説明

摺擦具

【課題】 天然繊維もしくは合成繊維の布地からなる上下に扁平な袋体10と、袋体10の内部へ充填される複数の小片布12とを備えた摺擦具1において、小片布12が摺擦具1の一端側へ偏るのを抑制することによって、使用する際に摺擦対象部位を効率良く摺擦できる、使い勝手の良い摺擦具を提供すること。
【解決手段】 袋体10の内部に、平面視においてその内部全体に広がるシート状の網体13を結合することによって、小片布12が網体13に引っ掛かり、摺擦具1の一端側へ偏るのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体を洗浄するための摺擦具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顔や手足等、身体を洗う際に使用される摺擦具として、天然繊維または合成繊維の布地からなるタオルや、矩形ブロック状の連続気泡性ウレタンフォームからなるボディスポンジ等が知られている。
【0003】
これらの摺擦具は、一枚の布地やウレタンフォームの塊を切断して形成されており、その生産過程において発生する余分な端材は、廃棄処分されている。従って、材料の無駄が生じやすく、廃棄処分に対する労力やコスト面での負担がかかる。
そこで、上記摺擦具の生産過程において発生する端材の有効利用すべく、図8に示すような摺擦具を考えることができる。
【0004】
図8(a)は、摺擦具9の断面図であり、合成繊維の布地からなる2枚の摺擦シート91,91を重ね合わせて袋体90を形成し、その袋体90の中央部に設けられた間隙900に、合成繊維からなる布地を小さく切断した小片布92を充填したものである。
【0005】
このものでは、摺擦シート91,91相互の間隙900に、布地を小さく切断した小片布92が多数充填されているから、摺擦具9全体のクッション性が高く、摺擦対象部位に対してソフトな使用感を与えることができる。
【特許文献1】特開2001−327429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記摺擦具9では、小片布92が袋体90の間隙900内で自由に移動し易いため、その小片布92が摺擦具9の一端側へ偏り易い(図8(b)参照)。従って、摺擦具9全体の形態が不安定に変形し易く、使用する際に摺擦対象部位を効率良く摺擦できないといった問題があった。
【0007】
本発明は係る点に鑑みてなされたもので、
『天然繊維もしくは合成繊維の布地からなる上下に扁平な袋体と、前記袋体の内部へ充填される多数の小片布とを備えた摺擦具』において、使い勝手の良い摺擦具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の技術的手段は、
『前記袋体の内部には、平面視においてその内部全体に広がるシート状の網体が結合されている』ことである。
上記技術手段によれば、小片布が充填される袋体の内部に、シート状の網体が設けられているから、小片布が網体に引っ掛かり、摺擦具の一端側へ偏るのが抑制される。
【0009】
請求項2に係る発明の技術的手段は、
前記請求項1において、
『前記小片布は、前記網体の表裏面と前記袋体の内面との間隙の両方に充填されている』ことである。
このものでは、網体の表裏面と袋体の内面との間隙の両方に小片布が充填されているから、網体の片面側にのみ小片布が充填されているものに比べて、網体に引っ掛かる小片布の量が多い。従って、摺擦具の一端側へ偏るのが一層抑制される。
【0010】
請求項3に係る発明の技術的手段は、
前記請求項1または2において、
『前記網体の内部には、合成樹脂発泡体からなる芯板が収容されている』ことである。
このものでは、袋体の内部に、合成樹脂発泡体で形成された芯板が収容されているから、摺擦具全体の形態安定性が向上する。
【0011】
請求項4に係る発明の技術的手段は、
前記請求項1から3のいずれかにおいて、
『前記袋体および前記小片布は、単繊維繊度が0.001〜1.1デシテックスの極細繊維で形成されている』ことである。
このものでは、袋体および小片布が、単繊維繊度が0.001〜1.1デシテックスの極細繊維で形成されているから、摺擦対象部位の脂分や汚れを効果的に拭き取ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記構成であるから次の特有の効果を有する。
請求項1に係る発明によれば、小片布が摺擦具の一端側へ偏るのを抑制することによって、使用する際に摺擦対象部位を効率良く摺擦できるから、使い勝手の良い摺擦具を提供することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、小片布が摺擦具の一端側へ偏るのを一層抑制するから、一層使い勝手の良い摺擦具を提供することができる。
請求項3に係る発明では、上記効果に加えて、摺擦具全体の形態安定性が向上するから、一層使い勝手の良い摺擦具を提供することができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、上記効果に加えて、摺擦対象部位の脂分や汚れが効果的に拭き取られるから、洗浄効果の高い摺擦具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、上記した本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る摺擦具1の一部を切り欠いた状態の平面図であり、図1(b)は、その一部断面概略図である。
【0016】
図1(a)および(b)に示すように、摺擦具1は、略楕円状に形成された2枚の摺擦シート11,11で構成された上下に扁平な袋体10と、布地を小さく切断して形成される小片布12と、摺擦シート11,11の外周形状と同形のメッシュシート13とを備えており、メッシュシート13が中間に位置するように摺擦シート11,11とメッシュシート13とを重ね合わせ、該メッシュシート13と摺擦シート11,11との間隙100,100に多数の小片布12を充填したものである。また、袋体10の両端には、ループ状のストラップ15,15が設けられている。摺擦シート11,11とメッシュシート13は、その周縁部でストラップ15,15とともに縫合されている。
尚、上記「メッシュシート13」が、既述請求項1の発明特定事項としての「網体」に対応する。
【0017】
摺擦シート11は、単繊維繊度が約0.25デシテックスのポリエステル系樹脂の極細繊維で形成された布地であり、平坦層R1,R1と、それら平坦層R1,R1相互間のパイル編み層R2とを有する三層構造になっている(図2参照)。
尚、上記摺擦シート11は、ポリエステル系樹脂繊維で形成されているが、これに限定されるものではなく、ポリアミド系樹脂繊維で形成したものであっても良いし、ポリエステル系樹脂繊維とポリアミド系樹脂繊維とを混合して形成したものであっても良い。また、その単繊維繊度は、約0.25デシテックスのものであるが、これに限らず、0.001デシテックスであっても良いし、1.1デシテックスであっても良い。さらに、上記摺擦シート11は、平坦層R1,R1相互間にパイル編み層R2が設けられたものであるが、摺擦シート11の表面側にパイル編み層が表出するものであっても良いし、摺擦シート11全体が平坦に形成されているものであっても良い。
【0018】
小片布12は、単繊維繊度が約0.25デシテックスのポリエステル系樹脂の極細繊維で形成された布地を縦横5mmから20mm程度の大きさに切断したものであり、上記摺擦シート11と同様、平坦層R1,R1と、それら平坦層R1,R1相互間のパイル編み層R2とを有する三層構造になっている(図2参照)。
【0019】
尚、上記小片布12についても、上記摺擦シート11と同様、ポリアミド系樹脂繊維で形成したものであっても良いし、ポリエステル系樹脂繊維とポリアミド系樹脂繊維とを混合して形成したものであっても良い。また、その単繊維繊度は、約0.25デシテックスのものであるが、これに限らず、0.001デシテックスであっても良いし、1.1デシテックスであっても良い。さらに、上記小片布12は、その一面側にパイル編み層が表出するものであっても良いし、小片布12全体が平坦に形成されているものであっても良い。
【0020】
メッシュシート13は、ポリエステル系樹脂繊維で形成された細目(例えば、長径が約0.2mmの網目)のメッシュ生地である。
尚、上記メッシュシート13は、ポリエステル系樹脂繊維で形成されているが、これに限定されるものではなく、ナイロン系樹脂繊維で形成したものであっても良い。
【0021】
ストラップ15は、引張強度が高く且つ柔軟な布テープで形成されている。尚、この両方のストラップ15,15に紐を取り付けて使用すれば、手の届き難い背中や腰部の摺擦も容易になる。
【0022】
上記摺擦具1によれば、メッシュシート13の上下面側の間隙100,100に小片布12が充填されており、メッシュシート13に引っ掛かる小片布12の量が多いから、メッシュシート13近傍の小片布12が自由に移動できる度合が低い。即ち、図3に示すように、小片布12の切断面にあらわれる繊維体120の端部がメッシュシート13の網目部130に進入し、小片布12全体がメッシュシート13に引っ掛かった状態になる。また、小片布12の外周コーナー部もメッシュシート13に引っ掛かる。従って、小片布12が摺擦具1の一端側へ偏るのが抑制される。これによって、摺擦具1全体の形態が不安定に変形するのが抑制され、使用する際に摺擦対象部位を効率良く摺擦できるから、使い勝手が良い。
【0023】
また、メッシュシート13が摺擦シート11,11相互間をその中間で仕切るように設けられており、メッシュシート13の表裏面の両側に小片布12が充填されているから、メッシュシート13の片面側にのみ小片布12を充填する場合と比べて、メッシュシート13に多くの小片布12が接触する。従って、小片布12の偏在を一層抑制できる。これによって、摺擦具1全体の形態が不安定に変形するのが一層抑制され、摺擦対象部位を効率良く摺擦できるから、使い勝手が一層良好である。
【0024】
さらに、摺擦シート11は、極細繊維で形成されているから、摺擦対象部位の脂分や汚れを効果的に拭き取ることができる。具体的には、摺擦シート11表面の極細繊維間に形成された微細な空間に、肌表面の皮脂や汚れが吸着されるとともに、極細繊維の端部が毛穴にまで入り込み、その毛穴に詰まった皮脂や汚れを除去する。上記摺擦具1に石鹸を付けて使用した場合は、摺擦シート11の極細繊維が毛穴にまで入り込む微細で均一な泡を造り出し、その泡が毛穴に詰まった皮脂や汚れを除去する。これにより、摺擦対象部位の脂分や汚れを効果的に拭き取ることができ、高い洗浄効果を発揮する。
【0025】
また、上記摺擦シート11は、平坦層R1,R1相互間にパイル編み層R2を有する三層構造になっており、そのパイル編み層R2が摺擦シート11のクッション性を高めている。従って、摺擦具1全体のクッション性が一層高まり、摺擦対象部位に対してソフトな使用感を一層与えることができる。
【0026】
小片布12も上記摺擦シート11と同様、極細繊維で形成されており、摺擦具1に石鹸を付けて使用した場合は、小片布12の極細繊維が毛穴にまで入り込む微細で均一な泡を造り出すから、摺擦対象部位の脂分や汚れを一層効果的に拭き取ることができる。また、平坦層R1,R1相互間にパイル編み層R2を有する三層構造になっているから、摺擦具1全体のクッション性が一層高まり、摺擦対象部位に対してソフトな使用感を一層与えることができる。
【0027】
[その他]
尚、上記実施の形態において、メッシュシート13は、摺擦シート11,11相互の中間に設けられ、それらメッシュシート13と摺擦シート11,11との間隙100,100に小片布12が充填されたものであるが、図4に示すように、2枚のメッシュシート13,13を摺擦シート11,11の内面側に沿って設け、該メッシュシート13,13相互の間隙100Aに小片布12を充填したものであっても良い。このものでは、摺擦シート11,11の内面に沿って設けられたメッシュシート13,13によって、小片布12が摺擦具1Aの一端側に偏るのを抑制しているから、使い勝手が良い。
【0028】
また、図5に示すように、2枚のメッシュシート13,13相互の間隙100Bに合成樹脂発泡体で小判状に形成された芯材16を収容して、このメッシュシート13,13を摺擦シート11,11で挟み込み、メッシュシート13,13と摺擦シート11,11との間隙10,10に小片布12を充填したものであっても良い。このものでは、上記芯材16によって摺擦具1B全体の形態が安定するとともに、小片布12がメッシュシート13,13に引っ掛かるから、使い勝手が一層良好である。また、合成樹脂発泡体で形成された芯材16が適度な弾力性を発揮するから、良好な使用感が得られる。
【0029】
また、上記実施の形態では、メッシュシート13と摺擦シート11,11との間隙100,100の両側に小片布12を充填したものであるが、図6に示すように、間隙100,100の一方に小片布12を充填し、他方に芯材16を収容したものであっても良い。このものでは、上記芯材16によって摺擦具1C全体の形態が安定するとともに、小片布12が摺擦具1Cの一端側に偏るのも抑制されるから、使い勝手が良い。
【0030】
上述の摺擦具1,1A,1B,1Cは、上記従来のものと比べて形態安定性に優れているから、図7に示すように、例えば、手や足の洗浄に使用されるブラシ2に取り付けて使用するのにも適している。ベース本体20の上部に形成された凹部21に上記摺擦具1,1A,1B,1Cを載置し、その上方から止め具22で挟持することによって、摺擦対象部位の脂分や汚れを効果的に拭き取ることができる摺擦具を備えたブラシ2を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る摺擦具1の一部を切り欠いた状態の平面図(a)および一部断面概略図(b)
【図2】本発明の実施の形態に係る摺擦具1における摺擦シート11および小片布12の断面概略図
【図3】本発明の実施の形態に係る摺擦具1におけるメッシュシート13の網目130近傍の断面拡大概略図
【図4】本発明のその他の実施形態に係る摺擦具1Aの断面概略図
【図5】本発明のその他の実施形態に係る摺擦具1Bの断面概略図
【図6】本発明のその他の実施形態に係る摺擦具1Cの断面概略図
【図7】本発明の実施の形態に係る摺擦具1を取り付けたブラシ2の一部分解斜視図
【図8】従来の摺擦具9の断面概略図(a)およびその摺擦具9の一端側に小片布92が偏った状態の断面概略図(b)
【符号の説明】
【0032】
1・・・摺擦具
10・・・袋体
12・・・小片布
13・・・網体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維もしくは合成繊維の布地からなる上下に扁平な袋体と、前記袋体の内部へ充填される多数の小片布とを備えた摺擦具において、
前記袋体の内部には、平面視においてその内部全体に広がるシート状の網体が結合されている、摺擦具。
【請求項2】
請求項1に記載の摺擦具において、
前記小片布は、前記網体の表裏面と前記袋体の内面との間隙の両方に充填されている、摺擦具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の摺擦具において、
前記網体の内部には、合成樹脂発泡体からなる芯板が収容されている、摺擦具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の摺擦具において、
前記袋体および前記小片布は、単繊維繊度が0.001〜1.1デシテックスの極細繊維で形成されている、摺擦具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−211(P2007−211A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181227(P2005−181227)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(596026073)株式会社テンユー (3)
【Fターム(参考)】