前記ローディングカム装置16は、一方の太陽ローラ素子17aと、前記入力軸5aとの間に設けて、この入力軸5aの回転に伴ってこのローラ素子17aを、他方のローラ素子17bに向け押圧しつつ回転させるものである。この様なローディングカム装置16を構成する為に、前記入力軸5aの中間部に係止された支え環21と前記一方の太陽ローラ素子17aとの間に、この支え環21の側から順番に、皿ばね22と、カム板23と、複数個の玉24、24とを設けている。そして、互いに対向する、前記一方の太陽ローラ素子17aの基端面と前記カム板23の片側面との、それぞれ円周方向複数箇所ずつに、被駆動側カム面25、25と駆動側カム面26、26とを設けている。これら各カム面25、26はそれぞれ、軸方向に関する深さが円周方向に関して中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って漸次浅くなる形状を有する。
【0010】
この様なローディングカム装置16は、前記入力軸5aが停止している状態では、前記各玉24、24が、図18の(A)に示す様に、前記各カム面25、26の最も深くなった部分に位置する。この状態では、前記皿ばね22の弾力により、前記一方の太陽ローラ素子17aを前記他方の太陽ローラ素子17bに向け押圧する。これに対して、前記入力軸5aが回転すると、前記各玉24、24が、図18の(B)に示す様に、前記各カム面25、26の浅くなった部分に移動する。そして、前記一方の太陽ローラ素子17aと前記カム板23との間隔を拡げ、前記一方の太陽ローラ素子17aを前記他方の太陽ローラ素子17bに向け押圧する。この結果、この一方の太陽ローラ素子17aは前記他方の太陽ローラ素子17bに向け、前記皿ばね22の弾力と、前記各カム面25、26に対して前記各玉24、24が乗り上げる事により発生する推力とのうちの、大きな方の力で押圧されつつ回転駆動される。
【0011】
上述の様な摩擦ローラ式減速機2aの運転時には、前記ローディングカム装置16が発生する軸方向の推力により、前記両太陽ローラ素子17a、17bの間隔が縮まる。そして、これら両太陽ローラ素子17a、17bにより構成される前記太陽ローラ13の外周面と、前記各遊星ローラ15、15の外周面との転がり接触部の面圧が上昇する。この面圧上昇に伴ってこれら各遊星ローラ15、15が、前記太陽ローラ13及び前記環状ローラ14の径方向に関して外方に押される。すると、この環状ローラ14の内周面と前記各遊星ローラ15、15の外周面との転がり接触部の面圧も上昇する。この結果、前記入力軸5aと前記出力軸12との間に存在する、動力伝達に供されるべき、それぞれがトラクション部である複数の転がり接触部の面圧が、これら両軸5a、12同士の間で伝達すべきトルクの大きさに応じて上昇する。この状態で前記入力軸5aを回転させると、この回転が、前記太陽ローラ13から前記各遊星ローラ15、15に伝わり、これら各遊星ローラ15、15がこの太陽ローラ13の周囲で、自転しつつ公転する。これら各遊星ローラ15、15の公転運動は、前記キャリア20を介して前記出力軸3により取り出せる。
【0012】
前記摩擦ローラ式減速機2aの運転時には、前記各遊星ローラ15、15と、前記太陽ローラ13の外周面及び前記環状ローラ14の内周面との転がり接触部である、各トラクション部で、高面圧下でトルク伝達が行われる。一方、前記ローディングカム装置16によりこれら各トラクション部の面圧を上昇させる為に、前記各ローラ15、13、14の周面は、何れも、軸方向に関して径が変化する非円筒面としている。この為、前記各トラクション部で、周面同士の接触部分が自転しつつ公転する、スピンが発生する。高面圧下でスピンが発生した場合、前記各トラクション部での発熱が無視できない程度になるので、これら各トラクション部を冷却する必要がある。例えば、前述の図15に示した様な電気自動車用駆動装置を構成する摩擦ローラ式減速機2の場合には、大きな動力を伝達する関係上、前記各トラクション部での発熱量が相当に多くなるので、これら各トラクション部に、トラクションオイルの如き潤滑油を注ぐ(循環させる)事が好ましい。但し、単にこれら各トラクション部に多量のトラクションオイルを注ぐ構造を採用すると、このトラクションオイル供給用のポンプを駆動する事に伴う動力損失が多くなり、前記電気自動車用駆動装置全体としての動力損失が著しくなるので、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭59−187154号公報
【特許文献2】特開昭61−136053号公報
【特許文献3】特開2004−116670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、必要とする冷却能力を確保しつつ、動力損失を少なく抑えられる摩擦ローラ式減速機を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の摩擦ローラ式減速機は、入力軸と、出力軸と、太陽ローラと、環状ローラと、複数個の中間ローラと、潤滑装置とを備える。
そして、この潤滑装置は、前記各中間ローラの外周面と前記太陽ローラの外周面との転がり接触部である複数の内径側トラクション部と、前記各中間ローラの外周面と前記環状ローラの内周面との転がり接触部である複数の外径側トラクション部とに潤滑剤を供給するものである。
特に、本発明の摩擦ローラ式減速機に於いては、前記潤滑装置が前記各トラクション部に供給する潤滑剤の流量に差を設ける。そして、前記各内径側トラクション部と前記各外径側トラクション部とのうちで、発熱量の多いトラクション部への潤滑剤の供給量を、同じく少ない側の供給量よりも多くする。
【0016】
上述の様な本発明の摩擦ローラ式減速機を実施するのに、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記太陽ローラを、軸方向に分割された1対の太陽ローラ素子を前記入力軸の周囲に、互いの先端面同士の間に隙間を介在させた状態で互いに同心に配置して成るものとする。又、前記両太陽ローラ素子の外周面を、それぞれの先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面とし、これら両傾斜面を前記各中間ローラの外周面と転がり接触する転がり接触面とする。
又、前記環状ローラを、前記太陽ローラの周囲にこの太陽ローラと同心に配置して、内周面を転がり接触面とする。
又、前記各中間ローラを、前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面との間の環状空間の円周方向複数箇所に、それぞれが前記入力軸と平行に配置された自転軸を中心とする回転自在に支持する。そして、前記各中間ローラの外周面を、それぞれ、前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面とに転がり接触させる。
更に、前記両太陽ローラ素子のうちの少なくとも一方の太陽ローラ素子であり、前記入力軸に対する相対回転を可能とされた可動太陽ローラ素子とこの入力軸との間にローディングカム装置を設け、このローディングカム装置により、この入力軸の回転に伴って前記可動太陽ローラ素子を、相手方の太陽ローラ素子に向けて軸方向に押圧しつつ回転させる。
そして、前記各内径側トラクション部への潤滑剤の供給量を、前記各外径側トラクション部への潤滑剤の供給量よりも多くする。
【0017】
又、上述の様な請求項2に記載した発明の摩擦ローラ式減速機を実施する場合に、例えば請求項3に記載した発明の様に、前記各中間ローラを支持する為のキャリアを構成し、円周方向に隣り合うこれら各中間ローラ同士の間に配置される各柱部の内部に、潤滑剤の供給路を設ける。そして、これら各供給路内に送り込んだ潤滑剤を、前記キャリアの径方向に関して前記各柱部の内径側端部に設けた前記各供給路の下流端開口から、前記各内径側トラクション部に向けて吐出する。
【0018】
上述の様な請求項3に記載した発明を実施する場合に、例えば、請求項4に記載した発明の様に、前記各供給路の下流端開口を、前記各内径側トラクション部に対して、前記太陽ローラの回転方向後側に配置する。
或いは、請求項5に記載した発明の様に、前記各供給路の下流端開口を、前記各内径側トラクション部に対して、前記太陽ローラの回転方向前側に配置する。
或いは、請求項6に記載した発明の様に、前記各供給路の下流部を、前記太陽ローラの径方向に配設すると共に、これら各供給路の下流端開口を、円周方向に隣り合う前記各内径側トラクション部の間部分に配置する。
【0019】
更に、上述の様な請求項3〜6に記載した発明を実施する場合に、好ましくは、請求項7に記載した発明の様に、前記各自転軸を前記各中間ローラの中心部に、これら各中間ローラの軸方向両側面から突出する状態で、これら各中間ローラに対し固設する。そして、前記各自転軸の両端部を、それぞれこれら各中間ローラと同数の揺動フレームに対し、これら各中間ローラ毎に1対ずつの玉軸受により回転自在に支持する。又、前記キャリアを構成する前記各柱部を軸方向片側面に設けた連結板部の内部に、前記供給路の一部を設ける。そして、この一部の下流端を、前記各中間ローラ毎に1対ずつの玉軸受のうちの、前記連結板部に対向する側の玉軸受に向けて開口させる。
【発明の効果】
【0020】
上述の様に構成する本発明によれば、必要とする冷却能力を確保しつつ、動力損失を少なく抑えられる摩擦ローラ式減速機を実現できる。
即ち、発熱量の多いトラクション部への潤滑剤の供給量を多くする事で、これら各発熱量の多いトラクション部の冷却を十分に行える。これに対して、発熱量の少ないトラクション部への潤滑剤の供給量を少なく抑えるので、これら各トラクション部に供給する潤滑剤の総量が徒に多くなる事がない。要するに、これら各トラクション部に、必要且つ十分量であるが、過剰な(必要とする余裕代を超えた)潤滑剤を供給する事を防止して、この潤滑剤供給の為のポンプによる動力損失を低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の摩擦ローラ式減速機を組み込んだ、電気自動車用駆動装置の動力伝達装置の第1例を示す断面図。
【図2】図1のa部拡大図。
【図3】図1の右方から見た図。
【図4】摩擦ローラ式減速機を取り出し、太陽ローラ及び環状ローラを省略して、図1の右上方から見た状態で示す斜視図。
【図5】同じく図1の右方から見た正投影図。
【図6】同じく図5の左方から見た正投影図。
【図7】図6のb−b断面図。
【図8】キャリアを取り出して示す斜視図。
【図9】同じく図8の左方から見た端面図。
【図10】図9のc−c断面図。
【図11】図9のd−d断面図。
【図12】本発明の実施の形態の第2例を示す、図7と同様の断面図。
【図13】同第3例を示す、図7と同様の断面図。
【図14】電気自動車の加速特性と、ガソリンエンジン搭載車の加速特性との関係を説明する為の線図。
【図15】摩擦ローラ式減速機を組み込んだ、電気自動車用駆動装置の1例を示す斜視図。
【図16】従来から知られている摩擦ローラ式減速機の1例を示す断面図。
【図17】一部を省略して示す、図16のe−e断面図。
【図18】ローディングカム装置が推力を発生していない状態(A)と同じく発生している状態(B)とをそれぞれ示す、図17のf−f断面に相当する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施の形態の第1例]
図1〜11は、請求項1〜4、7に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の摩擦ローラ式減速機2bは、図示しない減速機ケース内に収納される。そして、この減速機ケース外に設けた電動モータ1(図15参照)により、摩擦ローラ式減速機2bを構成する太陽ローラ13aを回転駆動し、この太陽ローラ13aの回転を、複数個の中間ローラ27、27を介して環状ローラ14aに伝達し、この環状ローラ14aの回転を、出力軸12aを通じて取り出す様にしている。この出力軸12aを設置する為、前記減速機ケースの一端側壁部に軸受ケース28を、油密に固定する。そして、この軸受ケース28の内径側に前記出力軸12aを、油密を保持した状態で、回転自在に支持している。この出力軸12aと前記環状ローラ14aとは、互いに同心に配置した状態で、結合腕29により結合している。
【0023】
又、入力軸5bは、前記減速機ケースの他端側壁部に設置される、油密保持構造を備えた転がり軸受ユニット30によりこの他端側壁部に、回転自在に支持される。前記太陽ローラ13aは、互いに対称な形状を有する1対の太陽ローラ素子17c、17cから成り、前記入力軸5bの基半部(図1の左半部)の周囲に配置している。又、これら両太陽ローラ素子17c、17cと前記入力軸5bとの間にそれぞれローディングカム装置16a、16aを設け、これら両太陽ローラ素子17c、17cを互いに近付く方向に押圧しつつ、これら両太陽ローラ素子17c、17cを前記入力軸5bにより回転駆動する様にしている。尚、前記両ローディングカム装置16a、16aを構成するカム板23a、23aは、それぞれ前記入力軸5bに対し締り嵌めで外嵌固定して、この入力軸5bと共に回転する様にしている。又、前記両カム板23a、23aの互いに反対側面を、それぞれ前記入力軸5bの中間部に形成した鍔部31、又は、この入力軸5bの基端部に螺合固定したナット32に突き当てている。尚、前記両ローディングカム装置16a、16aは、前述の図16に示した従来構造のローディングカム装置16と同様の、それぞれ複数ずつの被駆動側、駆動側各カム面及び玉に加えて、予圧付与の為に前記両カム板23a、23aと前記両太陽ローラ素子17c、17cとを、回転方向に押圧する(周方向に相対変位させる)為のコイルばねを設けている。この部分の構造に関しては、本発明の要旨とは関係しないし、別の構造を採用する事もできる。
【0024】
前記各中間ローラ27、27は、前記減速機ケース内に支持固定されるキャリア33に対し、これら各中間ローラ27、27と同数の揺動フレーム34、34により、回転及びこのキャリア33の径方向に関する若干の変位を自在に支持している。このうちのキャリア33は、円輪状の連結板部35と、この連結板部35の軸方向片側面の円周方向等間隔複数箇所(図示の例では3箇所)から前記各中間ローラ27、27の設置側に向けて、前記キャリア33の軸方向に対し平行に突出した、柱部36、36とから成る。これら各柱部36、36の断面形状は、それぞれ前記キャリア33の径方向に長い。又、前記各揺動フレーム34、34は、円周方向に隣り合うこれら各柱部36、36同士の間部分に設置されていて、前記キャリア33の周方向に関して一端部を、前記連結板部35の軸方向片側面にそれぞれの基端部を結合固定した揺動支持軸37、37を中心とする、揺動変位を自在としている。
【0025】
前記各中間ローラ27、27は、上述の様な各揺動フレーム34、34の中間部に設けられた枠状の保持部38、38に、それぞれ1対ずつの玉軸受39、39により、回転自在に支持している。これら各玉軸受39、39は、波板ばね40、40により、それぞれの外輪を互いに近付く方向に押圧する事により、正面組み合わせの接触角と共に予圧を付与している。この構成により前記各中間ローラ27、27を前記各揺動フレーム34、34の中間部に、がたつきなく、但し、これら各中間ローラ27、27の中心軸を傾斜させる方向のモーメントに対する剛性を適度に低くした状態で、回転自在に支持している。尚、前記各玉軸受39、39を保持すべく、前記各揺動フレーム34、34の保持部38、38の内面の互いに整合する部分に設けた保持凹部47、47の底部中央は、前記各揺動フレーム34、34の外側面側に開口(連通)している。従って、前記各保持凹部47、47内には、前記各玉軸受39、39を潤滑する為の潤滑剤(トラクションオイル)が流通可能である。
【0026】
又、前記キャリア33を構成する、前記連結板部35及び前記各柱部36、36の内側に、本発明の特徴部分である、潤滑剤の供給路41、41を設けている。これら各供給路41、41はそれぞれ、前記キャリア33の径方向に形成した径方向供給路42、42と、同じく軸方向に形成した軸方向供給路43、43とから成る。これら各径方向供給路42、42のうち、前記キャリア33の径方向外端部は、止め栓44、44を圧入する事により塞いでいる。又、前記各軸方向供給路43、43は、それぞれの奥端部を前記各径方向供給路42、42の中間部に連通させ、基端部を前記各柱部36、36の先端面に開口させている。
【0027】
尚、図示の場合、前記各径方向供給路42、42を、前記各柱部36、36の幅方向に離隔した2箇所位置に形成し、前記各軸方向供給路43、43を両方の径方向供給路42、42に通じさせている。前記各止め栓44、44は、総ての径方向供給路42、42の径方向外端部に圧入しても良いし、前記各柱部36、36毎に2本ずつ形成したこれら各径方向供給路42、42のうちの一方の径方向供給路42の径方向外端部にのみ圧入しても良い。但し、図示の例の場合には、後述する様に、前記各柱部36、36のうちで前記各径方向供給路42、42の間部分に第二径方向供給路46を設ける事に伴い、前記径方向供給路42、42の径方向外端部は、総て前記各止め栓44、44により塞いでいる。
【0028】
更に、これら各径方向供給路42、42の下流端は、前記キャリア33の径方向に関して、前記各柱部36、36の内端面に開口している。前記摩擦ローラ式減速機2bを電気自動車用駆動装置に組み込んだ状態で、車両を前進させる際には、前記各中間ローラ27、27が、図7に矢印αで示す様に、同図の反時計方向に回転し、これら各中間ローラ27、27と転がり接触する前記太陽ローラ13a(図1、2参照)が、図7に矢印βで示す様に、同図の時計方向に回転する。前記各径方向供給路42、42の下流端は、前記各柱部36、36の径方向内端面のうちで、前記太陽ローラ13aの回転方向に関して前寄り部分に開口させている。又、前記各径方向供給路42、42を形成した方向は、前記キャリア33の径方向に対し傾斜している。傾斜方向は、この径方向内方に向かう程、前記太陽ローラ13aの回転方向前側に向かう方向としている。前記各径方向供給路42、42の方向及び下流端開口の位置をこの様に規制する事により、車両の前進時にこれら各径方向供給路42、42の下流端開口から吐出された潤滑剤(トラクションオイル)が、前記各中間ローラ27、27と前記太陽ローラ13aとの回転に伴って、これら各ローラ27、13a同士の転がり接触部(トラクション部)に、効率良く送り込まれる様にしている。
【0029】
前記キャリア33は、前記減速機ケース内に設けた、固定の支持壁或いは支持ブラケットに固定する。この為に、前記各柱部36、36の先端面のうちで、前記キャリア33の径方向に関して内外両端寄り部分に、それぞれスタッド45a、45bを固設している。これら各スタッド45a、45bは、前記摩擦ローラ式減速機2bを前記減速機ケース内に設置した状態で、前記支持壁或いは支持ブラケットに設けた通孔に挿通し、それぞれの先端部でこの支持壁或いは支持ブラケットの反対側面から突出した先端部に、ナットを螺合し更に締め付ける。この状態で、前記各供給路41、41を構成する軸方向供給路43、43の上流端を、前記支持壁或いは支持ブラケットに設けた給油路に連通させる。この給油路は、図示しない送油ポンプ等の給油源に通じさせており、前記摩擦ローラ式減速機2bを組み込んだ電気自動車用駆動装置の運転時に、前記各供給路41、41内にトラクションオイルを送り込める様にしている。
【0030】
電気自動車用駆動装置の運転時には、図示しない電動モータにより前記入力軸5bを介して、前記太陽ローラ13aを回転駆動する。この太陽ローラ13aの回転は、前記各中間ローラ27、27を介して前記環状ローラ14aに伝わる。この太陽ローラ13aを構成する、前記両太陽ローラ素子17c、17cには、コイルばねを組み込んで成る前記両ローディングカム装置16a、16aにより、互いに近付く方向の予圧が付与されている。従って、前記各ローラ14a、27、13aの周面同士の転がり接触部(トラクション部)の面圧は、これら各ローラ14a、27、13a同士の間でトルクを伝達しない状態でも或る程度確保されている。又、これら各ローラ14a、27、13a同士の間で伝達するトルクが大きくなると、前記両ローディングカム装置16a、16aが前記両太陽ローラ素子17c、17c同士を互いに近付ける方向に押圧する力(推力)が大きくなり、前記各トラクション部の面圧が更に高くなる。前記各中間ローラ27、27を支持した、前記各揺動フレーム34、34は、前記各揺動支持軸37、37を介して径方向に揺動する為、前記各中間ローラ27、27の外周面と、前記太陽ローラ13aの外周面及び前記環状ローラ14aの内周面との転がり接触部の面圧は、効果的に上昇する。この結果、前記各ローラ14a、27、13a同士の間で伝達するトルクの変動に拘らず、前記太陽ローラ13aから前記環状ローラ14aへの動力伝達を効率良く行える。
【0031】
前記各ローラ14a、27、13aの周面のうち、環状ローラ14aの内周面及び各中間ローラ27、27の中間部外周面は、軸方向に亙り径が変化しない円筒面である。従って、これら環状ローラ14aの内周面と各中間ローラ27、27の外周面中間部との転がり接触部である外径側トラクション部では、動力伝達に伴ってスピンが発生する事はないか、発生しても極く僅かである。この為、前記外径側トラクション部での発熱量は少なくて済む。これに対して、前記太陽ローラ13aの外周面と前記各中間ローラ27、27の外周面の幅方向両側部分とは、幅方向に関して外径が変化する部分円すい状凸面である。従って、前記太陽ローラ13aの外周面と各中間ローラ27、27の外周面の幅方向両側部分との転がり接触部である各内径側トラクション部では、動力伝達に伴ってスピンが発生する。又、前記太陽ローラ13aの外径は小さく、これら各内径側トラクション部のスピン角速度ωSPとこれら各内径側トラクション部の公転角速度ωとの比で表されるスピンレシオ|ωSP/ω|が大きくなる為、前記内径側トラクション部での発熱量が多くなる。
【0032】
本例の摩擦ローラ式減速機2bの場合には、前記各柱部36、36の内部に設けた前記各供給路41、41を通じて、前記各トラクション部に潤滑剤であるトラクションオイルを供給する。このうちの各内径側トラクション部に就いては、前記各柱部36、36毎に2本ずつ設けた、前記各径方向供給路42、42から、直接トラクションオイルが送り込まれる。図7に表された、これら各径方向供給路42、42の方向、並びに、この図7の矢印α、βから明らかな通り、これら径方向供給路42、42から吐出されたトラクションオイルは、前記各内径側トラクション部に効率良く取り込まれる。この為、これら各内径側トラクション部を効果的に冷却できる。
【0033】
一方、前記各外径側トラクション部に関しては、前記各内径側トラクション部程は発熱しない為、これら各外径側トラクション部へのトラクションオイルの供給量は比較的少なくても足りる。むしろ、これら各外径側トラクション部に過剰のトラクションオイルを送り込む事で、トラクションオイル供給用のポンプによる動力損失が増大したり、或いはトラクションオイルの攪拌抵抗に基づく動力損失の増大を抑えるべく、トラクションオイルの供給量を適正範囲に抑える事が好ましい。前記各外径側トラクション部へは、前記各内径側トラクション部に供給されたトラクションオイルが、前記各中間ローラ27、27の外周面に付着した状態で、或いは前記太陽ローラ13aの回転に基づく遠心力により振り飛ばされて付着する。従って、前記各外径側トラクション部に関しては、特に専用の給油回路を設けなくても良い場合もある。
【0034】
但し、各外径側トラクション部に関しても、確実にトラクションオイルを供給する為に、図示の例の様に、前記各柱部36、36の幅方向中央部で、前記各径方向供給路42、42同士の間部分に、第二径方向供給路46、46を設け、これら各第二径方向供給路46、46の外径側開口部を、前記環状ローラ14aの内周面中間部に向けて開口させる事もできる。前記各第二径方向供給路46、46は、図10に示す様に、外径側にのみ開口させる。これら各第二径方向供給路46、46に関しても、前記各軸方向供給路43、43に通じさせるが、前記各径方向供給路42、42が前記各柱部36、36毎に2本ずつ設けられているのに対して、前記各第二径方向供給路46、46がこれら各柱部36、36毎に1本のみ設けられている事、前記各軸方向供給路43、43の設置位置が径方向内方に偏っている事等により、発熱量の多い前記各内径側トラクション部への潤滑剤の供給量を、同じく少ない前記各外径側トラクション部への供給量よりも、明らかに多くする。
【0035】
更に本例の場合には、前記キャリア33を構成する、前記連結板部35の内部に、前記各軸方向供給路43、43と同数の分岐供給路48を形成し、これら各分岐供給路48の上流端と、これら各軸方向供給路43、43の下流端とを連通させている。又、これら各分岐供給路48のうちで、前記連結板部35の外周面側開口は、止め栓44aにより塞いでいる。更に、この連結板部35の一部で、前記各揺動フレーム34、34に設けた、これら各揺動フレーム34、34毎に1対ずつの保持凹部47、47のうち、前記連結板部35側(図1〜2の左側)の保持凹部47に保持した前記玉軸受39に対向する部分に、吐出口49、49を設けている。前記各軸方向供給路43、43から前記各分岐供給路48に流入した潤滑剤は、これら各吐出口49、49から前記各玉軸受39、39内に送り込まれ、これら各玉軸受39、39を潤滑する。尚、反対側(図1〜2の右側)の玉軸受39に関しては、前記減速機ケース内に設けた固定の支持壁或いは支持ブラケット内に設けた潤滑油供給路から、直接潤滑剤を送り込む。
【0036】
上述の様に本例の摩擦ローラ式減速機2bの場合には、発熱量の多い前記各内径側トラクション部への潤滑剤の供給量を多くするが、発熱量の少ない前記各外径側トラクション部への潤滑油の供給量を必要最小限に抑える事で、ポンプからのトラクションオイルの供給量を過剰にする事なく、前記各トラクション部の冷却を十分に行える。そして、トラクションオイルの温度上昇を抑えて、これら各トラクション部でのトラクション係数を確保し、グロススリップ等による動力損失の低下や前記各ローラ13a、14a、27の周面の損傷防止を図れる。更に、潤滑剤供給の為のポンプによる動力損失や、トラクションオイルの攪拌抵抗を低く抑えて、前記摩擦ローラ式減速機2bの、全体としての伝達効率を高くできる。
【0037】
[実施の形態の第2例]
図12は、請求項1〜3、5、7に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の摩擦ローラ式減速機2cは、各柱部36、36内に設けた、各径方向供給路42、42の下流端開口を、これら各柱部36、36の径方向内端面のうちで、太陽ローラ13a(図1〜2参照)の回転方向に関して後ろ寄りに配置している。又、本例の場合には、この太陽ローラ13aの径方向に対する、各径方向供給路42、42の傾斜方向を、上述した実施の形態の第1例とは逆に、径方向内方に向かう程、前記太陽ローラ13aの回転方向後側に向かう方向としている。
【0038】
この様な本例の構造の場合には、前記各径方向供給路42、42の下流端開口から前記太陽ローラ13aの外周面に向けて勢い良く吐出された潤滑剤(トラクションオイル)が、前記各内径側トラクション部で温度上昇してから、前記太陽ローラ13aの外周面に付着したまま送り出されて来るトラクションオイルを吹き飛ばす。従って、或る内径側トラクション部で温度上昇したトラクションオイルが、そのまま次の内径側トラクション部に送り込まれる事を防止できて、これら各内径側トラクション部の温度上昇を抑えられる。この結果、これら各内径側トラクション部のトラクション係数の低下を抑えて、前記摩擦ローラ式減速機2cの伝達効率の低下を防止できる。尚、前記次の内径側トラクション部には、前記各径方向供給路42、42から噴出した、未だ温度上昇していない新たなトラクションオイルが、前記吹き飛ばされたトラクションオイルに代って付着し、送り込まれる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0039】
[実施の形態の第3例]
図13は、請求項1〜3、6、7に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の摩擦ローラ式減速機2dは、各柱部36、36内に設けた、各径方向供給路42、42の方向を、太陽ローラ13a(図1〜2参照)の径方向に、ほぼ一致させている。そして、前記各径方向供給路42、42の下流端開口を、円周方向に隣り合う各内径側トラクション部の間部分に配置している。この様な本例の構造によれば、前述した実施の形態の第1〜2例とほぼ同様の作用・効果を得られる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明を実施する場合に、各径方向供給路42、42の下流端開口部にノズルを設け、これら各径方向供給路42、42の下流端開口から吐出されるトラクションオイルを、各内径側トラクション部に吹き付ければ、これら各内径側トラクション部へのトラクションオイルの供給を、より効率良く行える。
又、本発明の摩擦ローラ式減速機は、図1、15に示した様な電気自動車用駆動装置に限らず、各種回転機械装置の駆動力伝達部に組み込んだ状態で使用できる。
更に、ローディングカム装置は、太陽ローラの片側にのみ設ける事もできる。この場合、片側の太陽ローラ素子のみを入力軸に対し相対回転可能とし、他側の太陽ローラ素子は、この入力軸に固定する。
【符号の説明】
【0041】
1 電動モータ
2、2a、2b、2c、2d 摩擦ローラ式減速機
3 変速装置
4 回転伝達装置
5、5a、5b 入力軸
6 出力軸
7 入力側伝達軸
8 出力側伝達軸
9a、9b 歯車伝達機構
10a、10b クラッチ機構
11 デファレンシャルギヤ
12、12a 出力軸
13、13a 太陽ローラ
14、14a 環状ローラ
15 遊星ローラ
16、16a ローディングカム装置
17a、17b、17c 太陽ローラ素子
18 環状空間
19 遊星軸
20 キャリア
21 支え環
22 皿ばね
23、23a カム板
24 玉
25 被駆動側カム面
26 駆動側カム面
27 中間ローラ
28 軸受ケース
29 結合腕
30 転がり軸受ユニット
31 顎部
32 ナット
33 キャリア
34 揺動フレーム
35 連結板部
36 柱部
37 揺動支持軸
38 保持部
39 玉軸受
40 波板ばね
41 供給路
42 径方向供給路
43 軸方向供給路
44、44a 止め栓
45a、45b スタッド
46 第二径方向供給路
47 保持凹部
48 分岐供給路
49 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、出力軸と、太陽ローラと、環状ローラと、複数個の中間ローラと、潤滑装置とを備え、この潤滑装置は、これら各中間ローラの外周面と前記太陽ローラの外周面との転がり接触部である複数の内径側トラクション部と、前記各中間ローラの外周面と前記環状ローラの内周面との転がり接触部である複数の外径側トラクション部とに潤滑剤を供給するものである摩擦ローラ式減速機に於いて、
前記潤滑装置が前記各トラクション部に供給する潤滑剤の流量に差を設け、前記各内径側トラクション部と前記各外径側トラクション部とのうちで、発熱量の多いトラクション部への潤滑剤の供給量を、同じく少ない側の供給量よりも多くした事を特徴とする摩擦ローラ式減速機。
【請求項2】
前記太陽ローラは、軸方向に分割された1対の太陽ローラ素子を前記入力軸の周囲に、互いの先端面同士の間に隙間を介在させた状態で互いに同心に配置して成るもので、前記両太陽ローラ素子の外周面は、それぞれの先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面であって、これら両傾斜面を前記各中間ローラの外周面と転がり接触する転がり接触面としており、
前記環状ローラは、前記太陽ローラの周囲にこの太陽ローラと同心に配置されたもので、内周面を転がり接触面としており、
前記各中間ローラは、前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面との間の環状空間の円周方向複数箇所に、それぞれが前記入力軸と平行に配置された自転軸を中心とする回転自在に支持された状態で、それぞれの外周面を前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面とに転がり接触させており、
前記両太陽ローラ素子のうちの少なくとも一方の太陽ローラ素子であり、前記入力軸に対する相対回転を可能とされた可動太陽ローラ素子とこの入力軸との間に設けられて、この入力軸の回転に伴ってこの可動太陽ローラ素子を相手方の太陽ローラ素子に向けて軸方向に押圧しつつ回転させるローディングカム装置が備えられており、
前記各内径側トラクション部への潤滑剤の供給量を、前記各外径側トラクション部への潤滑剤の供給量よりも多くした、請求項1に記載した摩擦ローラ式減速機。
【請求項3】
前記各中間ローラを支持する為のキャリアを構成し、円周方向に隣り合うこれら各中間ローラ同士の間に配置される各柱部の内部に潤滑剤の供給路を設け、これら各供給路内に送り込んだ潤滑剤を、前記キャリアの径方向に関して前記各柱部の内径側端部に設けた前記各供給路の下流端開口から、前記各内径側トラクション部に向けて吐出する、請求項2に記載した摩擦ローラ式減速機。
【請求項4】
前記各供給路の下流端開口を、前記各内径側トラクション部に対して、前記太陽ローラの回転方向後側に配置した、請求項3に記載した摩擦ローラ式減速機。
【請求項5】
前記各供給路の下流端開口を、前記各内径側トラクション部に対して、前記太陽ローラの回転方向前側に配置した、請求項3に記載した摩擦ローラ式減速機。
【請求項6】
前記各供給路の下流部を、前記太陽ローラの径方向に配設すると共に、これら各供給路の下流端開口を、円周方向に隣り合う前記各内径側トラクション部の間部分に配置した、請求項3に記載した摩擦ローラ式減速機。
【請求項7】
前記各自転軸が前記各中間ローラの中心部に、これら各中間ローラの軸方向両側面から突出する状態で、これら各中間ローラに対し固設されていて、前記各自転軸の両端部が、それぞれこれら各中間ローラと同数の揺動フレームに対し、これら各中間ローラ毎に1対ずつの玉軸受により回転自在に支持されており、前記キャリアを構成する前記各柱部を軸方向片側面に設けた連結板部の内部に前記供給路の一部を設け、この一部の下流端を、前記各中間ローラ毎に1対ずつの玉軸受のうちの、前記連結板部に対向する側の玉軸受に向けて開口させた、請求項3〜6のうちの何れか1項に記載した摩擦ローラ式減速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−104514(P2013−104514A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250249(P2011−250249)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】