説明

摩擦締結具

【課題】スラスト方向の負荷に対して剛性が適確に確保されて軸と回転体との間に十分な許容トルクを発揮できる摩擦締結具1を提供する。
【解決手段】軸2に外嵌する内輪5とこの内輪5に外嵌する外輪6とを互いにテーパー嵌合させて軸2と回転体3のボス孔31との間に配置し、内輪5と外輪6とを複数の締付ボルト7で軸線方向に締付けることにより、テーパー嵌合している内輪5及び外輪6の圧接によって回転体3を軸2に固定する摩擦締結具1において、上記内輪5は、内周面にネジ溝50を設けて軸2の外周面に設けられたネジ部21に螺着させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸に、歯車、プーリー等の回転体を固定するための摩擦締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の摩擦締結具として、例えば、内輪及び外輪を互いにテーパー嵌合させて軸と回転体のボスとの間に配置し、内輪と外輪とを複数の締付ボルトで軸線方向に締付けることにより、テーパー嵌合している内輪及び外輪の圧接によって回転体を軸に固定するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−62618号公報
【特許文献2】実開昭4−101022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記回転体により軸となるボールネジを回転駆動させる場合の折り返し時や回転体をヘリカルギヤとする場合等その他の様々な使用状態のときに、上記摩擦締結具にスラスト方向の負荷が掛かる状況がある。この場合、従来の摩擦締結具と軸とは平滑面同士で圧接されているだけなので、スラスト方向の負荷に対して摩擦締結具の剛性が不足気味となり、軸と回転体との間に十分な許容トルクを発揮することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スラスト方向の負荷に対して剛性が適確に確保されて軸と回転体との間に十分な許容トルクを発揮することができる摩擦締結具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る摩擦締結具は、
軸に外嵌する内輪とこの内輪に外嵌する外輪とを互いにテーパー嵌合させて軸と回転体のボス孔との間に配置し、内輪と外輪とを複数の締付ボルトで軸線方向に締付けることにより、テーパー嵌合している内輪及び外輪の圧接によって回転体を軸に固定する摩擦締結具において、
上記内輪は、内周面にネジ溝を設けて軸の外周面に設けられたネジ部に螺着させる構成としたものである。
【0007】
上記構成によれば、摩擦締結具は、内輪のネジ溝と軸のネジ部との螺着により軸に固定されるので、スラスト方向の負荷に対して剛性が強化される。従って、摩擦締結具にスラスト方向の負荷が掛ったときでも摩擦締結具の剛性が十分に確保される。
【0008】
上記内輪は、外周面がテーパー面となって外輪とテーパー嵌合されるテーパー筒部と、このテーパー筒部の厚肉側に連設されて外周に張出し締付ボルトが締結されるツバ部とを有し、
上記ネジ溝がツバ部側の内周面に設けられているようにしてもよい。
【0009】
これによれば、内輪のツバ部は、外輪とはテーパー嵌合されないが、軸との螺合により強固に固定される。内輪のテーパー筒部は、外輪とのテーパー嵌合によって軸に強固に固定される。従って、内輪全体が軸に強固に固定され、しかも内輪のネジ溝と軸のネジ部との螺着によりスラスト方向の負荷にも十分な剛性が確保されるので、軸と回転体との間に十分な許容トルクを発揮することができる。
【0010】
また、上記ネジ溝は、内輪の内周面全域ではなく一部(ツバ部側)に設けられ、ネジ溝を設けない平滑面(テーパー筒部側)が内輪の内周面に有する。これにより、内輪の内周面の平滑面部分が軸の平滑な外周面と圧接されることにより、軸に対して内輪が編心状態に固定されるのを抑制することができる。従って、摩擦締結具と軸との同心性が確保され、回転体を軸に対して同心性よく固定することができる。
【0011】
上記内輪は、外周面がテーパー面となって外輪とテーパー嵌合されるテーパー筒部と、このテーパー筒部の厚肉側に連設されて外周に張出し締付ボルトが締結されるツバ部とを有し、
上記ネジ溝がテーパー筒部側の内周面に設けられているようにしてもよい。
【0012】
これによれば、内輪のテーパー筒部が外輪とのテーパー嵌合効果と相まって軸に強固に固定される。従って、内輪全体が軸に強固に固定され、しかも内輪のネジ溝と軸のネジ部との螺着によりスラスト方向の負荷にも十分な剛性が確保されるので、軸と回転体との間に十分な許容トルクを発揮することができる。
【0013】
また、上記ネジ溝は、内輪の内周面全域ではなく一部(テーパー筒部側)に設けられ、ネジ溝を設けない平滑面(ツバ部側)が内輪の内周面に有するから、上述したように、回転体を軸に対して同心性よく固定することができる。
【0014】
さらに、内輪のツバ部側の内周面は、平滑面であって軸の平滑な外周面と当接されるから、内輪のツバ部全体が軸方向に傾斜することなく軸の外周面に対して垂直に維持されやすい。従って、軸の回転に伴うツバ部の振れやこのツバ部の振れによる振動等を防止することができる。
【0015】
上記ツバ部の内側端面の外周部には段部が形成され、この段部に回転体のボス孔の開口周縁部が当接され、
上記ツバ部の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを螺合させる複数のネジ孔が設けられ、上記外輪の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを挿通させる複数のボルト挿通孔が設けられ、各締付ボルトを外輪側から通して内輪のツバ部に螺合させる構成としてもよい。
【0016】
これによれば、締結ボルトを締付けるとき、内輪は、ネジ溝を軸のネジ部に螺着させて軸に固定されているので軸線方向に移動することはなく、また、回転体もボス孔を内輪のツバ部の段部に当接させているので移動することはない。従って、締付ボルトの締付けに伴って外輪だけが移動し内輪や回転体は移動されないから、回転体の軸線方向への位置ズレが防止される。その結果、軸に対して位置精度良く回転体を取り付けることができる。
【0017】
上記ツバ部の外周部にはリング部材が取り付けられ、このリング部材に回転体のボス孔の開口周縁部が当接され、
上記ツバ部の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを螺合させる複数のネジ孔が設けられ、上記外輪の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを挿通させる複数のボルト挿通孔が設けられ、各締付ボルトを外輪側から通して内輪のツバ部に螺合させる構成としてもよい。
【0018】
これによっても、上記段部を設ける場合と同様に、締結ボルトを締付けるときは、回転体の軸線方向への位置ズレが防止され、軸に対して位置精度良く回転体を取り付けることができる。
また、回転体が当接される上記リング部材の厚さを変更したり、上記リング部材の取り付け位置を変更することにより、厚さの異なる各種の回転体に対しても適切な位置に固定することができる。従って、回転体の設計の自由度にも柔軟に対応することができる。
【0019】
また、本発明に係る他の摩擦締結具は、
軸と回転体のボス孔との間にテーパー部材を挿入し、テーパー部材の端面に軸に外嵌したフランジ部材を当接させ、フランジ部材と回転体とを複数の締付ボルトで軸線方向に締付けることにより、テーパー部材を軸と回転体のボス孔との間に圧入嵌合させて回転体を軸に固定する摩擦締結具において、
上記フランジ部材は、内周面にネジ溝を設けて軸の外周面に設けられたネジ部に螺着させ、
上記フランジ部材の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを螺合させる複数のネジ孔が設けられ、上記回転体の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを挿通させる複数のボルト挿通孔が設けられ、各締付ボルトを回転体側から通してフランジ部材に螺合させる構成としたものである。
【0020】
上記構成によれば、摩擦締結具は、フランジ部材のネジ溝と軸のネジ部との螺着により軸に固定されるので、スラスト方向の負荷に対して剛性が強化される。従って、摩擦締結具にスラスト方向の負荷が掛ったときでも摩擦締結具の剛性が十分に確保される。
また、ネジ径と軸径が異なる軸に対しても、適切なフランジ部材を組み合わせることにより回転体の固定に対応することができる。従って、軸の設計の自由度にも柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る摩擦締結具によれば、摩擦締結具にスラスト方向の負荷が掛ったときでも内輪のネジ溝と軸のネジ部との螺着によって摩擦締結具の剛性が十分に確保されるので、軸と回転体との間に十分な許容トルクを発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態による摩擦締結具として軸に回転体を固定させた状態の構成を示す一部断面図である。
【図2】実施形態による摩擦締結具の構成を示す図であり、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図、同図(c)は断面図である。
【図3】工具対応部や締付ボルトの数の他の例を示す図であり、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図である。
【図4】ネジ溝位置の他の例を示す一部断面図である。
【図5】リング部材としてカラーを設けた例を示す一部断面図である。
【図6】リング部材としてスナップリングを設けた例を示す一部断面図である。
【図7】フランジ部材を独立に構成した例を示す一部断面図である。
【図8】フランジ部材を独立に構成した他の例を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付図面を参照しながら実施形態を説明する。
図1に示す摩擦締結具1は、軸受4によって軸支された軸2の先端部に、軸受4に隣接して回転体3を固定させている。この軸2は、先端部と軸受4の軸支部分との間の外周面にネジ部21が形成されている。回転体3の例としては、例えば、歯車、プーリー、スプロケット、カム等が挙げられる。
【0024】
そして、図2をも参照して、摩擦締結具1は、軸2に外嵌する内輪5とこの内輪5に外嵌する外輪6とを互いにテーパー嵌合させて軸2と回転体3のボス孔31との間に挿入し、内輪5と外輪6とを複数の締付ボルト7で軸線方向に締付けることにより、内輪5が縮径すると同時に外輪6が拡径してこれら内輪5及び外輪6の圧接力によって回転体3を軸2に固定させる。
【0025】
内輪5は、外周面をテーパー面としたテーパー筒部51と、このテーパー筒部51の厚肉側に連設されて外周に張出したツバ部52とを有している。この内輪5の内径は、軸2を挿通するために軸2の外径よりやや大きく形成されている。
【0026】
テーパー筒部51には、軸線方向に複数のスリット53が形成され、各スリット53は、テーパー筒部51の薄肉側の先端に開放されている。テーパー筒部51の内周面は、軸2の平滑な外周面と平行な平滑面となっている。テーパー筒部51に複数のスリット53を形成することにより、内輪5が縮径時に編心するのが抑制される。
【0027】
ツバ部52は、無端リング状に形成され、その端面には、軸線方向に貫通する複数のネジ孔54が等間隔に周設されている。なお、ネジ孔54の数は、任意に設けることができ、図2に示すように4つ設けてもよいし、図3に示すように8つ設けてもよい。また、ツバ部52の外周面は、スパナ等の工具が掛けられるように工具対応面55a(工具対応部55)が形成されている。なお、この工具対応部55は、図3に示すように軸線方向に設けた工具対応溝55bとしてもよいし、また、工具対応部55の他の形態として、ねじまわし用の工具対応穴を、ツバ部52の円形外周面に設けたり(図4に示すねじまわし穴55c)、図示しないがツバ部52の端面(好ましくは内側端面)に設けるようにしてもよい。また、ツバ部52の内側端面の外周部には段部56が形成され、この段部56に回転体3のボス孔31の開口周縁部32が嵌め込まれる。また、ツバ部52の内周面は、軸2の外周面に設けられたネジ部21と螺合されるネジ溝50となっている。
【0028】
外輪6は、一部開放のリング状に形成され、内周面がテーパー面となって内輪5のテーパー筒部51に外嵌される。この外輪6の外径は、回転体3のボス孔31に配置するためにボス孔31の孔径よりやや小さく形成されている。外輪6の外周面は、回転体3のボス孔31と平行な平滑面となっている。また、外輪6の端面には、軸線方向に貫通する複数のボルト挿通孔61が等間隔に周設されている。これらボルト挿通孔61は、内輪5のツバ部52に設けるネジ孔54と対応する位置に設けられている。従って、各締付ボルト7は、外輪6のボルト挿通孔61に挿通させ、内輪5のツバ部52のネジ孔54に螺合される。また、外輪6には、図示しないが、分解用ボルトをねじ込むネジ孔が設けられている。
【0029】
そして、この摩擦締結具1は、内輪5のツバ部52を軸2のネジ部21に螺着させると共に内輪5及び外輪6を互いにテーパー嵌合させて軸2と回転体3のボス孔31との間に配置させ、外輪6側から挿通した複数の締付ボルト7を締付けると、テーパー嵌合により内輪5が縮径すると同時に外輪6が拡径し、これら内輪5及び外輪6の圧接によって回転体3が軸2に固定される。
【0030】
これによれば、締付ボルト7を締付けるときには、内輪5は、ツバ部52のネジ溝50を軸2のネジ部21に螺着させて軸2に固定され、回転体3は、ボス孔31をツバ部52の段部56に当接させているので、締付ボルト7の締付けに伴って外輪6だけが移動し回転体3は移動されないから、回転体3の軸線方向への位置ズレが防止される。従って、軸2に対して位置精度良く回転体3を取り付けることができる。
【0031】
しかも、テーパー筒部51の内周面の平滑面部分が軸2の平滑な外周面と圧接されることにより、軸2に対して内輪5が編心状態に固定されるのを抑制することができる。従って、摩擦締結具1と軸2との同心性が確保され、回転体3を軸2に対して同心性よく固定することができる。
【0032】
そして、回転体3の固定状態では、摩擦締結具1は、内輪5のネジ溝50と軸2のネジ部21との螺着により軸2に固定されるので、スラスト方向の負荷に対して剛性が強化される。従って、様々な使用状況の中で、摩擦締結具1にスラスト方向の負荷が加わったときでも摩擦締結具1の剛性が十分に確保され、軸2と回転体3との間に十分な許容トルクを発揮することができる。特に、ツバ部52は、その段部56に回転体3のボス孔31の開口周縁部32が当接されることから、スラスト方向の負荷を強く受けやすい。そこで、このツバ部52の内周面をネジ溝50とし軸2のネジ部21に螺着させることにより、ツバ部52でのスラスト荷重に対する剛性が強化され、その結果、スラスト方向の負荷に対する摩擦締結具1の剛性が効率的に増強される。
【0033】
また、内輪5のツバ部52は、外輪6とはテーパー嵌合されないが、軸2との螺合により強固に固定される。内輪5のテーパー筒部51は、外輪6とのテーパー嵌合によって軸2に強固に固定される。従って、内輪5全体が軸2に強固に固定され、しかも内輪5のネジ溝50と軸2のネジ部21との螺着によりスラスト方向の負荷にも十分な剛性が確保されるので、軸2と回転体3との間に十分な許容トルクを発揮することができる。また、内輪5のツバ部52が軸2と螺合されることにより振動や遠心力等によっても摩擦締結体1と軸2との締結力を弱化させることもなく強固な締結を維持することができる。
【0034】
さらに、内輪5は、ツバ部52が軸2に螺着されて所定位置に固定されるから、軸2を支持する軸受4に隣接させて回転体3を取り付ける場合は(図1参照)、この内輪5のツバ部52において軸受4からの軸2の抜け防止を行うナットの機能を兼ねさせることができる。従って、この場合は、軸2の軸受4からの抜け止め用のナットを不要とすることができ、軸2への回転体3の取り付けに要する部品数を減らしコストの低減を図ることができる。
【0035】
また、外輪6の側にボルト挿通孔61が設けられて外輪6の全長にわたって締付ボルト7が挿通される。そして、締付ボルト7の締付け完了状態では、内輪5が縮径されると同時に外輪6が拡径されるから、締付けボルトは、外輪6のボルト挿通孔61の内周面に圧接状態となる。これにより、外輪6の全長にわたって締付ボルト7によるアンカー効果が発揮されるので、外輪6の剛性を強化することができる。その結果、外輪6によって回転体3のボス孔31に対する摩擦締結力が増強され、回転体3を軸2に対して強固に固定することができる。
【0036】
なお、本発明に係る摩擦締結具は、上記実施形態のみに限定されず、例えば、以下の変更が可能である。
(1)図4に示す摩擦締結具1Aのように、上記ネジ溝50がテーパー筒部51側の内周面に設けられているようにしてもよい。これによれば、内輪5のテーパー筒部51が外輪6とのテーパー嵌合効果と相まって軸2に強固に固定される。従って、内輪5全体が軸2に強固に固定され、しかも内輪5のネジ溝50と軸2のネジ部21との螺着によりスラスト方向の負荷にも十分な剛性が確保されるので、軸2と回転体3との間に十分な許容トルクを発揮することができる。また、内輪5のツバ部52側の内周面は、平滑面であって軸2の平滑な外周面と当接されるから、内輪5のツバ部52全体が軸線方向に傾斜することなく軸2の外周面に対して垂直に維持されやすい。従って、軸2の回転に伴うツバ部52の振れやこのツバ部52の振れによる振動等を防止することができる。さらに、この形態の場合、軸2のネジ部21は、先端部に形成すればよいから、軸2の加工も容易となる。
【0037】
なお、本発明に係る摩擦締結具として、内輪5のネジ溝50は、図1や図4に示すような内輪5の内周面の一部領域に設けるのみならず、内周面全域に設けてもよい。
【0038】
(2)図5に示す摩擦締結具1Bのように、上記ツバ部52の外周部には内側端面側に切欠いた小径部81が形成され、この小径部81にカラー82(リング部材)が外嵌され、このカラー82に回転体3のボス孔31の開口周縁部32が当接されるようにしてもよい。また、図6に示す摩擦締結具1Cのように、上記ツバ部52の外周部には複数の溝部83が全周にわたって形成され、これら溝部83のうち1箇所にスナップリング84(リング部材)が外嵌され、このスナップリング84に回転体3のボス孔31の開口周縁部32が当接されるようにしてもよい。
【0039】
このように、リング部材としてのカラー82又はスナップリング84を設けることにより、上記段部56と同様に、軸2に対して位置精度良く回転体3を取り付けることができ、加えて、回転体3が当接されるカラー82の厚さを変更したり、スナップリング84の取り付け位置を変更することにより、厚さの異なる各種の回転体3に対しても適切な位置に固定することができる。従って、回転体3の設計の自由度にも柔軟に対応することができる。なお、上記摩擦締結具1B,1C(図5、図6)は、それぞれリング部材(カラー82、スナップリング84)を取り付けない状態で使用することもできる。
【0040】
(3)また、本発明に係る摩擦締結具では、内周面にネジ溝50を設けて軸2のネジ部21に螺着させるフランジ部材91を独立に設けるようにしてもよい。
例えば、図7に示す摩擦締結具1Dのように、軸2と回転体3のボス孔31との間にテーパー部材92を挿入し、軸2に外嵌した上記フランジ部材91をこのテーパー部材92の端面に当接させる。上記テーパー部材92は、軸2に外嵌させる内輪93と、内輪93に外嵌し回転体3のボス孔31と当接する外輪94とを備える。内輪93は外周面がテーパー面となっており、外輪94は内周面がテーパー面となっており、これら内輪93と外輪94が互いにテーパー嵌合している。内輪93の厚肉側にはフランジ部材91と当接するツバが連設され、外輪94の薄肉側には回転体3のボス孔31の開口周縁部32と当接する環状凸部が連設されている。また、フランジ部材91の端面には軸線方向に貫通して締付ボルト7を螺合させる複数のネジ孔95が設けられ、回転体3の端面には軸線方向に貫通して締付ボルト7を挿通させる複数のボルト挿通孔96が設けられている。そして、複数の締付ボルト7の各々を回転体3側からボルト挿通孔96に通してフランジ部材91のネジ孔95に螺合させ、各締付ボルト7を締付けることで回転体3及び外輪94がフランジ部材91側に移動して内輪93と外輪94とからなるテーパー部材92が軸2と回転体3のボス孔31との間に圧入嵌合されて回転体3が軸2に固定される。
【0041】
上記構成により、摩擦締結具1Dは、フランジ部材91のネジ溝50と軸2のネジ部21との螺着により軸2に固定されるので、スラスト方向の負荷に対して剛性が強化される。従って、摩擦締結具1Dにスラスト方向の負荷が掛ったときでも摩擦締結具1Dの剛性が十分に確保される。また、この摩擦締結具1Dによれば、ネジ径と軸径が異なる軸2に対しても適切なフランジ部材91を組み合わせることにより回転体3の固定に対応することができるから、軸2の設計の自由度にも柔軟に対応することができる。
【0042】
なお、上記形式の摩擦締結具は、図8に示す摩擦締結具1Eのように、テーパー部材92を1つの部材で構成してもよい。このものでは、回転体3のボス孔31がテーパー面に形成され、テーパー部材92は、このボス孔31にテーパー嵌合するように外周面がテーパー面となったテーパーリングにより構成する。このテーパーリングは、厚肉側にフランジ部材91の端面と当接するツバが連設され、このツバには締付ボルト7を挿通する挿通孔が設けられている。
【符号の説明】
【0043】
1 摩擦締結具
2 軸
3 回転体
4 軸受
5 内輪
6 外輪
7 締付ボルト
21 ネジ部
31 ボス孔
32 開口周縁部
50 ネジ溝
51 テーパー筒部
52 ツバ部
54 ネジ孔
56 段部
61 ボルト挿通孔
82 カラー
84 スナップリング
91 フランジ部材
92 テーパー部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸に外嵌する内輪とこの内輪に外嵌する外輪とを互いにテーパー嵌合させて軸と回転体のボス孔との間に配置し、内輪と外輪とを複数の締付ボルトで軸線方向に締付けることにより、テーパー嵌合している内輪及び外輪の圧接によって回転体を軸に固定する摩擦締結具において、
上記内輪は、内周面にネジ溝を設けて軸の外周面に設けられたネジ部に螺着させる構成とした摩擦締結具。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦締結具において、
上記内輪は、外周面がテーパー面となって外輪とテーパー嵌合されるテーパー筒部と、このテーパー筒部の厚肉側に連設されて外周に張出し締付ボルトが締結されるツバ部とを有し、
上記ネジ溝がツバ部側の内周面に設けられている摩擦締結具。
【請求項3】
請求項1に記載の摩擦締結具において、
上記内輪は、外周面がテーパー面となって外輪とテーパー嵌合されるテーパー筒部と、このテーパー筒部の厚肉側に連設されて外周に張出し締付ボルトが締結されるツバ部とを有し、
上記ネジ溝がテーパー筒部側の内周面に設けられている摩擦締結具。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の摩擦締結具において、
上記ツバ部の内側端面の外周部には段部が形成され、この段部に回転体のボス孔の開口周縁部が当接され、
上記ツバ部の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを螺合させる複数のネジ孔が設けられ、上記外輪の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを挿通させる複数のボルト挿通孔が設けられ、各締付ボルトを外輪側から通して内輪のツバ部に螺合させる構成とした摩擦締結具。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の摩擦締結具において、
上記ツバ部の外周部にはリング部材が取り付けられ、このリング部材に回転体のボス孔の開口周縁部が当接され、
上記ツバ部の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを螺合させる複数のネジ孔が設けられ、上記外輪の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを挿通させる複数のボルト挿通孔が設けられ、各締付ボルトを外輪側から通して内輪のツバ部に螺合させる構成とした摩擦締結具。
【請求項6】
軸と回転体のボス孔との間にテーパー部材を挿入し、テーパー部材の端面に軸に外嵌したフランジ部材を当接させ、フランジ部材と回転体とを複数の締付ボルトで軸線方向に締付けることにより、テーパー部材を軸と回転体のボス孔との間に圧入嵌合させて回転体を軸に固定する摩擦締結具において、
上記フランジ部材は、内周面にネジ溝を設けて軸の外周面に設けられたネジ部に螺着させ、
上記フランジ部材の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを螺合させる複数のネジ孔が設けられ、上記回転体の端面には軸線方向に貫通して締付ボルトを挿通させる複数のボルト挿通孔が設けられ、各締付ボルトを回転体側から通してフランジ部材に螺合させる構成とした摩擦締結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−163432(P2011−163432A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26283(P2010−26283)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000100838)アイセル株式会社 (62)
【Fターム(参考)】